優しい時間

優しい時間 第10話「刺青」あらすじ・ストーリー

#10 STORY.
第10話「刺青」あらすじ

森の時計。
息子の拓郎がお世話になっている皆空窯の師匠にお礼を言いたいと考えた勇吉(寺尾聰)。朋子に電話をかけ、六介を紹介して欲しいと願い出る。

退院した梓(長澤まさみ)は美可子(清水美砂)の家に入り浸り、銀細工の制作に熱中していた。
今日も美可子の家で一人で銀細工を作っていると、見知らぬ中年女性(杉田かおる)が突然家に上がりこんでくる。
中年女性は怒った様子で部屋を詮索し、探している人物がいないと知るとまたすぐに去っていった…。


森の時計。常連客の一人がビッグニュースを持ってやってくる。
未亡人の美可子とペンションオーナーの滝川が愛人関係だったと言うのだ。

それが滝川の妻の珠子(杉田かおる)に明るみになり、昨夜、滝川は怒った珠子にボコボコにされたという。美可子が住んでいるアパートの家賃も滝川が出していたのだった。

常連客がそんな話をしていると、珠子(杉田かおる)が突然店内に入ってくる。
急に黙り込む常連客たち。
怒りを内に秘めた珠子は、無言でコーヒーミルをゴリゴリと回す。

常連客の一人・佐久間が危険を察知して一人帰ろうとすると、珠子が呼び止める。
滝川は毎晩ちっこ食堂で佐久間と飲んでいると妻に話していたらしい。
しかし珠子がちっこ食堂のおばさんに聞いたところ、店には来ていない事実を知ってしまう。
佐久間は逃げるように店を飛び出すが、珠子もすぐに追いかけて佐久間に飛びかかる…。

珠子が店を後にしたのを確認すると、店外で隠れていた滝川が現れる。
ボコボコに殴られたという顔はひどく腫れていた。
美可子とは49日の日に関係ができたと元気なく話す。


店をリリたちに任せて早めに後にした勇吉は、途中でブランデーを買い、美瑛の喫茶店へと向かう。
勇吉が先に店内で待っていると、朋子と六介がやって来る。
おそるおそる六介に挨拶をする勇吉。

(勇吉) 湧井勇吉と申します。
おたくにお世話になっている、湧井拓郎の父親です。
長いことお世話になっていながら、何のご挨拶もせずに、大変ご無礼しました。
実は…恥ずかしい話ですが、それを知りましたのがごく最近です。
私も正直、びっくりしております。


そして買ってきたブランデーを「大変つまらないブランデーですが」と言って差し出す。
「つまらないブランデーをもらったのは初めてだ」と六介。
そして本題へと戻る。

(六介) 息子がここにいて、びっくりしております、か。
あんたずい分変なおやじだな。
息子の居場所が一年半分からなくて、あんたは心配しなかったのか。
探したのか?
(朋子) 色々とあったのよ、こちらも。
多少のことはこのママから聞いてる。
でもな、あいつは反省してる。
あんたにも、詫びを入れたんじゃないのか。
反省しても、詫びを入れても、あんたはあいつを許さないのか。
おやじがせがれを許さないのか?
そんじゃあいつはどうすればいいんだ。

俺はあいつがかわいくってしようがねえ。
あいつは澄んだいい目をしてる。
あいつはうちで、下積みからコツコツと、何ひとつ文句言わずに1年半やってきた。
もしかしたらあいつは物になるかもしれねえよ。
今、初めての作品作りに、無我夢中で挑戦始めたところだ。
だから今、あいつを乱すことはやめてくれ。
今は会わんでやってくれ。
あいつを乱すな。


そう六介に叱咤され、打ちのめされた勇吉…。


勇吉と朋子は北時計に帰って話を続ける。
「息子が起こした事故でメグが死んだからって、ここまでタクを拒むのはどうして?」と朋子。

妻の事故を知ってニューヨークから駆けつけた勇吉は、めぐみの遺体と対面。
すると近くにいた拓郎は突然、そでをまくって死神の刺青を勇吉に見せた。
そのことが大きなショックとして残っているという。

(勇吉) その時、私は思ってしまったんです。
こいつはもう、昔の拓郎じゃない。
こいつは死神だ。拓郎じゃない…。



勇吉が森の時計に帰ってくると、美可子が店の前で待っていた。
カウンターに座った美可子は、滝川の妻がアパートに怒鳴り込んできた時のことを楽しげに話す。

美可子と滝川が深い関係になったのは49日の集まりの時だった。滝川はとても優しくしてくれて一緒に泣いてくれたという。
そしていつの間にか体の関係になっていた美可子と滝川。
美可子は今回の事件にも懲りてない様子で、今後も富良野に留まるという。


後日、勇吉の元に六介から封書が届く。
中には旭川で開催される新人陶芸展の案内が入っていた。

拓郎(二宮和也)はそのコンクールに応募する作品の制作に集中していたが、なかなか思うような作品が作れずにいた。


そんなある日、朋子が拓郎の家を訪れる。
先日勇吉から刺青のことを聞いた朋子は、拓郎に「見せてごらん」と。
拓郎は一瞬戸惑うが、そでをまくって刺青を見せる。
どうして勇吉の帰国直後に刺青を見せたのかと問い詰める朋子。

(拓郎) 見て欲しかったんです、あの時は。
もう隠すまいと思ったんです。
母さんはこれを見せなさいって言って、僕は必死に見せまいとしました。
母さんと父さんにもらった肌に、こんなもの刻んじまって。
その時は絶対、見せちゃいけないと思いました。

あの日、車の中で母さんは、俺のTシャツの袖口をめくろうとしました。
もうどうしていいか分かりませんでした。
素直に見せればよかったんです。
見せてればあんな事故起こらなかった…。
その後も、その気持ちはずっと続いていて。
父さんを見た時、錯乱して僕はいきなり、刺青を見せてしまったんです。
なぜあんなことをしたのか…よく判りません。
父さんそのこと言ってましたか?


否定しない朋子。

そうですか…。

父との関係を修復する上で、刺青が大きな障害であることを改めて知った拓郎…。


森の時計。
薪ストーブの火を見つめていた勇吉に、亡きめぐみが声をかける。

(めぐみ) また落ち込んでるんですか。
暗い顔してると歳取るわよ。
(勇吉) そうじゃない。
拓郎が新人の陶芸展に、初めて作品を出すそうだ。
本当?
あいつにはこういう才能があったのかな。
遺伝よ。
俺にそういう美的センスはない。
あなたの血じゃないわ、私の遺伝よ。
憶えてる?
あの子の美術の点、いつも良かったわ。
ほら、小学校の時、あなたの顔描いて、 それがとってもよく描けてたから、あなたパリから絵の道具一式、 送ってくださったことあったじゃありませんか。
ああ
拓郎、あの道具今でも大事に取ってあるはずだわ。
ああ
その展示会が今度、旭川であるあらしいんだ。
行くの?
ああ、そのつもりだ。
拓郎に逢うわね。
逢うだろうな。
その時俺は…何て言うんだろうな。
怒っちゃダメよ。
怒るもんか。
それよりも、泣くんじゃないかって心配だ。
誰が?
俺がさ。
どうして泣くの。
俺が何と言ってあいつに対して、自分の冷たさを詫びたらいいのか。
だけど俺は多分、謝れないから、代わりに黙って泣く気がするんだ。
バカね。
泣いただけじゃ、あの子に分からないわ。
そうかな、分かってもらえないかな。
そうだろうな…
泣いても、分かってもらえないだろうな…



皆空窯。灼熱の窯で作品を焼いている拓郎。
窯のふたを開け、火ばさみで真っ赤に燃えた陶器を取り出すと、すぐバケツの水につける。

まだ数点の陶器が窯の中に残っていた。
窯の中で赤く燃える物体を見て、何かを考えた拓郎。

シャツを脱ぎ上半身裸になると、火ばさみで灼熱の陶器を取り出す。
そして「死神」と彫られた左腕に押し当てるのだった…。

拓郎の絶叫が辺りに響きわたる。
それを聞きつけた六介は窯へと向かって走る…。

第10話終わり。



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