世界の中心で、愛をさけぶ
映画「世界の中心で、愛をさけぶ」

映画「世界の中心で、愛をさけぶ」あらすじ・ストーリー


"MOVIE" STORY.  (12/23設置)



DVD版を見ながら書いた映画のあらすじ&セリフの一部です。ネタバレあり
映画セカチューの魅力は出演者の演技や映像美にあると思うので、まだ見てない方は映像を先に見てみてください。
→あらすじ以外の映画情報はこちら


1986年。
ウルル出発前夜、台風が近づいていた。
高校生のサク(森山未來)と亜紀(長澤まさみ)が、夜の病室で会話している。

サク「近づいてる、台風」
亜紀「行けるかなぁ…」
サク「行けるよ、僕が必ず連れて行く」


2003年。
仕事で徹夜明けのサク(大沢たかお)が会社のソファで寝ていたところ、上司から声をかけられて目覚める。
17年前と同じように、台風が近づいていた。

サクの婚約者・律子(柴咲コウ)が、引越しのための荷造りをしていた。
すると、子どもの頃に来ていたカーディガンが押入れから出てくる。
「まだあったんだぁ」と懐かしそうに着てみると、ポケットにはカセットテープが入っていた。
ラベルには「86/10/28」と書かれている。

このテープが何かを思い出した律子は、すぐに電気店へ。
カセットテープが聞けるウォークマンを買う。
街の雑踏の中で、さっそくテープを再生する律子。

「10月28日。どうしてかなぁ、眠れないの。
明日が来るのが怖くて眠れないの。私、もうすぐ死ぬと思う…」


テープからは17年前の亜紀の声が聞こえてきた。
涙を流す律子…。


サクが帰宅すると、律子の書き置きが残されていた。
「しばらく出かけて来ます。心配しないで下さい。律子」

サクは友人の大木が経営するバーに行く。
サクに律子を紹介したのが大木だった。
「幸せにしてやれよ」と言う大木に対して、「律子がいなくなった」と心配そうなサク。

カウンターの近くにあったテレビからは、台風の到来を告げるニュースが流れていた。
四国・高松空港から中継するレポーター。その背後に偶然、そこを通りかかった律子が映し出される。 律子は高松に行っていたのだ。
何かを直感したサク。すぐに大木の店を出て、空港へと向かって走る…。

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

1986年。
高校生のサクが走って告別式会場へと向かう。
女性の校長先生が亡くなったのだ。

生徒を代表して亜紀が弔辞を読む。
「先生がいつも仰っていた、始まりはすべての続きに過ぎないという言葉の意味を考えます。私たちは…」
すすり泣く生徒が多い中で、力強く弔辞を読む亜紀。

告別式会場の近くからは重蔵が見守っていた。
重蔵は町で写真館を経営する老人で、サクとも親しい仲。ニックネームは重じぃ。
重じぃの初恋の相手であり、その後も数十年ずっと想い続けてきた人が、亡くなった校長先生だったという。

重蔵が戦争に出征したことで離れ離れになった二人。帰国した重蔵はすべてを失い無一文。 死ぬ気で働いて、それから彼女を迎えに行った時には、すでに親が決めた相手と結婚していた。 「そういう時代だったんだ」と寂しげにつぶやく重じぃ。


サクと友人の大木が、高校の校舎の屋上から陸上部の練習を見ている。
サクの視線の先には亜紀がいた。
陸上部に所属する亜紀はスポーツ万能で、勉強もできるクラスのアイドル的存在。

放課後、サクがスクーターで帰宅しようとすると、近くで見ていた亜紀が話しかけてくる。
「やっぱりバイクで通ってたんだ。君が乗ってるとこ見かけたことあるのよ」
「先生にチクるのかよ」とサクは警戒するが、スクーターの後ろに乗る亜紀。

「早く」と亜紀がうながして、二人乗りで発進。
走っている間、亜紀が後ろからサクにしがみつく。
「あんまひっつくなよ」
「胸当たる?」

夕暮れ時の埠頭に辿り着いた二人。

「広瀬って勉強できるし、スポーツ万能だし、人気があって、芸能人になるんでしょ?」
純朴なサクに笑い転げる亜紀。
帰りに際に「何で俺と一緒に乗ってきたの」と聞くサク。
「そんなの決まってるじゃない。サクと話したかったから」


ある日の帰り、電気店に立ち寄る二人。
亜紀はウィンドウの中のウォークマンを見つめるが、3万5千円と高額なので手が出ない。 「ミッドナイト・ウェーブ」というラジオ番組でハガキを読まれると、同じものがプレゼントされるという。
二人でハガキを書いて、どちらが先にハガキを読まれるか競争しようと亜紀が提案。

ある日のクラスルーム。文化祭の出し物である「ロミオとジュリエット」のジュリエット役が、投票の結果亜紀に決まった。

「目覚めた時のジュリエットの気持ちってどうだったんだろう。好きな人が先にいなくなる気持ち」
「重じぃに聞いてみればいいよ」
「50年って言ったら半世紀だよ。100年の半分も一人の人のこと想ってられるなんて信じられないよ」

「素敵じゃない」

重じぃのロマンチックな純愛に興味を持った亜紀は、二人で写真館を訪れる。
重蔵は話してもいいが、条件があると言われる。

夜の墓地。
重蔵から骨を盗んできて欲しいと頼まれたサクと亜紀は、校長先生の墓を暴こうとしていた。 骨壷に収められた骨を見て、神妙な気持ちになる二人。骨を少量盗むことに成功。

「こういうのは永遠の恋が実ったっていうことかも」
「でも、死んじゃったらお終いだよ」
「人は死んだら愛も死んじゃうんですか?」


2003年。
故郷の自宅に帰ってきたサクが、自室の押入れで何かを探す。
見つけた缶の箱の中には、ウォークマンと十数個のカセットテープが入っていた。


1986年。
ある日の夜。サクがラジオを聞いていると、サクのハガキが採用されて読み上げられる。

「今日は、僕の同級生に起こった悲劇について書きます。 彼女は髪の長い、物静かな女の子です。 文化祭で僕たちのクラスは、『ロミオとジュリエット』をやることになり、ジュリエット役を彼女が演じることになりました。 ところが、彼女は舞台に立てませんでした。白血病だったのです。 長かった髪はすっかり抜け落ち、かつての面影がないほどに痩せてしまいました」

翌日の学校。
サクが廊下で亜紀とすれ違うが、亜紀は怒ったようなそぶりで何も言わない。
その日の英語の授業に亜紀は出席しなかった。

放課後、サクの前に現れた亜紀は、何も言わないままカセットテープをサクに手渡し、立ち去る。 テープには亜紀のメッセージが録音されていた。

「あのね、サク。今日なんであたしが怒っていたかというと、サクが軽はずみでついた嘘が許せなかったから。 あぁいう嘘をつくのは良くないと思う。 病気の人の気持ち考えたことある? 私が死んだらサクはどうする?」

「重じぃの恋は実らなかったからこそ、今まで長続きしたんだと思うの。 一緒にいたら嫌なところも目にするじゃない。 最後には好きじゃなくなってたかもしれない。 でも、私はどんどん好きになっていくって信じたい」



翌日。亜紀に謝罪するサク。

「ごめんなさい、反省してる」
「次はサクの番ね」
「え?」
「私に話したいこととか、テープに吹き込んできて。そしたらまた返事するから」

こうしてテープによる交換日記が始まった。
ある日の放課後、教室で亜紀がサクのいる前でテープを聞く。

「亜紀、なんて言っていいか思いつかず。 とにかく、今の気持ちを告白します。 亜紀といると楽しいし、亜紀といるとすぐに時間が経ってしまう。 今さらですが、僕と付き合ってください」

「いいよ」と言って微笑む亜紀。


7月14日。 というわけで、わたし広瀬亜紀と松本朔太郎くんは、付き合い始めたわけだけど…。 まだまだ私のことを知らない君に、今日は自己紹介をしてみようと思います。
えぇと、誕生日は、1969年10月28日生まれの、さそり座。


――1969年11月3日、さそり座。

好きな色は、オリーブの緑、森の緑。

――好きな色? うーん、青。

好きな食べ物、湯豆腐、メープルシロップ、海苔にお醤油をつけて食べる白いご飯。

――餃子、宇治金時、オムライス

好きなもの、調理実習、夏の麦茶、白のワンピース、美容室のにおい。

――プールの授業、冬のくわがた虫、牛乳瓶のふた、放課後のチャイム。

好きな映画、小さな恋のメロディ、ローマの休日、ベンハー。

――ドラゴン怒りの鉄拳、ライトスタッフ、明日に向かって撃て

ふあぁ、眠くなりました。今日はこれで寝ます。おやすみなさい。


夏休みが終わる頃、大木のボートで夢島という無人島に渡る計画を立てたサクたち。
サクと亜紀を夢島に届けると、大木はすぐにボートに乗って帰ってしまう。
二人きりで過ごす夢島。大木の計らいだった。

海でひとしきり泳いだ後、廃墟となったホテルに向かう。
ホテル内部はすっかり荒れ果てていた。
廃ホテルから、落ちる夕陽を見つめる二人。

「いつもの生活から、ずーっと離れた場所に来た気がする。 まだいっぱい行ってないところあるんだね」

夕陽を見つめる亜紀に吸い寄せられるように、サクはキスしようとするが、直前で亜紀に止められる。

「あのね、サク。キスっていうのは、夢を語ったりとかしながらするものなんだよ」
「夢ってなに?」
「教えない」

夜、焚き火を囲んで会話する二人。
亜紀は「白亜紀」にちなんで付けられた自分の名前の由来を語り、ガラスに「亜紀」「朔太郎」と並べて書く。
後からサクが相合傘になるように書き加えた。


翌朝。ボートに乗って迎えに来た大木。
大木の計らいで二人きりの夜を過ごしたサクと亜紀だが、結ばれなかったとサクは説明。

崖の上にいた亜紀がサクと大木を見つけて声をかけた時、亜紀は気を失って倒れてしまう。 そして亜紀の鼻からは血が…。病魔に蝕まれていた亜紀。

亜紀を背負って病院へと急ぐサク。
知らせを聞いて駆けつけた亜紀の父が、埠頭まで車で迎えに来る。
父親から殴り倒されるサク。


「あの日、夢島に行って以来、うちの両親はちょっと怒っています。 でも気にしないで。ロミオとジュリエットになったみたいで楽しくない?」

「実は、今日から入院することになったのです。 だけど心配しないでください。 私のサクへの想いは変わりません。 その証拠を学校に残しておきました。 ちょっとした宝探しをしてみませんか?」

「まずは、化学実験室の前に行ってみて。 ひっそりと長い廊下の突き当たり、中に入って。 実験室ってさ、なんかドキドキしない? 何か秘密があるみたいな気がして。 一番奥の、窓際の机を見て」


机には「広瀬亜紀 ここでハカセの眠たい授業を受ける 1986年」と書かれていた。


2003年。
亜紀の高校に辿り着いた律子は、17年前に渡せなかったテープを下駄箱に届けようとする。 そこに偶然通りかかったサクに気づいた律子。
律子の存在に気づかないサクは、17年前の亜紀のテープを聞きながら体育館へと向かう。

「体育館って好きよ。 高い天井。大きな窓から落ちる日差し。ワックスを敷いた板張りの床。 キュ、キュ、キュっと靴音が鳴く」

「ステージに上がって、ピアノの前に立って。目を閉じて。私がいいって言うまで絶対に明けちゃダメよ」


誰もいない体育館だが、サクの耳には亜紀が弾くピアノの音が聞こえる。

「亜紀…」

「目つぶっててよ。 小学校以来だから、上手く弾けるかどうかわからないけど。 人前で弾いたことないし、かなり貴重なの」

大人サクの目には「アヴェ・マリア」を弾く亜紀の姿が映っていた。

律子もサクを追って体育館へ。
ピアノの前に立ちすくむサクを見つける。

幻想の亜紀が演奏を終えると、サクの元へ。

「好きよ…。好きよ、サク…」

17年間封印していた亜紀との思い出と哀しみが、鮮明に蘇ったサク――。


1986年。
病名が明らかになり、体育館で会話する二人。

「ねえ、巡りあいってどんな出会い方を言うのかな」
「白血病。私の病名…」
「白血病…? 僕がラジオであんなハガキ書くからこんなことになっちゃったのか」
「違うわ」
「だってさ…」
「運命なの。でも、私は絶対に死なないから。サクもそれを信じてて」


2003年。
サクに近寄り難いものを感じた律子は、黙って体育館から立ち去る。
幻想の世界に浸るサクの携帯が鳴る。大木からだった。

「今、亜紀に会ったんだよ」
「律子ちゃんを探しに行ったんだろう?」と怒る大木。

「亜紀は最後に俺に会おうとしなかった。 だからここに来ると、まだ亜紀がいるような気がするんだ」


豪雨の中、律子が写真館の軒先で雨宿りしていると、重蔵が手招きして中へ。

写真館で、律子は1枚の写真を見つめる。
サクと亜紀の結婚写真だった。

重蔵「この子らは私の恩人でね。 女の子の方はこの写真撮ってすぐ死んじまった。 忘れられるのが怖いって言って、これを撮ったんだ」

律子「私…奪ってしまったんです。二人の約束を、奪ってしまったんです」

律子は幼い頃、病気の母の入院先の病院で、当時白血病で入院中だった亜紀と親しくなった。
亜紀に頼まれて、高校のサクの下駄箱までテープを届けていた律子。
そうして、亜紀が入院してもテープによる交換日記は続けられていた。


1986年。
入院中の亜紀がラジオを聞いていると、サクが投稿したハガキが再び読まれる。
以前投稿した、ジュリエット役の子の白血病が治ったという内容。
これが再び現実になるようにと、サクが願いを込めて書いたハガキだった。
だが亜紀の病状は着実に進行し、薬物治療の副作用で髪の毛が抜け始める。

病室に見舞いに訪れたサク。
夢島を訪れた時に、廃ホテルで二人は古ぼけた一台のカメラを見つけていた。
そのフィルムを現像してみると、オーストラリアの写真が写っていた。
その中にはウルル(エアーズロック)の写真もあった。

「ウルルって土地はね、オーストラリアの先住民の、アボリジニっていう民族が大切にしている、神聖な場所なんだって。 ここが”世界の中心”って思えるくらい。行ってみたいなぁ」
「行こうよ」
「え?」
「行こう」
「…うん」


ウルルに行くためにはパスポートが必要。
パスポート用の写真を撮りに、亜紀とサクは病院を抜け出して重蔵の写真館まで行くことに。

「私、忘れられるのが怖い。重じぃ、今の私を写真に撮ってくれない? 写真って永遠に残るものでしょ」

パスポート用とは別に、結婚写真を撮ることになった二人。
亜紀は純白のウェディング姿に、サクはタキシードに着替える。
亜紀の美しさに息をのむサク。
重蔵がシャッターを押し、二人の幸せな姿が永遠に刻まれる…。

写真を撮り終えて亜紀が病院に戻ると、同じ白血病患者で亜紀が親しくしていた河野くんが亡くなっていた。
亜紀は自分の身に降りかかろうとしている運命に震える。

「河野くんは私と同じ病気だった。あんなふうに私も突然死んだりするのかな。 私、死ぬのが怖い。この世での別れが永遠の別れ。きっと私のこと、みんな忘れてしまう…」


後日サクが見舞いに訪れると、亜紀の髪の毛は抜け落ちてスキンヘッド姿になってしまっていた。
一人になってむせび泣くサク。ある覚悟を決めて、再び亜紀の病室へ。
無菌状態で治療をするため、ビニールで覆われたクリーンユニットの中に亜紀はいた。

「こんなんなっちゃった。でも心配しないで。大丈夫だから」

スキンヘッドになった頭を触りながらはにかむ亜紀。
サクは黙ったまま婚約届けを取り出して亜紀に見せる。

「結婚しよう」

サクと亜紀はビニール越しにキスを…


病院の廊下で、サクは亜紀の父から「俺には何もやってあげられない」と言われる。 亜紀に残された時間は少なくなっていた。

「亜紀、調子はどうですか。 亜紀と付き合い始めて、はじめての誕生日。もうすぐ17歳だね。 で、突然ですが、約束の場所へ君を連れて行くことにした。 今夜、真夜中に迎えに行くから」


台風が近づいていた。
サクは重体の亜紀を連れて病室を抜け出し、タクシーで空港へと向かう。
外は豪雨だった。

空港のロビーで出発を待っている間、言葉を交わす二人。
亜紀の声はか細く気力がない。

「ねぇ…サクの誕生日は、11月3日でしょう」
「そうだよ」
「私の誕生日が10月28日だから、サクがこの世に生まれてから、私がいなかったことは1秒だってないんだよ」
「私がいなくなっても、サクの世界はあり続けるわ…」

空港にアナウンスが響く。
乗り継ぎの成田行きの便が、台風の影響で欠航になったという。
この便に乗らなければオーストラリアには行けない。

慌てて空港職員に詰め寄るサク。
「どうしても行かなきゃいけいないんだよ!」
今日は代りの便はないと言われる。

亜紀がベンチから立ち上がって、サクの方へと歩み寄ろうとするが、すぐに倒れてしまう。
走って亜紀を抱きかけるサク。

「行けないの…?」
「行けるよ、この次」
「ないんだってば…この次なんてないんだってば!」
「まだ大丈夫だよ、生きてるよ」
「まだ私、生きてるよ…」

そう言い終えると、亜紀は意識を失ってしまう。

「亜紀…亜紀…!」

サクは誰に向かってでもなくつぶやく。

「助けてください…」

つぶやきは絶叫へと代わっていく。

「助けてください…! 助けてください!!」


再び入院先の病院に運ばれた亜紀。

「10月28日。どうしてかなぁ、眠れないの。 明日が来るのが怖くて眠れないの。私、もうすぐ死ぬと思う…」

「あのね、私たち、もう会わないほうがいいと思うの。 あなたと過ごした永遠の何分の一かの時間が、私の生涯の宝物です。あなたがいてくれて幸せだった」

「いいよね、私たちは今日でお別れ。 あなたが大人になって、結婚して、仕事をして、未来を生き続けることを想像しながら、今夜は眠ります」

亜紀の最後のテープが律子に託される。
高校へと向かって走る律子。だが、道路を横切ったところで車と衝突してしまう。
律子は足を怪我して入院。最後のテープは届けられないままになっていた――。


2003年。
写真館からサクの携帯に電話する律子。

「サクちゃんだったんだね。 亜紀さんの最後のテープ、渡さなきゃいけなかったのに、ずっと渡せなかった。 私、彼女が死んだことも知らずに、今まで…。サクちゃん、ごめんね」

サクは走って写真館へと向かう。
サクが辿り着いた時には、律子はすでにいなかった。

「重じぃ…俺、ひどい男なんだ。俺さぁ、亜紀の死からずっと逃げてきた。 忘れられないんだよ。どうすればいいかわかんないんだよ…」

「人が死ぬっていうのは、えらいことだ。 思い出や面影、楽しかった時間はシミのように残る。 天国ってのは、生き残った人間が発明したもんだ。 そこにあの人がいる、いつかまたきっと会える。そう思いたいんだ」

「俺なんか未だにこの世に未練があって、未練引きずりながら生き残ってる。 残された者にできるのは、後片づけだけだ…」


律子は空港にいた。17年前と同じように、台風のため欠航。
重蔵に慰められたサクも、タクシーで空港へと向かう。

空港のロビーで律子を見つけたサク。サクが歩み寄ると律子が話し始める。

「まさか今頃になって、亜紀さんの最後のテープが出てくるなんて思わなかった…。 だからそのテープを、亜紀ねえちゃんが愛した彼に渡したかった。 ごめんね、サクちゃん…。こんなに時間がかかって、本当にごめんなさい」

嗚咽する律子をそっと抱きしめるサク。

「亜紀は君を恨んじゃないないよ。 だって君のおかげで亜紀と俺、たくさんのことがわかりあえたんだから。 あの日、彼女はここまでしか来ることができなかった。 いつか必ず行こうって約束したんだ。後片づけしなきゃ」

涙を流しながらうなずく律子。


17年前の亜紀の願いを叶えるために、二人はウルルへと向かう。

ウルルの赤い大地に降り立ったサクと律子。
サクはウォークマンで亜紀の最後のテープを聞き始める。

「目を閉じると、やっぱりあなたの顔が忘れられない。 思い出すのは、焼きそばパンを頬張った大きな口。 顔をくしゃくしゃに崩して笑う笑顔。 ムキになってふくれるけど、すぐに振り返って笑ってくれた時の優しさ。 夢島でのあなたの寝顔。今もすぐ目の前にあって触れていたいよ。 バイクに乗せてくれたときのあなたの背中のぬくもりが、一番大切だった」

「あなたとのたくさんの思い出が、私の人生を輝かせてくれた。 本当にそばにいてくれてありがとう。 忘れないよ、あなたと過ごした大切な時間」

「最後にひとつだけお願いがあります。 私の灰を、ウルルの風の中に撒いて欲しいの。 そして、あなたはあなたの今を生きて。 あなたに会えてよかった…」


小瓶に入った亜紀の遺灰を見つめるサク。
律子がサクに歩み寄る。

「ここに来て、世界の中心がどこにあるのか、わかった気がする」

サクが手のひらに遺灰を出して、ウルルの大地に手をかざす。
風が吹いて、亜紀の遺灰がウルルの空に舞い上がった…。

FIN





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