優しい時間

優しい時間 最終話「雪解け」あらすじ・ストーリー

#11 STORY.
最終話「雪解け」あらすじ

1200度の灼熱の陶器を左腕の刺青のところに押し当てた拓郎(二宮和也)。
すぐに病院へと運ばれ応急処置を受ける。
施術後の待合室。「なぜこんなことをしたんだ」と六介。

(拓郎) 刺青を…ここにあった刺青を、消したくて。
ガキの頃いきがって入れた刺青です。
それを消したくて、焼けた陶器を自分で押し付けました。
これで昔がひとつ、清算できました。


入院はせずに済んだものの、ひどい火傷のせいで熱にうなされる拓郎。
それでも布団から起き出し、陶芸展の出品作を右腕だけで作り始める。


森の時計。 水道工事業者・立石(國村隼)の娘の結婚式が、いよいよ今日行われようとしていた。 式までの時間を森の時計で過ごしていた立石は、昨晩も娘は婚約者といて深夜1時まで帰ってこなかったと嘆く。

そこに立石から呼び出された娘のマヤ(須藤理彩)がやって来る。 最後に娘とゆっくり話したかったのだ。 しかしマヤは美容院の予約があって忙しいと言い、すぐに出て行こうとする。

たまりかねた立石が「自分一人でここまで来たと思うな!」と怒鳴りつける。
だがマヤは「自分一人でここまで来たよ!」と言い返して去っていく…。

続けて朋子が中学・高校時代の同級生を4、5人連れて森の時計を訪れる。
その中の一人、中年の亀田(高橋克実)は学生時代にメグに惚れていたという。


一方、拓郎は六介や洋子の制止も聞かず、高熱と闘いながら右腕だけで作品の制作に没頭していた。 そんな拓郎を心配した洋子は、朋子さんに伝えといた方がいいんじゃないかしら、と六介に言う。

翌日、六介は北時計に行き朋子に相談する。

(六介) あいつは身に彫った刺青が、おやじさんの怒りの種だと言ってた。
だからその種を焼き消したんだって。
だからそのことをおやじさんに連絡しようって俺は言ったんだ。
しかしあいつは頑としてきかねえ。
そのことは後で自分から言うから、絶対に連絡しなでくれって。


朋子は、「そこまでの気持ちでいるなら、拓の言うようにすべきなんでしょうね」と。
静かに見守ることにした六介。


一方、体調が回復した梓(長澤まさみ)はまた「森の時計」で働き始めていた。
その森の時計にめぐみの同級生の亀田(高橋克実)が再びやってくる。

コーヒーを注文した亀田は、古いトランクから一枚の古い写真を取り出すと、勇吉の前に差し出す。14歳の時のめぐみの写真だった。 続けて高校生の時の写真、亀田宛てに出された手紙、バレンタインチョコの銀紙などを次々と取り出す。

「よくとってらっしゃいますね」と勇吉(寺尾聰)。
亀田は「もちろん」と嬉しそうに答える。

男を不審に思ったミミは「相手にしない方がいいですよ」と勇吉に耳打ちする。だが亀田はかまわず、高3の時にめぐみと一緒に行ったというコンサートの半券なども取り出し、カウンターに次々と並べていく。 今も変わらずめぐみに惚れこんでいる様子だった。

そこに酔っ払った立石(國村隼)がやってくる。 結婚式の日、花婿とその出席者の無礼さに限界が来た立石は、トイレに花婿を呼び出して殴りつけてやったという。 だが娘を嫁に出した立石には寂しさが漂っていた。

その後、夕暮れ時の森の時計に意外な組み合わせの常連客が訪れる。 美可子(清水美砂)と刑事の風間だ。 新しい住居を探していた美可子は、風間の家の空き部屋に呼ばれて住むことになったという。 信じられない様子のミミは「おやめなさい」と言うが、美可子はあっけらかんとした様子だった。

一方、拓郎の出品作はもう少しで完成しようとしていた。 時おり腕が痛んだが、父が残した富良野神社のお守りを握り締め、歯を食いしばりながら耐える拓郎。


夜の森の時計。 カウンターに座っているめぐみに勇吉が話しかける。

(勇吉) 今日、変な人が現れたぜ
(めぐみ) 誰?
昨日、朋子さんが連れてきたんだ
その人が今日また、一人で来た
君の昔の同級生だそうだ
誰だろう
その人がな、いきなりトランクから君の大昔の写真を出して、見せるんだ
14歳ぐらいの君の写真や、高校時代のや
それを黙って俺に見せて、それで反応を伺ってるんだ
亀田さんだ
ああ
変な人でしょう
相当変わってるな
あれは昔のボーイフレンドかね
かな? よく判んない
とぼけるんだな、けっこう君も
だって君が出した手紙までちゃんと持ってたぞ
え?
藤圭子のコンサートのチケットの半券も、厚紙にきちんと張ってあった
やだ
それから、君がプレゼントしたバレンタインのチョコレートを包んであった銀紙まで見せられた
信じられない

だけど…あどけない14の君を見て、なんだか俺は不思議な想いをしてたよ
この子は、その頃何を考えてたんだろう
それから何年かして、俺と知り合い、拓郎を生んで…
亭主が仕事にかまけているのに耐えて、一人で息子を育て、家庭を守り、そうして歳を少しづつ取る
そんな未来を想像できたろうか
14歳の君の写真を見てね、何だか俺は君に対して、しちゃいけないことをしてきたんじゃないか
もしかしたら、この子は俺と知り合うより、全然別の…
そうすれば、もっとずっと幸せに…

やめて
そんなこと言わないで
私は満足してるんだから
もう少し長く生きたかったけど、今はこうして一緒にいられるし
そのことで私は十分幸せに感じてるんだから

いつかあなた、私に言ったの憶えてる?
若いカップルは、互いをいつも見つめ合ってるけど
熟成したカップルは、見つめ合うより、同じものを見るようになるって
同じものを見て、同じものを聞いて、同じものを感じて、同じものに感動して…
そういう、歳を取ったカップルは素敵だって

あなたが見ているものを、私も見てるわ
あなたが感じること、私も感じてるわ
ここのカウンターで、いつでも私、一緒に…



翌朝の皆空窯。 六介が拓郎の工房をのぞいてみると、拓郎が作品を磨いていた。 中に入り声をかけると、素晴らしい出来の抹茶茶碗が完成していた。手放しで誉める六介。 拓郎の顔にも充実感が満ちていた。

そして「納品する前におやじに見せたいんです」と六介に告げる。 拓郎はついに父に逢いに行くことに…。


夜、閉店直後の森の時計に拓郎がやってくる。 ちょうど店から出てきたリリが「もう閉店です」と声をかけると、拓郎は「マスターいますか?」と。 そして息子であることを名乗ると、店内へと入っていく…。

ドアベルが鳴り、カウンターにいた勇吉が振り返る。
そこには拓郎がいた。数年ぶりの再会を、しばらく無言で見つめ合う二人。

(拓郎) ご無沙汰してます
(勇吉) やあ…

勇吉はぎこちなく微笑みながら拓郎を迎え入れる…。
カウンターへと歩み寄った拓郎は、持ってきた箱から出展作の抹茶茶碗を取り出す。

今日、出来上がったばかりなんです。
まず父さんに見てもらいたくて。


手に取りじっくりと眺める勇吉。
茶碗の隅には「拓」と彫られている。

見事だ
本当ですか?
ああ、見事だ

息子の成長に心からの笑顔を見せる勇吉。
そしてカウンターの棚から彩文のコーヒーカップを取り出す。

これもお前だろう?
はい
でもそれは…駄目です
そんなことはない
少なくとも、俺は気に入っている
かけなさい
コーヒーいれるよ


コーヒーを作り始める勇吉。

父さん
ん?
今日、謝りに来ました
見てください


拓郎はシャツを脱ぐと、左腕にある火傷の痕を見せる。

焼いて消しました
自分で…焼いたのか
はい

拓郎の目から涙がこぼれる。

許してください
僕のやったこと
母さんのこと
刺青のこと
父さんを…父さんを傷つけてしまったこと
僕は…


勇吉の目にも涙が溢れている。

やめてくれ、拓郎
もうやめよう
謝らなければならないのは、俺の方だ
許してくれ
すまなかった


しばらく無言で涙を流す拓郎と勇吉。
親子の雪解けの瞬間だった…。

さぁ着なさい、風邪ひく

シャツを着なおしてカウンターに座る拓郎。

ここに一人でいるんですか
ああ
寂しくないんですか
最初のうちは、ちょっと寂しかったよ
年中、負け犬の気持ちでいた
それがな、ここにいて色んな人たちと話をしていると
どういうか、ひどく優しい気持ちになれるんだ
人に上手く取り入ろうとか、見捨てようとか
そういうことは、ここにいると何もない
ただ純粋に、生きていられるんだ…


ドアベルの音がして梓が店内に入ってくる。
笑顔で話しかける勇吉。

こっちにおいで、アズちゃん
大事な人を紹介するよ
私の息子の拓郎だ
うちで働いてるアズちゃんだ
こんにちは
こんにちは

改めて挨拶し合う拓郎と梓。勇吉は梓に拓郎の抹茶茶碗を見せる。
拓郎と勇吉はワインを飲もうという話になるが、梓はすぐに帰らなければいけないという。 「送ってってあげなさい」と勇吉。

一緒に店を出た拓郎に、梓が話しかける。

(梓) 素晴らしかった、あの抹茶茶碗
逢えなかった時間が、あの中に詰まって、光ってた


梓は拓郎の左腕の、火傷した辺りを服の上からそっと触れる。そして手を取って歩いていく。 そんな二人を店内から優しく見つめる勇吉…。

勇吉が二階からワインを取って戻ってくると、どこからかめぐみの歌声が聞こえてくる。
いつしかその歌声がやむと、彩文のコーヒーカップがいつものめぐみの席に移動していた。 それはまるで、めぐみが今コーヒーを飲んで去っていったかのようだった。
コーヒーカップを手にし、めぐみに感謝するかのように優しく微笑む勇吉…。

最終話終わり。


――エンドクレジット――

いつもと変わらない賑わいを見せる森の時計。
常連客らがカウンターに座り、雑談しながら笑顔を見せる。
ミミ、リリ、梓も変わらず働いていた。
皆空窯。六介と洋子に見守られながら、黙々と修行を続けている拓郎。
朋子は北時計で客に話しかけていた。
春が近づいている森の中を、拓郎と梓が腕を組んで散歩している。
カウンターでコーヒーミルの手入れをしている勇吉。
森の時計では今日もゆっくりと時を刻んでいる。
薪を抱えながら、春が近づく森の中を歩いている勇吉…。END。




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