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過去ログNo1
「世界の中心で、愛をさけぶ 2」 Part.5  Name:朔五郎
(あらすじ)

大林亜紀は宮浦高校の3年生。同じクラスの大木健三郎と付き合っている。
健三郎という名はノーベル賞作家の大江健三郎から取ったらしい。

茶髪という今風の二人だが、意外にもオク手で、キスより先にはなかなか進めない。ケータイのメールを使って交換日記の様なことをしている。
亜紀の母、智世と健三郎の父、龍之介は若い頃付き合っていたが、訳あって別れたらしく、それが原因で子供達の交際には反対だった。

ケンと私は、まるでロミオとジュリエットね。防波堤の上で夕陽を見ながらアキがつぶやく。
アキの絵画の才能は周囲に認められていたが、実家の薬局を継げといわれていた。このままでは、ケンとも引き離され、好きな絵画の道にも進めなくなってしまう。本当はモダンアートの勉強をしたいのに。

ケンはアキの夢を叶えるために逃亡計画を立てる。まず、東京へ行き、そこでアルバイトをして金を作る。そしてニューヨークへ渡る。

どうせ一度の人生なら、世界で一番自由な空気を吸ってみたい。

しかし、現実は甘いものではなく、東京での苦しい生活に疲れ傷ついていく。
ある日、渋谷の街を歩く二人は、不良グループに襲われる。傷を負いながらアキを守ったケン。しかし金や携帯など、すべてを奪われてしまう。
もはや為すすべもなく、渋谷駅のベンチにうずくまるしかなかった。
アキが高熱を出した。ケンは交番から親に連絡しようと言うが、アキは帰りたくないと言い張った。そして遠のいていく意識の中で「ありがとう、好きよ、ケンちゃん」と言いながら目を閉じた。

内科教授・松本朔太郎は救命センターからの連絡を受け、搬送された亜紀の治療に当たる。重症の肺炎で死線を彷徨うが、朔太郎の懸命の治療により命をとりとめた。

やがて駆けつけた智世や龍之介も、二人の思いの強さを知り、理解を示す。
ひとまず、故郷に帰ることになった二人。退院前日に病院の屋上から超高層ビルの上の空を見ている。
少し離れたところでその姿を見守る朔太郎の耳に、優しく、懐かしいあの声が聞こえた・・・。

その後帰郷した二人は、大学受験に臨む。ケンは地元の県立宮浦大学に合格するが、アキは不合格となり浪人生活に入った。二人は、アキが合格するまで交際を禁じられる。ケンはアキの自宅か図書館以外では会わないことを条件に、家庭教師を申し出る。

アキの同級生マサミは、ふとしたことから廣瀬夫妻と知り合いになり、最後まで自分らしく生き抜こうとした廣瀬亜紀の話を聞き感銘を受けた。大沢先生の妻・律子と二人で「かたちあるもの」という歌を創り、廣瀬夫妻に贈る。

元・宮浦高校教師の谷田部がガンと診断される。治療の苦しさを思い手術を拒否する谷田部に対し、元教え子たち、そしてその子供たちや担任教師だった大沢の必死の説得が実を結び、谷田部は手術を受け、一命を取り留めるのだった。

幼かったケンとアキをはじめ、マサミ、ユイ、シンジ、レイコ、それぞれが少年少女から青年へと、花が開くように変わっていく・・・


このスレッドでは随時、原稿、ご意見、ご感想等を募集しております。お気軽にご投稿ください。

【Part.1】
http://www.alived.com/cgi/yyai/yyplus.cgi?mode=past_one&no=4233&pastlog=7

【Part.2】
http://www.alived.com/cgi/yyai/yyplus.cgi?mode=past_one&no=5871&pastlog=8

【Part.3】
http://www.alived.com/cgi/yyai/yyplus.cgi?mode=past_one&no=6538&pastlog=10

【Part.4】
http://www.alived.com/cgi/yyai/yyplus.cgi?mode=past_one&no=7674&pastlog=12

【整理サイト】
http://sekai.cure.to/pc/
...2005/03/18(Fri) 04:39 ID:bnTxlF/Q    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
Part.5のスタートです。
執筆者の皆さんがんばりましょう。
読者の皆様よろしくお願いします。
...2005/03/18(Fri) 04:43 ID:bnTxlF/Q    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
4-292の続きです


海の時計 2022年・冬 (前編)


「いらっしゃい」
「こんにちは、マスター」
「ああ、マサミさん。仕事帰り?」
「ええ」
「デイケアセンターの仕事はどう?」
「ええ、もう1年になるんで、だいぶ慣れました」
「でも、彼氏とは遠恋になっちゃって淋しいね」
「彼、英語の教員免許持ってるんですけど、宮浦南中学校に空きができたんです。だから4月からこちらに住むことになりました」
「ほんとに?そりゃ良かったね。じゃ、いよいよ・・・」
マサミはちょっと赤くなりながら言った。
「ええ・・・親たちも、そうしろと言うんで」
「おめでとう。よく我慢したね」
「いえ、レイコに比べれば・・・」
「まあ、そうだね」
マスターは思わず苦笑した。
「レイコは辛かっただろうけど、ほんとに頑張ってくれてね。この店だってレイコが考えたフードメニューのおかげでこんなに大きくなったんだ」
「ずいぶん広くなりましたね」
「うん、レイコのカレーとパスタ目当ての客が押し寄せてね、とても入り切れなくなっちゃって・・・廣瀬さんに頼んで、隣りに別棟を建てて廊下で繋いだんだ」
「レイコ、とってもうれしそうに話してましたよ。フードメニューが売れて良かったって」
「もう、レイコなしじゃこの店は考えられないね」
マスターの言葉には実感がこもっていた。
「マスター、まるで《お嫁さん》のことを話してるみたいですね。もう自分の娘と同じっていう感じ」
「そうかい、まあそうなってくれればいいんだけど」
マサミは思わず微笑んだ。
「そうそう、マスター。この間のレクリエーションの集いの時、廣瀬ご夫妻に会いましたよ」
「へえ、お元気?」
「はい、とっても」
「そりゃ良かった」
「それでね、この間、アキに服を買ってあげたみたいですよ」
「ほう」
マスターは目を丸くした。
「高校の時と違って制服じゃないから、服もいっぱいあったほうがいいだろうって。アキもそう言われてビックリしたみたいですけど、アキのお父さんが廣瀬さんの気持ちを察して、そうすることで喜んでもらえるなら甘えさせてもらいなさいって」
マスター思わず目頭を熱くした。
「わかるなあ、その気持ち」
マサミも思わず頷く。
「マサミさんも、歌を創って贈ったことがあるんだって?」
「はい」
「廣瀬さんにとっては辛いことばかりの人生だったと思うけど、そんなふうに最後のほうになって《人並みのしあわせ》の何十分の一かでも味わうことができて、ほんとに嬉しいんじゃないかな」
「ええ。廣瀬さんはアキの話をする時は何の翳りもない、本当にいい笑顔になるんです。アトリエっていうのはあまり陽の当たらない北側の方がいいんだ、とか」
「そんな時はね、お嬢さんに抱きしめられて夢をみているような気持ちなんだと思うよ・・・でも、アキちゃんが生きていく姿を見るのが楽しみなうちは、きっと大丈夫だね」
「はい。私もそう思います」
「たとえばアキちゃんが、意図的にお嬢さんのフリをしたとしても、そんなふうにはならないと思う。アキちゃんが堂々と自分の道を歩いているからこそ、その中に最後まで自分らしく生きようとしたお嬢さんの姿が浮かびあがるんだ、多分」
マサミは黙って頷いた。


「いよいよ、明後日ですね。レイコはもう札幌に?」
「うん、ぼくも明日行くつもりだ」
「よくここまで来ましたね」
4年間を振り返るようにマサミが言った。
「そうだね。もうダメだと思ったけど・・・」
「レイコは本当に強かったですね」
「ああ、レイコがいなきゃ、息子はとっくに終わっていたよ」
「練習中のケガで1シーズン棒に振ったんですよね?」
「うん。もう誰もが再起不能だと思った」
「でも、アズサさんのために必死で頑張ったんですよね」
目を閉じて、マスターが言った。
「ドクターが今度同じところをやったら一生車椅子だって言ったんだ。アズサもその時はもう、新しいしあわせを掴んでいた。だからぼくも、高校時代にコーチだった桜井君も、競技はもうやめろと言ったんだ。アズサに対しても充分に誠意は見せただろうって。でも本人がどうしても続けるって言うんだ。オレはもう二度と逃げない。後片付けをするんだって」
「・・・・・」
「その時、レイコが息子に覆い被さるようにして叫んだんだ。どんなことになっても私はニノと一緒に生きる。もし必要なら一生車椅子を押す。だから思うようにやらせてあげて、と」
「すごい・・・」
「二十歳を過ぎた男と女が自分の一生を賭けて決めたことだ・・・もう止めることはできなかったよ」
「レイコはおとなしくて、家もお医者さんだから、きっと親が見つけてくれた若いドクターのお嫁さんになるんだろう。何の苦労もしないで穏やかに生きて行くんだろうなって、みんな思ってました。それがこんな映画みたいな恋をするなんて・・・」
「・・・まったくだね。だけどレイコはただ優しいだけじゃなかったんだよ。リハビリの苦しさに息子が自暴自棄になりかけた時、ものすごい平手打ちを喰らわせたんだそうだ。周りの人間が凍り付いてしまうくらい大きな音がしたんだって」
「レイコが?・・・信じられない」
「結局、息子がオリンピックに出られるのは、レイコが一緒に生きてくれたからだ。そばで見守るとか、そういうきれいごとじゃなくて、一緒に泣いたり、怒ったり、叫んだりしてくれたからだよ」
「・・・・・」
「でも、もう今度が最後なんだ。今まで続けてこられた方が奇跡でね、ヒザも腰もボロボロなんだ。だからもう、明後日ですべて終わりなんだよ」
「レイコの闘いも終わるんですね。それならきっと、レイコは静かで優しい女性に戻ると思いますよ」
マスターはカメラを取り出した。
「マサミさん、このカメラを覚えてる?」
「ええ、もちろん」
懐かしそうにマスターが言う。
「故障もせずに息子の姿を写してくれたけど、それももう終わりだ・・・いや、競技を写すのは最後だけど、これからは二人の幸せな人生を写して行きたいと思ってるんだよ」
「あの二人、きっと幸せになれますよね・・・」
祈るようなマサミの言葉だった。



(後編に続く)
...2005/03/21(Mon) 23:07 ID:dGWVb7nI    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
早速「海の時計」の続編を読ませていただきました。後編も楽しみにしております。
...2005/03/21(Mon) 23:49 ID:2Mdancvo    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
ニノの話を書いていたら、テレビでニノ主演の舞台の予告をやっていました。
「理由なき反抗」だったかな?
演出は、堤幸彦氏だそうです(^^)
すごいタイミングでビックリしました。
ニノの話は今夜あたりアップできると思います。

それにしても、稲代空港(福島空港)で「しりもち事故」というのは・・・
行ってきたばかりだけに生々しいです(苦笑)
...2005/03/23(Wed) 02:53 ID:U41Q0qzc    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:にわかマニア
 「理由なき反抗」ということは,ニノは和製ジェームス・ディーンですか・・・
 そう言えば,マスターの息子の暴走族時代の姿には,何となく「理由なき反抗」をイメージさせるものがありましたね。

 まもなく,50年ぶりの札幌五輪の開幕ですね。海の時計の続編を楽しみにお待ちしています。
 それから,朔五郎さんの物語とかぶらないように注意しつつ,北出清五郎アナ(古いかなァ)が開会式の実況で待機しています。
...2005/03/23(Wed) 06:15 ID:xvBczAPc    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:たー坊
「世界の中心で、愛をさけぶ2」を執筆されている作者の皆様、こんにちは。たー坊です。

Part5に突入、おめでとうございます。いつも執筆ご苦労様です。毎回一読者として楽しみにさせて頂いてます。これからも作者の皆様の作品を拝読させて頂きます。
お互い、頑張りましょう。
...2005/03/23(Wed) 13:30 ID:Rvawvvww    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
にわかマニアさん
開会式、よろしくお願いします。
聖火リレーの最終走者(点火)は誰でしょうね。
女性が良ければ、安藤美姫さんか上村愛子さんか岡崎朋美さん?(笑)
女性の金メダリストなら、例の「T.S.選手」しかいないのですが、まあいろいろあって(苦笑)
男性でも良ければ、荻原健司氏でしょうかね(笑)
それとも、にわかマニアさんの「サプライズ人事」があるのか(期待してます・笑)

たー坊さん
力づけて頂いてありがとうございます。
これからもお願いいたします。

札幌五輪の開幕が遅れてすみません。
原作の中でサクとアキが行った動物園はどこだったのだろう、ということが妙に気になってしまいまして(苦笑)
二人が高校生になった90年代、道後公園にはもう動物園はなかったのです。とすると、とべ動物園まで行ったのか。それもちょっとなあ、とすっかり「泥沼」にハマっております。
...2005/03/24(Thu) 02:11 ID:VyCvc/.E    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:にわかマニア
(東京のスタジオ)
 50年ぶりに聖火が札幌に帰ってきます。日本で4度目のオリンピック,間もなく開幕です。
 会場と中継がつながったようです。
 それでは,早速,会場を呼び出してみましょう。
 北出さん,よろしくお願いします。

 (札幌のオリンピック会場)
【北出清五郎アナ】 世界中の青空を集めたような,雲一つない澄み切った今日のこの札幌の青空に,北海道警察本部そして札幌市消防局音楽隊のファンファーレが高らかに鳴り響きます。1972年の第11回大会から50年ぶりに札幌にオリンピックが帰ってきました。

(選手入場)

 北海道の大雪原に繰り広げられる若人のスポーツの栄光を讃えた行進曲・大会行進曲にのって,選手団が入場してきました。
 まず先頭はギリシャ。常にオリンピック入場行進の先頭に立つ栄光の国。オリンピックの故郷・ギリシャ。ナショナルカラーの青と白の取り合わせが冬の大会を象徴しているようです。
 旗手は3世ゲオルゲ・バルセロス君。1964年の東京大会の時のおじいさんに続いて,オリンピアから日本への聖火リレーの第一走者,そして入場行進の旗手を勤める誉れのゲオルゲ・バルセロス君です。

 (以下,各国選手団の入場が続く)

 そして入場行進の最後を飾るのは,ホスト国・日本。元金メダリストの笠谷大会審判委員長以下,役員・選手総勢300人の入場に場内の歓声が高まります。旗手は二宮。誰もが再起不能かと思った5年前のあの大事故から奇跡の復活を成し遂げ,旗手として選手団の先頭を歩く二宮。メダル獲得が期待されています。

【解説者・桜井将】 北出さん。その二宮選手ですが,既に今大会限りで引退を決めていますね。
【北出アナ】 そう言えば,二宮選手は桜井さんのかつての教え子でしたね。
【桜井解説者】 ええ。でも,いろいろな人たちに支えられながら,よく蘇ってくれましたよ。
 あっ。今,目に光るものが見えましたね。
【北出アナ】 カメラが今,スタンドに切り替わりました。
【桜井解説者】 二宮選手のお父さんと婚約者の山川レイコさんですね。2人とも,時として挫折しそうになったこともあったであろう二宮選手をよく支えてくれました。
【北出アナ】 そうした人たちのためにも,是非,ここで有終の美を飾って欲しいものです。

 (選手の整列が終わり,IOC・JOC代表の挨拶も終わって)

 開会宣言に続いては,オリンピック旗の入場です。
 ただ今,スタンド正面に,オリンピック賛歌を歌う平井賢さんと柴咲コウさんと一緒に,岩城宏之さんがとても90歳とは思えない軽やかな身のこなしで登場です。岩城さんがN響の指揮台に立つのは何年ぶりでしょうか。
 1896年の第1回アテネ大会で演奏された後,長く埋もれていたオリンピック賛歌ですが,N響によって再発見され,1958年のIOC総会で演奏されて以来,開会式に欠かせない曲になりました。

 (岩城宏之のタクト一閃,オリンピック賛歌が流れる)
(ステージ上には平井賢と柴咲コウ)

 ♪ 大空と大地に精気あふれて 不滅の栄光に輝く
 高貴と真実と美をば創りし 古代の御霊を崇めよ
 すべての競技に奮い立てと
 緑の枝の栄冠を 目指してここに戦う者に
 鉄の力と新たなる精神を与えよ
 森山も海原も 今こそ煌めく
 深紅と純白の神殿に
 世界の国民(くにたみ) 四方の国より
 聖なる園に 集い来るは
 古き昔の永久なる精神の 御前にひれ伏すためぞ
(作詞コスティス・パロマ:作曲スピロ・サマラ)

 安藤美姫さん,上村愛子さん,岡崎朋美さん,荻原健司さんたちの手によって,ゆっくりと場内を一周したオリンピック旗が正面ポール前に到着し,北海道警察の人たちに引き継がれました。センターポールに今,50年前と同じように,高々とオリンピック旗が翻ります。
...2005/03/24(Thu) 17:59 ID:FjstThm.    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
朔五郎さん、にわかマニアさん、たかさん
オリンピックの旗手が二宮カズナリ選手であれば、彼の実家である「海の時計」からも実況を入れましょうか?
こちらのレポーターはスポーツキャスターになった天宮ヒカリ、特別ゲストはここ「海の時計」の常連客だった現NYヤンキース・久仁見ヒロ投手でいかがでしょうか?
(こちらの実況は恐らく某国営放送ではなく、どこかの民間放送局になりそうですね。多分T○Sだと思いますが。)

裏設定としては、冬場はヒロがニノについて自主トレし、夏場はニノが渡米してヤンキースタジアムでヒロと一緒にトレーニングしていたとか・・・

ちょっと待った!古河ハルカの立場はどうなる?

※録画した「H2」の最終回をまだ観てないので、こちらの結末をまだ知りません。アズがタクの作品を割らないか冷や冷やしながら「優しい時間」の方を先に観てました・・・
...2005/03/24(Thu) 23:29 ID:x2oTAGb6    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
海の時計 2022年・冬 (後編)


澄みきった青空の下、2022年札幌冬季オリンピックが開幕した。
日本選手団はメダルラッシュに予感に包まれていた。
完全に復活した「ニッポン飛行隊」、ノルディック複合の荻島兄弟、「安藤美姫の再来」と呼ばれる女子フィギアスケートの朝倉南、男子スピードスケートの鉄人・麿六介など、そうそうたるメンバーが名を連ねている。
そんななか、開幕直後に行われるモーグルでメダルを獲得し、ムードを高めることが期待されていた。しかし、女子はメダルを逃し「やはり蜷川アズサがいれば」という空気が広がった・・・

札幌ばんけいスキー場。市内中心部から車で20分ほどの至近距離にあるが、北海道唯一のFIS公認モーグルコースがあることで知られている。

2022年札幌冬季五輪、フリースタイルスキー・男子モーグル。 
二宮一成は予選を3位で通過し、決勝に進んだ。
真っ青な空。この瞬間、たぶん世界で一番青い空だろう。
高校時代、二人で練習していた時のような。

残るはあと3人のみ。
ニノがスタートラインに立つ。
軽く目を閉じる。
脳裏に浮かぶのは富良野スキー場・・・そして飯綱高原スキー場・・・今まで過ごした日々。
目を見開く。唇を噛み締める。

風の中から声が聞こえる。
――― 行けーっ、ニノ!

アズサ? レイコ?

意外なほど静かにニノはスタートし、次の瞬間凄まじい勢いで加速した。


アナ『さあ、二宮スタート。おお、速い』
解説『いいですよぉ、攻めてます』
アナ『さあ、第1エア・・・720アイアンクロス・・・』
解説『よーし、高い・・・着地も決まった』
アナ『・・・ミドルセクション・・・スピードはまったく落ちない』
解説『行け、攻めろ、行けぇぇぇっ』
アナ『・・・注目の第2エア・・・何が来る、ああっ、コークスクリュー1440だっ、大きーい、着地も決まったあ』
解説『うわあ、世界初!』
アナ『さあ、あとはゴールまで・・・見事なターンだ』
解説『速い、速いっ』
アナ『今、フィニッシュ・・・右手を突き上げた』
解説『すっごい、ニノ、すごい・・・ウワァ・・・』

アナ『今、得点が出たあ、28.94、28.94、信じられない高得点! ここまでもちろんトップ。大きくリードしました・・・この時点でメダル確定!』
解説『うわあぁぁ・・・やったあ、やったあああ』


桜井の父、和寿は身重の長男の嫁を気遣って声を掛けた。
「アズサ、気分はどうだい・・・二宮君、よくやったねえ」
「ええ、素晴らしい滑りでした・・・」
その時、テレビの映像がニノの優勝を伝えた。
「あ、パパが映ってる」
サチコが叫ぶ。
画面には、ニノに駆け寄る桜井の姿が映っていた。

ニノが笑っている・・・
ニノ・・・レイコさん・・・ありがとう
生きててよかった
あの時、死ななくてよかった
ほんとに、ありがとう・・・

「ママ、泣いてるの?」
「・・・ううん」
「ねえ、ママ。サチコ、必ずママをオリンピックに連れていくから、その時は応援に来てね」
「うん、楽しみにしてるね。でも、それはママの夢じゃないよ。サチコ自身の夢なんだよ。ママのためじゃなく自分のために頑張って・・・だから、サチコが、もっと大切なものを見つけたら無理しなくていいんだよ」
「ううん・・・」
アズサはサチコの髪を撫でながら微笑んだ。
「ところで、サチコはどの種目をやるの?」
「滑降」
「か、滑降? ねえサチコ、あれはちょっと恐いから別の種目にしたら?」
「ママだって恐いことやってたでしょ?」
「まあ、そりゃ・・・」
アズサは苦笑いするしかなかった。
「モーグルじゃ絶対ママにはかなわないもんねー。だから別のにするの」
「サチコ・・・」
「ママはいつまでもいつまでも、サチコの憧れのヒロインだよ。ママ、かっこいいよ・・・それにしても、どうしてパパが、こんなにキレイなひとと結婚できたんだろう・・・」
「パパはね、真面目でしょ? だから未成年者には絶対手は出せないって言ってね、ママのことは女性だと思ってなかったのよ」
「へえ」
「だからね、20歳になった時にママのほうから言ったんだよ。お付き合いしてください。そして、いつかサチコのママになりたいですって」
「ええっ、ウソだ、絶対信じられない」
アズサは優しく笑いながら言った。
「サチコも大きくなったら、きっとわかるよ。パパがどんなに素敵な男性かっていうことが」
「そうかな・・・あ、ママ、お腹、また大きくなったね」
「お医者さんで調べてもらったらね、男の子だって」
「今度はサチコがスキーを教えてあげる・・・でも二宮選手が金メダル獲った年に生まれてくるから《二宮の再来》とか呼ばれるすっごいヒーローになるかもね」
「そうだね」
アズサは遠くをみるような目をした。
「でもママはね、サチコもこの子も、ただしあわせになってくれればそれでいいんだ。ヒーローじゃなくてもヒロインじゃなくても、笑った顔をいっぱい見せて欲しいの。ママはそれが一番うれしいんだよ」


イルミネーションが輝く街角にニノは立っていた。
大型のテレビ画面に、金メダルを獲得したニノの演技、表彰式そしてインタビューが繰り返し映し出されていた。
その背後にレイコがそっと近づく。
「みんな、捜してるよ」
「うん」
ニノがメダルを握り締める。
「これが、これがアズサの夢だった」
「アズサさんに見せに行こうね・・・」
「・・・うん」
「やっと笑って会えるね」
「ああ」
「ねえ、ニノ。これでもう全部終わるんだよ。今度は・・・今度は自分がしあわせになることを考えていいんだよ」
ニノはイタズラっぽく笑うと、いきなりレイコの首にメダルを掛けた。
「あっ」
レイコは一瞬頭の中が真っ白になったが、ハッと気付いて、あわててメダルをコートの下に隠した。
「もう、びっくりさせないでよ。周りの人に気付かれたらどうするの」
その目の前に1枚の紙が差し出された。
「あ・・・」
「レイコ、ここにサインして。今度はオレがレイコをしあわせにしたい・・・そうさせてくれ」
「・・・・・」
「帰ろう・・・宮浦に。海の時計に」
大型テレビの映像に、人々はまだ歓声をあげている。そんな華やかな空気に背を向け、手をつないだ二人は歩き出した・・・


(エンディング曲 / 明日)

ずっとそばにいるとあんなに言ったのに
今はひとり見てる夜空はかない約束

きっとこの街ならどこかですれちがう
そんなときは笑いながら逢えたらいいのに

もう泣かないもう負けない
想い出を超えられる明日があるから

そっと閉じた本に続きがあるなら
まだなんにも書かれてないページがあるだけ

もう泣かないもう逃げない
なつかしい夢だって終わりじゃないもの

あの星屑あの輝き
手を伸ばしていま心にしまおう
明日は新しいわたしがはじまる

(作詞・松井五郎  作曲・Andre Gagnon)


・・・ねえ、帰ったらジャガイモの皮剥きだよ
・・・いいよ


(海の時計 2022年・冬 完)
...2005/03/25(Fri) 02:00 ID:PvSh0T4I    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
にわかマニアさん
開会式の描写、お見事です(^^)
最終ランナーは・・・とてもたのしみです。

SATOさん
海の時計は、マスターもレイコも札幌に来てしまい臨時休業中ですので「客席レポート」にしてはいかがでしょう(^^)
もちろん「海の時計の事前取材」はアリだと思います。

「大都市で冬季五輪が開けるほど積雪があるのは札幌だけ」と書きましたが、2010年のバンクーバーは人口200万人を超える大都市でした。訂正いたします。
ちなみに、開催地が決まっているのは、トリノ(2006)、バンクーバー(2010)までです。

モーグルの技で「720アイアンクロス」はスキーを交差させ、水平方向に2回転(720°)する技です。「コークスクリュー」は言葉で説明するのはちょっとムリですが、今年のW杯苗場大会の男子で「1080(3回転)」まで実現したようです。
モーグルの採点方法は複雑怪奇なのでよくわからないのですが、W杯だと、優勝スコアは27点台くらいが多いようです。

今日から、サクとアキの故郷・四国に行ってきます。3日間ほどお休みします。
次回は、香川編「木庭子町のお正月」です。3回くらいだと思います。
...2005/03/25(Fri) 04:00 ID:PvSh0T4I    

             お詫びと訂正  Name:にわかマニア
 平井さんのお名前を変換ミスにより間違えてしまいました。大変失礼いたしました。お詫びして訂正いたします。
  誤:賢
  正:堅

 ところで,点火ランナーの人選ですが,どうしましょうか。腹案がない訳ではありませんが,オーソドックスにスポーツ界から出すか,平井・柴咲を出したついでにセカチューワールドから選ぶか,はたまたH2でいくか(旗手が「皿の割れる喫茶店」でしたし)・・・
...2005/03/25(Fri) 08:27 ID:IR4fo.Vk    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
朔五郎さん
ラストの手をつないで歩き出す二人は本物の「優しい時間」に負けず劣らず素敵な終わりかたでした。

にわかマニアさん
この際だからH2でいっちゃいましょうよ。
本物の「H2」でも国見比呂がメジャーリーガーになるべく渡米しますので、こちらではメジャーリーガー・ヒロに点火ランナーをやってもらいましょう。
私が言い出した「海の時計」からのレポートは事前に取材した映像が流れるということで・・・
...2005/03/26(Sat) 00:03 ID:BMnExQcg    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:にわかマニア
 それでは,SATOさんが中継レポーター予定者のヒロ君を貸し出してくださるとのことですので,お言葉に甘えさせていただきます。
 なお,前回掲載分に誤字がありましたので,訂正と併せてアップいたします。
...2005/03/26(Sat) 04:43 ID:7Bs.ZH5I    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:にわかマニア
(東京のスタジオ)
 50年ぶりに聖火が札幌に帰ってきます。日本で4度目のオリンピック,間もなく開幕です。
 会場と中継がつながったようです。
 それでは,早速,会場を呼び出してみましょう。
 北出さん,よろしくお願いします。

 (札幌のオリンピック会場)
【北出清五郎3世アナ】 世界中の青空を集めたような,雲一つない澄み切った今日のこの札幌の青空に,北海道警察本部そして札幌市消防局音楽隊のファンファーレが高らかに鳴り響きます。1972年の第11回大会から50年ぶりに札幌にオリンピックが帰ってきました。第24回冬季大会の開幕です。

(選手入場)

 北海道の大雪原に繰り広げられる若人のスポーツの栄光を讃えた行進曲・大会行進曲にのって,選手団が入場してまいりました。
 まず先頭はギリシャ。常にオリンピック入場行進の先頭に立つ栄光の国。オリンピックの故郷・ギリシャ。ナショナルカラーの青と白の取り合わせが冬の大会を象徴しているようです。
 旗手は3世ゲオルゲ・バルセロス君。1964年の東京大会の時のおじいさんと同じく,オリンピアから日本への聖火リレーの第一走者,そして入場行進の旗手を勤める誉れのゲオルゲ・バルセロス君です。

 (以下,各国選手団の入場が続く)

 そして,入場行進の最後を飾るのは,ホスト国・日本。元金メダリストの笠谷大会審判委員長以下,役員・選手総勢300人の入場に場内の歓声が高まります。旗手は二宮。誰もが再起不能かと思った5年前のあの大事故から奇跡の復活を成し遂げ,旗手として選手団の先頭を歩く二宮。メダル獲得が期待されています。

【解説者・桜井将】 北出さん。その二宮選手ですが,既に今大会限りで引退を決めていますね。
【北出アナ】 それは残念ですね。そう言えば,二宮選手は桜井さんのかつての教え子でしたね。
【桜井解説者】 ええ。でも,いろいろな人たちに支えられながら,よく蘇ってくれましたよ。
 あっ。今,目に光るものが見えましたね。
【北出アナ】 カメラが今,スタンドに切り替わりました。
【桜井解説者】 二宮選手のお父さんと婚約者の山川レイコさんですね。2人とも,時として挫折しそうになったこともあったであろう二宮選手をよく支えてくれました。
【北出アナ】 そうした人たちのためにも,是非,ここで有終の美を飾って欲しいものです。

 (選手の整列が終わり,IOC・JOC代表の挨拶も終わって)

 開会宣言に続いては,オリンピック旗の入場です。
 ただ今,スタンド正面に,オリンピック賛歌を歌う平井堅さん・柴咲コウさんと一緒に,指揮者の岩城宏之さんがとても90歳とは思えない軽やかな身のこなしで登場し,N響の待つオーケストラ・ピットへと向かいます。岩城さんがN響の指揮台に立つのは何年ぶりでしょうか。
 1896年の第1回アテネ大会で演奏された後,長く埋もれていたオリンピック賛歌ですが,N響によって再発見され,1958年のIOC総会で演奏されて以来,大会に欠かせない曲になりました。

(岩城宏之のタクト一閃,オリンピック賛歌が鳴り響く)
(ステージ上では平井堅と柴咲コウが賛歌を熱唱)
(五輪旗が入場し,場内を一周)

 ♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪
 大空と大地に精気あふれて 不滅の栄光に輝く
 高貴と真実と美をば創りし 古代の御霊を崇めよ
 すべての競技に奮い立てと
 緑の枝の栄冠を 目指してここに戦う者に
 鉄の力と新たなる精神を与えよ
 森山も海原も 今こそ煌めく
 深紅と純白の神殿に
 世界の国民(くにたみ) 四方の国より
 聖なる園に 集い来るは
 古き昔の永遠なる精神の 御前にひれ伏すためぞ
 (作詞:コスティス・パロマ 作曲:スピロ・サマラ)
 ♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

 安藤美姫さん,上村愛子さん,岡崎朋美さん,荻原健司さんたちの手によって,ゆっくりと場内を一周したオリンピック旗が正面ポール前に到着し,北海道警察の人たちに引き継がれました。センターポールに今,50年前と同じように,高々とオリンピック旗が翻ります。

 再び静まり返った場内。聖火の到着を待っています。
 オリンピアで採火された聖火は,アフリカ・アジアの東コース,ヨーロッパ・ロシア・中国の北コース,南北アメリカ・オセアニアの西コースの3つに別れて,五大陸をリレーされてきました。
 ゲート付近から歓声があがってきました。どうやら,聖火が到着した模様です。

 今,ゲートをくぐって,聖火が入ってきました。最終ランナーは,会田タクミ君です。インター杯の陸上で期待されながら,進路妨害に遭って転倒・負傷するという悲運に襲われたこともありました。しかし,今日は,札幌市内の小学生の子どもたちに囲まれながら,楽しそうに,一歩一歩踏みしめるように場内を一周しています。
 さあ,そして,点火台の下で会田君を迎えるのは,元甲子園球児で今はニューヨーク・ヤンキースの久仁見ヒロ君です。西コースの聖火リレーでもトーチを掲げてマンハッタンを走った久仁見君。この日のために一時帰国です。
 会田君から久仁見君へ。奇しくも50年前の辻村・高田コンビと同じく,2人は同じ高校で過ごした仲です。さあ,トーチを受け取った久仁見君。一気に階段をかけ上がります。故郷の町のお寺の石段で毎日鍛えた久仁見君にとって,この階段はまったく苦にならないようです。
 さあ,点火台の前に立って,トーチをひときわ高く掲げます。若い力が点すオリンピックの火。今,赤々と燃え上がりました。場内から一斉に歓声と拍手が沸き起こります。
...2005/03/26(Sat) 04:47 ID:7Bs.ZH5I    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
にわかマニアさん
私がリクエストしたヒロだけでなく、タクミまで使っていただいてありがとうございます。

朔五郎さん
私の作品中でマサミが売ったカメラを寺尾サンが大切に使ってくれてて感無量です。あのカメラでこれからは幸せな二人を撮り続けていって欲しいです。
...2005/03/26(Sat) 21:37 ID:iroLahbc    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
「マサミのラスト・マジックショー」

2017年3月○日

マサミは涼風ホームに一人でやって来た。4月から進学のため、故郷を離れる。そのため、卒業前に思い残すことがないように、あちこち動き回っていたのである。

(玄関)
マサミ「今日は」
管理人「いらっしゃい。律子さんから聞きましたよ。今日どうしてもやりたいんだって?」
マサミ「無理言ってすみません。4月から東京行くんで、皆さんにご挨拶したくて。」
管理人「マサミさんの手品は大人気だったからね。短い間だったけど、本当にお疲れさまでした。」
マサミ「こちらこそ、お世話になりました。」
管理人「今日は地元のアマチュア劇団の予定が入ってるんですが、どうします?先にやりますか、後でやりますか?」
マサミ「劇団の皆様のお邪魔にならないようにしたいんですけど・・・前座という形で先にやらせて下さい。」
管理人「承知しました。そうそう、今日の劇団ですが、あなたと同じ学校の生徒さんもメンバーでしてね、さっき来られましたよ。」
マサミ「へー、誰ですか?」
管理人「会ってのお楽しみ・・・」

(控え室)

マサミが入って来た。
背中を向けて座っていた白拍子姿の少女がこちらを振り向いた。

マサミ「?」
少女「わかりません?マサミさん、わたしですよ。」
マサミ「・・・ハルカちゃん?」
ハルカ「はい、ハルカです。ビックリしました?」
マサミ「したよー・・・ホント、綺麗・・・(ため息)」
ハルカ「ありがとうございます。実は、わたし、素人劇団に入ってて、1ヶ月に1回ボランティアで上演に来てるんです。」
マサミ「わたしも月1回マジックショーをやりに来てたんだ。今日が最後なので、無理いって割り込ませてもらったの。」
ハルカ「すごい偶然ですよねー。わたしもさっき管理人さんから同じ学校の人が来るよって言われたんです。」
マサミ「でも、ハルカちゃんがいると知って、すごく楽しくなってきた。今日は前座でやらせてもらうから、よろしくね。ところで、ハルカちゃんは何の役で出るの?」
ハルカ「源義経の恋人・静の役です。今日は『静の舞』を披露させていただきます。」
マサミ「そう、わたしの出番が終わったら観ていくわ。楽しみにしてる。」
ハルカ「わたしもマサミさんのマジックショーを楽しみにしています。」

(集会所)

マサミのマジックショーが始まった。
鮮やかな手さばきで次々とマジックを披露するマサミ・・・。集まったお年寄りたちはマサミのマジックに釘付けになった。そして、ハルカも・・・

ハルカ『最後だからかな、マサミさん、すごい気合が入ってる・・・よーし、わたしも負けずに頑張るぞ・・・』

そして、マサミのマジックショーが終わった。

マサミ「皆さん、短い間でしたけど、本当にありがとうございました。何よりも嬉しかったのは、わたしが教えたマジックを皆さんがお家へ持ち帰って、ご家族と一緒に楽しんで下さったことです。わたしもこちらに来て、いろいろなことを教えていただきました。そして、もっともっと勉強したくて、東京の大学へ行って参ります。本当にありがとうございました。」

パチパチパチ・・・・

老人A「マサミちゃん、帰ってきたらいつでもおいで。また手品みせてよ!」
老人B「そうそう、こちらこそ、ありがとう」

マサミは感極まって涙ぐんでしまう。そこへ、静の扮装をしたハルカが花束を持ってやって来た。

ハルカ「マサミさん、お疲れさまでした。東京で頑張ってきて下さい」
マサミ「ありがとう、次の劇、頑張ってね」
ハルカ「はい・・・」


続いてハルカの劇が始まった。静を演じるハルカの可憐さに一同はまたもや釘付けに・・・そしてクライマックス、「静の舞」の場面となった。

『吉野山峰の白雪踏みわけて
 入りにし人のあとぞ恋しき
 静や静しずのおだ巻きくり返し
 昔を今になすよしもがな』

客席でハルカの演技に見入るマサミ。
マサミ『ハルカちゃん、すごい気合入ってるな。自分で言うのも変だけど、今日はヒロインのバトンタッチの日だね。ハルカちゃん、あとは任せたよ。こちらのお年寄りたちに素敵な劇を見せてあげてね。そして、可愛がっていただいてね・・・』

マサミからハルカへ「涼風ホーム」のボランティア活動は受け継がれていく・・・

FIN




静御前に関するサイトです
http://www.hachimangu.or.jp/about/history/shizuka.html

大河ドラマ「義経」のサイトです
http://www3.nhk.or.jp/taiga/cast/w_isihara_s.html

ということで、卒業イベントの第一弾を投稿させていただきました。

ハルカの演目としては、今回の静御前のほかにチアガール・水泳部・4人姉妹等が考えられますが、老人ホームで上演するような演目でしょうか?(苦笑)
本当に上演するとしたら、ヒカリ・ミオ(チアガール)レイコ・アツシ(水泳部)ジュリ(4人姉妹)に特別出演願わなければ・・・・


以前朔五郎さんがラフ案を出されていたケンとマサミの最後の会話について思案中です。「H2」第10話のひかりと比呂の場面を参考にしたいと思います。

たかさんに相談ですが、卒業式そのものの場面はどうしましょう?ハルカの目線で先輩たちを送ってもらうのも一考かと・・・
...2005/03/26(Sat) 23:08 ID:iroLahbc    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:たか
こんにちわぁ〜久しぶりです。

SATOさん
ハルカの目線というのは面白いと思います。それで行こうかと検討します。


作品がいまいち遅れ気味ですが、2,3話一気にいければ行きたいと思います。
...2005/03/27(Sun) 17:41 ID:NsdmIxuM    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
たかさん
2〜3話一気に来るのを待ち構えております。
ハルカの見た卒業式も楽しみにしてます。

私がやりたい卒業5部作として

1.「マサミとハルカのダイアリー」(パート4投稿済)
2.「マサミのラスト・マジックショー」(投稿済)
3.「アキとマサミ(仮題)」(ごろさんの案をベースに考えます)
卒業式をはさんで
4.「ケンとマサミ(仮題)」(朔五郎さんの案をベースに、H2の比呂とひかりみたいに演出したいと思います)
5.「マサミの旅立つ日」(パート3投稿済)

ということで、未完成の3・4では「セカチュー」というよりはむしろ「H2」の雰囲気に近くなりそうですが、楽しんで青春ストーリーを作りたいと思います。
...2005/03/27(Sun) 21:15 ID:O/sMkasA    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:ふみ@管理人
こんにちは、Part5突入おめでとうございます^^
Part4を過去ログに送らせてもらいましたのでお知らせしておきますね。
http://www.alived.com/cgi/yyai/yyplus.cgi?mode=past_one&no=7674&pastlog=12
...2005/03/27(Sun) 21:31 ID:gxWjeQ9E    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
管理人さま
お知らせありがとうございました。
これからも、よろしくお願いします。

「四国紀行」すこしづつ書きたいと思います。
...2005/03/28(Mon) 00:17 ID:1JcnjBQk    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:たか
「節分」5
目当ての場所へたどり着いた一同

ヒデオ「ん?ここは・・・」

アツシ「どうした?」

ヒデオ「知り合いがいたようないなかったような」

アツシ「まぁ、いいじゃねぇか」

ハルカ「じゃ、早速始めようか」

ヒカリ「鬼を決めないといけないんじゃない?」

ヒロ「んならジャンケンだろ」

一同「じゃーんけーん、ホイ」

アツシ「かぁ〜俺か」
見事な一発負けを喫したアツシが鬼をやることになった

ハルカ「じゃーアツシ君が鬼で」

ヒカリ「はい、お面」

アツシ「がぁ〜」

ハルカ「鬼は〜外〜」アツシに向かって豆を投げ

ヒカリ「福は〜内〜」社に向けて豆を投げる

ヒカリ「ヒロも投げなきゃダメよ」

ヒロ「っつったってなぁ、ヒデオ」

ヒデオ「鬼は〜外〜」

ヒロ「・・・・・」

アツシ「がぁ〜」ヒロに向かって突進する

ヒロ「鬼は〜外〜」本気で豆を投げるヒロ
すると社務所の方から声が

顕浩「コラ、うるさいぞ、静かにしろ」

ヒロ「あ、すみません・・・って、あ」

顕浩「ヒロじゃねぇか」

ヒロ「何してんだ?、こんなトコで」

顕浩「何って、うるさい人を注意してるんだが」

ヒロ「ああ、すまんすまん」

ヒデオ「誰?」

ヒロ「俺と同級生の中川顕浩だよ」

ヒデオ「ほほう」

顕浩「あんたが立花ヒデオか」

ヒデオ「そうだよ」

顕浩「すげーバッターだなぁ」

ヒデオ「まぁ、どうも」

ヒカリ「野球に興味があるの?」

顕浩「あぁ、中坊ん頃まではやってたんだけどな」

ヒロ「ヒデオ、あいつだよ、松崎東中の天才セカンドだよ」

ヒデオ「あぁ、一番キレイな守備をやってた奴か」

アツシ「数々の内野守備を見てきたが、あんだけ上手いセカンドはいないと思ったなぁ」

顕浩「天才だなんて、あんたらに比べりゃ全然だよ」

ヒロ「どうして高校で野球しないんだ?」

顕浩「親父がさ、どうしてもだめだって」

ヒデオ「どうして?」

顕浩「坊さんの修行があるんだ」

ヒロ「お前が入ればウチはまだ上に行けるぞ」

アツシ「なぁ、考えられないか?」

顕浩「何度も話したんだけどな。どうしてもダメって」

ヒロ「そうか・・・」

顕浩「必要としてくれるのはありがたいんだけどな」

アツシ「まぁ、お前ならいつ入ってもレギュラーだよ」

顕浩「はは・・・とりあえず、ウチじゃうるさいのはダメなんだ。他でやってくれな」

ヒロ「あぁ、んじゃ、またな」

顕浩「おう、また明日」

ハルカ「野球部はいつでも大歓迎ですよ」

顕浩「サンキュ」

ヒカリ「どうするの?これから」

ハルカ「今日は解散にしましょうか」

ヒデオ「仕方ねぇもんな」

ヒロ「じゃーな古河、ヒデオ、アツシ」

ハルカ「バイバーイ」

ヒロ「さて、帰るか」

ヒカリ「襲われないようにしっかり守ってよ」

ヒロ「お前を襲う物好きはいねぇよ」

ヒカリ「まったく」

ヒデオ「・・・・・・・・」




「節分」完

中川顕浩 ナカガワアキヒロ
ボウズの息子。中学まで野球をやっていたが、高校では修行の為、野球ができない。本心はやりたいようだ。密かに古河ハルカに思いを寄せている。

とりあえず、「面白いお経を読む坊さん」はボウズそのもので、息子は、「H2]の柳的存在にしてみましたがいかがでしょうか?
修正点等あれば言ってください。
...2005/03/28(Mon) 19:41 ID:ve97YfNc    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
たかさん
ほほう・・・ボウズの息子でしたか?
柳クン的キャラでいっちゃいましょうよ!
となると、ボウズを脅迫して彼は野球部に入部することになるんでしょうか?
...2005/03/28(Mon) 23:05 ID:9pcuPkEk    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:にわかマニア
>ボウズの息子。高校では修行の為、野球ができない。本心はやりたいようだ

 龍谷や駒沢など,仏教系の学校で野球部の強いところもありますから,野球を続けさせてあげたいですね。
...2005/03/29(Tue) 21:28 ID:4iMWbhu.    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:グーテンベルク
 こんばんは、グーテンベルクです。ついにパート5突入ですね。おめでとうございます。みなさんの作品を本にしたらどれくらいの分厚さになるのだろうかと考えることがあります。それに、質も素晴らしい上にここまで書けるなんて凄いと思います。この作品、これからも楽しみながら読んでいこうと思います。
...2005/03/29(Tue) 21:43 ID:np/rWV/Q    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
グーテンベルクさま
感想ありがとうございます。
このスレッドを丸々プリントアウトしたことがありますが、200枚近くなりましたよ。

モトカリ主演の朝ドラを観ました。
ソフトボール(野球)にピッチャーのエラーで負け・・・
ついこの間「H2」で観たような場面が出てきました(笑)

ということで、本物の朝ドラが始まったので、こちらのユイ編も再開しなければ・・・(焦)
...2005/03/29(Tue) 23:57 ID:KFpLAVvA    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
皆さんこんばんは。
実は4/1で転勤になりますので、ちょっとバタバタしております。
四国紀行もなかなか書けませんが、おおよその行程は

1日目
松山空港〜愛媛県庁(映画版の病院)〜松山市駅〜大三島宮浦〜今治〜松山

2日目
松山〜宇和島(サクとアキの通学路、アキの道、三島神社、城東中学校、城南中学校、喫茶店・城下町など)〜高松

3日目
高松(レンタカー)〜庵治(桜八幡神社、夢島の見える海岸、王ノ下、庵治ええことフェスティバル)〜屋島〜高松空港

なるべく早く書きます(^^;;;


グーテンベルクさん
励ましの言葉、ありがとうございます。
これからも、頑張ります。
...2005/03/30(Wed) 02:01 ID:vd68W3e6    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
アナザー・ロケーション 〜 今治市大三島町宮浦へ


3/25(金)
朝10時、松山空港着。愛媛県庁に向かう。前回入れなかった県庁舎本館へ。
受付の若い女性に
「あの、映画のロケで使われたところ、見学させて頂いてよろしいですか?」
「はい。その左側のほうですよ」
どうやら、結構同じようなファンが来るらしいです。
本来、今日は宇和島に行く予定だったが、あまりにも寒く、気分が落ち込んだので、今日はバス旅行で「宮浦」に行くことにします。
松山市駅前11時30分の特急バスで大三島へ。
途中「今治近郊」を通過する。田んぼが広がり、その中を細い道が走っているところが「宮浦(松崎)」に似ているかもしれない。
さて、たどりついた大三島には大山づみ神社という大きな神社があり、その近くの浜が「神社の入江=宮浦」ということらしいです。

宮浦港はこんな感じです。
http://www.netcrew.co.jp/shimanami2/shimanami/island/miyaurako.html

後方に緑の岬のような場所が見えていますが、「宮浦(松崎)」でマリーナがあったところ(亜紀が朔を抱きしめた場所)の雰囲気にちょっと似ています。
ただ、防波堤が見当たりませんでした。
この日はとにかく寒くて、食堂の中ではストーブが赤々と燃えていました。
...2005/03/31(Thu) 02:21 ID:.hohifUk    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:hiro
宮浦港・・・まさに「あなば」ですね。
(リンクに飛ばれた方はおわかりになるかと)
す、すみません・・・<(_ _)>
...2005/03/31(Thu) 03:17 ID:jwFS9BvY    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
ユイ編再開です。

連続ネット小説・ユイの細腕奮闘記25
(ノリコのリハビリ・前編)

2016年11月○日

(稲代総合病院・診察室の前)

腰を痛めて入院中のノリコはいよいよリハビリに入ることになりました。今日は佐藤先生からプログラムの説明を受けることになっていたのです。順番待ちをしていたところへユイがやって来ました。

ユイ「いよいよリハビリなんだね。頑張って歩けるようになろうね。」
ノリコ「うん・・・でも、すごく痛いみたいだから、ちょっと不安なんだけどね・・・(不安顔)」
ユイ「そうか・・・そうだよね。あたしなったことないからどんな痛さかわからないよ・・・ゴメンね、お母さん。」
ノリコ「あんたが謝ることないよ(苦笑)」
ユイ「でもどうしたのかな。なかなか呼ばれないね。」
ノリコ「急患が入ったみたいなの。」

(診察室の中)

画像を見ている佐藤医師。
患者は男子高校生、そして女子高生が付き添っていた。

佐藤医師「ウーン・・・これは半月板損傷だよ。」
女子高生「え、そんなに悪いの?」
佐藤医師「まずは様子を見ながら、リハビリをやって行こう。場所から考えると手術の必要はないと思う。」
女子高生「叔父さん、お願い、久仁見くんを治してあげて・・・」
佐藤医師「ハルカちゃん、そんな心配しないで。久仁見くん、これから一ヶ月程度は練習を休んで、リハビリに専念してもらうよ。丁度オフシーズンだし、今は徹底的に治すことを考えよう。」
ヒロ「あの、入院するんですか?」
佐藤医師「その必要はないよ。膝にギブスをしてもらうが、放課後に来てくれればいい。足の筋肉が弱るのが一番厄介だからね。」
ヒロ「はい」
ハルカ「叔父さん、お願いします。」
佐藤医師「リハビリを担当するインターンが来るから、ちょっと外で待っててくれないか」

診察室から佐藤医師・ヒロ・ハルカが出てきた。

ユイ「あれっ、ハルカちゃん?」
ハルカ「ユイさん、今日は。実は久仁見くんが練習中に膝を痛めて、叔父さんに診てもらってたんです。」
佐藤医師「仮屋さん、飛び込みで急患が入りまして、申し訳けありませんでした。」
ノリコ「私は構いませんが・・・(ハルカとヒロを見て)ユイと同じ学校の生徒さん?」
ユイ「そうなの。1年生の古河ハルカさんと久仁見ヒロ君。野球部のマネージャーとピッチャーよ。」

ハルカとヒロがノリコにお辞儀をした。

ノリコ「ユイの母です。今日は。」
ユイ「ハルカさんはね、この前うちの店で買い物してくれたのよ。」
ノリコ「わー、どうもありがとう」

ハルカ『ユイさんのお母さんって若い!』

ユイ「ハルカちゃん、佐藤先生のこと、叔父さんって呼んでたけど・・・?」
佐藤医師「実は、私の姪っ子なんですよ。いくら身内とはいえ、飛び込みの急患というのはあまりやりたくないんですけどね(苦笑)」
ノリコ「でも、ユイの知り合いの叔父様だとわかって、心強くなりますわ。」

笑顔で語りあうノリコ・ユイ・ハルカ・ヒロ・佐藤医師。そこへ若いインターンが走って来た。

インターン「佐藤先生、ただ今参りました。」

ヒロ『(インターンを見て)ヒデオ?』

佐藤医師「紹介します。久仁見くんと仮屋さんのリハビリを担当する・・・」
インターン「瀬戸マサキです。お二方のリハビリを担当させていただきますので、よろしくお願いします。」
佐藤医師「瀬戸君、久仁見くんを頼む。仮屋さん、私の方からこれまでの経過を説明いたします。」

マサキがヒロをリハビリ室へ連れて行こうとしたら・・・

ノリコ「あの、もしよろしかったら、私、久仁見くんと一緒にリハビリをやりたいんですが」
ユイ「お母さん、何言い出すの?」
ノリコ「一人でやるよりは仲間がいた方が心強いですし、苦しくてもお互い励まし合いながら、早く治そうって、前向きな気持ちになれると思うんです。」
佐藤医師「瀬戸君、君はどう思う?」
マサキ「前向きにリハビリに取り組んでいただけるなら、いいと思いますが。」
ハルカ「久仁見くん、どう?」
ヒロ「(ノリコに向かって)よろしくお願いします」
ノリコ「こちらこそよろしく」
佐藤医師「一度に二人の患者さんを抱えて大変だろうが、頼むよ」
マサキ「はい、任せて下さい。お二人が必ずよくなるよう、全力を尽くします」


(続く)



瀬戸マサキ
稲代総合病院インターン。ノリコとヒロのリハビリを担当する。見た目が立花ヒデオとそっくりで、ヒロは危うく人違いするところだった。

古河ハルカ
佐藤先生の姪っ子。稲代総合病院の古河院長の娘でもある。(新たな設定を追加しました)


※朝ドラに加えて「あ○くる○い」からもキャラを借りてきました。ハルカとヒロは新旧朝ドラキャラの共演を盛り上げるための友情出演ということで・・・(^^)

※先日まで投稿していたhA編の続きとしてお読み下さい。

※ハルカの父・古河院長の登場場面があるかどうかまだ未定ですが、登場した場合はどなたに演じてもらいましょうか?今のところ、竜雷太さん、石坂浩二さんあたりが候補です。
...2005/03/31(Thu) 23:55 ID:iUG8NdGs    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:たー坊
ヒロが「半月板損傷」ですか・・・。
私も同じ怪我で悩まされています。それも、同じ野球で。軽症であることを祈ります。

毎回楽しみにしております。各作品の質の高さにはいつも感心しています。これからも楽しみにしています。
...2005/04/01(Fri) 23:51 ID:GUQ5Rf72    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
たー坊さま
感想ありがとうございます。
同じ故障を抱えていらっしゃるとは・・・気が気でないですよね(汗)

プロ野球でも、昨年パリーグの三冠王に輝いた松中選手がヒザに故障を抱えています。(前の年の日本シリーズでは本当に痛そうにしていました)
古くは阪急の大エース・山田投手がキャンプ中にヒザを故障しながら、開幕戦のマウンドに立ち、そのシーズンに18勝をあげています。
ヒロもこんな実例を知っているはずですから、ノリコと励まし合いながら故障を克服するでしょう。
...2005/04/02(Sat) 00:52 ID:bsIewETc    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:にわかマニア
 負傷した球児と彼を励まし支える恋人と言えば,大会歌「栄冠は君に輝く」の作詞者である加賀大介さんもそうでしたね。足に重症を負い,選手生活は断念したものの,白球を追う夢は絶ち難く,大会歌公募に際して婚約者・道子さんの名前で応募されたというエピソードが語り継がれています。
 なお,甲子園の晴れ舞台に備えて,実況の植草貞男アナ(ABC)も待機させております。
...2005/04/02(Sat) 01:36 ID:vumZX4Mw    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
サクとアキのふるさと、宇和島へ


3/26(土)
松山駅から朝一番の宇和島に乗ります。
途中、内子、大洲といった美しい街並みが残る町を通ります。特に内子は「セカチュー2」の主人公・大木健三郎の命名の由来となった(?)ノーベル賞作家・大江健三郎氏の出身地でもあるため、素通りするのは残念です。
駅のコインロッカー(サクがアキの着替えを隠しておいた場所)にバッグを入れます。
このコーナーは駅前の南側にあります。アキはトイレでパジャマから着替えたわけですが、このトイレは駅前の北側にあります。
1992年頃と駅の構造が変わっていなければ、アキはパジャマの上にカーディガンを羽織った「目立つ」格好で、駅正面の一番人目の多い場所を横切ったことになります。切羽つまった状態で、そんなことを気にする余裕もなかったのだろうかとちょっと心が痛みました。
観光協会で自転車を借り、二人が通っていた東高校へ。お弁当を食べながら「半世紀の恋」の話をした中庭を校門の外からのぞきます。
そこから、喫茶店「城下町」の前の道を進みます。これが二人の通学路です。道の途中に造り酒屋があり、土地柄なのか鮮魚店や仕出し屋さんが数多くみられます。道の幅といい、雰囲気といい、二人が通った道にピッタリです。
警察署裏のアキの家(建物は特定できません)付近から国道を渡り、通称「アキの道」に入ります。アキが自転車で走ったのにふさわしい、静かな小道です。
やがて、右手にこんもりとした丘が見え、それに沿って道が左にカーブしています。丘の中腹に、小道の手すりが見えますが、サクはそこから自転車をこいで来るアキの姿を見ていました。
そして、石段の上り口に着きました。この石段の一番上で二人は初めてキスをしました。
このあと、サクが通ってきた川沿いの道を進み、城東中学校へ。一般的には、ここがラストシーンの場所で、桜吹雪の中、サクは散骨したことになっていると思います。
しかし、実際に行ってみると、ここには桜の木は無いように見えました。また「棒登り」もありません。
前々から「棒登り」は小学校にあるもので、中学校には無いのではと思っていたのですが、城東中学校にはやはりありませんでした。
それではと思い、それほど離れていない城南中学校に行ってみます。ここは東高校のすぐ近くです。
こちらには「桜並木」とまではいきませんが、桜の木がありました。また、隣りの小学校と幼稚園の敷地内にはそれらしき遊具も見えます。
やはり、ラストシーンの場所はこちらなのではないだろうかと思いました。
それから、喫茶店「城下町」でコーヒーを賞味し、駅前に戻りました。
お昼に食べた「鯛めし」は美味しかったです。
日程を変更したため、それから高松への大移動になりました。
またも今治付近を通過しましたが、伊予亀岡駅付近は古い街並みと海岸線が比較的残っていて、なかなかいい雰囲気でした。
...2005/04/02(Sat) 06:32 ID:wOdYnvME    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
SATOさんへ
いよいよリハビリ開始ですね。

古河院長が竜雷太さんとすると、大沢さん、ノリピーで「星の金貨」のイメージでしょうか(笑)
...2005/04/02(Sat) 06:50 ID:wOdYnvME    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:にわかマニア
 朔五郎様
 宇和島の詳細なレポートありがとうございました。
 原作の舞台や原作を宇和島弁で語った場合の一節などを紹介していた「朔太郎とアキのいる風景」のサイトが閉鎖になり,原作の舞台に触れる機会がなかなか得られないだけに,助かります。
...2005/04/02(Sat) 09:13 ID:vumZX4Mw    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
朔五郎さん
励ましありがとうございます。
リハビリの関係は一応ネットで調べてはいるのですが、実際にたー坊さんが同じケガを抱えていらっしゃるとのことで、責任重大ですね(汗)

ノリコとヒロは共にケガと闘った「戦友」という感じでしょうか?ヒロにとってのノリコは「H2」のさくらさんのような存在にしてみようと考えています。出合ったキッカケは全然違いますが、どちらもユイ(H2では市川由衣)の若い母親という点で一致してますね(ややコジツケ気味ですが)
ということで、にわかマニアさん、甲子園の中継では故障時のエピソードでノリコさんのインタビューもお願いします。

たかさん
このエピソードは2016年の11月頃を想定してますので、初詣や節分のころにはヒロは治ってますからご心配なく。ヒザに爆弾を抱えてる設定は使っていただいてもいいと思います。
...2005/04/02(Sat) 11:53 ID:lXIbEajg    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:たか
SATOさん

設定はお借りしますね。


続いてバレンタインを書こうと思ってます。

アツシを演じるのは中尾君でいいでしょうか?アキヒロは森君をそのまま起用しようと考えてます。
...2005/04/02(Sat) 18:11 ID:nI/Apluc    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
たかさん
アツシ=中尾クン・アキヒロ=森クンでいいと思います。(アツシについてはH2のマンマで考えてました)
ヒロについてはその後も度々瀬戸サンを訪れてヒザを診てもらってたということでどうでしょう?


話は変わりますが、中尾クンや鈴木えみチャンは「ウォーターボイーズ2」に出てたんですよね。(あまり真面目に観なかったのですが・・・)セカチュー本編と同じ時期に放映されていたのですが、泳吉(市原隼人)・栞(石原さとみ)・オトメ先生他魅力的なキャラがいっぱいで誰が演じてるかは二の次でした。泳吉といつも行動を共にする洋介君が中尾クンで「シンクロチャチャチャ」をやる女の子がえみチャンだったんですね。放映当時は気付きませんでした(汗)
※私の作品中でレイコの出番が途中から増えだしましたが、実はWB2に気付いてから梢のイメージで書いてました。(笑)
...2005/04/02(Sat) 21:49 ID:BljPP6Lk    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
「大空に続く道」を庵治へ


3/27(日)
今日は交通の便を考えて、レンタカーを借りました。
前日、高松市内の旅行者の広告で「チャーター便で行くエアーズロック 179,000円」というのがありました。案外安く行けるものですね。
さて、車だと高松から庵治まで30分程で行けます。
予報では雨だったのですが、意外にも薄日が射してまずまずの天候でした。
庵治町に入る手前で小さな峠を越えるのですが、登りきったところで左手に青い海が広がります。「大空に続く道」という曲にピッタリの光景です。
まず「胸、あたる?」の桜八幡神社へ。
車を進め、街並みを通り越して岬の付け根を越えると「夢島の見える海岸」です。
映画の中では、嵐の中、大人サクがバスを降りたところです。
未公開シーンで、アキがバスに乗っていたのもこの場所です。
この直線部分を通り過ぎて急坂を登ったところに駐車スペースがあり、小さなベンチがあります。
ここから見る「夢島」こと稲毛島はまさに絶景です。白い灯台があるのが「夢島」です。
さらに進むと四国最北端の「竹居観音崎」なのですが特に展望台などはありません。
その後、王の下防波堤を眺めてから、役場で開催中だった「庵治ええことフェスティバル」へ。
ここではセカチュー写真展もやっていて、サクのスクーターも展示されていました。「夢島の砂」というのを売っていました。朔五郎も「沙留の砂」の話を書いたなあ、などと思いながら、つい買ってしまいました(苦笑)
この後、屋島をドライブして、上から庵治を眺め、高松空港へ向かいました。
...2005/04/02(Sat) 23:03 ID:igrwHOKE    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
TBSの「感謝祭」では「あいくるしい」チームが映りまくってましたね。局としてリキが入っているのがよくわかりました。それにしても、綾瀬さんに走ってもらいたかった気が、ちょっとだけします(^^;;;

たかさんへ
いいキャラがそろってきましたね。
バレンタイン編ですか。おじさんは義理チョコの世界になってしまってるので、これはたかさんの世代でないと書けませんね(苦笑)とても楽しみです。

SATOさんへ
松中、マジで大丈夫ですか?
しかし、ライバル西武がいきなり4連敗・・・今年はSBHが独走するかも・・・

朔五郎は転勤により、新幹線通勤をすることになってしまいました。でも、今までより本を読む時間が増えたので原作本を読み返しています(苦笑)
...2005/04/03(Sun) 02:58 ID:E/k0Q59E    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
香川編、スタートします。
時計の針は、2017年の年末に戻ります。
この時点では「海の時計」はまだ「小さな喫茶店」です。


香川編〜木庭子町のお正月(その1)


2017年12月29日、喫茶店・海の時計。
「マサミ、スキー旅行の間、代わってくれてありがとう。マスター、マサミのことが気に入っちゃったみたいで、なんだかちょっと妬けちゃう」
「レイコが一番に決まってるでしょ。マスター、ずっとレイコのこと褒めちぎってたわよ」
「そんな・・・でもね、今レシピを考えてるシーフードカレーとパスタ、何となく行けそうな気がするのよ。あとは、大木水産から食材を安く仕入れられればいいな、って思ってるんだけど」
「レイコ、実はこの仕事に向いてるかもね」
「うん、キライじゃないんだ、こういうこと」
楽しそうに言うレイコ。
「ところで、旅行中、彼とはいろいろ話ができたの?」
「うん、4月に長野の会社に就職するんだって。それまで、こっちで走りこんだり、長野に練習に行ったり、半々くらいだって」
レイコはマサミに、ニノが話したことを聞かせた。マスターやレイコとこの店で
仕事をしたいと思っていること。でもその前に、アズサに代わってその夢を実現し「後片付け」をしたいことなど・・・
「じゃ、遠恋になっちゃうんだ」
「うん」
レイコはうつむいた。
「でも、私はこのお店とマスターが好きだから、ここで待ってる」
「頑張ってね、淋しいだろうけど」
「・・・ありがとう。あ、マサミは明日出発?」
「うん」
「いいなあ、彼の両親に気に入られて」
「レイコだって」
マサミが笑う。
「私は・・・彼の方がまだ私のこと恋人だと思ってないもん」
「私、彼に会ったことないからわからないけど、きっとレイコの存在はどんどん大きくなってきてると思うな。だって、自分の将来のことや《後片付け》のことを話したんでしょ?それはレイコと一緒に生きて行きたいってことだよ。まだ無意識かもしれないけどね」
「そうかな・・・でも、マサミはうれしそうだね」
「うん、でも緊張してるよ」
「電車で行くの?」
「そう。彼は一旦東京に戻ったんだけど、新幹線の中でおちあうことにしたんだ」
「三島から乗るの?」
「うん。この間開通した新線で三島まで出ようと思って」
「いいなあ、彼の実家までデートか」
「レイコはずっと彼の実家のお店にいるんじゃない」
「そりゃそうだけど・・・」


翌日の朝、マサミは宮浦駅にいた。
これからの数日間ミライの実家でいっしょに過ごすと思うと、緊張と期待が入り混じって気分が高まっていた。
つい、歌を口ずさむ。
「・・・シード、コンタークト、シード、コンタークト・・・」
やがて、上り列車がやって来た。マサミが席に座ると同時に発車する。

「ご乗車ありがとうございます。この列車は特急・西伊豆2号、東京行きです。ただいま宮浦を定刻どおり発車いたしました。これから止まります駅は、松崎、堂ヶ島、宇久須、恋人岬、土肥温泉、修善寺、伊豆長岡、石丸記念館前、三島、三島から東海道線に入りまして・・・」

三島で下車し、ミライが用意してくれた切符で新幹線ホームに上がる。
「今日は混んでるだろうな。よく指定席とれたよね。ええと、12号車か」
遥か遠くにヘッドライトの光が見え、だんだん近づいてくる。
「早く・・・早く!」
やがて、ひかり号がホームにすべり込んで来た。
もう、待ちきれず開きかけたドアから車内に入る。
「どこ?」
視線の先に、立ち上がって手招きするミライがいた。
顔いっぱいに笑みを浮かべて駆け寄るマサミ。
「おはよう!」
「おはよう、ミライ。よろしくお願いします」
マサミがペコリと頭を下げる。
「昨夜電話したらさあ、親父もお袋も、すごい楽しみにしてるぜ。マサミに会いたくてたまらないんだ」
「・・・でも、なんか怖くなってきちゃった」
「どうして?」
「私、誤解されてるんじゃないかな」
「そんなことないよ」
「ならいいけど・・・」
ちょっとの間の沈黙。なんとなく落ち着かず、お互いモジモジする。
そんなとき、車内販売がやって来た。
「あ、すいません、カルピスウオーター1本。マサミは?」
「私はポカリスウェット」
「じゃ、あとポカリスェット1本」
ミライは小銭を販売員に渡し、カルピスとポカリを受け取った。
「はい、ポカリ」
「ありがと」
ミライはキャップをまわして外し、ひとくち飲んでいった。
「スキとキスの前に、か」
「あ、カルピス飲むたびにそんなこと考えてるの?なんかイヤラしい」
「どうして?」
「なんとなく・・・」
「だって、甘くて爽やかで、イメージ的にピッタリじゃない」
「そ、その・・・私たちの初めてのキスって・・・どんなだったっけ?」
言いながら赤くなるマサミ。
「どんな、って・・・ええと、とっても温かくってやわらかで、ちょっぴり塩・・・」
「ちょ、ちょっと・・・そんなにリアルに表現しなくても・・・」
「そっちが言い出したことだろ」
「まあ、そうだけどね」
「だいたい、なんでそんなこと言い出したんだよ」
「うん、実はね」
マサミはバッグの中から一冊の小説本を取り出した。
「・・・想像できる?・・・落ち葉の匂いのするファーストキスって・・・」


(続く)
...2005/04/04(Mon) 01:02 ID:.s6UZERE    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
みなさまへ
「西伊豆2号」は全くのお遊びですので、お怒りになりませぬようお願いいたします(笑)
なお、この物語では、書き始めの時「愛媛ナンバー」や「市外局番」に気付かず、宮浦は静岡県伊豆地方にあると設定してしまいました。その点ご承知の上お読みください。
...2005/04/04(Mon) 01:18 ID:.s6UZERE    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
ユイ母・ノリコ活躍編です。
連続ネット小説・ユイの細腕奮闘記26
(ノリコのリハビリ・後編)

ノリコとヒロのリハビリが始まった。

(リハビリ室)

マサキ「今日はここまで。お二人ともお疲れさまでした。」
ヒロ「ふぅ〜」
ノリコ「痛かった〜(涙)」
マサキ「痛いし、苦しいかもしれません。でも、治ったときのことを考えて頑張りましょう。」

(病院の廊下)

ノリコ「ヒロ君、来年の夏は甲子園行けそうかな?」
ヒロ「そりゃ、行きたいですよ。だから、早くヒザを治したいですよ。」
ノリコ「そうだよね。お互い頑張って早く良くなろうね。」
ヒロ「でも、いつまでこんな苦しいリハビリ続けなきゃいけないんですかね?良くなってるのかな・・・」
ノリコ「うーん、確かにあたしも不安になる。でもね、ヒロ君が頑張ってるところ見ると、自分も頑張らなきゃと思う。瀬戸さんを信じてついて行こうよ。」
ヒロ「そうですね・・・」
ノリコ「また明日ね、バイバイ!」
ヒロ「さよなら」

そして、来る日も来る日もリハビリが続く。そんなある日・・・

ノリコ「ヒロ君、どうしたのかしら?」

その日、ヒロは来なかった。そして次の日も、そn次の日も・・・

ヒロが来なくなって4日目。

ノリコ「瀬戸さん、ヒロ君何かあったんでしょうか?今日で4日連続ですよ。」
マサキ「ええ、心配ですよね。」
ノリコ「私、捜してきます。」
マサキ「僕がクルマ出しますから、一緒に捜しましょう。」

(宮浦の街中)

ノリコはマサキが運転するクルマでヒロを捜しに出かけた。ユイが帰ってくるのを見てノリコが声をかけた。

ノリコ「ユイ!」
ユイ「お母さん?」
ノリコ「ヒロ君知らない?」
ユイ「病院行ってるんじゃなかったの?」
ノリコ「来てないのよ。それで瀬戸さんと一緒に捜してるところなの。」
ユイ「うそ!」
ノリコ「ちょっと乗って」

そう言ってノリコはユイをクルマに乗せた。

マサキ「彼、学校には来てるの?」
ユイ「ええ、今日も見かけましたけど。」

クルマが公園の前を通りかかった。

ノリコ「ちょっと、停めて下さい」

公園には一人でたたずむヒロの姿が・・・

マサキ「いましたね。呼んで来ます。」
ノリコ「瀬戸さん、私が彼と話します。待ってていただけますか?」

ノリコがヒロに声をかけた。

ノリコ「ヒロくん」
ヒロ「おばさん!?」
ノリコ「ヒロくんが来ないから、一人でリハビリやっててもつまんなくてさ。野球の話、いろいろ聞かせてもらいたかったんだけどな。」
ヒロ「・・・(無言)」
ノリコ「甲子園でヒロくんが投げてる姿想像してるとさ、いつのまにかニヤケてるの。知り合いがテレビで全国中継されるかと思うとね、自分まで有名人になったような気分になる。」
ヒロ「おばさん・・・」
ノリコ「私の夢はそんなささやかなものだけど、ヒロくんの夢は甲子園に出て、そのあとは、メジャー・リーグ・・・かな?」
ヒロ「はい、メジャーのマウンドに立って、物凄いバッターと対戦してみたいです(目が輝きはじめる)」
ノリコ「だったら、リハビリ頑張ろう。ここで放り出したら今までの努力が無駄になるわ。」
マサキ「久仁見くん、僕は、高校時代に剣道やってたんだけどね、君と同じようにヒザを故障したんだ。リハビリは苦しかったよ。それで音をあげて逃げ出したんだ。病院の先生から物凄く怒られた。でも、それから必死でリハビリをやって復帰出来たんだ。また竹刀が振れる、本当に嬉しかったよ。この喜びを君のようにケガをしたスポーツ選手に味わわせてあげたい、そう思って僕はこの仕事を選んだんだ。確かに苦しいだろう。でも、僕を信じてついて来てくれないか。必ずマウンドに立てるようにしてあげる。」
ノリコ「瀬戸さんもああおっしゃって下さってるんだから、行こっ」
ヒロ「おばさん、瀬戸さん、すみませんでした。もう一度やらせて下さい。」
マサキ「よし、その代わり、サボった分は少し厳しくやらせてもらうぞ(笑)」
ヒロ「はい、覚悟してます。」
ノリコ「いい度胸してるぞ」

三人がクルマに戻った。ところがユイの姿がない。その代わり、助手席にメモが置いてあった。

『私がいると久仁見くんが居心地悪いと思うので、歩いて帰ります。今日のことはハルカちゃんには内緒にしておきます  ユイ』

ノリコ「瀬戸さん、これ(メモを渡す)」
マサキ「(メモを見て笑顔でうなずく)」

マサキが運転するクルマが発車し、病院へ戻っていった。


(続く)
...2005/04/04(Mon) 23:06 ID:kEdnVf4A    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
「月光音楽団」に綾瀬はるかさんが出てましたが、面白ろかったですねー(笑)
それにしても、いきなり「セカチュー名場面集」が出てきたのには、ちょっとビックリ。
ミスチルが好き、というのは本当らしいですね。
CMも「智世(マツキヨ)」「映画版サク(ダイハツ・デミオ)」と豪華版(笑)でした。
...2005/04/05(Tue) 01:02 ID:7U9Po0TU    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:たー坊
SATO様
私もリハビリで逃げ出したくなったことが何度もありますので、ヒロの気持ちはよく分かります。結局はリハビリをこなしたので、時々、違和感があるのですがよくなりました。
以前、責任重大とおっしゃってましたが、必要以上に考えないでこれからも作品を執筆なさってください。
ヒロには、ぜひ甲子園のマウンドで全力投球してもらいたいです。

朔五郎様
香川編の続きを楽しみにしています。個人的にマサミとサクの会話は好きですね。

執筆者の皆様の作品は毎回読ませていただいています。どれも素晴らしく、参考になったり感心したりしています。
これからも期待しております。
...2005/04/05(Tue) 11:23 ID:/GGjOZTM    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:たか
「バレンタイン」1

2017年 2月14日 放課後

ジュリ「ユウタ君見なかった?」息を切らしながら話す

シホリ「さっき帰ったよ?」

ジュリ「あークソっ」慌てて走っていくジュリ

シホリ「ははーん。そういうことか」

ユイ「おーシホリ。どうした?」

シホリ「ん〜何でもないの〜」

ユイ「ジュリの奴か」

シホリ「大慌てで平丘君を探してたよ」

ユイ「あらあら。ジュリはそーいうの興味無いかと思ってたのに」

シホリ「初恋じゃないの?」

ユイ「さぁ〜?どうでしょう」

シホリ「つけてみるかい?」

ユイ「いやー・・・・今回はパス」

シホリ「何で〜?つまんないじゃん」

ユイ「勉強しなきゃ。受験生だし」

シホリ「ちぇ〜・・・」

ユイ「それより、立花君へチョコは渡すのかい?」

シホリ「なんで知ってるの?」

ユイ「やっぱり渡すんだ」

シホリ「やっぱ他校に乗り込むのは緊張するわ」

ユイ「なーにが。去年も違う高校の人に渡したじゃない」

シホリ「今年はわけが違うでしょ」

ユイ「まーねぇ。野球の名門だからねぇ」

シホリ「勉強する人はそろそろ帰ったほうがいいんじゃないの?」

ユイ「言われなくとも」にっこり笑った

ユイ「じゃーね、シホリ。幸運を祈るよ」

シホリ「はいはい、また明日ね」

続く・・・
...2005/04/05(Tue) 20:00 ID:egpEcLQc    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
たかさん
シホリが乗り込むヒデオの学校にはヒカリがいます。これは一騒動ありそうですね。

たー坊さん
ヒロは将来大リーグ入りを目指す逸材ですから、瀬戸サンの厳しいリハビリに耐えて復活するでしょう。
...2005/04/05(Tue) 22:47 ID:DNWj9cKY    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
おまけのコーナーです。


とある舞台公演の打ち合わせにて

演出の稲川由紀夫が広島出身の女優と話していた。
「悪いねえ、急に呼んじゃって」
「いえ、とんでもありません」
「マネージャーさんから聞いてる?」
「ええ、主人公の友達の役ですよね」
「そう。ヒロイン亜紀の彼氏が朔太郎。朔太郎の友人が龍之介。そして、龍之介の彼女の佐々木遥役をやってもらいたいんだ。まあ、ホントは主役の亜紀をやりたいとは思うんだけどね」
「え、亜紀のほうをやらせていただけるんですか?」
女優の顔は期待に満ち溢れた。
「ごめん、今回は亜紀役は新人の佐藤メグミに決まってしまったんだ。言いにくいことなんだけど、遥役はメグミの高校の同級生の子にしようかと思ったんだ。でも、その子、野球部のマネージャーやっててね、甲子園に行くかもしれない時期だからできないっていうんだよ。それでムリを承知で君に話を持っていったんだ。他に頼める人がいなくてね」
「そうですか・・・」
女優はちょっとガッカリした表情を浮かべたが、すぐに気を取り直して言った。
「わかりました。やらせていただきます」
「いやあ、助かったよ。引き受けてくれてありがとう。でもね、遥って子は、クラスでも美少女で誉れ高い、ということになってるんだ。君のイメージに傷はつかないと思うよ」
「はい、頑張ります」

これが後に大林アキに災いをもたらすことになるのだが、この時はもちろん、誰も予想していなかった。


たー坊様
いつもいつも、お励ましの言葉、感謝しております。
お互いに頑張っていきましょう。

SATOさん
「もーらい」
どこで出てくるか、楽しみにしております。

たかさん
バレンタイン編の展開はどうなるのでしょうか。楽しみです。
...2005/04/06(Wed) 01:31 ID:CMCE/OxY    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:にわかマニア
 朔五郎様
 いよいよ稲川監督始動ですね。
 ということは,「ベーやん」が「大丈夫か・・・,オレ」と言いながら,「汗をかきかき」登場するのも間もなくですね。
 「大林アキの災難」がたいしたことでなければいいのですが・・・

 ところで,西伊豆2号が修善寺と三島の間で石丸に停まるというのは,韮山付近に開業する新駅でしょうか。とすると,車内販売で「元祖パパさん」のタコ焼きを扱うと流行るかも・・・

 (注)
 長野新幹線開業前の信越本線の489系の「白山」や「あさま」では,ラウンジカーでタコ焼きを売っていました。
...2005/04/06(Wed) 04:55 ID:0EucPrzE    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
にわかマニア様
石丸記念館は、一種のテーマパークで、松本写真館、廣瀬家、真柴家などが再現されています(笑)
駅は新駅で、智世が追いかけた車両が留置・展示されています。テナントとしてもちろん、たこパパが入っており、車内販売も行います(笑)
...2005/04/07(Thu) 04:25 ID:IJhv9xqc    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:たか
こんばんは。

SATOさん
一波乱起こそうかと思案中です。

朔五郎さん
いつもご期待くださいありがとうございます。

私事ですが、明日から高校生になります。この先忙しくなるかも知れませんが皆さんよろしくお願いします
...2005/04/07(Thu) 20:12 ID:IsnLE47o    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
朔五郎さん
おまけ編読ませていただきました。
野球部マネージャーのハ○カは結局舞台を断ったわけですね。でも、どのようにアキに災難が降りかかるのか興味が尽きません。続きを楽しみにしています。
...2005/04/08(Fri) 00:30 ID:wTuYicpg    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
おまけのコーナーです。


とある舞台公演のキャスト発表


廣瀬 亜紀  佐藤メグミ(17) 静岡県稲代郡出身
松本朔太郎  田中光太郎(20) 香川県直島町出身

大木龍之介  山辺 孝之(20) 鹿児島県上屋久町出身
佐々木 遥  真島ミチル(20) 広島県三原市出身   


田中光太郎関連
http://www.kobe-u.ac.jp/usm/member/mitearuki/2001-05-26/photo070.html

山辺孝之関連
http://www.yakushima.or.jp/chiiki/kodomo/miyauratyu/kodo-1.html

真島ミチル関連
http://www.tako.ne.jp/~m-kankou/meisyo/miyaura/
...2005/04/09(Sat) 00:30 ID:iexND0Qc    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
たかさんへ
ご進学おめでとうございます。
「一波乱」楽しみです。

SATOさん、にわかマニアさん
大林アキのことを案じていただき、アキも喜んでいるでしょう(笑)
アキはきっと、なんとか切り抜けると思います(^^)
...2005/04/09(Sat) 00:42 ID:iexND0Qc    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:にわかマニア
 田中君は直島の出身にしたのですか。
 直島水道といえば,狭い航路に釣り船も含めて大小の船舶が密集する航行の難所で,1950年3月25日(対鷲羽丸),1955年5月11日(対第3宇高丸)と,2回も紫雲丸が衝突・沈没事故を起こしたところということが真先に浮かんできますが,舞台版では,田中君演じる人は将来,船乗りになるのでしょうか。
...2005/04/09(Sat) 13:12 ID:.EWuivmU    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:にわかマニア
 ちょっと「悪ノリ」コーナーです。
 セカチュー関連人物の名前のついた駅名シリーズ。
  松 本:篠ノ井線・長野県
  廣 瀬:「広瀬通」というのが仙台の地下鉄に
  山 田:長良川鉄道(旧越美南線)・岐阜県
  綾 瀬:常磐線・東京都
  はるか:「春賀」というのが予讃本線・愛媛県に
  森 山:島原鉄道・長崎県
  長 沢:陸羽東線・山形県
 では,お互いの相手の駅までの切符は
  松本→廣瀬(広瀬通)
   長野・大宮・仙台経由 576.9キロ 8,920円
  綾瀬→はるか
   東海道・山陽・本四備讃線・予讃本線経由
   1,015.7キロ 12,530円
  山田→綾瀬
   美濃太田・多治見・名古屋・東海道経由
   487.5キロ 7,910円
  森山→長澤
   諫早・山陽・東海・山形経由
   1,765.8キロ 18,240円
...2005/04/09(Sat) 22:51 ID:.EWuivmU    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
みなさん、おはようございます。
個人的に環境が激変したため、なかなかUPできずにおります。申し訳ありません。

それにしても「あいくるしい」に出てくる奈々という女の子、雰囲気が子役時代の長澤まさみさんによく似ていたのでちょっとビックリしました(笑)

にわかマニアさん
駅名シリーズ、力作ですね(^^)
...2005/04/11(Mon) 06:11 ID:oI8I5ZJY    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
朔五郎さん
環境が激変したとのこと、大変ですね。
落ち着いたらまた作品のUPをして下さいね。楽しみにしてます。

私は、今までの朔五郎さんとたかさんの作品を参考に、レイコのサイドストーリーを書いてみたいと思います。


レイコの高校生日記その1

○今日から高校生!

『2014年4月。今日から私は高校生だ。中学時代からの友人・ユイと一緒に宮浦高校に通う。でも、クラス分けはどうなるのだろう?ユイと同じクラスになりたい・・・』
(注)『』はレイコのモノローグです

(宮浦高校への通学路)

ユイ「レイコおはよう」
レイコ「おはよう・・・」
ユイ「どうした?元気ないぞ。」
レイコ「ユイと・・・同じクラスになれるかな・・・」
ユイ「なーんだ、そんなこと心配してたの?別のクラスになってもレイコとはいつまでも友達だよ」


○クラス分け

『ユイは明るく言うが、わたしはやっぱり心配。さて・・・』

レイコ「どれどれ・・・ユイ、同じクラスだよ、1年B組!」
ユイ「これからまた、ヨロシク!」

『よかった・・・ユイと同じクラスになれて・・・』


○部活選び

ユイ「部活何にするか決めた?」
レイコ「まだ決めてない。中学時代にやってたバレー部にしようかどうか迷ってる。」
ユイ「それいいかも。あたしはソフトボールやりたくても、もう出来ないからね。だから、今度は応援する側に回るの」
レイコ「応援って?」
ユイ「吹奏楽部に入ってさ、野球部の応援する。一緒に甲子園に行くわ。」
レイコ「でも・・・うちの高校の野球部って出ると負けの弱小チームだよ。」
ユイ「これから凄いピッチャーが入って強くなるかもしれないじゃない?」
レイコ「あんた、テレビの観すぎだよ(笑)」
ユイ「まあ、いいからいいから(言い繕っている)。ちょっと話聞いてくる。」
レイコ「あたしも、一緒に行っていい?」

『ユイにくっついて行く形で吹奏楽部の見学に行った私。それがとんでもない間違いだと気づくのに時間はかからなかった』


○吹奏楽部にて

(音楽室)

ユイ・レイコ「あのー・・・」
ユウタ「入部希望の人?」
ユイ「はい・・・」
ユウタ「そんな硬くならなくていいよ。僕も1年生だから。ところで何か楽器できる?」

『ひょっとすると聞かれるかもしれないと思ってユイと私は用意した楽器を彼に見せた』

ユイ「(音楽の授業で使うタテブエを出す)」
レイコ「(トライアングルを出す)」
ユウタ「・・・・(固まってしまった様子)」

ツカツカ・・・気配に気づいた女生徒がやって来た。

『あ・・・怖そうな人・・・』

女生徒「吹奏楽部の部長をしている谷沢(ヤザワ)シオリです。あなたたち、そんなもの出して、吹奏楽をナメテない?わが校は毎年全国大会に出場していて、今年は優勝を狙っています。生半可な気持ちだったら、入部はおやめなさい(ピシャリ)」

『うわー、来るんじゃなかった・・・』

(廊下)

レイコ「あたし、やっぱりやめとく」
ユイ「あたしは入る。あんなこと言われたら逆に必死に練習して部長を見返してやりたくなったわ。」
レイコ「そう・・・頑張ってね」


○コズエ先輩

『結局吹奏楽部に入るのはやめた。部活どうしようかな?やっぱりバレー部に入ろうかな?』

女生徒「レイコ!」
レイコ「コズエ先輩!」

『私に声をかけてきたのは鮎川(アユカワ)コズエ先輩だった。今は全日本のメンバーに入るほどの実力の持ち主。同じ高校だということをすっかり忘れてて・・・』

コズエ「バレー部入らないの?」
レイコ「入ります!」

『コズエ先輩に声をかけられただけで嬉しくて、即答する形でバレー部に入った私。スパイクが決まったときは凄い快感!高校生活が楽しくなりそう!』


(続く)


ということで、次回はマサミとの出会い編です。
...2005/04/11(Mon) 23:59 ID:DW9hy2mw    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
やっと、香川編(その2)がアップできます(^^;;
しかし、あまりに間が空いたので、その1を再掲します。


香川編〜木庭子町のお正月(その1)


2017年12月29日、喫茶店・海の時計。
「マサミ、スキー旅行の間、代わってくれてありがとう。マスター、マサミのことが気に入っちゃったみたいで、なんだかちょっと妬けちゃう」
「レイコが一番に決まってるでしょ。マスター、ずっとレイコのこと褒めちぎってたわよ」
「そんな・・・でもね、今レシピを考えてるシーフードカレーとパスタ、何となく行けそうな気がするのよ。あとは、大木水産から食材を安く仕入れられればいいな、って思ってるんだけど」
「レイコ、実はこの仕事に向いてるかもね」
「うん、キライじゃないんだ、こういうこと」
楽しそうに言うレイコ。
「ところで、旅行中、彼とはいろいろ話ができたの?」
「うん、4月に長野の会社に就職するんだって。それまで、こっちで走りこんだり、長野に練習に行ったり、半々くらいだって」
レイコはマサミに、ニノが話したことを聞かせた。マスターやレイコとこの店で
仕事をしたいと思っていること。でもその前に、アズサに代わってその夢を実現し「後片付け」をしたいことなど・・・
「じゃ、遠恋になっちゃうんだ」
「うん」
レイコはうつむいた。
「でも、私はこのお店とマスターが好きだから、ここで待ってる」
「頑張ってね、淋しいだろうけど」
「・・・ありがとう。あ、マサミは明日出発?」
「うん」
「いいなあ、彼の両親に気に入られて」
「レイコだって」
マサミが笑う。
「私は・・・彼の方がまだ私のこと恋人だと思ってないもん」
「私、彼に会ったことないからわからないけど、きっとレイコの存在はどんどん大きくなってきてると思うな。だって、自分の将来のことや《後片付け》のことを話したんでしょ?それはレイコと一緒に生きて行きたいってことだよ。まだ無意識かもしれないけどね」
「そうかな・・・でも、マサミはうれしそうだね」
「うん、でも緊張してるよ」
「電車で行くの?」
「そう。彼は一旦東京に戻ったんだけど、新幹線の中でおちあうことにしたんだ」
「三島から乗るの?」
「うん。この間開通した新線で三島まで出ようと思って」
「いいなあ、彼の実家までデートか」
「レイコはずっと彼の実家のお店にいるんじゃない」
「そりゃそうだけど・・・」


翌日の朝、マサミは宮浦駅にいた。
これからの数日間ミライの実家でいっしょに過ごすと思うと、緊張と期待が入り混じって気分が高まっていた。
つい、歌を口ずさむ。
「・・・シード、コンタークト、シード、コンタークト・・・」
やがて、上り列車がやって来た。マサミが席に座ると同時に発車する。

「ご乗車ありがとうございます。この列車は特急・西伊豆2号、東京行きです。ただいま宮浦を定刻どおり発車いたしました。これから停まります駅は、松崎、堂ヶ島、宇久須、恋人岬、土肥温泉、修善寺、伊豆長岡、石丸記念館前、三島、三島から東海道線に入りまして・・・」

三島で下車し、ミライが用意してくれた切符で新幹線ホームに上がる。
「今日は混んでるだろうな。よく指定席とれたよね。ええと、12号車か」
遥か遠くにヘッドライトの光が見え、だんだん近づいてくる。
「早く・・・早く!」
やがて、ひかり号がホームにすべり込んで来た。
もう、待ちきれず開きかけたドアから車内に入る。
「どこ?」
視線の先に、立ち上がって手招きするミライがいた。
顔いっぱいに笑みを浮かべて駆け寄るマサミ。
「おはよう!」
「おはよう、ミライ。よろしくお願いします」
マサミがペコリと頭を下げる。
「昨夜電話したらさあ、親父もお袋も、すごい楽しみにしてるぜ。マサミに会いたくてたまらないんだ」
「・・・でも、なんか怖くなってきちゃった」
「どうして?」
「私、誤解されてるんじゃないかな」
「そんなことないよ」
「ならいいけど・・・」
ちょっとの間の沈黙。なんとなく落ち着かず、お互いモジモジする。
そんなとき、車内販売がやって来た。
「あ、すいません、カルピスウオーター1本。マサミは?」
「私はポカリスウェット」
「じゃ、あとポカリスェット1本」
ミライは小銭を販売員に渡し、カルピスとポカリを受け取った。
「はい、ポカリ」
「ありがと」
ミライはキャップをまわして外し、ひとくち飲んでいった。
「スキとキスの前に、か」
「あ、カルピス飲むたびにそんなこと考えてるの?なんかイヤラしい」
「どうして?」
「なんとなく・・・」
「だって、甘くて爽やかで、イメージ的にピッタリじゃない」
「そ、その・・・私たちの初めてのキスって・・・どんなだったっけ?」
言いながら赤くなるマサミ。
「どんな、って・・・ええと、とっても温かくってやわらかで、ちょっぴり塩・・・」
「ちょ、ちょっと・・・そんなにリアルに表現しなくても・・・」
「そっちが言い出したことだろ」
「まあ、そうだけどね」
「だいたい、なんでそんなこと言い出したんだよ」
「うん、実はね」
マサミはバッグの中から一冊の小説本を取り出した。
「・・・想像できる?・・・落ち葉の匂いのするファーストキスって・・・」


(続く)
...2005/04/13(Wed) 00:38 ID:HjyoFwAM    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
香川編〜木庭子町のお正月(その2)


「落ち葉の匂いのするファースト・キスねえ」
「しかもね、空に残った最後の光が消えてしまう間際に、よ」
自分の言葉の意味を確認するようにマサミが言う。
「なにか、象徴的というか暗示的と言うか、そんな感じの表現ではあるよね」
「うん」
「これって《恋するソクラテス》の話でしょ?」
「そうよ」
「オレもこの小説は呼んだことあるけど、この女の子はポケットの上から骨の入った小箱に手を触れ、あらためて強く唇を強く押しつけてきたんだよね」
「そう」
「でもさ、なんか不思議だよなあ」
「やっぱり、そう思う?」
「なにか初めての、って感じがしないよね。季節でいえば春、やわらかな日差しと風・・・ためらいとかドキドキする感じっていうか・・・初めてのキスならそんな雰囲気だと思うんだけど。あ、初めてじゃなかったのかな」
「そんなことはないでしょ」
「だってさ、この二人は中学2年の時《ロミオとジュリエット》やってるじゃない。キスシーンも用意されていたって・・・」
「でも、中学校の文化祭の劇でしょ。フリだけだよ、きっと」
「そりゃ、そうだね」
ふと視線を感じて、二人は話をやめた。通路を挟んで隣り合った席の中年の婦人がこちらを見ていた。
思わず肩をすくめて目と目で会話する。フフッと笑いあった。


少し声を小さくして話を再開する。
「この女の子はすごく真面目であると同時に、すごく大胆な面を垣間見せるよね」
「うん」
「たとえばさ、夢島で彼が体を洗っているのを見ていていたり、その前の場面では彼がそこに戻ってくるのがわかっていながら服を脱いじゃったり」
「でも、彼女はその前の時点で自分が騙されたことに気付いていたわけよね?」
「そう。そしてそれに気付いた時、通り雨に額を打たせながら《いい気持ち》と呟いてる。それもうっとりと」
「その時に気付いたのは騙された、ということだけじゃないような気がするの。もっと大きな運命というか・・・もちろん漠然としたものだけだろうけど」
「うん、その後のある意味での《いさぎよさ》っていうのは、すべてを予感してのものだったと思えなくもないよね。生き急いだっていうか・・・二人で楽しく過ごせる時間はもう残り少ないと分かっていたような・・・」
ミライは自分に反論するかのように続けた。
「でもそうだとすると《急がずに、ゆっくりと一緒になっていきましょうね》という言葉は何を意味するのだろう」
マサミが遠くを見る目で答えた。
「それは永遠のクエスチョンマークじゃないの?その答えは彼女がウルルの空まで持っていってしまったのよ。読む人それぞれにそれぞれの感じ方があるけど、云わぬが花、って言葉もあるじゃない」
「そうか」
「でもさ、あの雨が落ちてくる情景は、彼女の生命そのものの拍動に思えるね。
《最初はゆったりとした間隔だったのが、メトロノームの錘を下げていくように、雨の落ちてくるテンポはどんどん速くなり、最後はホワイトノーズのようになった》」
「このテンポ、リズムっていうのはすごく印象的だね。発病した時だって、最初はあんまり深刻に考えていないわけだ。それがいつの間にか抵抗不能な流れに飲み込まれて追い詰められ、最後には心理的パニックに陥って・・・」
「ああ、心が痛むわ」


「ご乗車ありがとうございました。間もなく京都、京都に到着いたします。東海道線、山陰線、湖西線、奈良線、関西空港行き特急・はるか号、近鉄線ご利用の方はお乗換えです・・・」


「ずいぶん話し込んじゃったね」
苦笑いしながらマサミが答える。
「でも、話すことはまだまだ残ってるわ」


(続く)
...2005/04/13(Wed) 00:50 ID:HjyoFwAM    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
SATOさんへ
レイコのストーリー、楽しみです。
今までどちらかと言えば「謎の多い?少女」だったので(笑)
激励ありがとうございます。頑張って書きます。
...2005/04/13(Wed) 01:00 ID:HjyoFwAM    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:にわかマニア
 あの映像作品の出演者を想起させる登場人物の口を通して語られる原作(それも原題で登場!)の解釈が楽しみです。
...2005/04/13(Wed) 08:31 ID:2xcyyKsc    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
おはようございます。


おまけのコーナーです。


「桜が咲いているね・・・」
「ああ」
「夜桜もいいもんだね」
「・・・うん」
「頑張ってね、お父さん」

思わず苦笑をもらす父

「頑張れ、頑張れって、俺はいったい何時まで頑張ればいいんだい?」
「わかってるでしょ?」
「あの絵本ができるまでかい?」
「まあね・・・あ、だめだよ」
「まだ?もうカンベンしてくれよ・・・」
「お父さん、一級建築士でしょ?」
「そういうことか・・・わかったよ、あの子の家は建ててくよ」
「うん」
「もう、それで迎えに来てくれよ」
「ダメ。お母さんがかわいそうだもん」
「はあ・・・」
「ほら、今日は大サービス。抱きしめてあげるよ」
「ありがとう・・・」

父の目に涙が溢れ、髪に桜の花びらが舞い落ちる。

「なあ・・・」
「なに?私が冷たくないのが不思議なの?」
「・・・」
「私は生きてるんだよ・・・今もお父さんと一緒に。そしてこうして桜の花を見てる」
「・・・」
「ねえ、お父さん。私の娘の赤ちゃんの顔まで見てきてよ」
「ムリだよ、そこまでは・・・」
「ダメ。私にとっては孫になるんだからね。ちゃんと報告してくれなきゃ怒るよ」
「きびしい娘だな」
「うん、そうだよ」
「そろそろ夜が明けるな」
「そうだね・・・お父さん、また来年も花見をしようね」
「こちら側でか?」
「あたりまえでしょ・・・じゃあね、お父さん。お母さんと仲良くね・・・」
「ああ・・・またな」

朝日の中で目を開く
夢だったのか、やっぱり・・・

(終わり)
...2005/04/15(Fri) 04:02 ID:rPTfSoLo    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
朔五郎さん
レイコのサイドストーリーを頑張って書かせていただきます。
また、ユイが眼鏡をかけている理由を思いつきましたので、そちらも頑張ります(^^)

月〜土曜日は「ファイト」、日曜日は「あいくるしい」が放送されていますので、一週間マルマル「セカチュー」キャストに会える幸せな今日この頃です。

※「ファイト」は内容的に朝ドラというより、夜に放送した方が良かったように思います。あの時間帯では社会人も学生も録画しない限り観ることが出来ないので勿体無いと思いました。(これは私の私見です)
...2005/04/15(Fri) 23:47 ID:UAqSgb2g    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
SATOさんへ
レイコやユイは、なかなか味のあるキャラだと思いますのでよろしくお願いいたします。
...2005/04/16(Sat) 11:20 ID:rTE3UMpY    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
今回より、ユイの眼鏡の秘密に迫ります。

連続ネット小説・ユイの細腕奮闘記26
(ソフトボール編・1)

ユイが学校から帰ってくる途中のこと、とある小学校の前を通りかかった。
コロコロコロ・・・
ボールがユイの前を転がる。

ユイ「おっと、危ない・・・」

ユイが手にしたのはソフトボールだった。中学時代はソフトボールの主力選手として活躍していたユイ。しかし、高校はソフトボール部が無い学校を選んでいる。何故ユイはソフトボールをやめてしまったのだろうか。

女の子(小学生)「すみませーん!」
ユイ「いくよー!」

ユイはボールを投げ返す。

女の子「ありがとうございました!」
男性「ユイじゃないか?」
ユイ「ケイタ兄ちゃん!」

ユイが「ケイタ兄ちゃん」と声をかけた男性は木所(キドコロ)ケイタ(34歳)。ユイとは年が離れた従兄弟である。高校〜大学時代は野球をやっていて、スラッガーとして期待されてプロ入りした。しかし、プロでは芽が出ず、小学校教員に転身した。父親のいないユイにとって、ケイタは兄とも父ともいえる存在である。

ユイ「何やってるの、こんな所で?」
ケイタ「随分失礼な言い方だな。俺はここの学校の教師だぞ。生徒たちがソフトボールやりたいって言うから相手してるんだ。」
ユイ「ゴメン、ここの学校の先生だと思わなかったから。でも、少年野球の監督やりながらだから、随分忙しいね。あれ、みんな女の子だね。」
ケイタ「ああ、女の子はどうしてバット振っちゃいけないんですか?と聞かれて答えられなくてさ(苦笑)。一緒にやることになったんだけど、ネコの手も借りたいくらい忙しいよ。そうだ、ユイ、この子たちにソフトボール教える気はないか?」
ユイ「えっ・・・(動揺)でも、店忙しいし、3年もソフトやってないから、教える自信ないよ。」
ケイタ「忙しいのに悪かった。話は変わるけど、うちで晩御飯食べないか?いつも自分で作るの大変だろう?リカが会いたがってるしさ。」
ユイ「ラッキー!ちょっと面倒くさくなってたところなんだ。」
ケイタ「店閉めたらうちへおいで。」
ユイ「うん」

ケイタは再びノックを始める。立ち去ろうとしていたユイはしばらく子供たちの練習を見つめていた。上手な子もいれば、エラーばかりする子もいる。ユイは思わず飛び出しそうな衝動に駆られた。そこをグッと抑えてユイは帰路についた。

夕方、店を閉めたあと、ユイは木所家へやって来た。

ユイ「今晩は」
女の子「キャー、お姉ちゃん!」
母親「こらこら、いきなり何です?」

女の子の名前はリカ(5歳)。ケイタと妻・サチコの娘である。サチコ(旧姓・小林)はケイタとは中学時代からの付き合いであり、プロで挫折したケイタを支え続けてきた。一度は野球に背を向けたケイタが再び野球と向き合えるようになったのは彼女の力によるものと言っても過言ではないだろう。

サチコ「ユイちゃん、ゴメンね。まだご飯出来てないんだ。それまでリカと遊んであげてくれない?」
リカ「お姉ちゃん、行こ!」

リカはユイの手を引いて表へ出て行った。

ケイタ「リカのやつ、随分ご機嫌だったな。」
サチコ「ユイちゃんが忙しくて、最近ご無沙汰だったからね。うれしかったんでしょうね。」

ユイとリカは海岸で遊んでいた。

リカ「お姉ちゃん、今度キャッチボール教えてくれない?」
ユイ「え、何で?」
リカ「パパに教えてもらおうと思ったんだけど、忙しくて教えてくれないの。それでね・・・お姉ちゃんに教えてもらえって・・・」
ユイ「そう・・・」
サチコの声「ユイちゃーん、リカー、ご飯よー」

(続く)


ユイの従兄弟・木所ケイタは、緒形直人さんをイメージしています(朝ドラ「ファイト」での緒形さんの役名をアレンジしました)。
奥さんは名前のサチコから想像できると思いますが、桜井幸子さんのイメージです。(「海の時計」で桜井サチコは既出ですので、旧姓は小林明希ならぬ、小林サチコということで、昨年紅白のトリをつとめた歌手と同姓同名ですが・・・汗)
セカチュー本編ではラストシーンだけだった緒形さん・桜井さんの夫婦ぶりの場面が欲しくなりました。ケイタ・サチコ夫婦による新たな再現場面も考えております。
...2005/04/16(Sat) 23:54 ID:7yenX.TU    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
SATOさん
とっても面白そうな流れになってきましたね。
ところでケイタは、ユイの父で亡くなったナオトとよく似ているわけですね。そうすると、ナオトの兄の息子になるのでしょうか(^^)
...2005/04/17(Sun) 19:51 ID:0PCWIsSM    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
朔五郎さん
ユイの家系についてご説明いたします。
父方は「木所」、母方は「仮屋」です。ナオトは木所家の次男坊で、仮屋家へ婿養子に来ました。仮屋家(ノリコの実家)は牧場経営をやっている県内有数の資産家です。ナオトとノリコが電器店を始めたときには、仮屋家から何らかの資金援助があったと思われます。
ナオトには年齢が離れた兄がおり(60歳近い)、その息子がケイタです。
...2005/04/17(Sun) 21:05 ID:TrmS8mfo    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
連続ネット小説・ユイの細腕奮闘記27
(ソフトボール編・2)

今日も、ユイが木所家にやって来た。
学校・店・食事その他諸々、ユイはなんでも自分一人でやらなければならない。ケイタとサチコはそんな大変な生活を送っているユイを気遣い、時々家に呼んで一緒に食事をするようになったのである。

ユイ「今日は。」
サチコ「いらっしゃい、ユイちゃん」
リカ「お姉ちゃん、キャッチボールやろー!」
ユイ「アッ、ゴメン!(しまったという表情)グローブとボール忘れてきた」
リカ「えー、キャッチボールやってくれないの?」
ユイ「ゴメン・・・」
リカ「ヤダヤダヤダ!キャッチボールやる!ウェーン・・・(泣き出す)」
サチコ「リカ、そんなにダダこねるんじゃないの。お姉ちゃんだって忙しいんだから、今度やってもらおうね・・・」
リカ「だって・・・この前約束したんだもん・・・(泣き続ける)」
ユイ「ホント、ゴメン・・・」

リカに泣かれて、ユイはいたたまれなかった。
この日をリカはどんなに楽しみにしていたのだろう・・・そんなリカの気持ちを、真面目に受け取めていなかった・・・自分勝手な考えで、子供の気持ちを踏みにじってしまった・・・ユイは罪悪感にさいなまれた。

サチコがリカを子供部屋に連れて行き、居間に戻ってきた。

サチコ「ゴメンね、リカがあんなワガママなこと言って・・・」
ユイ「いいえ、悪いのは私なんです。リカちゃんとの約束、すっかり忘れていて・・・家にグローブとボールを取りに行きます。」
サチコ「いいのよ、今日は。今度来たときにやってあげて。」
ユイ「でも、リカちゃんとの約束ですから。やっぱり破ることは出来ません。」

そう言ってユイは家に戻った。物置小屋を探すユイ。もう二度とソフトボールはやらない・・・そう思ってユイは道具一式を小屋の奥にしまいこんでしまったのである。探すのは大変だ・・・

ユイ「あった・・・」

やっと見つけ出した・・・

ユイ「リカちゃん、ゴメンね、今行くから待ってて・・・」

ユイは木所家へ急ぐ。リカとの約束を果たすために・・・ユイはソフトボールに打ち込んだ中学時代を想い出していた。

(続く)
...2005/04/17(Sun) 23:17 ID:TrmS8mfo    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
SATOさんへ
ケイタ&サチコですと(良い意味で)大人の会話が楽しめそうですね。
どこらへんが出てくるのか楽しみにしています。

ところで「あいくるしい」ですが、後で沼尻エリカさんという女優さんが出てきて、豪と関わってくるようなのですが「耳が不自由で、老人介護の仕事をしている」設定だそうです。こちらにも出てもらえそうなキャラですね。マサミのボランティア仲間とか(ニヤリ)
...2005/04/17(Sun) 23:18 ID:2yXcghhM    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
連続ネット小説・ユイの細腕奮闘記28
(ソフトボール編・3)

ユイは中学時代、ソフトボール部に所属していた。
2年生からレギュラーに定着し、右投げ左打ちでポジションは一番・セカンド。バットコントロールは抜群で、少女イチローと呼ばれていた。守備は堅実で、ランナーが一塁にいてもユイのところへゴロが転がれば、ダブルプレーが計算できるほど、チームの信頼は厚かった。
ところが、3年に進級した春の練習試合中、アクシデントは起こった・・・

相手の攻撃中、ランナーは一塁。
カキン!打球はセカンドゴロとなる。誰もがダブルプレーだと思った瞬間・・・

ユイ「あっ」

イレギュラーバウンドした打球がユイの右目に当たった。ユイはすぐに救急車で病院へ運ばれ、知らせを受けたノリコ、そしてケイタが駆けつけた。
そして、医師からノリコとケイタに診察結果の説明が行われることになった。

医師「MRIで検査したところ、骨折や脳の外傷は認められません。また、眼底検査も行いましたが、網膜はく離などの心配もございません。」

ノリコとケイタはホッと胸をなでおろした。

医師「ただ・・・眼球に外傷が認められます。眼帯が取れてから詳しく検査しなければなりませんが、右目の視力の低下は避けられないと思います。」

ノリコ「ということは・・・」

医師「左右の眼に極端に視力の差が発生しますので、眼鏡をかけないと、生活上、いろいろ困ることになると思います。」

ノリコ「(なーんだ、眼鏡で済んでよかった)」
ケイタ「あの子は、ソフトボールのレギュラーなんです。プレーは続けられますよね?」
医師「練習でボールを投げたり打ったりすることは問題ないでしょう。ただ、試合となると・・・眼鏡をかけることによって、ボールの大きさが微妙に変わってきます。それに、目に打球を当てた恐怖心もあるでしょう。そのあたりが打撃や守備に影響を与えるかもしれません。」
ケイタ「・・・・」

(病院の廊下)

ノリコ「さっきのお医者さんの話、どういう意味?」
ケイタ「前みたいなプレーが出来るかどうか、わからない、という意味ですよ。」
ノリコ「もう、ソフトは出来ないということ?」
ケイタ「そうではありません、でも、レギュラーでいられなくなるかもしれません。」


(続く)
...2005/04/18(Mon) 19:07 ID:avLmlrs.    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:たー坊
「世界の中心で、愛をさけぶ2」の執筆者の皆様こんばんは。たー坊です。

いつも楽しく拝見させて頂いております。そしていつも勉強させて頂いてます。

SATO様、朔五郎様。
最近はお2人のストーリーが中心のようですね。多彩な登場人物が物語の幅の広さにもつながっているように思います。

これからも執筆者同士にお互いに頑張っていきましょう。
もちろん、一読者としても楽しみにしております。
...2005/04/18(Mon) 21:14 ID:PLl.Z5WQ    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
たー坊さま・朔五郎さま
感想ありがとうございます。
これまで「H2」「スウィングガールズ」「いま、会いにゆきます」等をモデルにしてストーリー投稿を楽しんできましたが、朔五郎さんの手法に教わった点が多々あります。
これからもよろしくお願いいたします。
...2005/04/18(Mon) 21:36 ID:NGTfbw6I    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
連続ネット小説・ユイの細腕奮闘記29
(ソフトボール編・4)

ユイの病室にケイタとノリコが入って来た。検査で異常はなかったものの、当たった場所が場所だけに、今日は安静が必要ということで、一日だけ入院することになったのだ。右目の眼帯が痛々しい・・・

ケイタ「どうだい、気分は?」
ユイ「ボー、としてて退屈・・・」
ケイタ「そうか、ならすぐに元気になれるな。」
ユイ「うん・・・」

ノリコはユイの様子にホッとしていた。

ケイタ「いいかい、これから僕の言うことをよく聞いてくれ。」
ユイ「?」
ケイタ「眼帯が取れたら、眼鏡をかけなければならないんだ。今までより視力が悪くなるそうなんだ。」
ユイ「そう・・・でも、眼鏡かければ、今までどおり、ソフト出来るよね、そうだよね?」
ケイタ「うん、でも、今までより練習量を増やさなければならないと思うんだ。」
ユイ「どうして?」
ケイタ「休んだ分、遅れちゃうだろう。ボールを打ったり捕ったりするカンが鈍くなるからね。」
ユイ「わかった、いっぱい練習する」

ケイタはさっき医者から言われたことをそのまま伝えようと思っていたのだが、ユイの顔を見ると真実を伝えることが出来ず、つい言い繕ってしまったのである。

眼帯が取れたあと、ユイは眼鏡をかけ始めた。そして練習に復帰したが・・・
眼鏡をかける前と感覚が違う。打撃練習をしてみると、今までどおりのスイングをしてもバットの芯を外れてしまう。守備練習をしてみると、ボールをお手玉したり、はじいてしまうことが多くなった。
ボールの見え方が違うのと、打球を当てた恐怖心もあって、ユイのプレーは攻守に精細を欠いた。練習しても練習しても、前のような感覚が戻ってこない・・・

そして、夏の大会を前に、ユイはポジションを下級生に奪われてしまう。
大会でチームは勝ち進み、とうとう決勝に進出する。しかし、ユイはベンチを温め続け、ここまで出番はゼロ・・・

決勝戦は、双方が点を取り合う壮絶な打撃戦となった。総力戦となり、やっとユイに出番が回って来た。

(続く)
...2005/04/20(Wed) 00:18 ID:Gi6YZNBs    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
連続ネット小説・ユイの細腕奮闘記30
(ソフトボール編5)

応援席にはノリコ、ケイタ・サチコ夫婦、そしてレイコがいた。やっと回ってきた出番に皆が声援を送る。思わずレイコが声をあげた。

レイコ「ユーイ、チャチャチャ!ユーイ、チャチャチャ!」

試合は同点のまま延長戦に入り、ユイに打席が回ってきたが、ボテボテのサードゴロであえなく凡退。
その裏の守備につく。
ピッチャーは疲れからかヒットを打たれたあとに四球を連発、1アウト満塁のサヨナラ負けのピンチを迎えてしまった。
もしユイが好調だったら・・・ここでセカンドゴロが転がれば、ダブルプレーでピンチを凌げる・・・誰もがそう願っていた。

はたして注文どおりユイの前にゴロが転がってきた。

ユイ「よし!」
レイコ「もーらい!」

そう思った瞬間!

ユイ「あ!」

ユイはボールをつかみ損ね、後ろへはじいてしまう。
サヨナラ負け・・・ユイのエラーで負けてしまったのだ・・・

ユイ「・・・・」

呆然とするユイ。そのままグランドにへたり込んでしまい、肩を震わせて泣いている。

そんなユイの姿を見て、ケイタは後悔していた。本当のことを言っていればこんな残酷な目にあわせずに済んだのではないかと・・・

ケイタ「叔母さん、すみません。あの時、本当のことを言っていれば・・・」
ノリコ「ケイタさんは間違ってないわ。本当のこと言っても、あの子絶対納得しなかったと思うし、精一杯やったんだから・・・」
サチコ「ノリコさんの言うとおりよ、しばらくはそっとしておいてあげましょう。」
ケイタ「俺みたいに、いつかは楽しい想い出になるのかな・・・」
サチコ「大丈夫。大丈夫よ、きっと」

夕方、レイコが仮屋電器店を訪ねてきた。

ノリコ「あの子、一人になりたいみたいで・・・防波堤のところにいると思うわ。」
レイコ「そうですか、わかりました。」

ユイは一人で防波堤に座って海を眺めていた。試合のことを想い出すとまた悔し涙がこぼれてくる・・・

ユイ「チクショー!!」

レイコ「悔しいよね。」

いつの間にか隣に座っていたレイコがユイに語りかける。

レイコ「あたしもね、自分のミスで試合に負けたあとは悔しくてボロボロ泣いちゃった。でも、精一杯練習したから後悔はしてないよ。ユイだって、そうじゃないのかな?」
ユイ「あたし、目にボールぶつけてから前みたいにプレー出来ないの。練習しても練習してもダメなの・・・今日の試合でもうダメだって思い知らされて・・・ウウ・・・(涙)」

泣き崩れるユイにレイコは天使のように微笑みかける。
レイコ「・・・忘れよう、今日のことは。ユイが少女イチローと呼ばれたことも、ダブルプレーのユイと呼ばれたことも、あたしがずーっと覚えているから・・・安心して・・・安心して、今日のことは忘れよう・・・」
ユイ「レイコ、抱きしめてもらってもいいかな?」
レイコ「・・・いいよ・・・」

そう答えたレイコは両手を大きく拡げてユイを抱きしめた。

レイコ「これでいい?」

レイコの腕の中でユイは思い切り泣いた。
そしてユイは決意した。
もうソフトボールはやめよう・・・


(続く)

このストーリーの時系列ですが、リアルタイムは2016年11月(高校3年生)で、中学生当時の回想場面が挿入されています。回想場面の年代は2013年(中3)ということになります。これから高1・高2の回想場面も入ります。
...2005/04/20(Wed) 19:14 ID:fR/OAiPI    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
連続ネット小説・ユイの細腕奮闘記30
(高校進学)

2014年4月、ユイは宮浦高校へ進学した。中学時代からの友人・レイコも一緒である。宮浦高校にはソフトボール部がない。ソフトボールはもうやらないと決意したはずだが、心のどこかに目をケガしなければ・・・という思いがあった。同年代の女の子がソフトボールをやっている姿を見るのは辛かったのだろう。

ユイ「部活何にするか決めた?」
レイコ「まだ決めてない。中学時代にやってたバレー部にしようかどうか迷ってる。」
ユイ「それいいかも。あたしはソフトボールやりたくても、もう出来ないからね。だから、今度は応援する側に回るの」
レイコ「応援って?」
ユイ「吹奏楽部に入ってさ、野球部の応援する。一緒に甲子園に行くわ。」

ユイは何か新しいことに打ち込みたかった。別に吹奏楽にこだわっていたわけではなかったのだが・・・そして、レイコと見学に行ってみた。

ユウタ「何か楽器できる?」

ユイ「(音楽の授業で使うタテブエを出す)」
レイコ「(トライアングルを出す)」
ユウタ「・・・・(固まってしまった様子)」

ツカツカ・・・気配を察した女生徒がやって来た。

女生徒「吹奏楽部の部長をしている谷沢(ヤザワ)シオリです。あなたたち、そんなもの出して、吹奏楽をナメテない?わが校は毎年全国大会に出場していて、今年は優勝を狙っています。生半可な気持ちだったら、入部はおやめなさい(ピシャリ)」

レイコ「あたし、やっぱりやめとく」
ユイ「あたしは入る。あんなこと言われたら逆に必死に練習して部長を見返してやりたくなったわ。」

ユイの反骨心に火がついた。そして吹奏楽に打ち込む日々が始まった。

3年間ソフトボールをやってきただけに、ユイは他の一年生よりも体力・肺活量に優っていた。そして、一年生の中で一番早く楽器の音が出せるようになった。ユイの練習熱心ふりは他の一年生やシオリから一目置かれるようになったのである。

シオリ「仮屋さん、すごい上達ね。あなたの練習熱心が他の一年生の刺激になってるわよ。ほら、御覧なさい」
そこではジュリやシホリが目の色を変えて練習していた。

(続く)
...2005/04/21(Thu) 23:04 ID:wlC/2bpc    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
63の続きです。


香川編 〜 木庭子町のお正月(その3)

「恋するソクラテス」の表紙をじっと見ながらマサミが言う。
「夢島での一夜にふたりは電話の音を聞くじゃない?あれはいったい何だろうね?」
「ふたりが同時に聞いてるんだから、耳鳴りとかじゃないね」
「うん。でも、音がしている部屋に近づいても、音の方は一向に近づいてこないということは、実在する音ではなく意識の中に響く音ということかな?」
そう言いながら、マサミはミライを見る。
「どうかな・・・まあ小説っていうのは虚構というのが原則だから、この作品の場合はその中の現象が現実的に成立するかどうかを検証するより、作者がその描写によって何を語りたいのかということを考えたほうがいいんじゃないかな?」
「それじゃ、どうなのよ」
「この後、一匹の蛍がこの女の子の肩にとまる。彼女のまわりをゆっくりと旋回し、まるで彼女を選んだかのようにね。そして蛍は何かの合図を送っているかのように二度、三度と光って見せた。それから飛び立った蛍は、今度はためらうことなく仲間のほうへ戻って行った。そして、仲間たちの小さな光に紛れてわからなくなった」
「そうすると、蛍の群れは霊魂だったということ?」
「霊魂というよりは精霊というか・・・うまく言えないけど」
「でも、このシーンは、一番最後の場面で中学校の校庭で彼女の灰が撒かれたとき、桜の花びらに紛れてその灰がすぐに見えなくなった、っていう表現と一対になってると思うわ」
「うん。やっぱり、蛍の光はこの女の子の運命を暗示していたと考えるしかないよね。そうすると、逆算、逆算で、あの電話の音はやはり別の世界からの報せなんだと思うよ、オレは」
「別の世界って・・・」
そのとき、列車は速度を落とし始めた。


「長らくのご乗車ありがとうございました。まもなく終点新大阪です。山陽新幹線、東海道線、大阪市営地下鉄ご利用の方はお乗換えです・・・」


「ごめんごめん。三島に停まる《ひかり》は新大阪止まりなんだよ」
「岡山まで行くんでしょ?」
「そう、だから乗り換えだよ」
「でも、乗り換えるっていうのもなんか楽しいよね」
「そう?」
「サクと一緒だし」
「よ、よせよ」
やがて
「あ、これだね。なんか今までの車両とは雰囲気が違うね」
「ここからはJR西日本だからね」


「本日はJR西日本、山陽新幹線をご利用くださいましてありがとうございます。この列車は《フレッツひかり39号》博多行きです。これから停まります駅は新神戸、姫路、岡山、福山、広島、安芸広瀬、新山口、新下関、小倉、終点博多です・・・」


「フレッツひかり、ってどういう意味?」
「さあ、フレッシュの間違いかな?」
「ところで、さっき別の世界って言ってたじゃない?」
「うん」
「あれはどういうこと?」
「この小説の中で、竹取物語のイメージが使われているじゃない」
「この女の子は、かぐや姫なの?」
「作者は、少しはそういう意図を持ってると思うよ」


(続く)
...2005/04/22(Fri) 01:15 ID:niZjhlcc    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
SATOさんへ
ユイがどんな出会いをするのか楽しみにしています。
...2005/04/22(Fri) 01:27 ID:niZjhlcc    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
朔五郎さん
CMのパロディーがさりげなく散りばめられていて、今更ながら、その上手さに感心させられます。
私もあやかりたいです(^^)

「あいくるしい」に綾瀬はるかちゃん出演中ですが、、同番組のスポンサーCM(ドコモ)に佐藤めぐみさんが出演中です。同一時間帯にTV/舞台の亜紀を見ることが出来ます。ついでにカルピスウォーターのCMも・・・というのは贅沢すぎるでしょうか?
...2005/04/22(Fri) 23:46 ID:33qO70Nc    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
SATOさんへ
「も〜らい」がどんな場面で使われるのか、期待して待ってます(^^)
...2005/04/23(Sat) 20:12 ID:SogL8S42    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:たー坊
いつもお疲れ様です。たー坊です。
今回も読ませていただきました。

朔五郎様
SATO様もおっしゃっておられましたが、本当にCMのフレーズを上手に散りばめられておられると思いました。
そして、マサミがサクに対して、何気なく、あっさりと愛情表現をするあたり、上手いなぁとおもいました。
次回も楽しみにしております。

SATO様
ユイはソフトボールを一回引退ですね。目が決して良いとは言えない状況下で、よくここまで来れたと思います。そして、またソフトボールに目覚めるということでよろしいですか?
それなら、思い切ってやらせてあげてください。今度こそ悔いのないように。個人的ではありますが、私も同じような状況に置かれています。今度こそ、未練を残すことなくお願いします。
次回も楽しみにしております。
...2005/04/24(Sun) 23:13 ID:mGWALmIA    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
たー坊さま

ご感想ありがとうございます。
「フレッツ」は東日本の読者の方にわかっていただけるか不安ですが(苦笑)
マサミは、やはり「映画版亜紀」のような「あっけらかん」とした感じにして、大林アキとは違う味を出すように心がけています。
...2005/04/25(Mon) 01:09 ID:PvSh0T4I    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
たー坊さま

お読みいただきありがとうございます。
子供にキャッチボールをせがまれたのをきっかけにユイは再びソフトボールに目覚めていく展開にしていく予定です。
以前、投稿したマサミのストーリーと構図は似てくると思います。
           マサミ     ユイ
得意なもの     手品    ソフトボール
見せる相手     老人     子供
サポーター      律子     サチコ
出合った人     廣瀬夫妻   ?
...2005/04/25(Mon) 07:18 ID:EkpcTVvA    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
SATOさん
あとは、マサミのように彼氏をリードしていくのか、あるいは彼氏を頼っていくのか、そこらへんのところが非常に楽しみですね。
...2005/04/26(Tue) 04:17 ID:aQQ2WLwo    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
連続ネット小説・ユイの細腕奮闘記31
(楽しき高校生活)

吹奏楽部の日々は楽しかった。
二年生に進級した夏のある日、ふとしたことから有志でジャズをやらないか、という話が持ち上がった。

ジュリ「ジャズって、オッサンのやることだべ?」
「それならオッサンたちに聴かせてあげればいい。」
そう声をかけたのは竹中先生だった。ジュリ・シホリ・ユカリ・ユウタ、そしてユイがジャズバンドを組み、竹中先生の紹介で「涼風ホーム」で演奏を披露する。集まったお年寄りは彼らのジャズの演奏を聴いて遠い青春の日々を想い出していた。口コミでジャズバンドの評判が広まり、夏祭り、スーパーの安売りセール、運動会等のイベントに声をかけられ、演奏を披露する。
一方、「本業」の吹奏楽でもコンクールで優秀な成績で入賞した。

同じころ、幼馴染のケンやシンジから誘われ、バスケ部のマネージャーもやるようになる。
ユイは高校生活を満喫していた。
ソフトボールのことはすっかり忘れることができたのだろうか・・・

ところが、三年生の秋、最後のコンクールが終わって部活を引退する日がやって来る。
そんなことはわかっていたはずなのだが、心にポッカリ穴があいてしまったようだ。一日が非常に長く感じられる・・・

ある日、ユイは寺の前を通りかかった。掲示板に行事の予定がギッシリ書き込まれてある。

ユイ「法話会・・・毎月第一・第三日曜日・・・」

「法話会に興味あるの?」

声をかけられてユイはビックリした。そこには僧が立っていた。
ユイ「は、はい、いろいろ行事が書き込んであったので、面白そうだなと思いまして・・・」
僧「丁度よかった。明日が法話会の日なんですよ。よろしかったらいらっしゃい。」
ユイ「はい」
僧「(ユイの制服を見て)ところで君、宮浦高校の生徒さん?」
ユイ「はい、そうです。」
僧「私は宮浦高校の卒業生です。現役の生徒さんを見ると、高校時代が懐かしいですよ。」
ユイ「お坊さん、私の先輩なんですね。明日楽しみにしています。」
僧「さようなら」

ユイは僧と別れ、家路についた。

(続く)


朔五郎さん
シンジですが、ケン・ミライと同じく置いてけぼりにされるのでは・・・と焦るのではないでしょうか?
将来に対するヒントを与えるのは、マサミにとっての律子同様、年長者であるサチコの役目かな、と思っております。
シンジの活躍場面はどうなるか考え中ですが、ユイにとって気が休まる存在ではないかと思っております。

実は、ユイはマサミより1年近く前に「涼風ホーム」に行っていたんです。卒業前にラストコンサートをやらせてあげたいです(^^)

「フレッツひかり」のサイトです。(新幹線じゃありませんよ)
ちなみに東日本ではSMAPですね。
http://www.ntt-west.co.jp/news/0503/050310a_2.html
...2005/04/27(Wed) 22:07 ID:dCKfNPWo    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:グーテンベルク
 SATO様、朔五郎様へ
こんばんは、グーテンベルクです。いつもこのストーリー、楽しみながら読んでおります。このスレ、アップしてゆくスピードが大変速いため、中々最新話までたどり着けません(凄)(^^)/”読む楽しみがたくさん残されていると考えればとても嬉しくなりますが。これからもマイペースで私達読者を楽しませてください。心より応援しております。
...2005/04/28(Thu) 19:02 ID:g5arKo5k    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
大変な鉄道事故が発生してしまいました。
関係者の皆様に、心よりお見舞い申し上げます。

SATOさん
「意外な人物」とは「あの僧侶」だったのですね。
ジャズバンドのラストコンサートもぜひぜひ(笑)
「フレッツ」のフォロー、ありがとうございました。

グーテンベルク様
励ましのお言葉、ありがとうございます。
私ごとで恐縮ですが、4月から新幹線通勤をする生活となり、なかなか時間的余裕がなかったのですが、ようやく体のほうが慣れてきたのでアップもできるようになると思います。
実は私が社会人になったのは、朔が宮浦を飛び出した昭和63年。だから「朔の17年間」の長さは非常に良くイメージできるのです。しかも今年「17年ぶり」に新人時代の1年間を過ごした職場に戻ってきました。これも何かの「縁」でしょうか(笑)
...2005/04/29(Fri) 04:54 ID:/GCuznag    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
おはようございます。

グーテンベルク様
アップのスピードが速くて追いかけるのが大変とのこと、すみません(^^)
最近は朝ドラ「ファイト」の録画を観ながら勢いに乗って執筆しております。
4月はじめに再放送された影響からか、掲示板全体がとても賑やかになってますね。

朔五郎様
社会人としてのスタートを切った「故郷」に17年振りに戻られたとのこと、偶然とは思えません(^^)
新たなストーリーを楽しみにしております。

ユイたちのジャズバンドがデビューした「涼風ホーム」の話題が出ましたので、マサミ・ハルカのパフォーマンスを再度掲載いたします。コンサートは別の日に改めてということで・・・
(大河ドラマに本格的に静が登場しはじめましたので、応援も兼ねております)


「マサミのラスト・マジックショー」

2017年3月○日

マサミは涼風ホームに一人でやって来た。4月から進学のため、故郷を離れる。そのため、卒業前に思い残すことがないように、あちこち動き回っていたのである。

(玄関)
マサミ「今日は」
管理人「いらっしゃい。律子さんから聞きましたよ。今日どうしてもやりたいんだって?」
マサミ「無理言ってすみません。4月から東京行くんで、皆さんにご挨拶したくて。」
管理人「マサミさんの手品は大人気だったからね。短い間だったけど、本当にお疲れさまでした。」
マサミ「こちらこそ、お世話になりました。」
管理人「今日は地元のアマチュア劇団の予定が入ってるんですが、どうします?先にやりますか、後でやりますか?」
マサミ「劇団の皆様のお邪魔にならないようにしたいんですけど・・・前座という形で先にやらせて下さい。」
管理人「承知しました。そうそう、今日の劇団ですが、あなたと同じ学校の生徒さんもメンバーでしてね、さっき来られましたよ。」
マサミ「へー、誰ですか?」
管理人「会ってのお楽しみ・・・」

(控え室)

マサミが入って来た。
背中を向けて座っていた白拍子姿の少女がこちらを振り向いた。

マサミ「?」
少女「わかりません?マサミさん、わたしですよ。」
マサミ「・・・ハルカちゃん?」
ハルカ「はい、ハルカです。ビックリしました?」
マサミ「したよー・・・ホント、綺麗・・・(ため息)」
ハルカ「ありがとうございます。実は、わたし、素人劇団に入ってて、1ヶ月に1回ボランティアで上演に来てるんです。」
マサミ「わたしも月1回マジックショーをやりに来てたんだ。今日が最後なので、無理いって割り込ませてもらったの。」
ハルカ「すごい偶然ですよねー。わたしもさっき管理人さんから同じ学校の人が来るよって言われたんです。」
マサミ「でも、ハルカちゃんがいると知って、すごく楽しくなってきた。今日は前座でやらせてもらうから、よろしくね。ところで、ハルカちゃんは何の役で出るの?」
ハルカ「源義経の恋人・静の役です。今日は『静の舞』を披露させていただきます。」
マサミ「そう、わたしの出番が終わったら観ていくわ。楽しみにしてる。」
ハルカ「わたしもマサミさんのマジックショーを楽しみにしています。」

(集会所)

マサミのマジックショーが始まった。
鮮やかな手さばきで次々とマジックを披露するマサミ・・・。集まったお年寄りたちはマサミのマジックに釘付けになった。そして、ハルカも・・・

ハルカ『最後だからかな、マサミさん、すごい気合が入ってる・・・よーし、わたしも負けずに頑張るぞ・・・』

そして、マサミのマジックショーが終わった。

マサミ「皆さん、短い間でしたけど、本当にありがとうございました。何よりも嬉しかったのは、わたしが教えたマジックを皆さんがお家へ持ち帰って、ご家族と一緒に楽しんで下さったことです。わたしもこちらに来て、いろいろなことを教えていただきました。そして、もっともっと勉強したくて、東京の大学へ行って参ります。本当にありがとうございました。」

パチパチパチ・・・・

老人A「マサミちゃん、帰ってきたらいつでもおいで。また手品みせてよ!」
老人B「そうそう、こちらこそ、ありがとう」

マサミは感極まって涙ぐんでしまう。そこへ、静の扮装をしたハルカが花束を持ってやって来た。

ハルカ「マサミさん、お疲れさまでした。東京で頑張ってきて下さい」
マサミ「ありがとう、次の劇、頑張ってね」
ハルカ「はい・・・」


続いてハルカの劇が始まった。静を演じるハルカの可憐さに一同はまたもや釘付けに・・・そしてクライマックス、「静の舞」の場面となった。

『吉野山峰の白雪踏みわけて
 入りにし人のあとぞ恋しき
 静や静しずのおだ巻きくり返し
 昔を今になすよしもがな』

客席でハルカの演技に見入るマサミ。
マサミ『ハルカちゃん、すごい気合入ってるな。自分で言うのも変だけど、今日はヒロインのバトンタッチの日だね。ハルカちゃん、あとは任せたよ。こちらのお年寄りたちに素敵な劇を見せてあげてね。そして、可愛がっていただいてね・・・』

マサミからハルカへ「涼風ホーム」のボランティア活動は受け継がれていく・・・

FIN


静御前に関するサイトです
http://www.hachimangu.or.jp/about/history/shizuka.html

大河ドラマ「義経」のサイトです
http://www3.nhk.or.jp/taiga/cast/w_isihara_s.html

「涼風ホーム」でのハルカの演目としては、歴史ものが無難でしょう。
新たな演目として「赤い○○」も候補に挙げられますが、廣瀬夫妻が観たらどう思うか・・・と考えるとやめておいた方がいいでしょうね。
あ、そのかわり、広島出身のミチルさんに「○い運命」をやっていただきますか(^^)
...2005/04/29(Fri) 11:14 ID:Qzwa/HTM    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:たー坊
お疲れ様です。たー坊です。
SATO様、先輩から後輩へと受け継がれていく、奉仕、思いやりの気持ち、今の時代に必要なものをうまく描かれていらっしゃると感じました。
次回も楽しみにしております。

朔五郎様
マサミとサクのやりとり、いつも楽しみにしておりますが、新幹線通勤との事。体調管理を十分になさってください。そして、これからの作品も期待しております。
...2005/04/29(Fri) 21:03 ID:x.srlg1.    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
香川編 〜 木庭子町のお正月(その4)


ミライとマサミは岡山駅のホームで、高松行きの列車を待っていた。
「ねえ、サク《恋するソクラテス》の女の子が、かぐや姫なの?」
「うん」
「でも、竹取物語って、可憐な少女が月の世界に帰って行きました、っていう単純な話じゃないよね」
「そうだよ」
「かぐや姫は見た目は可愛い少女だけど、実は月の世界で何かの罪を犯して《流刑》みたいな感じで翁のところにやってくるわけでしょ?」
「そう、実は大人の女性なんだよね」
「求婚してくる男性たちを手玉にとって、すごくしたたかでしょ?」
「まるで誰かさんみたいにね・・・」
「ちょっと、それ誰のことよ」
「イ、痛テエ、そんなに怒んなよ・・・もちろんこの小説の作者は、この女の子が別世界で罪を犯したということまではイメージしてないだろうけど、この女の子の中に《大人の女性》であるもう一人の彼女が存在しているという《雰囲気》は振りまいているような気がするね」
「そうか・・・でも、もう一人の彼女が顔を出すのは、決まってミステリアスな場面よね。神社の石段で骨の入った小箱に触れた時とか、夢島の夜とか」
「それからさ、空港に向かう途中の会話がすごく印象的なんだよね」
「もしかしてこの言葉?《いいえ、私は欲張りよ・・・だって、この幸せを手放すつもりはないんだもの。どこへでも、いつまでも持っていくつもりでいるんだもの》」
「そう。マサミはどう思う?」
「うーん。よくわからないけど、この日17歳になったばかりの女の子の言葉とは思えない」
「だよね、やっぱり」
「つまり、こういうこと?この子がいずれ帰っていく場所=別の世界に近寄った時、隠されたもう一人の彼女が顔を見せる。逆に言えば、もう一人の彼女が現れるという事は、死が近づいたことを意味している・・・」
「もちろん、現実の世界ではそんなことは起こりえないけど、作者はこの小説全体を貫くモチーフとして竹取物語を使っている。まあ、一種のコラボレーションなのかな、っていう気もするね」

その時、ミライが重大なことに気が付いた。
「そうだ、JR四国の列車では車内販売がないんだ。飲み物を買っておかないと」
「大変・・・私なにか買ってくる・・・」


(続く)


せっかく「フレッツひかり」に乗ったので、もう少し書きたかったのですが、JR○○○のことを書くのは心苦しくなってしまいました。
改めて、事故に遭われた方にお見舞い申し上げます。
なお、JR四国の列車では車内販売が無い、というのは実際に体験したことです。ご注意を(笑)
...2005/04/30(Sat) 00:38 ID:vd68W3e6    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
SATO様
ハルカの演目としてはレイコ(北川コズエ役)も巻き込んでの“WB”も考えられますが、お年寄りたちが喜んでくれるかどうか(苦笑)

たー坊様
激励のお言葉ありがとうございます。たー坊様もご自愛の上、創作をお続け下さい。
...2005/04/30(Sat) 00:58 ID:vd68W3e6    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
たー坊様
感想ありがとうございます。お互いに楽しくストーリーを創っていきましょう。

朔五郎様
お年寄り向けならば、ジュリを巻き込んでの大阪の4人姉妹がいいかもしれません(^^)
実は、「WB」をモデルにしてこんな話を考えついたのですが・・・
2017年夏、浪人中のアキの年下の従兄弟・間柴豪(マシバゴウ)が宮浦高校に転校してきました。文化祭の出し物でヒョンなことからシンクロをやることになり、ヒロ・アツシと練習に励みますが、ハルカは「野球部の邪魔するな!」とカンカンに。一方、ニノと知り合う前のレイコはゴウに「ホ」の字になってしまい・・・

余力があればやってみたいのですが、まずはユイ編の仕上げをやらせていただきます。朝ドラのアナザーストーリーのつもりで楽しく創っていきますので、今後ともよろしくお願いいたします。
...2005/04/30(Sat) 09:01 ID:JnxURxuQ    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
映画「いま、会いにゆきます」をモデルにした青春短編です。一部修正のうえ、再掲載します。


「マサミとハルカのダイアリー 1」

2017年3月○日

(宮浦高校)

学校は春休みの真っ最中。この日、マサミは久しぶりに陸上部の練習に顔を出すために学校にやって来ました。

ハルカ「マサミさん!」
マサミ「ハルカちゃん、おはよう。今日はどうした?」
ハルカ「新入部員勧誘の準備で来たんです。マサミさんは?」
マサミ「4月から東京行っちゃうからね。最後だから後輩たちの練習に付き合おうかと思って。」
ハルカ「最後まで面倒見のいい先輩なんですね。そうそう、会田(アイダ)君が転校するんですってね。」
マサミ「そうなんだ。彼も今日が最後の練習になんだよね。」
ハルカ「それじゃ、わたし、部室行きますから。最後の練習、頑張ってください。」
マサミ「ハルカちゃんもね。」

ハルカとわかれたマサミはグランドにやって来た。
練習をしていた1・2年の部員がマサミの姿を見て集まってきた。

部員A「先輩、どうも。」
マサミ「最後だからみんなの顔見たくてさ。邪魔にならないように、ここで見てるよ。」
部員B「そんな、遠慮しないでくださいよ。ストップウォッチで僕らのタイム測っていただけません?タクミも今日が最後だし、是非マサミ先輩の手でタイム測ってやってください。」
マサミ「そうか、じゃ、やらせてもらうわ。」

部員が一人一人スタートし、マサミがタイムを測る。そしてタクミの順番が回ってきた。

マサミ「位置について、ヨーイ!ピー(ホイッスル)」

タクミがスタートを切った。そしてもの凄いスピードでゴールを駆け抜ける。
カチャ!マサミがストップウォッチを切った。

マサミ「12秒91!」
タクミ「ヤッター!自己ベストだ!」
マサミ「おめでとう、やったね。新しい学校で頑張るんだよ。」
タクミ「はい!」
マサミ「・・・もうひとつ、やらなければならないこと、あるよね・・・」
タクミ「・・・はい・・・」

マサミ『彼の名前は会田(アイダ)タクミ。私の陸上部の後輩だ。男子短距離のホープとして注目を集めている。これからも宮浦高校で活躍してくれる・・・と思っていた矢先に、父親の仕事の関係で東京の学校に転校することになったのだ。最後に彼がやり残したことは・・・』


(野球部室)

ハルカが入って来た。するとメガネをかけた女の子が振り向いた。
女の子「ハルカ、おはよう。」

ハルカ『彼女の名前は榎本(エノモト)ミオ。私のクラスメートであり、野球部のマネージャー仲間。本当は明日の予定だったのに、彼女がどうしてもと言うので今日になりました。そう、ミオにはもうひとつ、目的があったのです。』

ハルカ「ミオ、早く始めて早く終わらそう。」
ミオ「うん」

マサミ・ハルカ『忘れもしない、6月24日。』
マサミ『この日は陸上の県大会の日。私は最後の夏に燃えていた。そして、初めて大会に出場するタクミ君も・・・』
ハルカ『この日、わたしはミオと一緒に大会の運営の手伝いに来ていました。』

タクミのレースの番になった。タクミがライバルに僅差をつけてトップに立ったと思ったら・・・

マサミ「あっ」
ハルカ「キャッ」
ミオ「!」

タクミはライバルと交錯して転倒してしまった。

マサミ『何で、何でこうなるの?もう少しで優勝で出来たのに・・・私はタクミ君が不憫でならなかった・・・』
ハルカ『ショッキングな場面を見てしまいました。その時です。ミオがつぶやきました。・・・反則だ・・・』

日がとっぷり暮れて表彰式が始まった。照明塔には煌々と灯りがともっていた。

(競技場の廊下)

無言で引き上げるタクミ。
マサミ『事故で失格してしまったタクミ君。あのしょげ返りようを見て、私はかける言葉が見つからなかった。今、グランドでは彼が出場したレースの表彰式が始まろうとしていた。』

タクミとマサミの前を女の子が横切った。ミオとハルカである。

ハルカ「ミオ、待ってよ。どこ行くの?」

ハルカ『わたしはミオが何を考えているのかわかりませんでした。やがて、電気室に入って・・・
ガチャン!ミオは電気のスイッチを切りました。グランドは真っ暗になってしまったのです。』

係員たち「なんだなんだ?」
グランドでも騒ぎが起こっていた。

マサミ『一体何が起こったのだろう。あたりが真っ暗になった。』

ハルカ「ミオ、何であんなことしたの?」
ミオ「あれは、明らかに反則技だった。だから、抗議のために電気を消したの。」

ハルカ『びっくりした。ミオが真剣な顔をして言うんです。でも何で?何でそんなに真剣になれるの?タクミ君のため?えっ、ひょっとしてこれって・・・?』

(夏休みのグランド)

マサミ『今日も彼は一人で黙々とトレーニングを続けている。あの事故があって以来、彼は何かに取り付かれたように、そう、鬼気迫る感じだったのだ。』

マサミ「タクミ君、ちょっと休憩しなさいよ。」
タクミ「もう一本やります。」
マサミ「あまり無理しないで、何が君をそんなに駆り立てるの?」
タクミ「あの事故が悔しくて・・・だからもっと速くなって、だれにも邪魔されずにゴールテープを切りたいんです」
マサミ「タクミ君・・・」

マサミ『私は返す言葉がなかった。彼の悔しさは彼にしかわからないから・・・』

その時、マサミは背中に視線を感じた。

マサミ「?」

遠くからミオが見ている。

マサミ『またあの子だ。あの事故の日以来、あの子が見ている。それもタクミ君がいるときに限って・・・』


(続く)
...2005/05/01(Sun) 00:34 ID:W7OpJIu2    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
「マサミとハルカのダイアリー 2」

ハルカ『2学期が始まりました。』

(1年B組の教室)

竹中先生「これで授業を終わる。」
ミオ「起立!礼!」

ハルカ『わたしはふと、ミオの方を見ました。休み時間なのに席を立たずに、ノートに書き込みを続けているミオ・・・どうしたんだろう?』

ハルカ「ねえ、ミオ、今度の日曜日に映画行かない?」
ミオ「(ビックリして顔をあげる)」
メグミ「(ミオのノートを見て)あらー、あらー」

ハルカ『ミオのノートに書いてあったもの、それはタクミ君の似顔絵でした。ミオとタクミ君は席が隣同士。でも、二人が口をきいたところは見たことがありません。』

ミオ「(顔を赤らめる)」
ハルカ「メグ、よしなよ。からかっちゃ可愛そうじゃない」

ハルカ『きっと、ミオの気持ちは、今のわたしと同じかもしれません。わたしも気になる人がいます。思い出すのは彼のことばかり。もしかしたら、恋をしてるのかも、私もミオも。』


〜文化祭の日〜

マサミ『この頃、私の精神状態は最悪だった。目の前でケンとアキが駆け落ちし、行方不明のままだった。ケンに情が移ってしまい、止めることが出来なかった。後悔とともに、自分を責める毎日だった。』

タクミ「先輩!」
マサミ「へ?」
タクミ「どうしたんですか?ボンヤリして?」
マサミ「別に何でもないよ。そうだ、ちょっとお茶しない?」

マサミ『年下の男の子を誘うなんて、何て大胆な私。でも、その時はごく自然にタクミ君を誘えたんだ。ケンとアキの駆け落ち事件を知らない人と話をしたかった。ユイやシンジは私のことを心配してくれてる。泣きたくなるほど有難い。でも、お互い気を使いながら話すのはちょっと疲れる・・・』

マサミ『喫茶店に入ると私は話し続けた。止まらなかった。最近読んだ本のこと、好きな映画のこと、手品のこと・・・タクミ君はイヤな顔をすることなく聞いてくれた。』

タクミ「先輩、今度は僕の話聞いていただけます?」

マサミ『今度は彼の話が止まらなかった。でも、話を聞いてて心地良かった。そして・・・』

タクミ「僕、ちょっと気になる人がいるんです。」
マサミ「気になる人?」
タクミ「はい、席が隣で、朝『おはよう』と言葉交わすんです。」
マサミ「それ以外に話したことある?」
タクミ「朝の挨拶だけです。だから、片思いなんですよ・・・」
マサミ「片思いか・・・わたしも片思いしてて、ついこの間フラレちゃったよ・・・(涙ぐむ)」

マサミ『みっともないわたし。後輩の前で涙を見せるなんて・・・』

タクミ「先輩みたいな素敵な人をフルなんて、許せないな。どこの誰ですか?ぶん殴ってやりますよ」
マサミ「まあまあ、そう乱暴しないで。それより、その子と速く両想いになれるといいね。応援してるよ」

マサミ『タクミ君、ゴメン、心にもないこと言っちゃって・・・。あの時はとてもそんな気分になれなくて、タクミ君が羨ましいような妬ましいような・・・ヤナ女だね。君を心から応援しようという気持ちになれたのは、それからしばらくして、律子さんと出会った後だった。』

(続く)
...2005/05/01(Sun) 00:38 ID:W7OpJIu2    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
「マサミとハルカのダイアリー 3」

12月中旬

マサミ『この頃になるとわたしは、大沢先生や律子さんのお陰で精神的にも余裕を取り戻していた。タクミ君の片思いはどうなったかな?』

(廊下)

マサミ「タクミ君」
タクミ「先輩」
マサミ「あれからどうなった?」
タクミ「いや、それが・・・」
マサミ「全然進展なしか・・・」
タクミ「はい・・・」

マサミ『タクミ君が意地らしい。キューピット役をやってあげようかな。でも、誰なんだろう?隣の席の子って言ってたけど・・・」

マサミとミオがすれ違った。

マサミ『あれ、どこかで会ったことがある・・・想い出せない・・・』


(1年B組の教室)

ハルカ『ミオ・・・タクミ君と全然話してないじゃない。このままでいいの?』

メグミ「ハールカ!」
ハルカ「びっくりしたー」
メグミ「人のことより、自分の心配した方がいいんじゃない?」
ハルカ「え?」
メグミ「久仁見くんってさ、幼馴染のガールフレンドがいるんだよ。松崎高校の天宮ヒカリさんというんだって。」
ハルカ「でも、同じ学校の立花ヒデオくんの彼女だって聞いたけど?」
メグミ「そんなのわかんないわよ。うちの学校の3年生で立花くん狙ってる人がいるっていう噂よ。その人が立花くん落としたら、ヒカリさんはフリーになって久仁見くんと・・・」
ハルカ「メグ、やめて!」

ハルカ『そうなんです、メグの言うとおり、他人の心配をしてる場合じゃないんです。こうなったら行動を起こさなきゃ・・・』

『そして2016年の大晦日、わたしは久仁見くんと初詣に行く約束をしました』

ハルカ「わっ」
アキ「あ〜ハルカちゃん」
ハルカ「皆さん、こんばんは」
レイコ「こんばんはぁ」
マサミ「こんばんは」

マサミ『ハルカちゃん・・・この子がアキの可愛い妹分ね』
ハルカ『野球部のことでいろいろお世話になったアキさんに偶然会いました。そして、マサミさんとお話したのはこの日が初めてだったのです。よし、先輩方の前で久仁見くんとの既成事実を作っちゃえ!』

アキ「デート?」
ヒロ「違いますよ、単に付き添いなだけです」
ハルカ「デートですよ、ね」
ヒロ「付き添いですよ」

ハルカ『久仁見くん、ツレナイ!どうして?』

アツシ「あ、いた」
アツシ「ヒロ〜俺と初詣行く約束だったろ〜」

ハルカ『野田君、御免、今日は邪魔しないで・・・』

ヒロ「デート中なんだけど」
アツシ「お前は友情より愛情を取る人間なんだな」

ハルカ『今、デートって言ってくれた・・・うれしい!』

ハルカ『そして、おみくじをやって初詣は解散となりました。わたしはマサミさん、レイコさんと一緒に帰りました』

マサミ「ハルカちゃん、うらやましいな。あたしたち、まだ彼氏いないから」
レイコ「だよねー」
ハルカ「でも、久仁見君の気持ちがまだわからないんです。やっぱり片思いなのかしら。実は、わたしのクラスメートでやっぱり片思いしてる子がいるんです。席が隣同士なのに話したことないらしくて・・・その子が進展すれば、私も進展できるような気がして、応援してるんです」
マサミ「あたしの後輩でも片思い中の子がいるよ。やっぱり席が隣同士なんだけど、話したことないって。」
ハルカ「へー偶然ですね」

ハルカ『その時、マサミさんの後輩がタクミ君だとは思いませんでした。』
マサミ『いつもタクミ君を見ていた女の子。その子が、ハルカちゃんのクラスメートでタクミ君が片思い中の相手だったなんて・・・その時は全然考えなかった』

(続く)

※初詣場面のセリフの一部はたかさんの作品より引用させていただきました。
...2005/05/01(Sun) 00:44 ID:W7OpJIu2    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
「マサミとハルカのダイアリー 4」

3月○日
(宮浦高校グランド)

マサミが部員を集めていた

マサミ「みんな、お疲れさま。これからも頑張ってね」
部員一同「先輩、ありがとうございました。お元気で。」
そして、タクミが代表してマサミに花束を渡した。
マサミ「タクミ君、頑張れよ」
タクミ「はい」

(野球部室)

勧誘のチラシとポスターを作っていたハルカとミオ

ハルカ「出来たー、ミオがマネージャーに加わってくれたから大助かりだよ。」
ミオ「そう言ってくれると嬉しいよ」
ハルカ「これから、どうするの?」
ミオ「うん・・・」

ミオはカバンからサイン帳を出した。

ミオ「ちょっと行ってくる、陸上部まで」

ミオが陸上部室へ向かうとタクミがやって来た。

ミオ「会田君、転校の記念にサインして」

ミオはサイン帳を差し出した。タクミはびっくりした様子だったが、あるメッセージをしたためた。

タクミ「じゃ」
ミオ「じゃ」

そして二人はそれぞれの部室に戻った

(陸上部室)

マサミ「サインして来ただけ?」
タクミ「はい、『君の隣は居心地がよかったです』と書いてきました」
マサミ「それで終わっていいの・・・」
タクミ「いや・・・それは・・・あ、ペンをサイン帳にはさんだまま渡しちゃった」
マサミ「返してもらいに行けばいいじゃない」
タクミ「でも、バスに乗り遅れるから・・・」
そう言ってタクミは部室から飛び出して行った

マサミ『あーあ、ダメだこりゃ』

(野球部室)

ハルカ「サインもらって来ただけ?」
ミオ「うん、これでいいの。」

ミオはサイン帳にはさまったペンを出した。

ミオ「これはタクミ君のペン。すぐ返しに走れば返せると思う。でもわたしは行かない。持っていればもう一度会えるかもしれないから。返したいって電話すればいい。そうすれば彼に会える。電話をすればいい。ペンを返しますって言うだけだから・・・」
ハルカ「そっか・・・頑張れ、ミオ」

(校門)

マサミ「ハルカちゃん、また一緒ね」
ハルカ「そうですね。今日は行きも帰りも一緒」

ハルカ「マサミさん、今日ちょっと楽しいことがあったんです」
マサミ「そう、あたしはじれったいことがあったんだ」
ハルカ「当ててみましょうか?」
マサミ「どうぞ」
ハルカ「タクミ君のことでしょ?」
マサミ「大当たり、あいつ、バスに遅れるからってトットと帰っちゃうんだもん・・・」
ハルカ「でも大丈夫です。相手の彼女、タクミ君のペンを預かってますから・・・また会うチャンスありますよ。」
マサミ「その彼女、ハルカちゃんの知り合い?」
ハルカ「はい、野球部のマネージャー仲間の榎本ミオさんです。」
マサミ「いつもタクミ君を見てた子だよね」
ハルカ「そうです、大当たり!」
マサミ「あたし達はタクミ君とミオさんの応援団をやってたわけか」
ハルカ「そうですね」
マサミ「今度は自分たちの番だね。久仁見くんとはその後どう?」
ハルカ「まだ、ボチボチなんです・・・」
マサミ「よし、今日はマサミ姐さんのオゴリでお茶しよう。あたしは東京で素敵な彼氏をゲット出来るように、ハルカちゃんは久仁見くんと進展があるように、決起集会やろう。」
ハルカ「レイコさんも呼びましょうよ」
マサミ「いいねー」

(喫茶店)

レイコ「お待たせ」


(テーマソング「over...」by K)

あの日見た夢の影が
夕焼けに伸びてる
ふと君がいるような気がして
僕は振り返るよ

いくつもの季節(とき)が
すべてを虚ろにしてくけど
記憶の中の君は現在(いま)も
優しくわらってる

諦めるよりも辛いよ
“失くすこと”に慣れちゃ
何もしない後悔より
・・・いっそ打たれてたい
明日(あした)は強くなれるかな
今日の僕よりも
君もどこかでわらってる
泣きたい時でも・・・きっと

(Lylics:shingo Music:tetsuhiro)

マサミとハルカのダイアリー
     FIN


※この作品は、映画「いま、会いにゆきます」を参考とさせていただきました。
...2005/05/01(Sun) 00:48 ID:W7OpJIu2    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:たか
はい、こんにちは。かなりご無沙汰しとりました。

環境が変わり、相当なペースダウン状態ですみません。

なんとか時間があるときに書いていきますので、よろしくお願いします。
...2005/05/01(Sun) 14:36 ID:F26a15mM    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
SATO様
再掲載お疲れさまです。
マサミがタクミのことを「タクちゃん」と呼んだら、富良野を舞台にしたあのドラマみたいだなあ、と他愛もないことを考えてしまいました(苦笑)

たか様
急かさないで、待ってます。
これからも、よろしくお願いします。
...2005/05/02(Mon) 02:38 ID:XAPAyNpQ    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
たか様
高校生活はいかがですか?
新作を「気長」にお待ちしてます。

朔五郎さん
「タクちゃん」を考えたのですが、マサミがあまり馴れ馴れしくすると、ミオの立場がなくなると思いましてこの呼び方にしました。「イマアイ」にマサミ・ハルカが出て来るイメージなのですが、自分の作品ながら気に入っております(^^)
...2005/05/03(Tue) 09:18 ID:UXY72H1k    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
連続ネット小説・ユイの細腕奮闘記32
(ある青年の物語)

※間が開いたので、これまでのアラスジです。
ユイの母・ノリコが腰を痛めて入院してしまった。仲間の助けもあり、店を切り盛りするユイ。そんなユイを気遣った従兄弟のケイタは時々自宅に呼んで夕食をともにするようになる。ユイはケイタの娘・リカからキャッチボールをしてくれとせがまれ、家にグローブを取りに行く。その道中でユイはソフトボールに打ち込んだ中学時代、ソフトを断念して音楽に青春を燃やした高校時代を振り返っていた。


日曜日、ユイは法話会にやって来た。
本堂では、昨日声をかけてきた僧が檀家と思われる女性と話をしていた。

ユイ「お坊さん、おはようございます。本当に来ちゃいました。」
僧「いらっしゃい、お待ちしてましたよ。」
女性「あら、ユイちゃん」
ユイ「サチコさん、何でここにいるの?」
僧「お二人は知り合い同士ですか?」
サチコ「義理の従兄弟ですの。ユイちゃん、実は私、このお寺の檀家なのよ。こちら、住職の中川顕良さん。」
ユイ「仮屋ユイです。」
顕良「はじめまして、といっても二度目だね。昨日もお話しましたからね。」
サチコ「まあ、そうでしたの?」

顕良の法話会が始まった。

顕良「皆様、おはようございます。昨日、偶然私の出身高校の生徒さんに会いました。私にもこんな時代があったんだな・・・と高校時代が想い出されました。そこで、今日は私の高校時代の友人についてお話させていただきます。」

そして、顕良は語り始めた。彼の高校時代のクラスメート、松本朔太郎と廣瀬亜紀の恋の物語だった・・・

顕良「実は、私も亜紀さんが好きでした。でも、朔太郎君の方が一枚上手でした。彼女のために殴りあいの喧嘩までしたのですから・・・完全に負けたと思いました。では、本題に入ります。」

顕良の語りは続く。亜紀の発病、仲間と病室で披露した劇、亜紀に献身的に尽くした朔太郎、皆で撮った二人の結婚写真、そして、亜紀との別れ・・・

顕良「しかし、話はここで終わりではないのです。亜紀さんを亡くした後、朔太郎君は現実を受け入れることが出来ませんでした。彼は何かから逃げるように必死で勉強し、東京の医大に進学しました。それから17年間、彼は故郷に戻って来ませんでした。その間、彼が何を思いながら過ごしてきたのか、私には判りません。しかし、その17年間、彼は医師として亜紀さんを奪った白血病に闘いを臨んでいたです。そして、その闘いがあったからこそ、今の朔太郎君がいるのです。17年ぶりに故郷に戻って来た時、彼は亜紀さんに、そして私たちに語りかけました。『生きている限り、亜紀と僕とは遠くなるばかりだろう。だけど、僕は走るのをやめない。走り続ける僕たちの足跡は君がいた証だから。走り終わったその時に、君に笑って会えるだろう・・・』彼は決して逃げてはいませんでした。亜紀さんと向き合えるようになるまで少々時間はかかりましたが。
今、彼は胸を張って生きています。一緒に走る人がいます。そして、これからも彼は走り続けるでしょう。」

ユイは感動したように顕良の話に聞き入っていた。

顕良「これで朔太郎君の話を終わります。生きていると楽しいことばかりではありません。苦しいこと、悲しいこと、辛いことの方が多いかもしれません。でも、必ず意味のあることだと思うんです。朔太郎君の17年間が長かったのか、短かったのかは彼本人にしか判りませんが、亜紀さんとの別れから始まった年月は、彼にとって大きな意味のあるものだったと今では思うのです。」

寺からの帰り道、ユイとサチコが語らっていた。

ユイ「今日のお話、とてもスケールが大きくて、感動しました。愛しあう朔太郎さんと亜紀さんの話はとても素敵でした。でも、その後を必死で生きた朔太郎さんはもっと凄いと思います。私にそんな生き方できるかな・・・」
サチコ「ユイちゃんは出来てるよ、そういう生き方。」
ユイ「そうですか?」
サチコ「ええ、大丈夫よ。」

途中でユイと別れたサチコは思った。

サチコ「ユイちゃん、きっとまた、ソフトボールと向き合える日が来るよ。わたしの主人がそうだったから・・・」

(続く)
...2005/05/03(Tue) 22:48 ID:4fc7Aumw    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
みなさん、こんにちは。
さらりと終わるはずだった香川編に大苦戦している最中です(涙)

SATOさん
顕良も立派な住職になったようですね。
ところで、奥さんは(^^)
...2005/05/04(Wed) 17:49 ID:gsR32xGo    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:たー坊
お疲れ様です。
今回も読ませていただきました。

SATO様
ボウズは、ご法話ができるまでに精進したのですね。それまでには、かなりの修行をしたのだと思います。ですので、朔五郎様のおっしゃっておりましたが、やはり幸せが舞い降りて欲しいです。
可愛い、亜紀以上の奥さんがいれ場と思います。
次回も期待しております。

朔五郎様
香川編に苦戦とのことですが、私をはじめ、期待している方がおられると思いますので、ご自身が納得できる作品ができるまで、熟考して頂きたいと思います。
ゆっくりした気分でお待ちしております。
...2005/05/04(Wed) 21:26 ID:WxB2FkQI    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
95の続きです。


香川編 〜 木庭子町のお正月(その5)

岡山駅のホームで、快速マリンライナーが入線してくるのを待つ間に、ミライは木庭子町の家に電話をかけようとしていた。
「快速に乗れば1時間で高松に着くから、高松駅まで車で迎えに来てもらおう」
「あ、待って、サク」
「え?」
「木庭子町には路面電車が走ってたじゃない。あれに乗ってみたいな」
「そうすると、乗り換えが2回増えちゃうけど」
「全然平気だよ」
ミライはちょっとの間考えてからつぶやいた。
「じゃ、そうするか」

「サク、さっきの続きだけど《別の世界》ってどんな世界なんだろう」
「この子はアボリジニの人々の世界観に共感を感じているよね」
「うん」
「とすればやっぱり、地下の聖なる泉のある場所、ということかな。そして姿は見えなくても、時々こちらに顔を出す・・・」
「天国とかあの世とかではないわけよね」
「アボリジニの人々の宗教観っていうのはアニミズムの一種なんだ」
「サク、難しい言葉を知ってるね」
「ついこの間、文化人類学の講義でやったんだ」
「アニミズムってどういうことなの?」
「簡単にいえば、自然界や人間界のあらゆるモノが神や霊を宿して礼拝の対象になりうるっていう考え方だよ。生命の源は精霊で、精霊は自由にこの世界を動き回る。その精霊が出産適齢期の女性に乗り移ると子供が生まれると考えられてきた。精霊が宿り、やがて死んでまた生まれ変わって行く場所を聖地として大切にしていたんだ」
「その場所の一つがウルルなのね」
「そう」
「ねえ、夢島の蛍の群れが精霊だったとすれば、それは死者の群れであると同時に、赤ちゃんの予備軍でもあったというわけね・・・」
「うん。肉体はあくまで《着ぐるみ》なんだ。そのコスチュームをどんどん着替えていくように、生命の実体である精霊は何度も生まれ変わる。不滅なんだよ、この世界の中で」
「天国なんて全然必要ないわけね」
「だから《別の世界》っていうのも本当は無いんだろうね。すぐ横にいるのに《現在人間として生きている者》には認知できない。そんな状態になることを《別の世界に行ってしまった》と思うんだね、きっと」
「あ、わかるような気がしてきた」
「何が?」
「この男の子は、女の子が死んでしばらくして、顔とかの記憶はだんだん薄れていく。だけど、いろんな場所で少しずつ彼女の存在を感じるようになるわけでしょ?」
「ああ」
「つまり、彼女の生命、彼女の実体というのはあくまで精霊なのね。肉体は滅びても、その実体は永遠に生き続ける」
「うん」
「そして彼は、精霊となって自由に動き回る彼女、いろいろなものに宿る彼女と、あちらこちらですれ違うわけよね」
「そうだね。でもその姿を見ることはできない」
「見えないけれども、感じることができる・・・」
「一つの謎は解けたね。彼女の言葉・・・《わたしの身体がここにないことを除けば、悲しむことなんて何もないんだから》《ここからいなくなっても、いつも一緒にいるから》《自分がどこへ行くかわかっているから(○○はどこへも行かないよ)ええ、そうね・・・そのことがわかっていると言いたかったの》・・・こういう言葉は全部説明できるよね」
思い出したようにマサミが言う。
「時々顔を見せた《別の人格》は彼女として生まれ変わる前の人格だったのかな」
「そうかもしれないね」
ミライがふうっと息をつく。
マサミは、そんなミライを、どうしてこんなに愛しいんだろう、とでも言いたげな表情で見ていた。

「お下がりください。お待たせしました、快速マリンライナー・高松行き、入線です・・・」

「来たね」
二人はすばやく車内に入ると、席を確保した。
「やっぱり混んでるねー」
「帰省ラッシュだからね」

「ねえ、サク」
「続き?」
「うん。最後に校庭で撒骨するシーンは、夢島の夜のシーンのリフレインになっているじゃない?」
「ああ。横にいる新しい彼女の人格が急に変わったように見える・・・桜の花びらが散り、その花びらに紛れて、○○の灰はすぐに見えなくなった・・・帰って行ったんだね、彼女は」
「彼は気付いたんだ、きっと」
「何に?」
「彼女は自由に、いろんなところに存在している。それが本来あるべき状態なの。それを理解できるようになった今、彼女の一部を自分のもとに拘束しても、それはもう無意味なことだと。彼女を帰そう、自由にしてあげようと・・・」
「彼が撒いた灰が単なる物質じゃなくて、彼女の実体の一部だってことは、花びらに紛れてすぐに見えなくなった、っていう表現を見ればわかるよね」
「蛍が帰っていった時と同じ表現だもんね」
「でも、心が動いた最初のキッカケはなんだったんだろうね・・・《この世界には、はじまりと終わりがある。その両端に○○がいる。それだけで充分な気がした》・・・どういうことなんだろう?」
「ねえ、サク。私、ちょっとわかるような気がするな。この男の子にとっての世界のはじまりにはすでに彼女がいたでしょ」
「うん」
「それから、宇宙の時の流れから見ればほんの一瞬だけど、二人にとって幸せで濃密な時間があった。でも、その世界はあっという間に弾け飛んでしまった」
「ビッグバンみたいなものか」
「うん、そう。あのね、宇宙には《開いた宇宙》と《閉じた宇宙》があるんだって。今、私たちのいる宇宙はどちらだか判っていないんだけど、《開いた宇宙》だとすると、ビッグバンの後、永遠に膨張を続けて、最後には冷え切った死の世界になるんだって」
「《閉じた宇宙》だとすると?」
「永遠に膨張が続くように見えた宇宙も、ある瞬間から収縮に転じるんだって。そして、最後には元の一点に収束していくの。横軸に時間、縦軸に宇宙の広さをとると、こんな形になるのかな」
マサミは空中にラグビーボールのような形を描いて見せた。
「彼は自分の世界が《小さな閉じた宇宙》だと確信したのかな」
「うん、私はそうだと思う。砕け散って、もう二度と巡り合うことなんかないと思っていても、人間の一生なんか遥かに超えた長い長い時間の後に、お互いに元の場所に戻ってくる」
「そして、それが終焉の時なんだね」
「うん。でも彼女は、はじまりと終わり、ちょうどラグビーボールの両端のところで彼のそばにいることになる」
「この場合の彼女は精霊としての存在じゃなくて、白血病で死んでいった《彼女の人格》だよね」
「もちろんそうよ。でも、でも・・・《またわたしを見つけてね》《すぐに見つけるさ》・・・美しいけど、すごく悲しい会話ね」


(続く)
...2005/05/04(Wed) 22:54 ID:gsR32xGo    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
たー坊様
激励ありがとうございます。
頑張ります(^^)
...2005/05/04(Wed) 22:58 ID:gsR32xGo    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
連続ネット小説・ユイの細腕奮闘記33
(リカとの約束)

法話会から数日後、ユイが学校から帰る途中である。
川沿いの道を自転車で走っていると・・・

ユイ「あら?」

子供「ウェーン・・・・」
道端で子供が泣いている。そして母親がそれをなだめていた。川に何か落としたのだろうか。

川に目を転じると、法衣をまとった僧が川に入って探し物中であった。

僧「あった!おーい、これかい?」
僧は竹トンボを振りかざす。

子供「うん、それ」
母親「よかったねー」

川から上がってきた僧は子供に竹トンボを手渡した。

母親「どうもありがとうございました。ほら、ありがとうは?」
子供「お坊さん、ありがとうございました」
僧「どういたしまして。」

僧は合掌して親子を見送る。

ユイ「顕良さん!」

僧はビックリして振り向いた。

顕良「えっ、あっ、ユ・・・ユイちゃん・・・」
ユイ「今日は」
顕良「あ、こ、今日は・・・」
ユイ「(顕良の慌てようにおかしくて吹き出す)どうしたんですか?」
顕良「見てた?」
ユイ「はい、見てました。顕良さん、カッコよかったですよ。」
顕良「そう?ハハ・・・見られてたかと思うと照れくさいな。困ってる様子だったからほっとけなくて。この次はあの子が誰か困ってる人がいたら助けてあげて欲しいんだけどね。」
ユイ「そうですね。最近、お互いに助け合うことが少なくなってるじゃないですか。子供のころからそういうのを教えないと・・・」
顕良「そのためには我々大人が率先して助け合いの精神を持たなければならないと思うんだ。会っても挨拶しない人が増えてきたしね。おかしな世の中になってきたよ・・・
でも、ユイちゃんはちゃんと挨拶できるね。」
ユイ「母から『人に会ったら挨拶しなさい』と口やかましく言われましたから。」
顕良「いいお母さんだね。あっ、そろそろ寺に戻らないと。服がビショビショだから乾かさなければいけないし。」
ユイ「さようなら」
顕良「さようなら」

歩き去っていく顕良を見送りながらユイは思った。この病んだ世界に生まれてきた子供たちのために何かしたい・・・でも自分は何ができるんだろう?答え探しの日々が始まった。

******

家にグローブとボールを取りに戻ったユイが木所家に再びやって来た。

ユイ「今戻りました。リカちゃんは?」
サチコ「居間にいるわよ」

リカ「お姉ちゃん!」
居間からリカが飛び出してきた。

ユイ「ごめんね、遅くなって」
リカ「お姉ちゃん、もう忘れないって約束してくれる?」
ユイ「うん、約束する」
リカ「キャッチボール下手でもいい?」
ユイ「うん、いいよ。」
リカ「上手くなるまで教えてくれる?」
ユイ「うん、教えてあげるよ。」

そして、どちらからともなく手を出し、ユイとリカは指きりを始めた。

サチコ「ほらほら、二人とも、暗くなるから早くやってらっしゃい」
ユイ・リカ「はーい」

(続く)


ター坊さま
コメントありがとうございます。実は、ター坊様のストーリーでボウズに春が来たの刺激されて、私のストーリーでも活躍してもらいたくなりました。

朔五郎さま
香川編の続きこれからも楽しみにしております。
...2005/05/06(Fri) 00:33 ID:.u81XqFg    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
みなさん、こんばんは。
どっぷりとアニミズムに浸っております(笑)

ちなみに、アイヌの人々も「アニミズム」的な世界観をもっているのですが、こんな考えかたをするそうです。

「人間は、自然界の中で最も下に位置している。太陽の光は緑を育み、ウサギは他の動物の餌になって自然界に貢献している。人間は何の役にも立っていない。それでは人間は何のために存在しているのだろうか。ただ一つ、神に祈るためである」

「恋するソクラテス」の女の子が読んだ、アボリジニ関連の本の中にも似たようなことが書かれていたのでしょうか。もし、書かれていたとすれば、大きな謎が解けるような気がします・・・
...2005/05/06(Fri) 00:37 ID:fW13KZ8M    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
SATO様
ユイは、やはりソフトが大好きなのですね。
ユイ自身が復活するのか、それともリカの中にその夢が生き続けるのか、今後を楽しみにしております(^^)
...2005/05/06(Fri) 00:43 ID:fW13KZ8M    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
連続ネット小説・ユイの細腕奮闘記34
(リカとの約束・2)


ユイとリカは海岸にやってきた。
しかし、リカはボールを握るのははじめてのようだ。

ユイ「そっか、初めてか。じゃ、ボールの握り方からやろうね。よく見て、こうやって握るんだよ。」

ユイはボールの握りをリカに見せた。それをキラキラ光るような目でじっと見つめるリカ。

ユイ「今度はリカちゃんがやってみて」

ボールを握ったリカの手を確認するユイ。指の位置を直したりしながら・・・

ユイ「これでよし。投げるときの腕の振りはこうやるの。」

ビュン!ユイがシャドーピッチをしてみせた。2回、3回と繰り返す。そんなユイをリカは憧れの目で見つめ続ける。

ユイ「じゃ、リカちゃん、投げてみよう。最初はお姉ちゃんが身体動かしてあげるから、力抜いて。」
リカ「うん・・・」

ユイはリカの身体に手をそえてボールを投げさせる。
ユイ「それ!」

ポトン・コロコロコロ・・・・

リカ「・・・・」
ユイ「大丈夫だよ、さあ、もう一回やろう」

繰り返しているうちに、リカは少し前に投げられるようになった。

ユイ「今度は一人で投げてみて。お姉ちゃんに向かって投げてきて。」

ユイはキャッチャーのようにしゃがんでグローブを構えた。

ユイ「(ポン!とグローブをたたいて)さあ、リカちゃん!」

リカがボールを投げる。しかしボールはユイまで届かない。ボールを拾ったユイはリカに投げ返す。

ユイ「さあ、もう一球」

ユイに向かってボールを何度も何度も投げるリカ。そのうち、ゴロで届いていたのがツーバウンドになり、ワンバウンドになり・・・
そして、リカが投じた球が・・・
ポン!ノーバウンドでユイに届いた。

ユイ「やったー!」
リカ「お姉ちゃん!」

はじける笑顔のユイはユイはリカに駆け寄る。そしてリカはユイに抱きついた。

ユイ「よかったね、その調子だよ」
リカ「リカね、もっとうまくなりたい。そしてパパみたいに甲子園に行くの。」
ユイ「え?」
リカ「この間、パパがビデオ見せてくれたの。パパ、甲子園でホームラン打ったんだよ。カッコよかったよ。」
ユイ「そうか・・・もっとうまくなろうね」
リカ「お姉ちゃん、また教えて」
ユイ「うん(甲子園のことは突っ込みなしだね)」

ユイ『ボールを投げるのがこんなに楽しかったなんて・・・いつ以来だろう、こんな気持ちになったのは・・・』

ユイとリカを迎えに来たサチコはそんな二人を笑顔で見守っていた。

(続く)


朔五郎さん
コメントありがとうございます。
「海の時計」のニノでもない、アズでもない、ユイならではの展開を考えております。
...2005/05/07(Sat) 22:40 ID:6h.cP3FU    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
みなさん、おはようございます。
昨夜遅く、TBSを観ながら創作しておりましたら、舞台版セカチューのCMが繰り返されておりました。
テーマ曲はあのまま使うのでしょうか?

あと、ご存知とは思いますが、CIRCUSという雑誌の表紙&グラビアを綾瀬はるかさんが飾っています。「亜紀」でも「みちる」でも「もーらい」でもない、どこか異界を連想させるような写真で、今までにない美しさがあります。一見の価値があると思います。
...2005/05/08(Sun) 07:57 ID:.7rFTEWc    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
鎌倉の寺へ行って座禅を体験してきました。
慌しく過ごす毎日の中に、無の境地になれる時間も必要かな、と思いました。
座禅が終わったあと、お坊さんからお話があり、「今日は母の日です、おなかを痛めて皆さんを産んでくださったお母さんに感謝の気持ちを持ちましょう。そして今、ここに生きていることに感謝の気持ちを持ちましょう。」とのお言葉に当たり前だけど、大切なものが忘れられているのでは、との気持ちを強くしました。

※ボウズの法話会のストーリーを投稿したので、実体験してきました。

※ボウズは、ユイ編のゲストだけでは勿体無いので、野球好きの息子を交えた新作を考えております。彼には是非野球がやれるようにしてあげたいです。「セカチュー」でもあり、「H2」でもあるストーリー創りを楽しみたいと思います。
...2005/05/08(Sun) 13:31 ID:bOSkdps.    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
ボウズ&息子編の出だしはこんな感じでしょうか
とりあえずテスト投稿ということで・・・


『2017年夏、わたし達宮浦高校野球部は地区予選に向けた合宿に入りました。合宿所はとあるお寺。ある部員のお父さんが是非使ってとおっしゃって下さり、私たちはご好意に甘えることになったのです。』

アツシ「でも、ここで合宿するなんて思わなかったよ」
ヒロ「そうだよな・・・」
ハルカ「余計なおしゃべりはしないで、荷物運んで下さい。遊びに来たんじゃないですからね。厳しい修行も待ってますよ(笑顔)」
ヒロ・アツシ「えー!!」

 **********

『話は節分の日に遡ります。久仁見くん、野田くん、立花くん、ヒカリさんと豆まきをするためにこのお寺にやって来ました。そして豆まきが始まったときのことです。』

アキヒロ「コラ、うるさいぞ、静かにしろ」
ヒロ「あ、すみません・・・って、あ」
アキヒロ「ヒロじゃねぇか」

『彼の名前は中川アキヒロ君。ここのお寺の住職さんの息子さんです』

アキヒロ「あんたが立花ヒデオか」
ヒデオ「そうだよ」
ヒカリ「野球に興味あるの?」
ヒロ「どうして高校で野球しないんだ?」
アキヒロ「親父がさ、どうしてもだめだって。坊さんの修行があるんだ」
アツシ「なぁ、考えられないか?」
アキヒロ「何度も話したんだけどな。どうしてもダメって」
ハルカ「野球部はいつでも大歓迎ですよ」

『彼はお坊さんの修行が忙しく、野球をやらせてもらえないと言っていました。でも、わたし達と野球の話をした時の中川君の目は、野球がやりたいと訴えているようでした。』


とまあ、こんな感じです。
『』部分はハルカのモノローグです。
ユイ編の「後片付け」が終わったら本格的に取り掛かります(^^)
(豆まき場面のセリフはたかさんの作品から一部引用させていただきました。)

朔五郎さま
TBSで舞台の宣伝をやってるのですか?「あの歌」が舞台の主題歌になるとしたら・・・四国編の舞台が思い出されます。
...2005/05/08(Sun) 16:01 ID:nge97uaw    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
SATOさま
舞台のCMはびしばしオンエアされておりますよ(^^)主に深夜帯ですが。
主催がTBS/ニッポン放送という意外な(?)組み合わせなのです。ニッポン放送のほうでも流してるんでしょうかね?バックにはモロに「あの歌」が流れています
(^^)

今宵は「真柴みちる(TBS)」vs「広瀬亜紀(WOWOW)」の直接対決。皆さんはどちらのヒロインと過ごされますか(^^)
...2005/05/08(Sun) 19:18 ID:NRIVjE0o    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:グーテンベルク
 朔五郎様、SATO様、そして世界の中心で愛をさけぶ2を執筆されている皆様へ
こんばんは、グーテンベルクです。皆様が執筆しておられます素晴らしい物語をいつも楽しみながら読ませていただいております。物語の方、どんどん読み進めております。パート5到達もそう遠くないでしょう(嬉)これからも執筆者同士、皆様と一緒に頑張っていけたらと思っております。これからもよろしくお願いします。
...2005/05/08(Sun) 20:38 ID:/napU.n6    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
グーテンベルク様
アナザーワールドもピッチが上がってきましたね。うっかりすると私のほうも置いてけぼりになりそうです(^^)

朔五郎様
残念ながら私の家ではWOWOWが入りませんので、真柴みちる・豪・徹生・幌他の面々と過ごしました。
「廣」瀬亜紀・水嶋泳吉(WB2)・小澤先生(SG)・牛若丸(義経)ではありませんので念のため。

※ユイ編に出てくるリカですが、みちるの妹・唄(すぐ泣くあの女の子です)をイメージしてます。
なので、登場してすぐに泣いていただきました。ご参考まで。
http://www.central-g.co.jp/talent/profile/t00010627.html
...2005/05/08(Sun) 21:59 ID:nge97uaw    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
SATOさま
リカちゃんは唄ちゃんでしたか。
いや、納得しました(^^)

私も、みちるさんと過ごしました。
...2005/05/09(Mon) 00:02 ID:0.W5488o    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
グーテンベルク様
ご感想、激励ありがとうございます。
アナザー・ワールドもパート3突入が近いようですね。
これからも、がんばりましょう。
...2005/05/10(Tue) 05:54 ID:4iybE5qQ    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:たー坊
お疲れ様です。たー坊です。
パート4も三分の一を消化し、ゆっくりと確実に物語が進んでいるので、私も一読者として楽しませていただいております。
また、私のストーリーにも、よくご感想を頂戴いたしましてありがとうございます。
また、ロケ地情報も頂きましたこと、重ねてお礼申し上げます。
次回も楽しみにしております。お互いに頑張っていきましょう。これからもよろしくお願いします。
...2005/05/10(Tue) 22:05 ID:y62XeVeg    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
連続ネット小説・ユイの細腕奮闘記35
(大切なもの)

木所家で夕食を終えたユイをサチコが途中まで送って帰るところである。

サチコ「今日もリカと遊んでくれてありがとね。とてもご機嫌だったわよ。」
ユイ「リカちゃんたら、食事してる時もケイタ兄ちゃんに甲子園にいく、甲子園に行くって・・・可愛かった。本当は女の子は甲子園には出られないんですけどね。」
サチコ「ユイちゃんも楽しそうだったわよ。ボールを投げてる時、とても嬉しそうだった。」
ユイ「そうですか?リカちゃんとの約束を守るためにキャッチボールやっただけなんですけど・・・」

サチコは「ホントかな?」と思った。ユイが泣きながらもうソフトボールはやらない、と言ったことをサチコは知っている。それで引っ込みがつかなくなっているのだろう・・・サチコはそう思った。

サチコ「うちの主人もね、野球が出来なくなったときはひどく落ち込んでたの。『朝起きると泣いている。悲しいからではない。夢から現実に戻ってくるときにまたぎ越さなくてはならない亀裂があり、僕は涙を流さずに、そこを越えることができない。』と言っていた。
本当に野球が好きな人だったわ。それから、彼、一念発起して大学入り直して、小学校の先生になったの。野球以外に生きる道をさがして必死でもがいてるようだった。わたしとの間に距離もできてしまった。でも、そのうち先生としてやっていく自信がついたのね。久しぶりに会った彼、表情が生き生きしていたわ。そんなときにユイちゃんのお母さんが少年野球の監督やらないかって声かけて下さったのよ。」
ユイ「知りませんでした。ケイタ兄ちゃんにそんな辛い時期があったなんて。子供たちと楽しそうに野球やってるところしか見たことなかったから。」
サチコ「そうでしょう?リカと甲子園の話してるときも本当に楽しそうだもの。」
ユイ「そうですよね」
サチコ「今のユイちゃん見てると、あの頃の主人を想い出すのよ。でもね、これだけは忘れないで。ソフトボールも音楽も、それ以外に経験してきたことも、みんなユイちゃんのものなのよ。どれかが欠けてもユイちゃんがユイちゃんでなくなってしまう。だから、ソフトボールも音楽も、大切にしてもらいたいな・・・」

サチコの話を聴いているユイの脳裏には仲間たちの顔が浮かんでいた。

*************

レイコ「あたしもね、自分のミスで試合に負けたあとは悔しくてボロボロ泣いちゃった。」

ユウタ「何か楽器できる?」
ジュリ「ジャズっておっさんのやるもんだべ?」
シホリ「立花クーン!」
ユカリ「ドラムかつげばダイエットになるかな?」

***************

サチコ「ユイちゃんはユイちゃんらしく、自分に正直になりなよ。ゴメン、あたし、何言ってるんだろう。お母さんみたいにお説教なんかして・・・(苦笑)」
ユイ「ううん・・そんなことないです。今日もご馳走さまでした。」
サチコ「じゃあね。」

自宅に戻ったユイはグローブを大切そうに磨いていた・・・


(続く)
...2005/05/11(Wed) 00:14 ID:Sjf06fRU    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
「いま、会いにゆきます」で共演した竹内結子さんと中村獅童さんが婚約されました。オメデトウございます。お二人のご多幸をお祈りいたします。


ということで、タクミ君とミオさんをお祝いして、仲間から祝辞をいただきます。

マサミ「タクミ君、ミオさん、本日はおめでとうございます。お二人が高校1年生のころからずっとお互いを思い続けてきた気持ちがとうとう報われましたね。応援し続けてきた私もとても嬉しいです。今日はお二人にとって門出の日。でも、始まりはすべての続きに過ぎません。ミオさんのお腹の中にいる赤ちゃんと一緒に三人で、あなた方はあなた方の今を生きていって下さい。応援しております。
・・・すみません、最後にもうひと言言わせて下さい。あなたたち、順番が違うのよ。
えへっ、今のは冗談。お幸せに。」
...2005/05/11(Wed) 21:02 ID:NXw.s.9M    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
舞台版で広瀬亜紀を演じる佐藤めぐみさんが出演している映画「銀のエンゼル」を観ました。彼女は絵が好きで東京の美大を目指す女子高生役を演じていました。父親との会話が少なく、家出を敢行しますが、停電で列車が立ち往生して結局戻ってくるというストーリーでしたが、大林アキのストーリーとどこか似ているように思いました(^^)

http://www.ginen.jp/index.html
...2005/05/11(Wed) 23:04 ID:0LWadVnA    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
竹内結子さんには(早世した)ミオさんの分まで幸せになってもらいたいです。
サトメグさんは、CMに出てくる「小太郎」という犬が意識の中に刷り込まれてしまいました(苦笑)
...2005/05/12(Thu) 01:09 ID:2G..k0tQ    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:たか
「バレンタイン」2
必死でユウタに追いつこうと走るジュリ

ジュリ「はぁ、はぁ」

すると帰る途中のユイと遭遇

ユイ「あれ、ジュリ?」

ジュリ「おー、ユイ」

ユイ「ユウタ君の家は向こうだよ?」

ジュリ「へぁ〜?マジで?くっそ〜」

ユイ「後ろ乗んなよ」

ジュリ「途中まででいいからね」

ユイ「わかってますって」
急いで自転車をこぐユイ

ユイ「お客さん、チョコ渡すのは初めてかい?」

ジュリ「えーと・・・うーん・・・」

ユイ「そのままゴールインできそうかい?」

ジュリ「わかんないよ、そんなの・・・」少し不安げに言った
15分くらいして・・・

ユイ「ほい、到着」

ジュリ「うぁードキドキもんだぁ」

ユイ「途中っつって家の前まで来ちゃったけど」

ジュリ「サンキュー」

ユイ「後は、頑張ってね」背中をポン、と叩いた

ジュリ「ありがとう、ユイ」

ユイ「じゃ、グッドラック」

ジュリ「よし・・・」
ピンポーン

ジュリ「・・・・・」
どうやらいない様子。家の玄関の前に腰掛けて待つことにした

続く・・・
...2005/05/12(Thu) 20:12 ID:MAndiY5w    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
たかさん
高校生活慣れました?
また楽しいストーリーを投稿して下さい。
学校生活で見たもの・聞いたものを日記がわりにストーリーにしていただくのもいいかと思います(^^)

朔五郎さん
そうですね。メグミの話を作る機会があったら是非「コタロウ」くんにも登場してもらいたいですね。
...2005/05/12(Thu) 20:49 ID:0mW303GM    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
おまけのコーナーです。

2025年春、桜の花びらが舞う頃
廣瀬真は、大林アキの家を訪れていた。
「よくおいで下さいました。奥様は・・・」
達明が尋ねた。
綾子は、軽い脳梗塞で一時入院していたのである。
「おかげさまで退院できましてな。特に後遺症もなくて助かりました。デイケアセンターの佐久間マサミさんはアキさんの同級生でしたな?」
「はい」
「彼女にはいろいろお世話になりました・・・感謝しています」
真はお茶を少し口に含むと、姿勢を正した。
「アキさん。今日はお願いがあって来ました」
「私に?・・・」
「はい。実は今回のことでちょっと不安を感じましてな、松崎にある医療サービス付きの老人マンションに入ることにしました。マサミさんも賛成してくれて」
「・・・・・」
「幸い、そのくらいの蓄えはありましたので・・・」
真は続けた。
「あの家も処分するつもりでしたが・・・あの家が無くなると、私の娘が帰る場所が無くなってしまうような気がしましてね・・・いや、バカバカしいと言えばそれまでですが」
「廣瀬さん」
達明が思わず目を伏せる。
「それでね、アキさん。アキさんは薬剤師として立派に仕事をしている上に、絵本作家としてデビューを果たし、子供たちに生命の大切さを訴えている・・・すごい反響だと聞いている」
「いえ、まだ駆け出しなので」
「・・・綾子とも話したんだが、アキさん、あの家を仕事場として使う気はないかい?」
「貸していただけるんですか?」
「いやいや、家賃なんかいらないよ。ただね、あの家が残っていると思うだけで、私も綾子も救われる気がするし、何よりも」
真は続けた。噛み締めるように。
「何より、娘が帰って来たとき、アキさんがいてくれれば淋しい思いをしなくて済むと思うんだ。私には分かるんだ。私の娘は、夢を継いでくれたアキさんのことを、本当の娘のように思っている。だから、きっと喜ぶと思う・・・ごめん、気味が悪かったかな」
「いいえ・・・亜紀さんがそう思ってくれるなら、私もうれしいです。私の絵を亜紀さんに見てもらえるなら」
「そうか・・・」
「一階のお部屋は、ギャラリーみたいにして、お母さんたちが子供に絵本を読んであげられるコーナーにしてもいいでしょうか」
「ほう、それはいい考えだね・・・娘も嬉しいだろう」
「でも廣瀬のおじさん、もうこちらには来られないんですか?」
「どうかな・・・でも、あの家のことはこれで安心だ。娘と過ごした大切な時間の記憶を抱きしめて生きていけるよ。アキさん、娘の分まで・・・娘の分までしあわせに生きてください・・・」
真の目には涙が光っていた。
...2005/05/14(Sat) 04:41 ID:tvwn3vyU    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
たかさんへ
お久しぶりです。
楽しい作品、待ってますよ。
...2005/05/14(Sat) 06:08 ID:tvwn3vyU    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
朔五郎さん
おまけコーナー楽しませていただきました。
これぞ続・セカチューの王道ですね。

最近のわたしときたら、H2・イマアイ・朝ドラに入れ込んで本来のセカチューが疎かになっておりまして・・・(苦笑)

ユイ編は腹を据えて朝ドラ風で続けますが、ようやくシンジ、レイコの出番が回ってきます。
結末は決めておりますが、そこに至るプロセスを考え中です。ラストは2022年・夏にジャンプして、レイコと新婚の夫・ニノに、ユイの「後片付け」を見守ってもらいます。一部ネタをバラシテしまいました(^^)
...2005/05/14(Sat) 12:42 ID:j2qYQV86    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
SATOさんへ
実は、このお話の中で(舞台上のことは別として)たったひとり、死の瞬間を描くとすれば、真だろうなと思っていました。
娘の出した厳しいノルマ(?)を実行し、娘の「迎え」を受けるというものでしたが、やはり悲しいので、それは書けないでしょう、きっと。
しかし、綾子が入院している間、大林家でお世話をしたとすれば・・・また、ドラマがあったような気がします・・・
...2005/05/15(Sun) 22:46 ID:rPTfSoLo    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:にわかマニア
>綾子が入院している間・・・

 真にしても,綾子にしても,その辺のかかりつけの開業医で間に合う病気ならいいのですが,高度の検査や手術を伴う病気なら,八王子の「東海大学」がオススメですよね。回診の度に説教をくらう主治医は大変でしょうが・・・

 それはそうと,真は仮に「お迎え」がきたとしても,「まず挨拶をしろ」とか「その前にやることがあるだろう」とか「お説教」をして死神を追い返してしまうような気がしませんか。
...2005/05/16(Mon) 12:25 ID:LkVX1m6I    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
にわかマニアさん
>お迎え
そうですね(^^)

さて「夏ドラマ」の制作発表も相次ぎ、「イマアイ」「電車男」など注目作が見られますが、朔五郎がちょっと気にしているのが、テレ朝系の金曜23時台の「はるか17(セブンティーン)」

はるかは静岡出身の女子大4年生。厳格な父のもとで育ち、親の期待に応えてきた、いわゆる「イイ子」
なかなか就職が決まらず、ヤケになって受けた芸能事務所から、なんとタレントとしてデビューすることになってしまう。社長に騙されたことを知り怒るはるかだが、一年限定で芸能活動をすることに。
年齢を偽り「17歳のアイドル」としてデビューするのだが・・・

ちなみに、はるか役は平山「あや」さんだそうで(^^)

ドラマHP  
http://www.tv-asahi.co.jp/haruka17/


ここからは朔五郎の妄想ですが、TBSの金曜10時枠(現在タイガー&ドラゴン)で綾瀬はるかさんを起用し「はるか17」とリンクさせれば面白いかと(^^;;;
...2005/05/17(Tue) 01:06 ID:2yXcghhM    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:say
「はるか17」は漫画雑誌のモーニングで連載中ですが、なかなか面白いですよ。
本当かどうかはわかりませんが業界の人から見るとリアリティのあるストーリーでもあるらしいとかいう特集ページが掲載されている事もありましたけれど、その真偽にかかわらず私は楽しめています。

「あや」繋がりと「はるか」繋がりですか。
でも個人的に平山あやさんとその漫画のはるかとは見た目で程遠いというか、漫画のはるかは少し垢抜けさが残る子という印象が強いのでその辺り設定を変えるのか化粧を変えるのかわかりませんが、設定を変えると別物と見た方がいいんでしょうね。
...2005/05/17(Tue) 08:23 ID:2cK5VS0I    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
今週は忙しくて、新作に取りかかれそうもありません(涙)

なので、私が気に入っている旧作を再掲載いたします。今回は大林アキの誕生秘話編です。


廣瀬家のクリスマス1

イブの一週間前

(居間)

綾子「今年も終わりですね。いろいろあってあっという間だったわ」
真「そうだね、私が入院したのが一番の出来事だったかな。あと、律子さんとマサミさんが遊びに来てくれるようになって、楽しくなったね。」
綾子「ケガの巧妙ね。あなたが入院してなかったら律子さんたちと知り合えなかったかも」
真「うん、何が幸いするのかわからないものだね。」
綾子「来週のイブはまた、智世ちゃんたちが来るのよね。」
真「もう、我が家の恒例行事だからね。アキちゃんはもう3年生だっけ?早いもんだな・・・」

***回想場面***

1998年10月○日

この日、大林達明・智世夫婦が廣瀬家を訪ねてきた。智世は大きなお腹をしていた。

(亜紀の部屋)

亜紀の部屋に通された二人は順番に焼香を始めた。
そして、焼香を終えた二人は正座して真と綾子と向き合った。

達明「廣瀬さん、今日はお願いがあって参りました。おかげさまで、今月23日の予定で私たちに子供が生まれることになりました。実は、超音波の検査で、女の子だと分かったのです。そこで、大変あつかましいお願いだと思うのですが、亜紀さんのお名前を私たちの娘の名前にいただけないかと・・・智世、君からもお願いしなさい。」
智世「おじさん、おばさん、わたし、一時も亜紀のこと忘れたことはありません。亜紀は今でもわたしの中で生きています。お腹の中の子は、きっと亜紀と一緒に生まれてくると思うんです。わたしたち、生まれてくる娘を亜紀のように、明るくて素直で、聡明な娘に育ててみせます。ですから、亜紀の名前を娘の名前にいただけないでしょうか?」

二人は手をついてお願いをした。

真「達明さん、智世さん、顔をあげて下さい。亜紀を思い続けてくれて本当にありがとう。生まれてくる女の子を私たちの亜紀以上に立派な娘に育てて下さい。それを約束していただけるなら、喜んで、娘の名前を差し上げます。」
達明「ありがとうございます」
智世「ありがとうございます・・・(涙)」
綾子「(心の中で:亜紀ちゃん、よかったね。智世ちゃんがあなたの名前を娘さんにつけてくれるんだって・・・)智世ちゃん、ありがとね」


10月23日早朝

(病院の廊下)

ソワソワする達明
真と綾子も来ていた。

真「(達明に)君、少しは落ち着いたらどうなんだ。ここまで来たらもう我々はどうすることも出来ないんだよ。(と言いつつ何かを書いた紙を握る手が震えている)」
達明「は・・・はい・・・(しきりに汗をふく)」
綾子「(真に)あなたこそソワソワしてるじゃないの。汗でベトベトになるからそれ貸して(真から紙を取り上げる)」

それから何時間たったのだろうか・・・

オギャーオギャー!

看護士「おめでとうございます。元気な赤ちゃんが生まれましたよ」
達明「(真の手を握る)・・・やりました・・・(半泣き顔)」
真「その前にすることがあるだろ、早く行ってやりなさい」

ガラス越しに智世・赤ちゃんと対面する達明

達明「智世・・・よくやったな・・・」
智世「(達明に笑顔を返す)」

後ろからやってきた真が、紙をひろげた。
そこには・・・・

「命名 亜紀」

****************

綾子「本当に、早いわね。アキちゃんは、私たちの孫みたいなものよね」
真「そういえば、雰囲気が亜紀に似てきたね。」
綾子「智世ちゃん、ちゃーんと約束守ってくれたのね。」
真「来週のイブが楽しみだね」

その頃、大林家では

智世「アキっ、あんた何考えてるのよ、この日はあんたの名付け親と会う大事な日なのよ。」
アキ「だって・・・みんなと約束しちゃったんだもん・・・」
智世「ブーブー言わない。最初からわかってるんだから!」
達明「まあまあ、アキだって僕たちより友達と過ごしたくなる年頃なんだから。僕もそうだったし、君だってそうだろ?じゃ、こうしよう、アキ、最初は一緒に廣瀬さんの家に行くんだ。そしてちゃんと挨拶しなさい。いいね。そうしたら、みんなのところへ行っていいよ。」
智世「ちょっと、あなた・・・」
達明「(智世にかまわず)わかったな、アキ」
アキ「はい、お父さん」

ということで、次週は廣瀬家・大林家の合同クリスマスパーティー・・・・

(続く)
...2005/05/17(Tue) 20:17 ID:rDheOxNo    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:たー坊
SATO様
久しぶりにこの物語を読ませていただきました。
何度読んでも良いですね。智世が亡き亜紀を思い続けたり、廣瀬夫妻もそんな智世の思いを受け入れたり・・・。
お互いに頑張っていきましょう。次回も楽しみにしております。
...2005/05/18(Wed) 22:12 ID:PLl.Z5WQ    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
たー坊さん
感想ありがとうございます。
自分の作品ながら、このストーリーが大好きでして・・・
1998年当時、朔太郎はまだ宮浦に戻ってこれない状況でした。なので、智世こそが宮浦で亜紀のことを想い続け、廣瀬夫妻と行き来があったのだろうと考えたのがこのストーリーの背景です。
...2005/05/19(Thu) 22:59 ID:buyXZqZ2    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
廣瀬家のクリスマス2(再掲載)
〜亜紀の墓参り

12月24日 午前9時

廣瀬家・門の前

達明「おはようございます」
智世・アキ「おじさん、おばさん、おはようございます。」
真「やあ、おはようございます」
綾子「おはようございます、荷物は置いていきましょうね」

大人たちは喪服姿、アキは制服姿である
綾子が荷物を持った智世とアキを家の中に連れて行った。
その間に達明が真に声をかけた。

達明「お父さん、クルマのキーを」
真「いつも悪いね、達明君。よろしくお願いします。(キーを渡す)」
達明「いえ、これが我が家の恒例行事になってますから」

駐車場へ行った達明が自動車のエンジンをかけ、
家から戻ってきた綾子・智世・アキ、そして真が自動車に乗り込んだ。
(助手席に智世、後部座席にはアキをはさんで真と綾子が座る)

廣瀬家から自動車が出て来た。向かうは廣瀬家の墓。廣瀬家・大林家合同で亜紀の墓参りに向かうところです。

※24日は亜紀の月命日。智世は毎月墓参りに行っていますが、両家全員での墓参りはクリスマスイブにあたる12月24日にやることになっていました。最初は10月24日に亜紀の墓参りとアキの成長を報告するために両家が集まっていましたが、アキの学校の都合で、冬休みに入った12月24日に変更されたのでした。この合同墓参りは智世の発案によるものです。

○○寺

駐車場に達明が運転する自動車が入って来た。
自動車から降りてきた5人は墓へと向かった。

(廣瀬家の墓)

智世「さあ、アキ、お掃除しましょう」
アキ「はい」

智世とアキが墓石の掃除を始める
綾子は花の用意を、そして真と達明は供え物の準備を始めた。

智世「(掃除をしながら)亜紀、見て、うちのアキ。大きくなったでしょう。とうとう、あんたの年追い抜いちゃったんだよ。病気もしないで、スクスク育ってくれてね、あんたがアキを守ってくれてるんだよね・・・・」
アキ「(智世の独り言を聴きながら、甲斐甲斐しく掃除をしている)」
智世「今度アキは大学受験なの、お願い、亜紀、わたしのアキを守ってね・・・」
アキ「(掃除を続けながら、いつもは口うるさい母のすがるような口調を聞いて意外な気持ちになる)」
智世「終わった?」
アキ「うん」

線香がたかれる

智世「さ、それじゃ、亜紀に挨拶しなさい。」
アキ「はい、(手を合わせる)亜紀さん、いよいよ大学受験です。どうか、私を見守って下さい」

続けて、智世・真・綾子・達明の順番で亜紀の墓前に手を合わせる。
そして、大林家の3人と廣瀬家の2人が向かい合って並び、達明から挨拶が行われた。

達明「本年も無事、アキの成長ぶりを亜紀さんにご報告することが出来ました。どうも、ありがとうございました。」

(大林家の3人と廣瀬家の2人がお互いに礼をする)

〜これで儀式は終わった〜

真「皆さん、ご苦労様。家に戻ったら、亜紀も交えて、盛大にクリスマスパーティーといきましょう。」

帰路につく5人

(続く)


(注1)この一風変わった墓参りはアキの成長ぶりを亜紀に見せることを目的としていますので、手合わせの順番が普通の墓参りと違うことをご承知おき下さい。
(注2)達明が真を「お父さん」と呼びますが、これは「アキに名前をくれた亜紀のお父さん」という意味です。あと、名付け親であり、アキが生まれて以来17年にわたる付き合いなので、自然とお父さんと呼ぶようになったとお考えいただければ幸いです。
...2005/05/19(Thu) 23:08 ID:buyXZqZ2    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
廣瀬家のクリスマス3(再掲載)
〜メリークリスマス

12月24日 午前11時

亜紀の墓参りから戻った5人

全員着替えが終わった

(朝、智世とアキが抱えていた荷物はプレゼントのほかに着替えも入っていたのです)

(廣瀬家・居間)

5人が集まってくる

智世「さ、アキ、亜紀を連れてきましょう」
アキ「はい」

智世とアキは2階の亜紀の部屋に入り、仏壇の前で順番に焼香し、亜紀の遺影を持ち出した。

(居間)

アキが亜紀の遺影を抱えて智世と一緒に戻ってくると、真が全員に声をかけた。

真「よし、これで全員揃ったな」
達明「始めましょうか、お父さん」
真「うん、そうだね」
達明「アキ、持ってきなさい」

アキは大きな箱を持ってきた

食卓に箱を置いて、包みを解くと・・・・
豪華なクリスマスケーキが・・・
そして、アキ手作りのクリスマスカードも添えられていた。

アキ「おじさん、おばさん、メリークリスマス!」

綾子「まあ、可愛らしいカードだこと(笑顔)」
真「どれどれ・・・これは綾子、君だぞ、そして、これは私か・・・亜紀もいるぞ。アキちゃん、どうもありがとう(笑顔)」

※手作りカードには廣瀬ファミリーの似顔絵が書いてあったのです

綾子「アキちゃん、本当に絵がお上手ね。」
真「人には持って生まれた才能っていうものがあるんだな。」
アキ「ありがとうございます(やや照れている)」
達明「今は受験直前なので、絵の方は我慢させているんですが・・・」
真「おや、受験勉強の邪魔をしてしまったかな?」
達明「いえいえ、お父さん、そんな、今日は我が家にとっての大事な行事ですから、お気遣いなく。」
綾子「でもやっぱり、受験直前で大変よね」
智世「まあ、今日はクリスマスなので、束の間の休息という感じです。」
達明「絵は大学受かってからまた描こうな、アキ」
アキ「うん(笑顔が輝く)」
智世「(苦笑)」

綾子「志望校は決まったの?」
アキ「宮浦大学の薬学部です」
真「そう・・・あそこだったら家からも通えるし、薬学部か、いよいよ上田薬局?いや、大林薬局か?」
達明「おとうさん、上田薬局で結構ですよ」
真「うん、その跡取り娘の誕生だね。上田薬局万々歳だ・・・ハハハ・・・(ご機嫌が良くなる)」

思わず笑顔になる5人

智世「ところで、おじさん、もうお身体は良いんですか?」
真「うん、おかげ様で、無事退院できたし、すっかり良くなったよ。足腰が弱ってしまったが、リハビリでどうにか回復できたんだ。」
達明「それはよかった。お父さんが入院されているとき、これ(智世)が泊まりに行きましたよね。お母さんと色々話しが出来て楽しかったと言ってましたよ。」
智世「(笑顔でうなずく)」
綾子「そう、一人で心細かったから、智世ちゃんが来てくれて、とっても心強かったわ」
智世「おばさんと亜紀の部屋で一緒に寝たんですよね。合宿気分でした。」
綾子「そう、それで知ってる?この子(智世のこと)夜中に寝言言ってたの。」
智世「ちょっと、おばさん、やめて下さいよ。恥ずかしいじゃないですか。主人やアキの前で。(顔を赤らめて苦笑)」
アキ「へー、お母さん、何て言ってたんですか?(イタズラっぽい笑顔)」
綾子「それがね、よく聞き取れなかったけど、亜紀・・・亜紀・・・って言ってたような気がしたわ。」
智世「(恥ずかしがって)確かに、亜紀の夢見てました。合宿で一緒に走ってたのかな・・・おばさんと一緒に寝たときもそうだけど、時々亜紀と走ってる夢見るの・・・」
 
達明と真は笑顔でうなずく

達明「(時計を見ながら)お父さん、申し訳ありません、アキは他に用事がありまして、これで失礼させていただきます。」
真「ああ、そう、ちょっと寂しいな・・・」
智世「でも、わたしたちは残りますから」
達明「(アキに)老人ホームのボランティアに行くんだよな。何ホームだっけ?」
アキ「『涼風ホーム』です。」
真「ああ、あそこ?私、入院してたんだよ。ホームの付属病院に。月一回ボランティアの方が見えてね、ピアノや歌を聴かせてもらったり、手品を教えてもらったんだ。もしかすると、手品を教えてくれた女の子、アキちゃんと同級生じゃないかな?長沢マサミさんというんだけど。」
アキ「はい、彼女、クラスメートです。とっても仲良しな友達なんですよ。これからホームで会うんです。」
真「ああ、そう、彼女によろしく言っておいて」
アキ「はい、おじさんと共通の知り合いだったなんて、面白いですね」
真「じゃ、頑張ってね」
綾子「あと、律子さんにもよろしくね。」
アキ「大沢先生の奥さんですよね。伝えておきます。」

廣瀬家の玄関

真「じゃ、頑張ってきてね。」
綾子「受験が終わったらまた遊びにいらっしゃい。お父さんやお母さんと一緒でなくてもいいわよ。」
アキ「はい、そうさせていただきます、それでは、おじさん、おばさん、失礼します」

こうしてアキは廣瀬家を後にして、「涼風ホーム」へ向かいました。
...2005/05/19(Thu) 23:13 ID:buyXZqZ2    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
廣瀬家のクリスマス4(再掲載)
〜亜紀への想い

午後・アキが「涼風ホーム」へ出かけたあとも団欒は続いていた。
(高校生がいないので、アルコール類も出ている)

真「毎年、クリスマスになると君たちが来てくれるから、本当に嬉しいよ。孫の顔を見せてもらっているような気分だ。」
綾子「(うなずく)」
達明「亜紀さんの名前を快く私たちの娘につけてくださったのですから、健やかな成長ぶりをお見せできれば、と思いまして・・・私たちもそれが楽しみであり、励みにもなっているんですよ。」
真「うん・・・ありがとう、達明君、智世さん、君たちがいてくれて、私たちは幸せものだ(目が潤む)」
綾子「ちょっと、あなた、アルコールが過ぎてませんこと?」
真「いや、本当に嬉しい気分になってね。ハハハ・・・」
智世「・・・わたし、全てを受け入れてくれた達明さんと一緒になって本当に幸せなんです。亜紀のこともちゃんと聞いてもらえたし・・・アキの名前のことは、彼がおじさんとおばさんにお願いしようって言ってくれたんですよ。」
達明「いきなりそんなこと言うなよ、お父さんやお母さんの前で照れるじゃないか。」
綾子「そう・・・達明さん、智世ちゃんのこと、とても大切にしてあげてるのね。」
智世「(幸せそうにうなずく)達明さん、覚えてる?わたしが亜紀の代理で卒業証書を受け取った話。」
達明「ああ、覚えてるよ。とてもいい話だったよね。」

 ***************

1989年3月

智世「亜紀は卒業式で名前呼ばれることないし、卒業証書ももらえないんだよね。」
龍之介「そうだな。寂しいけどそうなんだよな。」
智世「せめて卒業証書だけでもあげたいんだけど、何かいい方法ないかな・・・」
顕良「映画で見たことあるんだ・・・」
智世「映画って?最後までちゃんと言いなよ。」
顕良「うん、その、やっぱり病気で死んだ女の子がいて、お父さんとお母さんが遺影を抱いて卒業式に出たって話があるんだ。それと同じことすればいい。」
龍之介「ボウズ、いいこと言うじゃん!それでいこう」
智世「亜紀のお父さん・お母さんに来てもらうわけ?」
龍之介「おっと、そういえばそうだな、谷田部先生に相談してみよう。」
顕良「しかし、こんな大事な時にあいつ(朔のこと)何やってんだ・・・」

(職員室にて)

谷田部先生「あなたたちの気持ちはよくわかる。今でも思い続ける友達がいて廣瀬は幸せものだよ。ただ、ご両親のお気持ちを聞いてみないことにはね・・・」

(廣瀬家へ電話をかける谷田部先生)

谷田部先生「さっき、廣瀬のお母さんと話したんだけど、夕方家に来て欲しいって。お父さんにも話しておいて下さるって。だから放課後にみんなで行こう。ところで松本は?」
顕良「あいつ、今日学校に来てないんですよ。」
谷田部先生「そっか・・・最悪松本抜きでも仕方ないか・・・」

(放課後・廣瀬家にて)

真「わざわざお越しいただいて・・・まずは亜紀に会ってやっていただけますか。」

亜紀の部屋にとおされた四人は谷田部先生・龍之介・顕良・智世の順番で焼香する。

真「松本君はどうしました?」
谷田部先生「今日は学校を休んでおりまして・・・受験疲れだと思います。」
真「松本君のお父さんから聞きました。医学部に合格したそうですね。ただ、彼とはウルルに行って以来会ってないんですよ。亜紀の灰もまけなかったみたいで、気になっているんですよ。」
谷田部先生「まあ、あれ以来松本はこちらに来ていないんですか?よく言っておきますわ。」
真「先生、申し訳ありません。ご心配をおかけしまして。ただ、松本君のお父さんがそのことでかなり心配なさっているようですので、近々顔を見せてくれると思いますよ。
ところで、綾子から聞いたんですが、卒業式で亜紀の名を呼んでいただけるとか?」
谷田部先生「ええ、実はここにいる生徒たちが言い出したことなんですが、まずはお父様とお母様のお気持ちをうかがってからと思いまして。」
真「ありがとうございます。(落涙する。隣に座っていた綾子もハンカチで目をぬぐう)是非お願いいたします。今でも気にかけてくださる友達がいて亜紀は幸せ者だ。なあ、綾子。」
綾子「(うなずく)」
真「(龍之介・顕良・智世に)本当にありがとう。」

三人も真と綾子に礼を返す

智世「(顔をあげてから)あの・・・、私が亜紀さんの代理で卒業式に出席させていただきます」
真「お願いします。こちらの写真(遺影)をお貸ししますので、当日迎えに来てやって下さい。」


卒業式当日

(廣瀬家・玄関)

智世「亜紀さんのお迎えにあがりました」
綾子「どうぞ、あがって・・・」

(亜紀の部屋)

真・綾子の前で焼香する智世

智世「さあ、亜紀、一緒に卒業しようね」

(廣瀬家・玄関)

智世「では、行って参ります」

亜紀の遺影を抱えた智世は真と綾子に挨拶し、学校に向かった。そんな智世を真と綾子は感慨深げにいつまでも見送っていた・・・

(卒業式会場)

クラスの生徒一人一人が名前を呼ばれる。そして・・・

谷田部先生「すいません、最後にもう一人名前を呼ばせてください・・・・(涙ぐんで)廣瀬亜紀!」

智世は亜紀の遺影を抱えて、代理として壇上へあがった・・・

 ************


真「智世さん、あの時は本当に感激したよ。君たちクラスメートや先生の気持ちにね」
綾子「あの時から、何かあるたびに顔を見せてくれるようになったのよね、智世ちゃん」
智世「・・・わたしが亜紀にしてあげられることって、それしか思いつかなかったものですから。」
達明「智世・・・前に聞かせてもらった時も感動したけど、今日もまた聞かせてもらって、君に惚れ直したよ・・・(涙ぐむ)」
智世「あなた、酔っ払ってない?(苦笑)」
達明「お父さん、お母さん、私が智世と出会う前から亜紀さんは智世の中にいたんです。私はそんな智世を気に入り、一緒になりました。ですから、亜紀さんとも一緒に家族になれたと思っています。そこから生まれてきたアキは亜紀さんの娘でもあるんです。ですから、お父さん、お母さん、これからもアキを実の孫のように可愛がってやって下さい。」
真「達明君、そのひと言気に入った。今日は飲もうじゃないか。(達明に酒をすすめる)」

こうして廣瀬家での団欒は続くのだった


(廣瀬家のクリスマス・FIN)

※特別編ラストの卒業式のサイドストーリーも兼ねた話としました。
※達明の「亜紀さんとも一緒に家族になれた」は、朔に対する小林明希の想いと重なりますが、亜紀を想い続ける気持ちはは智世も朔と同じくらい強かったのではないでしょうか。(亜紀の声をテープで聴いて『チクショー!』と叫んだことから)達明は智世から亜紀への想いを聞かされ、それを受け入れて一緒になったのだと思います(^^)
...2005/05/19(Thu) 23:23 ID:buyXZqZ2    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
NHK朝ドラ情報

次は「風のハルカ」だそうです。
ヒロインは村川絵梨さん。
彼女は、昨年夏、「ロード88」という映画に主演しました。
ちなみにこの映画「四国を舞台にした白血病の少女の物語」でした。
しかし・・・(苦笑)
...2005/05/19(Thu) 23:55 ID:ZVH3Qls.    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:アーネン
 少しずつですが読み進めております。本当に素晴らしい物語ですね(^^)グーテンベルクさんに負けないくらい応援いたします。これからも頑張ってください
...2005/05/20(Fri) 21:54 ID:0oIx5gj2    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
アーネンさま
激励ありがとうございます。

朔五郎は「香川編」で悪戦苦闘中ですが、まもなく「アニミズム」にケリをつける予定です(苦笑)

もう長くなりましたので「制作企図」を書いてみようかと思います。
始まりは、ドラマの最終回のラスト近くで、智世の娘の「亜紀」と龍之介の息子らしき少年が登場し、その後、介の船の中に、朔と亜紀が夢島で眠っている写真が飾られているシーンが出てきたことです。
朔五郎は「これはこの子たちの運命を暗示している。やがてこの子たちは恋に落ちる」という奇妙な妄想に取り付かれたのです。
実はこの時、このスジで何本かのストーリーが立ち上がってきて「競作」になるだろうな、と予想していたのですが、このスジからはこの一本だけだったので意外に思ったのが懐かしいです(苦笑)
介と智世が、何らかの理由で別れてしまったわけですから、ちょうど「ロミオとジュリエット」になるな、と思い創作を始めました。
まず最初に決めたのは、二人が目指す場所「ニューヨーク」
ウルルに負けないだけのインパクトがあり、かつウルルとは対極の場所であるNYに二人を行かせようと思いました。
一人で創作を始めた頃、その80%くらいは「なぜNYなのか」という理由付けに力を注いでいたと思います。
アキが描く絵が「抽象画」なのもそのためで、普通の風景画とかならルーブル美術館あたりになってしまうわけです。NYを目指すには、それがモダンアートでなければならなかったのです。
物語の進行につれ、アキの絵は抽象的なものから、具体的な像を結んできます。しかし、本当は抽象画を描くには、まず精密なスケッチがあって、それをデフォルメしていくのが順序だと思うので、そういう意味では逆になっています。
この物語では(悲しいことですが)1987年の夏はもう永遠に戻ってこない、ということが大前提になっておりまして、大林アキと廣瀬亜紀とはイコールで結ばれることはありません。
大林アキの夢はあくまで彼女自身の夢であって、廣瀬亜紀の夢でも、両親の達明や智世の夢でも、廣瀬真の夢でもありません。
ただ、アキが本当に自分らしく生きようと願う時に「白血病で死ぬのが運命だとしてもそんなものに自分の人生をつぶされたくない」と最期まで自分らしさを貫いた廣瀬亜紀の姿が、アキの中に浮かびあがってくる、という構図を(朔五郎は)意図しております。
アキは、廣瀬亜紀の「生物学的遺伝子」は全く受け継いでいませんが、なぜか「心理的遺伝子」を受け継いでいます。
廣瀬亜紀が生きた頃から時代は変わり、世界は病んでしまいました。2001年9月11日、同時多発テロが起こった夜、亜紀は本当の娘のように思うアキ(3歳)の枕元でアキの未来を案じて涙を流します。
健康な身体を持ったアキは、挫折を味わい、苦しみながらも、自分にはまだ時間がたっぷり残っていることに気付きます。そして「ゆっくり回り道をしながら、周囲の理解と祝福をうけながら生きる」ということを、実は廣瀬亜紀も望んでいたけれどもそれが許されないまま死んでしまった、だから自分はそのように生きよう、と決心するのです。そして、健康なアキは病んだ世界、病んだ時代に対して闘いを挑んでいきます。
ミライ&マサミ、ニノ・レイコ&アズサなどのサイドストリー的な部分は、廣瀬亜紀が味わいたかったけれどもできなかった青春時代を表現する目的で書き加えました。読者の皆様には、もし廣瀬亜紀が生きていたら、どんな青春時代を送ったか想像して頂きたいと思います。
これからも、ご愛読して頂ければ幸いです。

話は変わりますが、以前「金曜10時枠に綾瀬はるかさんを登場させ、他局のドラマとリンクさせたら面白い」などといい加減なことを書きましたが、この枠には、綾瀬さんではなく、長澤まさみさんのほうが登場するようですね(苦笑)「東大を目指す受験生」の役だそうです。
...2005/05/21(Sat) 05:09 ID:ldvdBDoM    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
アーネン様
今晩は。お読みいただき、ありがとうございます。
私は朔五郎さんに便乗させていただく形でライターに加えさせていただきました。

制作意図は朔五郎さんがお書きになったとおりでして、私は大林アキを囲む人物も好きで深みを加えたいと思ってストーリーを投稿させていただきました。
直前に再投稿した廣瀬夫妻と大林一家との交流4部作もその一つです。朔五郎さんのおっしゃる「心理的遺伝子」はここで受け継いだのかも知れませんね。

朔五郎さま
今後もよろしくお願いいたします。「香川編」の続きを楽しみにしております。私も「ユイ編」を楽しみながら続けていきます。ラストは新婚のレイコ・ニノがユイの「後片付け」を祝福する形にしますが、そこに至るプロセスをどうしようか色々考え中です。
7月からの金曜10時枠は長澤まさみさんでしたか。番組の予告サイトを見てきましたが、阿部寛さんが主演なのですね。(このころは大河ドラマでは平家滅亡の時期と重なるので、阿部さんは大忙しですね)その他キャストを確認したら、「H2」で野田敦役だった中尾明慶クンも出るようです。同じあだち充原作・「タッチ」の朝倉南との競演となりますね。(裏番組の出演者同士の共演という見方もできますが)それから、NEWSの山下智久クンも生徒役で共演するので、「優しい時間」につづいてジャニーズタレントとの共演になるのですね(^^)
「いま、会いにゆきます」とともに楽しみなドラマになりそうです。

※自宅のPCが壊れてしまい、近所のネットカフェから書き込みしています。もう5年近く使ったPCなので、買い替えどきかも知れません。
※私の作品はこのBBSにすべて書き込み済みで、作成中の原稿はなかったのが不幸中の幸いでした(汗)今後の原稿は当分の間、レポート用紙に鉛筆書きとなりそうです(苦笑)
...2005/05/21(Sat) 20:40 ID:BKu0pryM    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
SATOさま
廣瀬亜紀の「心理的遺伝子」がアキに伝えられていく過程は、SATOさん担当の部分でほとんどが描かれてますね。
それにしてもパソコン、大変ですね(^^;;;

それにしてもTBSサン「舞台 セカチュー」への援護射撃は何もやらないんしょうか・・・
...2005/05/21(Sat) 23:43 ID:dGWVb7nI    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
105の続きです


香川編 〜 木庭子町のお正月(その6)

快速マリンライナーは瀬戸大橋にさしかかった。
「わあ、遠くまで見える・・・」
「すごい橋だろ」
「うん、もう感動」
「これを渡れば、いよいよ四国だよ」
「あの女の子が生まれた島ね」
瀬戸内の海がキラキラと光っている。

「ねえ、もうひとつ分からないことがあるわ」
「なに?」
「あの女の子が人の死にも理由があると思う、と言っているでしょ?」
「うん。彼の方はあの世や天国がないとすれば、死んでしまえばみんなおしまいだから、死ぬことに意味なんかありえないと言っている」
「でも、アニミズム的な考え方では、人の死は単に肉体の消失で、生命の実体はこの世に存在し続けるわけだから、彼女の言葉も意味が通じるね・・・《いまあるもののなかにみんなある。みんなあって何も欠けてない》」
「《いまここにあるものだけが、死んでからもあり続ける》同じ世界に存在するんだから、その通りだよね」
「だけどサク、人の死の意味って、いったいなに?」
「これも文化人類学の講義でやったんだけどさ、アイヌ民族の人々もアニミズム的な生命観を持っているんだって。むかし、アイヌの人々はね、この世で人間は一番下に位置していると考えていたんだって」
「人間が一番下なの?」
「そう・・・太陽の光は緑を育み、ウサギは他の動物の栄養になる。人間だけは何の役にも立っていない」
「へえ」
「ただひとつ、人間ができるのは神に祈ることだけなんだって」
「ふーん・・・」
マサミは不満そうな顔をしていたが、やがて言った。
「でもさ、人間は万物の霊長って言うじゃない」
「それはさ、キリスト教的思想・ヘブライズムなんだよ。キリスト教の考え方では、神が人間を創り、その人間の道具としてすべてのものを創った。地球も大自然も、全部人間の道具に過ぎないんだよ。だから自然を征服するって発想が出てくるわけ」
「アボリジニの人々のアニミズムでは自然そのものに神が宿っているわけでしょ?」
「いや・・・正確に言うと創造主である《虹を紡ぐ蛇》が自然界のいろいろなものに姿を変えたんだ」
「ねえサク、今、虹って言った?」
「うん・・・何か?」
「女の子が空港から搬送された病院で彼にお別れを言う時、あの夏の日を覚えてる?って言ったじゃない?」
「うん」
「そして男の子は、頭の中で真っ青な夏の海を思い浮かべた・・・」
「うん」
「《あそこにはすべてがあった。何も欠けていなかった。すべてを持っていた》とも言っている」
「そう、そのとおり」
「そして船が故障して漂流するわ。夕立の後に虹が出て、それが自然の風景の中に溶け込んでいく・・・」
「虹を紡ぐ蛇、つまり創造主が出現したような光景だったのかな?だから完全無欠だと・・・」
「たぶん、そんなところね」
「マサミ、アボリジニの人々は創造主のいた時代をドリームタイム《夢の時代》と呼んでいたんだ」
「どういうこと?」
「つまりさ、人間が夜に夢を見るでしょ?その夢の中で人間の力を超えるような経験をしたりする」
「この男の子もウルトラマンのように空を飛ぶ夢を見たって言っているわ」
「人間は夢の中で、創造主が持っていた不思議な能力を体験できるわけだ」
「男の子にとって、彼女がいた夏の日はまさに《夢の時代》だったのね」
「そうだね」
「っていうことは、夢島っていう名前の意味は」
「作者はふたつの意味を持たせたんだろうね。ひとつは、少年と少女の夢のような初恋の思い出の場所」
「でも、その裏に隠された本当の意味は・・・」
「うん・・・《人間の能力や常識を超えた現象が起こる場所》」
「夢島っていうのは、なんだか平板なネーミングだと思ってたけど、深い意味があったのね」

「ご乗車ありがとうございました。まもなく坂出に到着します・・・」

「小説の話をしながら、こんなとこまで来ちゃったね。あと20分くらいで高松に着くよ」
「でも、なんか楽しかった・・・いつもと違う感じでサクと話ができて」
「それも、もうすぐ終わりだね」
「ちょっと淋しいような・・・」
「あ、マサミ。今演劇部の次回公演の相手役は誰になったの?」
「ヤマシタくん」
「ちっ、またジャニーズっぽいやつか」
「別に私が選んだわけじゃないよ。あ、サク、妬いてるの?」
「そんなことねえよ」
「さて、話を戻して、最後の謎解きをしよう」
「女の子が生まれ、そして死んでいった理由だね?」

(続く)

それにしても綾瀬はるかさんは、好きでもない相手にキスされてしまう宿命なのでしょうか(苦笑)
家族と「あの場面」を観ながら、山田孝之さんが怒鳴り込んでくるのと、佐藤めぐみさんが怒鳴り込んでくるのでは、パロディとしてどちらが面白いかという議論をしてしまいました(苦笑)
...2005/05/23(Mon) 03:20 ID:U41Q0qzc    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:にわかマニア
 誰が怒鳴り込んでくるのがパロディとして面白いかの議論ですが,物理的実力行使の犯人がスケちゃんなら,ここはやっぱりボウズでしょう。なにしろ,最初に見初めたのはボウズなのですから。
 ただ,問題は,「こんな○○にどれほどの意味があるのか」と事態収拾の労をとる人がいない(当事者になってしまっている)ということです。
 それにしても,野島脚本というのは,刑法犯である「暴力行為」や「婦女暴行」などの直接的な表現を多用し過ぎですね。
...2005/05/23(Mon) 06:59 ID:CCsypI.2    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
朔五郎さま・にわかマニアさま

昨日の「あの場面」を観て、

智世(本仮屋ユイカ)はこれで想いを吹っ切って達明を選んだんだな・・・と思いました。

ひかり(市川由衣)は留学中で日本にいない間にこんな事件が起こってしまって・・・帰ってきたときにショックを受けるのでは・・・と心配です。
...2005/05/23(Mon) 17:44 ID:v9x8vQsU    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
SATOさん
智世が介と別れた理由はこれでしたか。
それじゃ、自分の娘が介の息子と付き合うなんて絶対許せませんね(苦笑)
...2005/05/25(Wed) 02:14 ID:PvSh0T4I    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
テレビ番組の情報誌をパラパラとめくっておりましたら「赤い疑惑」のヒロイン・幸子の病名は「放射線被爆による再生不良性貧血」ということでした。
なぜ「あの病気」ではないのでしょうか?

1.救命の可能性を残しておくため?
2.「二番煎じ」という批判をかわすため?

ところで、年代の設定は元と同じ70年代ということなので「骨髄移植」という選択はありません。
この病気の治療で「骨髄移植の前処置」以外では、抗がん剤の投与はないと思うので、ゴソっと脱毛してしまうシーンはないということになります(ステロイド剤の副作用では逆に多毛になったりする)案外、ここらへんが病名が変わった理由かもしれぬと勘ぐってみたりします(苦笑)
...2005/05/26(Thu) 04:33 ID:hwNqDcfo    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
「あいくるしい」で田中幸太郎クン演じる瀬戸ですが、医師としての腕はいい・助からないものは助からないとハッキリ言う・自身満々・強引といったところが「白い巨塔」の財前教授を彷彿させるキャラだと思いました。

去年の夏ごろのテレビ情報誌が偶然出てきてパラパラめくっていて気づいたのですが、昨年7月期のドラマに長澤まさみさんが出演していたんですね。日曜劇場の「逃亡者」というドラマです。長澤さんの「セカチュー」後の第一作は「優しい時間」とばかり思っていたので、とんだ勘違いをしてました。(どなたか「逃亡者」を観た方はいらっしゃいますか?)

朝ドラに出ている緒形直人さんは、義母(三林京子さん)を前にしてアタフタするところが朔そのものでした。最終回で廣瀬真から「まだ生きてたのか」と声をかけられて慌てる様子とそっくりなんです。彼が演じるキャラは相手の女性の親が余程苦手なんですね(^^)

以上、雑感でした。
...2005/05/26(Thu) 23:40 ID:F62y3.uY    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
SATOさんへ
「逃亡者」での長澤まさみさんは「鬼塚 咲」という役名で、保護観察中の少女という役でした。髪型はベリーショートで「のど飴のCM」や「ツバサのPV」と同時期と思われます。
一応「不良少女」という設定らしかったのですが、声がかわいいため、ちっとも不良に見えませんでした(笑)
なお、ここでも阿部寛さんが共演しています。
...2005/05/26(Thu) 23:58 ID:aQQ2WLwo    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
朔五郎さん
「逃亡者」のコメントありがとうございます。
そうなると、長澤まさみさんは「ドラゴン桜」「タッチ」でようやく「普通」の高校生役を演じることになるのですね(^^)
(亜紀は白血病、梓はトラウマ、咲は保護観察とこれまでは何か重いものを抱えてる役だったように思います。)

「あいくるしい」の前番組「Mの悲劇」の中で稲垣吾郎さん扮する営業マンが痴漢の濡れ衣を着せられ、連行されそうになって「助けてください!」と叫ぶ場面がありました。これは「セカチュー」を意識した演出だったのでしょうか?古い話で恐縮です。
...2005/05/27(Fri) 23:17 ID:Cq4D8KxY    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
赤い疑惑の公式HPを見たら、病名はやはり○○病になってましたね(苦笑)何を信じていいんだか・・・

「Mの悲劇」に限らず、いろいろなところで「セカチューっぽい」演出が見られますよね。
「ファイト」の中の「何かを守るために、誰かを傷つけなきゃならないこともある」というセリフもどことなく似ていますし。
まあ「そういう目」で見てしまうという事はあるんでしょうけど。

「あいくるしい」公式HPで石丸Pと植田Pの対談企画がUPされてます。その名も「あつくるしい」
自虐ネタでしょうか(苦笑)それにしても、なぜ、セカチューの時の綾瀬はるかさんのオーディションの話が出てくるのか、不思議といえば不思議です(笑)
...2005/05/28(Sat) 23:56 ID:R6NrMCR.    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
「ファイト」で智世のお父さん発見!
(と言ってもずっと観ていながら気づかなかっただけでしたが。)
ヒロイン(ユイカちゃん)が働く旅館の若旦那(三原じゅん子さんの旦那)役のおかやまはじめさんです。
5話で智世を夢島キャンプに誘いに来た朔に「いいよ、持ってって、ついでにもらっちゃって!」と答えたあのお父さんだったんですね。久しぶりにDVDを観て発見してしまいました。
...2005/05/29(Sun) 01:04 ID:IAHObMrk    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:たー坊
朔五郎様
今回も読ませていただきました。
香川編だけではありませんが、考察は毎回感心します。これからも続編をお待ちしております。
できることなら、サクとマサミには本の議論を終えた後に、香川で最高の時間を過ごして欲しいと思っております。
これからも楽しみにしております。頑張りましょう。

SATO様
いろんなドラマなどの要素が組み込まれたストーリーを毎回楽しませてもらってます。
「H2]などからはじまって、「あいくるしい」や、これからは「赤いシリーズ」も入ってくるのでしょうか?どんな物語になるか楽しみです。
これからも頑張りましょう。
...2005/05/29(Sun) 19:26 ID:x.srlg1.    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
たー坊さま
コメントを頂きましてありがとうございます。
実は木庭子町のお正月はとても楽しいんです。
なかなか、たどり着けないのは、すべて朔五郎の責任です(^^;;;
...2005/05/30(Mon) 23:19 ID:vd68W3e6    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
朔五郎さま
私もユイ編は結末は出来てますが、その途中でモタモタしております・・・ヒロインの背中を押すのが彼氏がいいのか従兄弟がいいのか、それとも子供がいいのか色々考えてしまうんですよね(笑)

たー坊さま
コメントありがとうございます。
インターンを登場させたことで、「あいくるしい」も入れたのわかりました?まだ放送が始まってなかったので、さわやかな好青年のイメージで登場させました。実際の放送での彼は「白い巨塔」の財前教授を思わせるキャラですね。
「H2」をモデルにしたストーリーを投稿したのは、朔五郎さんが「優しい時間」をモデルにしたストーリーを投稿されていたので、それじゃ裏番組を、と思ったのがキッカケです。でも、朔五郎さんほどのテクニックが無いので、「H2」の登場人物がそのまま出てきた感じになってしまいましたね(笑)
今は「ファイト」をモデルにして投稿中ですが、観ていない方でも楽しめるストーリーにしていこうと思います。登場人物の使い方について、朔五郎さんの域に少しは近づけたでしょうか(^^)


私事ですが、来月中旬に自宅マンションに光ファイバーが導入されるので、それに合わせてPCを買いなおすことにしました。もうしばらくはネットカフェで我慢の生活です。(今のPCは壊れてしまいました・・・)
...2005/05/31(Tue) 14:43 ID:y0WEkrmg    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
SATOさん
PCは・・・残念なことになってしまいましたね。
登場人物については、個性的なキャラが次々出てきて朔五郎も参考にさせていただいております。

さて「赤いシリーズ」についての考察です。
綾瀬はるかさんはなぜ「運命」なのか。

「赤い疑惑」:石原さとみさん:白血病
「赤い衝撃」:深田恭子さん:陸上短距離走

2つ併せると「あのドラマ」になるような気が(^^;;;

実は「赤い」に綾瀬さんが出ると聞いた時、きっと「衝撃」だろうな、と思いました。でも、やっぱり「あのドラマ」にかぶってしまう、ということなんでしょうか?
それにしても、最近「フシギ系キャラ」が多かった深キョンがどんなランナーを演じるのか楽しみです(^^)
...2005/06/01(Wed) 00:16 ID:KMshUONE    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
ボウズ役だった柄本佑クンが「ウォーターボーイズ完結編」に出るそうです。
確か、佑クンのお父さんが「二人のサク」こと山田クン・森山クンとTVシリーズで共演してましたよね?縁を感じますね。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050601-00000031-sanspo-ent
...2005/06/01(Wed) 23:49 ID:56sm.rro    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
みなさんこんばんは。
香川編のうち、原作の「謎解き」は(その7)で終わります。
だいぶ間が開いてしまったので、その1から一部改定の上、再掲載します。
過去の掲載分を読みたくない方は、その7だけお読みください。


木庭子町のお正月(その1)

2017年12月29日、喫茶店・海の時計。
「マサミ、スキー旅行の間、代わってくれてありがとう。マスター、マサミのことが気に入っちゃったみたいで、なんだかちょっと妬けちゃう」
「レイコが一番に決まってるでしょ。マスター、ずっとレイコのこと褒めちぎってたわよ」
「そんな・・・でもね、今レシピを考えてるシーフードカレーとパスタ、何となく行けそうな気がするのよ。あとは、大木水産から食材を安く仕入れられればいいな、って思ってるんだけど」
「レイコ、実はこの仕事にすごく向いてるかもね」
「うん、キライじゃないんだ、こういうこと」
楽しそうに言うレイコ。
「ところで、旅行中、彼とはいろいろ話ができたの?」
「うん、4月に長野の会社に就職するんだって。それまで、こっちで走りこんだり、長野に練習に行ったり、半々くらいだって」
レイコはマサミに、ニノが話したことを聞かせた。マスターやレイコとこの店で仕事をしたいと思っていること。でもその前に、アズサに代わってその夢を実現し「後片付け」をしたいことなど・・・
「じゃ、遠恋になっちゃうんだ」
「うん」
レイコはうつむいた。
「でも、私はこのお店とマスターが好きだから、ここで待ってる」
「頑張ってね、淋しいだろうけど」
「・・・ありがとう。あ、マサミは明日出発?」
「うん」
「いいなあ、彼の両親に気に入られて」
「レイコだって」
マサミが笑う。
「私は・・・彼の方がまだ私のこと恋人だと思ってないもん」
「私、彼に会ったことないからわからないけど、きっとレイコの存在はどんどん大きくなってきてると思うな。だって、自分の将来のことや《後片付け》のことを話したんでしょ?それはレイコと一緒に生きて行きたいってことだよ。まだ無意識かもしれないけどね」
「そうかな・・・でも、マサミはうれしそうだね」
「うん、でも緊張してるよ」
「電車で行くの?」
「そう。彼は一旦東京に戻ったんだけど、新幹線の中でおちあうことにしたんだ」
「三島から乗るの?」
「うん。この間開通した新線で三島まで出ようと思って」
「いいなあ、彼の実家までデートか」
「レイコはずっと彼の実家のお店にいるんじゃない」
「そりゃそうだけど・・・」

翌日の朝、マサミは宮浦駅にいた。
これからの数日間ミライの実家でいっしょに過ごすと思うと、緊張と期待が入り混じって気分が高まっていた。
つい、歌を口ずさむ。
「・・・シード、コンタークト・・・シード、コンタークト・・・」
やがて、上り列車がやって来た。マサミが席に座ると同時に発車する。

「ご乗車ありがとうございます。この列車は特急・西伊豆2号、東京行きです。ただいま宮浦を定刻どおり発車いたしました。これから止まります駅は、松崎、堂ヶ島、宇久須、恋人岬、土肥温泉、修善寺、伊豆長岡、石丸記念館前、三島、三島から東海道線に入りまして・・・」

三島で下車し、ミライが用意してくれた切符で新幹線ホームに上がる。
「今日は混んでるだろうな。よく指定席とれたよね。ええと、12号車か」
遥か遠くにヘッドライトの光が見え、だんだん近づいてくる。
「早く・・・早く!」
やがて、ひかり号がホームにすべり込んで来た。
もう、待ちきれず開きかけたドアから車内に入る。
「どこ?」
視線の先に、立ち上がって手招きするミライがいた。
顔いっぱいに笑みを浮かべて駆け寄るマサミ。
「おはよう!」
「おはよう、ミライ。よろしくお願いします」
マサミがペコリと頭を下げる。
「昨夜電話したらさあ、親父もお袋も、すごい楽しみにしてるぜ。マサミに会いたくてたまらないんだ」
「・・・でも、なんか怖くなってきちゃった」
「どうして?」
「私、誤解されてるんじゃないかな」
「そんなことないよ」
「ならいいけど・・・」
ちょっとの間の沈黙。なんとなく落ち着かず、お互いモジモジする。
そんなとき、車内販売がやって来た。
「あ、すいません、カルピスウオーター1本。マサミは?」
「私はポカリスウェット」
「じゃ、あとポカリスェット1本」
ミライは小銭を販売員に渡し、カルピスとポカリを受け取った。
「はい、ポカリ」
「ありがと」
ミライはキャップをまわして外し、ひとくち飲んでいった。
「スキとキスの前に、か」
「あ、カルピス飲むたびにそんなこと考えてるの?なんかイヤラしい」
「どうして?」
「なんとなく・・・」
「だって、甘くて爽やかで、イメージ的にピッタリじゃない」
「そ、その・・・私たちの初めてのキスって・・・どんなだったっけ?」
言いながら赤くなるマサミ。
「どんな、って・・・ええと、とっても温かくってやわらかで、ちょっぴり塩・・・」
「ちょ、ちょっと・・・そんなにリアルに表現しなくても・・・」
「そっちが言い出したことだろ」
「まあ、そうだけどね」
「だいたい、なんでそんなこと言い出したんだよ」
「うん、実はね」
マサミはバッグの中から一冊の小説本を取り出した。
「・・・想像できる?・・・落ち葉の匂いのするファーストキスって・・・」


(続く)
...2005/06/02(Thu) 23:48 ID:whSn2Anw    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
香川編〜木庭子町のお正月(その2)

「落ち葉の匂いのするファースト・キスねえ」
「しかもね、空に残った最後の光が消えてしまう間際に、よ」
自分の言葉の意味を確認するようにマサミが言う。
「なにか、象徴的というか暗示的と言うか、そんな感じの表現ではあるよね」
「うん」
「これって《恋するソクラテス》の話でしょ?」
「そうよ」
「オレもこの小説は呼んだことあるけど、この女の子はポケットの上から骨の入った小箱に手を触れ、あらためて強く唇を強く押しつけてきたんだよね」
「そう」
「でもさ、なんか不思議だよなあ」
「やっぱり、そう思う?」
「なにか初めての、って感じがしないよね。季節でいえば春、やわらかな日差しと風・・・ためらいとかドキドキする感じっていうか・・・初めてのキスならそんな雰囲気だと思うんだけど。あ、初めてじゃなかったのかな」
「そんなことはないでしょ」
「だってさ、この二人は中学2年の時《ロミオとジュリエット》やってるじゃない。キスシーンも用意されていたって・・・」
「でも、中学校の文化祭の劇でしょ。フリだけだよ、きっと」
「そりゃ、そうだね」
ふと視線を感じて、二人は話をやめた。通路を挟んで隣り合った席の中年の婦人がこちらを見ていた。
思わず肩をすくめて目と目で会話する。フフッと笑いあった。

少し声を小さくして話を再開する。
「この女の子はすごく真面目であると同時に、すごく大胆な面を垣間見せるよね」
「うん」
「たとえばさ、夢島で彼が体を洗っているのを見ていていたり、その前の場面では彼がそこに戻ってくるのがわかっていながら服を脱いじゃったり」
「でも、彼女はその前の時点で自分が騙されたことに気付いていたわけよね?」
「そう。そしてそれに気付いた時、通り雨に額を打たせながら《いい気持ち》と呟いてる。それもうっとりと」
「その時に気付いたのは騙された、ということだけじゃないような気がするの。もっと大きな運命というか・・・もちろん漠然としたものだけだろうけど」
「うん、その後のある意味での《いさぎよさ》っていうのは、すべてを予感してのものだったと思えなくもないよね。生き急いだっていうか・・・二人で楽しく過ごせる時間はもう残り少ないと分かっていたような・・・」
ミライは自分に反論するかのように続けた。
「でもそうだとすると《急がずに、ゆっくりと一緒になっていきましょうね》という言葉は何を意味するのだろう」
マサミが遠くを見る目で答えた。
「それは永遠のクエスチョンマークじゃないの?その答えは彼女が世界で一番青い空まで持っていってしまったのよ。読む人それぞれにそれぞれの感じ方があるけど、云わぬが花、って言葉もあるじゃない」
「そうか」
「でもさ、あの雨が落ちてくる情景は、彼女の生命そのものの拍動に思えるね《最初はゆったりとした間隔だったのが、メトロノームの錘を下げていくように、雨の落ちてくるテンポはどんどん速くなり、最後はホワイトノーズのようになった》」
「このテンポ、リズムっていうのはすごく印象的だね。発病した時だって、最初はあんまり深刻に考えていないわけだ。それがいつの間にか抵抗不能な流れに飲み込まれて追い詰められ、最後には心理的パニックに陥って・・・」
「ああ、なんか心が痛むわ」

「ご乗車ありがとうございました。間もなく京都、京都に到着いたします。東海道線、山陰線、湖西線、奈良線、関西空港行き特急・はるか号、近鉄線ご利用の方はお乗換えです・・・」

「ずいぶん話し込んじゃったね」
苦笑いしながらマサミが答える。
「でも、話すことはまだまだ残ってるわ」

(続く)
...2005/06/02(Thu) 23:51 ID:whSn2Anw    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
香川編 〜 木庭子町のお正月(その3)

「恋するソクラテス」の表紙をじっと見ながらマサミが言う。
「夢島での一夜にふたりは電話の音を聞くじゃない?あれはいったい何だろうね?」
「ふたりが同時に聞いてるんだから、耳鳴りとかじゃないね」
「うん。でも、音がしている部屋に近づいても、音の方は一向に近づいてこないということは、実在する音ではなく意識の中に響く音ということかな?」
そう言いながら、マサミはミライを見る。
「どうかな・・・まあ小説っていうのは虚構というのが原則だから、この作品の場合はその中の現象が現実的に成立するかどうかを検証するより、作者がその描写によって何を語りたいのかということを考えたほうがいいんじゃないかな?」
「それじゃ、どうなのよ」
「この後、一匹の蛍がこの女の子の肩にとまる。彼女のまわりをゆっくりと旋回し、まるで彼女を選んだかのようにね。そして蛍は何かの合図を送っているかのように二度、三度と光って見せた。それから飛び立った蛍は、今度はためらうことなく仲間のほうへ戻って行った。そして、仲間たちの小さな光に紛れてわからなくなった」
「そうすると、蛍の群れは霊魂だったということ?」
「霊魂というよりは精霊というか・・・うまく言えないけど」
「でも、このシーンは、一番最後の場面で中学校の校庭で彼女の灰が撒かれたとき、桜の花びらに紛れてその灰がすぐに見えなくなった、っていう表現と一対になってると思うわ」
「うん。やっぱり、蛍の光はこの女の子の運命を暗示していたと考えるしかないよね。そうすると、逆算、逆算で、あの電話の音はやはり別の世界からの報せなんだと思うよ、オレは」
「別の世界って・・・」
そのとき、列車は速度を落とし始めた。

「長らくのご乗車ありがとうございました。まもなく終点新大阪です。山陽新幹線、東海道線、大阪市営地下鉄ご利用の方はお乗換えです・・・」

「ごめんごめん。三島に停まる《ひかり》は新大阪止まりなんだよ」
「岡山まで行くんでしょ?」
「そう、だから乗り換えだよ」
「でも、乗り換えるっていうのもなんか楽しいよね」
「そう?」
「サクと一緒だし」
「よ、よせよ」
やがて
「あ、これだね。なんか今までの車両とは雰囲気が違うね」
「ここからは会社が違うからね」

「本日は山陽新幹線をご利用くださいましてありが頭語ざいます。この列車は《フレッツひかり39号》博多行きです。これから停まります駅は新神戸、姫路、岡山、福山、広島、安芸広瀬、新山口、新下関、小倉、終点博多です・・・」

「フレッツひかり、ってどういう意味?」
「さあ、フレッシュの間違いかな?」
「ところで、さっき別の世界って言ってたじゃない?」
「うん」
「あれはどういうこと?」
「この小説の中で、竹取物語のイメージが使われているじゃない」
「この女の子は、かぐや姫なの?」
「作者は、少しはそういう意図を持ってると思うよ」

(続く)
...2005/06/02(Thu) 23:53 ID:whSn2Anw    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
香川編 〜 木庭子町のお正月(その4)

ミライとマサミは岡山駅のホームで、高松行きの列車を待っていた。
「ねえ、サク《恋するソクラテス》の女の子が、かぐや姫なの?」
「うん」
「でも、竹取物語って、可憐な少女が月の世界に帰って行きました、っていう単純な話じゃないよね」
「そうだよ」
「かぐや姫は見た目は可愛い少女だけど、実は月の世界で何かの罪を犯して《流刑》みたいな感じで翁のところにやってくるわけでしょ?」
「そう、実は大人の女性なんだよね」
「求婚してくる男性たちを手玉にとって、すごくしたたかでしょ?」
「まるで誰かさんみたいにね・・・」
「ちょっと、それ誰のことよ」
「イ、痛テエ、そんなに怒んなよ・・・もちろんこの小説の作者は、この女の子が別世界で罪を犯したということまではイメージしてないだろうけど、この女の子の中に《大人の女性》であるもう一人の彼女が存在しているという《雰囲気》は振りまいているような気がするね」
「そうか・・・でも、もう一人の彼女が顔を出すのは、決まってミステリアスな場面よね。神社の石段で骨の入った小箱に触れた時とか、夢島の夜とか」
「それからさ、空港に向かう途中の会話がすごく印象的なんだよね」
「もしかしてこの言葉?《いいえ、私は欲張りよ・・・だって、この幸せを手放すつもりはないんだもの。どこへでも、いつまでも持っていくつもりでいるんだもの》」
「そう。マサミはどう思う?」
「うーん。よくわからないけど、この日17歳になったばかりの女の子の言葉とは思えない」
「だよね、やっぱり」
「つまり、こういうこと?この子がいずれ帰っていく場所=別の世界に近寄った時、隠されたもう一人の彼女が顔を見せる。逆に言えば、もう一人の彼女が現れるという事は、死が近づいたことを意味している・・・」
「もちろん、現実の世界ではそんなことは起こりえないけど、作者はこの小説全体を貫くモチーフとして竹取物語を使っている。まあ、一種のコラボレーションなのかな、っていう気もするね」

その時、ミライが重大なことに気が付いた。
「そうだ、JR四国の列車では車内販売がないんだ。飲み物を買っておかないと」
「大変・・・私なにか買ってくる・・・」

(続く)
...2005/06/02(Thu) 23:55 ID:whSn2Anw    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
香川編 〜 木庭子町のお正月(その5)

岡山駅のホームで、快速マリンライナーが入線してくるのを待つ間に、ミライは木庭子町の家に電話をかけようとしていた。
「快速に乗れば1時間で高松に着くから、高松駅まで車で迎えに来てもらおう」
「あ、待って、サク」
「え?」
「木庭子町には路面電車が走ってたじゃない。あれに乗ってみたいな」
「そうすると、乗り換えが2回増えちゃうけど」
「全然平気だよ」
ミライはちょっとの間考えてからつぶやいた。
「じゃ、そうするか」

「サク、さっきの続きだけど《別の世界》ってどんな世界なんだろう」
「この子はアボリジニの人々の世界観に共感を感じているよね」
「うん」
「とすればやっぱり、地下の聖なる泉のある場所、ということかな。そして姿は見えなくても、時々こちらに顔を出す・・・」
「天国とかあの世とかではないわけよね」
「アボリジニの人々の宗教観っていうのはアニミズムの一種なんだ」
「サク、難しい言葉を知ってるね」
「ついこの間、文化人類学の講義でやったんだ」
「アニミズムってどういうことなの?」
「簡単にいえば、自然界や人間界のあらゆるモノが神や霊を宿して礼拝の対象になりうるっていう考え方だよ。生命の源は精霊で、精霊は自由にこの世界を動き回る。その精霊が出産適齢期の女性に乗り移ると子供が生まれると考えられてきた。精霊が宿り、やがて死んでまた生まれ変わって行く場所を聖地として大切にしていたんだ」
「その場所の一つがウルルなのね」
「そう」
「ねえ、夢島の蛍の群れが精霊だったとすれば、それは死者の群れであると同時に、赤ちゃんの予備軍でもあったというわけね・・・」
「うん。肉体はあくまで《着ぐるみ》なんだ。そのコスチュームをどんどん着替えていくように、生命の実体である精霊は何度も生まれ変わる。不滅なんだよ、この世界の中で」
「天国なんて全然必要ないわけね」
「だから《別の世界》っていうのも本当は無いんだろうね。すぐ横にいるのに《現在人間として生きている者》には認知できない。そんな状態になることを《別の世界に行ってしまった》と思うんだね、きっと」
「あ、わかるような気がしてきた」
「何が?」
「この男の子は、女の子が死んでしばらくして、顔とかの記憶はだんだん薄れていく。だけど、いろんな場所で少しずつ彼女の存在を感じるようになるわけでしょ?」
「ああ」
「つまり、彼女の生命、彼女の実体というのはあくまで精霊なのね。肉体は滅びても、その実体は永遠に生き続ける」
「うん」
「そして彼は、精霊となって自由に動き回る彼女、いろいろなものに宿る彼女と、あちらこちらですれ違うわけよね」
「そうだね。でもその姿を見ることはできない」
「見えないけれども、感じることができる・・・」
「一つの謎は解けたね。彼女の言葉・・・《わたしの身体がここにないことを除けば、悲しむことなんて何もないんだから》《ここからいなくなっても、いつも一緒にいるから》《自分がどこへ行くかわかっているから(○○はどこへも行かないよ)ええ、そうね・・・そのことがわかっていると言いたかったの》・・・こういう言葉は全部説明できるよね」
ふと思い出したようにマサミが言う。
「時々顔を見せた《別の人格》は彼女として生まれ変わる前の人格だったのかな」
「そうかもしれないね」
ミライがふうっと息をつく。
マサミは、そんなミライを、どうしてこんなに愛しいんだろう、とでも言いたげな表情で見ていた。

「お下がりください。お待たせしました、快速マリンライナー・高松行き、入線です・・・」

「来たね」
二人はすばやく車内に入ると、席を確保した。
「やっぱり混んでるねー」
「帰省ラッシュだからね」

「ねえ、サク」
「続き?」
「うん。最後に校庭で撒骨するシーンは、夢島の夜のシーンのリフレインになっているじゃない?」
「ああ。横にいる新しい彼女の人格が急に変わったように見える・・・桜の花びらが散り、その花びらに紛れて、○○の灰はすぐに見えなくなった・・・帰って行ったんだね、彼女は」
「彼は気付いたんだ、きっと」
「何に?」
「彼女は自由に、いろんなところに存在している。それが本来あるべき状態なの。それを理解できるようになった今、彼女の一部を自分のもとに拘束しても、それはもう無意味なことだと。彼女を帰そう、自由にしてあげようと・・・」
「彼が撒いた灰が単なる物質じゃなくて、彼女の実体の一部だってことは、花びらに紛れてすぐに見えなくなった、っていう表現を見ればわかるよね」
「蛍が帰っていった時と同じ表現だもんね」
「でも、心が動いた最初のキッカケはなんだったんだろうね・・・《この世界には、はじまりと終わりがある。その両端に○○がいる。それだけで充分な気がした》・・・どういうことなんだろう?」
「ねえ、サク。私、ちょっとわかるような気がするな。この男の子にとっての世界のはじまりにはすでに彼女がいたでしょ」
「うん」
「それから、宇宙の時の流れから見ればほんの一瞬だけど、二人にとって幸せで濃密な時間があった。でも、その世界はあっという間に弾け飛んでしまった」
「ビッグバンみたいなものか」
「うん、そう。あのね、宇宙には《開いた宇宙》と《閉じた宇宙》があるんだって。今、私たちのいる宇宙はどちらだか判っていないんだけど、《開いた宇宙》だとすると、ビッグバンの後、永遠に膨張を続けて、最後には冷え切った死の世界になるんだって」
「《閉じた宇宙》だとすると?」
「永遠に膨張が続くように見えた宇宙も、ある瞬間から収縮に転じるんだって。そして、最後には元の一点に収束していくの。横軸に時間、縦軸に宇宙の広さをとると、こんな形になるのかな」
マサミは空中にラグビーボールのような形を描いて見せた。
「彼は自分の世界が《小さな閉じた宇宙》だと確信したのかな」
「うん、私はそうだと思う。砕け散って、もう二度と巡り合うことなんかないと思っていても、人間の一生なんか遥かに超えた長い長い時間の後に、お互いに元の場所に戻ってくる」
「そして、それが終焉の時なんだね」
「うん。でも彼女は、はじまりと終わり、ちょうどラグビーボールの両端のところで彼のそばにいることになる」
「この場合の彼女は精霊としての存在じゃなくて、白血病で死んでいった《彼女の人格》だよね」
「もちろんそうよ。でも、でも・・・《またわたしを見つけてね》《すぐに見つけるさ》・・・美しいけど、すごく悲しい会話ね」

(続く)
...2005/06/02(Thu) 23:59 ID:whSn2Anw    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
香川編 〜 木庭子町のお正月(その6)

快速マリンライナーは瀬戸大橋にさしかかった。
「わあ、遠くまで見える・・・」
「すごい橋だろ」
「うん、もう感動」
「これを渡れば、いよいよ四国だよ」
「あの女の子が生まれた島ね」
瀬戸内の海がキラキラと光っている。

「ねえ、もうひとつ分からないことがあるわ」
「なに?」
「あの女の子が人の死にも理由があると思う、と言っているでしょ?」
「うん。彼の方はあの世や天国がないとすれば、死んでしまえばみんなおしまいだから、死ぬことに意味なんかありえないと言っている」
「でも、アニミズム的な考え方では、人の死は単に肉体の消失で、生命の実体はこの世に存在し続けるわけだから、彼女の言葉も意味が通じるね・・・《いまあるもののなかにみんなある。みんなあって何も欠けてない》」
「《いまここにあるものだけが、死んでからもあり続ける》同じ世界に存在するんだから、その通りだよね」
「だけどサク、人の死の意味って、いったいなに?」
「これも文化人類学の講義でやったんだけどさ、アイヌ民族の人々もアニミズム的な生命観を持っているんだって。むかし、アイヌの人々はね、この世で人間は一番下に位置していると考えていたんだって」
「人間が一番下なの?」
「そう・・・太陽の光は緑を育み、ウサギは他の動物の栄養になる。人間だけは何の役にも立っていない」
「へえ」
「ただひとつ、人間ができるのは神に祈ることだけなんだって」
「ふーん・・・」
マサミは不満そうな顔をしていたが、やがて言った。
「でもさ、人間は万物の霊長って言うじゃない」
「それはさ、キリスト教的思想・ヘブライズムなんだよ。キリスト教の考え方では、神が人間を創り、その人間の道具としてすべてのものを創った。地球も大自然も、全部人間の道具に過ぎないんだよ。だから自然を征服するって発想が出てくるわけ」
「アボリジニの人々のアニミズムでは自然そのものに神が宿っているわけでしょ?」
「いや・・・正確に言うと創造主である《虹を紡ぐ蛇》が自然界のいろいろなものに姿を変えたんだ」
「ねえサク、今、虹って言った?」
「うん・・・何か?」
「女の子が空港から搬送された病院で彼にお別れを言う時、あの夏の日を覚えてる?って言ったじゃない?」
「うん」
「そして男の子は、頭の中で真っ青な夏の海を思い浮かべた・・・」
「うん」
「《あそこにはすべてがあった。何も欠けていなかった。すべてを持っていた》とも言っている」
「そう、そのとおり」
「そして船が故障して漂流するわ。夕立の後に虹が出て、それが自然の風景の中に溶け込んでいく・・・」
「虹を紡ぐ蛇、つまり創造主が出現したような光景だったのかな?だから完全無欠だと・・・」
「たぶん、そんなところね」
「マサミ、アボリジニの人々は創造主のいた時代をドリームタイム《夢の時代》と呼んでいたんだ」
「どういうこと?」
「つまりさ、人間が夜に夢を見るでしょ?その夢の中で人間の力を超えるような経験をしたりする」
「この男の子もウルトラマンのように空を飛ぶ夢を見たって言っているわ」
「人間は夢の中で、創造主が持っていた不思議な能力を体験できるわけだ」
「男の子にとって、彼女がいた夏の日はまさに《夢の時代》だったのね」
「そうだね」
「っていうことは、夢島っていう名前の意味は」
「作者はふたつの意味を持たせたんだろうね。ひとつは、少年と少女の夢のような初恋の思い出の場所」
「でも、その裏に隠された本当の意味は・・・」
「うん・・・《人間の能力や常識を超えた現象が起こる場所》」
「夢島っていうのは、なんだか平板なネーミングだと思ってたけど、深い意味があったのね」

「ご乗車ありがとうございました。まもなく坂出に到着します・・・」

「小説の話をしながら、こんなとこまで来ちゃったね。あと20分くらいで高松に着くよ」
「でも、なんか楽しかった・・・いつもと違う感じでサクと話ができて」
「それも、もうすぐ終わりだね」
「ちょっと淋しいような・・・」
「あ、マサミ。今演劇部の次回公演の相手役は誰になったの?」
「ヤマシタくん」
「ちっ、またジャニーズっぽいやつか」
「別に私が選んだわけじゃないよ。あ、サク、妬いてるの?」
「そんなことねえよ」
「さて、話を戻して、最後の謎解きをしよう」
「女の子が生まれ、そして死んでいった理由だね?」

(続く)
...2005/06/03(Fri) 00:01 ID:Am.BlgKA    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
香川編 〜 木庭子町のお正月(その7)

「ねえサク、アボリジニの人々がアイヌ民族に近い考え方を持っているとするとすれば、人間が生きるのは神に祈るため、ということになるよね」
「うん」
「この二人が授業中、天国や神様の話をしていて、廊下に立たされたことがあったでしょ?」
「チンパンジーやゴリラのDNAの授業のときだね」
「あの時に、この女の子は《あの世は信じないけど神様は信じる》と言ってるよね?」
「そう、そして自分の神様はこの世の都合で創りだされた神様じゃないともね」
「ということは、キリスト教やイスラム教で考えるような神じゃなくて自然界に元々存在するような神ということね。アニミズムに近いような気もするけど、彼女はその時にはまだアボリジニ関連の本とかは読んでないはずよ」
「やっぱり元々そういう資質があったんだろうね。そして、アボリジニの世界観と出会い、運命や境遇と重ね合わせて、自分なりのユートピアを見出した」
「それで自分自身を納得させようとしたのね」
「うん」
「それじゃ彼女は自分が生まれてきたのは、自然や自然に宿る神に祈るためだと思ってたの?」
「生まれてきた理由はね」
「じゃ、死んでいくことの理由は?」
「彼女は病院での別れの時言ってるよね《でも悲しまないでね》《わたしの身体がここにないことを除けば、悲しむことなんて何もないんだから》って」
「うん」
「彼女は気付いて欲しかったんじゃないかな」
「何を?」
「命や人を愛することの本質をさ」
「そうか・・・この男の子は最初、彼女のカラダのことばっかり興味を持ってたよね」
「男のオレから見てもちょっと異様さを感じるほどだね」
「って言うかさあ、サクはちょっと臆病過ぎたんだよ」
「んなことはねえよ」
「そうだって」
「ああ、ハイハイ、マサミ先生のおかげで、今ではオトナになれました・・・イテェ!」
マサミは周囲を見回して、声をひそめながら言った。
「ちょっと、それじゃ私がムリヤリ迫ったみたいじゃない。ま、いいか。今では、すっごくイイ男になってくれたから・・・好きだよ、サク」
「・・・ほら、話がズレちまった。で、この小説の中の彼は最初、彼女の肉体のことしか考えていなかったわけだけど、やがて彼女が病気になるわけだ」
「やせ衰えて、髪も喪って・・・私は経験ないけど、女性が髪を喪うっていうのはものすごく重大なことよ。ちょっと男性には想像できないかもしれないけど。昔ね、近所の小学生の女の子がやっぱり同じ病気になって治療を受けてたんだけど、そんな小さな女の子でさえ、髪が抜けるのをすごく気にしてたわ」
「そんなふうに彼女は《表面上の美しさ》をどんどん失くしていく。でも、不思議と冷めた平静さを保っているんだよね」
「そう、彼女の精神的な強さはやはり自分自身のユートピアを持っていたからだと思うわ」
「彼女は自分の死の意味が、《かたちあるもの》でなくなるに過ぎない、と悟っていたような気がする。だから、最後にオーストラリアに行くときでも、永遠の時を過ごす場所に行く、という意味があったような気がするね」
「空港に向かう途中でも、彼のほうは、もう悲しくて悲しくてどうしようもないのに比べて、彼女のほうは冷めた目で前を見ている。もう現状というものに見切りを付けちゃってる感じで。この対比はすごく鮮やかだわ」
「そうだね」
「たとえばさ《結婚する》って言うとき、彼は世の中の普通の男と女がする結婚をイメージしているよね」
「うん」
「でも、彼女が抱いているイメージはきっと違うんだろうな」
「どんな感じ?」
「彼女は自分が《かたちなきもの》になることを前提にして、そうだな、生命と生命の融合っていうか、同化っていうか・・・そんなものを思い浮かべてるんじゃないかな」
「彼女の死後には、彼もそこらへんのところを感じるようになるよね」
「うん、あんなに彼女の肉体に執着した彼だけど、肉体が消滅しても彼女の存在感は消えることはなかったのよ。ある意味で彼はそのとき初めて、自分が愛していたものが何だったのかを知ったんだと思う」
「つまり、名前さえ正確には知らなかった彼女の本質だね」
「そう」
「彼女は自分の身体が消滅する運命であると悟ったとき、彼にその本質を教えようとした・・・」
「彼が生きていく上での栄養になろうとしたのね」
「この小説の中では、彼が彼女を食べる、というような表現がいくつか出てくるんだよね」
「神社で待ち合わせをしたとき、それからお見舞いに行って彼女の顔の前に手をかざしたとき・・・」
「それから、ビスケットを齧る《サク、サク、サク、サク》という音。これは食べられるほうが逆のような気もするけど、やっぱり同類の表現でしょ・・・あ、キラ星のごとく並ぶ文豪の中から、主人公の名前として、この名前を選んだのはこの音感、リズムが欲しかったのかもしれないね。もちろんそれだけじゃないだろうけど」
「確かにそうね・・・それはともかく、ねえサク、アボリジニの人々にしろアイヌ民族にしろ、アニミズムの底流には生命の連鎖っていうか、生命は他の生命の糧になるために存在するっていう思想があると思うんだけど・・・」
「そうだね」
「彼女は、アボリジニ風に言えば《彼に命を与える準備ができたから食べてもいい》と思ったのかな」
「うん、オレもそんなことを感じた」
「最後のほうで、彼のおじいちゃんが、いろいろなことを言っているよね。でも結局、愛する者の死によって人は善良になると言ってるね」
「生命や愛について、謙虚で優しい心を持つようになるということじゃないかな」
「だよね、きっと」
「なあ、マサミ。この小説は《不治の病に冒された恋人に対する、少年の献身的な純愛》を描いた物語だと思われることが多いと思うんだ」
「うん、私もそう思ってたわ」
「確かに、オーストラリアに連れて行こうとしたり、そういう一面はあるとは思う。でも、それ以上に、自分の生命を与えることにより、人を愛することの本当の意味を教えようと思った彼女の思いがすごく心を打つんだよね」
「結果的に彼は、真の意味で女性を愛することができる一人前の男になれたとも言えるね」
「・・・彼女はこんなふうに願ったのかな・・・仮の姿ではない本当の私を感じて。そして、いつかあなたが、かたちなき精霊になる日、すぐ傍にいる私をもう一度見つけてって」

「ご乗車ありがとうございました。まもなく終点高松です。どなたさまもお忘れ物などなさいませんよう、ご注意ください・・・」

「サク・・・もしも、もしも私がサクを残して死ぬようなことになったら、私もきっと彼女と同じことを考えると思うわ・・・」

(続く)
...2005/06/03(Fri) 00:07 ID:Am.BlgKA    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
みなさん、おはようございます。
2日程前、職場の病院の「無菌病棟」に行ってきました。
そのエリアの入口は二重扉になっていたり、入る前に手指を消毒したり、やはり特別な場所です。
「朔と亜紀の世界」の一方の入口を覗いたような気がしました。
...2005/06/04(Sat) 08:08 ID:gsR32xGo    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
おまけのコーナーです。

とある週末の午後、松本朔太郎は喫茶店「海の時計」を訪れた。
「いらっしゃい。お墓参りですか」
マスターが静かな笑顔で迎える。
「ええ・・・淋しくてね・・・いや、おかげさまで家族は仲良く幸せに暮らしてます」
「やはり、あの方を思い出して・・・」
朔は悲しげに首を振った。
「マスター、私が臨床の場に出たのも、やはり彼女のことを忘れたくなかったからかも知れません。最初のうち、一人一人の患者さんがみな彼女に重なって・・・患者さんの苦しむ姿にあの時のことを思い出し、笑顔で退院していく姿に失われた未来を思い・・・夜になると一人で病院の屋上に上がって涙を流したものです」
「わかります」
「でもね、マスター」
「はい」
「医者っていうのは因果な商売でね、泣いてちゃいけないんです。一人の患者さんが亡くなったとします。その空いたベッドには、次の日にはもう違う患者さんが入ってくるんですよ。医者はね、泣いてる暇はないんです。すぐに忘れて、今、目の前にいる患者さんと向き合わなけりゃならないんですよ」
「大変な仕事ですね・・・」
「私は、彼女のことを、彼女の死をいつまでも忘れたくなくて、それで臨床医になったんです。妻もね、一応は理解してくれたんですけどね」
朔太郎はほろ苦い笑みを浮かべながら続けた。
「でもね、結果的に、彼女はどんどん遠くへ行ってしまったような気がするんです。教授と呼ばれるようになって・・・この間もね、若い医師が初めて患者さんを見送って落ち込んでいるのを見て、いつまでもショボくれてるんじゃない、なんて怒鳴ってるんですよ・・・なにか、そんな自分が淋しくてね」
「松本先生、そりゃ違いますよ。あの方はきっと喜んでるんじゃないでしょうか。先生がプロの医師として立派な仕事をして、患者さんたちが失ってしまったかもしれない未来をしっかりと繋いでいる。あの方だってできれば、病で苦しむ人たちをたすけてあげたいと思ってるに決まってますよ。先生はいままでずっと、あの方を生きて来たんですよ」
マスターはひとくち水を飲んだ。
「私には姿は見えません。でもね、先生のすぐ側であの方は笑ってますよ、きっと」
「そうかな、ならいいんだけどね」
マスターは一杯のコーヒーを朔太郎のとなりの席に置いた。
「これは私のおごりです」
...2005/06/05(Sun) 06:55 ID:khNNV7tM    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
「海の時計」を久しぶりに楽しませていただきました。
最愛の人を失った者同士の会話、なかなか味がありました。
コーヒーを奢ったマスターは渋くてカッコ良かったです。願わくば、朔や息子同様、素敵な女性とめぐり合って再び幸せになってもらいたいですね(^^)
...2005/06/05(Sun) 15:03 ID:UXAdiEM.    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:たー坊
朔五郎様。
香川編と、海の時計の両方をしっかりと拝読させて頂きました。
香川編では、あれだけの議論を車内で繰り広げたのですから、今度はサクの実家での楽しいひとときを期待しております。

SATO様
これからも、SATO様の物語を楽しみにしております。
おたがいに頑張っていきましょう。
...2005/06/05(Sun) 21:52 ID:coTB6Ufc    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
たー坊様
激励ありがとうございます。
ネット環境が整ったら新作を投稿していきます。
(現在はネット環境が整っておらず、ネットカフェから書き込みしています)

お気に入りの旧作を再投稿します(マタかよ・・・)


「かたちあるもの」お披露目編1

2月24日午後

律子とマサミが廣瀬家にやってきた。

マサミ「いよいよ、わたし達が作った歌を聴いてもらうんですね。ちょっとドキドキしてきた。」
律子「マサミちゃんがドキドキしたら私はどうなるのよ、もうっ(笑いながらマサミを小突く)」
マサミ「へー、律子さんでもドキドキするんだ。」
律子「そりゃそうよ、初めて人前で披露する曲なんだから・・・それに、綾子さん、よくわからないこと言うのよ・・・」

********************

数日前

律子が綾子に電話をかけた時のこと・・

律子「綾子さん、実は、この前聞かせていただいた話なんですけど・・・」
綾子「うん、なに?」
律子「もの凄く感動しちゃって、マサミちゃんと一緒に亜紀さんの気持ちを歌にしてみたんです。」
綾子「まあ、亜紀のこと、歌にして下さったの?」
律子「あまり出来は良くないと思うんですけど、一度お聴かせしたいと思いまして・・・」
綾子「そう、ありがとう、ちょっと待ってね、主人に話してみるから・・・(奥の方で真と話している様子)・・・・・お待たせ、そうしたらね、24日の午後に来て下さる?亜紀の歌を聴かせていただくのなら、他にも聴かせたい人がいるからって主人が言ってるのよ。」
律子「えっ、他にもどなたかいらっしゃるんですか(ちょっと引き気味)・・・」
綾子「大丈夫よ、別に変な人呼んでるわけじゃないから(笑)、それにマサミちゃんが知ってる人もいるから。」
律子「そうですか、はい、それでは24日の午後にお邪魔させていただきます。」

******************

マサミ「うそっ、他にも誰かいるなんて、ちょっと恥ずかしいわ。でも、あたしの知り合いって誰だろう?」
律子「わからないけど、度胸すえて、行きましょう」

(廣瀬家・門の前)

ピンポーン!

(スピーカーから)綾子の声「はーい」

律子「律子です。今、門のところにいるんですけど」
綾子の声「開いてるから、どうぞ、お入りになって」
律子「では、おじゃまします」

律子とマサミは門の中へ入って来た。

(廣瀬家の玄関前)

律子「さてと、入りますか」
マサミ「そうですね(ちょっと不安顔)」

マサミの背後に人の気配がする

トントン・・・
誰かがマサミの肩をたたいた

マサミが振り向くとほっぺに人差し指があたる。
何と、そこにはアキが。

アキ「へへっ、びっくりした?」
マサミ「したよー」
アキ「律子さん、お久しぶりです(ピョコンとお辞儀)クリスマスの時はお世話になりました。」
律子「アキちゃん、今日は。あの日はホントに楽しかったね」
マサミ「でも、何でアキがここにいるの?それに学校行くわけでもないのに何でそんな格好してるの?」

アキは制服姿であった

アキ「今日は亜紀さんの月命日なの。それで、お母さんたちとお墓参り行ってたのよ。」
マサミ「そうだったんだ・・・」
アキ「律子さんと一緒に亜紀さんの歌作ったんだって?」
律子「まあ、綾子さん、しゃべっちゃったの?そんなに出来良くないのに、ちょっと恥ずかしいわ・・・」
アキ「律子さん、おじさんとおばさんがすごく楽しみにしてますよ。どうせなら、亜紀さんのお友達にも聴かせてあげたいって言ってました。」
マサミ「アキのお母さんって、亜紀さんのお友達だったの?」
アキ「うん、他にも二人来てるよ。」
律子「こうなったら、何人いても同じ。腹すえて行くわよ。」
アキ「律子さん、そんなに緊張することないですよ。(マサミに)行こっ!」

廣瀬家へ入る三人

(廣瀬家の居間)

律子・マサミ・アキが入ってきた

居間では智世と綾子が立ち話をしていた

アキ「(綾子に)おばさん、お迎えしてきました」
綾子「アキちゃん、ご苦労様ね」
アキ「(智世に)お母さん、担任の大沢先生の奥様の律子さんと、クラスメートの長沢マサミさんです。」
智世「はじめまして、アキの母です。その節はうちのアキがお二人にいろいろご迷惑をおかけしまして、申し訳ございませんでした。」
律子「いいえ、こちらこそ、クリスマスの日にはアキさんいお世話になりました。大沢の家内の律子です。」
マサミ「はじめまして、長沢です。アキさんとはとっても仲良くさせていただいてます。(アキに)ねっ」
アキ「うん」
智世「ちょっと、龍之介、龍之介ってば・・」

龍之介登場

龍之介「うるせーな、人の家でそんなわめくなよ。」
智世「そんなこと、どうでもいいの、ほら、大沢先生の奥様と、ケンちゃんのクラスメートよ」
龍之介「(姿勢を正し、律子とマサミに)ケンザブロウの父の大木龍之介です。いつもお世話になっております。」
律子・マサミ「よろしくお願いします(お辞儀する)」
智世「(龍之介に)それだけ?こちらのお二人にはケンちゃんとうちのアキが散々ご迷惑おかけしたんだからね。よくお詫びしなきゃ。アキ、そんなところに立ってないでこっち来なさい。」
アキ「?(キョトンとして智世の隣に行く)」
智世「本当に、お二人にはご迷惑をおかけしました(律子とマサミにお辞儀)」
龍之介「(智世につられてお辞儀)」
アキ「(智世に頭をつかまれてお辞儀させられる)」
律子・マサミ「(お辞儀を返す)」

律子「すみません、ちょっと用意させていただけますか?」
綾子「どうぞ」

(廊下で)

マサミ「(腹を抱えて笑っている)アキのお母さんって面白い人・・・(笑いすぎて涙をふいている)」
律子「気取ってなくて、感じのいい人じゃない。でも、ケンちゃんのお父さんとはまるで漫才やってるみたいだった・・・ああ、おかしい(腹を抱えて笑う)」

(続く)


※ここでの智世は朔母の富子に近いイメージで書いてみました。
...2005/06/07(Tue) 22:45 ID:HT.WOHMA    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
「かたちあるもの」お披露目編2(再)

(廣瀬家・廊下)

智世と龍之介の掛け合いにバカ受けして笑い続けている律子・マサミ

二人の横を男性が通り過ぎた

トン!マサミの肩に男性が触れた

男性の声「おっと、失礼」

男性が振り向く

男性「あれ、もしかして、あなたたちが?」
律子・マサミ「??」
男性「そうか、挨拶しなきゃわからないよね。はじめまして、松本朔太郎です。」
律子「!はじめまして、大沢律子です」
マサミ「!長沢マサミです」
律子・マサミ「(この人があの朔太郎さん・・・)」
律子「廣瀬さんとは、老人ホームにボランティアに行った時に知り合いまして、それからはこちらによく遊びに来させていただいてます。」
朔「そうですか、最近新しいお友達が出来たと聞いていたのですが、あなたたちだったんですね。」
律子「お邪魔かもしれませんが、よろしくお願いします。」
朔「お邪魔だなんて、とんでもない。廣瀬さんとお友達なら、僕らとも友達ですよ。」
律子「ありがとうございます」
マサミ「あの・・・」
朔「何?」
マサミ「ケンザブロウ君のお父さんやアキさんのお母さんとは仲良しなんですか?」
朔「うん、子供の頃から大の仲良しだよ。ケンザブロウ君のお父さんはスケちゃん、アキちゃんのお母さんはトモヨって呼んでるよ。僕はサクって呼ばれてるけどね。」
マサミ「さっきのケンザブロウ君のお父さんとアキさんのお母さん見てて、すごく仲良さそうで。どうして夫婦じゃないんだろうって不思議に思いました。」
律子「マサミちゃん、それは大人の話なんだから・・・」
朔「いや、いいですよ。スケちゃんとトモヨは夫婦じゃないから言いたいこと言い合えるのかもしれないよ。一緒に暮らしてると、我慢しなければならないことも出てくるからね。たまに会って、言いたいこと言い合ってストレス発散してるんだよ。スケちゃんたちは。」
マサミ「へー、いいですね、そういうお友達って。」
朔「マサミさんにも、そういう友達が出来るよ、きっと」
マサミ「そうですか?」
朔「そうだとも、それじゃ、また後で」

朔がいなくなると、律子とマサミの背後から男性の声が・・・

「あいつ、ちゃんと挨拶できるようになったんだな・・・うん」
律子「あ、廣瀬さん、今日は」
マサミ「今日は、廣瀬のおじさん」
真「今日は。今君たちと話していた彼が昔、挨拶できなかった朔君だ。やつが挨拶していかなかったら、どやしつけてやろうとテグスネ引いて待ってたんだけどな・・・」
律子「どやしつける相手がいなくなって寂しいんじゃありません?」
真「そうかもね、正直言うと、私のところから巣立っていったような気分だよ。ま、今では有名なお医者様だから、どやしつける方も気を使うからね・・・ハハハ・・・」


(続く)
...2005/06/07(Tue) 22:47 ID:HT.WOHMA    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
「かたちあるもの」お披露目編3(再)

(廣瀬家・居間)

朔「お待たせ」
アキ「あー、やっぱり、松本先生、ネクタイしてるより、そういうラフな格好の方が似合う(笑顔が輝く)」

(注:亜紀の墓参りに行ったのは、朔・龍之介・智世・アキの四人。大人三人は喪服を着て行き、廣瀬家に来てから普段着に着替えたのでした)

朔「おいおい、アキちゃん、それどういう意味だよ、あんまり大人をからかわないでくれよな(苦笑)」
アキ「前、ケンちゃんと一緒に東京から帰ってくるときに亜紀さんの話聞かせて下さったじゃないですか。そのときの先生の顔、とっても素敵でした。それで、着ていた服装も素敵に見えたんです。でも、今日、亜紀さんのお墓参りに行くときに喪服を着てきた先生を見て、違うイメージだったものですから。」
朔「そっか、アキちゃんもいずれわかると思うけど、大人っていうのはね、時と場所によっていろいろ顔つきとか格好を変えなければならないものなんだ。今日は亜紀と僕たちにとって特別な日になるからね、キチンとした格好しなきゃいけないと思ったんだよ。」
アキ「あー、そうか・・・私も亜紀さんの前に出るときは変な格好しちゃいけないと思って、制服着てきたんですよ」
智世「なーにわかったような口きいてんのよ(笑ってアキを小突く)制服着ろって、私が言ったんだからね」

龍之介「アキちゃん、君のお母さんも同じこと言ったんだよ。『龍之介にスーツは似合わない。鉢巻しめて、白いTシャツに腹巻してるのが似合ってる』ってさ」
智世「バカッ、それとこれとは別問題でしょっ」
龍之介「でもさ、俺、結構傷ついたんだぜー。(朔に)おまえさーん、智世に何とか言ってくれよー」
朔「スケちゃん、可愛そうだけど、ここは智世の勝ちだよ」
智世「ほーら、ザマミロ、アッカンベーだ!」
龍之介「そんなー、連れないよ、おまえさーん!」

そんな三人のやりとりを笑顔で見ている綾子とアキ・・・

アキ「(綾子に)おばさん、うちのお母さんって、あんな顔して笑うんですね・・・初めて見た・・・」
綾子「うん・・・よかったね、そんなお母さんの笑うところが見れて・・・家族に見せないこともあるんだよ。」
アキ「へー、そうなんですか?(よく意味がわかっていない様子)」

朔「・・・スケちゃんだからこそ、智世は本当のことが言えたんだよ。船に乗らなくなって、経営に専念するようになって、スケちゃんがスケちゃんじゃなくなったような気がして、寂しかったんじゃないかな、智世は。・・・僕もそうだったけどね。」
龍之介「俺だって、船から下りたくなかった。でも、会社が大きくなってきて、全体を見なければならなくなったし、若い連中も一人前になってきたからね。ここら辺りが潮時かと思ったんだ。」
智世「朔が言ったとおり。前にも言ったけど、散歩で防波堤行くと、仕事から帰ってきて海を見ている龍之介がいた。わたしはそんなあなたを見るのが好きだった。でも、今はいないのよ、そんな龍之介が。だから、防波堤行ってもつまんなくてさ・・・それで、あんなこと言っちゃったんだ、会社の事情とか色々あることわかってんだけどね。」
龍之介「智世、お前・・・」
智世「ケンちゃんっていう跡取り息子もいることだし、頑張れよ、社長さん」
龍之介「お前こそな、頑張れよ、智世。」
智世「オウ!」


(続く)
...2005/06/07(Tue) 22:50 ID:HT.WOHMA    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
「かたちあるもの」お披露目編4(再)

(廣瀬家・居間)

真が律子・マサミを連れて入ってきた

真「みんな、そろそろいいかな?」

今までふざけ合っていた朔・龍之介・智世が真の方を向く

真「(三人に向かって)廊下まで君たちの楽しそうな声が聞こえてきたよ、いくつになっても友達同士っていうのはいいもんだね(笑顔)」
智世「あら、おじさん、はしたないところをお聞かせしちゃったかしら・・・オホホホ(口を押さえて笑う)」
龍之介「バカ、お前には似合わないんだよ、オホホホなんて」
智世「言ったわね、あたしだって大人なんだから、時と場所をわきまえてるのよ」
龍之介「お前なー、今更おじさんの前でカッコつけてどうするんだよ。かえって気持ち悪いじゃないかよ・・・」

またまた喧嘩を始める智世と龍之介。しかし二人とも笑っている・・・
そんな二人を笑顔で見守る一同

真「おっと、ここは大木君の勝ちだな。罰ゲームというわけじゃないが、智世さん、亜紀を呼んできてくれないか。」
智世「はい、おじさん、今日は亜紀のためにみんな集まったんですもの、連れてきます」
朔「智世、それなら、僕たち三人で連れてこよう、な、スケちゃん」
龍之介「うん、そうだな」
真「じゃ、頼んだよ」

(亜紀の部屋)

焼香した三人

朔「でも、谷田部先生とボウズがいないのはちょと寂しいな」
智世「谷田部先生、今、NYに行ってるのよ。市民マラソンに出るんだって。みんなによろしくっておっしゃってたわ」
龍之介「ボウズだったら心配ない、奥の手があるんだ。」
朔「何だい、その奥の手って」
龍之介「戻ってからのお楽しみ」
智世「さ、亜紀をお連れしましょう」

(居間)

律子とマサミはピアノの前で準備中・・・

律子「大丈夫かな?」
マサミ「準備OK!」

そこへ亜紀の遺影を抱えた智世たちが戻ってきた

真「じゃ、全員揃ったようだね」
龍之介「おじさん、ちょっと待って下さい、ボウズも呼びますので・・・」
真「うん、そうだね、中川君にもいてもらわなきゃね」

龍之介が持ってきたノートPCを操作すると、画面に顕良が映し出された

龍之介「ボウズ、わかるか?」
顕良「よ、スケちゃん、よくわかるぞよ」
龍之介「今日は亜紀のことを歌にしてもらったんで、みんなで聴かせてもらうことにしたんだ。だから、ボウズも聴いてくれよ」
顕良「うん、わかったよ」
朔「ボウズ、久しぶり」
顕良「よ、久しぶり、センチメンタルジャーニー(笑)、それから智世、お前、相変わらずスケちゃんに突っかかってるだろう」
智世「悪かったわね、ボウズ(笑)」

律子とマサミがPCの前にやって来る

律子「始めまして、大沢律子です、こちらにいる長沢マサミさんと一緒に亜紀さんの歌を作りました。是非、聴いて下さい。」
マサミ「よろしくお願いします」
顕良「律子さん、マサミさん、はじめまして。亜紀のクラスメートだった中川顕良です。あなたたちが作ってくれた歌を拙僧も楽しみにしております。」

マサミ「では、始めます」

廣瀬家の居間に集まった真・綾子夫妻、朔、龍之介、智世、アキ、PC画面の向こうにはボウズもいる
そして演奏・歌は律子、楽譜めくりはマサミの役目である。
廣瀬家がミニライブの会場と化しました。

マサミ「みなさん、今日は。私たちが作った歌を聴いていただくためにお集まりいただき、ありがとうございます。廣瀬さんから聞かせていただいた亜紀さんのお話にもの凄く感動して、わたしが詞を書き、律子さんが曲をつけてくれました。亜紀さんのことは、皆様のほうがご存知だと思いますので、早速聴いて下さい。」


演奏、そして、歌が始まった
〜30年の時を経て、いま、亜紀の心が蘇る〜

 夜空に消えてく星の声
 儚げに光る鈍色の月
 二人で泳いだ海は何故
 束の間に色変えてゆくんだろう

 このまま眠ってしまいたくない
 あなたをまだ感じてたい

 もしもあなたが寂しい時に
 ただそばにいることさえできないけど
 失くす傷みを知ったあなたは
 ほかの愛をつかめるそう信じてる

 いつかあなたが夜に迷い
 ふとあの日を見つめかえすなら
 まぶしすぎる太陽の中で
 微笑む私を思ってね

 重ねあわせてゆく「好き」の強さ
 泣くことさえ愛に変えた

 強がる愛の弱さ両手に
 抱えてもろい絆を確かめてた
 でもこの今(とき)を生きるあなたを
 ずっとずっと見守るmylove その心に

 泣きたいときや苦しいときは
 私を思いだしてくれればいい
 寄り添える場所遠い夏の日
 温もり生きる喜び
 全てのこころに
 (作詞:柴咲コウ・山本成美)


曲を聴いている、みんなの脳裏には亜紀の面影やメッセージが浮かんでいた・・・


『智世へ
 智世と初めてしゃべった日
 いまでも覚えてるよ
 陸上部の練習の初日

 タオル貸して

 屈託のない智世の明るさは
 私のあこがれだったんだよ
 智世の笑った顔
 すき
 大きな声もすき
 だから
 いつまでも変わらないでね』

目を潤ませる智世
そんな母にアキがハンカチを差し出す


『大木君
 夢島ありがとう
 わたしと大木君は
 ちょっと似てるかなって思ってます
 かっこつけのところと
 実は小心者のところとか
 もっと
 いろんなこと話したかった
 もっと
 友達になれたよね
 おまえさん』

目を閉じて曲に聴き入る龍之介


『ボウズ 
 一回呼んでみたかったんだ
 怒るかもしれないけど
 お坊さん 向いていると思うよ
 ボウズの明るいお経 いいなぁ
 聞いてみたいよ
 わらわはばっちり聞いておるぞよ』

合掌する顕良


『おとうさん
 あした
 わたし、結婚写真撮るよ
 私のウエディングドレスとか
 興味ないかもしれないけど
 わたし
 がんばってしゃんとするから
 髪の毛にも踏ん張るように指令出したぞよ
 今の私には
 もうこんなことしか頑張れないけど
 おとうさんに見て欲しい』

朔との形だけの結婚式を思い出す真


『おとうさん、おかあさん ごめんね

 頑固で
 負けず嫌いで
 かっこつけで
 泣き虫の
 私の最後のわがまま

 きっと生きたいように生きるために
 生まれてきたから
 最後まで
 そうしたい』

ウルルでの散骨を思い出す綾子


『おまえは最後に聞く
 隣のあの子はどこに行ったの
 すると私は答えるだろう
 もう見えないよ
 なぜならお前の中にいるからさ
 お前の足は
 あのこの足だ

 がんばれ』

うなずく朔


曲が終わった

パチパチパチ・・・(みんなが拍手)

アキが律子とマサミに花束を渡す

朔が出てきて律子・マサミとガッチリ握手。

朔「律子さん、マサミさん、どうもありがとう、この歌は亜紀の心そのものです。きっと、僕を意識して詞を書いてくれたと思うんだけど、この歌は亜紀のお父さん・お母さん、スケちゃん、ボウズ、智世、そして今日来られなかった谷田部先生みんなに向けたメッセージだと思います。そして、僕たちの次の世代である、マサミさん、ケンザブロウ君、アキちゃんたちにもこの歌で亜紀の生き様を知ってもらい、大切に歌い継がれていくことを願っています。」

感激して涙ぐむ律子・マサミ・・・

マサミ「・・・あの、朔太郎さん、この歌、まだ題名がないんですけど・・・」
朔「うん、亜紀の心をこうして歌にしてくれたんだ。かたちにして残してくれたんだから、『かたちあるもの』という題名はどう?」
マサミ「『かたちあるもの』?」
智世「朔、それピッタリだよ、『かたちあるもの』、これでいきましょうよ、皆さん」

パチパチパチ・・・

〜こうして、廣瀬家のミニライブは感動のうちに終わりました〜
...2005/06/07(Tue) 22:57 ID:HT.WOHMA    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
「かたちあるもの」お披露目編〜エピローグ(再)

ミニライブの翌日

(宮浦高校グランド)

智世「ここでね、毎日亜紀と走ってたんだ、練習は苦しかったけど、終わったあとに顔洗いながら亜紀とおしゃべりするのが楽しかった・・・」
アキ「そうなんだ、どんな話したの?」
智世「帰りにたこ焼き食べようとか、朔とか龍之介とか、ボウズの噂話とかさ、他愛もない話してたよ・・・」

グランドを見つめる智世

智世「アキ、ごめんね、あんたなら毎日ここ見てるのにさ、昨日、亜紀の歌聴かせてもらって、どうしてもここに来たくなったの。あたしね、あの歌の亜紀の願いどおり、達明さんと出会って、そしてアキが生まれてきてくれて、幸せなんだよ・・・だから、もう、あんな無茶しないでね」
アキ「お母さん・・・」

「センパイ!」(背後から女の子の声)

智世とアキが振り向くと笑顔のマサミが立っていた

智世「あら、マサミちゃん、昨日はお疲れさまでした」
マサミ「先輩こそ、わたし達の歌を聴いて下さってどうもありがとうございました。(智世にピョコンとお辞儀する)」
智世「でも、先輩って呼ばれるとちょっと照れくさいな、おばさんでいいわよ。」
マサミ「(笑顔で)いいえ、亜紀さんと並ぶ宮浦高校陸上部のエースだった方ですもの、智世・亜紀両先輩に追いつけ追い越せで頑張ってきましたから」
智世「まぁ、うまいわね、悪いけど、何にも出ないわよ(笑)」
アキ「(マサミに)お母さん、本当に何にも持ってないの」
智世「(アキに)あんたは余計なこと言わなくていいの。」
マサミ「(吹き出して笑う)」
智世「それより、マサミちゃん、競走しようか?亜紀が走ったトラックで」
アキ「ちょっと、お母さん、よしてよ、マサミはついこの間まで現役だったんだよ、無茶してケガしたらどうするのよ」
智世「あんた、あたしをなめてるわね(ムキになる)」
マサミ「それじゃ、先輩、お相手お願いします・・・」
智世「アキ、スターターやって」

アキ「位置について、ヨーイ・・・・ドン!」

マサミはグングン智世を引き離す、全く勝負にならない・・・

智世「ハァ・ハァハァ・・・年甲斐もなく・・・ムキになって頑張っちゃった・・・」
マサミ「先輩、大丈夫ですか?」
智世「何の、これしき、まだまだあなたたち若い人には負けないわよ。主人やアキと一緒に頑張っていくから・・・」
マサミ「はい、私も福祉の道に進むことにしました、頑張って勉強したいと思ってます。」
智世「そう、お互い頑張ろうね」
マサミ「はい、先輩」
智世「もうひと勝負する?」

智世とマサミは追いかけっこを始めた

二人のはしゃぐ声「キャハハハ・・・」

大沢先生「あの歌の題名、『かたちあるもの』にしたの?」
律子「うん、朔太郎さんがつけて下さったの」
大沢「そう、ピッタリな題名だよ」


アキは遠くにいる智世とマサミを見守っていた

(アキの語り)

亜紀さん、マサミと律子さんが作ってくれた歌、聴いていただけましたか?お母さんは、亜紀さんを亡くした傷みを知っているから、お父さんや私がいて幸せって思ってくれてるんでしょうね。
それからわたし、亜紀さんからとっても素敵なプレゼントをいただきました。あんな顔して笑うお母さん見たの初めてです。うるさくて、怖いお母さんだと思ってたけど、やっぱりお母さんが好き。屈託なくて大きな声で笑うお母さんが好き。
亜紀さんが大好きなお母さんの娘でよかった。
だから、わたしもケンちゃんやマサミ、ユイ、シンジ、レイコ、みんなをもっともっと好きになりたい。お母さんみたいに、大人になってもずっと仲良しでいたい。そんなわたしのこと、見てて下さいね。お母さんにも亜紀さんにも胸を張れるように生きていきますから・・・

アキは智世とマサミに向かって走っていった。

(おわり)
...2005/06/07(Tue) 23:01 ID:HT.WOHMA    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
たー坊さま
コメントありがとうございます。
香川編は、これから楽しくなります。お読みいただければ幸いです。

SATOさま
懐かしい作品を読んで楽しかったです。
...2005/06/07(Tue) 23:51 ID:IJhv9xqc    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
香川編 〜 木庭子町のお正月(その8)

ミライとマサミは高松駅のホームを歩いていた。
「へえ、この駅は線路がみんな行き止まりになってるんだね」
「うん」
「子供の頃行った、北海道の函館駅に似てるわ。階段を上り下りしなくても乗換えができるのね」
「高松も函館も、元は連絡船への乗り換えの駅だったからね。あ、それから駅前の広場には、海水を引いた池があってね、海の魚が泳いでるんだよ」
「わあ、おもしろい」
「あとね、駅前から庵治町へ行くバスが出てるんだけど、バスのりばの横の観光案内所で、映画のロケ地マップをもらえるんだ。バスの中でそのマップを見ながら作戦を立てることができるんだよ」
「へえ、映画のロケ地なんかあったんだ。その映画って《大空に続く道》でしょ」
「そうだよ。すごい話題になったよね。いつも彼女にからかわれている少年・・・まるでオレたちみたいだね・・・イテェ!」
「ちょっと、全然似てないわよ、私たちには・・・でも、あの映画、風景がきれいだったよね。行ってみたいな」
「行ってもいいけど、はっきり言って木庭子町とほとんどいっしょだよ・・・でもまあ、せっかくだから行ってみるか」
「うん、うれしい」
やがて、高徳線のホームにたどりついた。
「さあ、これに乗るよ」
「どこで降りるの?」
「木庭子口だよ。そこから古町行きの路面電車に乗り換えるんだ」

「次は木庭子口、木庭子口です。古町方面へおいでの方はお乗換えです・・・」

「わあ、かわいい電車・・・あれ、この電車、青いラッピングをしてスポーツ飲料のCMに出てなかったっけ?」
「残念だけど、あれは同じ四国でも高知県の土佐電鉄なんだ。これは木庭子町交通局だからね」
やがて、路面電車は走り始めた。
まもなく、進行方向右側の車窓に奇怪な形をした山が見えてきた。
「サク、変わった形の山だね」
「あれはね、五剣山と言うんだ」
「へえ、なんか名前に合っている感じ」
進行方向左側は深い入り江のような海が見える。そして、その向こうにはテーブルのような形をした山があった。
「あの平らな山が屋島。そしてその手前の海が壇ノ浦古戦場だよ」
「え、じゃあ平家はここで滅亡したの?」
「いや、あの壇ノ浦は関門海峡のほうでね。ここでの戦いは屋島の合戦と呼ばれているよ」
やがて電車は少し急な坂を登り小さな峠のようなところを抜けた。
目の前に青い空と海が広がった瞬間、マサミが叫んだ
「わあ、きれい。まさに大空に続く道っていう感じだね」
「ほら、あそこに小さな入り江があるだろ」
「うん」
「平家の軍勢は、あそこに船をたくさん隠して、源氏の水軍を待ち伏せしていたんだ。それで、あそこを《船かくし》というんだよ」
「ふーん・・・あれ?」
「どうしたの?」
「あそこに座ってる女の子・・・」
「そういや、さっきまでいなかったね」
「ハルカちゃん、あ、私の高校の後輩で野球部のマネージャーなんだけど、あの女の子とソックリなの。それに、ハルカちゃんがアマチュアの劇団で演じているキャラにピッタリの雰囲気だわ」
その時、その少女がゆっくりと二人のほうへ顔を向け、はんなりと微笑んだ。
この世のものとも思われない、ゆったりとした神秘的な微笑。
ミライとマサミはまるで引き寄せられるかのように、その少女の近くに席を移した。
軽く会釈した後、思い切ってマサミが話しかける。
「あの、もしかしてハルカ・・・ちゃん?」
少女はニコリと笑うと、首を振りながら言った。
「いいえ、私は吉野静です」
「あ、すみません・・・私の知り合いによく似ていたものですから・・・私、長沢マサミです」
「マサミさんですか・・・そちらはマサミさんの彼氏かしら?」
「はい、佐久間ミライです」
「いいわねえ、うらやましい・・・」
「何がですか?」
「いつも一緒にいられて」
「シズカさんの彼は?」
静ははるか遠くの海を見つめながら言った。
「もう長いこと会っていないわ」
「えっ」
「彼は弓道部に入ってて、前にここらへんで団体戦の大会があったのよ。それがちょっと変わったルールだったの。海の上にボートを浮かべて、そこに立てた棒の一番先に扇をつけて、それを的にしたの。当然命中する人なんかほとんどいなかったんだけど、彼の弓道部は、那須野選手が扇を射抜いて優勝したのよ。私の彼は主将だったんだけど、優勝が決まった後、気が抜けて弓を海に落としてしまったの。彼はあわてて海に飛び込んで回収しようとしたけど、皆に止められてしまった。どうせそんなに高いものじゃないだろ?命とどっちが大事なんだ?ってね」
「値段の問題じゃないと思うけど、本当に大事なら」
「そりゃそうなんだけど・・・彼がそれを拾おうとしたのは、誰かにその弓を拾われたときに、ああ、あそこの主将の滝沢の弓はこんなに貧弱なのか、と思われるのが嫌だったからなの。本人がそう言ってたわ」
マサミが聞く。
「今、あなたの彼は?」
「滝沢くんは岩手県のほうへ行ってしまった。それ以来会ってないわ」
「今日は彼との思い出の場所に来たの?」
「ううん、私たち、ここに一緒に来たことはないのよ。でも、彼が活躍した場所だから。そして彼の夢が宿る場所だから・・・私、日本舞踊やってるから、彼に私の舞を見せて上げたいの。ここで舞えば、その思いが彼に届くような気がする」
次第にその姿が薄れていくなか、言葉だけが残った。
「陽が落ちたらね、浜辺で舞うの・・・」
「陽が落ちたら・・・」
マサミがその言葉を繰り返した。
今、起こったことは?
目の前の海の色は目の覚めるような青だった。
まるで、そんな少女などいなかったと言われているような気がした。

「ねえ、サク」
「なに?」
「写真館の重じいは80年間、同じひとのことを思い続けているんだよね・・・」
「そうらしいね」
「とても信じられない話だけど、きっとホントだね」
「うん」
「だってここは、愛する男性のために、800年間舞い続けるひとの魂が宿る場所だから・・・」


(続く)
...2005/06/08(Wed) 00:25 ID:.7rFTEWc    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
朔五郎さま
ファンタジー色豊かな最新作を楽しませていただきました。
マサミとミライの前に現れた少女は、静御前の魂が『かたちあるもの』となって姿を見せたのでしょうか?想像を掻き立てられますね(^^)
...2005/06/10(Fri) 22:33 ID:8mQ9OmNg    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:たか
ご無沙汰です〜

非常に忙しい状況が続いております。
なかなか作品ができず迷惑になっている部分もあると思いますが

なんとか完成させようと思いますので。挨拶ばかりの投稿ですみません。
...2005/06/10(Fri) 23:18 ID:HzGAhuQw    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:にわかマニア
 ちょっとお遊びで書きなぐった近未来の物語です。おふざけの度が過ぎていたら,お詫びいたします。

 2005年7月2日。
 早朝の沼津駅上りホームに,いつもは見かけない顔触れの一団が集まっていた。
 「やあ,皆さん。お早いですね。こんな早くから集まるなんて,余程お好きなんですね」
 「それはお互い様じゃないですか。私なんか4時起きで,家を出たのは5時前ですよ」
 「それにしても,SG郎さんのお姿が見られないのは,ちょっと寂しいですね」
 「この時間だと,大宮からじゃ大変でしょうから,宮浦の現地直行じゃないですか」

 他愛ない会話をしているうちに,時計の針は8時10分を少々回った。
 「業務放送。2列車接近!」
 ホームにアナウンスが響き,帽子に赤筋の入った駅員が現われた。
 「間もなく,熊本・大分からの寝台特急はやぶさ・富士号,東京行きがまいります。白線の内側にお下がりください・・・」
 やがて,轟音とともにEF66に牽かれた列車が滑り込み,9号車から1人の青年が降り立った。
 「Gさんですね。初めまして。T坊です。お目にかかるのは初めてですが,いつも楽しみにしています。お互い執筆がんばりましょう」
 「Gさん。お疲れ様です。博多からじゃ大変だったでしょう」
 「それが,広島から乗ってこられたこちらの方とすっかり話がはずんでしまって・・・」
 「おや,SG郎さんじゃないですか。どうしてまた・・・」
 「いやあ。伊予大洲の方の宮浦も見てみたくなりましてね。一つ前の瀬戸は5時半着で早過ぎるので,スケちゃんとんぼ返りのルートをたどって広島回りにしたら,偶然,乗り合わせたって訳で・・・」
 「まあまあ,ともかく,1駅ですが,こっちの各駅停車で三島まで行きましょう。ここから土肥に直行する船もあるのですが,接続が悪くって,今出たところなんですよ」

 三島から修善寺行きに乗り換えた一行は,9時過ぎに伊豆長岡に着いた。
 「ここですね。亜紀が息も絶え絶えに渡った跨線橋は。ちょっと途中下車しませんか。このまま行っても10時までバスはありませんから,修善寺で待たされるだけですし・・・」
 「あれっ。田京って,次の駅の名前だったんですね。ベンチで電車を待つ2人の後に田京診療所って広告看板が映っていたのを見て,てっきり院長の名前かと思っていましたよ」
 「下田へ何キロという道しるべもそうですが,さりげなく,どこで撮ったかのヒントを残しているって感じもしますね」
 「SG郎さん。木庭子版に那須与一や静御前を登場させたのなら,伊豆版には頼朝と政子も出しましょうよ」
 「まあ,そっちはSTさんにお任せしてありますんで・・・」と言いつつも,まんざらではない様子。

 修善寺からバスに揺られること約1時間。バスは西伊豆の海岸線に沿って走り,ちょうど「国民宿舎」バス停を通り過ぎた。
 「さあ,皆さん。カメラの準備を。次の大久保に着く寸前の左手の坂がサクの家の入口ですよ」
 「でも,まだ終点までは30分もあるでしょう。そんな長距離を毎日自転車で通わせるなんて,何というロケハンなんでしょうね(笑)」

 やがて,バスは国道136号線から別れて右手の路地へ。
 「海岸沿いの集落を丹念に回っているんですよ。もちろん,急行は国道をまっすぐですけどね。それで,この宇久須って漁港ですけど,ポスターはここで撮ったんですね」
 「うーん。防波堤から思いっきり海に向かって石を投げてみたい」
 「あれはH2に備えて肩を慣らしていたんじゃないですか(笑)」

 賑やかに話が弾む中,バスは昼前の松崎バスターミナルに着いた。
 「お疲れ様。やっと到着です」
 「じゃあ,「あの場所」へ向かいながら,どこか腹ごしらえできそうな所をさがしましょう」
 その時,ガシャーン!と何かが壊れるような音がした。一同が音のした方を振り向くと,そこには「海の時計」という看板が。
 「海の時計って,ひょっとして,富良野の「皿の割れる喫茶店」の姉妹店?」
 「入ってみましょうよ」

 店内では,既に先客がマスターと話しながら,ミルを回している。肥満児と呼んでもいいくらいのこの先客,どうやらマスターと芝居の話で盛り上がっているようで,時折,「半落ち」などという言葉が聞こえてくる。そして,その脇では,Bやんと呼ばれている若い男が「大丈夫か,オレ」とつぶやきながら,割った皿の片付けをしている。
 と,その時。店の前に滑って一回転しながらタクシーが停まり,サングラスをしたヒゲの男が腰をさすりながら降りてきた。
 「おや。I丸君じゃないか」
 「T監督こそ,どうされたんですか」
 「どうもこうも,1年前のあの作品で,撮り始めてすぐギックリ腰になったろう。それで,ここの治療院にかかったら,ピタッと止まったものだから,時々来るようにしているんだ」
 「あれから,もう1年経つんですね」
 「いい仕事をさせてもらったよ」
 「本当に。またやりたいですね」
 
 「やっぱりT監督とI丸Pですよ」
 「こりゃ挨拶しなきゃ。ついでにサインももらっちゃいましょう」

 こうして,某ドラマ放映1周年の記念すべき日は,制作者とファンの出会いと語らいの中,「ゆっくり時を刻」みながら過ぎていった。

 (注)この物語はフィクションであり,当サイトに
  登場する執筆者の皆さん方や,実在する放送局,
  脚本家,監督,制作者とは関係ありません。

 (どうも失礼いたしました)
...2005/06/11(Sat) 04:35 ID:zLiXDAHw    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
SATOさま
あの少女が静御前なのか、そうでないのかは読者の皆様の想像にお任せいたします(^^)

たかさま
気長に待ってますよ(^^)

にわかマニアさま
ナイスです。どんどん書いちゃって下さいませ(^^)
...2005/06/11(Sat) 17:17 ID:857mvCPM    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
にわかマニアさま
私の7月2日の過ごしかたですが、廣瀬亜紀の誕生日を祝いながら(当然!)、「赤い疑惑」の感動にひたりつつ(何度も録画を見直すでしょう)、「いま、会いにゆきます」の放送開始をワクワクしながら待っていると思います。


完全なお遊びですが、宮浦高校の新任教師を紹介します。実際の登場場面はあるでしょうか(^^)

阿部知盛(トモモリ)
新任の古文教師。本名ヒロシ。香川県出身。ミライの高校時代の担任。
平家物語研究の第一人者で、学会で同席した大学教授とも対等に議論できるほど造詣が深い。特に壇ノ浦で入水した平家最後の闘将・平知盛への思い入れが深く、勝手に彼の名前を名乗るようになったが、平家物語=阿部先生のイメージが定着していて周囲も黙認状態。
今度は、平家を倒した源氏の拠点を見たいからと、自ら望んで伊豆の高校に転任してきた。
2017年現在、2年生になったアツシのクラス担任をしている。
...2005/06/12(Sun) 17:10 ID:Fhv7EeBk    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:にわかマニア
 平家物語専攻の知盛先生ですか。なかなか,面白いキャラかもしれませんね。
 学生時代は演劇部に所属していて,武蔵の敵役の祇園藤次,雨鱒酒造の蔵元など,時代劇・現代劇何でもござれということで,クラブの顧問もやらせてみたいですね。ただ,進路指導には不向きかも。早々に「見るべき程のことは見つ」と結論を出してしまいそうなので・・・
...2005/06/12(Sun) 19:57 ID:pZkbYklU    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
>知盛先生
「トリック」が得意で、策士の一面があるかも(^^)
...2005/06/12(Sun) 22:15 ID:PnM6tu6Q    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
雑記 その1
平山あやサンがCDを出すそうです。問題はその名前で7月から出演するドラマの役名「はるか」で出すんだそうです。
なんて「あいくる・・・」いや「まぎらわしい」(苦笑)

雑記 その2
NTT西日本の長澤まさみさんのCMの新作が出ています。今度は打って変わって「ファミリーもの」
ひかり君という弟ができました(^^)

雑記 その3
綾瀬はるかサンの浴衣姿が話題になった「東京ウオ―カー」ですが、週末、札幌で「北海道ウオ―カー」を買ったら浴衣ではなく、別の写真でした。確かに北海道ではまだ浴衣は早いかも(^^;;;
...2005/06/13(Mon) 23:48 ID:vQU5iSJo    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:たー坊
お疲れ様です。たー坊です。

朔五郎様
サクとマサミの道中に、今度は静御前ですか?高松の観光はそっちのけになってしまうのではないかと心配しております(笑)
今度は大河にまで話が進んでおられるようですね。SATO様も新キャラを考えておられるようなので、これからも朔五郎様のストーリーに入ってくるのを楽しみにしておりますが。が、せめて今だけは、普段マサミに主導権を握られているようなサクに、ここぞとばかりにオイシイところをもって行かせてあげてください。

SATO様
これも大河つながりでしょうが、ずいぶんと平家マニア?な先生ですね。
これから活躍する場が増えるかとは思いますが、これからを楽しみにしております。

にわかマニア様
読ませていただきました。さりげな〜く出していただいてありがとうございます。朔五郎様もおっしゃてましたが、実にナイスだと思いますよ。
...2005/06/14(Tue) 20:56 ID:Y.JyDB5A    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
皆様こんばんは。

朔五郎さま
平家マニアな阿部先生につきましては、香川編でマサミ・ミライとバッタリというのを期待していますが・・・ミライが源平合戦のウンチクを語った出所は、高校時代の担任の阿部先生だったということで、いかがでしょうか?
(元々阿部先生は四国出身の方です)

たー坊さま
平家マニアの先生は、7月期のドラマに合わせて野田アツシ君の担任として登場願おうかと画策中ではありますが・・・この時点でマサミは卒業してしまっているので残念ながら、学校で絡む場面はありませんね(苦笑)
...2005/06/14(Tue) 22:35 ID:CvesiJ7k    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
特別編・ロミオを探して〜1


古河ハルカは今日も稲代総合病院に来ていた。もちろん、ヒロのリハビリに付き添うためである。リハビリ室ではヒロとともにノリコ(ユイの母)が瀬戸マサキの指導でリハビリを受けていた。

マサキ「二人とも、よく頑張ってついて来てくれました。あと2回ですから、もうちょっとだけ、頑張りましょう」
ノリコ・ヒロ「はい!」

リハビリ室にはピーンとした空気が張り詰める。柔和な瀬戸の表情がキリット引き締まり、ノリコもヒロの顔にも緊張感が走る。そんな空気にハルカは居心地が悪い思いをしていた。

ハルカ「それじゃ、私、しばらく外しますから」
ノリコ「折角来てもらってるのに、悪いわね」

マサキ「マネージャーさん、お宅のエースはしっかり預からせてもらうから、ご心配なく」
瀬戸がおどけてハルカに声をかけた。

ハルカ「お願いします」
そう瀬戸に挨拶して、ハルカはリハビリ室を出た。ヒロたちのリハビリが終わるまで、ハルカはすることがない。パパとお喋りしよう・・・そう思ったハルカは院長室へ向かった。
ハルカの父親である古河院長は、連日のように訪ねてくるハルカにやや閉口気味であった。「話だったら、家で出来るだろう」「病院は散歩しに来るところじゃない」と言ってハルカを諭していたのだが、どうも通じていない様子である。

トントン・・・院長室のドアをノックしたが返事がない。ハルカが部屋へ入って見ると、院長は不在であった。デスクには「会議中」の立て札が・・・

ハルカ「パパもいないのか・・・あ〜あ、退屈だな・・・いっぺん家に帰ろうかな」

その頃、古河院長は応接室にいた。○○大学から受け入れる実習生を待っていたのである。

そんな事を知らないハルカは階段を下りながら考え事をしていた。「久仁見くんのリハビリが終わったら、一安心ね。でも、引退した先輩がやっていたセカンドはどうしよう・・・誰かいい人いないかな・・・」
その時である。
「キャー!」

ハルカは階段を踏み外してしまった。

「危ない!」
一人の青年が転げ落ちてきたハルカを抱き止めた。彼がいなかったら、このままハルカは階段を転げ落ちてしまい、大怪我をするところだった。

青年「大丈夫?」
ハルカ「すみません・・・」
青年「歩ける?」
ハルカ「はい、大丈夫です」

ハルカは歩こうとしたが、
ギク!
足首に激痛が走った。その場でうずくまってしまうハルカ・・・


(リハビリ室)
瀬戸に声をかける者がいた。
女性インターン「瀬戸さん、急患です。応急処置室に行ってください。」
マサキ「今、リハビリ中だぞ。誰か他にいないのか?」
女性インターン「ちょっとマズイ状況なので・・・瀬戸さんに診ていただきたいんですが・・・」
マサキ「必要な処置はしてあるの?」
女性インターン「はい」
マサキ「わかった、君は替わりに二人のリハビリを頼む」

そんなやり取りを見ていたノリコとヒロが思わず顔を見合わせた。
ヒロ「急患が担ぎこまれたんですって?」
ノリコ「そうみたいね。病院の人って大変ね・・・」


(続く)


朔五郎さんが別スレでオリジナル版を思わせる作品をアップされたので、私はリメーク版をヒントにしてみました。
...2005/06/14(Tue) 23:50 ID:CvesiJ7k    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
香川編 〜 木庭子町のお正月(その9)

路面電車はいつしか、市街地の広い通りを走っていた。
「ここらへんが木庭子町の中心だよ。ほら、あそこが町役場」
やがて、前方に重厚な石造りの建物が現れた。
「ねえサク、あの建物はなに?すごく立派だね」
「あれは木庭子町立病院だよ」
「病院なの?知らない人が見たら県庁の建物と間違えるよ」
その時マサミはハッとして言った
「・・・もしかして、あのひとが亡くなった病院?」
「そう、1986年、17歳の誕生日に、あのひとはこの病院で息をひきとった」
「やっぱり」
電車がその前を通り過ぎるとき、ふたりは黙って手を合わせた。

ふと、まどろみから覚めると、ミライの姿が消えていた。
電車は小さな十字路に停まった。
マサミはあわてて飛び降りる。
電車は左に曲がって、海沿いの道を走り去っていった。
・・・まっすぐおいで
声が聞こえた。
マサミにはその声の主がすぐにわかった。
右手に小学校のグラウンドを見て、さらに進んで行くと、道はだんだん狭くなってきた。
右側に小さな流れが寄り添ってきて、その流れに架かる橋の赤い欄干が見える。
・・・初めて来る場所、なんだかとっても懐かしい
・・・おかあさんが迎えに来てくれて、とってもうれしかったあの時みたい
その橋を渡り終えたとき、笑い声が聞こえた。
ちょっとイタズラっぽくて、かわいらしくて、でもどこか謎めいたその声。
マサミも顔いっぱいに笑みを浮かべてクルリと振り向く。神社の石段があり、あのひとがそこに座って微笑んでいた
そこには
・・・おかえり
・・・ただいま。また呼んでくれてありがとう
・・・わかってたんだ
・・・そりゃね。だってなんだか、おかあさんみたいに思えるんだもん
・・・そう言ってくれると、うれしいよ
・・・でも、おかあさんにしてはずいぶん若いね。私よりずっと若い
・・・だって、17歳になったばかりだもん
・・・永遠に17歳?なんだかずるい
・・・それは違うよ
・・・どうして?
・・・人間はね、自然に成長して、年をとって、消えていくのがしあわせなんだよ
・・・そうなの?
・・・そうだよ。あ、来年、成人式でしょ?いいなあ、晴れ着を着られて
・・・私、見せに来るから
・・・うん、自分のことみたいに楽しみ
・・・ねえ、やっぱりサクと私をめぐりあわせたの?
・・・フフッ、それはどうかな
・・・ねえ、そうなんでしょ?
・・・教えない
・・・イジワルね
・・・でも彼、とってもいい感じね
・・・あ、気に入ったからって、そっちに連れて行かないでよ
・・・そんなことするわけないでしょ。娘の彼氏を奪ってどうするの
・・・安心した
・・・ほら、彼が呼んでるよ
・・・ホントだ
・・・さ、もう彼のところへ行きなさい
・・・うん
・・・しあわせにね
・・・ありがとう

「・・・マサミ・・・マサミ、古町についたよ」
「あ、寝ちゃった」
「寝てる間さ、ずっと楽しそうな顔をしてたよ。時々ニコニコ笑ったりしてさ」
「うん。とっても好きなひとに会ってた」
「えっ・・・もしかして、元カレ、とか?」
「そうかもよ、フフッ」
「そうなんだ・・・」
「ウソだよ」
「ウソかよ」
「・・・ねえ、サク。しあわせにして、私のこと」
「どうしたんだよ、急に」
「いいから・・・しあわせにしてよ・・・」

(続く)


みなさまへ
こんばんは。なかなか時間が取れません。
ご感想に対するお礼、皆様の作品に対する感想等、後ほどさせていただきます。
申し訳ありません。
...2005/06/15(Wed) 01:07 ID:KVUsmmh.    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:アーネン
 応援しております。頑張ってください。
...2005/06/15(Wed) 06:01 ID:21h1ot/Y    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
特別編・ロミオを探して〜2

瀬戸が応急処置室に入ってきた。そこでは、足に包帯を巻かれて横たわる少女がいた。担ぎこまれたのはハルカだったのである。

マサキ「君だったのか!?」
瀬戸はびっくりして言った。
ハルカ「階段から落ちちゃいました・・・」
自嘲気味にハルカが答える。

瀬戸はCT画像を見ながらハルカに問診を始めた。
マサキ「しかし、派手にやったもんだね・・・」
ハルカの手の甲や膝のあたりはアザだらけだったのである。
マサキ「足の具合どう?」
ハルカ「イタイ!」
マサキ「これは、ギブスしなきゃダメだね。1週間は安静にすること。そうしたら、また歩けるようになるよ。」
ハルカ「あの・・・折れちゃったんですか?」
マサキ「折れちゃいないけど、ヒビ入ってるよ。だから、絶対に動かしちゃダメだ。」
ハルカ「入院ですか?」
マサキ「僕はそれを勧める。」
ハルカ「でも・・・ここ、父の病院だし、階段から落ちたなんて知られたら、叱られるわ・・・」
マサキ「父の病院?・・・君って・・・」
ハルカ「院長の古河○○の娘です。」
マサキ「それを早く言ってくれよっ」

応接室では古河院長が実習生と話をしていた。
青年「本日より実習生として参りました藤原ミツオです。」
古河院長「よく来たね。君のことは、松本教授から聞いているよ。救急医療の現場に立ちたいんだって?」
ミツオ「はい、以前、僕の大切な人の命を病院の先生方に救っていただいたことがありました。その恩返しのために、僕も一人でも多くの生命を救いたいと思っております。」
院長「それは頼もしい心がけだね。」
ミツオ「実は、その時に輸血のために献血をしました。」
院長「ほう、そうか。それは素晴らしい。」

プープー!
部屋の内線が鳴った。

院長「古河だが・・・何?」


(続く)


古河院長のファーストネームを決めることが出来ないのですが、皆様どの名前がいいと思いますか?

候補は
シゲル タカノリ ケン ゴロウ フミヨ エイイチロウ
です。

シゲル・タカノリ・ケンは「赤」関係、ゴロウ以下はいままでのドラマの父親役の俳優さんの名前がヒントです。
...2005/06/15(Wed) 23:59 ID:45eDI4rI    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:にわかマニア
>古河院長のファーストネーム・・・タカノリ・ケンは「赤」関係、ゴロウ以下は父親役の俳優さんの名前

 もう一つ,ミツオの言わば「上司」という関係で言えば,「イサミ」や「トシゾウ」ってのもアリかなァと(苦笑)
 それにしても,沖田総司と静御前とは何たる組み合わせ!
 メスよりも日本刀で切りそうな感じが。「賀茂の河原に千鳥が騒ぐ」とでも歌いながら・・・
 と,どこまで行っても「大河」の呪縛から逃れきれない一凡人のたわごとでした。
...2005/06/16(Thu) 00:23 ID:mVn7J3K.    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
特別編・ロミオを探して〜3

古河院長にかかってきた内線はマサキからだった。
内容はハルカが階段から落ちて足を負傷したこと、1週間の安静が必要なこと、個室の病室に収容したことであった。

院長「それで、ハルカは、ハルカの怪我は足だけなんだな?」
マサキ「はい、念のため、頭部のMRIと腹部のエコー検査もしましたが、脳や内臓には異常ありませんでした。これは、不幸中の幸いでした。」
院長「そうか、ご苦労さん。これから見舞いに行く。藤原君、話の途中ですまないね。娘が階段から落ちて怪我したんだ。ちょっと病室まで行ってくる。」
ミツオ「はい、お大事に・・・あ、院長先生?」
ミツオがそう言ったときには古河院長はすでに部屋を出て行った後だった。

古河院長がハルカの病室へやって来ると、外で待っていたマサキが声をかけた。
マサキ「院長!」
院長「瀬戸君、娘がいろいろ世話になった。どうもありがとう。」
マサキ「いえ、医師として、必要な処置をしたまでです。」
院長「うん、そこでだ、君にハルカの主治医を頼みたい。」
マサキ「私がですか?まだ駆け出しのインターンの私に・・・」
院長「だからこそ頼みたいんだ。娘をダシにするのはどうかと思うが、君にも一人の患者を担当してもらい、入院患者が回復して退院するまでを見届けてもらいたいんだ。」
マサキ「そうおっしゃっていただけるなら・・・全力を尽くします。」

院長とマサキが病室に入ってきた。
ハルカ「パパ・・・」
院長「ハルカ、何度も言っただろう?用もないのに病院の中をうろつくなと。」
ハルカ「ごめんなさい、あたし・・・」
院長「病院にはな、危険な放射性物質や劇薬も置いてあるんだ。そんな場所をうろついてて爆発事故にでもあってみろ、命の危険にさらされることになる。お前がそんな事故にでも巻き込まれたら・・・お父さんは・・・お父さんは・・・」
ハルカ「パパ、あたし、寂しかったの。久仁見君がリハビリ室に入るとあたし、一人ぼっちで、待ってなきゃならない。それでパパとお話したかったの。部屋にパパがいなくて、話相手もいなくて一人で考えごとしてて・・・」
院長「そうか、そうだったのか。お父さんも忙しくて、話相手になってやれなくて可愛そうなことしたな。ともかく、足の怪我だけですんで本当に良かったな。それから、瀬戸君にお前の主治医を頼んだから、何かあったら相談しなさい。」
ハルカ「はい」
マサキ「よろしく。」


今日の仕事が終わり、マサキは帰り支度をしていた。ハルカの主治医をすることになったが、内心、厄介な患者を抱えてしまったと思っていた。院長の娘で色々気を使うし、ハルカの天真爛漫さに苦手意識があったのである。

「先輩!」
不意に声をかけられてマサキが振り向く。そこにはミツオがいた。
マサキ「ミツオじゃないか!お前だったのか、今日から来る実習生というのは。」
ミツオ「お久しぶりです。挨拶が遅れて失礼しました。」
マサキ「ああ、本当に遅いな。」

マサキとミツオは同じ高校の剣道部の先輩・後輩の間柄だった。マサキは整形外科、ミツオは血液内科の道を選び、別々の医大に進学した。今日は久しぶりの再開となったのである。

マサキ「よし、これから軽く飲みにいくか!」
こうしてマサキとミツオは久しぶりに杯を交わしたのは言うまでもない。

(続く)


にわかマニアさま
「赤い疑惑」を観て、私も沖田総司と静御前を連想してしまいました。
それから「H2」の国見比呂と古賀春華は同じお母さんだったのですね。スーちゃんこと田中好子さんは「ちゅらさん」で山田クン、そして今回は石原サンのお母さんを演じてます。
...2005/06/17(Fri) 00:22 ID:9DzlMUuI    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:たー坊
朔五郎様
車内でのシーン、とても良かったです。
最後の「しあわせにして、私のこと」で、何気にマサミはサクなしでは生きていけないなどと、言い出すのでは?と軽〜く思ってしまいました。

SATO様
特別編を読ませていただきました。
今度は骨にヒビ・・・・・・。どうも比較的大きなケガをし易いのかな・・・この物語の中の人たちは?などと、心の中でツッコミを入れていたことを、この場をお借りして白状いたします(笑)

お2人の物語をこれからも楽しみにしております。
...2005/06/18(Sat) 19:51 ID:NK9Yo0J6    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
特別編・ロミオを探して〜4

マサキとミツオはスナック「竜の爪」(久々登場です)にやってきた。マスターが二人に声をかける。
マスター「マサ、久しぶり。」
マサキ「すっかりご無沙汰でゴメンゴメン。病院の仕事は不規則だからね・・・」
マスター「いやー、覚えててくれただけでいいってことよ。ところでそちらのお連れさんは?」
マサキ「高校時代の後輩でね、今日から実習生で来たんだ。」
ミツオ「藤原ミツオです。よろしく。」
マスター「ようこそ。マサの紹介料替わりに最初の一杯はサービスしますよ。」
マサキ「ありがとう、今日はミツオの歓迎会なんだ。」
マスター「そう、ごゆっくり。」

そして、マサキとミツオは酒を酌み交わしながら、語りあった。高校時代、剣道部の全国大会で優勝したこと、グルーピーの女の子のこと、先生のこと・・・懐かしさに華が咲いた。そして・・・

マサキ「ところで、サトミさんは元気にしてる?」
ミツオ「お陰様で、すっかり元気になりましたよ。最近、またバイオリンを始めましてね。演奏していると、すごく楽しそうな顔するんです。そんな顔を見てると僕も幸せになります・・・」
マサキ「ご馳走様。でも、お前が命がけでサトミさんを助けたんだからな・・・」
ミツオ「彼女を助けるなら、何でもする・・・そう思って必死でした。」
マサキ「お前の血が、彼女の中で流れている・・・すごいよな、まさに奇蹟だ。」
ミツオ「ええ、この奇蹟には感謝してもしきれません・・・・ところで、先輩、毎年6月29日はケーキを送ってくれてありがとうございます。」
マサキ「サトミさんとミツオにとって、セカンド・バースデーともいえる日だからな、あの日は。ささやかながらお祝いのつもりだよ。」

マスター「よくわからないけど、いい話のようだね。酒が過ぎないように、水をどうぞ」
話が弾んできたところで、マスターが小休止用の水を出した。

マサキ「俺、初めて入院患者を受け持つことになったよ。」
ミツオ「おめでとうございます。」
マサキ「その入院患者ってのが大変だぞ、院長のお嬢さんなんだ。階段から転げ落ちたのが原因で、足の亀裂骨折に打撲多数・・・」
ミツオ「今日、階段から落ちてくる女の子を助け出したんです。もしかすると、その女の子が・・・」
マサキ「お前だったのか。処置室に運びこんでくれたのは?」
ミツオ「ええ、必死でしたよ。」
マサキ「そこがミツオのいいところだ。お前がいなかったらお嬢さんはあれだけでは済まなかったかもしれない。ありがとうミツオ。」
ミツオ「先輩も彼女の担当医として頑張ってくださいよ。」
マサキ「いろいろ気を使って大変かもしれんが、お前からバトンを受け取った気持ちでベストを尽くすよ。でも、やっぱり・・・大変そうだな・・・(ため息)」

(続く)


たー坊さま
やたらとケゲ人が多いとのツッコミごもっともです。じつはモデルになったキャラがケガしてるので、まっいいかと思ったのですが、同じストーリーの中でこれだけケガ人が出るとなるとお祓いが必要ですね(^^)

ケガ人リスト
 名前   負傷箇所   モデルキャラの負傷箇所
 ユイ    目       膝(朝ドラ)
 ヒロ    膝       足を何回も(H2)
 ハルカ   足       足(大河ドラマ)
 ノリコ   腰       腰(朝ドラ)
...2005/06/18(Sat) 23:31 ID:gOBuYjPQ    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
香川編 〜 木庭子町のお正月(その10)

ミライは実家の玄関のドアを開けた。
「ただいま」
奥の方から母の亜矢子が出てきた。
「お帰り。あらマサミさん、よく来てくれたわね。また会えてうれしいわ。今度はゆっくりできるよね。楽しいお正月を過ごしましょうね」
「ありがとうございます。お言葉に甘えて来てしまいました。ご迷惑ではなかったでしょうか・・・」
「迷惑だなんてとんでもない。お父さんもね、首を長くして待っていたのよ。あら、立ち話なんかしちゃって・・・ごめんなさいね。さ、早く上がって。今、お茶を淹れるからね」
前回と同じように、暖かい歓迎振りだった。ただちょっと違うのは、前の時は「お客さん」だったマサミが、今回は半分家族のように思われていて、マサミ自身も素直に好意に甘えようと思っていることだった。
「マサミさん、温泉は好きかしら?」
「はい、大好きです。ついこの間も、佐久間君と二人で群馬県の四万温泉の日帰り湯までツーリングしました」
「バイクで行ったの?冬だもの、寒かったでしょ」
「いいえ、佐久間君の背中、とっても温かいですから」
「あらあら、ごちそうさま」
本当は泊まりで行ったことを察知しながら、ニコリと笑う母であった。
「この町にもね、木庭子温泉ホテルっていうのがあるのよ。海が見える高台にあってすごく景色がいいの。今夜はそこにお泊りしよう。マサミさんも長旅で疲れただろうから、温泉に浸かってゆっくりしてね。お父さんと千恵子が帰ってきたら出かけよう」
「ウチはさ、なんか祝いごとがあったりすると、いつもその旅館に泊まりに行くんだ」
「ミライが大学に合格して以来だね。今日はとってもうれしい日だから・・・マサミさんが来てくれたんだもの」

一行がホテルに着いたのは瀬戸内の海が夕日で染まる頃だった。
「いらっしゃいませー」
入り口のところで小さな女の子が一行を出迎えた。
「あら、詩(うた)ちゃん、お手伝い?偉いわねえ」
「佐久間さま、お待ちしておりました。さ、どうぞこちらへ」
宿の主人、竹中が亜矢子に話しかけながら、一行をソファに案内した。
「すぐにお部屋にご案内しますので、少々お待ちください」
「佐久間さま、いらっしゃいませ」
女将の園子が奥から出てきて笑顔を向けた。
「お母さん、ウタ、お客様にちゃんと挨拶できたよ」
「ホント?よかった・・・あ、すみません。さ、ウタちゃん、お部屋に上がってて」
「はーい」
園子はマサミの存在に気付いた。
「佐久間さま、こちらのお嬢様は・・・」
ミライの父、直太朗は、ハハハと笑いながら言う。
「ああ、こちらはマサミさんといってね、残念ながらウチの娘じゃないんだよ。けどね、そんな遠くないうちに、本当の家族になってくれそうな気がするんだ」
「お父さんたら、実の娘よりカワイイって感じだもんね」
拗ねたように言う千恵子。
事情を察知した園子は笑いながらミライに言った。
「あらあら息子さん、責任重大ですね」
その時、男女の若い従業員がやって来た。
「お待たせしました。お部屋までご案内いたします。あ、お荷物はお持ちしますから」
「じゃ、小栗君、麻里ちゃん、よろしくね」
「はい」
「どうぞこちらへ」
一同はエレベーターに乗り込む。
「大浴場は一階にございます。展望露天風呂もございますよ。あと、貸切の露天風呂もございます。特に予約は必要ありませんので、入浴中の札を下げて鍵をかけてお入りください」
3階でエレベーターを降りる。
「こちらへどうぞ。お部屋はこの《静の間》と《うつぼの間》をご用意しております。お食事はこちらにご用意させていただいてよろしいでしょうか?」
「ええ、それでいいですよ」
お茶を淹れている麻里に千恵子が尋ねた。
「ねえ、お二人さんは彼氏と彼女っていう感じだけど、いっしょにバイトしてるの?」
小栗と麻里は顔を見合わせたが、やがて麻里が口を開いた。
「小栗君の家は大きな病院でした。お父様の院長先生はとても立派な方でした。ある時、院長先生は、お役所の陣内課長が、医療用コバルト60の保管許認可に絡んで不正な収入を得ていることを告発されたんです。先生は正しいことをなさったんですが、病院はそれが原因で潰れてしまいました。小栗君はいつか病院を再興しようと医学部に入り、このアルバイトで学費の一部を稼いでいるんです。私、小栗君の高校時代の同級生なんですけど、なんとか力になりたいと思って・・・」
「マリっぺ、今までありがとう。でも、おれがマリにあげられるものはもう何もないんだ。もう自分の人生を歩いてくれ」
「なに言ってるの。私がそんなことできるわけないでしょ。矢口マリは小栗クンから絶対に離れませんから・・・」

ミライとマサミは暮れなずむ海に浮かぶ夢島のシルエットを見ていた。
「ねえサク、マリさんの恋、すごいね」
「うん」
「自分の一生をかけた恋だね」
「そうだね。でも、オレもマサミを一生守るつもりだけど」
「だけどさ、サクは卒業したら・・・」
「大丈夫だよ。オレ、英語の教員資格とって、どこでも仕事ができるようにしておくから・・・マサミは宮浦に帰って仕事がしたいんだろ?」
「うん・・・でも、この家のお嫁さんになるなら、こっちに来るべきなのかも・・・」
その時、ふたりの後ろで声がした。
「マサミさん」
亜矢子だった。
「ごめんね、聞こえちゃった・・・」
ふたりは部屋の中央に戻って行った。
亜矢子が口を開く。
「お付き合いしている時と違って、新しい家族になるとすれば、いろいろ現実的なことも考えなければならないわね。あんまり楽しくないこともあるけど、そういうことから逃げないことも大人になっていく条件のひとつかもしれない」
マサミを優しい目で見ながら亜矢子は続けた。
「マサミさんがキチンと考えてるみたいなんで安心した」
直太朗が口を開く。
「マサミさん、あんまり堅苦しく考えなくていいんだよ。新しい家族になって欲しい、嫁になって欲しいというのは、何もこの町に縛り付けようとしてるわけじゃないんだ。お互いに思う心、それが一番大事なんだよ」
「正直いうとさ、アタシの彼氏、ビンボーなんであの家の2階をリフォームして住みたいんだよね・・・いわゆるマスオさんっていうやつ。まあ、アタシも一応ナースの卵だからさ、ウチの親のことは心配しなくていいよ」
「マサミさんもミライもまだ若い。実際に結婚するとしても、それはもう少し先だろう?まだ時間はたっぷりあるんだからゆっくり考えればいいんじゃないかな。好きだという気持ちを失くさなければ、自然に良い方法にたどり着くと思うよ・・・たとえば、年に1、2回こんな機会を持って孫を抱っこできれば嬉しいんだけどね、こちらとしては」
ひとつひとつの言葉がマサミの心に沁み込んでいった。豊かになった心から、新しい芽が萌えてくる時がきっと来るだろうと確信できた。
「さあ、食事の前に温泉に入ってこようか」
直太朗の言葉に、一同は元気良く立ち上がった。

(続く)
...2005/06/19(Sun) 21:25 ID:ScFjZyHs    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
みなさま
綾瀬さん、長澤さんの新CM、なかなかよろしいのでは(^^)
NTT西日本では、長澤さんが新人刑事に扮していまして、爽やかでよろしいです(笑)

アンダーグラフの1stアルバムの初回限定版には例の「ツバサのPV」が付いているようです。

今発売中の「CM NOW」という雑誌には綾瀬さん、長澤さん両方の特集があります。

以上、綾瀬・長澤情報でした(^^)
...2005/06/19(Sun) 22:00 ID:ScFjZyHs    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
朔五郎さん
新作読ませていただきました。
色々なドラマの要素が混じっていて面白かったです。お父さんが不正を告発して病院が潰れてしまい、温泉旅館で働いている?どっかで聞いた話ですね。温泉の女将さん・旦那さん・迎えに出てきた女の子もどっかで聞いた名前ですね。小栗クンとマリさんのカップル?最近よく耳にしますね。コバルト60と陣内さん・・・先週の水曜日にどこかのドラマでやってませんでしたっけ?


朔五郎さんに触発されて私も「赤」もどきのストーリーを投稿させていただいてます。一応6月29日までに仕上げるように頑張ります。
このストーリーに出てくるマサキとミツオの部活は野球部じゃなくて剣道部に修正しました。(ずっと前の投稿作も直してあります)マサキは8月から舞台で剣道部員を演じますし、ミツオは21世紀の沖田総司と称されるほど強かったということで・・・
サトミさんについてはこれから語られますのでお楽しみに。
...2005/06/19(Sun) 22:32 ID:tdN0sb0Y    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
祝・長澤まさみさん「大河ドラマ」に出演!

来年の大河ドラマに出演するそうです。
ちなみに、役は「しのびの者・小りん」だそうです(苦笑)

しか〜し、イメージが、妄想が、膨らんできますなあー(ニヤリ)
「いろいろな顔」を見せてくれる長澤さん、物語を書くものにとっては、ホントにありがたいです(^^)
...2005/06/21(Tue) 21:21 ID:CCnHiGco    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
特別編・ロミオを探して〜5

翌日の午前中、ハルカの病室(VIPルームです)から声が・・・
「おお、ロミオ、ロミオ!あなたはどうしてロミオなの?お父様とは無関係、自分の名は自分の名ではない、とおっしゃってください。それがいやなら、お前だけを愛していると、誓ってください」
「おっしゃるとおりにいたしましょう!」

ハルカ「キャッ、瀬戸さん。聞いてたんですか?」
マサキ「聞くもなにも、これだけ真に迫った大きな声でセリフ言ってたら聞こえるよ。お加減はいかがですか?ジュリエットお嬢様。」
ハルカ「これだけ広い部屋で、フワフワのベッドで寝心地も上々。でも、足が動かないのがタマニキズ。ああ、わたしをどこか広いところへお連れくださいまし。」
マサキ「そうは参りません。私はあなたのお父上からお嬢様をお守りするよう仰せつかっておりますので(笑)」
ハルカ「それでは仕方ありません(笑)」
マサキ「『ロミオとジュリエット』がお気に入りなの?」
ハルカ「ええ、大好きな戯曲なんです。私、劇団に入っているんですけど、一度でいいからジュリエットを演じてみたいんです。」
マサキ「マネージャーだけじゃなくて演劇もやってるんだ。」
ハルカ「はい、演劇やってる女の子だったら誰でもジュリエット役にあこがれると思いますよ。」
マサキ「へー、そういうもんかね。劇団の公演ではやらないの?」
ハルカ「今年は予定ないんです。」
マサキ「学校の文化祭でやればいいじゃない?」
ハルカ「うちの学校って伝統的に『ロミオとジュリエット』に縁がないみたいで・・・昔の先輩は相撲さんの話にすり替えてしまったというし、今年は3年生でやろうかと話が出たのに土壇場でひっくり返ったらしいんですよね・・・」
マサキ「来年やればいいじゃない、文化祭でも、劇団でも。」
ハルカ「そうですよね!ところで、瀬戸さん、ちょっとお願いがあるんですけど?」
マサキ「何?」
ハルカ「昨日、階段から落ちた私を助けて下さった方がいらっしゃるんです。病院の関係者の方でしょうか?一度お礼が言いたくて・・・」

ミツオのことだな、とマサキはピンと来た。

マサキ「確かに病院の関係者だよ。そのうち会わせてあげるよ。」
ハルカ「きっとですよ」
マサキ「はいはい、わかりました、お嬢様。ロレンス修道士にお任せあれ。君のロミオに引き合わせて差し上げましょう。」


廊下でマサキはミツオに声をかけた。
ミツオ「先輩、昨日はありがとうございました。」
マサキ「それより、お前、その犬は何だ?」
ミツオ「製薬会社の人が来て、新薬のデモをやるんです。それで、実験用に犬を用意してくれと言われまして・・」
マサキ「ちょっと付き合え。俺の患者がお前にお礼を言いたいそうだ。」
ミツオ「院長のお嬢さんですね。」


マサキがミツオを連れてハルカの病室にやって来た。

マサキ「こちらが昨日君を助けてくれた・・・」
ハルカ「昨日は助けていただいて、ありがとうございました。古河ハルカです。」
ミツオ「藤原ミツオです。」
ハルカ「この病院のお医者様ですか。」
ミツオ「まだ、学生で、実習に来ているんです。」

ハルカはミツオが抱いた犬に目をやった。

ハルカ「その犬・・・」
ミツオ「実験用の犬なんです。患者を治すために大事な役目を担っているんですよ。」
ハルカ「でも、殺されちゃうんでしょ?可愛そうです。」
マサキ「おい、君・・・」
ミツオ「参ったな。高校生のときも隣の大学から実験用の犬が逃げてきたことがあってね、返しに行こうとしたら、女の子から『可愛そう』と言われたことがありましたよ。」
ハルカ「そのときはどうなさったんですか?」
ミツオ「二人で隠しちゃいました。その犬には『バン』と名前を付けてね。女の子が連れて帰ったんです。」
ハルカ「今度も同じことしましょうよ。犬は私が連れて帰ります。」
マサキ「うーん・・・ま、いっか」
ハルカ「わー、話せる!」
ミツオ「ハルカさんでしたっけ?『犬が可愛そう』と言った今の君の顔、あのときの女の子の表情とそっくりだったんですよ。それで、今度も・・・という気持ちになってしまいました。とりあえず、この犬は僕が預かりますよ。」
マサキ「おい、いいのか?」
ミツオ「(マサキに耳打ち)ほかにも実験動物はいますから。」
マサキ「そうか。」
ミツオ「それでは、実験に戻りますから。ハルカさん、お大事に。」
ハルカ「ありがとうございました。」

マサキとミツオがいなくなった後、病室でハルカは一人で考え事をしていた。
ヒロと思うように話が出来なくてイライラする日々・・・リハビリをきっかけにヒロをノリコに持って行かれたような気がする・・・理屈ではそんなことはないとわかっているのに。モヤモヤした気持ちになっているところにミツオが現れた。あの人は私のロミオなのだろうか?ハルカの気持ちはユラユラとしていた。

午後の回診でマサキが病室に入ってきた。
午前中とハルカの表情が違うことにマサキは気づいた。

マサキ「どうしたの?」
ハルカ「あの、ミツオさんのことなんですけど・・・」
マサキ「気になるの?あいつのこと。」
ハルカ「(コクリとうなずいた)」
マサキ「あいつはやめておいた方がいい。それに、君にはもっとふさわしい彼がいるじゃない。」
ハルカ「理屈ではわかってるんですけど・・・でも気になるんです。」
マサキ「聞いたらショック受けると思うけど?それでもいいなら話そうか?ミツオのこと。」
ハルカ「はい・・・・」

ハルカはこわごわとした思いでマサキの話を聞き始めた。

(続く)
...2005/06/22(Wed) 00:38 ID:DP1WdM7w    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:clice
SATO様
時間が取れずにずいぶんとご無沙汰してしまい、その間上げて頂くなどして気にかけて頂きありがとうございました。この1月半ほど、書き溜めることすら出来ずにいましたので、綾が4人部屋に移り、朔太郎は現在と過去の狭間で、自分の気持ちが何処にあるのか必死で探している、そんな状況の中で、気分転換と最後の章につながる意味合いも含めて智世の今を書いてみました。
これから本編もまた少しずつ進めていけると思います。
SATO様も智世のことは亜紀ちゃんの母親としてずっと書いていらっしゃいますので、ちょっと恐縮してしまいますが、これからも亜紀ちゃんを見守る母親としての智世を楽しみにしています。
特別編にロミオとジュリエットの話が出てきたのは、偶然なのか少し嬉しく思いました。
...2005/06/22(Wed) 10:40 ID:zlYrVClQ    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
cliceさま
お久しぶりです。
私も智世が好きなキャラですよ。
朔太郎が宮浦に戻って来なかった17年間、亜紀を想い続け、何かにつけて廣瀬夫妻を気遣ってきたのは智世であり、朔太郎よりもむしろ智世のほうが廣瀬夫妻との結びつきは強かったのではないでしょうか。
そんな思いで書いたのが「廣瀬家のクリスマス4部作」です。娘に「亜紀」と名付けるまでのエピソードや「代理出席」のエピソードを裏ストーリー的にまとめましたので、お読みいただければ幸いです。(133,136,137,138です)
「ロミオとジュリエット」については、本編ドラマでは亜紀がジュリエット役を躊躇するし、続編の本ストーリーではマサミがあっさりボツにしてますので、一人くらいジュリエット役をやりたがる女の子がいてもいいかな・・・と思いました。

でも、朔五郎さまがこのスレッドを立ち上げなければ、私も投稿しなかっただろうし、cliceさまやター坊さま、グーテンベルクさまの作品も生まれなかったように思います。今更ながら、朔五郎さまに「感謝・感謝」です(^^)


長澤まさみさんが来年「くの一」で大河出演ですか・・・「女スパイの原点は大河にあり」ですね(^^)
...2005/06/22(Wed) 20:12 ID:pXygNKx6    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
香川編 〜 木庭子町のお正月(その11)

温泉から上がると、和やかな夕食になった。
マサミはひとりひとりにビールを注いで回った。特に直太朗はマサミが隣に来るとうれしそうな顔をして、なかなか離そうとしなかった。
「お父さんとマサミさん、本当の父娘みたいね」
笑いながら亜矢子が言った。
「血の繋がりってのも大事かもしれないけどね、やっぱり心が通じているかどうかだよね。この旅館のウタちゃんていう子だって、女将さんの本当の娘さんじゃないんだから」
「ええっ、おかあさん、おかあさんって、あんなに仲が良いのに?」
「そうなんだよ。ウタちゃんは竹中さんの前の奥さんが生んだ子だよ。でもね、女将さんと出会ったときから、すごく気が合ったらしくて、すぐに、おかあさんって呼ぶようになったらしいよ。まあ、詳しい事情はわからないけどね・・・あ、マサミさん、お酌ばかりして、ちっとも食べてないじゃない。ほらお父さん、少しは気を遣ってあげないと」
「あ、ああ、すまんすまん・・・鍋が煮えたら一番美味しいところをあげるからな」
「まったく、お父さんはすぐ鍋奉行になっちゃうんだから」
「ははははは・・・」
なんて暖かな人たちなんだろう、マサミは思った。
好きな人がいて、その人が大切に思う家族と心が通じ合う。楽しいな、とマサミは思った
あのひとは、私がこんなしあわせな気持ちになるキッカケをくれた。
夢の中に出て来るあのひとは、いつも楽しそうに笑っている。でも、本当はこんな時間が欲しかったはずだ。それだからこそ、私とサクを出会わせたに違いない。

ありがとう、感謝します。そしてあなたの分までしあわせになりますね。

食事が終わってからも取り留めのない会話が続いた。
「ミライ、あんた子供の頃、仮病を使ってお遊戯会をサボろうとしたよね」
「や、やめろよ、マサミの前でそんな話・・・」
「そうなんですか?でも、どうして?」
マサミが身を乗り出す。
「それがね、近所にミラちゃんていう女の子がいたのよ。漢字で書くとコイツと同じ」
「おい、やめろってば・・・」
「そんでね、コイツは恋をしてしまったわけだ・・・ところが愛しのミラちゃんは、立って歩くことができなかったの」
「何かケガでも」
「ううん、体のほうには何も異常はなかったの。何か精神的な理由で立ち上がることを恐れていたのね」
「そんなこともあるんですね」
「それで、恋するミライくんは・・・」
「いいかげんにしろよ・・・」
「ミラちゃんが歩くことができないのに、ボクひとりがお遊戯なんかするわけにいかない。だからお遊戯会には出ないって言ってね」
「へえ、昔から結構いいヤツだったんですね」
「まあね」
「で、その恋の結末は?」
「それがさ、イケメンのポロっていう子が《ぼくと遊ぼう》って誘ったら、あっさり歩けるようになったんだって」
「それはもしかして失恋ですか?」
「そのとおり・・・あわれな片思いだったわけよ」
「ふーん」
動揺するミライがたまらなく愛しくて、抱きしめたいとマサミは思った。

「さて、そろそろお開きにしようかね」
「じゃ、私たちはあっちの部屋で・・・」
亜矢子と千恵子が立ち上がったので、マサミもついて行こうとした。
「あら、マサミさんはこっちの部屋よ」
「よし、じゃマサミさん、おやすみ。あとはミライとゆっくり話しなさい」
ミライもマサミも意表をつかれてポカンとしている。
「私たちは《うつぼの間》にいるからね、おやすみ」
「おやすみなさい」
二人になったミライとマサミは思わず顔を見合わせた。
「い、意外な展開になったね・・・あれ、マサミどうしたの?」
「・・・別に初めてっていうわけじゃないけど、なんかドキドキして」
しばらくぎごちない時間が流れたが、やがてミライが口を開いた。
「マサミ、シャンプー替えた?」
「ふふ、やっと気付いてくれたのね。ナノチャージっていうんだよ」
「ナノチャージ?」
「そう、十億分の一の指通りだよ」
マサミはちょっと得意げに言った。
「それ、どういう意味なの?うーん、確かにサラサラしてるけど」
マサミの髪をそっと撫でながらミライが聞いた。
「意味はよくわからないの・・・」
「そうか・・・電気消すよ」
「うん」

「眠れないの?マサミ」
「うん・・・どうしてかな、眠れないの」
「何か恐いことでもあるの?」
「明日が来るのが、来年が来るのが、とっても楽しみで、ドキドキして眠れないの」
「ふーん」
「私、もうサクがいなくちゃ生きられないと思う・・・」
「もう一度、温泉行くか」
「うん」
二人は音を立てないようにそっと廊下に出た。
真夜中、エレベーターの中だけがやけに明るい。
「サク、これにしよう」
貸切露天風呂が空いているのを見てマサミが言った。
「うん」
入り口に「入浴中」の札を下げて二人は中に入った。
「鍵掛けた?」
「うん」
「へえ、一応内湯と洗い場もあるんだ」
「うわ、さむーい」
二人は露天風呂に浸かった。体は温かい湯の中にあるが、顔に当たる冬の海風が心地よかった。
「露天風呂だと長く入っててものぼせないからいいよね」
「うん」
今日一日に起こったいろいろなことが二人の距離を近くしていた。肩をぴったり寄せ合って二人は空を見上げる。
「すごい星空」
「ああ、きれいだな」
「ねえ、この間、テレビの番組で星空のことやってたの」
「《アナザーワールド》だろ?オレも観たよ」
「ホントに?じゃあサク、あそこに赤っぽく見えてる星はなに?」
「それは簡単過ぎるな」
「じゃ、答えてよ」
「アーカイブ星」
「ピンポーン、正解!」
「アーカイブ星の住人は、ひとりひとりオリジナルの絵本を持ってたりして」
「ふふっ」

(続く)
...2005/06/23(Thu) 05:13 ID:SogL8S42    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
「血の繋がりってのも大事かもしれないけどね、やっぱり心が通じているかどうかだよね。」
⇒昨夜の「赤い疑惑」を観たあとに上記のストーリーを拝見しましたが、本当にそのとおりだと思いましたよ。
実の父親ではないのに一緒に病気と闘うと幸子に誓う茂、生みの母ではないのに幸子の回復を祈ってお遍路まわりを始める敏江に熱いものがこみ上げてきました。

アーカイブ星・・・亜紀の誕生日の翌日にあの星から戻ってくる(と祐司クンが信じている)澪との再会を今から楽しみに待っています。
...2005/06/23(Thu) 21:19 ID:adKxx7Xs    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:たー坊
朔五郎様
今回も読ませていただきました。
佐久間一家にマサミ。すでに家族ですね。亜矢子と千恵子も粋なはからいを2人にしてあげて実に微笑ましいです。
それにしても、夜に2人きりの部屋、露天風呂での混浴?と、サクは肝が据わっているのか、単に度胸がないのか・・・・・・。
次回も楽しみにしております。

SATO様
SATO様の作品も楽しみにしております。
おたがいに頑張りましょう。
...2005/06/23(Thu) 22:39 ID:7v.A7ves    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
朔五郎さま
たー坊さま

朔五郎さまの佐久間ファミリー&マサミの話は映画版の方のアナザーストーリーのつもりで読ませていただいております。(テレビのアナザーはたー坊さま・グーテンベルク様にお任せ、私どものストーリーとドラマとの架け橋はcliceさまにお任せですね。)
アナザーづいている皆様に刺激されて私は「赤」のアナザーのつもりで特別編を投稿し始めました。あまり陰湿な内容にはしないつもりですがちょっぴり辛めのスパイスも入れてみようと思っております。
皆様お互いに楽しく創作していきましょう。
...2005/06/23(Thu) 23:16 ID:adKxx7Xs    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
特別編・ロミオを探して〜6

(話はマサキとミツオの高校時代に遡ります。)

その日も道場では剣道部員が練習をしていた。
バシ!小手が決まる。

ミツオ「先輩!参りました!」
マサキ「俺に勝とうなんて十年早いぞ」
ミツオ「膝の故障でブランクがあったなんて信じられませんよ」
面を脱いだマサキとミツオが笑いあう。
当時マサキは3年生で、剣道部のキャプテンを務めていた。団体戦ではミツオ(2年)が先鋒(トップ)を、そしてマサキが大将(アンカー)をつとめて無敵の強さを誇っていた。当然今年も団体戦優勝を狙っている。そして、個人戦はマサキとミツオのどちらが勝つか・・・が高校剣道界の話題となっていた。

「キャー!瀬戸さーん!藤原さーん!」
女の子の黄色い声が二人に向けられる。いつも道場にやってくる深谷キョウコ(2年)・柴ミチル(1年)・大島サトミ(1年)のグルーピー3人組だ。この3人は附属の小学校時代からの仲良しでいつも一緒に行動していた。

マサキ「いつも応援ありがとね。さ、今日の練習はおしまいおしまい。」
キョウコ「これから軽くお茶しません?」
マサキ「俺たちにもプライベートってものがあるんだけどなー」
ミツオ「たまにはいいじゃないですか、先輩」
ミチル「えー、ホンとですか?」
マサキ「しょうがないなー(といいつつマンザラでもない様子)、それじゃ、矢口も誘おう」
グルーピー3人組「キャー、やったーっ」

こんな感じでマサキたちは青春を謳歌していた。
彼らの通う高校は、都内の有名大学の附属校で、下は幼稚園から上は大学まである一貫校である。生徒の親は大学教授・芸術家・会社役員等が多く、いわゆる良家の子女が通う学校だ。

ある日のこと
ワンワン!
校庭に犬が迷い込んできた。
サトミ「どうした、お前?お家に帰りたいの?それとも野良犬?」
そこへミツオがやって来た。
ミツオ「どうしたの?その犬?」
サトミ「迷子みたいです。」
ミツオは犬の首にかかっている番号札に目をやった。
ミツオ「これ、大学の実験用の犬じゃないかな?返しに行かなきゃ。」
サトミ「実験用?それじゃ、殺されちゃうんでしょう?可愛そうです。この犬、それがわかってて、実験されるのがイヤでイヤで、ここまで逃げてきたんですよ、きっと。助けてあげましょうよ。」
ミツオ「君にそこまで言われると・・・ま、いっか。この犬、隠しちゃおう!」
サトミ「うれしい!よかったね、お前の名前は『バン』だよ』
ミツオとサトミはお互いの優しさに魅かれ、付き合いが始まったのである。

(続く)
...2005/06/25(Sat) 00:51 ID:2bremLYc    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
特別編・ロミオを探して〜7

サトミ「わたし、将来はバイオリニストになりたいんです。いつかはコンクールに出てみたいわ」
何度目かのデート中、ミツオとサトミは将来の夢について語っていた。
ミツオ「君がうらやましいよ。僕は、父の会社に入って、事業を継がなければならないから。もう決まってしまってるんだ・・・」
寂しそうな表情を浮かべたミツオにサトミが語りかける。
サトミ「将来の心配をしなくていいなんて逆にうらやましいわ。私は逆に音楽で身を立てられるかとても不安です。」


ミツオの父・相良剛志は大手ゼネコン・相良建設の会長の息子で、現在は常務取締役、将来は社長の座が約束されていた。家庭を顧みず、外に愛人を作ってしまったことがきっかけて妻・恵子とは数年前に離婚しており、ミツオの親権をめぐって泥仕合が繰り広げられた。現在は剛志と暮らしているが、親権は母に残り、ミツオは母の姓である藤原を名乗ることになったのである。
一方、サトミの父・大島孝則は相良建設の経理部長であり、将来の役員候補の一番手と見られていた。

そんなある日・・・
決算業務に追われていた孝則は以前から気になっていた帳簿の再チェックをしていた。
孝則「濱田くん」
経理部の女性社員・濱田に孝則は声をかけた。
孝則「この帳簿を見てくれ給え。」
帳簿を見ていた濱田の顔色が変わった。
濱田「部長・・・これってマズイですよね。」
その帳簿は、相良建設が長年にわたって談合を続け、そのリベートが専用口座に定期的に振り込まれていることを示していたのである。


孝則は相良常務に面会を求めた。気になる帳簿の件を明らかにするためであった。
孝則「相良常務、この資金の流れをご存知でしたか?」
相良常務「何のことだね。」
孝則「わが社が長年にわたり談合を行い、不正にリベートを受け取っていたのではないですか?そして、相良常務、あなたが談合を指示なさっていたのではないですか?」
相良常務「君!何の証拠があってそんな言いがかりを言う!そんな帳簿はニセモノだろう!」
孝則「いえ、これは本物です。いま、この談合から手を引かないと、いずれ外部の知るところとなるでしょう。そうなれば会社が受けるダメージは図り知れません。その前にわれわれ内部で悪い芽を断つべきです!」
相良常務「君は私に指図するつもりか!」

その後も相良常務の態度は改まる様子は見えなかった。そして、何かにつけ、孝則を目の敵にするようにさえなったのである。

孝則は自宅で妻・好子に打ち明けた。
好子「内部告発ですって?」
孝則「このまま放っておけば、とんでもないことになる。会社を正しい方向へ導くためにはこれしかない。」
好子「何故あなたがやらなければならないんです?内部告発したらどうなるかお考えになったことはあるの?経理部長の座を追われるどころか、会社にいられなくなるかもしれないんですよ。せっかく建てた家のローンも残っているし、サトミの学費だって工面しなければならないのに、わたしたちの暮らしはいったいどうなるんですか?」
孝則「最近、相良常務からの風当たりが厳しくてな。いずれどこかへ飛ばされそうなんだ。それなら、常務と刺し違えたほうがよっぽどマシだ・・・」
好子「とにかく、冷静になってください。あなただけではないんです。私たち家族の暮らしがかかっていることをお忘れにならないでください。」

(続く)


ということで、「赤」っぽくアレンジしてみました。これから大島家を次々と不幸が襲います。娘のサトミにも難が及びますが、果たしてあの病気になるのでしょうか?
...2005/06/25(Sat) 00:55 ID:2bremLYc    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
特別編・ロミオを探して〜8

孝則は数日間悩んだ。このまま放置すれば会社はいずれ摘発される。そうなれば社会的なイメージダウンは避けられない。しかも、経理部長として見てみぬふりをしていた責任は免れないだろう。そうなれば娘のサトミも父の会社のことで学校でいろいろ言われるのではないか・・・

ある日、孝則は大学時代の友人・杉山(テレビ局勤務)と酒を飲んでいた。そして、つい口がすべった。
孝則「実はな、うちの会社で談合が行われていたんだ。」
杉山「おい、それどういうことだ?」
言ってから孝則はしまったと思ったが後の祭りだった。友人とはいえ、相手はマスコミ関係者だ。会社の内部事情を話してしまえばどうなるか、火を見るより明らかだった。
自分の軽率さを悔いて自宅に戻った孝則は、床に入っても寝付けなかった。

そして翌朝・・・・
孝則・好子・サトミが食卓を囲んでいるとインターホンが鳴った。
好子「はい・・・・・取材?テレビ局?」
孝則「私に用があって来たんだ。」
好子「あなた、いったい?」
サトミ「お父さん?」

玄関を開けると杉山・記者・カメラマンが待ち構えていた。
杉山「今日は何の用で来たかわかってるな?話を詳しく聞かせてくれないか?」
孝則「とにかく上がってくれ。」
家に入ってきた3人の姿を見て好子は狼狽した。サトミは何がなんだか訳がわからない。
孝則「好子、君は2階にいってなさい。サトミは学校へ行きなさい。」

1階のリビングで孝則はテレビ局の取材を受けることになった。好子は気が気でない。夫が内部告発しようとしていたことをテレビ局が嗅ぎつけたのではないかと・・・
そっとリビングをのぞいてみると、「談合」「リベート」という言葉がはっきり聞こえた。

テレビ局関係者が帰ったあと、好子は泣きながら孝則に詰め寄った。
好子「なぜお話になったの?あれほど、よしてとお願いしたのに・・・」
孝則「この話はいずれバレる。黙っていれば、経理部長として見てみぬふりをしていたと私は責任を追及される。それならば、今のうちに、間違っていることは間違っていると、はっきり言った方がいいんじゃないのか?遅かれ早かれ火の粉は私に降りかかってくるんだ・・・・」
好子「あなた・・・」
孝則「先に言ってしまった方が傷は浅くてすむ。少しでも長く今後の身の振り方を考える時間が出来る。」
夫が会社内で窮地に立たされている・・・好子は察した。
好子「わかりました。あなたを信じてついて行きます。」
孝則「サトミにもこのことを話さなければならない。今日は早く帰る。」

夕方、サトミが帰宅した。
好子「サトミ、ちょっといらっしゃい。」
サトミ「はい」
好子「今日、お父さんから大事な話があります。お帰りになるまで、自分の部屋で勉強していなさい。」
サトミ「今朝来たテレビ局の人のこと?」
好子「そのことも含めてお話しするから。」

(続く)
...2005/06/25(Sat) 23:19 ID:zcFllj/I    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
特別編・ロミオを探して〜9

孝則が帰ってきた。
リビングに家族3人が集まった。
孝則「サトミ、これからお父さんの言うことをよく聞いてくれ。実はな、お父さんの会社の中で悪いことをしている人たちがいたんだ。その人たちはインチキをして、橋を造る仕事を仲のいい会社にやらせてあげた替わりにお金をもらっていたんだ。」
サトミ「どういう意味?」
孝則「真面目に仕事をしたいと手をあげて来た会社に仕事をさせないで、仲のいい会社にばかり仕事させてきたんだ。それも、事前にどのくらいのお金になるか教えてな。これは不公平だろう?それに、うちの会社の人は何もしないでお金がもらえるんだ。おかしいと思わないか?」
サトミ「うん。」
孝則「だから、お父さんは間違っている、と声をあげたんだ。わかるな?」
サトミ「お父さん、正しいことをしたんだよね。」
好子「そうよ、お父さんは何も悪いことしてない。だから、胸をはっていいのよ。」
孝則「7時のニュースでお父さんが話したことが放送される。それを観た友達から、明日、学校でいろいろ言われるだろう。すまないが、我慢してくれ。」
サトミ「お父さんが謝ることない。逆に自慢できるお父さんよ。私は胸をはって学校へ行くわ。」

一方、テレビのニュースを観たミツオは・・・
ミツオ「いったい何があったの?父さんの会社で。」
剛志「わたしは何も知らん。マスコミがよく調べもせずにニュースにしたんだ。困ったもんだ。」
ミツオ「でも、経理部長が証言したって言ってたけど?」
剛志「経理部長が帳簿を見間違えて、早合点したんだろう。厳重にお灸をすえなければいかんな。」
ミツオ「本当にそうなの?」
剛志「お前は父親の私が信じられんのか!」
ミツオ「信じられないよ!外で女の人を作って、散々母さんを泣かして・・・そんな父さんのどこを信じろっていうんだ!」
剛志「バカモン!」
剛志はミツオを平手打ちした。

翌日、相良建設には報道陣が押しかけ、社内は大騒ぎになっていた。とても仕事が出来る状態ではない。

そしてサトミが登校した学校では・・・
ミチル「サトミ、昨日のニュース観たよ。お父さんが映ってたね。」
サトミ「観たの?」
ミチル「カッコよかったよ。サトミのお父さん。」
サトミ「ありがとう。」
「サトミ、大変よ!」キョウコが走ってきた。
キョウコ「昨日のニュースのことだけどさ、サトミのお父さんが訴えた相手って、ミツオ君のお父さんだよ!苗字が違うから今までわからなかったけど、そうなんだってさ。」
ミチル「どうしてわかったの?」
キョウコ「道場で瀬戸さんと話してるところを聞いちゃったの。」
サトミは困惑した。父が告発した相手がミツオの父親だったなんて・・・どんな顔してミツオに会えばいいんだろう・・・

(剣道場)
ミツオ「親父が談合なんかして・・・恥ずかしいですよ、俺。」
マサキ「気にするな。ミツオはミツオだよ。今度の事件とは関係ない。だから、今日も練習出て来いよ。」

そこへサトミがやって来た。
サトミ「ミツオさん」
ミツオ「君・・・」
サトミ「ご免なさい。父がミツオさんのお父さんのことを・・・」
ミツオ「サトミさんが謝ることない。正直言って、僕の方が恥ずかしいよ。悪いのは親父の方だから。そんな父親の息子だから、僕のこと、軽蔑してるよね。」
サトミ「やめてください。ミツオさんはミツオさんです。親のことは関係ありません。ですから、ですから・・・今までどおりのお付き合いを・・・」
ミツオ「サトミさん・・・ありがとう」
サトミ「ミツオさん・・・」

二人のそんなやり取りを見守っていたマサキ・キョウコ・ミチルは笑顔を見せた。
キョウコ「よかった・・・」
マサキ「これで一件落着だ。」
そして、ミチルが二人に声をかけた。
ミチル「ミツオさん、サトミ、わたしたち、これからも二人の味方だからね。」


(続く)
...2005/06/26(Sun) 00:20 ID:e10rY766    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
202の続きです

香川編 〜 木庭子町のお正月(その12)

肩や腕が触れ合う、すべすべした感触を心地よく感じながら、二人は星空を見上げていた。
「ねえ、サク」
「うん?」
「私、今、とてもしあわせな気持ちで星を見てる」
「うん」
「ちょっとしあわせ過ぎて恐いような気もするの。きっと何かが・・・」
「やめろよ、マサミ」
ミライの、いつになく厳しい口調にマサミはハッとした。
「弱気になったり、悪いことを考えたりすると悪魔につけ込まれるぞ」
「サク・・・」
「オレは世の中のプラスを拾い集めて、マサミに回してやる。そうやってマサミを守ってやるよ。マサミは将来、介護の仕事でそのプラスを還元して、今度はお年寄りたちを助けてあげればいい」
マサミはいま、自分の人生が新しい章に入ったことを感じていた。
それは新鮮な驚きだった。そして感動だった。
古い自分を脱ぎ捨てて生まれ変わる、それはミライの存在なしには起こりえないことだった。
「私ね、いままで人に頼られることが多かったの。いわゆるアネゴっていうやつ。自分でもその気になってた。だから、サクと知り合ってからも、どっちかっていうと尻に敷いちゃおうかなあ、って思ってた。でもね、最近ちょっと違うの。頼りたいの、守って欲しいの。サクやサクのお父さん、お母さん、お姉さんとも助けあっていきたいの、ずっとずっと。あのひともきっとそうだったと思う。大好きな彼に素直に甘えて、その腕の中で目を閉じて、暖かさを感じたかったと思うの。でもまだすごく若かったし、素直になれないで強がっているうちに、あんなことになってしまったような気がするの」
「でもさ、そうするとオレたちはあのひとの出来なかったことを実現するために生きてるの?単なる立体コピーっていうわけ?」
「違うよ。私たちは私たちだよ。あのひとにはあのひとの、素晴らしい夢や希望があったはずだよ。でも、それを誰にも話さないまま、あのひとはウルルの空へ行ってしまった・・・あのひとが私たちに言いたいことはたった一つだけだと思うよ。《あなたはあなたの今を生きて、しあわせになるために》」
「それじゃマサミのしあわせって、なに?」
「サクと何でも話せること、理解しあえること、サクが私より一日でも長生きして、私の一生を包んでくれること」
「え?男のほうを後に残すなんて、そりゃちょっとひどいんじゃないの?いざとなったら男のほうが繊細なんだぜ、結局」
「大丈夫だよ。たぶん子供たちがいるから、一人ぼっちにはならないよ」
「あ、そっか」
上目づかいにミライを見ながらマサミが言った。
「それでも淋しくて淋しくて、どうしようもないくらい淋しかったら、新しい奥さんをもらってもいいよ」
「心にもないことを言うなよ」
「バレたか、へへっ」
「実はオレもさ、なんか不思議な気持ちなんだ・・・東京の部屋で朝目覚めるたびに、マサミの幻がそこにいるんだよ。幻だとわかっているけど、冷たくないんだ。抜け殻じゃないんだ。温もりを感じるんだ。そんな時、ああ、オレとマサミはもうこんなにも繋がっているんだと思って、ちょっと苦笑いしちゃうんだよね」
その時、流星が夜空を駆け抜けて行った。
「またひとつ、流れ星の命が燃え尽きたね」
「ねえサク、あのひとも彼と一緒にこの夜空を見上げたのかな」
「見ただろうね、きっと」

あの日見てた星空
願いかけて二人探した光は
瞬く間に消えてくのに
心は体は君で輝いてる・・・
(作詞 ken hirai「瞳をとじて」より)

「マサミ、人間てさ、しあわせを求め続ける生き物だよね」
「うん」
「だからさ、あのひとが自分の命があとわずかで燃え尽きると知ったあとでも、きっとしあわせを抱きしめようとしただろうね」
目を閉じてマサミが言う。
「そのしあわせは、きっと今の私と同じ・・・愛する彼を最後の瞬間まで感じていること」
「あのひとは最後に彼に会おうとしなかった・・・マサミはなぜだと思う?」
「彼を愛していたからよ。それ以外のなにものでもないと思うな、私は」
「どういうこと?」
二人は思わず見つめ合った。
「私なら、愛するひとにしあわせになって欲しい。そんな彼の姿を見ていたい。悲しむ姿なんて見たくない。自分がいなくなるとすれば、なおさらにね」
「あのひとは、彼が前向きに生きていく姿を思い浮かべていたかった・・・最後に涙に濡れて嘆き悲しむ姿など見たくはなかった・・・そういうことなの?」
「うん、あのひとは何より愛する彼のしあわせを願い、それを想像しながらウルルに旅立っていったと思う」
「そういうものかな、愛するっていうことは」
「私はそう思う。少なくとも今はね」
「マサミ・・・」
「なに?」
「しようか?」
「キス?」
「うん」
「好き、大好き・・・サク」
語り合うふたりを慈しむかのように、時はゆっくりゆっくり流れていった。

(続く)
...2005/06/26(Sun) 22:45 ID:hwNqDcfo    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:にわかマニア
 高松近郊の木庭子町の「年越しソバ」は「ソバ」なのか「讃岐うどん」なのかの結論がそろそろ出されるのを楽しみにお待ちしております。瀬戸大橋開業前は,連絡船の売店でうどんを食べるのがささやかな楽しみでした(ちなみに,青函連絡船での楽しみはイカ刺しとビールでしたが)。
...2005/06/26(Sun) 23:22 ID:Q00/ZLOM    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
にわかマニアさま
リクエスト、承りました(^^)

さて、長澤まさみさん、今度の「お相手」は妻夫木クンだそうです。森山良子さんの「涙そうそう」をモチーフにした映画で「血の繋がらない兄妹」を演じるそうです。ちなみに選ばれた理由はやはり「あの映画」の演技が決め手だったとか。
故郷・静岡の知事選のイメージキャラクターに選ばれるなど大忙しというところでしょうか。

で、綾瀬さん、そろそろビシッと大役が来そうな予感が・・・(あくまで希望的妄想ですが・苦笑)
...2005/06/27(Mon) 23:28 ID:G7innxo.    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
長澤まさみサン・綾瀬はるかサンの相手役ですが、男子シンクロをやっている人が多いような気がしますが・・・

長澤サン相手役リスト
「涙そうそう」妻夫木クン(映画WB)
「ドラゴン桜」中尾クン・小池クン(WB2)
「タッチ」斎藤慶太クン(WB2)
「世界の中心で、愛をさけぶ(映画)」森山クン(WB1)

綾瀬サン相手役リスト
「雨鱒の川」玉木クン(映画WB)
「あいくるしい」市原クン(WB2)
「ポカリスエットCM」平岡クン(WB完結編)
「世界の中心で、愛をさけぶ(ドラマ)」山田クン(WB1)・柄本クン(WB完結編)

ややマニアックですが、こんなところでしょうか?見落とし等あればお教え下さい。
...2005/06/27(Mon) 23:54 ID:HCrcfUZg    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:みっち〜
どうも、みっち〜です。
先日、自分も綾瀬さんに関しては調べてみました。

映画
「JUSTICE」
妻夫木聡くんとの共演(映画版WB)

「雨鱒の川」
玉木宏くんとの共演(映画版WB)

「戦国自衛隊1549」
中尾明慶くんとの共演(ドラマ版WB2)


ドラマ
「僕の生きる道」
市原 隼人くんとの共演(ドラマ版WB2)

「ブラックジャックによろしく」
妻夫木聡くんとの共演(映画WB)

「世界の中心で、愛をさけぶ」
山田孝之くんとの共演(ドラマ版WB)
田中圭くんとの共演(ドラマ版WB)
柄本佑くんとの共演(ドラマ版WB2005)
田中幸太朗くんとの共演(映画WB)

「あいくるしい」
市原隼人くんとの共演(ドラマ版WB2)

CM
大塚製薬 「ポカリスエット」
平岡祐太くんとの共演(ドラマ版WB2005)

これくらいでしょうか?

スレ違いな書き込みすみません。
...2005/06/28(Tue) 00:04 ID:YHtJVwRI <URL>   

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
みっちーさま、初めまして
ここは「芸能ネタ」も大歓迎ですので、これからも情報をお寄せくださいませ(^^)


香川編 〜 木庭子町のお正月(その13)

12月31日の朝。
佐久間家の五人は再び「静の間」に集まった。
マサミはもはや完全に家族の一員として扱われていた。温泉でノビノビしたおかげで長旅の疲れもすっかり取れて、気分的にもすっかりリラックスしていた。
そして清清しい朝日が差し込む中での朝食は楽しかった。
「マサミさんが来る前にきれいにしておこうと思って、今年は大掃除も終わらせちゃったんだ。おせち料理も大体できてるし、今日はラクだわ」
「じゃ、のんびり帰ればいいね」
「ああ、そうだ。年越しのお蕎麦買うのを忘れてた。ミライ、あとでマサミさんといっしょにお買い物して来て。蕎麦とネギと鶏肉のササミね」
「お蕎麦、ですね」
マサミが確認する。
「そうだけど・・・」
「いえ、こちらでは、おうどんかと思ったので・・・」
「そうねえ、ここらへんでは三分の二くらいの家で、年越しにもうどんを食べるわね。でもウチは蕎麦派なのよ・・・あれ、お蕎麦は嫌いかしら?」
「いえ、私、お蕎麦は大好きです」
「よかった。あ、そうそう、商店街に新しい喫茶店ができてね、なかなか評判が良いから寄ってくるといいよ」
「新しい喫茶店ね・・・何か特徴とかあるわけ?」
「特徴って?」
「たとえば、その・・・マスターがよく皿を割るとか・・・」
「うーん、お皿の話は聞いたことないねえ・・・ああ、そういえばマスターがちょっとシブイって言ってたわ」
ミライとマサミは思わず顔を見合わせた。
「ま、まあ、いいや。年末の町っていうのも楽しいかもしれないね」
「うん、私もお買い物に行ってみたい。それにお墓参りにも」
「そうだね、それがあったね」

「佐久間さま、ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」
「はいはい、お世話になりました。お料理もお風呂も楽しませて頂きましたよ」
直太朗はマサミのほうに微笑を向けながら続けた。
「ウチの新しい《娘》もいっそう打ち解けてくれたようで、良い新年が迎えられそうですよ」
「それはよろしゅうございましたね。それでは良いお年をお迎えください」
「ありがとう、良いお年を」
一家を乗せた車は、夢島の見える海岸沿いの道を走る。
「あのひとと彼は、毎朝この道を通学したんだね」
「うん、あのひとはバスで。彼はバイクで」
「へえ、それじゃ彼の方はホントにサクそっくりだったわけね」
「まあ・・・そうかもね」
ものの十分ほどで、車は佐久間家に到着した。
「さあ、着きましたよ」
五人は家に入り、それぞれの部屋の窓を開け、空気を入れ替えた。
程なく窓を閉め、とりあえず茶の間に落ち着く。
「さて、一休みしようね。あのまま旅館で年越しすることも考えたんだけど、マサミさんに、一度はウチのお正月の雰囲気を味わってもらおうかなって思ってね」
「何か《しきたり》みたいなものがあるんですか?」
「そんな堅苦しいものはないよ」
亜矢子は笑いながら言った。
「そうだね、年越しの瞬間は、みんなで《行く年来る年》を見て、お蕎麦を食べながら迎える。一応、年越し蕎麦を作るのは女の仕事になってるのよ」
「じゃ、私にもこの家の味を教えて下さい」
「手伝ってくれるの?それじゃ三人で作ろうね」
「はい」
「さて、これじゃ不公平だから、年が明けて元旦のお雑煮を作るのは、一家の長、つまりお父さんの仕事なの」
「わあ、そうなんですか?」
「一家の長は朝暗いうちに、近くの山に湧いている清水を汲んできてね、神棚に供えて拝んでから、その水でお雑煮を作るのよ。まあ、ミライも手伝うことになるだろうけど」
「ミライ・・・くんが?大丈夫かな?」
「大丈夫よ。この二人、ああ見えてもなかなか上手なのよ」
「想像つきません・・・」
亜矢子は笑い転げながら言う。
「無理も無いわね・・・あ、そうそう。ここらへんのお雑煮はきっとマサミさんのおうちのとは違うと思うから楽しみにしててね」
「お餅が丸いとか・・・」
「あら、良く知ってるわね。でもね、もうひとひねり、ふたひねりしてあるから・・・ハイハイ、あとは見てのお楽しみ」
亜矢子はふとしんみりとした口調になった。
「うちも子供が大きくなって、去年千恵子は彼氏と年越しライブに行ってしまったし、今年はミライも東京から帰ってこないかもしれない。もしかしたらお父さんと二人で年越しになるかもしれない。それじゃ淋しいから、あの旅館に泊まりに行こうかなんて話してたの。でも、マサミさんとミライが来てくれて、千恵子もねマサミさんが来るなら私も家にいるって言うの」
直太朗が口を開いた。
「離れて行こうとしていた家族を、マサミさんは再生してくれたのかもしれないね。こんなに家の中が華やいだのも久しぶりだねえ」
「ほんとにね。そうだ、千恵子、今度はあんたの彼氏を連れておいで」
「そうだね・・・でもアイツ、人見知りするほうだし、マサミみたいに、あ、もうマサミでいいよね?・・・マサミみたいに印象良くないかもよ」
「いいから、連れておいで」
楽しげな会話は昼過ぎまで続いた。

(続く)
...2005/06/28(Tue) 00:13 ID:1JcnjBQk    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:にわかマニア
↑ と言うか,綾瀬君・長澤君の相手役に限らず,映画にせよテレビにせよ,最近の男性陣って,ウォーターボーイズ人脈かジャニーズ人脈に占められているような感じがしませんか。
...2005/06/28(Tue) 00:14 ID:Kkp01Ojs    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
みっち〜様
へー、よくお調べになりましたね。私はかなり見落としてましたよ。

綾瀬サンと共演したことがある妻夫木クン・中尾クンはこれからの映画・ドラマで長澤サンと共演することになるのですね。二人の亜紀と会えるとは羨ましい・・・あ、中尾クンは「H2」でもう一人の亜紀こと佐藤めぐみサンと共演してますね。

朔五郎さま
佐久間家のストーリーはホームドラマのようでいい雰囲気ですね。楽しい正月を過ごしてほしいです。※別スレの「赤」っぽいストーリーと同一作者とは・・・凄いです(脱帽)
...2005/06/28(Tue) 00:15 ID:Kut2dgeA    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
にわかマニアさま
WBのキャストで旬の男達をあつめたということでしょうか。

SATOさま
まさにホームドラマ路線で、そう言って頂けるとうれしいです。

ところで「涙そうそう」という歌は、亡くなったお兄さんを偲ぶ歌だと思ったのですが、そうすると妻夫木クンはもしや・・・
ということは「あの映画の逆バージョン」みたいなストーリーになるのでしょうか・・・
...2005/06/28(Tue) 22:56 ID:R6NrMCR.    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
特別編・ロミオを探して〜10

孝則の「内部告発」は波紋を呼び、相良建設には連日マスコミの取材陣が押しかけた。いずれは強制捜査が入るのでは・・・不安な空気が社内に漂い始めた矢先のことである。

経理部社員「大島部長、相良常務がお呼びです。」

孝則は相良常務室に入った。
孝則「本日は何か?」
相良「大島君、君のおかげで、わが社は間違った方向に向かっていたことに気付かせてもらった。わが社を思っての勇気ある発言、見事だ。」
孝則「はあ・・・」
相良「実は、新規に物流会社を立ち上げることになってね、君に社長を任せたいんだ。新しい会社を正しい方向へ導くように、力を貸してもらいたい。」
孝則「私が社長など・・・身に余るお話です。謹んでお受けいたします。」
相良「そうか、では、来週から行ってもらおう。これが会社の資料だ。」
孝則「場所は高崎ですか?」
相良「そうだ、あそこにわが社が広大な土地を持っていてね、倉庫も含めたトータルな物流拠点にするんだ。君はその拠点のトップとなるわけだ。」

孝則は呆然となった。新しい勤務先で社長の椅子は用意されたものの、実質は地方の倉庫会社だったのである。相良常務の報復人事であることは明白だった。

孝則の自宅は神奈川県のY市にある。直通電車が出ているとはいうものの、高崎まで片道3時間近くかかる。とても自宅から通うのは不可能だ。

好子「高崎へ?来週からですか?」
孝則「今日、相良常務から発令を受けた。サラリーマンである以上、受けるしかない。」
好子「どうします?この家は貸すことにして、高崎で家族3人で暮らしますか?」
孝則「いや、サトミの学校のこともある。私が単身赴任するつもりだ。」
好子「そうですか・・・わかりました。」
孝則「寂しい思いをさせるかもしれんが、サトミを頼む。」
好子は夫が内部告発をして以来、この日が来るのを覚悟していたかのようだった。
好子「あなたこそ、お身体に気をつけて。」


そして、孝則が赴任する朝が来た。
出発する孝則を好子とサトミが玄関先まで見送りに出ていた。
サトミ「お父さん、頑張ってね。なんと言っても社長だよ。わたし、今日から社長令嬢になるんだわ。そしてお母さんは社長夫人!」
健気に振舞うサトミに好子は目を潤ませた。
孝則「行ってくる。好子、サトミ、留守を頼むぞ。」
好子「はい。」

孝則が自宅をあとにしようとしたとき、不意にサトミが叫んだ。
サトミ「大島孝則社長!バンザーイ!バンザーイ!バンザーイ!」
孝則はサトミの万歳三唱を聞いて涙ぐんだ。
孝則「サトミ・・・ありがとう・・・・」
そしてサトミの頬にも一筋の涙が・・・
サトミ「お父さん・・・」

こうして孝則は高崎へ旅立った。家族が離れて暮らす日々が始まったのである。

(続く)


朔五郎さま
佐久間ファミリー&マサミのホームドラマ編は映画のアナザーストーリーのつもりで楽しませていただいております。
私の「赤」もどきは7月2日には間に合わせようかと・・・この日は廣瀬亜紀の35回目の誕生日、大木健三郎君の7回目の誕生日でもあります。
朔五郎さまの「赤」を思わせる別スレのストーリーも楽しみにしております。
...2005/06/29(Wed) 00:12 ID:7R4EYSbE    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
亜紀も35歳ですか(感無量)

SATOさまの「赤」これからが楽しみです(^^)
...2005/06/30(Thu) 05:14 ID:i5Ci29Pk    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
おまけのコーナーです

「海の時計」にも閉店の時刻がやって来た。
マスターの寺尾は、いつものように二人分のコーヒーを淹れると、そのひとつを手に取って、香りを楽しんでいた。

ふと気が付くと、これもいつものように亡き妻・しのぶがカウンターのコーナーの席に座っていた。

「どうしたのよ、なにか悩みでもあるの?」
「別に」
「ふふ、隠してもだめ。私、知ってるもん」
「え・・・」
「京子さん、よね」
「・・・・・」
「ほら、当たった」
「しのぶ」
「ねえ、あなた」
「ん?」
「あなた、素敵な男だったわ。一緒にいると、もううっとりするほど・・・でも、最近ちょっとしょぼくれてるわよ」
「仕方ないさ。男やもめになんとやら、だよ」
「何言ってるの。しっかりしてよ」
「そんなこと言ったって」
「恋をしなさいよ」
「しのぶ・・・」
「あなた、私が死んだあともずっと私のことを思っててくれたよね、カズナリとアズサちゃんのことがあって大変な時でも。カズナリはもう大丈夫よ。あのレイコちゃんていう子は、きっとカズナリを助けてくれる。まかせておけばいいのよ」
「でも・・・」
「ねえ、京子さんてとってもキレイなひとね」
「うん、若い頃はモデルやってたんだって」
「最高じゃない。あなた、頑張って」
「しのぶ」
「いいのよ、私は。ありがとう、もう十分よ。元妻としてはね、あなたにもう一度復活して欲しいのよ、ステキな男性として」
「そんなこと・・・」
「勇気を出して恋をしなさいよ」
「でも彼女には高校生の娘がいる。その娘が認めてくれやしないよ」
「きっと大丈夫だと思うな」
「どうして?」
「その娘さん、誰かに似ていると思わない?」
「誰かって・・・あ、そうか」
「思い出した?」
「あ、ああ・・・」
「あなたたち、とっても相性が良かったじゃない。まるで本当の父娘みたいに」
「だって、あの子は全然別の人間だぜ」
「そりゃそうだけど、でもきっとうまくいくよ。女の勘っていうやつ」
「無責任だな・・・」
「私、本気よ・・・あなたがこのまま朽ちていくのを見たくないわ。だから恋をして・・・さよなら、アキラさん・・・」
しだいに薄くなっていく姿・・・
「しのぶ、ちょっと待て」
気が付くと、カウンターの上にカップだけが残っていた。

寺尾は店を閉めると、松並木の道沿いにある一軒の小料理屋に立ち寄った。
この店のママ・長谷部京子は、若い頃、ファッション誌のモデルを務めていたこともある美人だった。
「いらっしゃい」
のれんをくぐって中に入ると、娘のナオミが笑顔で出迎えた。
華やかなヒロインの香りを残す母親に比べ、娘のナオミは地味でおとなしい印象だった。しかし成績は抜群に良く、宮浦高校から久々に現役の東大合格者が出るのではと期待が集まっていた。
「ナオミちゃん、今日もお手伝い?えらいね」
「うん、お母さんは女手ひとつで私を育ててくれたから、このくらいは」
「来年はいよいよ大学生だね。東京へ行くんだろ?」
「うん・・・」
ナオミは思わず俯いた。
「私が東京へ行ったら、お母さんひとりになっちゃう。私、なんだか心配で・・・」
「でも、付き合ってる彼氏は東京へ行っちゃうんだろ?」
「うん」
ナオミの恋人・トモヒサは松崎にある有名進学校・竜桜(りゅうおう)高校の生徒で、二人はそろって東大に合格しようと誓い合っていた。
「おじさんはね、昔、北海道の富良野に住んでいたんだ」
寺尾が話し出す。
「おじさんには息子がいて、富良野にいた頃、その息子のガールフレンドがよく遊びに来ていたんだ。その女の子がナオミちゃんに似ていてね・・・」

ガチャーン・・・

「あ、おじさんがへんなこと言うから、お皿割っちゃったじゃない」
「ごめんごめん」
「どうしたの、ナオミ・・・あら、寺尾さん、いらっしゃい」
奥から京子が出てきた。
「いや、ぼくがへんなこと言ったから、ビックリしたみたいで」
「あら、未成年者をからかうのはやめてくださいよ」
「いやいや・・・」
寺尾は苦笑いしながら弁解した。
「ただ、ナオミちゃんを見ていると、昔、家族そろって幸せに暮らしていた頃を思い出してね・・・」
「寺尾さん、淋しそうね」
「まあね」
「ほんのちょっとでも幸せを思い出せるなら、いつでも来てくださいよ、この店に」
「ありがとう、京子さん」

その時、水平線から昇って来た満月が、宮浦の海に白い光の道を創っていた。
...2005/06/30(Thu) 22:51 ID:i5Ci29Pk    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
朔五郎さま
おまけコーナーは、来週から始まる東大受験ドラマを思わせる興味あるストーリーでした。このままシリーズ化でしょうか?前の作品から新作へのつなぎが本当にお上手ですね。
京子さんは2005年頃にケータイのCMに出たことがある人ですよね?最初はてっきり先生かと思っていたのですが、小料理屋のママとは意外でした。

寺尾さんへ
よく似た女の子3人とお知り合いのようですが、人違いして別人の名前を呼んだりしないように気をつけてくださいね。間違えたら女の子に失礼ですよ。

※このストーリーは他人の空似でしょうか、他にもよく似た人どうしが何組もいますね。
...2005/06/30(Thu) 23:14 ID:/euY3Da.    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
SATOさま
「ドラゴン桜」の中でナオミは小料理屋の娘なのです。ハセキョーさんは英語の先生なのですが、マスターの相手役としては、これくらいの超美形を持ってきたほうが面白いと思いまして・・・ハセキョーさんが37、8歳になった姿をイメージしてくださいませ(苦笑)

ちなみに、まとめますと

※綾瀬はるかさんに似てるひと
1.大林アキ(当ストーリーのヒロイン)
2.廣瀬亜紀(説明の必要はないでしょう)
3.高野小百合(水産学部でケンと同期生。北海道・沙留《さるる》出身。実家はアメマスの養殖業をしている)
4.綾瀬ハルカ(立京大学でマサミの親友。駆け落ちしてNYに行ってしまう)
5.真島ミチル(女優。広島県出身)
>SATOさま 「柴ミチル」もここに入りますよね(^^)

※長澤まさみさんに似てるひと
1.長沢マサミ(大林アキの同級生。最初はアンチヒロインとして登場。プチ悪女の素質あり。特技はマジック。介護福祉の道へ)
2.木庭子町の少女(説明の必要はないでしょう)
3.蜷川アズサ(里谷選手の再来と言われ、オリンピックで金メダル有望と言われた逸材。不慮の事故により選手生命を絶たれるが、高校時代のスキー部コーチの深い
愛情により、新しい生きがいを見出す)
4.長谷部ナオミ(小料理屋の娘。成績抜群で東大を目指す)
チョイ役でしたが
5.朝倉南(札幌冬季五輪・女子フィギュアスケート代表選手)
...2005/07/02(Sat) 21:22 ID:whSn2Anw    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
特別編・ロミオを探して〜11

その後、サトミの学校生活は表面上は何事もなく過ぎ去って行った。キョウコ・ミチル、そしてマサキはサトミの父が単身赴任中であり、その理由も知っていたが、普通にサトミと接していた。
しかし、ミツオはサトミに対して申し訳ない気持ちで一杯だった。自分の父がサトミの父を高崎へ飛ばしたことを気に病んでいたのである。

剣道部の練習が終わったあと、サトミはミツオに声をかけた。
サトミ「ミツオさん、今日、私の家に来ませんか?」
ミツオは躊躇した。
サトミ「親のことは関係ないはずですよね?」
困った顔をしているミツオを見てマサキが助け舟を出した。
マサキ「それなら、俺たちも行っていいかな?なあ、みんな」
キョウコ・ミチル「賛成!」

そして、マサキたちはサトミの家にやって来た。好子が笑顔で出迎える。
好子「サトミの母です。いつもお世話になっております。」
マサキ「今日は、お邪魔します。ミツオ、お前も挨拶しろよ。」
ミツオ「こんにちは。」
キョウコ・ミチル「こんにちは」
好子「いらっしゃいませ。」

みんなは中庭に出て、さながらガーデンパーティーのようである。好子の手作り料理をサトミが運んでくる。
サトミ「ミツオさん、これお口に合いますかどうか・・・」
ミツオ「ありがとう、いただきます。」
そんな二人のやり取りをマサキ・キョウコ・ミチルは笑顔で見守っている。好子もサトミとミツオが付き合っていることを察した。
そして、ミツオのギターに合わせて皆が順番に歌をうたうことになった。サトミの順番が回ってきて「思い出のグリーングラス」を披露したのだが・・・
キョウコ「ねえ、せっかくミツオ君が伴奏してくれてるのに、ちょっと音程外れてるよ。」
サトミ「あら、そんなに外れてるとは思わないけど、失礼なキョウコ姉さん。」
ミチル「やっぱり外れてるよ、ミツオさんに伴奏してもらって練習しなよ。」
サトミ「私ってそんなに音痴かしら?ミツオさん、練習相手になっていただいていいですか?」
ミツオ「うん、いいよ。部活のない日は必ず練習相手になるよ。」
サトミ「うれしい!」
マサキ「ミツオは剣道だけじゃなくて、ギターもすごく上手だからな、それに合わせて練習すれば歌はすぐ上手くなるって。」
好子「ミツオさん、よろしくお願いします。少しでもこの子の音痴な歌が上手くなるよう、助けてあげてください」
好子もミツオを気に入った様子だった。

(続く)
...2005/07/02(Sat) 23:13 ID:InmuCdmc    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
特別編・ロミオを探して〜12

ミツオたちが帰ったあと、サトミは好子と皿洗いをしながら語り合っていた。
サトミ「お母さん、ミツオさんのこと、どう思う?」
好子「そうね、スポーツマンらしくて爽やかで、そのうえ、優しそうで、いい人だと思うわよ。」
サトミ「ありがとう、うれしい。ミツオさんとお付き合いを続けていいのよね。」
好子「ええ、もちろん。でもね、サトミ、あなたもミツオさんも高校生だから、節度をもってお付き合いするんですよ。それだけは約束してね。」
サトミ「はい!」
そう言うとサトミは嬉々として好子の分まで皿洗いをするのだった。
好子「クスッ・・・現金な子・・・」

そして、翌週もミツオはサトミの家に来た。

そんなある日、孝則から好子に電話が入った。
好子「あなた、そちらの生活は落ち着きましたか?」
孝則「ボチボチだがね、何とかやっているよ。」
好子「たまには家に帰ってきてください。」
孝則「ああ、来週の週末に帰ろうと思っている。」
好子「楽しみにしてるわ。あなたの顔が見たいし、サトミの元気な顔も見ていただきたいし。」
孝則「元気でやってるのか、サトミは?」
好子「ええ、最近ボーイフレンドが出来たみたいで、時々家にいらっしゃるのよ。」
孝則「ほう、そうか。で、誰なんだ。」
好子「藤原ミツオさんというの。一学年上の剣道部員だそうよ。」
孝則「藤原?ミツオ・・・?」
好子「あなた、彼が何か?」
孝則「おい、その藤原という奴、サトミに近づけるな。」
好子「何故ですの。とても感じのいい方よ。」
孝則「あいつはな、私たち家族をこんな目に合わせた相良の息子なんだよ!相良の血が流れている奴が私の家に入り込むなんて・・・考えるだけでもオゾマシイ!いいかっ、二度とあいつを家に入れるな。サトミとの付き合いもやめさせるんだ!」
好子「ちょっと、あなた、相良さんとのこととサトミたちとのこととは関係ないじゃないですか?」
孝則「とにかく言うとおりにしなさい!」
ガチャリ!孝則は一方的に電話を切ってしまった。

サトミ「お母さん、お父さんからだったの?」
好子「サトミ、ちょっといいかしら?何故ミツオさんのことを隠してたの?相良さんの息子さんだということを。」
サトミ「・・・」
好子「お付き合いするなら、もっと堂々としていなさい。私だって、あなたとお付き合いして下さってる方のことをちゃんと知っておきたいわ。だから、あなたから隠し事されたのが、とても悲しかった。」
サトミ「ごめんなさい、お母さん・・・」
好子「お父さんは、やはり相良さんとのことがあってミツオさんとのことに反対なさってるわ。でも、私はサトミたちとは関係ないと言い返した。あなたたちの味方になってあげるから。」
サトミ「ありがとう・・・」

(続く)
...2005/07/02(Sat) 23:15 ID:InmuCdmc    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
特別編・ロミオを探して〜13

相良建設の談合問題でついに強制捜査が入った。そして、相良常務も刑事責任を追及されることになったのである。

ミツオはやはり元気がない。そんなミツオを見かねたサトミが声をかけた。
サトミ「ミツオさん、ちょっと目を閉じていただけます?」
ミツオ「?・・・」
目を閉じたミツオのおでこにサトミは手を当てた。
サトミ「はい、開けてください。」
ミツオ「何かのおまじない?」
サトミ「運命の神様ってきっといると思うんです。すごく幸せだった人がすごく不幸になったりすることがあるじゃないですか。そして、その逆も。どんな人生も、結局プラスマイナスゼロになるようになってる気がしません?」
ミツオ「神様がコントロールしてくれるってことかな?」
サトミ「はい、ですから今、私のプラス分をミツオさんに回してもらいまいた。いつか、私がマイナスになったときに、今度はミツオさんのプラス分を回していただきますから。」
ミツオ「うん、たっぷりお返しするよ。」

週末、ミツオはギターを抱えてサトミの家にやって来た。ところが、反対側から孝則が・・・。高崎から帰宅したところだったのである。大島家の門の前で二人は向き合った・・・。

ミツオ「こんにちは。藤原ミツオです。」
孝則「何の用だね。」
ミツオ「サトミさんと歌の練習をしに参りました。」
孝則「歌?娘にそんな暇はない。君だって剣道やってるんだろう?歌なんかやってる暇があったら剣道の練習したらどうなんだ?」
ミツオ「どういう意味ですか?」
孝則「娘に近づくな、ということだ。」
ミツオ「サトミさんは、父のことは関係ないと言ってくれました。僕はうれしかった。ですからこうやってお付き合いさせていただいてるんです。」

その時、家の中から好子とサトミが出て来た。外での孝則とミツオのやりとりを聞いてサトミは動揺した。

孝則「とにかく帰ってくれ・・・・帰れ!」
ミツオ「最低だ・・・あなたって人は・・・」
そう言い捨てると、ミツオは走り去ってしまった。

好子「あなたっ、そんな言い方なさらなくてもいいじゃありませんか!」
サトミ「お父さん、ひどい!」
孝則「あ、サトミ、ちょっと待て!」
サトミは泣きながら家を飛び出していった。

サトミは街の中を走り回った。
「ミツオさん、ごめんなさい、どこに行ったの・・・」
ミツオを探し回った・・・・しかし、ミツオはどこにも見当たらない。

一方、孝則と好子もサトミを探していた。
それからどのくらい時間が経ったのだろう、夕暮れが迫ってきた。
駅前にやって来たサトミは見覚えのある後ろ姿を見かけた。その人影は横断歩道を渡っていく。サトミは夢中で人影を追った。

サトミ「ミツオさん!ミツオさん!」
ミツオが振り向いた。サトミが横断歩道を走って渡ろうとしたその時である。信号無視の乗用車が飛び込んで来た!

キャー!!

(続く)
...2005/07/02(Sat) 23:34 ID:InmuCdmc    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
朔五郎さん

ずいぶん似ている人がいるんですね。
他にも似ている人がいないか調べたら、この人もいました

※○原さ○みさんに似ている人
1.古河ハルカ
 野球部マネージャー。アキ・マサミに可愛がられる。オッチョコチョイでヤカンをひっくり返したり、廊下でコケたりしていたら、今度は階段から落ちてしまった。
2.大島サトミ
 ハルカの主治医・瀬戸マサキの高校の後輩。高校時代は剣道部のグルーピーの一人でミツオと恋仲になる。これからの運命は?
3.谷沢シオリ
 ユイが1年生当時の吹奏楽部部長。
4.吉野静
 マサミがミライとともに四国の電車の中で会った少女。彼氏は岩手にいるらしい。
 
...2005/07/02(Sat) 23:49 ID:InmuCdmc    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
SATOさま
「柴ミチル」は《綾瀬グループ》に入りますよね(^^)

それにしても、ハルカとサトミの対面シーンは楽しみですね。

それにしても交通事故ですか・・・も、もしや二人は(謎)
うーむ、映画版セカチューで幼い日の律子が車にはねられるシーンや、映画版イマアイで澪が交通事故に遭うシーンにも繋がるような・・・今後の展開が楽しみです。
...2005/07/02(Sat) 23:57 ID:whSn2Anw    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
特別編・ロミオを探して〜14

ガチャーン!!

一瞬の出来事だった。ミツオとサトミにとって、その瞬間、時間が止まったようだった・・・
乗用車はサトミを跳ね飛ばして走り去った。そして、道路にはサトミが横たわったまま動かない・・・
ミツオは我に帰り、倒れているサトミの傍らに駆け寄った。そして・・・
ミツオ「サトミさん!サトミさん!サトミさん・・・」
呼びかけてもサトミは答えない。
ミツオ「助けてください!助けてください!」

ピーポーピーポー・・・
サトミは○○医大病院へ搬送され、直ちに緊急手術が行われることになった。
手術室の前でミツオはただ祈るしかなかった・・・
ミツオ「神様・・・僕のプラス分を・・・僕のプラス分をサトミさんにあげて下さい。僕はどうなっても構いません。彼女を、助けてください・・・」

知らせを受けた孝則と好子も病院へ駆けつけた。孝則はミツオの姿を見ると思わずツカミかかった。
孝則「貴様・・・娘に近づきさえしなければ、こんなことにはならなかったんだ!何もかも、お前のせいだぞ!」

その時、手術室のドアが開いた。出て来たのは、血液内科・松本朔太郎教授だった。

朔太郎「手術は順調に行われています。ただ・・・・」
固唾を呑む一同。
朔太郎「至急、輸血用の血液が必要です。どなたか、Rhマイナス・AB型の方はいらっしゃいませんか?」
孝則と好子は天を仰いだ。孝則の血液型はRhプラス・A型、好子の血液型はRhプラス・B型だったのである。これでは輸血が出来ない・・・
ミツオ「僕の血液を使ってください。Rhマイナス・AB型です。」
朔太郎「そうですか、お願い出来ますか?」
孝則「待て、君の世話にはならんよ。家族をバラバラにした相良の血が・・・娘をこんな目にあわせたお前の血が、娘の身体の中に入っていくなんて・・・私は・・・私は・・・そんなことを認めることは出来ん!」
好子「あなた!サトミの命がかかってるんですよ!あなたのメンツの方が大事なんですか?サトミが助からなくたっていいとおっしゃるんですか!あなた・・・サトミを・・・サトミを助けてください。」
好子は泣き崩れてしまった。
孝則「好子・・・」
好子「あなた・・・サトミを・・・(涙)」

好子の涙を見て孝則の心が動いた。
孝則「ミツオ君、すまん、今までのことは私が悪かった。このとおりだ。気が済むまで、私を殴ってくれ。そのかわり、サトミに君の血をやってくれ・・・サトミを助けてくれ・・・」

ボコッ!ミツオが孝則を殴り倒した。
ミツオ「これでよろしいですか?」
孝則「ああ、これでいい・・・娘をよろしく頼む!」
孝則はミツオに向かって土下座した。
ミツオ「では、行って来ます。」
好子「ミツオさん、お願い、娘を助けて!」

ミツオは朔太郎について輸血室へ入って行った。

(続く)


>「柴ミチル」は《綾瀬グループ》
朔五郎さま
そのとおりです。キョウコ・サトミときて、もう一人は「ハルカ」にしようと思ったのですが、古河ハルカがいるし、NYに行ってしまった綾瀬ハルカもいて、非常に紛らわしいので「ミチル」にしました。
...2005/07/04(Mon) 00:06 ID:w0R45aJ2    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
特別編・ロミオを探して〜15

知らせを受けたマサキ・キョウコ・ミチルも病院にやって来た。
マサキ「おばさん、サトミさんは・・・」
好子「今、ミツオさんが輸血してくださってるの。だから、大丈夫よ。ミツオさんがきっとサトミを助けてくれるから・・・」
ことの重大性にキョウコもミチルも沈痛な面持ちだった。

ミツオが戻ってきた。
孝則「ミツオ君、どうもありがとう。」
深々と頭を下げる孝則であった。
ミツオ「お礼には及びません。僕がサトミさんのために出来ることをやっただけですから。」
好子「ミツオさん、本当にありがとう。」
好子もミツオに頭を垂れた。

しばらくして手術室のドアが開いた。
朔太郎とともに、執刀医の国広富夫教授(外科)が出てきた。
国広医師「手術は成功しました。ただし、予断は許しません。意識が戻るかどうかはここ一両日がヤマです・・・」

残酷な知らせだった。一同の顔に落胆の色が広がった・・・

沈痛な表情のミツオにマサキが声をかけた。
マサキ「ミツオ、ご苦労さん。身体の方は大丈夫なのか?」
ミツオ「ちょっとフラつきますけど、一日寝れば大丈夫ですよ。」
マサキ「無理するな。明日の試合は替わりの奴に出てもらうよ。それより、サトミさんのそばについててやれ。」
(剣道部は翌日、大会を控えていたのである。)
ミツオ「先輩!僕は出ますよ。サトミさんは今、一生懸命、生きるために闘ってます。僕もサトミさんと一緒に闘いたいんです。僕が勝てば、サトミさんは元気になる・・・そう思って闘いたいんです。」
マサキ「お前、そこまでして・・・」
ミツオ「お願いします、先輩」
マサキ「わかった、明日は時間どおり来いよ。」
ミツオの気迫にマサキは押し切られた格好になった。
キョウコ「瀬戸さん、ミツオ君、あたしとミチルがサトミについてますから。だから、勝ってください。サトミのために。」
キョウコと一緒にミチルもうなずく。
好子「大事な試合の前の日に、駆けつけてくださったうえに、ミツオさんには輸血までしていただいて・・・頑張ってくださいね。サトミと一緒に応援します。」
マサキ「精一杯やってきます。今の僕たちがサトミさんのために出来ることは、これしかありませんから。そうだよな、ミツオ。」
ミツオ「はい。」

そして、マサキとミツオは病院をあとにした。


(続く)


「赤」「大映テレビ」の雰囲気を出すために敢えてアレンジした部分がございますので、何卒ご理解願います。
...2005/07/04(Mon) 00:08 ID:w0R45aJ2    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
ドラマ「がんばっていきまっしょい」を観たのですが、映像もなかなか綺麗で、キャストも好印象。結構いけそうな気がします。

で、本論です。
舞台は松山近郊で、みんな「愛媛の言葉」でしゃべってます。
セカチューの面々も、本当はあんな感じでしゃべってたんでしょうか?
「愛媛言葉」バージョンもちょっと観てみたいです(^^)
...2005/07/06(Wed) 00:00 ID:fW13KZ8M    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
香川編 〜 木庭子町のお正月(その14)

昼過ぎに家を出たミライとマサミは、高台に建ち、海を望む寺にやってきた。
年末の寺は静かで、今年最後の柔らかな陽光が溢れていた。
前と同じように、二人は佐久間家と「あのひと」の家の墓に手を合わせる。
ここに来るのはまだ二度目なのに、思わず「ただいま」と言いたくなるような優しい雰囲気が漂っていた。
「ねえ、サク」
「うん?」
「あのひとはここで眠ってるんだね」
「ああ」
「骨になってるんだよね。白い骨に」
「・・・うん」
「会ってみたい気もするな、ちょっと」
「おいおい」
「こう、白い粉を手にとってさ、サラサラ、サラサラって・・・そしてね《ただいま》って言ってみたい」
「ま、まさか盗むつもりじゃ・・・」
「しないわよ、そんなこと」
「そ、そうだよな」
ミライが引き攣った笑いを浮かべながら言った。
その時、背後から声が聞こえた。
「おまえたち、墓参りなんぞして感心だと思ってたら、よりによって骨を盗む相談か?」
二人が振り向くと住職のジョニーが苦笑いしながら立っていた。
「こんにちは、あとで本堂に顔を出すつもりだったんです」
ふと気が付くと、ジョニーの後ろに一人の老人が立っていた。
「こちらはな、この墓で眠っているひとのお父さんだ」
「えっ」
二人は慌てて、ぴょこんと頭を下げた。
「おお、君たちか・・・確かによく似ているな。あの二人が帰って来たようだ」
老人はふと遠いところを見る目になった。
「あいつ、またイタズラをしたようだな。しょうもない娘だ・・・ところで君たち、娘の骨の話をしていたようだが」
「あ、あれは冗談です・・・気になさらないでください」
老人は空を見上げ、次にマサミの目をじっと見ながら言った。
「会ってみるかい、娘に」
「え・・・」
「君さえよければ」
マサミは、しばらくの間考えていたが、やがて目を上げると、きっぱりと言った。
「はい、会わせて下さい」
老人とジョニーは、目を合わせてかすかに笑った。
ジョニーが小声で読経し、手を合わせた後、石室の蓋が開けられた。
「十何年振りかなあ、これを開けるのは」
老人が過去を振り返る。
「君そっくりの、娘の恋人だった男が突然尋ねて来て、骨を分けてくれっていうんだよ。理由を聞くとな、オーストラリアに持って行って撒くっていうんだよ」
遠くの海を見つめながら、老人は話し続ける。
「さらに、その理由を尋ねると彼は一本のテープを取り出した。そこに遺されていたのは間違いなく娘の声だった」
老人の目は涙で濡れていた。
「まさかオーストラリアに骨を撒いて欲しいなどと・・・それも父親の俺ではなく、彼だけに頼むなんて。あの時の淋しさは忘れられないね・・・」
やがて、ひとつの壷が取り出され、蓋がゆっくりと開けられた。
「これが・・・」
マサミは思わず言葉を失った。
ところどころに塊を残した白い粉。これがあの少女の現在の姿だった。
マサミは老人の顔を見た。
老人はゆっくりと頷いた。
マサミはしゃがみ込んで、指先に白い粉を取ると、左手の手のひらにそれを乗せた。
そしてそれをじっと見つめながら言った。
「ただいま」
決して感じることのない体温が、ほのかに感じられるような気がして、マサミは手のひらに神経を集中していた。
一度本堂に戻ったジョニーが、白い小さな磁器を持って来た。
「分けてもらうか?」
少しの間をおいて、マサミは頷いた。
磁器の中に少し粉を入れて、マサミは立ち上がった。
「私、銀のロケットを買って、この灰を入れます。それなら落としても割れないから。いっしょにいろんなところに行きます。渋谷とか、表参道とか、池袋とか」
「そうか。娘もきっと喜ぶだろう。娘はな、忘れられるのが恐いと言ってたらしい。でも君がいつもいっしょにいてくれれば、そんな心配もなくなるわけだ」
「これで年越しもいっしょにできる・・・」
マサミは満ち足りた気持ちで風を感じていた。

(続く)
...2005/07/08(Fri) 00:58 ID:.7rFTEWc    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
朔五郎さま
マサミと「あの人」の父親との対面がついに実現しましたね。宮浦の廣瀬家とともに、「病気」で亡くなった少女の父親を両方知っているとは・・・世の中狭いものなんですね。
ちなみにこのお父さんは、「H2」のひかりのお父さんと似ている方でしょうか?

>ハルカとサトミの対面シーン
ハルカにとってのサトミはマサミにとっての「あの人」に当たる人物だと考えております。サプライズな結末を考えておりますのでお楽しみに。

「ドラゴン桜」では、長澤まさみさんの母親役が美保純さんだそうです。「寅さん」映画のたこ社長の娘も母親をやる年頃になったんですね・・・

舞台の製作発表を観ました。宣伝スポットのバックは「かたちあるもの」でしたね。舞台の主題歌もこれで行くのか、それとも別の歌になるのでしょうか?佐藤めぐみさんは「H2」の頃に比べてホッソリした印象を受けました。
...2005/07/08(Fri) 20:20 ID:JpA.ZoF.    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
SATOさま
<ちなみにこのお父さんは、「H2」のひかりのお父さんと似ている方でしょうか?
はい(^^)

ところで、この中に出てくる寺は、朔五郎が別スレで「宮浦」として描いております伊予長浜にありまして、寺名を「瑞竜寺」といいます。
...2005/07/09(Sat) 20:10 ID:iexND0Qc    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
昨夜、「ドラゴン桜」を観ようと思って、PM10:00にテレビをつけたらまだ「金スマ」をやっていました。(野球中継で時間が繰り下がったため)タレントの大沢逸美さんとお母様との介護闘病記のコーナーがあったのですが、BGMに「朔と亜紀」が使われていました。内容自体も感動的なエピソードでした。


※「ドラゴン桜」では長澤まさみさんをはじめとして、1月〜3月までの木曜10時枠ドラマ(「H2」「優しい時間」)の出演者の方々を何名か再び見ることが出来て楽しかったです。
...2005/07/09(Sat) 21:38 ID:qDLH1sUY    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
西日本で大雨による被害が出ていると聞きました。
被害に遭われた方、不自由な思いをされている方、心よりお見舞い申し上げます。
...2005/07/10(Sun) 18:10 ID:4iybE5qQ    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
香川編 〜 木庭子町のお正月(その15)

年末の町は、年越しの最後の買い物をする人々で賑わっていた。
「スーパーに行けば買い物なんかすぐ終わっちゃうけど、せっかくだから商店街を歩いてみようか」
「うん、おもしろそう。私もこういうところで買い物するの大好き」
「そりゃ、よかった」
「ねえ、サク」
「ん?」
「私たち、やっぱり気が合うね」
「そ、そうだね」
「これって、やっぱり運命なのかな・・・」
「運命ねえ」
「そう、運命の赤い糸で結ばれてるのよ、きっと」
「赤い糸だと思ったら、実はミミズだったりして。そんでもって《赤いミミズ》とかいうドラマになったり・・・イテェ・・・」
「ちょっと、せっかく女心をときめかせていたのに、なんてこと言うのよ。なんかすごく傷ついた・・・サク、本当は私のこと愛してないでしょ」
「そ、そんなことないよ」
「私、愛されてないんだ・・・サクのお母さんに言いつけてやる」
「い、いや、それだけは」
「サクの家で泣いてやる」
「なあ、困らせるなよ、謝るからさあ・・・機嫌直してくれよ、頼むよ」
「じゃ、愛してるって言って」
「・・・愛してるよ」
「まだ物足りないなあ・・・今度はここにキスして」
マサミは自分の左頬を指差した。
「こ、ここで?ものすごく注目集めちゃうよ」
「いいじゃない、集めても」
「でもなあ」
「イヤなの?・・・わかった、泣いてやる」
「しょうがないなあ・・・」
サクは周囲の視線を感じながら、マサミの頬にキスをした。
マサミはうれしそうに笑うとミライの手を握った。
「ねえサク、私たちしあわせそうに見えるかな・・・」
「しあわせそうに見えるよ、とっても」
二人の背後で声がした。
「あ、三村先輩・・・いや、今は成宮先輩か」
「いいよ、三村で」
「あれ、証君、ずいぶん大きくなったね。もう小学校に行ってるの?」
「うん、一年生」
「そう・・・」
「佐久間くん、こちらの彼女は?」
「あ、大学の同期で・・・」
「佐久間未来の婚約者、長沢マサミです」
「あ、おいマサミ、婚約って・・・」
「違うの?」
「い、いや・・・でも」
「・・・泣いてやる」
「佐久間くん、もう勘弁して・・・笑い過ぎて涙が出ちゃうよ・・・」
「すみません、先輩」
「いいえ、どういたしまして。長沢さん、初めまして。佐久間くんと同じ高校を出た三村美衣(みむらみい)です。佐久間くんとはちょっと学年が離れてて、同じ時期に高校にいたことはないんですけどね」
「三村先輩もオレも映画同好会のOBなんだ。ちょうど同好会が始まって10年目の記念に自主映画を創ったんだ。ちょうどオレが2年の時だった」
「私もOBとして参加したの。佐久間君のお姉さんの役だったよね」
「はい」
「佐久間君の演技は凄かったわ・・・防波堤の上を走って行って、途中で転ぶ。そこで起き上がって叫ぶっていうシーンがあったけど、真に迫っていて、すごく感動した」
「ふーん、サク。私には黙ってたけど、ほんとは名優なんだ。これで立京大学の演劇部もレベルが上がるわね」
「あ、いや、演劇部はもうカンベンしてください・・・」
「あれ、私の相手役じゃ不満なのかな?」
「そういうわけじゃ・・・」
「あなたたち、ホントに仲がいいわね」
「そうだ、先輩。その・・・具合のほうはどうですか」
「おかげさまで、すっかり良くなったわ。あの時は佐久間君にも迷惑かけたわね。佐久間君に遊んでもらわなかったら、証には大きな心の傷が残ったかもしれない。あ、長沢さん、佐久間君が浪人生活を送っている頃、私、交通事故に遭って、一時記憶を失ってしまったの」
「先輩・・・」
「その事故に遭う直前に、私、映画を観てたの。そして、事故の時のショックで現実と物語の区別が付かなくなってしまって・・・私自身はミオ、夫はタクミ、この子はユウジだと思い込んでしまった。この子にしてみれば、母親が突然別の名前で自分に話しかけたり、大好きなイチゴを食べさせなっかたり、あげくの果てには雨の季節が終わったら、星に戻っていくと言ってみたり・・・かわいそうなことをしたわ。そんな時、佐久間君が証と遊んでくれて、ママはいろんなことをちょっと忘れちゃっただけなんだ、すぐに元に戻るよって言ってくれたの。助かったわ。佐久間君は私たちの恩人よ」
「そんな大したことじゃないです」
「変わってないわね、そんな謙虚なところ。なんだかとっても嬉しい。長沢さん、佐久間君はとても優しくて頼りになる人よ。一生いっしょにいられる人だと思うわ。だからいつまでも仲良くね」
「はい」
「先輩、東京にも遊びに来てください」
「ありがとう、じゃ元気でね」
「はい、先輩も」
親子は手を振ると、人ごみの中に消えて行った。
「ねえ、あんなふうに、何気なくしあわせそうなのって、いいよね」
「そうだね」
「なれるかな、私たちも」
「なれるよ、きっと」
町に夕暮れが迫り、ひとつふたつと灯りが点り始めた。
「買い物も済んだし、ちょっとお茶して帰ろうか」
「うん」
ミライとマサミは亜矢子から聞いた喫茶店の方へ歩いて行った。

(続く)
...2005/07/12(Tue) 19:51 ID:2G..k0tQ    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
特別編・ロミオを探して〜16

6月29日の夜が明けた。
昏睡状態を続けるサトミの傍らには孝則・好子がつきっきりだった。そして、キョウコとミチルも・・・皆一睡もしていないが、固唾をのんでサトミを見守っていた。

一方、試合会場にやってきたマサキとミツオは燃えていた。サトミのために何としても勝とう・・・特にミツオは前夜の輸血のために体調は最悪のはずなのにである。
そして、いよいよ、午前中の団体戦が始まった。

ふとミチルがつぶやいた。
「テレビ、つけようか。もうすぐ試合始まるよ。」
びっくりしてキョウコが答える。
キョウコ「サトミがこんなときにいいのかな、テレビなんか観てて・・・」
孝則「いや、サトミと一緒にみんなで観よう。ミツオ君を応援しようじゃないか。サトミだって、きっと応援してるさ、ミツオ君のことを。」

ミツオが先鋒・マサキが大将を務めるチームはさすがに強い。順当に勝ち上がり、決勝に進出した。
マサキ「ミツオ、わかってるな、ここまで来たら『優勝』の二文字しかないぞ。」
ミツオ「ええ、何としても。必ず勝ちます!」
マサキ「行って来い!」
ミツオは神がかったような技さばきで一本を取る!そして、大将のマサキが締めた。
団体戦優勝だ!マサキとミツオは抱き合って喜びを分かちあった。
マサキ「やったな、ミツオ!」
ミツオ「先輩・・・やりましたよ、サトミさんのために・・・」
マサキ「気を抜くなよ。午後は個人戦があるぞ。」

そして、病室ではキョウコとミチルが歓声をあげた。
ミチル「サトミ、わかる?ミツオさんたちが優勝だよ!」
ミツオたちの団体優勝を伝えるテレビ中継を孝則と好子も感慨深く見入っていた。

午後の個人戦が始まった。マサキもミツオもは順調に勝ち上がる。そして・・・
キョウコ「大変!こんなことって・・・こんなことってあるの?」

個人戦の決勝はマサキとミツオの対決となったのである。

マサキ「お前がどんな思いでここまで勝ちあがってきたか、よくわかる。だが、俺だって思いは同じだ。だから絶対に手加減はせんぞ。お前も遠慮なく向かって来い。」
ミツオ「望むところです。先輩だからって遠慮はしませんよ。必ず勝つつもりで行きますからね。」
マサキ「いい気合だ。行くぞ!」

ミチル「瀬戸さん、ミツオさん、どちらも負けないで・・・」

二人は竹刀を構えて向き合う。お互いに全く隙を見せない。無の境地に達した瞬間、ミツオが竹刀を振り上げた。
「ダァー!」
ミツオの気合に一瞬マサキがひるんだ。

バシッ!
ポトリ・・・
マサキの手から竹刀が落ちた。
「勝負あり!」
審判の手が高々と上がった。
ミツオの優勝が決まった。個人・団体の二冠を達成した瞬間だった。

マサキ「負けたよ。勝ちたいという気持ちがお前の方がまさっていた。」
ミツオ「先輩、病院へ行きましょう。サトミさんに優勝の報告をするために。」
マサキ「いや、お前一人で行け。サトミさんのために勝ちたかったんだろう?」

病室のテレビもミツオの優勝を伝えていた。
「ウーン・・・」
サトミがかすかに動いた。そしてうっすらと目を開く。その目には孝則、好子、キョウコ、ミチルの姿が映っていた。
孝則「サトミ、気がついたか?」
サトミ「ここは・・・お父さん?」
孝則「ミツオ君がくれた血のおかげで、お前は目を覚ますことができたんだよ。よかったな・・・」
好子は目頭を押さえる。そしてキョウコとミチルも抱き合いながら泣き出した。

そこへミツオがやって来た。
ミツオ「勝ったよ。」
サトミ「私、ミツオさんに助けていただいたんですね。」
ミツオ「そうだよ、僕のプラス分をたっぷり君にあげたから。」
サトミ「ありがとう、ミツオさん。」
孝則「ミツオ君、おめでとう、そしてありがとう・・・」
ミツオ「お父さん、本当によかったですね・・・」
孝則「うん、よかった・・・そうだ、しばらくサトミと二人で話すといい。」
そう言って孝則は、好子たちを促して病室の外へ出た。

サトミ「私、眠っている間に不思議な夢を見てました。」
ミツオ「どんな夢?」
サトミ「数年後のミツオさんにお会いしたんです。」
ミツオ「そう、数年後の僕はどうだった?それからサトミさんはどうだったの?」
サトミ「ミツオさんは医学部の学生さんになっていました。でも、本当に不思議なんですけど、私は高校生のままだったんです。どこか懐かしさがある港町の高校で、野球部のマネージャーをやってました。ある日、ケガをした選手の付き添いで病院へ行っていて、階段から落ちてしまったんです。その時に助けてくださったのがミツオさんだったんです。」
ミツオ「本当に不思議な夢だね。まるで、未来の僕を見に行ってきてくれたみたいだ。実はね、医者になることに決めたんだ。サトミさんのために一生懸命に手当てをして下さった先生方の姿を見て、僕も一人でも多くの大切な命を救いたい、そう考えたんだよ。」
サトミ「素敵ですね。私の夢が正夢になるといいですね。」
ミツオ「必ず正夢にしてみせる。僕は頑張るよ。だから、サトミさんも一生懸命元気になることを考えるんだよ。また歌の練習をしたいし、バイオリンの演奏を聴かせてもらいたいな。」
サトミ「はい」
二人はニッコリ微笑みあった。


(続く)
...2005/07/12(Tue) 23:44 ID:0mW303GM    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
朔五郎さま

わざとにサクを困らせるマサミは彼に甘えてるのかな?
マサミとミライの道中では、色々な人との出会いがあって楽しいです。今度はドラマの方の「いま〜」を思わせるキャラでしたね。二人が一緒に入った喫茶店ではまたサプライズな出会いがあるのでしょうか?楽しみにしています。

ちなみに以前私が投稿した話に出てくるミオは、大塚ちひろさんをイメージしていましたが、黒川智花さんでも合うなーと思いました。タクミも同様です。
(ということは、もしも、マサミが三村先輩の夫の成宮さんに会ったら、びっくりして皿を割ってしまうのでしょうか?)

私のほうも「いま、」っぽくしてみましたが、想定の範囲に入っていましたでしょうか?
...2005/07/13(Wed) 07:50 ID:G60d6/Cg    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎

SATOさま
マサミの言動は、完全に「甘え」で、愛情の表現のひとつです。
二人が東京で会っているときは、ここまでは甘えないと思います。でも、サクの家族の温かさに触れ、気分が舞い上がっているんですね。
甘い甘い将来を夢見る女心と思っていただきたいと思います。

「三村先輩」はたぶんこれっきり出てきませんので、あまり深く考えなかったのですが、マサミの知っている「タクミ君」は、どちらかというと「中村さん」に似ているのでは(笑)

喫茶店では、以前SATOさまより、リクエストのあった?人物に登場してもらおうかとも(謎)

朔五郎のほうは、ドラマの登場人物の名前を借りただけなので、SATOさまの作品のほうが、雰囲気は良く出ていると思いますよ(^^)
...2005/07/13(Wed) 23:27 ID:HjyoFwAM    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
ヒロシマについて

綾瀬はるかさんが、TBSの特番で築紫哲也氏とナビゲーターを務めると聞いて、彼女は広島出身だしなかなか興味深いと思っておりました。
すると実際に親戚の中に被爆された方がいらっしゃるということで、なるほどこれは適切な人選だと思いました。「世界の〜」で表現した生命の尊さというものに、リアルの世界でも迫ることを期待して、ぜひ観ようと思います。

と、思ってましたら、長澤まさみさんのほうも、ヒロシマを題材にしたドラマ(TBS)に出演するそうです。バレリーナを夢見ながら、原爆により18歳で生涯を終えてしまう少女の役で、役名は「真希(マキ)」
「亡くなって無になってしまうなんて。生きていたことを誰かに知って欲しい気持ちがきっとあったはずだと思います」
どう考えても「あの映画」と重なってしまいますよねえ(苦笑)
「タッチ」「ドラゴン桜」とようやく「死の匂い」から解放されつつあったのに、またそこに戻るかと、朔五郎はちょっと切ないです(もっとも、タッチでは和也が死んでしまいますが)
というわけで、こちらのほうは観たくないという気持ちも半分以上あります。

とか言いながら、こうなると、大林アキを広島に旅行させてみようかという「悪い虫」が疼き始めております。アキも間もなく大学に合格し、ケンとの交際についても達明の許しがもらえることになってますので(笑)
...2005/07/17(Sun) 10:12 ID:I.AUyRdY    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
朔五郎さま
よく考えると、このストーリーの中で遠出をしていないのはアキだけなんですね。
大学合格祝いで是非広島旅行をさせてあげてください。道中、いろいろハプニングがあるのか楽しみです。たとえば、広島へ向かう途中で立ち寄った神戸市内の「一の谷」でシズカさんと滝沢クンのカップルと出会うとか・・・(^^)


※「タッチ」の撮影は「H2」と同じ頃にやってたんでしたっけ?映画のサイト見てきたんですけど、野球場の裏の木々が枯れ木なんですよ。「H2」でもそうでしたが、夏のグランドのはずなのに、枯れ木に囲まれてて芝も黄色・・・というのが心配になってしまいました。
http://touch.yahoo.co.jp/
...2005/07/17(Sun) 20:51 ID:s/zu2lJM    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:にわかマニア
 アキの広島訪問の案内役は誰にしますか。「健三郎」も「ヒロシマ・ノート」が代表作の一つですから有力候補ですが,テレビのパロディーなら「こちらデスク」さん(今では「週刊金曜日」編集委員と呼んだ方が判り易いかも)という線もアリですね。
 いずれにせよ,ヒロシマに行くからには,被爆都市としての被害者の視点だけでなく,軍都(注)という加害者の視点も学んできて欲しいものです。
 それにしても,昨年,語り部で原爆詩人の栗原貞子さんが亡くなられたのは,返す返すも惜しい人を失ったものだと思います。

注)軍都・広島
@日清戦争の時には広島城に大本営が置かれた。
A大陸に出征する兵士たちは,全国から軍用列車で広島に運ばれ,宇品線を経由して宇品港から出航していった。
B呉軍港(鎮守府),江田島兵学校をはじめ,市内や周辺に多くの軍事施設や軍需工場が置かれ,大久野島ではハーグ陸戦規約等の戦時国際法で禁じられた無差別虐殺兵器である毒ガスの研究もなされていた。
C西部方面軍の司令部も広島に置かれた。朝鮮半島が38度線を境に南北に分断されたのは,もともとは,旧満州にあった関東軍と西部方面軍の管轄区域を38度線で分けたという旧日本軍の軍管区編成によるもの。
...2005/07/18(Mon) 18:11 ID:Qeu9/NxU    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
SATOさまへ
承知しました。いろいろなイベントを考えてみます。
とすると、やはり新幹線ですね。新神戸と西明石の中間くらいでタッキー氏が出現するわけですね(^^)

タッチの撮影は3月末から4月初め、埼玉県さいたま市で行われました。ちょうど桜が咲いていました。

にわかマニアさま
アキが平和への祈りを込めた絵本を創る以上「ヒロシマ」は避けて通れないと思い、企画してみました。
違う視点からの「広島」を提示して頂き、大きなヒントを得ることができました。
普段ふざけた文章を書いている朔五郎ですが「ヒロシマ」を粗略に扱うことは日本人として許されないと思います。創作を始める前に、自分なりに勉強してみたいと思います。
なお「健三郎」はマネージャー兼ボディーガードとして、某キャスターは地元の長老?として出て頂くよう交渉中であります(笑)
...2005/07/18(Mon) 19:46 ID:i/DIPMY6    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
香川編 〜 木庭子町のお正月(その16)

商店街に新規開店した喫茶店。
一人の男がマスターと話をしていた。
「マスター、今年も終わりだね」
「ええ。あれ、先生、今どこに赴任しているんでしたっけ」
「静岡だよ。静岡の伊豆」
マスターは苦笑いしながら言った。
「しかし、よりによって・・・皮肉なものですなあ」
「まったく、敵の真っ只中にいるような気分だよ」
その男、阿部知盛は高校の古典の教師だった。屋島の古戦場に程近い木庭子町に生まれ育った阿部は、幼い頃から「平家物語」の世界に興味を持ち、平家の「滅びの美」に対して深い感銘を感じるようになった。
大学の日本文学科に進んだ阿部は当然のことながら「平家物語」の研究に没頭し、やがて古典の教師となった。そして、定年退職した谷田部教諭の後に宮浦高校に赴任した。
「しかし、生徒も保護者も受験だ受験だと大騒ぎして・・・いや、今の二年生に成績抜群の女の子がいてね、久しぶりに東大現役合格者が出るんじゃないかって学校中がザワザワしてるんだよ。オレに言わせりゃ東大なんてバカが行きゃいいところでね・・・日本人だったら古典の世界の雅(みやび)というものを深く味わうほうが余程大事だと思うけどね」
マスターは静かな笑みを浮かべながら聞いていた。
「まあ、オレがこんなこと言うと、そんな文弱に流れているから平家は滅亡したんだとか皮肉を言われちまうんだけど・・・」
「それはひどいことを・・・」
「ははは・・・ところでマスター、お嬢さんがいるんだって?」
「ええ。おかげさまで、ついこの間、となりに住んでた幼馴染のタツヤ君と結婚しましてね、今は高松で幸せに暮らしていますよ」
「そうかい、それは良かったね」

ミライとマサミは一軒の喫茶店の前にやって来た。
「あ、ここだね」
「うん」
「Coffee南風、か」
二人は扉を開けて中に入った。
「いらっしゃい」
「ここでいい?」
「うん」
二人は奥の方のテーブル席に座った。
その時、カウンター席に座っていた男が二人の方をチラリと見て、おや、という顔をしたのに二人は気付かなかった。
「なんか、可愛い感じのお店だね」
「うん」
マスターが注文を聞きに来た。
「カフェモカ2つ」
「はい」
「ねえサク、このお店すごく懐かしいような雰囲気でステキなんだけど・・・」
「だけど?」
「マスター、あんまりシブくないよね・・・」
「そうだね、どっちかといえば優しい感じだね。お袋、間違えたのかな・・・」

オン、オンオン、オン・・・

犬の鳴く声がする。
「ほら、パンチどうした。そうか、腹が減ったか・・・」

オン!

「はは、ちょっと待ってろ」
マスターが餌をやると、犬はようやくおとなしくなった。
「はい、お待たせしました」
マスターはテーブルにカップを置きながら言った。
「お嬢さんはどことなくウチの娘と似てましてね、初めて会ったような気がしませんよ」
「私もこのお店、とっても懐かしい感じがします。初めてなのに」
「そうですか、それは良かった。ところでお二人はこの町の方ですか?」
「いえ、彼はここの出身ですけど、私は静岡の方です」
「ほう、静岡・・・」
カウンター席の男が振り返った。
「ええ、伊豆の宮浦という町です」
「やっぱりそうか・・・ナオミ、君、2年B組の長谷部ナオミだろ?まさか、こんなところで・・・あれ、君の彼氏は確か超有名進学校の竜桜高校に通ってるんじゃなかったのか?」
「は?」
「とぼけるなよ、オレは担任じゃないけど君のことは知っているぞ・・・なにしろ東大一直線だもんなあ・・・宮浦高校で君を知らないものなんかいないさ」
「あの・・・もしかして古典の阿部先生ですか?」
「何をいまさら・・・」
「あのう、先生」
「なんだ」
「私、ナオミじゃなくてマサミです」
「えっ・・・」
「私、今年の春、宮浦高校を卒業した長沢マサミです・・・」

話に聞き入っていたマスターは静かに言った。
「それにしても、すごい偶然ですなあ」
「全くだよ・・・あ、そこの彼氏、君も俺と同じように将来、宮浦に住むことになったりしてな、冗談だよ・・・ハハハ」
しかしミライは自分の運命をなんとなく読み取ることができた。
「長沢君、宮浦に帰った時は母校にも寄ってくれ」
「はい。先生も、いつまでもお変わりなく」
「そいつは無理だな」
「どうしてですか?」
「だって言うだろ・・・祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり、って」
「先生・・・先生はホントに平家マニアですね」
「そうか?・・・ハハハハハ」

「ただいま」
「お帰り、喫茶店に寄ってきたかい?」
「うん。でも・・・」
「でも?」
「マスター、全然シブくなかったよ」
「あれ、おかしいねえ・・・《法皇茶房》に入ったかい?」
「えっ?」
「あそこのマスターの後白河さんと奥さん、すごく渋いと思ったんだけどねえ・・・」

(続く)
...2005/07/18(Mon) 23:38 ID:bnTxlF/Q    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:にわかマニア
 「Coffee南風」と「法皇茶房」
 やはり,中納言知盛は「日本一の大天狗」の店は避けてしまうのですね。だとすると,伊予大洲編に登場の「鎌倉殿」や「財前君」にも敬遠されてしまいそうですね。
 まさか,法皇茶房の入口には天狗のお面が飾ってあるとか?
 
...2005/07/19(Tue) 10:42 ID:DV0xRJyE    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
おまけのコーナーです


2017年12月20日の新聞芸能欄より

(見出し)岩丸秋彦氏、時代劇を初プロデュース

人気テレビドラマの制作で定評のある岩丸秋彦プロデューサーが、時代劇(制作・DBS)に初挑戦することになった。
織田信長の正室・濃姫が供の二人(介さん、朔さん)を連れて領内を巡回し、悪人達を懲らしめるという痛快時代劇コメディー。
濃姫役には成長著しい真島ミチル、その夫・信長役に市原豪など、フレッシュなキャストが注目される。
年明け早々、伊豆地方の小さな港町でのロケでクランクインの予定。
なお、すでに制作発表されていた「12人家族のホームドラマ」について岩丸プロデューサーは「企画は中止になった」と答えた。

注)DBS:大東京放送
...2005/07/19(Tue) 23:31 ID:ZVH3Qls.    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
にわかマニアさま

法皇茶房には用心深い「知盛」「尼将軍」「鎌倉殿」たちは入らないでしょうが、お人よしで純粋な「遮那王」あたりが客になっているかもしれません(笑)
...2005/07/19(Tue) 23:38 ID:ZVH3Qls.    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
香川編 〜 木庭子町のお正月(その17)

大晦日、今年最後の夕陽が色褪せて、いよいよ2017年も終わりに近づいた。
佐久間家では順番に入浴したり、軽い夕食を取ったりして年越しの時を待っている。
そして夜8時、なんのかんの言っても、やっぱり一家で紅白歌合戦を観始めた。
「あ、NEWSだ。山下クン、かっこいい・・・」
「ちぇ、やっぱりジャニーズ系がいいのか・・・なんか気にいらねえ」
「妬かない、妬かない・・・私の心が最後に帰るのはサクの胸だよ」
「なんか、誤魔化されてるような・・・」
「フフッ、あ、嵐・・・桜井さん、ステキ・・・」
「あれ、ニノじゃなかったの?」
「うん、良く見たら桜井さんの方が」
「そんなもんかねえ・・・」
ミライはため息をついた。
「マサミさん、みかん食べない?」
「あ、いただきます。あ、甘くて美味しい」
「お、おお、ミスチルだ。《未来》いい曲だねえ。またこの曲のプロモーションビデオに出てくる女の子がかわいい・・・イテェ」
「ちょっと、その女の子ってあのハルカに似てる子でしょ?何よ、ホントは自分がハルカと駆け落ちしたかったんじゃないの?」
「そんなことはないよ・・・大体、自分だってヤマシタだのサクライだの・・・」
「お母さん、ミライ君は私以外の女の子にも気があるんです。愛されてないんです、私」
「ミライ、マサミさんに謝りなさい」
「え、どうして一方的にオレだけが・・・」
「いいから謝りなさい」
「ちぇ・・・ゴメンなさい」
自分の母親の心まで完璧に掴んでしまったマサミには、どうやっても勝ち目がないことをミライは悟らずにはいられなかった。
「マサミさんが来てくれて、今年は本当に楽しいね。でも、マサミさんのご両親は許して下さってるの?」
「はい。この間ミライ君が私の実家まで来てくれて、ちゃんと話してくれたので」
「そうなの・・・でも、ご両親は淋しい思いをされてるんじゃ・・・」
「毎年、大晦日から親戚一同、本家筋の家に集まって宴会になるんです。だから特に淋しいことはないと思いますけど」
「あら、でもそれじゃ今頃、マサミさんのことが話題になってるわね」
「はい、父もその場で親戚みんなに報告すると言ってました」
「まあ、それは大変」
マサミはミライの方をチラリと見てから言った。
「だから、これで私が捨てられたりしたらタダでは済まないと思います」
ミライは背中に冷たいものが走るのを感じた。
「大丈夫よ、マサミさん。そんなこと私だって許しやしないから」
ミライは俯きながら冷や汗をかいていた。
亜矢子は柔らかな笑みを浮かべ、マサミに言った。
「マサミさん、ご両親が淋しいのを我慢して、ここに来るのを許して下さった、その気持ちを考えたことがある?」
「それは・・・やはり私の将来の幸せを考えて・・・」
「・・・それはね、親の方が先に死んでしまうからなのよ。親はね、どんなに子供のことを愛していても、その一生を最後まで見届けることはできないの。自分がいなくなった後、子供がどうなるか心配で心配で・・・だから、信頼できる人に自分の子供の一生を託すのよ。うちのお父さんや私も同じ。ミライのことが心配だから、マサミさんと一緒に生きて欲しいと願ってるの」
「お母さん、そんな、死んでしまうなんて・・・」
「先に生まれたものが先に死ぬ。子供は親の最期を看取って、お葬式を出す。それが一番自然で幸せなことなのよ。もし、その順番が逆になったりしたら大変よ。親として、それ以上に悲しいことはないわ」
マサミは脳裏にある顔を思い浮かべる。
「ところでマサミさん。うちの息子に望むことがあるとすれば、それはどんなこと?」
おどおどした目で、ちらりとマサミを見るミライ。
「ミライ君には前にも話しましたけれど、望むことはたった二つです」
マサミはきっぱりと言った。
「私より一日でも長く生きて欲しい。そうすれば、私が生まれてから死ぬまで、ミライ君がいなかった日は一日だってなかったことになります。そうやって、私の一生のすべてを包んで欲しい。それが一つ」
亜矢子が頷くのを見てマサミは続けた。
「私、不思議なことに、若くして亡くなった女性の話を続けて聞いてしまったんです。彼女たちは二人とも、最期の時、愛する男性は傍にいなかったと聞いています」
マサミはミライを見ながら話し続ける。
「しかも、最期の時、会うのを拒否したという話も聞きました。その気持ちもわかるような気がします。でも、私はそんなに強くなれない。きっと、淋しくて不安だと思うんです。だから、私の最期の時はミライ君に手を握っていて欲しい。最後の最後まで私と一緒にいて欲しいんです。それが二つめです」
「経済的なこととかは?」
「私、そういうことはノンビリ考えるほうなので・・・二人とも元気で働ければなんとか生活はできると思います」
亜矢子は微笑みながら言った。
「あんまり無責任なことは言えないけど、あなたたちはとても相性がいいような気がするわ。お互いに、このまま素直に接していれば幸せになれそうな気がする。出会ってから、まだあまり日にちは経っていないけど、こういうことって付き合った長さとか年齢とかだけじゃ量れないものがあるからね。マサミさんのご両親も同じように思ったんだろうね、きっと」
亜矢子はちょっと首を傾げながら続ける。
「それにしても不思議な出会いだねえ。運命の糸が繋がっていたのか・・・それとも神様か誰かの思いがあなたたちを意図的に結び付けたのか・・・」
マサミは自分に言い聞かせるように言う。
「その両方だと思います」

(続く)
...2005/07/22(Fri) 01:32 ID:AUZ51T2M    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
SATOさま
新たな物語の展開、期待しております(^^)
...2005/07/22(Fri) 01:44 ID:niZjhlcc    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:たー坊
朔五郎様
お疲れ様です。
いい正月を迎えそうな佐久間家+マサミには、とても微笑ましい気持ちを抱かせてもらいました。
それにしても、マサミの人身掌握術は恐るべし・・・。ミライにはなんというか・・・かける言葉が見つからないです。それでも心地よく尻に敷かれているのでしょうね。次回も楽しみにしております。

SATO様
ヒロとアツシは、ハルカの入浴シーンを見れずに残念?なんでしょうか?阿部先生がどこに連れて行くのか楽しみにしております。
...2005/07/22(Fri) 15:34 ID:hFmO/2f6    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
たー坊さま

ご感想ありがとうございます。
マサミは確かに賢い女の子です。が、今の時点では亜矢子のほうが役者が上だと思います。
このような場合、マサミに味方して息子を叱っておいたほうが結局はうまくいく、そういうことが分かってる人なんです。ま、亜矢子もマサミの「素質」を見抜いていて、可愛いと思っているからこそ、こんなことをしてるんですけど・
4年後(2022年)二人は結婚しますけど、マサミは亜矢子からもっと多くのことを吸収して、女性としても妻としても魅力的になっていくでしょう(^^)

それにしても、最初はアンチヒロインとして登場し、高校卒業と同時に消え去る予定だったマサミが、ここまで「成長」してしまうとは・・・たぶん、朔五郎が一番驚いています(^^;;;
もう完全に一人歩きしていまい、作者の一人の私でさえ彼女を止めることはできなくなってしまったような気持ちがします。
本来のヒロイン・大林アキが浪人生活で身動きが取れない間、本当に良く頑張ってくれましたが、まもなくアキが本格的に復帰してきますので、マサミには大好きな表参道やお台場でデートを楽しんだり、群馬や静岡の温泉でノンビリしたり、プライベートな時間を楽しんで欲しいと思っています(^^)
...2005/07/23(Sat) 05:41 ID:SogL8S42    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
短編「いざ、旗あげ!」

2017年4月
ハルカたちは2年生に進級した。クラス替えが行われ、ハルカ・ヒロ・アツシは同じ2年A組となった。そして、クラス担任になったのは阿部知盛先生(古典担当)である。

キーン・コーン・カーン!
阿部先生「これでホームルームを終わる。」
クラス委員「起立!礼!」

阿部先生「あ、久仁見・野田・古河、ちょっと付き合え。」
アツシ「えー、今日は折角の練習休みなのに、何でですか?」
阿部「どうせ、することないんだろう?お前たち、野球部の主力メンバーにいいもの見せてやる。」
ハルカ「いいもの?」
ヒロ「何ですか、それ?」
阿部「いいから、来い」

ブゥー・・・阿部先生はマイカーにハルカたち3人を乗せてドライブとしゃれ込んだ。行き先は・・・

自動車は海岸を離れ、山あいの道へ入って行った。道路標識には「修善寺」の文字が見える。
ヒロ「修善寺といえば、温泉だが」
アツシ「先生、温泉に入れてくれるんですか?あ〜すっきり疲れを取りたいな〜♪」
ハルカ「やだ、あたしはいやですよ、女の子一人で入ってるところを覗くつもりなんでしょっ!」
阿部「ははは・・心配するな、古河。行き先は修善寺よりもっと向こうだ。」

自動車は修善寺を過ぎ、山間部から再び平地に入った。周囲は田園地帯・・・・そして、とある大きな駅前にやって来た。

阿部「よし、みんな降りろ。」
ヒロ「先生、ここからどこへ?」
ハルカ「電車に乗るんですか?」
阿部「いや、歩きだ。」
アツシ「えー、せっかくの練習休みなんだから、ゆっくり休みたいですよ・・・」
阿部「すぐそこだ。普段鍛えてるんだから、軽いもんだ。さあ、行こう。」

一行は田園地帯を歩いていく。いったいどこまで行くのだろうか?

ハルカ「先生、すぐそこって、どこまで行くんですか?もう足が棒みたいになって歩けない・・・」
阿部「昔の人間は、何日もかけて関東と京都の間を行き来してたんだ。それに比べて現代人の何とヤワになったことよ。このくらい、何ともない距離のはずなんだが・・・」
ハルカ「そんなこと言ったって、昔の人と今の私たちとは違うんです。もう勘弁して下さい(泣き声)」
阿部「それならおぶってやろうか?」
ハルカ「あ、いえ・・・」

そして、しばし無言の行列が続き・・・

阿部「着いたぞ。」

そこは整備された公園だった。

ヒロ「先生、ここは?」
阿部「『蛭が小島』。源頼朝の流刑地だ。平清盛の温情で命を助けられて、14歳で流されてから20年間ここで過ごしたんだ。頼朝は、ここで無意味に20年間を過ごしたわけじゃない。間者を使って京の情勢をツブサに観察していて、源氏旗揚げの機会をじっと待っていたんだ。」
ハルカ「でも、先生は『平家物語』が専門ではないのですか?」
阿部「ああ、そうだ。俺はずっと四国で教師をやっていたんだが、こちらの学校の古文の先生が定年退職するというんで、後任を探しててね。前任が『源氏物語』だから、後任は『平家物語』がいいだろうというので、声がかかったわけだ。随分迷惑な話だと思ったがね。」
アツシ「なんか、先生が島流しにあったみたいですね。」
阿部「ずっと『平家』でやってきたから、こちらに赴任するときは一の谷で生け捕りにされて鎌倉へ護送された平重衡の気分だったよ。でもな、こちらに来たからには、源氏の拠点を色々見てみたい、どうやって歴史の表舞台に現われて、平家に取って替わったのか見てみたい、今はそう思っているよ。」
ヒロ「へぇー(感心した表情)」
阿部「どうしてお前たちをここへ連れて来たかわかるか?」
ハルカ・ヒロ・アツシ「?」
阿部「源頼朝が旗揚げして、鎌倉幕府を開くまでにいたる全ての原点がここなんだ。弱小と言われたお前たち野球部もここから甲子園を目指せ。頼朝と同じ『蛭が小島』を野球部の旗揚げの地にするんだ。」
アツシ「先生、すごくいいセンスしてますね。何かその気になってきましたよ。」
阿部「なら、勝ちどきをあげるぞ!」

エイ、エイ、オー!エイ、エイ、オー!

ハルカ「先生。ここで旗揚げをやったわたしたちが、もしも源氏一門だとしたら、誰が頼朝になると思います?」
阿部「そうだな、全体をまとめるという点では、キャッチャーの野田がいいんじゃないか?」
アツシ「え、俺が鎌倉殿になるんですか?すげー」
阿部「それから、ピッチャーの久仁見、試合を動かすという意味ではお前は義経だな。」
ヒロ「俺、牛若丸みたいに身軽じゃないですよ。」
阿部「マウンドで相手バッターを幻惑しろ。」
アツシ「おい、ヒロ、お前が義経だったら俺の弟ということになるよな。鎌倉殿は絶対だから、俺のサインには首ふるなよ」
ヒロ「わかりました、兄上。でも間違ったサインには物申しますぞ。」
ハルカ「あの・・・わたしは?」
阿部「決まってるだろう、古河は静だ。」
ハルカ「わたしが劇団で静を演じてたのご存知だったんですか?」
阿部「もちろん知ってるさ。劇団から頼まれて、脚本書いたのはこの俺だぞ。」
ハルカ「そうとも知らずに、失礼しました。」
阿部「ははは・・・いいよ、古河の演じた静は見事だったぞ。」
ハルカ「ありがとうございます。(ヒロに向かって)ご武運、お祈りいたします。」
阿部「さあ、帰ろう。」

そして帰り道、一行は修善寺で日帰り湯に入ったのでした。

(男湯)
阿部「先にあがってるぞ。お前らもノボセルなよ。」
アツシ「ヒロ、隣の女湯にはハルカちゃんが入ってるんだよな・・・」
ヒロ「そうだよな・・・」
アツシ「ハルカちゃんの湯浴み姿、色っぽいかな・・・」
ヒロ「あんまり大きな声で言うなよ。古河に聞かれたら後で恐いぞ。」

バシャ!!ヒロとアツシにお湯がかけられた

ハルカの声「聞こえてますよ。久仁見くんと野田くんは明日、グランド10週してもらいますからね。」
ヒロ・アツシ「すみませーん。それだけはお慈悲を・・・」
ハルカの声「ダメデス!」

FIN
...2005/07/24(Sun) 00:40 ID:xr0N0P5s    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
たー坊さま
ということで、ご懸念(?)どおり、残念な結果になってしまいました。

朔五郎さま
本当に、マサミは立派に成長しましたね。しかし、そんなマサミを見抜いて一芝居うつミライの母・亜矢子はもっと素晴らしい女性なんですね。

私事ですが、8月末に国家試験を受けるため、投稿のペースがダウンしそうです。(書きかけのユイ編・ハルカ&サトミ編については、モデルにしている「ファイト」「いま、会いにゆきます」を観ながらネタをじっくり仕入れようと思います。)
...2005/07/24(Sun) 09:07 ID:x2oTAGb6    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:にわかマニア
 SATO様
 案内役が中納言知盛で,宮浦(この物語では松崎でしたね)から修善寺方面に向かった更にその先ということは,ひょっとしてと思っていたら,やはり行先は韮山の頼朝流刑地だったのですね。
 韮山と言えば,石丸さんの出身校のあるところで,石丸さんも通ったタコ焼き屋(ドラマの元祖)もありますから,選手たちにも時折,食べさせてやりませんか。

 4月に「夢島」を訪ねたところ,勝山駅の案内版に石橋山の合戦で破れた頼朝一行が伊豆を逃れ,再起を期して上陸した場所というのも出ていました。宮浦の野球部も,県内の強豪に負かされた後,千葉に練習試合のため遠征するのでしょうか。
 一つ気がかりなのは,散り際の美学にこだわる知盛先生だけに,序盤で大差がついたら,「見るべき程のことは見つ。今は潔く」と審判に自らコールドゲームなり没収試合を願い出るのではないかということなのですが・・・
 でも,ドラマ性という意味では,倉敷−報徳(61年),大社−習志野(76年),久慈−徳島(93年)といった世紀の大逆転シーンも見てみたいような・・・

 末筆ながら,国家試験のご健闘をお祈り申し上げます。
...2005/07/24(Sun) 14:09 ID:/hakvl5E    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
おまけのコーナーです

2018年1月8日。
新しい春を迎えた宮浦の海。
防砂林の松の木に囲まれた、小料理屋「きょうこ」では宮浦高校の先生たちが新年会を行っていた。
まずは型どおり、校長先生の挨拶から始まる。
「あー、皆さん。明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします・・・」
しばらくは、眠くなるような話が続いたが、やがて、お屠蘇気分も吹っ飛ぶような衝撃的な発言が飛び出した。
「・・・というわけで、わが宮浦高校も近年、隣町の松崎に新設された竜桜高校に押され、地元での評価も厳しくなってきております。しかし幸いにも、今年の2年生の中には、長谷部ナオミを初め、優秀な生徒が何人かおりまして・・・」
この店のママ・長谷部京子の娘・ナオミは、いきなり名指しされたので驚きの表情を見せた。
「・・・そこで、わが宮浦高校でも5名の少数精鋭による特別進学クラスを編成することに致しました。その5名は、長谷部ナオミ、高田繭子、菊川麗、保利江紋次郎、それに博士太郎とします。本来なら、新学年度の4月からスタートするのが妥当と思いますが、一日も早い方が効果的と思われるため、来週早々クラス替えを行います」
阿部が慌てた口ぶりで詰め寄った。
「こ、校長先生、そんな突然に・・・それは受験も大事でしょうが・・・」
「《古典の世界の雅(みやび)に触れ豊かな感性を養う》ですか?もう聞き飽きましたよ、阿部先生。今の世の中《東大に非ずんば大学に非ず》なんですよ」
「し、しかし校長・・・」
「今度は《奢れる者久しからず、ただ春の夜の夢の如し》ですか?いまだかつて東大が滅亡したという話は聞いたことがありませんなあ」
阿部のジャケットの裾を引っ張りながら、大沢が止めた。
「阿部先生、無駄だから止めたほうがいいですよ。気持ちはわかりますけど・・・」
元々、宮浦高校はノビノビとした校風が伝統だった。しかし、現在の校長・北条時正が、世間の評判というものに人一倍こだわる性格だったため、校内の空気が微妙に変わってきていた。
「そこで特別進学クラスの担任ですが、どなたか立候補される方は?」
教師たちは慌てて目を伏せた。
「いらっしゃらないようなので、中井先生・・・」
北条校長が娘婿の中井を指名しようとした時だった。
「ぼくがやりましょう」
一人の教師が手を挙げた。
「ふ、福山先生・・・」
一同はあまりの意外さに言葉を失った。
福山雅春は音楽の教師だった。声楽を得意とし、甘いマスクと歌声は特に女生徒たちに人気があった。
「他にやりたい方、いないんでしょ?だったら僕がやりますよ」
「せ、先生・・・学園祭のライブの責任者とは違うんですよ・・・」
「わかってます」
「それなら、なぜ・・・」
「受験勉強なんて音楽と一緒です。僕が彼らにそのことを教えてやりますよ」
一同は半信半疑の表情で福山を見つめた。
...2005/07/26(Tue) 02:26 ID:aQQ2WLwo    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
SATOさま
国家試験の受験、合格を祈っております。

それにしても「修善寺の先」が出てきたので、いきなり鎌倉に攻め込むかと思いました(苦笑)
...2005/07/26(Tue) 02:39 ID:aQQ2WLwo    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
にわかマニアさま
朔五郎さま

励ましのお言葉ありがとうございます。今回の「旗揚げ編」は、私自身、そして同じ環境にあるグーテンベルクさまに向けた激励メッセージのつもりで投稿させていただきました。

にわかマニアさま
強豪校にコテンパンにやられた宮浦野球部が千葉遠征・・・楽しいアイデアありがとうございます。今後の参考にさせていただきます。

朔五郎さま
北条校長・特進クラスの福山先生とは、アッと驚くサプライズ人事でした。
ただ、中井先生は想定の範囲でした。阿部先生が古典なら、中井先生は日本史担当で鎌倉時代にメチャクチャ強いとか・・・学校内で阿部先生と源平合戦を繰り広げるのでしょうか(^^)

※私事ですが、鎌倉時代が好きで、永井路子さんの著作をはじめとして、関係の書物を読みあさっておりました。なので、平家よりも源氏のほうがよく分かります。
(蛭が小島で語った阿部先生の話は中井先生から教わった内容ということにして下さい)
源氏も磐石だったのは頼朝一代だけで、後は北条氏に乗っ取られる形で、二代頼家・三代実朝が暗殺されて滅んでしまうんですよね。平家も清盛一代だけで、あとは落日のごとく滅亡に向かいましたが、歴史は繰り返すのでしょうか?
※鎌倉幕府で権勢を誇った北条氏も源氏の血を引く足利尊氏・新田義貞に倒されています。因縁深いものを感じます。
...2005/07/26(Tue) 19:33 ID:RsUG9xV2    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:にわかマニア
>鎌倉時代が好きで、永井路子さんの著作をはじめとして、関係の書物を読みあさっておりました。

 永井路子さんですか。私も好きな作家の一人です。
 そう言えば,79年の大河で尼将軍と鎌倉殿を扱った「草燃える」も永井さんでしたね。

>北条氏も源氏の血を引く足利尊氏・新田義貞に倒されています。

 ということもあって,戦国時代には源平が交代で権力を握るという俗説が生まれたようで,織田信長は平家を名乗っていましたね。豊臣秀吉は藤原家を名乗った(藤原家と養子縁組をした)ので別として,徳川家康は源氏を名乗り,歴代徳川将軍家は将軍就任の際に右大臣(いきなり左大臣からの人もいましたが)・源氏棟梁に任じられていました。 
...2005/07/29(Fri) 08:41 ID:O1GNE53U    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
山辺の涙 〜宮浦の春(プロローグ)

女優・真島ミチルは、穏やかな、早春の朝の海を眺めていた。
ここ宮浦には昨夜遅くの入りとなった。いよいよ今日からロケが始まる。初めての時代劇に緊張が高まっていた。
「でも不思議・・・」
ミチルはつぶやく。
「ここ・・・堤防の上に来るとすごく落ち着く。そしてなんだか懐かしい。どうしてだろう、初めて来たのに」
案外、前世ではここで暮らしてたのかも、なーんてバカなこと考えたりして、と心の中でペロリと舌を出す。
前回のロケは山村だったからなあ、やっぱり海辺の方がいいわ。
しかしミチルは身辺に危険が迫っていることに気付いていなかった。
漁から戻り、船の上で一升ビンを抱えている男がいる。その血走った目に堤防の上のミチルの姿が映った。
「ほう、ベッピンさんじゃ」
その男、瀬田政樹はニヤリと笑うと音もなくミチルに近づいて行った。
ミチルが振り返った時、瀬田はすぐ後ろに来ていた。
「へへへ」
瀬田がミチルに絡もうとした時、下から足を引っ張られた。
「あ、て、てめえ、離せ・・・離せって」
ミチルがすかさず大声でさけぶ。
「たすけてくださーい。誰か警察を呼んで・・・」
「け、警察?冗談じゃねえ・・・お、おいてめえ、覚えてろよ」
瀬田は転げるように逃げて行った。
瀬田の足を引っ張った男・山辺孝之はごそごそと堤防の上に這い上がった。
伸ばしかけた髪、緑色のウインドブレーカー、そして銀縁のメガネ。典型的なアキバ系ファッションである。
「ありがとうございました、助けて頂いて」
「い、い、い、い、いえ・・・ああ、あの・・・あれ何か落としたんですか?」
ミチルはテトラポットの上あたりをしきりに見ていたがやがて笑みを浮かべた。
「見つけた」
「あ、あったんですね、良かった」
ミチルは孝之の目を見つめながら微笑んだ。
その笑顔の眩しさに思わず目を伏せる孝之。
「これ、お礼です」
ミチルが右手を差し出す。
「は、はい。どうも・・・」
何気なく手を差し出した孝之は、次の瞬間悲鳴を上げた。
「う、う、う、う、うわぁーー」
ミチルはあまりに大きなリアクションに驚く。
「ぼ、ぼ、ぼ、ぼくは生きたフナムシは大嫌いなんです。フィ、フィギアなら全然平気なんですけど」
「ごめんなさい、じゃ、今度は本当のお礼」
「ま、またガムのおもちゃでパチンというやつじゃ・・・」
「違います、はい」
「あ、ああああ、どうも」
ミチルが手渡したのは、おしゃれな感じのキーホルダーだった。
「大した物じゃないんですけど・・・」
「あ、あ、あ、ああ、いえ、こんな気を遣って頂いて」
「DBSのスタッフの方ですよね」
「は、は、は、は、はい。7番目のAD(アシスタントディレクター)の山辺孝之です。みんなからは《べーやん》と呼ばれてます」
「そうですか」
「こここんな、主演女優の方とお話ができるなんて・・・うれしいです」
「いいえ、これからよろしくお願いしますね。それじゃ、今日は本当にありがとうございました」
ミチルはプリンセスホテルの方へ歩き出そうとした。
しかし、ふと立ち止まるとバッグの中から手作りのカードを取り出して、微笑みながら孝之に渡した。おしゃれなカードには、携帯電話の番号とメールアドレスも記されていた。

〜インターネット掲示板

ID:********** Name:ドラマ男
「これが、ぼくと彼女の出会いでした」
ID:********** Name:名無しさん
「キターーーーーッ」
ID:********** Name:名無しさん
「し、信じられん。でも、やったな、ドラマ」
ID:********** Name:ドラマ男
「だけど・・・自信が無い・・・大丈夫か、オレ?」
ID:********** Name:名無しさん
「前にも注意したと思うが、ごちゃごちゃ考えているヒマがあったら、まず行動しなさい」
ID:********** Name:名無しさん
「ケータイの番号とメアドがあるんでしょ?男にはビシッと決めなきゃならない時があるんだよ。わらわは応援しておるぞよ」
ID:********** Name:名無しさん
「なに、ビビッてんだい、おまいさん」
ID:********** Name:名無しさん
「ところで、そのキーホルダー、情報キボン」
ID:********** Name:ドラマ男
「HERMES、ハーメスって書いてあるけど」
ID:********** Name:名無しさん
「それはエルメスだ!!!」
ID:********** Name:名無しさん
「なに、エルメス?」
ID:********** Name:名無しさん
「おい、ドラマ。そりゃ・・・本気だぞ、彼女。メアドまで教えてるんだし」
ID:********** Name:名無しさん
「もう実行あるのみ。早く・・・は・や・く!」
ID:********** Name:名無しさん
「わらわが付いておるぞよ」
ID:********** Name:ドラマ男
「でも、なんか決心できない。やっぱり次にしようと・・・」
ID:********** Name:名無しさん
「無いんだってば、次なんて無いんだってば」
ID:********** Name:名無しさん
「おい、そんなにドラマを責めるな・・・女性と付き合うってのは、えらいこった」

「ありがとう、みんな」
孝之は意を決すると、震える手でメールを打ち始めた。

(続く)
...2005/07/31(Sun) 22:54 ID:yPhKFGcQ    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
朔五郎さま

キターーーーーッ!!
待っていた甲斐がありました(^^)
しかし、エルメスがミチルとは・・・またもや意外な展開に脱帽です。

※テレビの方の「電車男」に出ている陣釜美鈴女史と宮浦大学の城石先輩とは顔が似てる方同士でしょうか?キャラは似ても似つかない感じですが。
...2005/08/01(Mon) 19:59 ID:v/iql/wI    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
香川編 〜木庭子町のお正月(その19)

楽しいおしゃべりが続いたが、2時過ぎになるとさすがに皆眠くなってきて「おやすみ」といいながら、それぞれの布団に入っていった。
マサミは、いよいよお正月だ、楽しいことがいっぱいあるかな、などとニンマリしているうちに、心地良い眠りに引きこまれていった。
どのくらい経っただろう。マサミは顔に光が当たるのを感じて目を覚ました。部屋の扉が開いて廊下の灯りが入ってきたようだ。扉はすぐに閉まり、また暗くなった。
眠い目をこすりながら枕元の時計を見ると、まだ6時前だった。
「なーんだ」
そうつぶやきながら、また寝ようとしてふと思った。
「さっきの・・・誰?」
隣を見ると、そこに寝ていたはずのミライがいない。
「お手洗いにでも行ったのかな・・・」
そう思いつつも、なんとなく気になったマサミは、起き上がって廊下に出た。
玄関の方で物音がする。足音を立てないようにそっとそちらの方へ行って見ると、そこには直太朗とミライがいた。
「はっ」
思わず息を呑むマサミ。
それは異様とも思える光景だった。直太朗とミライは共に、白い作務衣のような服を着て、白い鉢巻を付けている。直太朗の手には蝋燭が、ミライの手には木製の手桶とひしゃくが握られていた。
やがて二人は、頷き合うと外に出て行った。外から鍵を掛ける「カチャ」という音がやけに大きく響いた。
言葉もなく立ちすくんでいたマサミは、あわてて亜矢子の寝室の扉を叩いた。
「お母さん、お母さん」
小声で呼ぶと、中から亜矢子の声がした。
「どうしたの?マサミさん。お入りなさい」
マサミは部屋の中に入った。そこは直太朗と亜矢子の寝室だったが、もちろん直太朗の姿は無かった。
亜矢子は布団の上に半身を起こしていた。
「お父さんとミライ君が・・・」
「どうしたの?」
「し、白装束で・・・」
「外に出て行った?」
「え?」
「初めてだからびっくりしたのね」
亜矢子は笑いながら言った。
「昼間もちょっと言ったけど、元旦のお雑煮を作るのは男性の仕事なの。あの二人はまず暗いうちに山の中に清水を汲みに行くの。帰る途中に初日に手を合わせて、帰ってきたら、その水を神棚に供えて拝んでからお雑煮に使うのよ。もちろんタテマエだけど、一応女性はその光景を見ちゃいけないことになってるから、話しかけたりしないでね」
「・・・わかりました」
「慣れれば、どうってことないわよ」
「はい」
「明るくなったら、美味しいお雑煮が出来てるから楽しみにしてて」
「お騒がせして済みませんでした」
「いえいえ、風邪ひかないように暖かくしててね」
「はい、失礼します」
マサミは緊張から解き放たれて、ふうっと息をついた。
「結構いろんなしきたりがあるじゃない・・・・」
ふと気が付くと、あたりが薄明るくなっていた。
窓の外を見ていると、東の山の端がピンク色に輝きだし、やがて一点がキラリと輝いたと思うと、洪水のように光があふれ出した。
「今頃、サクはあの太陽に向かって手を合わせているのかも・・・」
この瞬間、この場所にいることの不思議さをあらためて感じるマサミだった。

「みんな、お雑煮ができたよ」
直太朗の呼ぶ声で、家族が居間に集まった。
テーブルの上には、既におせち料理が並んでいた。これは年末に亜矢子と千恵子が作っておいたものである。
女性たちが席についたところに、ミライが雑煮を配っていく。
直太朗とミライが座り、全員そろったところで、みな笑顔で「あめでとう」を言い、新年の食事が始まった。
マサミは、お椀を手に取った。白味噌仕立ての汁の中に丸い餅が浮いている。具の野菜が入っている以外は、いたってシンプルな雑煮だった。
「美味しそう。いただきます」
マサミはまず、汁の味をみる。まろやかな白味噌の味が口の中に広がる。
「美味しい」
思わず笑みがこぼれる。次に餅を食べてみる。
「ん?・・・甘い」
餅の中には餡が入っていた。
「びっくりした?」
「はい、ちょっと・・・でも、白味噌に良く合っていて、いいお味です」
「そう、良かった」
一同は、ホッとしたようだった。
「このあたりはね、昔、砂糖の生産地だったの。だけどお砂糖は贅沢品で、一般の人たちは自分たちが作ったお砂糖をなかなか味わうことができなかったの。だから、せめてお正月くらいは思い切り甘いものを食べようということで、こういうお雑煮になったのよ」
「そうなんですか」
マサミはちょっと考えるような素振りを見せた。
「私、ミライ君のことは、かなり知ってるつもりになってました。でも、こうしてお正月を一緒に過ごしてみると、それは違うんだなって思いました」
「マサミさん・・・」
「ミライ君は小さい頃から、こんな家族、こんな雰囲気の中で過ごしてきたんだなって。子供の時、お正月ってほんとに楽しかった。家族と一緒のお正月の思い出は、きっと一生消えないと思うんです。その人の原点っていうか・・・」
マサミはお茶を一口飲むと、続けた。
「私、ミライ君と一緒に生きていきたいと思ってます。だから、こうして皆さんと一緒に過ごすことができて本当に良かったと思います。ミライ君が一番安心できる、リラックスできる雰囲気とか環境とか、少しわかったような気がします。だから、東京で二人でいる時でも、私なりにそんな空気を作ってあげたい」
「だってさ、ミライ。良かったね」
「でもね、人間て変わっていくものだから。ミライだっていつか自分の家庭を持てば、そこが故郷になるんだよ。できればマサミさんと二人で創ってもらいたいけど」
「はい、私、頑張ります」
「そうだ、二人で初詣に行って来たら?」
「そうか・・・どこがいいかな」
「まあ、香川といえば金比羅様が有名だけど・・・」
「ここからだと結構遠いな」
「じゃ、八栗寺に行って来たら?あそこならすぐ近くだし」
「そうだね・・・一休みしたら行こうか、マサミ」
「うん」

(続く)

この物語はもちろんフィクションであり、高松市近郊に「白装束で水を汲みに行く」という習慣があるわけではございません。念のためお断りしておきます(朔五郎)
...2005/08/02(Tue) 02:30 ID:whSn2Anw    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
SATOさま
ご指摘のように、城石先輩と陣釜女史は外見上、良く似ております。実は、城石先輩が「悪に堕ちて」陣釜女史になったのです(ウソです・笑)
電車男の携帯電話に陣釜女史からの電話がかかると「ダー○ベイダーのテーマ」が流れますよね(笑)
...2005/08/02(Tue) 02:46 ID:whSn2Anw    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
朔五郎さま
一瞬、城石先輩=陣釜女史かと思いましたよ。ビックリしました・・・
でも、陣釜女史は電車男の裏ヒロインみたいで、好きなキャラですね。

こちらのマサミも当初は裏ヒロインの位置づけだったと思いますが、いまやアキと並ぶヒロインとして大きく羽ばたきましたね。
ということで、アキとマサミに可愛がられたハルカには第三のヒロインとして活躍場面を創作していきたいです。(9月になったら自由の身になるので、そのときに一気にいこうと思います。それまでは勉強、勉強・・・)
...2005/08/02(Tue) 23:57 ID:U8ogkK5Y    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:たー坊
朔五郎様
感想が遅れてしまって申し訳ありません。
最近、ようやく落ち着きつつあるので、作品はUPしていたのですが、皆様の所にお邪魔することもままならないでいました。
今回、まとめて読ませて頂きましたが、相変わらずサクとマサミは仲が良いですし、電車男風のストーリーも期待大です。住人にはどこかのドラマも入ってますし、面白そうですね。これからも楽しみにしております。

SATO様
試験勉強も大変ですね。でも、今月一杯の辛抱です。自由の身になられたら、UPのラッシュとのことなので、それを楽しみにしております。
...2005/08/03(Wed) 20:17 ID:xO6hMlcU    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
たー坊さま
ご感想ありがとうございます。
この「宮浦の春」というお話は、大林アキが大学に入学する日のシーンで終わる予定です。
インターネット掲示板(ここもそうですが)という世界の「匿名性」を上手く生かせればと思っております。
「木庭子町」はあと2回で終わります。最後を締めくくるのはもちろん「彼」です(笑)
...2005/08/03(Wed) 21:57 ID:Am.BlgKA    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
たー坊さま
激励ありがとうございます。
受験勉強にいそしみ、最近ちっとも出番がない(?)大林アキといっしょに頑張ります。

朔五郎さま
「木庭子町」編の締めくくりを楽しみにしています。
それに引き続く、「宮浦の春」の今後の展開が楽しみです。以前、大林アキが災難に逢うと予告がありましたが、人違い(真島ミチルと?)されてとんでもない目に遭うのでしょうか?
...2005/08/04(Thu) 23:09 ID:X2TokEbo    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
SATOさまへ
「アキの災難」については、一応考えていたスジがあるのですが、無理やり「とってつけたような」イベントをつくるより、淡々と流したほうが深みが出るかなと思いまして、いま検討しているところです。
達明や智世の娘に対する思いや愛情、達明とケンの和解、さらに朔と智世の会話など、登場人物の内面がきちんと描写できれば良いな、と思っております。
...2005/08/05(Fri) 00:08 ID:khNNV7tM    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
山辺の涙 〜宮浦の春(プロローグ2)

「海の時計」にも閉店の時刻がやって来た。
マスターの寺尾は、いつものように二人分のコーヒーを淹れると、そのひとつを手に取って、香りを楽しんでいた。

ふと気が付くと、これもいつものように亡き妻・しのぶがカウンターのコーナーの席に座っている。

「どうしたのよ、なにか悩みでもあるの?」
「別に」
「ふふ、隠してもだめ。私、知ってるもん」
「え・・・」
「京子さん、よね」
「・・・・・」
「ほら、当たった」
「しのぶ」
「ねえ、あなた」
「ん?」
「あなた、素敵な男だったわ。一緒にいると、もう楽しくて楽しくて・・・でも、最近ちょっとしょぼくれてるわよ」
「仕方ないさ。男やもめになんとやら、だよ」
「何言ってるの。しっかりしてよ」
「そんなこと言ったって」
「恋をしなさいよ」
「しのぶ・・・」
「あなた、私が死んだあともずっと私のことを思っててくれたよね、カズナリとアズサちゃんのことがあって大変な時でも。でも、カズナリはもう大丈夫よ。あのレイコちゃんていう子は、きっとカズナリを助けてくれる。まかせておけばいいのよ」
「でも・・・」
「ねえ、京子さんてとってもキレイなひとね」
「うん、若い頃はモデルやってたんだって」
「最高じゃない。あなた、頑張って」
「しのぶ」
「いいのよ、私は。ありがとう、もう十分よ。元妻としてはね、あなたにもう一度復活して欲しいのよ、ステキな男性として」
「そんなこと・・・」
「勇気を出して恋をしなさいよ」
「でも彼女には高校生の娘がいる。その娘が認めてくれやしないよ」
「きっと大丈夫だと思うな」
「どうして」
「その娘さん、誰かに似ていると思わない?」
「誰って・・・あ、そうか」
「思い出した?」
「あ、ああ・・・」
「あなたたち、とっても相性が良かったじゃない。まるで本当の父娘みたいに」
「だって、あの子は全然別の人間だぜ」
「そりゃそうだけど、でもきっとうまくいくよ。女の勘っていうやつ」
「無責任だな・・・」
「私、本気よ・・・あなたがこのまま朽ちていくのを見たくないわ。だから恋をして。さよなら、アキラさん・・・」
しだいに薄くなっていく姿。
「しのぶ、ちょっと待て・・・」
気が付くと、カウンターの上にカップだけが残っていた。

寺尾は店を閉めると、松並木の道沿いにある一軒の小料理屋に立ち寄った。
この店のママ・長谷部京子は、若い頃、ファッション誌のモデルを務めていたこともある美人だった。
「いらっしゃい」
のれんをくぐって中に入ると、娘のナオミが笑顔で出迎えた。
華やかなヒロインの香りを残す母親に比べ、娘のナオミは地味でおとなしい印象だった。しかし成績は抜群に良く、宮浦高校から久々に現役の東大合格者が出るのではと期待が集まっていた。
「ナオミちゃん、今日もお手伝い?えらいね」
「うん、お母さんは女手ひとつで私を育ててくれたから、このくらいは」
「来年はいよいよ大学生だね。東京へ行くんだろ?」
「うん・・・」
ナオミは思わず俯いた。
「私が東京へ行ったら、お母さんひとりになっちゃう。私、なんだか心配で・・・」
「でも、付き合ってる彼氏は東京へ行っちゃうんだろ?」
「うん」
ナオミの恋人・トモヒサは松崎にある有名進学校・竜桜(りゅうおう)高校の生徒で、二人はそろって東大に合格しようと誓い合っていた。
「おじさんはね、昔、北海道の富良野に住んでいたんだ」
寺尾が話し出す。
「おじさんには息子がいて、富良野にいた頃、その息子のガールフレンドがよく遊びに来ていたんだ。その女の子がナオミちゃんに似ていてね・・・」

ガチャーン・・・

「あ、おじさんがへんなこと言うから、お皿割っちゃったじゃない」
「ごめんごめん」
「どうしたの、ナオミ・・・あら、寺尾さん、いらっしゃい」
奥から京子が出てきた。
「いや、ぼくがへんなこと言ったから、ビックリしたみたいで」
「あら、未成年者をからかうのはやめてくださいよ」
「いやいや・・・」
寺尾は苦笑いしながら弁解した。
「ただ、ナオミちゃんを見ていると、息子と幸せに暮らしていた頃を思い出してね・・・」
「寺尾さん、淋しそうね」
「まあね」
「ほんのちょっとでも幸せを思い出せるなら、いつでも来てくださいよ、この店に」
「ありがとう、京子さん」

そして2018年1月8日。
新しい春を迎えた宮浦の街。
防砂林の松の木に囲まれた、小料理屋「きょうこ」では宮浦高校の先生たちが新年会を行っていた。
まずは型どおり、校長先生の挨拶から始まる。
「あー、皆さん。明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします・・・」
しばらくは、眠くなるような話が続いたが、やがて、お屠蘇気分も吹っ飛ぶような衝撃的な発言が飛び出した。
「・・・というわけで、わが宮浦高校も近年、隣町の松崎に新設された竜桜高校に押され、地元での評価も厳しくなってきております。しかし幸いにも、今年の2年生の中には、長谷部ナオミを初め、優秀な生徒が何人かおりまして・・・」
この店のママ・長谷部京子の娘・ナオミは、いきなり名指しされたので驚きの表情を見せた。
「・・・そこで、わが宮浦高校でも5名の少数精鋭による特別進学クラスを編成することに致しました。その5名は、長谷部ナオミ、高田繭子、菊川麗、保利江紋次郎、それに博士太郎とします。本来なら、新学年度の4月からスタートするのが妥当と思いますが、一日も早い方が効果的と思われるため、来週早々クラス替えを行います」
阿部が慌てた口ぶりで詰め寄った。
「こ、校長先生、そんな突然に・・・それは受験も大事でしょうが・・・」
「《古典の世界の雅(みやび)に触れ豊かな感性を養う》ですか?もう聞き飽きましたよ、阿部先生。今の世の中《東大に非ずんば大学に非ず》なんですよ」
「し、しかし校長・・・」
「今度は《奢れる者久しからず、ただ春の夜の夢の如し》ですか?いまだかつて東大が滅亡したという話は聞いたことがありませんなあ」
阿部のジャケットの裾を引っ張りながら、大沢が止めた。
「阿部先生、無駄だから止めたほうがいいですよ。気持ちはわかりますけど・・・」
元々、宮浦高校はノビノビとした校風が伝統だった。しかし、現在の校長・北条時正が、世間の評判というものに人一倍こだわる性格だったため、校内の空気が微妙に変わってきていた。
「そこで特別進学クラスの担任ですが、どなたか立候補される方は?」
教師たちは慌てて目を伏せた。
「いらっしゃらないようなので、中井先生・・・」
北条校長が娘婿の中井を指名しようとした時だった。
「ぼくがやりましょう」
一人の教師が手を挙げた。
「ふ、福山先生・・・」
一同はあまりの意外さに言葉を失った。
福山雅春は音楽の教師だった。声楽を得意とし、甘いマスクと歌声は特に女生徒たちに人気があった。
「他にやりたい方、いないんでしょ?だったら僕がやりますよ」
「せ、先生・・・学園祭のライブの責任者とは違うんですよ・・・」
「わかってます」
「それなら、なぜ・・・」
「受験勉強なんて音楽と一緒です。僕が彼らにそのことを教えてやりますよ」
一同は半信半疑の表情で福山を見つめた。
...2005/08/06(Sat) 03:10 ID:fW13KZ8M    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
単発のスペシャル編だと思っていた「京子ママ」「特進クラス」が実は「エルメス」と同じストーリーだったとは・・・
今後が楽しみです。

「電車男」の原作では女優の中○さんに似ている人が「エルメス」だったそうですが、こちらのストーリーでは本物の女優さんが「エルメス」なんですね。
...2005/08/06(Sat) 23:14 ID:zS7sjBpg    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
香川編 〜木庭子町のお正月(その20)

「わあ、すごい人」
古びたスクーターで、ミライとマサミは山麓駅までやって来た。
「ケーブルカーに乗れるまで、結構時間がかかりそうだね」
「うん」
それでも楽しげに、列の一番後ろに並ぶ二人。
「ねえ、海からの風が冷たいね」
「ああ」
「なんか、ほっぺが冷えて痛くなって来ちゃったな」
「はい、ホッカマン。あったかいよ」
「そんなんじゃ、やだ」
「え・・・」
「ここにキスして」
「また、そんなわがままなことを・・・」
「ね、お・ね・が・い」
「しょうがないなあ」
最近、好奇の視線を浴びせられることにも少しずつ慣れてきたミライだった。

結局、30分ほど待ってケーブルカーに乗り、山上駅に着いたが、そこにもものすごい人並みが続いていた。
マサミははぐれてしまわないように、ミライの右腕をしっかりと抱きかかえていた。
「そんなひっつくなって」
「ふふ、当たってる?」
「うん」
「もう離さないもんね」
「はいはい・・・」
「あ、あれが本堂かな」
「うん、きっとそうだね」
人の頭の波の向こうに本堂が見えて来た。
その建物に少しずつ近づいて、もみくちゃになりながらも、二人はようやくお参りをすることができた。ガラガラと鐘を鳴らして、仏様にお願いする。

「マサミと仲良くできますように。あんまりイジメられませんように・・・」
「サクといつも一緒にいられますように。故郷の人たちやサクの家族にもいいことがありますように・・・」

お参りを終え、二人はホッと息をついた。
「いやあ、大変だったね」
「うん。でもサクと一緒なら何時間でも平気」
屋台がたくさん並んでいるのを見てサクが言う。
「なんか食べる?」
「うん」
「あ、タコ焼きなんかどう?」
「いいよ、私もタコ焼きは大好き」
タコ焼きの屋台の前には小さな広場があって、赤いベンチが置いてあった。
「おばさん、タコ焼き2つ」
「はいはい、ちょっと待ってね。焼きたてをあげるからね」
「いい匂い・・・美味しそう」
「お嬢さんはここらの人かい?」
「いえ、静岡の出身です」
「そうかい」
「あ、でもどうして・・・」
「いやね、なんか似たひとを見たような気がしたから・・・」
おばさんはニヤリと笑った。
ミライとマサミは顔を見合わせた。
「知ってるのかな、あのひとのこと・・・」
「そうかもしれないな」
「はい、できたよ。アツアツだよ」
二人はベンチに座ってタコ焼きをつつき始めた。
「見て、カツオブシがピロピロ動いてる・・・わあ、生きてるみたいで面白い」
「ア、アツい」
「そんな一度に頬張るからよ。しょうがないなあ・・・ほら、私がフウフウしてあげるから」
「いいよ、恥ずかしい・・・」
「あんたたち、ほんとに仲がいいんだねえ」
おばさんが声を掛けてきた。
「いやね、あんたたちを見てると、あるカップルを思い出してね・・・あら、いやだ、何言ってるんだろ・・・」
「おばさん、もしかして・・・」
マサミはあの少女の名を出して、知っているか尋ねた。
「いえいえ、そんな人は知りませんよ」
「そうですか・・・あ、そうだ、八栗寺って変わった名前ですけど、なにか言い伝えとかあるんですか?」
「昔、弘法大師という偉いお坊さんがいてね、唐、今の中国へ派遣されることになったんだよ。出発前に八つの焼き栗をここに埋めて置いたら、帰って来たときに八本の栗の木が育っていたんだって。だから八栗寺っていうんだよ」
「でも、焼いた栗ですよね」
「そう。まあ、人間で言えば焼かれた骨から命が再生したようなもんだから、不思議って言えば不思議な話だねえ」
「え?」
「ああ、そうそう。あんたたち、聖天堂のほうにはお参りしたかい?」
「いえ、本堂だけです」
「ダメダメ。それ食べたら忘れずにお参りするんだよ」
「だってあそこのご利益は商売繁盛だって・・・」
「いいから、いいから。悪いことは言わないから行っておいで」
「わかりました・・・」

二人は聖天堂の前に来た。
「見て、歓喜天っていう額が掛かってるわよ」
「なーんか、妖しい感じだね」
歓喜天はインドの神で、日本では「頭が象で体が人間」という形で表現されることが多く、「聖天様」と呼ばれる。そして男女一対の神が抱擁しているのである。信仰することにより商売繁盛のご利益があるとされるが、もちろんもっと「素朴な」ことについてもパワーを発揮する。
「結局オレたち、ハメられたってことかな?」
「まあいいじゃない。好意でやってくれたことなんだから」
ミライとマサミは甘くてちょっぴりほろ苦い微笑を交わすのだった。

タコ焼き屋のおばさんは、そんな二人を見ながらつぶやいた。
「あんたたち、とってもイイ感じだよ」
そして口許にイタズラっぽい笑いを浮かべると17歳の少女の姿に戻り、人の波にまぎれて、すぐに見えなくなった。

(続く)
...2005/08/07(Sun) 22:20 ID:IJhv9xqc    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
朔五郎さま
「香川の正月」編ではナゾめいた人物がときどき登場しますね。静御前を思わせる少女が登場したと思ったら、今度はタコ焼き屋のオバサンが17歳の少女に「変身」ですか・・・この人っていったい?興味あります。
...2005/08/10(Wed) 19:57 ID:F9QhKn1U    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:たー坊
お疲れ様です。

朔五郎様
お正月を満喫している2人の微笑ましい光景が目に浮かびます。それにしても、ミライはどんどんマサミの色に染まっていますね。主導権は以前からマサミが握っていましたが・・・本当にマサミ恐るべしですね。
次回も楽しみにしております。

SATO様
お疲れ様です。試験勉強はいかがでしょうか?
良い結果を祈っております。
...2005/08/10(Wed) 21:29 ID:7u0Smt.E    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
SATOさま
シンプルにお考え頂いて結構です。17歳の少女=「あの少女」です(笑)
ちなみに「〜にまぎれて、すぐに見えなくなった」というのは原作のラストシーンのパクリです(^^;;;
試験の方、ご健闘をお祈りします。

たー坊さま
ただ今、最終回を創作中です。マサミがメインというのは、ひょっとしたら最後かも知れないので、ちょっと時間をかけております。
...2005/08/10(Wed) 22:04 ID:4iybE5qQ    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
香川編 〜木庭子町のお正月(その21)

2018年1月5日。
ミライとマサミは、高松空港で佐久間家の人々の見送りを受けていた。
見送られる者、見送る者、皆の顔には楽しく充実した時間を過ごした満足感が感じられた。
家族そろって餅をこねたり、高松のデパートの初売りに行ったり、庵治町までドライブしたり・・・。
いよいよ搭乗時刻が近づいた時、亜矢子はマサミの手を握り、そして抱きしめた。
髪を撫でながら静かに言う。
「マサミ、今年のお正月は、ほんとに、ほんとに楽しかったよ。来てくれてありがとう。あんたはもう、お客さんなんかじゃないよ。私たちはね、あんたがミライと付き合ってるからっていうより、あんた自身が大好きなんだよ。だから何かあったらいつでも帰っておいで。待ってるからね」
「はい」
「そうだ、あの写真はあとで東京に送るからね」
「ありがとうございます」
「じゃ、元気でね」
「お世話になりました。大好き、お母さん・・・」

飛行機の窓から見えていた高松の街の灯りも遠ざかろうとしていた。
「なんだか淋しいね」
「うん」
「なーんか夢のような毎日だったね」
「楽しめた?」
「うん、とっても」
思い出話は尽きることなく、あとからあとから溢れ出た。
「あの写真キレイに撮れてるかな?」
「そりゃ、もちろん」
気が付くと、飛行機は既に関東の上空にやって来たようだ。地上には首都圏から連なる光の列がたくさん見える。
「もうすぐ着くね」
日常に帰って行く前に、あとほんの少しだけあの空気を感じていたい。マサミはそんな思いで、あの写真を撮った時のことを振り返っていた。

2018年1月3日。
この日はミライの成人式だった。地方では、新成人が故郷に帰ってくるのは年末年始だけ、というケースも多いことから、三が日のうちに成人式を行う自治体も増えている。木庭子町も三日に成人式を挙行していた。
「ええっ、いいよ、羽織はかまなんて」
「いいから、早く着なさい。服装には釣り合いってものが・・・」
「はあ?なに、釣り合いって?」
「あ、ああ、何でもないよ・・・」
うっかり口を滑らせて、亜矢子は慌てた。
「い、いいから早く着替えて行って来なさい」
「マサミはどうする?」
「マサミさんは私たちとお留守番よ。大切に預かるから早く行っておいで」
「でも・・・」
何か気がかりな様子でミライは出て行った。
「行ったね・・・さあ、マサミさん、これから忙しいよ。千恵子、予約は入れといてくれたよね」
「うん。11時に」
「それじゃ、行くよ」
何がなんだかわからないうちにマサミは車に押し込まれた。
千恵子が運転する車は、木庭子町の中心部へと入って行く。やがて着いたのは、一軒の美容室の前だった。
千恵子が車のトランクから和紙で包まれた和服を取り出す。
ここに来るまでの間、マサミは亜矢子から説明を受けていた。
「マサミさん、お願いがあるの」
「はい」
「今度の記念にね、マサミさんの写真を残したいのよ。それで、ちょうどミライも成人式だから、マサミさんは一年早いんだけど晴れ着を着て欲しいの」
「振袖ですか?」
「そう。千恵子が去年着たのがあるから、どう?きっと似合うと思うわ」
「はい、キレイになれるなら私もうれしいです」
「そう、良かった。それで、写真館も予約入れておいたから、ミライと二人で記念写真を撮って欲しいの。息子の成人式の日にこんなきれいなひとと写真が撮れるなんて、最高の記念になるわ。そして、できれば新しい出発の日になってくれればいいなと思ってる」
マサミはうっとりとするような目をして言った。
「私にとっても、すごくうれしい記念日になると思います」

待っていた亜矢子と千恵子の前に、着付けと髪のセットを終えたマサミが現れた。
「まあ・・・」
「マサミ、良く似合ってるよ」
そこには、かわいらしさと美しさのちょうど境目あたりの女性が立っていた。
「すてきなお嬢さんですね。私も仕事のしがいがありましたよ」
美容室のオーナーが言った。
「ミライ、きっとビックリするわよ」
「でも同級生と飲みに行っちゃったりしないかな?」
「マサミさんを放っておいて飲みに行くわけないでしょ。後ろ髪引かれる思いでようやく出て行ったんだから」
「それもそうだね」

成人式から早々に戻って来たミライは、今まで見たことのないマサミの姿に息を呑んだ。
「どう?キレイ?」
ミライは魂を抜かれたかのように、頷き続けた。
そして二人は、佐久間家から歩いて5、6分の「雨平写真館」にやって来たのである。
もう100歳に近いのではないかと思われる重蔵が二人を待っていた。
そこだけ時の流れが止まったかのような店の壁には、今も数多くの結婚写真が掛かっていた。もちろんあの二人の写真も。
「来たか」
「はい」
「また呼ばれたのかい」
「ええ」
「そうかい。それにしてもあんた、キレイだなあ」
「ありがとう、うれしい」
「おいサク。おまえもうれしいだろう」
「あ、ああ」
「この子も喜んでるぜ、きっと」
重蔵は写真の方を振り返りながら言った。
「この子はなあ、この写真を撮ってすぐに逝っちまった。忘れられるのが怖いって言いながらな。だから、自分とそっくりのあんたがこの世に残っているのが嬉しくてしょうがねえんだろうよ。鏡を見るような気分で、ああ、キレイだなあ、自分が振袖を着たらきっとあんな感じなんだろうなって、ナルシズムに浸ってるに違いねえよ。だがな、この子とあんたでは決定的に違うものがあるんだ」
「違うもの?」
「死を目前にしてこの子の輝きはな、衰えることはなかったんだ。でもな、その輝きが強ければ強いほどその影は濃かった。そして俺は見ちまったんだよ。その影が、こう、足元で鎌首をもたげているのをな」
「そんな・・・」
「今のあんたは光と影のバランスがすごく良いなあ。誰が見ても幸せだってわかるぜ」
「そうですか・・・?」
「そうさ。何千、何万の写真を撮ってきたプロが言うんだから間違いねえよ・・・さあ、じゃ撮るかい。二階のスタジオに来な」
重蔵は100近い年齢の割にはしっかりとした足取りで二階に昇った。
二人に立ち位置を指示するとファインダーを覗く。その瞬間、重蔵の脳裏には、30年前あの結婚写真を撮った日のことが鮮やかに蘇った。はっと思いついて、二人に注意しようとした重蔵は、二人の姿を見て苦笑いを浮かべた。
「言うまでも無かったようだな」
ファインダーの中の二人は何の翳りもない微笑を浮かべ寄り添っていた。そしてマサミの右手はミライの左腕をそっと掴み、まるで自分自身を相手に預けるかのように上体を少し傾けていた。

(続く)


最終回にするつもりでしたが、長くなってしまったのでここで区切ります。次で終わります。
...2005/08/12(Fri) 12:36 ID:2G..k0tQ    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:たー坊
朔五郎様

最終回が伸びたので、嬉しいやら待ち遠しいやらです。これで成人式を二回も迎えることになるマサミはさぞ嬉しかったでしょう。それにしても・・・来年の成人式にはミライが宮浦に駆り出されてしまい、松本写真館に、朔・亜紀、ケン・アキに続く写真が飾られたりするのでしょうか?
ひとまず、最終話を楽しみにしております。
...2005/08/12(Fri) 13:02 ID:NbPb3GW6    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
「香川正月編」のラストと「エルメス&特進クラス」編の展開を楽しみにしています。

先日の大河ドラマ「義経」を観ていたら、テレビ版「電車男」と「ネットの住人」が同じ船でツーショットになっていましたので、何だかニヤけてしまいました。
※「ネットの住人」こと小栗旬さんは4月期は「あいくるしい」に出演していたので、2時間続けて観ることができました。幌も牛若丸の回想場面で時々8時にも観ることができましたね(^^)
...2005/08/13(Sat) 22:30 ID:55VIIgBU    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
香川編 木庭子町のお正月(その22)

「よーし、撮れた。もう楽にしていいぞ。俺もな、久々に気分が昂ぶったぜ。店の中に飾らせてもらうぜ、あの結婚写真の隣にな」
重蔵は二人を見ながら、やや真剣な口調で言った。
「おまえたち、わかってるな。俺だって何時まで待てるかわからねえ。本物の結婚写真、撮らしてくれよな」
思わず顔を見合わせる二人。
「なあ重じい。気持ちはうれしいんだけどさ、どうして俺たちのことをそんなに・・・」
「俺はな、もうすぐ死ぬ。そのことは別にどうってことないんだがな・・・向こうへいったからって誰が待ってるわけでもねえ。八十年も思っていたからって、俺が勝手に片思いしてただけだからな」
重蔵はポケットに手を入れて、骨を握りながら続けた。
「俺はこれから先、八百年も八千年も独りで彷徨うことになる。おまえたちはな、そんな俺の最後の未練なんだよ。自分とは違う道を歩んで行くおまえたちの行先を見てえんだよ。俺は後悔はしちゃいねえ。だけど、おまえたちを見ていると少し羨ましい気もするぜ。ずっと一緒にいても、嫌なところより、好きなところをどんどん見つけちまう。すげえな、おまえたち」
「重じい・・・」
「さあ、もう行け・・・ここでは時間が止まっている。いつまでもおまえたちのいる場所じゃない」
「・・・じゃ、また」
「ああ」
ひととき華やいだ写真館の空気がセピア色に戻っていく。
しばらくの沈黙の後、重蔵は口を開いた。
「来てるんだろ、そこに」
重蔵は部屋の隅に向かって語り続けた。

考えてみりゃ、あんたと俺は似たもの同士だな。ほんとは淋しいくせに強がってさ。俺は永遠の片思い、あんたは惚れた男を別の女に譲っちまった。長いぜこれから先、独りぼっちで過ごす時間は。
ほんとはあんただって、あの二人みたいになりたかったんだろ?時間さえありゃなあ。この結婚写真だって手さえ繋いじゃいねえ。だけど無理もねえよな。男と女のことだって少しずつ覚えていく前にあんなことになっちまって。まだ結婚なんて意識しねえうちに衣装だけ着ちまったんだよな。
もしあんたが悪霊になって、好いた男をしょっ引いて行けたらきっと楽だったろうに。まあ、あんたに出来るわけないよな。惚れた男と自分が可愛がった妹みたいな女の縁結びをしてやったり、今度は娘みたいな子を応援したり、物好きと言うかお人好しというか・・・
だけど俺は大好きだよ、そんなあんたがな。人の親になることが出来なかった俺だけど、あの二人がたまらなく愛しいのさ。あんたのお陰だねえ。
ほんとさ。そんなに照れるんじゃねえよ。
あの二人はな、俺やあんたが越えられなかった壁や溝を、いとも簡単に越えていくじゃねえか。さっきの撮影の時の二人の顔や身のこなしを見たかい?
あんたは、あの子になったり、あの子の母親になったりしながら、大喜びで見ていたんだろう?
俺もいくよ。あの二人の結婚写真を撮ったらな。楽しみだねえ、あの二人の未来が。それが俺にとってもあんたにとっても、きっと、たったひとつ残された夢なんだねえ。
俺はそのためだけに今も生きてる。もっとも、最近は生きてるんだか死んでるんだか、よくわかんなくなっちまったがな・・・

写真館の老主人は、目の前に誰かがいるかのように微笑みかけると、窓から差し込む初春の陽の温もりに誘われて、まどろみの中に落ちていった。

(香川編 〜木庭子町のお正月 完)
...2005/08/14(Sun) 09:36 ID:iM3RCfr2    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
たー坊さま
来年の松本写真館は、ケン&アキ、シンジ&ユイにもしかしてミライ&マサミと大賑わいになりそうですね(^^)
そんな中、たぶん一人で成人式を迎えるレイコの淋しそうな姿が目に浮かびます(涙)2022年には幸せになることがわかっているので、我慢してもらいましょう(^^;;;

SATOさま
いよいよ「電車&ドラゴン」始まります。SATOさまの「ハルカ編」も期待しております。
まずは試験のほう、頑張ってくださいませ。
...2005/08/14(Sun) 09:53 ID:iM3RCfr2    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:たー坊
朔五郎様
香川編の執筆お疲れ様でした。
マサミとミライの幸せっぷりを見ることができたばかりでなく、重じいの”重み”も考えさせるものがありました。私はまだまだ子供なので、そんな境地に達したことなどありませんが、そんな人生がひとつの幸せの形なのでしょうね。

ケンとアキの幸せぶりを期待しつつ、これからの物語を楽しみにしております。
...2005/08/14(Sun) 14:35 ID:h4o/qCFs    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
たー坊さま
ご感想ありがとうございます。
ドラマの謙太郎じいさんと違って、重じいは生涯独身で片想いの恋を貫き、看取る家族もなく、あちらで待つものもなく、永遠に孤独です。
このキャラに深く心を惹かれ、少しでも救いをと思うのは私だけでしょうか。また、映画版の亜紀も「バイバイ」と言ったきりサクとは永遠に再会することはなく、その点、この二人は似た者同士だと思うのです。
宮浦の春、全力で制作中です。まもなく第1話をアップする予定です。
...2005/08/14(Sun) 20:24 ID:CvYP/y82    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
宮浦の春(その1)

2018年4月3日。
さくら色のカーペットが敷き詰められた道を大林アキは歩む。小鳥が囀り、遠くから船の汽笛が聞こえて来る。
細く、カーブの多い道は、小高い丘の上にある宮浦大学のキャンパスへと続いている。あと少しで「入学式会場」と書かれた看板が見えるだろう。
そんなアキの少し後ろを、やはり新入生らしい若者が歩いていた。その視線は常にアキに注がれている。
やがて、何かを決意したかのように小さく叫んだ。
「もーらいっ!」
走り出した彼はアキを追い越すと、くるりと振り返った。
「ね、新入生?」
「ええ、そうですけど」
「タメ年だね、俺たち」
「君も新入生?じゃ一浪してる分、私の方が一つお姉さんみたいね」
「ふーん、なんかいいねえ。《おねえさん》っていう雰囲気、俺、あこがれてたんだ」、
「で、何か用?」
「あのさ、入学式終わったら、とりあえずお茶しない?」
「ごめんね・・・じゃ」
「あ、ちょっと待って・・・彼氏いるの?」
「ええ」
「で、その彼氏ってどこまで、キスとか・・・」
「ちょっと、失礼じゃない?まあ、そりゃキスはしてるけど」
「え・・・じゃ、その・・・それ以上とか・・・」
「はい、そのとおり」
「・・・ほんとに?」
「本当です。彼とは一応将来も考えてます。お互いの親も認めてます。その他なにかご質問は?」
「い、いや」
「じゃ、お先に」
その場に一人取り残された彼は、去って行くアキの後姿を目で追っていた。
そして口元に不敵な笑みを浮かべつぶやいた。
「今時、それくらい普通だよな・・・」
彼は後に、アキの人生に大きな影響を与えることになる。しかし、それは大学入学後の話である。

校門の前に着いたアキはふと振り返った。細く長く続く道、そして眼下に広がる宮浦の町並み。アキは今までのことを思い返しながら、遂にゴールラインを越えた。そしてそれは新たなスタートラインでもあった。

2018年1年9日。
長谷部ナオミは喫茶店「海の時計」のカウンター席に座っていた。彼女の話し相手になっているのは、この店でアルバイトをしている宮浦高校OG・山川レイコである。
「それで結局、特進クラスに入れられちゃったの?」
「はい。私は普通のほうがいいのに。友達だっていっぱいいるし」
「で、特別っていうとどんなことやるの?」
「まだ良くわからないんです。来週からなので・・・」
「そうなの。でも担任が福山先生だったら、ちょっとイイんじゃない?」
「ええ、羨ましがってる子はいますけど」
「あ、今度ねフードメニュー出そうと思って、シーフードカレー作ってみたの。ちょっと試食してみてくれない?」
「はい。うちはお店やってて夕飯が遅いから食べたいです」
「そう、じゃ今盛り付けるからね」
ナオミの母が切り盛りする小料理屋「きょうこ」に「海の時計」のマスターが客として訪れたのがきっかけで、ナオミはこの喫茶店にやって来た。そして宮浦高校の先輩・レイコに出会ったのである。初めてナオミを見た時、レイコは驚き、そして喜んだ。もともと高校時代の同級生・長沢マサミに強い憧憬を感じていたレイコの前に、マサミに良く似た、素直で聡明なナオミが現れたのである。しかも自分を慕い、なにかと頼りにしてくるとなれば、レイコがこの愛らしい少女に対して、深い愛情を抱くようになったのも自然の成り行きだった。
「先輩、とっても美味しいです」
スプーンを口に運びながら、うれしそうにナオミが言った。
「ホント?良かった。新メニューとして、いけるかな」
「はい。でも、値段はいくらですか?」
「そうか・・・コストのことも考えなきゃいけないね」
その時、店の扉が開いた。入って来たのは大林アキだった。
「いらっしゃい、アキ。あれ、髪、ショートにしたんだ」
「うん。もうすぐ春だし」
「すごいイメージチェンジ。でも、よく似合ってるよ」
「ありがとう」
「図書館の帰り?」
「うん、ちょっとコーヒーブレイク」
「コーヒー?」
「うん」
「豆は自分で挽く?」
「今日はやることがあるから、やめとく」
「はい。じゃ、ちょっと待っててね」
「お願いします」
アキはテーブル席に座ると「赤本」を広げて数学の問題を解き始めた。

「ねえ、誰かいない?」
真島ミチルの声がロケ現場に響いた。
「わらわは、ヤキソバパンが食べたいぞよ」
つややかなロングヘアーをかき上げながら、ミチルは叫ぶ。
「ミチルちゃーん、残念だけどヤキソバパンは香川県のほうに行かないと売ってないんだ。ここらへんじゃコロッケパンなんだよねー」
「ええっ?ヤダ。早くヤキソバパン見つけて来て!」
「ちっ、ワガママだなあ・・・おいべーやん、早く買って来い」
「そ、そ、そ、そ、そんなぁ」
「なにぃ、こういうパシリは一番下のオメエの仕事だろ」
山辺孝之は肩を落とし、溜息を尽きながら、ベーカリーの方に歩いて行った。
「それにしても宮浦に入ってから、ミチルちゃん、変だと思わない?」
「ああ、そうだな」
「《わらわ》だの《ぞよ》だの、前はあんな言葉は使わなかったよな?」
「お、おお・・・あ、濃姫のセリフにあるんじゃないのか?」
「それが、無いんだよ」
「無い?」
「俺も、そう思って台本を見たんだ。そしたら・・・」
「そしたら?」
「《わらわ》なんていうセリフは一つも無かった」
「じゃ、どうして・・・」
「わかんねえなあ・・・でもまっ、いいか・・・」

(続く)
...2005/08/15(Mon) 02:02 ID:rPTfSoLo    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
今週の「義経」は屋島の合戦でしたね。一同で屋島付近の古地図を見ながら、作戦を練るシーンがあったのですが、その地図を見た瞬間「おお、庵治町だ」と思わずニヤリとしてしまいました(^^;;;
...2005/08/15(Mon) 02:09 ID:rPTfSoLo    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:にわかマニア
>今週の「義経」は屋島の合戦でしたね。
 私も,あの地図を見て,思わず「おお,木庭子町だ」と思うと同時に,33年前の時忠が「合戦で人が死ぬってのはエライこった」とつぶやく姿を想像してしまいました。

 使いっ走り役の「べーやん」もいよいよ始動ですね。汗をかきかき「大丈夫か,オレ」とつぶやいていた某番組公式サイトのスタッフノートを思い出します。
...2005/08/15(Mon) 07:20 ID:tv5Q/Gb6    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
にわかマニアさま
お読み頂きありがとうございます。
某番組スタッフの元祖・べーやん氏が見たら「オレはアシスタント・ディレクターじゃねえ」とか激怒しそうで恐いのですが(苦笑)

さて、17日は三軒茶屋に、舞台の東京最終公演に行って来ます。
となりの渋谷では「blast」という音楽パフォーマンスを公演しています。この内容は「世界の」とは全く関係ありません。
気になるのはタイトルのほうです。
血液検査の項目でblastというのがありますが、これは「骨髄芽球」であります。
骨髄芽球が末梢血中に出て来ているということ、つまりblastが陽性であるということは「○血病」であることとほぼイコールです。
まあ、音楽劇のタイトルから、そういうコワーい検査項目を連想してしまうとは、因果な商売に手を染めたものでございます(苦笑)
...2005/08/16(Tue) 02:58 ID:rTE3UMpY    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
朔五郎さま
いろいろ登場人物が出てきて楽しそうな展開ですね。
こちらの「エルメス」はちょっとワガママお嬢さんなんでしょうか?それから、ベーヤンにパシリをやらせるAD仲間が「陣釜女史」に重なりました。
...2005/08/16(Tue) 20:00 ID:23pQkh/U    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
SATOさま
「エルメス」は現役バリバリの女優さんなので「七変化」とはいかないまでも、いろんなことをやってくれそうです(^^)

一応、「ドラゴン」の方が表=マジメ系で「電車」のほうが裏=エンタメ系という感じになるかと・・・
...2005/08/16(Tue) 23:34 ID:QX5Rt9fU    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:たー坊
朔五郎様

お疲れ様です。
とうとうアキが新たなスタートラインに立ちましたね。親も公認して、晴れてケンと大学生活を共有することができるのでしょう。そんな2人の微笑ましい光景を期待する以上に、アキに声を掛けた新入生が・・・個人的には不気味な存在になりそうで、少し心配です。
お互いに頑張っていきましょう。

SATO様

試験勉強はいかがでしょうか?
私も資格試験を受けてみようかな・・・と思っておりまして・・・。
あと少しですね。頑張ってください。
...2005/08/16(Tue) 23:52 ID:x9vzcjBw    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
宮浦の春(その2)

「はい、お待たせ」
レイコがコーヒーカップをテーブルに置く。
「ありがとう」
アキはニッコリ笑うとコーヒーの香りを吸い込んだ。
「いい香り」
開いていた赤本が閉じられて、表紙が上になった。
「あれアキ、志望校・・・」
変えたの?と言いかけたレイコは言葉を失った。一瞬の沈黙の後、尋ねる。
「アキ・・・もしかして、東大を受けるの?」
カウンター席のナオミが反射的に振り向く。
「ううん、宮浦大」
「だって、これ・・・」
「うん、東京大学の赤本だよ」
「そんな、簡単に言うけど・・・」
「東大の数学の問題って、よく基本を押さえていて面白い問題が多いんだよ。例えば今これを解いてたんだけど」

rを正の整数とする。xyz空間において
  x2+y2≦r2
  y2+z2≧r2
  z2+x2≦r2
をみたす点全体からなる立体の体積を求めよ。
(2005年度東京大学入試問題 前期・理系 第6問)

「まず、体積を求める立体のイメージはこんな感じね」
アキはノートを見せながら言った
「この立体は、x面、y面、z面のそれぞれについて対称だから、x≧0かつy≧0かつz≧0の部分の体積を求めて8倍すればいいんだよ・・・・・・・で、これを0から1/√2まで積分して、最後に8倍すると、答えは(8√2−32/3)r3だよ」
あまりの鮮やかさにナオミはつぶやく。
「すごい・・・信じられない・・・」
「私、別に受験しようと思ってないから、時間がかかっても間違えてもいいの。でもこういう立体図形の問題ってすごく面白くて、リラックスするのにちょうどいいわ」
「せ、先輩・・・」
「あら、その制服は宮浦高校ね」
「は、はい。2年生の長谷部ナオミです。よろしくお願いします」
「ナオミちゃんは成績優秀で東大を目指しているのよ」
「私は大林アキ。レイコの同級生だったの。去年、宮浦大に落ちて浪人しちゃった」
「うそ・・・」
「うそなんか言ってもしょうがないでしょ」
アキが苦笑いを浮かべる。
「せ、先輩は絶対に東大に受かります。受験するべきだと思います。数学の先生が言ってました。問題を見た瞬間、答えのイメージが出来るかどうかでほとんど決まるって」
「私は宮浦大に行きたいから」
「でも、宮浦大で出来ることは、東大でも当然出来ると思うし・・・」
「ナオミちゃんはどうして東大に行きたいの?」
「最初のキッカケは、友達と静岡までロボットコンテストを見に行ったことでした」
「うん、知ってる。ロボコンっていうやつでしょ?」
「その時、竜桜高校のチームが出場していたんです。もう少しで静岡県代表になれたんですけど、決勝で惜しくも負けてしまいました。その会場で竜桜高校チームのヤマシタ君と知り合ったんです」
「へえ、あの超エリート校の男の子と付き合ってるんだ」
「ヤマシタ君はものすごく頭が良くて、将来は体が不自由な人の役に立つロボットを開発するのが夢なんです。成績が良いだけじゃなくて心も優しいんです。同級生のコイケ君たちとバンドやってたりもして、全然ガリ勉っていう感じじゃないです」
「で、彼と同じ大学に行きたいわけだ」
「ええ、まあ」
「じゃあ、私も同じ。私の彼は宮浦大にいるの」
「でも、だから東大に行かないっていうのは・・・」
「ナオミちゃん、東大に行くっていうのは、あくまで手段であって目的じゃないと思うんだけど。大切なのは目的意識でしょ?」
「はい・・・」
「ナオミちゃんは将来どうするつもりなの?」
「私は司法試験に合格して弁護士になりたいんです。私のお母さんは女手ひとつで私を育ててくれました。でも、すごく人が良くて、いつか悪い人にだまされてしまいそうな気がするんです。だから、私が守ってあげたいと思って・・・」
「偉いね、ナオミちゃん。弁護士になりたいから司法試験の合格率が高い東大に行くっていうのは立派な考えだよね」
「ありがとうございます」
「私自身はね、ナンバーワンにならなくても良いと思うのよ。私という人間は一人しかいない。だから自分にしか出来ない何かを捜すつもりなの」
「オンリーワン、っていうことですね」
「そう。私の母は薬局で両親が仕事をするのを見ながら育ったの。だから親から引き継いだ薬局をどうしても残したかった。今になってみればその気持ちは良くわかるわ。だから、私は薬局を継ぐことにしたのよ」
「そうですか」
「でもね、それとは別に、私には私自身の夢があるの。その夢を捨てて、親の期待に応える。それは一見立派なことのように思えるかもしれない。でもそれは違うわ。一度しかない人生なら逃げちゃいけない。そこであきらめてしまうのは単なる責任転嫁だと思う。私は決めたのよ。自分に残されたすべての時間を使って、その二つを両立させることに」
「・・・・・」
「もし何か目的があって、それに向かって努力するなら、この世に無駄なものなんて何ひとつないわ。私が入試に失敗して回り道したことだって、きっと意味のあることだと思うよ」
「アキ・・・アキは本当に変わったね」
「うん、自分でもそう思う」
「でもアキ、急に数学が得意になったのはなぜ?」
「先輩、何か特別な勉強法があるんですか?あのドラマでやってたみたいな」
「特別なことなんて何もしてないんだけど・・・ある時急に見えるようになったのよ、なんていうか答えまでの道筋みたいなものが・・・」
「そんな不思議なことがあるのかしら?」
「よくわからないのよ、私にも」

(続く)
...2005/08/17(Wed) 00:23 ID:vJMZiu3A    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
たー坊さま
コメントありがとうございました。
アキに声をかけてきた彼は基本的にはいいヤツだと思います。
彼は後に、アキの広島行きのキッカケを作ります。

さて、舞台を観てきましたが、基本的に原作に沿ってつくられており「ヒロインではない普通の少女・亜紀」が朔五郎的には良かったと思います。
あと、亜紀が倒れる直前に「もう一度ロミオとジュリエットをやってるみたいだね。私が目をつぶっても死んでないからね。勘違いして死なないでね」というようなセリフがあり、これは上手い演出だと思いました。
ほかにもいろいろありますが、ネタバレにもなりますので、最後の公演が終わってからきちんと書きたいと思います。
...2005/08/17(Wed) 23:01 ID:2yXcghhM    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
宮浦の春(その3)

汗を拭き拭き、山辺が帰って来た。
「ヤ、ヤキソバパン買って来ましたぁ」
「べーやん、遅いよ。ミチルちゃん、もうプリンセスホテルに帰っちゃったぜ」
「すぐミチルちゃんの部屋に来いってさ」
「え、ええっ・・・ど、ど、どうして」
「さあ、ネチネチ文句言われるんじゃねえの?女優もストレス溜まるみたいだからねー」
「ひえー、勘弁してくださいよ」
「ほら、早く行けって。お前が捌け口になってくれりゃ俺たちが助かるんだよ。それも一番下のお前の仕事だろ」
「そうそう、入社したのは怒られるため、仕事するのは文句言われるため、それがお前の宿命なんだよ。それがイヤならクビだよ、ク、ビ」
山辺はオドオドとミチルの部屋の前に行った。
「ああ来たね、AD」
ミチルのマネージャーの中谷が待っていた。
「ったく、遅いじゃない。ミチル、すっかりブウたれちまった・・・使えないねえ。天下のポリプロをなめてんじゃないよ・・・ミチル、来たわよ」
「こっちに来させて。ちょっと言ってやりたいことがあるから、そいつ一人で」
「ちょっとミチル・・・」
「大丈夫よ、その男に何かやらかすような度胸があるわけないじゃない」
中谷はチラリと山辺を見て言った。
「それもそうだね。ほら、早く入って」
山辺はおずおずと足を踏み入れた。背後でドアの閉まる音がする。一瞬の間の後、ミチルは首を伸ばしてドアの方をうかがい、素早く山辺に近づいた。
そしていきなり、振り上げた手を山辺の首に回した。
「ごめんね、タカユキ」
耳元で甘く囁く。
「中谷や岩丸の目を欺いて二人きりになるには、こうするしかないの」
「わかってるよ。わかってるから・・・」
二人はもう一度強く抱きしめ合った。
「でも、さすが女優、迫真の演技だね。オレ、マジでちょっとビビったもん」
「やだ・・・あ、あのコンビニ見つかった?」
「うん、ミチルが教えてくれたから。すぐにヤキソバパン買えたんだけど、ブラブラして時間つぶしてたんだ」
「実はタカユキも優秀な俳優なんじゃないの?」
「いえいえ、とんでもございません」
一瞬見つめ合って、フフッと笑った。
「ねえ、私もネットの掲示板に入ってみたの」
テーブルの上にはノートパソコンが置かれていた。
「持ってたんだ、パソコン」
「うん、一応ね。この部屋、LANが使えるから」
ミチルが画面を示す。
「タカユキが良く見てるのはこれ?」
「うん」
「へえ、タカユキが《ドラマ男》で私が《エルメス》?」
「そう。おかしい?」
「うん、ちょっとね」
「ごめん」
「別に謝らなくてもいいよ」
ミチルは画面をスクロールする。
「面白いんだけど、時々わからない表現が出てくるなあ。《キボン》だとか《キターッ》だとか《ワラタ》だとか・・・」
「読んでるうち慣れてくるよ」
「ねえこのひと、よく書き込んでるよね」
「うん、そういえば」

ID:******** Name:名無しさん
私はずいぶん長い間故郷を離れて、遠い遠いところで過ごしています。私の故郷は小さな港町で、白い漆喰の壁の家がたくさんあります。堤防の上から見る夕陽がきれいです。雨の季節には丘の上にたくさんアジサイが咲きます。みんな元気でいるかな。友達はどうしてるかな。薬局やお寺や写真館はまだあるかな・・・久しぶりに帰ってみたいな。わらわはみんなに会いたいぞよ。

「ねえ、この《わらわ》とか《ぞよ》とかいうのもネット言葉なの」
「これは違うんじゃないかな」
「なんかわからないけど、《わらわ》と《ぞよ》が移っちゃって困ってるのよ。台詞の中でつい、ぞよ、とか言って監督に怒られちゃったり・・・」
「意識の中に刷り込まれたんだね」
「ねえ、このひと、どんな人なんだろう」
「ちょっと質問してみたら?」
「うん」

ID:******** Name:エルメス
>「わらわ」さん
今どこに住んでるの?

「あ、すぐに返事が書き込まれたね」

ID:******** Name:わらわ
>エルメスさん
北海道。北海道紋別郡興部町字沙留。「さるる」っていうところ。

ID:******** Name:エルメス
>わらわさん
ホント?

ID:******** Name:わらわ
>エルメスさん
ウソw でもホントはもっともっと遠いところだよ。

ID:******** Name:エルメス
>わらわさん
そこにどのくらい住んでるの?

ID:******** Name:わらわ
>エルメスさん
6600年くらい前からかな。

「やだ、ふざけてるわ、このひと。なによ、6600年前って」
「6600年前っていえばジュラ紀だね。恐竜がたくさんいた頃」
「ああ、ジュラシック・パークっていう映画があったもんね。それにしても詳しいね」
「前に恐竜のフィギア集めてたことがあるんで」
「さすが、アキバ系ね。だけど、このひととジュラ紀とどういう関係があるの?」
「さあ・・・フィギア集めてるのかな?」
「まさか」
思わず吹き出したミチルはやがて山辺を見つめながら言った。
「タカユキと一緒にいると楽しい。本当の自分に戻れる。私、いつもニコニコ、ニコニコして、普段から演技みたいなことばかりして・・・やな女だよね」
「女優なんだから仕方ないよ。でもオレの前ではそのままのミチルでいいよ」
「私はじめてよ、そのままで良いって言われたの・・・ねえ、タカユキ、私、演技ばかりしてるけど、私のこと嫌いにならないで」
涙を流しながら震えるミチルの肩を、山辺はそっと抱き寄せた。

(続く)
...2005/08/20(Sat) 10:02 ID:nYrXO8EI    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
たー坊さま
激励ありがとうございます。
朝から近所の図書館や喫茶店で勉強してました。家にいるとついついここを見てしまいますので・・・
今日のご褒美のつもりでいま、ここを見ています。

朔五郎さま
しばらく見ないうちに別スレも含めて一気に3話アップされたのですね。

「特進クラス」のアキはすごく立派に成長していますね。ナオミは尊敬の眼差しでアキを見ているのでしょうね。(同じ学年のハルカから見たアキの印象とは違うかも。約1年前にアキと出会ったハルカにとっては、アキは姉のような存在だと思います。逆にハルカとの出会いがアキの成長のキッカケになったのかもしれません。)

「エルメス」は意外な展開にサプライズでした。べーやんとミチルにはくれぐれも写真週刊誌に気をつけてもらいたいです(^^)
マネージャーの中谷さん(女性ですよね)は見た目はあの女優さんに似てると思いますが、べーやんに対する態度や口のきき方が「陣釜女史」のような雰囲気でしたが・・・
...2005/08/21(Sun) 00:04 ID:bbKtVozI    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
SATOさま
アキの人間的な成長は、ハルカはじめ、いろいろな人たちとの触れ合いによるものでしょうね(^^)

マネージャーの候補としては「ポリプロ」なので和○さんとか、陣釜さんも考えたのですが、やはり「エルメス」つながりで中谷さんになりました(笑)
...2005/08/21(Sun) 21:23 ID:dGWVb7nI    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:たー坊
朔五郎様
お疲れ様です。
色々な春が宮浦にやってきているようで、とても楽しませていただいております。
ですが、正直申し上げますと、やはりケンとアキのキャンパスライフを見たいという願望がとても強いです。
次回も楽しみにしております。

SATO様
お疲れ様です。
時折、気分転換をしながら頑張ってくださいね。
...2005/08/22(Mon) 00:00 ID:xuAa..iA    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
宮浦の春(その4)

防砂林の松の木に囲まれた小料理屋「きょうこ」は今宵も賑わっていた。奥のテーブル席ではロケ中のDBSのスタッフが喉を潤している。
プロデューサーの岩丸秋彦が声を潜めて言う。
「なあ、中谷さんには言えないんだけど、真島ミチル、ちょっとスランプじゃない?」
「そうなんですよ、セリフ回しもなんとなくおかしいし・・・」
ディレクターの筒見幸男が相槌を打つ。
「瀧澤君はどう思う?」
アシスタントプロデューサー(AP)の瀧澤クリステルは帰国子女らしい冷静な口調で話し始めた。
「そういえばおかしいですね。今日もADの山辺にイタズラしているんです」
「べーやんにイタズラ?」
「はい。山辺の肩をトントンと叩いて、彼が振り向くと指でつっかえ棒をしていました」
「おいおい、それって30年以上前に流行ったヤツじゃないのか?俺が若い頃、確かドラマでやってたぜ」
「それにしてもだな、紅葉山でスタジオ収録してた頃は、そんなことしなかったよな」
「ああ、宮浦に入ってから急におかしくなった」
「まさか・・・別の誰かが乗り移ったとか・・・」
岩丸と筒見は顔を見合わせて引き攣った笑いを浮かべた。
「やめて下さい」
瀧澤が口を挟む。
「そんな、何者かが乗り移るなんて非科学的な」
筒見が話題を替えた。
「それにしても、ここのママは美人だよね」
「そりゃそうだよ。だって二十代の頃はCunCum(キュンキュン)の専属モデルやってたんだぜ」
「え、そ、それじゃ・・・」
「そう、伝説のモデル・長谷部京子なのさ」

長谷部京子はその美貌と完璧なプロポーションから十代、二十代の女性の絶大な支持を受け、カリスマと呼ぶにふさわしい存在であった。雑誌の専属モデルを経て、テレビのCMやドラマにも出演し、外見に似合わぬ天然系の役までこなす彼女の人気は絶頂に達した。そんな彼女が突如芸能界から消えてしまった。
25歳の時、彼女は結婚した。相手は意外にも普通のビジネスマンだった。しかし、不幸にも不慮の事故で、すぐに夫を亡くしてしまったのである。彼女のお腹には新しい命が宿っていた。そして出産後に復帰する話もあったのだが、結局それは実現せず、表舞台から去ったのである。

「芸能界で仕事をすれば、子供と過ごす時間が取れなくなってしまう。母子二人で食べて行く位の蓄えは十分にあったんだろう。彼女は子育ての道を選んだ。それからはデパートの広告のモデルみたいな単発モノを時々やるだけで、あとはブティックの店員とか地道な仕事をやっていたらしい。彼女は元々、宮浦の隣町の松崎の出身なんだ。故郷に帰る機会を窺っていたんだが、知人の伝手でこの店が売りに出されたのを知って買い取ったみたいだよ」
そこへナオミが追加の料理を運んできた。
筒見が、おっ、という顔をする。
「ねえ君、いくつ?」
「17です」
「いいねえ・・・ねえ、芸能界に興味ないかな?」
「いえ」
ナオミが下がって行く。その時、京子の声がした。
「ナオミ、あんたホントに地味だねえ。全く私の娘とは思えないよ。東大受験もいいんだけどさあ、女だったらメイクとか、着こなしとか、少しは覚えたらどう?コンテストに行くっていうから、歌手にでもなるのかと思ったら《ロボコン》だっていうんだから、もうガッカリ」
「いいの。ヤマシタ君はこんな私がカワイイって言ってくれるんだから」
「まあ惚れた男ひとすじっていうのは、やっぱり私の娘だね」
筒見が京子に声をかけた。
「長谷部・・・京子さんですね?」
「はい、そうですよ」
「やっぱり。相変わらずお美しい」
「ありがとうございます。でもタダにはなりませんよ」
「いやいや・・・ところで、そちらはお嬢さんで?」
「はい。娘のナオミです」
「実はですね、今度、大東京放送主催で新人女優の発掘プロジェクトをやるんですよ。《大東放シンデレラ》っていうんですけどね。で、もし、お嬢さんにその気があるのなら私達にお預けいただければ・・・」
「はい、どうぞどうぞ連れてって下さい。ついでにそちらの事務所で貰っちゃって下さい」
「ひどい、お母さん。ひどすぎる」
「そう?いい話だと思ったんだけど。まあ、本人にその気がないなら仕方ないわね」
「ねえ、お母さん」
「なに?」
「私、大学なんか行かないほうが良い?」
「東大に行かないでどうするの?モデルにでもなる気?」
「そうじゃなくて」
「はっきり言ったら?」
「このお店をね、いっしょにやろうかって思って」
「そうしたけりゃ別にかまわないよ。でもどうして急に・・・」
「心配なの」
「何が?あんたの学費くらいは大丈夫だよ」
「そうじゃなくて・・・」
「なによ、さっさと言いなさいよ」
「お母さんが心配なの。一人で病気になった時はどうするんだろう、淋しくないのかなって」
「それじゃあんたは、東大に行って弁護士になるっていう夢を捨てるんだね?」
「うん」
「本当は大学に行きたいのに、母親のためにあきらめるんだね?」
「・・・」
「ふざけるんじゃないよ!」
京子の平手打ちがナオミの頬に炸裂する。
「あんた、親に恥をかかせる気なの?そんなことして私が喜ぶとでも思っているの?親が望むことはただ一つ、自分の子の幸せなんだよ。だいたい、あんたたちが夢を持って歩いて行かなかったら、これからの世の中、だれが背負って行くのよ」
しかし京子は、痛みと悲しみで、ヒック、ヒックと泣き出したナオミの姿を見て、急に狼狽し始めた。
「あ、ああ、ごめんナオミ。はあ、なにやってるんだろ、私・・・痛かったろうね」
京子もまた涙ぐんでナオミの頭を胸に抱きしめた。
「あんたが弁護士になりたいっていうのも、本はと言えば親を守ってやりたいと思ったからなんだよね。そんな大事なこと忘れてたなんて、なんてバカなんだろう私」
「お母さん」
「あんたはホントに優しい子だね。うれしいよ、とっても。あんたが結婚して家庭を持ったら、家族のことを大切にする素敵な奥さん、素敵なお母さんになるんだろうね。でもね、人間は家族や友達を大切にすることとはまた別に、社会というものにも目を向けなけりゃいけないんだよ」
「社会?」
「そう、世の中はどんどん変わっていくの。良い方に変わっていくこともあれば、病んでいくこともある。これからその行方を決めていくのは、あんたたちなんだよ。家族を大切にする優しさ、社会を背負って行く強さ、あんたはきっとその両方を持っているよ。迷わずに歩いて行きなさい。弁護士になって弱い立場の人を助けてあげなさい。どうせ一度の人生なら思い切りカッコ良く生きてごらんよ」
「お母さん・・・」

(続く)
...2005/08/23(Tue) 02:16 ID:U41Q0qzc    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
たー坊さまへ
リクエスト(ケンとアキのキャンパスライフ)ありがとうございます。
「宮浦の春」は、アキが入学式の日に、今までのことを回想している、という構図になっております。したがって「キャンパスライフ」はまだ出てこないのです。これはすべて朔五郎の筆力の無さのせいなのですが、最初にあのようなシーンで始めたことが読者の方の混乱をまねいたとすれば、お詫び申し上げます。
ただ、大学に合格し、アキの親から「交際OK」が出た時点で、二人にはある場所に行ってもらいます。それはアキの夢が破れたあの場所です。二人でその場所に立った瞬間から、時計がまた動き出します。松本教授への報告とお礼もかねた日帰り旅行です(^^)
...2005/08/23(Tue) 02:29 ID:U41Q0qzc    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:SATO
朔五郎さま
「特進クラス」「エルメス」がつながりましたね。
続きが楽しみです。

>はい、どうぞどうぞ連れてって下さい。ついでにそちらの事務所で貰っちゃって下さい
智世のお父さんも似たようなセリフ言ってましたよね(^^)
...2005/08/23(Tue) 23:37 ID:E37lcFKc    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
SATOさま
>貰っちゃって下さい
ハイ、あのシーンのパクリです(^^;;;
次の次の回で、一つ目のクライマックスになります。達明からケンへ、アツい思いが語られます(笑)

「宮浦の春」のテーマはズバリ「親と子」です。エルメスさんにも、そのテーマのお手伝いをお願いしてあります(^^)
...2005/08/25(Thu) 00:48 ID:PvSh0T4I    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:にわかマニア
 (ベーやんの汗)

 やっとデビューできたばかりだというのに,わがままな出演者のためにパンを買いに走らされたり,叱られ役を押し付けられたりと,ロクなことがない。おまけに,あと2回で放送予定が満杯とは・・・
 これじゃ,田舎の両親に合わせる顔がない・・・
 大丈夫か,オレ・・・

 えっ。第6編という新シリーズがもうじき立ち上がるって。
 でも,どうせ,相変わらず,イジメられ,使い走りばかりやらされるんだろうな。脚本家は,同じ宮浦でも伊予の宮浦と掛け持ちみたいだし,ちゃんとオレのこと忘れずにいてくれるんだろうな。
 大丈夫か,オレ・・・

   ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 というボヤキ節が聞こえてくるかどうかは判りませんが,間もなく「パート6」突入ですね。
 親と子をテーマに,達明からケンへ熱い思いが語られ,エルメスも一役買う。その時,ベーやんは。
 ますます目が離せなくなりそうですね。
...2005/08/26(Fri) 08:43 ID:yslTgtjQ    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
宮浦の春(その5)

「智世、アキはどうした」
昨夜からそわそわ落ち着かなかった達明は、たまらず智世に尋ねた。
「もう図書館に行ったわよ」
「え、早いな・・・で・・・」
「新聞の解答欄のところをさらっと見てたわね」
「どんな感じで?」
「特に変わったことはなかった。落ち着いたものよ」
二日間のセンター試験が終わり、各新聞にはその解答が掲載されていた。受験生はそれを見て自己採点し、二次試験の出願先を決めるのである。
「出来て当然ということか・・・」
「ええ」
「思い出すな、あの時のこと」
「そうね」
「まさかと思ったけれど、やっぱり現実になったんだな・・・」

アキが小学校に通いだしてしばらくした頃のことだった。智世はアキの担任の先生と面談していた。しばらくは教室内での日常など当たり障りの無い話が続いた。そして知能テストの話題になった。
「アキちゃんの結果は、ごくごく平均的なものです」
「この指標で見ると、平均よりちょっと下、ですわね」
担任の先生はバツの悪そうに笑うと言った。
「はあ、まあ・・・」
「小さい頃からお絵かきばっかりしてたもんですから」
解答用紙の隅のほうにたくさんの落書きがあるのを見て、智世も苦笑した。
「アキちゃんは、ちょっと根気がないというか・・・最初のうちは真面目にやっていたようですけど、時間が半分過ぎた頃から、ほとんど落書きばかりしていて。見かねて一度注意したんですけど・・・」
「しょうがないわねえ」
溜息をつきながら得点表を見ると、正解は前半の方に集中していた。
「お母さん、それを見て何か気付きませんか?」
「何かって・・・えっ」
「そうです。落書きをせず、集中して問題を解いていた部分はほとんど正解なんです」
「と、いうことは?」
「それは実際にそうなってみないとわかりませんが、そういうことは十分に考えられます。
見てください。図形や空間を想像するような問題は完璧です。まあ、いずれにせよ、集中力がつけば楽しみですね」

「目覚めたのかな、遂に」
「そうみたい」
「俺達があんなに努力しても全然反応しなかったのにな」
「ええ」
「彼の力か」
「たぶん、そうだと思う」
「彼、最近どうしてる?」
「うちには来なくなったわね。もう教えることもなくなったんじゃないかな」
「なあ、智世。アキは多分合格するだろう。俺たちの出した要求に応えたわけだ。だとすれば今度は俺たちが考えなければならない番じゃないのか?」
「私も・・・そう思ってる」
「俺は健三郎君に会って、きちんと話をしてみようと思う。それでいいな?」
「うん」
「でもな、アキが店を継いでくれるのはいいが、逆に距離が開いたような気がするな」
「私たちが思っていたのとはちょっと違う結果になりそうね」
「ほどほどに、なんていうのは虫が良すぎるということか・・・」

公園の中の歩道を、アキは図書館に向かって歩いていた。陽差しが少しずつ強さを増して、確実に春が近づいていることが実感できた。
ふと前を見るとケンが歩いているのが見えた。ケンもアキに気付いたようだった。アキが近づいて行こうとすると、ケンはギクリとした様子で、そそくさと、アキとは反対の方向へ歩き始めた。
アキは走ってケンに追いついた。
「待ってよ・・・」
「あ、ああ、アキ」
「ねえ、何か私に聞く事はないの?」
「そ、そうだったな・・・試験、どうだった?」
「うん、ばっちり。恐いくらい順調だよ」
「そうか、良かったな・・・それじゃ」
「ちょっと待ってよ。なによ、それ。まるで他人事じゃない・・・」
「だって、別に家族でもないし・・・」
「ああ、そういう意味じゃ他人だけど・・・でも、約束はちゃんと実行してよ」
「約束、か」
「私が合格するまで面倒みるって、うちの親と約束したでしょ?センター試験の結果が出てるのにそれを聞いてこないなんて無責任じゃない」
「だって・・・」
「だって何よ」
「出来たに決まってる訳だから、聞いても無駄だろ」
「ケン・・・浮気とかしてない?」
「してないよ」
「ねえ、どうしてそんなに面倒くさそうな顔をするの?」
「別に・・・」
「私のことが嫌いになったの?この一年間、私がデートとかに行けなかったから、イヤになっちゃったの?」
「そんなことないよ」
「じゃどうしてなのよ。はっきり言ってよ」
「辛いんだよ、もうレベルが違い過ぎちゃってさ」
「どういうこと?」
「アキに教えることなんか、もう何も無いじゃないか。アキ、やっぱり東大とか受験した方がいいんじゃないの?」
「レイコに聞いたの?」
「ああ」
「別に隠してるわけじゃないからいいけど。でも私は宮浦大を受験するから」
「どうして?」
「どうしてって・・・」
アキは絶句した。そんなことすら分からないほど心が離れてしまったのだろうか。
・・・もうだめかもしれない。
アキの目から涙が溢れた。
薬局を継ぐことと自分自身の目標、両立させる自信があった。失うものなど何もないと思っていた。
でも、やっぱりプラスとマイナスはつりあうようになっているのだろうか・・・。
足元が、砂丘の砂のようにサラサラ流れ落ちていく、そんな絶望感をアキは感じていた。

(続く)
...2005/08/26(Fri) 23:58 ID:X4P2xPfA    

             Re: 「世界の中心で、愛をさけぶ 2...  Name:朔五郎
にわかマニア様
ベーやんには、これからいろいろ仕事をしてもらおうと思います(^^)

読者の皆様、共同執筆者の皆様へ
早いもので、このスレを立ち上げてから、もうすぐ一年。そのころはまさか約1500レスにまで到達するなど思いもよらぬことでした。
これも皆様の支えがあったからこそのことです。厚く御礼申し上げます。
皆様はもうお気づきのことと思いますが、朔五郎は「オヤジ」であります。それも朔、亜紀、介、智世たちよりさらに上の世代になります。
そこで開き直って、敢えて「オヤジ目線」で書くことにしております。この物語自体が「亜紀の娘」のお話しですので、まあそういう感覚もアリかなと思っております。
朔五郎がどちらかといえば「第二世代」に対して甘く「第一世代」に対してキビシイのはそのためです。「若い子たちはある程度大目に見てやるべきだけど、いい年した大人がそんなことでどうする」といったところでしょうか。
この物語は、若い人たちがそれぞれの進路を決め、社会の中に飛び出して行く姿を通して、未来を絶たれてしまった廣瀬亜紀に「人間が生きて行く理由」を示すというアンサーストーリーを意図しております。
全体としては「第二世代」を「廣瀬亜紀も含めた第一世代」が暖かく見守るという構図を基本に考えています。

最後に、朔五郎から十代、二十代の読者の方へ贈る言葉です。

「どうせ一度の人生なら、思い切りカッコ良く生きてごらんよ」

これに懲りず、また愛読していただければ幸いです。Part.6でまた、お会いしましょう。
...2005/08/27(Sat) 00:30 ID:CP.qXjno    

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