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過去ログNo1
before A.S〜『空港』のないセカチュー〜  Name:祖父がカメラマン
「………待ってたのよ…」
「……………」
「……わたしは…サクの…いない世界で…ずっと、サクが生まれるのを…待ってたのよ…」

絞り出す様に、少女から投げられた、深く、純粋な愛の言葉。
言葉がでない。見つからない。何も考えられない。
頭が真っ白になり、その後、哀しみと、愛おしさで心が染まった。

『……いいのかい?』

次の瞬間、誰かの声が聞こえた。
声の主が、今でもわからない。だけど、確かに聞こえた。それだけを覚えている。

『サク…お前、本当に、それでいいのかい?』

彼の中で、何かが、はじけた。


人気がまったく感じられない寂れた駅に着くや否や、彼は立ち上がり、彼女の細すぎる腕をつかむ。
「…?……どうしたの…?」
彼女の視線を無視した。彼女の腕を首に巻き、腰に手を回し立ち上がった。
「?…サクちゃん…ねぇ、なに?…ねぇ…」
痩せこけた彼女の躯を抱え列車の出口へ向う。彼が何をしようとしているのか、ようやく彼女も理解した。
「……お願い…やめて、サクちゃん……」
残された最後の力を振り絞り、しかし力なく彼女は反抗する。
だが少年は、その反抗にひるむことなく、少女を抱え上げ、列車を飛び出す。
病身の体を抱いたまま、彼は豪雨の中プラットホームを走り、錆びれた屋根のある場所まで彼女を運んだ。
「…………」
一瞬の事態の変化に彼女は戸惑いを隠せない。
現実を受け入れられないまま − そう、自分に起きていた真実を初めて聞いた時と同じく −
呆然とした彼女の前を、列車は通り過ぎていった。


「…………」「…………」
重苦しい沈黙と、降り続く雨音だけが、その空間をつつむ。寂れた田舎駅には、ふたりしかいない。
「…はぁ……はぁ…」
肩で息をしながら、ベンチに座る少女の前にひざまずく。
意を決し、語り掛けようとしたその刹那、彼は、彼女の声を聞いた。

「…やっぱり……ダメなの…?」

世界で、もっとも哀しい声を聞いた。
...2006/03/06(Mon) 02:12 ID:wmjaR6Pg    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
投稿に当って最初に一言付け加えさせて頂きます。

正直、迷いました。今でも迷ってます。
あの空港でのシーンを無くした別の世界観を描こうとしてる事に対して。
私が今後描く様な甘い未来が来る可能性が少しでもあったなら、
朔も亜紀も、あんな哀しく無謀な行動は取らなかったはずですから。

でも、もし亜紀が助かってアナザーストーリーの様な心温まる未来が訪れるなら、
それは朔のある決意から生まれた奇跡だと思いたいし、信じたい。そんな作品です。

原作の結末にケチをつける気持ちなど毛頭ありません。
大感動しましたし、朔の純粋で真っ直ぐな愛情と亜紀の崇高な愛情に心が震えました。
でも、ただ二人で一緒にいさせてあげたかった…そんな素人の野暮な想いを文章化してみただけです。
お見苦しい点は多々あると思いますが、それでもお付合い頂ければ、とても光栄です。
...2006/03/06(Mon) 02:21 ID:wmjaR6Pg    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:ポポ
>祖父がカメラマンさん

私もいまだに10話のDVDがまともに見れない人間で
どんなに夜遅くなっても11話とセットでないと精神的に
トラウマになってしまうので、よく気持ちはわかります。

朔と亜紀に明るい未来が待ってるお話みたいなので、続編を期待してます。
頑張ってくださいね!!
...2006/03/06(Mon) 15:45 ID:DXiTdh8g    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:ぶんじゃく

>祖父がカメラマンさん

朔が起こすであろう奇跡、期待しています。
『……いいのかい?』
この声が本当に聞こえてきそうです。

頑張ってください。
...2006/03/07(Tue) 01:02 ID:zOSgTfJw <URL>   

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:表参道
祖父がカメラマンさん

初めまして、表参道と申します。

お気持ちとても良くわかります。

二人の間で起こる奇跡心より期待しております。

執筆頑張って下さい。
...2006/03/07(Tue) 01:31 ID:j3.iEH1Y    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
>ポポさん
>ぶんじゃくさん
>表参道さん

温かいコメントをお寄せ頂き、本当にありがとうございます。
賛否両論、凄いんだろうなぁ…と不安を抱えながらのスタートだったので、
とても気が楽になったと言うか、肩の力を抜く事ができました。

正直、朔が起す奇跡とは白血病の治療方法を見出すとか言った具体的なものではなく、
ひたすら亜紀の事だけを真っ直ぐに思い続ける『気持ち』、それが亜紀の生還と言う何よりの奇跡に
結びつく…そんな感じが表現できればいいな、と。
世の中、色んなしがらみや不条理の中で、甘い願望なんてそうそう通るものではなく、
でも松本朔太郎と廣瀬亜紀、このふたりなら、好きという気持ちだけで寄り添って生きて行っても
いいんじゃないか…、そんな甘い願望を抱いています、未だに。

まぁ、余り前置きが長くなっても…なので次の投稿に入ります。
でも、その前にもう一言だけ。
セカチューのサイトで聞えてくる『頑張れ』の声って、やつぱり格別なものがあるなぁ、と痛感致しました。
それでは続きを御覧下さい。
...2006/03/07(Tue) 02:49 ID:BzVmdtRo    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
声を荒げ、罵倒してくれるような相手だったら、どんなにか気が楽だろう。
弱虫。いくじなし。卑怯者。何でもいい。軽蔑してくれた方が、どんなに気が晴れるだろう。
でも、そんな娘だったら、ここまで好きになることはなかった。

頭の回転が早く、優しすぎる彼女は、即座に周囲の空気と環境を察知してしまう。
それは、ある意味で、とても不幸なことだと思う。
今も、そうだ。いや、肉体が衰えた分、彼女の鋭敏すぎる神経は、さらに研ぎ澄まされていた。
少年のとった行動の真意を、少女は即座に理解した。少女は、少年を責めない。絶対に。
その代わり、彼女は心を閉ざした。ドアが閉まった音が、はっきりと聞こえた様に思えた。

でも、構わない。ドアが閉まったなら、ドアごと持ち上げて運んでいく。
また、いつの日かドアが開くまで、ずっと、ずっと待ち続けよう。
それくらいの覚悟は、とうに決めている。

「………恨んで」
「…えっ……?」
「……憎んで…恨んでくれて、いいよ…」
「恨む、だなんて…そんな……」

「…でも、俺…こんなことしか出来ないんだよ!」
「!!?………サク…」
人気のないホームに、哀しい咆哮がこだました。


「…弱いし、情けないよ、俺……結局、亜紀に何もしてやれない」
「……何、言ってるの、サクちゃん…わかんないよ………」
「……だけど…ずるいよ、やっぱり……」
「…………」
「…亜紀のいない世界で、俺に、何しろって言うんだよ…」
「…………」
「…俺、こころ、狭いんだよ…知ってるだろ…」
「……サクちゃん…」
「…亜紀が、俺のこと待ってたの…3ヶ月だけじゃん……」
「…それは……」
「俺…これから…いったい、あと何年、生きなきゃいけないと思ってんだよ…」
「…………」
「…あと、何年…亜紀の……亜紀がいない世界で!」
「………ゴメン…ゴメンね……」

少年は、嗚咽を必死でこらえながら、自分に何かを伝えようとしている。
だから彼女も、言葉をほとんど挟まず、必死に耳を傾ける。
人が真剣に話す言葉は、きちんと聴いてあげなければならない。
ましてやそれが、世界でもっとも大切な人からの言葉ならば。


「…帰り道にさぁ、聞いたこと、あったよね。
 『サクちゃん、何かやりたいこととかないの?』って…」
「………うん…」
「俺ね…ようやくわかったんだ。やりたいこと…」
「…………」
「…俺のやりたいことって…亜紀のいる世界で、亜紀と一緒にいること、なんだって…」
「…………」
「…亜紀が、俺を、サクちゃんって呼んでくれる世界…たった、それだけ…」
「……サクちゃん…」
「…小さいだろ…亜紀と違って、すごい幼くて……」
「……そんなこと…」
「でも…色々、考えても…これしか、思い浮かばないんだ、俺…」
「…………」
「だから…一緒にいてよ、亜紀…ほんの少しでも……」

「………私のは…」
「…えっ……?」
「…私の…夢は?…」
「…………」
「…わかってるよ…わがままで…嫌なやつだって……」
「……亜紀…」
「……でもね…もう…こんなこと言えるの、サクちゃんしか…いないの…」
「…………」
「……私にも!…サクしか…サクちゃんしか…いないんだよ……」
「…………」
「…私…もう…見れないんだよ…空…」
「…………」
「………私の夢は…どうなっても、いいの…」
...2006/03/07(Tue) 02:53 ID:BzVmdtRo    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
若い、いや、幼いふたりにとって過酷で苦渋の決断を下さねばならない
瞬間が訪れている。
ふたりとも、決して間違っていない。決して、悪くもない。

少年は、少女の最後の願いを誰よりもわかっている。
生まれてきた証として、病気ではなく、自分の意思で死を迎えたいという
その誇り高き思いを、誰よりも理解している。
それでも、彼女の最後の夢を奪ってでも、彼は彼女の生を強く願った。
誰よりも、廣瀬亜紀が好きだから。大切だから。

少女も、少年の葛藤や孤独を誰よりもわかっている。
自分の身に異変が起きた時、彼はずっと彼自身を責め続けてしまう。
その事を自分への罪として、ずっと背負い続けてしまう。
そんな人だ。その真っすぐさと優しさが、辛かった。振り切りたかった。
でも、離れられなかった。どうしても、彼と、一番綺麗な空を見たかった。
誰よりも、松本朔太郎が好きだから。大切だから。

重い沈黙の後、意を決したように、少年が口を開いた。

「…………………いい…」
「…えっ……?」
「………………いいよ…」
「…………サクちゃん?…」
「……どうなっても…いい………」
「…………」
「…亜紀の夢、今……俺が……こわす」
「………サク……」
「だって…だって俺!!…亜紀とだったら!ウルルじゃなくてもいいし!」
「!!?……………」
「亜紀がいるなら…それが何処であろうと……」
「…………」
「…そこが病院だろうと、どんなに汚い空の下だろうと…
俺は、亜紀さえいてくれれば、それで……」
「…………」
「…お願い…します……あきらめないで、ください…」
「…………」
「…亜紀と、少しだけでも、一緒に…いたいだけなんだ、俺……」
「…………」
「…何も…してあげられないけど……」
「…………」
「…俺…何も、できない…できないけど……」
「…………」
「……だまって、そばにいるしか…できないけど…」
「…………」
「…たとえ、その日が…明日でも…明後日でも……」
「…………」
「……俺は…絶対、亜紀の…傘になるから……」
「………カサ…」
「…濡れないように…ずっと傘…ちゃんと、差すから……だから…」
「…………」

後続の列車が再びプラットホームに向ってきている。
ふたりは、それに何の反応も示さず、ただ黙っている。
少年は、少女の最後の夢を壊した罪悪感と喪失感から下を向き続け、
それでも少女は、ただひたすら、少年の真摯な声を受け止めようと。

再び少年が、ひざまづいたまま、言葉をつむぎ出した。
...2006/03/08(Wed) 02:39 ID:UfxiU9dg    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:clice
祖父がカメラマン様
新しく書き始められた物語拝読致しました。
朔太郎の心情が丁寧に書かれていてとても素敵なお話になりそうな予感がします。
明希が気づいた朔太郎の後悔の理由を、私自身ちょうど書かせて頂いたところにこのお話・・、なにか不思議なものを感じます。
朔太郎はずっと躊躇い葛藤していた・・亜紀の夢を叶えてあげたい・・でも、本当にそれでいいのか・・と。
でもそれは亜紀の両親や病院に対しての道義的な躊躇いで、朔太郎自身は亜紀が死ぬなんて本当はこれっぽっちも考えてなかったと思います。
亜紀は自分がどうなるか知っていても、朔太郎は何も知らなかった・・。
朔太郎の願いは亜紀とずっと一緒にいたい・・・ただそれだけだったと・・。

「だって…だって俺!!…亜紀とだったら!ウルルじゃなくてもいいし!」
とても共感できる台詞です。朔太郎らしいなと思います。

私が書きたかったもう一つの物語ですが、朔太郎が自ら決断した未来を応援したいです。
「かんばれ!サクちゃん」
そして祖父がカメラマン様も・・・がんばって下さい。
...2006/03/08(Wed) 08:10 ID:PW5h./wY    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:栄光の架橋
こんにちは。栄光の架橋です。本日は腹痛の為、学校を休みました。(学校を休む=be absent from school fromだったけ?)明日卒業式なのに不安です。

祖父がカメラマンさんの作品を早速拝見しました。サクの誕生日の日からの設定ですね。ここからまた新しいストーリーが展開されるのですね。楽しみにしています。
...2006/03/08(Wed) 11:49 ID:Yb8gBt3M    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:一読者
>「だって…だって俺!!…亜紀とだったら!ウルルじゃなくてもいいし!」

cliceさんと同じく、このセリフにとても共感致しました
リアルタイムで朔と亜紀を見ていた頃、特に10話の時に私が一番朔に言ってほしかったセリフです。
等身大の2人の葛藤が描写されており、とても読み応えがあります。
今後も期待しています。祖父がカメラマンさんの投稿と朔と亜紀の明るい未来に。
...2006/03/08(Wed) 21:55 ID:12fkgEMg    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:表参道
祖父がカメラマン様

いつも執筆お疲れ様です。

表参道です。

毎回楽しく拝見しております。

私もcliceさんや一読者さんと同じでストーリーの中のサクの台詞はドラマの中で本当に言って欲しかった台詞でなんだか救われたような気持ちになりました。

ドラマは終わってしまいましたがclicさんや祖父がカメラマンさん達のお陰で大好きだったサクや亜紀にもう一度会えて本当に感謝してます。

お二人ともお体に気をつけてこれからも執筆頑張って下さい。

読者としてお二人の物語の大ファンです。
...2006/03/09(Thu) 00:12 ID:RRBjjjkE    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
>cliceさん、栄光の掛橋さん、一読者さん、表参道さん

大変温かい御声援の数々、本当にありがとうございます。
何か、やってよかったなぁ…って素直に感動してます。
これからも頑張りますので、宜しくお願い申し上げます。

さてcliceさんから御指摘頂いた『朔の後悔の原因』については、私は周囲の人々への罪悪感より、彼自身の無理 ― 言い換えるなら背伸び ― が要因だった、と考えています。
人間って1何かを00%諦め切れる程、単純でも豪快でもない動物ですから、彼の中に(亜紀が)生きてさえいれば奇跡が…という妄想にも似た願いが絶対にあったはずなんですね。
私も仕事でピンチの時、いつも妄想してますんで(苦笑)
その甘い奇跡の拠り所…『生きてさえいれば』という可能性を、亜紀の夢を叶えたい!という純粋な無謀さが全て消し去ってしまった事実が彼を苦しめ続けた、のかなと。

いいじゃん、背伸びすんなよ、サク。
そんな言葉を当時の彼に掛けてあげてやりたいが故に、私はこの作品を書いている様な気がします。

それでは続きを御覧下さい。
...2006/03/10(Fri) 01:27 ID:4zf0V3Yc    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
「…………ごめん…なさい……」
俺、土壇場で、亜紀の夢、かなえてやれなかった。亜紀を、裏切った。

「……ごめん…本当に…ごめん…」
何で、ここでカッコつけれらないんだろう。何で、俺に任せろって、言えないんだ。

「………………ごめん……」
俺、情けないよ、亜紀。守る力も、叶える力もない。

「………亜紀……ごめん……」
亜紀の夢は?気持ちは?自分だけよければいいのか、俺は?

「………ごめん……なさい……」
いまさら病院に戻って、何がある?何ができる?
そこでまた苦しむのは俺じゃない、亜紀だ。亜紀がつらい思いをするだけだろ。
それでも俺は、自分のエゴを押し通すのか?そんな権利が俺のどこにあるんだ?

「………ごめん……亜紀…ごめん……」
俺とつき合ってから、亜紀、嫌なことばかり起きたね。俺、亜紀の疫病神だ。
俺さえいなければ、こんなことにならなかったのかもしれない。本気で、そう思ってるよ。

「でも……でも、俺……」
ごめん。だけど、もう、ごまかせないよ。
世界で一番綺麗な空より、もっと、もっと大切なものがあるんだよ、俺には。

「…亜紀…俺………」
失いたくない。

「………………ごめん……」
みっともなくていい。嫌われていい。弱虫って言われていい。

「………だけど…それでも!」
失いたくない。君を、失いたくない。君の呼吸が続く限り、何かにすがっていたい。

「……………亜紀っ……」
名前を。君の名前を。亜紀、って呼ばせてください。亜紀がいる世界で。


「………………」
もう、これ以上はしゃべれなかった。
嗚咽と慟哭に苛まれ、彼はそれ以上、言葉を繋げることが出来ずにいた。
彼女への愛、感謝、哀悼、懺悔。
自分自身の力の無さへの失望、怒り。現実への苛立ちと不安、恐怖、そして絶望。
それでも捨てきれない僅かな夢。
あまりにも多くの、あまりにも重い感情を背負った17歳の少年は、ホームに跪くことしかできなかった。

ふと、頭上に何かが降りて来た気がした。
― 空気が触れる程度の、弱く、やわらかく、優しい感触 ― 彼は、涙と鼻水で汚れた顔をあげる。

そこには、透き通るような少女の笑顔と共に、白く、痩せ細った腕が、差し出されていた。
...2006/03/10(Fri) 01:33 ID:4zf0V3Yc    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:ぶんじゃく

祖父がカメラマン様
これが朔の精一杯なのかもしれませんね、
これ以上ないギリギリの精神状態が手に取る様に
に伝わってきます。
朔が朔であるが故に亜紀も亜紀でいられんでしょうね。
...2006/03/11(Sat) 01:33 ID:9Qnh./Wk <URL>   

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
>ぶんじゃくさん
>これが朔の精一杯なのかもしれませんね

そう思って頂けると、とても幸いです。
亜紀を美しく死なせてあげたかった、という願いも間違いなく朔の本心でしょう。
でも17歳の田舎町の普通の高校生にとって、本当の気持ちって『大好きなひとと少しでも一緒にいたい』、これに勝るものはないと思ってます。
そんな朔の飾らない、真っ直ぐな『精一杯』が、奇跡へと結び付いた…そういった展開を考えています。

>朔が朔であるが故に亜紀も亜紀でいられるんでしょうね
この作品のメインテーマはそこにあります。見抜かれてましたねw
朔は恥も外聞もかなぐり捨て、亜紀に『生きて!』というボールを投げました。
今度は、亜紀が応える番です。続編を御覧下さい。
...2006/03/11(Sat) 22:29 ID:Nw6YGIgs    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
「……あの日も…雨だったね…」
「………………」


なんで?なんで、あやまるの、サクちゃん?

あやまるのは、私の方だよ?

今まで、いっぱい甘えて、わがまま言って、いつも困らせて。

私、あなたに、何もしてあげられないどころか、ひどいことばっかりしてる。

病気になってからなんて、哀しい思いばかり、させてるのに。

それなのに…ねぇ、何でいつもそんなに優しいの?あたたかいの?


「……いつも…傘、さしてくれるんだね…」
「………うん……差すよ、俺…」


ここまで、いっぱい、つらい思いをさせちゃったね、サクちゃん。

いっぱい、泣いてくれたんだよね。いっぱい、悩んでくれたんだよね。こんな私のために。

そして今日も、すべてを敵に回す覚悟で。私を飛行機にのせてくれるために。

サクちゃん、ごめんね。本当にごめんね。でも、うれしかった。うれしいよ。ありがとう。


「………いいの?それで…」
「…いいよ…」


私、やっとわかったよ。サクちゃん。

そのままでいいよ、と私のすべてを受け容れてくれたひと。

私を、包んでくれたひと。温かく見つめてくれたひと。優しく抱きしめてくれたひと。

だから、サクちゃんの前では飾らずにいられた。気取らずにいられた。私が私でいられた。

サクと出会えたこと。サクと愛し合えた日々。

それだけで、私の17年には、意味があった。価値があった。生まれてきてよかった。ホントだよ?

この3ヶ月間の、すべての日々が、わたしの宝物。

サクと出会えずに生きていく人生なら、サクと出会えてから死んでいく、今の私をとるよ。

心から、そう思ってるよ。言わないけどね。恥ずかしいから。

私、いまね、大声で叫びたい。世界中に、誇りたい。

たった17年間だけど、こんなに幸せな人生を過ごすことができたよ、って。

サクちゃんがいる。それだけで、私は誰よりも幸せだったんだよ、って。

今でも、ウルルの空、見たいよ。あれもしたいよ。これもしたいし。

でも、今、思い出したの。学校の帰り道、防波堤、山道、紫陽花、たこ焼き。

空が晴れていようが、雨が降っていようが、いつだって、楽しかった。

ふたりでいられることが、何よりも、楽しかった。

こんなに、大好きなひとを見つけた。こんなに、大好きなひとに出会えた。

こんな大切なこと。そして、こんな当り前のこと。なんで、見失っちゃったんだろうね?


「………そっか…」
「……………亜紀……」


いいよ。わかったよ、サクちゃん。サクちゃんの言うこと、聞くよ。

どんどん痩せてくし、どんどん汚くなる。多分、その繰り返し。

でもね、サクちゃんが生きろ!って言ってくれるなら、私、一生懸命、息するよ。

生きてる、って意味、やっとわかったよ、サクちゃん。

手をつなぐことなんだね。声が聞こえることなんだね。私のそばに、あなたがいてくれることなんだね。


だから、私、最後まで、頑張ってみるよ。生きてみるよ。

ゴメンね。絶対、迷惑かけちゃうよ。また、甘えちゃうよ、いっぱい。

でもね。サクちゃん。私も、もう、ごまかさない。

わたしね、本当は、一分一秒でも長く、松本朔太郎のそばにいたいんだ。

お願い。最後まで、一緒にいてね。嫌いにならないでね。

好きよ。サクちゃん。大好きだよ。ありがとう。本当に、ありがとう。


すべてを、声にして、伝えたかった。
おもいっきり、大声で泣いて、あやまりたかった。
そして、全力で、彼を抱きしめたかった。キスしたかった。
でも、自分には、もう何もできない。何も、してあげられない。
それでも、彼に、どうしても、自分の気持ちを伝えたかった。

万感の思いをこめて、少女は、少年に、話しかけた。

「……………病院に……もどろう………」
...2006/03/11(Sat) 22:37 ID:Nw6YGIgs    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
透き通る、という表現を超越した血の気の無い白い顔。
白のブラウスの下に幾つも見え隠れする、紫色の斑点模様。
その細すぎる腕は、あの夏の日と異なり、大きく開かれていない。
体力の限界を過ぎた少女は、自分の腕すら自分で支えられないのであろう。

でも、ベンチに腰掛けながら腕を差し出す彼女は、何よりも美しくて、何よりも優しくて。

細い膝に顔をうずめ、彼は泣いた。我を忘れて、泣いた。壊れたかのように、ただ、泣いた。
彼女の優しさに。何も出来ない、自分の弱さに。
そして、今なお尽きる事の無い、彼女への思いに。

少女は、微笑を称えながら、彼の頭を、からだを、命そのものを包み込んでいる。
「…サクちゃん…あの世なんて、ないよ……天国も…ない……」
「………………」
「……サクちゃんの…いるところが……天国だ…」
「……………亜紀っ……亜紀!…」

すべてを失い、すべてを奪われてきた。
夢の量は、現実の重みと反比例していくことも知った。
現実の冷酷さと強さは、人間の儚い願望や期待を食い散らすことで成り立つと思った。
明日、とは決して信じられるものではないことも学んだ。

それでも、生きていこうと思った。
最後まで、ふたりで、足掻こうと思った。
どんなに傷つこうと、どんなに苦しかろうと、最愛のひとの生を強く願った。

そして、そんな、一方的で、身勝手で、幼稚な願いを
微笑んで、ただ、微笑んで、迎え入れてくれた、
彼女の優しさが、とても、うれしくて。とても、愛しくて。

ふたりは雨の中、ただ、抱き合い続けた。ただ、寄り添い続けていた。
...2006/03/11(Sat) 22:40 ID:Nw6YGIgs    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
「………弱虫…うそつき……この、薄情者……」
「…ホント…こころ……せまいよね……」
「……サクちゃん………だいっきらい……」

空港への航路と逆送する列車の中、少女はか細い声で、少年をからかい続けている。
松本朔太郎の嫌いな所、ワースト…10?20?…いや、それでは足りないくらいに。
それは少年が(本当に、嫌われたのかな?)と不安になるほど、長い口撃だった。
ちなみに後日談として、彼は親友2名に、冗談口調でこう漏らしている。
「…ホント、途中で置いてこうかとマジで思ったよ、一瞬」

だが、何を言われようが、どれだけ御機嫌を損ねようが、不思議と後悔の念だけはなかった。
何が正しくて、何が正しくないかなんて、わからない。未だにわからない。
しかし、今、自分がすべきこと。自分ができること。
それは、今、この時に、彼女をウルルに連れて行くことではない。
それだけは間違っていない、と思った。


それに。気のせいかもしれないが。彼女の声に、明るさと、穏やかさが戻った気がしていた。
あの、愛くるしい脹れっ面。茶目っ気たっぷりで、いたずら好きで、甘えん坊で。
そこには、あの日、生きることを放棄した彼女は、もう、いない。
すべてを捨てて臨んだ死のハネムーン…彼女は、彼女で苦しかったのだろう。
亜紀が、最後に、ようやく亜紀に戻れた。そんな気がした。

ストレス発散後、穏やかに、満足気に眠るお姫様の横顔を見て、苦笑まじりに傘はつぶやく。
「…さっき言ったろ……前にも言ったよね?…そのままがいい、って……」

何ひとつ、事態は好転していない。奇跡なんて、そうそうあるもんじゃない、とわかっている。
それでも、何か気が楽になった気がする。互いに、肩の荷が降ろせた気がする。
この日々が、あとどれ位続くのか。いや、もう、続かないかも知れない。
そんな極限状態の中でも、出会った頃のふたりに戻れたことが、彼には何よりも嬉しかった。

「……んっ?…」
目の錯覚だとも思う。あまりにも一瞬だったから。でも確かに、そこで光っていた。
安らかに眠る彼女の白い服に、小さく、でも鮮やかに映える、緑色の光を。
「…戻って、来てくれたんだな……」思わず、つぶやいた。
さっきまで何も見えなかった暗闇に、たったひとつだけ、小さく、強い灯りが見えた。そう、信じた。
...2006/03/11(Sat) 22:45 ID:Nw6YGIgs    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:たー坊
執筆お疲れ様です。たー坊と申します。
こちらでは、はじめましてですね。以前は私のストーリーをお読みいただきましてありがとうございました。
これからもお互いに良い作品を続けられるように頑張りましょう。
...2006/03/12(Sun) 00:31 ID:NbPb3GW6    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:一読者
祖父がカメラマン様

お疲れ様です。一気に読まさせて頂きました。
いやー久々に泣きました(いい年して恥ずかしいですけど)
第10話を「たすけてください」ではなく「ごめんなさい」というタイトルに変更して、是非見てみたいくらいです。
もちろん山田君のナレーション付で(笑)

朔の真っすぐな願いに、亜紀が真っすぐ応えてくれたことがとても嬉しいです。特に
>でもね。サクちゃん。私も、もう、ごまかさない。
>わたしね、本当は、一分一秒でも長く、松本朔太郎のそばにいたいんだ。
ここが号泣ものでした。続編を期待しております。
...2006/03/12(Sun) 18:58 ID:vuk0dqFM    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:朔五郎
祖父がカメラマン様

初めまして。
「戻ってきた小さな光」というのは、夢島のシーンの裏返しですよね。
朔と亜紀が運命を撥ね返して「生還」することを願っております。
...2006/03/12(Sun) 21:43 ID:zo0VKSC6    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:KAZU
祖父がカメラマン様

始めまして。
10話のあのシーンを思い出しました。
「サクちゃん、あの世なんてない。天国なんてない。ここ天国だもん。」の亜紀の言葉を…
今後の物語を期待しております。
執筆頑張って下さい!!
...2006/03/13(Mon) 11:57 ID:Ztl12Msc    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:ポポ
一週間ぶりにこのサイトをのぞいたら、予想以上のハイペースで物語が進行してたのに驚きました。
お疲れ様です!!!
感想は他の方々が書かれているように、こんな物語が見たかった、それに尽きます。
ありのままをぶつける朔が愛しくて、帰りの電車の中で茶目っ気たっぷりに朔をからかう亜紀が可愛らしくて。
何よりも亜紀が自分の意思で病院に戻ったことがとてもうれしかったです。よかったね、サクちゃん。

続編を期待しています、頑張って下さいね!!!
...2006/03/13(Mon) 15:07 ID:.CL2.PIE    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
いつもこんな拙い作品しか書けない私に温かい言葉を掛けて頂く皆様に心から感謝しています。
謙遜でも何でもなく、本心です。本当にありがとうございますm(_ _)m
これからも精一杯精進致しますので、今後とも御指導御鞭撻の程、心よりお願い申し上げます。

>一読者様へ
いつも温かいコメント、ありがとうございます。ですが、
>第10話を「たすけてください」ではなく「ごめんなさい」というタイトルに変更して、是非見てみたいくらいです。

とても恐れ多いです。勘弁して下さいw
ただ山田さんのナレーションは時々文章考えてる時に、脳裏に浮ぶ事はあります。

>朔五郎様へ
初めまして。今後とも宜しくお願い致します。
蛍のシーンは夢島の裏返し…というより完全なパ○リですw
ただ放映時に感動した台詞やシーンを上手く反映させて行きたい…とは考えています。

>KAZU様へ
初めまして。御挨拶が遅れ申し訳ございません。
天国なんて…の件も完全に○クリですw
ふたりを幸せにする為なら、使える物はもう何でも使う覚悟です!

>ポポ様へ
私自身が書き貯めしないと投稿できないタイプなのと、4月下旬に海外赴任が決定してるという2つの理由でハイペースになっております。
こんなことなら、もっと早く始めとけば良かった…と悔やんでますw
ポポ様始め皆様にもっと喜んで頂ける様、精進致しますので、今後とも御声援宜しくお願い申し上げます。

さて次回作は明日にでもUP致します。
ここからは少し毛色を変えて、朔と亜紀だけでなく、周囲の人々の支えによって亜紀が回復して行く…という設定にしています。
勿論中心は朔と亜紀であり、その支えも全て朔の素直な気持ちと行動から始まったものですが…

第一回目は意外な人から始めたいと考えてます。是非御覧下さい。
...2006/03/14(Tue) 03:40 ID:b0wC6b6o    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
誰に言われた訳でも、強制された訳でもない。
自分達の意志で生きよう、と決めた。足掻こう、と誓った。
ふたりは出発したプラットホームに戻ってきた。たったひとつの、強い思いを抱えて。
朔の連絡により、駅の前には救急車がふたりを待ち構えていた。

サイレンが亜紀の帰還を知らせる。慌てて外へと飛び出す4人の親たち。
緊急連絡口に停められた車の中から、更に顔色を青白くした亜紀が戻ってきた。
「……もう…この子は…心配ばかりかけて…」
「…おかあさん…おばさん……ごめんなさい…」
「気をしっかり持つんだよ、亜紀ちゃん。大丈夫だからね!」

亜紀には双方の母親が寄り添い、病院内へと入って行く。
そして男達だけが一旦残った形となった…朔と潤一郎、そして真の3名。
ピンと張り詰めた雰囲気の中、やはり真の様子が尋常ではない。
唇をゆがませ、肩をわなわなと震わせている。
その状態のまま、彼は朔に詰め寄り無言で襟首を左手で掴む。右手は勿論、固く握られている。
潤一郎の目の前とは言え、もはや朔を憎むことでしか立っていられない…そんな形相で。

病人を連れ出した真犯人も、覚悟を決めているらしく、目を瞑り奥歯を噛み締める。
自分自身でも、当然の報いだと思っているから。
無断外出の結果、亜紀の容態が変化したのはこれで2度目である。
だが前回と大きく異なる点がひとつあった。
夢島の時は、彼は亜紀の病状を知らなかった。断じて、わざとやったわけではない。
今回はわざと、だ。確信犯だ。病状を認識した上で、何と海外へ連れ立とうとした。
後悔はない。亜紀の願いを叶えてやりたい。安らかに眠らせてあげたい。その気持ちに嘘はなかった。
でも、その思いは自分と亜紀の間では理解し合えるものであっても、他の人々 ―
特に重症の愛娘を抱える親たち ― にそれを理解してくれとは断じて言えない。
全てを背負おう、と思った。亜紀に関わる全ての負の感情を。それ位しか今の自分にはできないから。
朔は覚悟を決めてインパクトの瞬間を待つ。

が、その怒りの鉄拳が炸裂する直前に、真は動作を止めた。
呆然とする朔の顔を一瞥もせず、握っていた拳を開き、ポン…っと一回肩を叩く。
真には、わかっていた。
瀕死の娘を病院から連れ出したのは確かにこいつだ。
娘の願いを叶えることを自分の務めだと思い込み、一時の感情のみで突っ走る。
無責任な青臭いガキの発想だと思った。憎んだ。
しかし、その娘を説得し、病院に連れ戻してくれたのも恐らくこいつだ。
頑固で意地っ張りなあの娘の意思を覆す…よほどの無理と無茶をしたのだろう。
そして何より、自分が惚れ込んだ女の最後の願いを叶えたい…という気持ち、それは同じ男として
決して否定できないものを感じ取っていたから。
自分でも気付かぬうちに、真は朔の純粋さを認め出していた。

踵を返し、真は亜紀が搬入された病室へと無言で向う。そして松本家の親子が取り残された。
緊迫した空気は引続き漂っている。
特に、普段温厚を絵に描いた様な自分の父から漂う怒りのオーラに朔は戸惑っていた。
「………ごめん、俺…」
「この……この大バカ野郎がっ!!!」
一喝、いや、大喝された。その怒声は冷静沈着な真が後ろを振り返るほど、迫力と威厳に満ちている。
そこにはまぎれもなく、成人未満の子供を抱える父親の姿があった。
17年間で初めて、と言ってよい程の叱られ方をした朔が、肩を狭め下を向く。
怒りが覚めやらぬ様子で、息子に近づく父は、乱暴に息子の頭を掴み、髪をくしゃくしゃにした。
「…でも……よく頑張ったな、お前…」
「………えっ?…」
息子の意外そうな反応に応えることなく、潤一郎も病室へと向う。
(……頑張った?俺が?…なにを?…) ひとり取り残された朔は唖然としていた。
...2006/03/15(Wed) 02:01 ID:1zqDVJF6    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
緊急治療室の前で亜紀の無事を祈りつづける2組の親たち。
朔は責任を感じてか、そこから少し離れた待合所のロビーでひとり祈り続けている。
赤色のランプが消え、担当医の佐藤が複雑な表情で現れた。
「先生!娘は、娘の容態はどうでしょうか!?」
「…今の所、問題ありません。無茶なことをした割には、体力も何故か低下していませんし…」
一斉にホッとした表情を浮べる4人に、佐藤は険しい口調で語り続ける。
「しかし、次にこんなことがあれば、我々には何の保証も…」
「申し訳ございません!」
何故か同時に真と潤一郎が深々と頭を下げる。次いで純子と富子も。
が、普段は冷静な佐藤の顔から怒りの表情が消え去ることはなかった。
「…心配でしょうから、廣瀬さんは娘さんのお顔を見てあげて下さい。まだ眠っていますが…
それから、松本さん。息子さんを連れて来て下さい。話したいことがあります」

その後、暫くして、朔は佐藤の教授室に連行されていた。
実の両親と娘との無言の面談を追えた廣瀬家の両親と共に。
相変らず険しい表情を崩さず、佐藤が語り掛ける。
「……とんでもないことを、仕出かしてくれたね。まったく…」
「………本当に、すいませんでした…」
謝罪しながらも、朔の心中、どうしても腑に落ちない ― いや、許せない感情がある。
(…あんた達がしっかりしていれば…亜紀は、こんな酷い目に…)
「…力不足だ、と責めたいのだろう」
「!!…………いえ…」
「わかっている。自分でも歯痒く思っている。亜紀ちゃんにも、御両親にも申し訳なく思っている。
 私個人への批判なら何を言われようが甘んじて受けよう…」
そう言いながら力強い眼で、佐藤は視線を朔個人から全体へと向ける。
「ただ、朔君だけではなく皆さんに…この場にはいない亜紀ちゃんも含め、申し上げたいことがあります」
「……………」
「あまり、医学を見くびらないで頂きたい」

今まで一度も見たことがなかった佐藤の強固な姿勢に、全員が驚きを隠せずにいる。
「…確かに見通しは非常に厳しい。即有効な手段は?と問われれば、現状はないとお答えせざるを得ない。
 従来通り、皆さんには覚悟をお決めになっておいて下さい…」
「……………」
「ですが、あきらめるには未だ早い。早すぎます。
 亜紀ちゃんの基礎体力の維持を優先し、根本的な治療から抑制措置に切替えて行きます。
 …その間に、新しい抗がん剤や治療法が開発されるかもしれない…」
「…かもしれない、って…そんな…」
この5名の中では最も感情的な反応を示す富子が思わず口をはさむ。
「……無責任だと思われますか?」
「だって…だって、そんな言い方!」
「よせ!」 今度は嫁に潤一郎が一喝する。
「…俺たちが口をはさむ問題じゃない…先生、申し訳…」

「…いや、奥様の反応は至極当然です。失礼な表現であることも承知の上です。
 ですが、その『かもしれない』に関係者全員の心血を注いでいるのが医学なのです」
「……………」
「今日、まだ実証されていない学術が、まだ完成していない新型の処方箋が、明日には開発されている。
 日進月歩、いや一分一秒を争いながら新しい何かを追求し生み出す世界。そこに我々がいます。
 身を削り、精神を削りながら世界中で戦っています。それが我々『医』に携わる者の務めですから」
「……………」
「…私個人の力量不足は認めます。が、世界中に医者は私ひとりではありません。
 今、この時も、白血病への対処方法が至る所で研究されております。
 その情報を一刻も早く入手し、亜紀ちゃんを救い出せる様、取れる手段は全て行っています」
「……ありがとうございます…」
「我々は…御息女の治療に携わる全員が、まだ何もあきらめておりません!」
「………先生…」
「…ですから、皆さんも絶対にあきらめないで下さい。まだ何も終ってはいないのですから…」
ここで医師は、重病患者の恋人に再度視線を戻す。
「……君が、ここでくじけてどうする…」
もう、これ以上の言葉は必要なかった。
瀕死の亜紀が、誰を支えに、何を頼りに頑張っているか…それは誰の目から見ても明らかだったから。
「………本当に、すいませんでした!」
朔は今度こそ本心で佐藤に、いや『医学』というものに詫びた。
(そして、この時の会話と衝撃が彼を医学の道へと導くきっかけとなるのだが…これはまた別のお話)
...2006/03/15(Wed) 02:04 ID:1zqDVJF6    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
「……失礼します」
うなだれて教務室を退出しようとする朔を、見かねた綾子が声を掛ける。
「ねぇ朔君…亜紀のそばにいてあげてくれないかな…」
「…いや、駄目ですよ、俺……」
「…そんな、痩せ我慢しなくていいから」
「でも、俺、結果的に亜紀のこと、裏切ったし…
自分でウルルに行こうって決めたのに…いざとなったら、俺・・・」
「だけどね…朔君がそうしてくれたから、亜紀は今…」
「…自分でもそう思ってました。でも今、色々と考え出したら…
俺、結局、怖がってただけなんじゃないかって思えて来て…」
「…………」
「…今の先生の話を聞いてて、俺、なんてガキなんだろうって…
今日だって、おじさんやおばさんに凄く心配させて…みんなに迷惑掛けて…
なんか、俺、一体何やってんだろう?って…」
「…朔君だけのせいじゃないよ。わかってるよ、みんな…」
綾子の精一杯の気遣いも、すっかり自信喪失した朔の耳には入って来ない。
「……亜紀とここに戻って来るまで…ただ一緒にいたい、って…それだけだったんです。
でも…俺に、そんな資格、ないですよね……」

「……うるさいんだよ…」
「……えっ?」
いきなり会話に割り込んできた真の不機嫌な声色に、思わず朔が後ずさりする。
「…うるさくて…困ってるんだ…」
「?……何が、ですか?」
「…ろくに意識もないのに、たまに口を開けば、うわ言で『サク、サク』ってな」
「……亜紀が、ですか?…」
「まったく、いい御身分だな。自分の勝手で連れ出して、自分の都合で連れ戻して…」
「………すいません」
「そんな勝手なことやって、それで少し怒られたら落込んで…だからガキだって言うんだ」
「…………」
「君の意思でやったんだろう?君の責任でやったんだろう?だったら最後まで責任を持て!」
「!!………」
「…ガキでいいんだ、まだ。現にガキなんだから…ガキにはガキにしかできないこともある…」
「…………」
「……行ってやってくれ。娘が待ってる…君の名前ばかり呼んでな…」
「……はい…すいません…」
「…本当に、羨ましい限りだよ。サクサクサクサク…って呼び易い名前で良かったな」
「…………」
「…あなた(苦笑)」
大人としての叱責を親父としての嫉妬が上回りだした真を絶妙のタイミングで綾子が諌める。
その声で真も自我を取り戻し、慌てて潤一郎と富子に詫びを入れる。
「……申し訳ありませんでした…つい、取り乱してしまいまして…」
「いえ、こちらこそ本当に申し訳ございません!」
双方の父親が同時に互いへと頭を下げる、という珍しい風景に思わず場の雰囲気が和む。
その一瞬の隙を見計らって、綾子が朔に軽くウィンクをした。『早く行きなさい』と。
ようやく笑顔を取り戻して、朔は病室を飛び出して行く。
「…まったく、我が子ながら現金なもんだねぇ…」
「いいじゃないですか…子供っぽくて、素直で…亜紀だって所詮子供ですし…」
今度は双方の母親が同時に顔を見合せ、思わず苦笑いをした。

病院内は走るな!と何度も注意された。でも、今だけは我慢できない。
亜紀が待っている。あんなに酷いことをしたのに、俺の名前を呼んでくれている。
そう思っただけで胸が張り裂けそうになった。一秒でも早く会いたかった。
ノックもせずにドアをこじ開ける。そこには穏やかな表情で眠る亜紀がいた。
息を切らしながら椅子に座り、彼女の左手を自分の両手で握り締める。
その微熱が伝わったのか、暫くすると亜紀が静かに目を開けた。
...2006/03/15(Wed) 02:12 ID:1zqDVJF6    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:一読者
祖父がカメラマン様

お疲れ様です。
相変わらずの力作、一気に読ませてもらいました。
いやー、佐藤先生がカッコいいですね。
ドラマを見ていた時に「もう少し頑張ってくれよ」と思わずつっこんだ、あの先生とは別人のようです。
4人の親達もそれぞれ魅力的で、朔と亜紀はこの人たちに育てられたんだから、あんな良い子になるよなーとか思って読んでいました。
特に真の言葉は大人の強さを感じます。朔にとってのある意味先生なのかもしれませんね、彼は。

続編を期待してます。あと私の提案は引っ込めます(笑)
...2006/03/16(Thu) 17:43 ID:2hP3ibW.    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
>一読者様

いつも温かい御声援、ありがとうございます。
朔と亜紀以外の人物をストーリーに絡ませるのはどうかなぁ…と自分でも不安でしたが、お気に召して頂いて安心しました。
力量不足でそこまで描き切れませんが、一旦は覚悟し諦めた周囲の大人達も、ふたりの決意を感じ取って、再び現実と戦おうとする…そんな感じを描ければ、と思っています。
今後も長々と続きますが、応援の程、宜しくお願い致します。

>あと私の提案は引っ込めます(笑)
余りにも恐れ多くて…失礼な表現だったらすいません。でも正直、嬉しかったです

続編です。目を覚ました亜紀と朔が絆を再確認して行きます。
...2006/03/17(Fri) 01:44 ID:JLpyvNIA    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
「……サクちゃん…」
「…大丈夫?」
「……うん、なんか…楽になった。落ち着いてるよ」
「………よかった…」
「…それより…ごめんね……」
「……なにが?」
「…また…迷惑かけちゃったね……怒られなかった?」
「…大丈夫だよ、全然」
「……私、さっき、決めたんだ……」
「……何を?…」
「……最後まで…走るよ、私…」
「……うん…」
「…自己ベスト、出すよ、今度も……」
「……なんの?」
「……よく、わからないけど、自分でも…」

僕らは、思わず見つめ合って、軽く微笑み合う。

「…だから…また一緒に、走ってね…」
「……あぁ…」
「……手を…握っててね…」
「……うん…」
「…私、もう、何もしてあげられないけど…」
「……亜紀…」
「…でも、サクちゃんが頑張れって、言ってくれるなら…」
「…………」
「…最後まで…一生懸命……息するよ、私…」
「……亜紀…」
「……だから…」
「……だから?」
「…亜紀、頑張れ…って言って、お願い…」

僕は亜紀の掌を両手で強く握りしめる。
だが、頑張れとは言わなかった。言えなかった。言いたくなかった。
青臭い僕の我侭に、自分の夢を棄て、最後の力を振り絞ろうとしている
亜紀に、僕が伝えるべき言葉は『頑張れ』ではない、と思った。

「……亜紀…」
「……うん…」
「………好きです…」
「………!!?…」
「…俺は、廣瀬亜紀のことが、大好きです」
...2006/03/17(Fri) 01:45 ID:JLpyvNIA    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
血の気の失せた顔が少しだけ紅色に染まった気がした。
だが次の瞬間、亜紀は力なく首を振った。

「……駄目だよ、そんなこと言っちゃ…」
「……なんで?」
「…私、白血病なんだよ…」
「……知ってるよ…」
「…あざ、たくさんあるし…」
「……知ってる…」
「……髪の毛も、抜けちゃってるし…」
「…それも、知ってる…」
「…もう…ひとりで…歩けないし……」
「……うん…」
「……だって……だって!…」
「…………」
「…………私、もうすぐ…死ぬん…」
「知らない」
「………!!?…」
「…知らないな、それは…」
「………サクちゃん…」
「……関係、なくてさ…」
「……えっ?」
「亜紀が病気だからどうだとか、全然、関係なくて…」
「…………」
「……好きだよ。大好きだよ」
「…………サクちゃん…」
「廣瀬亜紀が…好きです」


馬鹿でいいと思った。
ガキでいいと思った。
浅はか、と言われてもよかった。
力になる、なんて格好いい言葉は、もう吐けなかった。
ただ、伝えたかった。
俺は、亜紀のそばにいる。

手を握ることしか、最早僕に許されることはなかった。
そして、手を握った。握り続けよう、と誓った。
もう、何も残されていない。ただひとつの思いを除いて。
でも、この思いだけは、最後まで、誰にも奪うことが出来なかった。
だから、伝えたかった。伝わると願った。信じた。
俺は、ずっと亜紀のそばにいるよ、と。


「………ねぇ…」
「……うん?」
「………いいのかなぁ…」
「…何が?」
「……こんなに…幸せで、いいのかなぁ…」
「…………亜紀……」
「……幸せすぎて、こわいよ…サクちゃん…」
...2006/03/17(Fri) 01:46 ID:JLpyvNIA    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
夢・希望・将来。肉体。友達。家族。思い出。
かたちあるもの。そして、かたちのないもの。
これから私は、その全てを病魔に奪われていく。欠片もなく。
でも負けたくなかった。私の人生はそんなもんじゃないと信じた。
頑固な負けず嫌いな性格。だから、私の意思で死にたかった。
大好きなひとと、ふたりで一番綺麗な空を見たかった。
それを、私と、私の一番大切なひととの証にしたかった。

だけど、辿り着けなかった。空は、もう、見れない。
後悔はない。私の意志で行動し、私の意志で中止した。
病院への帰還 ― それは私が選んだ最後の選択。
大好きなあの人が、少しでも私と長く一緒にいたい…と言ってくれた。
それだけで、もう十分だった。このひとに出会えて、嬉しかった。
だから、生きようと思った。命尽きるまで、このひとと一緒にいようと思った。
でも。でもね。

ズルイよ、サクちゃん。

いまになって、そんなこと、言うなんて。

決心、揺らいじゃったよ。死ねないよ。そんなこと言われて。

わかるよ、サクちゃん。あなたの言葉は、同情や憐れみじゃないって。

いまでも、真っすぐ見つめてくれてるんだよね、私のこと。

まだ、受け止めてくれるんだね。私の現実も、絶望も、先のない未来も。

夢島、タイムポスト、覚えてる?

あの時のテープに、吹き込んだことがあるんだ。

幸せって、サクちゃんと手を繋いでいられることだって。

もう、手を繋ぐことしかできないけど。

でも、私、こんなになっても、大好きな人と手を繋いでいるんだ。

つながってるんだよね、サクちゃんと。

なんだ、私、全然幸せじゃん。今頃気付いたよ。

何ひとつ、失ってないよ、私。

強がりでも何でもない。本心だよ。

全部、あなたが守ってくれたんだよ、サクちゃん。

帰りの列車の中、サクちゃんの腕に抱かれて、私、わかったんだ。

私の、廣瀬亜紀の世界って、ここだったんだって。

ここがあれば、私は何だってできる。何にだってなれる。

そんな大事なもの持ってる人、他にどれくらいいるのかな?

こわいよ、ほんとに。また何かを失うんだろうなぁ、って。

だって、こんなに温かくて素敵なものを、手に入れちゃったんだもん。

「……病気になったの、サクちゃんのせいだよ、多分…」
「………えっ?」
「…こんなに幸せになっちゃったから、誰かがバランスとってるんだよ、きっと…」
「なに、言ってんだよ…」
「…やっぱり、私、頑張るよ…サクちゃん…」
「……うん」
「…まだ…生きたくなっちゃった、私」
「…そっか」
「……手、つながってるよね」
「もちろん」
「離さないでね」
「絶対に」
「…なら…大丈夫だ、私…」
「…………」
「…頑張れ、亜紀って…言って…」
「……がんばれ」
「…うん…」
「……がんばれ、亜紀」
「………はいっ」
...2006/03/17(Fri) 01:49 ID:JLpyvNIA    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:KAZU
祖父がカメラマン様

仕事の合間に読ませて頂きホッとさせて頂いております。
ですが、やばい事に涙(;_:)が今にも落ちそうな状況になっており我慢しています。
続き期待しております!!
...2006/03/17(Fri) 12:31 ID:TqgGJ4yQ    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:表参道
祖父がカメラマン様

ハイペースでの執筆お疲れ様です。

サクと亜紀の二人が幸せになっていってくれてるようで、とても嬉しいです。

忙しい中大変だと思いますが執筆頑張って下さい。

毎回感動させて頂いてます!!
...2006/03/17(Fri) 15:21 ID:79JcfT8w    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
>KAZU様

>やばい事に涙(;_:)が今にも落ちそうな状況になっており我慢しています

そう言って頂けると、正直嬉しいですw
私も他の方の作品を拝読し、何度も同じ状態になったことが(作品を)書き始めたきっかけだったもので…
朔は同性という事もあり自分の実体験やらで想像し、書いている事が多いですが、亜紀についてはTVで見た時の衝撃
― こんないい娘が本当にいるのか? ― を思い出しながら描いています。
ある意味、男性にとっての理想像に近いんでしょうね。明るくて、お茶目で、不器用で、健気で…全ての要素を兼ね備えたキャラですね、改めて振り返るとw
(綾瀬はるかさんもDVDで同じ様なコメントされてましたが)
これからも頑張ります。引続き御声援、お願い致します。

>表参道様

ハイペースなのは前述の理由と、少しでも間を置くと執筆どころか考える事すら面倒になる…という我侭な性格から来ている面もあります(苦笑)
決算期なので確かに多忙なんですが、逆に朔と亜紀の未来を考える事、そして表参道様を始めとした皆様に喜んで頂けてる事が、何よりのリフレッシュになっています。
ダラダラした文章で非常に読みづらいとは思いますが、今後も引続き御覧頂ければ幸いです。

続編UPします。今回は小休止というか、一服の清涼剤みたいな感じで、この2人を中心に考えてみました。
...2006/03/18(Sat) 10:28 ID:Lzu8fg8M    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
17歳の普通の高校生達を急に襲った病魔と言う名の悲劇。
この2ヶ月、その悲劇に苛まれ、弄ばれ、身も心も極限まで蝕まれた。
分かち合う未来も、当り前だと思っていた幸せも、何もかもが見えなくなった。
もう彼等に出来ることは何ひとつなかった。手をつなぎ、寄り添い続けること以外に。
だから、彼等は手をにぎり続けていた。お互いの温もりと存在だけを頼りに。
それは、あまりにも哀しく、切なく、それでいてどこか心温まる情景であった。

「…………」
その光景をドアの外から見て居た綾子が、急に口を手で押え走り去る。
朔の母・富子が、その綾子の姿を見て慌てて彼女のあとを追掛けた。

「すいません…みっともないところ、お見せしてしまって…」
「いえ…それより…ウチの息子が本当に御迷惑を掛けてしまって…」
泣きながら綾子は首を大きく振る。
「…違うんです…私、朔君に謝らなきゃいけない、と思って…」
「そんな…謝らなきゃいけないのはウチの方…」
「……以前、亜紀が白血病だとわかった時、私たち、取り乱しちゃって…
朔君に『あなたに一体何が出来るの!』って、言ってしまって…」
「…………」
「…でも、この1ヶ月、朔君、身も心もボロボロになりながら…亜紀のために…
必死で…死に物狂いで……頑張ってくれて…」
「……亜紀ちゃんが好きなだけですよ、あの子は…」
「……私ね、ふと、思ったんです…
朔君がいなければ、あの子、ここまで耐えられたんだろうかって…
…もっと早く、生きることを諦めちゃったんじゃないかって…」
「…………」
「…あの子、自分をさらけ出すのが苦手だから…
初めて、自分のすべてを見せることが出来たのは朔君なんだろうなぁ、って…
弱いところや、わがままなところとか…全部を見せて、甘えることができたのは
…きっと、朔君にだけなんですよ、あの子…」
「…………」
「今日だって、全部ひとりで背負い込む覚悟で、亜紀のわがままに付き合ってくれて…
…でも、亜紀に恨まれることまで覚悟して、病院に連れ戻してくれて…
朔君にしか…朔君にしかできないことを、いっぱい、いっぱいしてくれて…」
「奥さん…もう、いいですから……」
「今でも亜紀が、あんなになっても必死で生きようとしてるのは…
…朔君が…あの子のことを、必死に守ってくれてるからなんだな、って…
そんな朔君に、私、本当にひどいことを言ってしまって…」
「…廣瀬さん……」
「……ありがとうございます…
あの子のそばにいてくれて…本当にありがとうございます…」
重症の子供を持つ親として、綾子は涙ながらに富子に最大限の感謝の意を示した。

「…こっちの方ですよ、お礼を言いたいのは…」
「……えっ?」
富子が苦笑混じりに綾子へ話し始める。
「…大らかなのはいいんですけど、ボーっとして頼りない子ですから…
それが亜紀ちゃんと付き合い始めてから、少しだけ男の顔になってきたかな、って…
……まぁ、今でも十分頼りないですけど(笑)」
「……そんな…」
「親の贔屓目もあるでしょうけど、少しづつでも成長してると思うんですよ、最近。
あんなに何かに一生懸命になった所、見たことなかったですから…
何でもいいから亜紀ちゃんの力になりたい一心でやってるだけでしょうけど…」
「…………」
「…だから、私からすりゃ、一石二鳥なんですよ(笑)
息子も成長して、それで亜紀ちゃんも喜んでくれるなら、こんな有難いこと、ないですし」
「………奥さん…」
「…御迷惑だと思いますが、しばらく、そばに置いといてやって下さい。
亜紀ちゃんが嫌がりだしたら、首に縄つけて家に連れて返りますから(笑)」
「……本当に…ありがとうござ…」
「だから…あんまり気に病まないで下さいな…
あの子が、好きでやってるだけのことですから…」
富子の豪快で嫌味のない言い方に連られ、綾子にもいつもの洒落っ気が戻る。
「…じゃぁ、お言葉に甘えて、亜紀のそばに置かせてもらいます(笑)」
「…邪魔になったら、ほんとすぐ言って下さいね(笑)」

湿っぽかった雰囲気がようやく和らいだ頃、病室から朔が退出してきた。
しかし、その様子が傍目から見て、どうにもおかしい感じがする。
(……あの子、少し痩せたかねぇ?)
「…何か、あったのかい?様子が変だよ、あんた」
「………別に…何も、ないよ…」
「そう…なら、いいけどさ…」
「亜紀…安心そうに…また寝付きましたから…もう…」
「…朔君?」
「…あのさ……もう一個、お願い…」
「…朔?」
「………何かあったら…起こして…」
そう言い残すと同時に、彼は糸の切れた操り人形のように崩れ落ちた。
極度の緊張から開放され、安堵感を抱いた瞬間、17歳の少年は自分の精神と肉体が
もう既に限界を遥かに超えていたことを、ようやく認知したのであった。
朔は、卒倒した。

「…すごい熱!」
「朔!しっかりしな、朔!」
静寂な空間である筈の病院の廊下が、一瞬にして喧騒に包まれる
そして、その喧騒は先刻再び眠りについた亜紀の下にも届いていた
(……何?…何か、あったの?)
...2006/03/18(Sat) 10:30 ID:Lzu8fg8M    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:clice
祖父がカメラマン様
ドラマの中で描かれたことを別の視点で描きながら、少しづつ本編から枝分かれしていく世界をとても興味深く読ませて頂いています。
これからどうなるんだろう、この世界でどうやって亜紀を助けるんだろうとその興味は尽きません。書くって大変ですよね・・・でも、楽しみにしています。
...2006/03/18(Sat) 12:28 ID:BZhfAftM    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:一読者
祖父がカメラマン様

お疲れ様です。今日も一気に読ませて頂きました。
KAZUさんと違い、部屋で見ていたせいか、もともと涙腺が弱いのか、またまた泣いてしまいました(恥

>「……こんなに…幸せで、いいのかなぁ…」
いかにも亜紀が言いそうなセリフですね。
朔とつながっていることを認識できた亜紀が生きていく気力を取り戻した感じが伝わってきました。
ホントにこんなシーンがずっと見たかったのです。ありがとうございました。

2人の母親もとても優しくて、特に富子さんはTVで見てた通りの豪快さと優しさを感じました。

続編を期待してます・・が、お体にも気をつけて下さい(笑)
...2006/03/18(Sat) 20:01 ID:h3uoYpKY    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
>clice様
いつも的確なコメントを頂き、ありがとうございます。
非常に参考にさせて頂いてます…それでですねぇ……

>この世界でどうやって亜紀を助けるんだろう

……えーっと…すいません、白状します。
正直、まったく考えていませんでした>亜紀の助かり方。
と言うより、たー坊さんの『アナザーストーリー』&グーデンベルグさんの『アナザーワールド』の両編の通り、
91年:骨髄バンク設立⇒92年:移植手術成功⇒半年後:亜紀退院…というストーリーをそのまま転用、…いや、端からパクらせて頂くつもりでした。謝って済む問題でもないですが、ごめんなさい。

私が描きたいのはたったひとつ。一度は死を受け入れた亜紀が、朔の不器用で真っ直ぐな思いによって
再び可能性の薄い生存への闘いを始める…そんな甘ったるい事しか考えていません。
もちろん、気持ちだけでどうにかなる現実なんてあり得ないのは百も承知です。
だけど、何をするにせよ、そこに『気持ち』がなければ何も始まらない…とも信じています。
その『気持ち』― 亜紀さえいれば何でもいい ― という少年時代にしか抱けない、無謀で、純粋な朔の願いが、亜紀の病状悪化を防ぐきっかけとなり、5年後の移植手術に繋がる…それだけです、この作品は。
(もうひとつ『朔の解放』というテーマもありますが…これは大分後の話なので割愛します)

そんなプロットなので非常にリアリティに乏しい内容になってはおりますが、正直開き直っています。
だって、私の根本も朔と全く同じで『亜紀が助かりゃ何でもいい』ですのでw
今後も、朔と亜紀の様々な感情の変化と成長…を場面場面で描いて行きたいと考えております。
お見苦しい点は多々あるのを承知の上で、今後も御声援頂ければ幸いです。

>一読者様
いつも温かいコメント、本当にありがとうございます。
>ホントにこんなシーンがずっと見たかったのです
そう言って頂けるのが何よりの励みになります。今後も頑張ります。
>お体にも気をつけて下さい
気をつけますw キツイですが、いい気分転換にもなってるので大丈夫だとは思いますが…

今回で病院への帰還編は終了です。最後は私の一番好きなこのキャラに締めてもらいます。
次回はいきなり4年後に飛びます。途中に回想は挿みますが…傍若無人な展開をお許し下さいm(_ _)m
...2006/03/19(Sun) 19:02 ID:KD2YtsCU    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
夢すら見なかった。ひたすら眠り続けた。
後から聞いた話だと、丸一日半、爆睡していたらしい。
ようやく目を開くと、そこには見慣れない無機質な天井が広がっていた。
事態を把握できない僕は、慌てて周囲を見渡す。
すると今度は、何故か左腕に透明の管が突き刺さっていた。
(………何だよ、これ?…俺、どうなっちゃったの?)

「…やっと、起きたのかい。まぁ気持ちよさそうに寝てたねぇ、あんた」
気丈な富子だが、やはり安堵した様子を隠せず息子に声を掛ける。
「……ねぇ、俺…いや、亜紀…亜紀は!?」
急に飛び起きようとする朔の体を、富子が制止する。
「慌てんじゃないよ!…大丈夫、容態も安定しだしてるってさ」
「本当?…はぁーーーーーっ、よかったぁ……」

「でもね…大変だったらしいよ、暴れて」
「……えっ?」
「あんたが倒れたって聞いて、見舞いに行く!って(笑)」
「…なに、言ってんだよ…まったく…」
「ホントだね、どっちが重症だかわかりゃしない(笑)」
ひとまず亜紀の命に別状がないと判明し、朔と冨子の口調も数段軽くなっている。

「…でも、向こうのお母さんから聞いたんだけど…
発病してから初めて『死にたい』って言ったんだって、亜紀ちゃん…」
「!!…なんで…なんかあったの!?」
「あんただよ、原因は」
「?…俺?」
「あんたのこと聞いて、いきなり泣き出したんだって…
『サクちゃんを苦しめてばっかりいる』って…」
「…………」
「『私がいるから、サクちゃん、傷ついてばかりいる!』って…大騒ぎだったらしいよ、
もう落ち着いたみたいだけど…」
「…バカ…何バカなこと言ってんだ、あいつ…」

「…ねぇ、朔…」
「…うん?」
「今のあんたに、こんな話するのは辛いけど…
でもひとつ、言っとかなくちゃいけない…」
「……うん、何?」
「あんた達はまだまだ子供だよ、確かに。
でも、あんた達のことはふたりで乗り越えるしかない部分もあんのよ…」
「…(前に、谷田部先生にも似たようなこと、言われたな…)」
「…この先、あんたにとって、とても辛いことが待ってるかもしれない…」
「………うん……(深刻な表情で)」
「逆に…とても明るい未来が、ひょっとしたら、あるかもしれない…」
「…………」
「…でもね、どんな結果が待っていようとさ…」
「…………」
「…あんた、あの娘に好きになってもらえて…良かったねぇ…」
「!………うん(涙声で)」
「…あの娘のこと、好きになって、良かったねぇ…」
「…………」
もう声を発することもせず、朔は両目から大粒の涙をこぼした。

「…あんたも大変だと思うよ。親の私から見ても…そう思う。
でもね…亜紀ちゃんが頑張ってる限り、あんたも精一杯頑張りな…」
「(すすり上げながら)当り前だろ…そんなの…」
「…あんな、いい娘…そうそう巡り合えるもんじゃないよ…」
「……わかってる…本当に、そう思ってるよ、俺…」
「…出会いを、大事にしなよ、朔」
「……うん」
「あんたも可哀想だし…亜紀ちゃんは、もっと可哀想だと思う…
だけどさ、それも、あんた達の運命なんだよ…」
「…………」
「だから…今は!亜紀ちゃんと出会えたこと、それだけを大事にしな…」
「…うん……ありがとう、母さん…」
「…もう!男の子だろ!メソメソすんじゃないよ!
大体、アンタが泣いたとか知れたら、もっと大変なことになんだからね!」
「(泣笑いを浮べて)…そうだね、気をつけるよ…」
「…わかったら、早く元気になって亜紀ちゃんに顔見せられるように、とっとと寝な。
学校には連絡しといてやるから…」
「…そっか……すっかり忘れてた、学校…」
「高校生だろ、あんたは(苦笑)」

そう言いながらも、仕方がないと理解する富子であった。
(高校生なのに…こんな惨い目に…苦しいだろうね、あんたも亜紀ちゃんも…)
だからこそ、可能性が極めて薄くても、必死で手を取り合って生きようとする
息子とそのガールフレンドを、出来るだけ一緒にいさせてやりたい。
(母親失格かねぇ…まぁ、いいやね…悔いは残させてやりたくないから…)
おそらく、残酷で悲惨な結末が幼い二人を待ち構えている。
特に残される側 ― 自分の息子 ― には非常に強いショックが残るのは間違いない。
でも、いや、だからこそ、朔に悔いの無い行動をとらせてやろうと思った。
例えひとり残されても、彼女の気持ちも背負い、立派に歩いていける人間になれるように、と。
それが、こんな呑気でお人好しな息子に惚れてくれた、亜紀への最大の恩返しになる。
富子は、そう信じていた。
...2006/03/19(Sun) 19:04 ID:KD2YtsCU    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
「……あのさ、母さん…」
その時、朔が少しバツが悪そうに富子に声を掛けた。
「ん?何だい?」
「……お願いが、あるんだけど…」
「…あんた、まさか…」
「亜紀に…会いに行って、いいかな?今…」
「…何をバカなこと、言ってんだい!落ち着いてるったって重症には変わりないんだよ!
そこに高熱出して点滴打ってる人間が行ったらどうなるか位、わかんだろ!?」
「…もちろん、近くには寄らないよ。病室にも入らない。
ただ、俺は大丈夫だ…って知らせてやりたいんだ…」
「…………」
「…何があっても絶対に『死にたい』とか言うやつじゃないんだよ、亜紀は。
今までで…一番落込んでるかもしれない、って思うと…」
「…………」
「だから…俺が、ちょっと顔見せるだけでも、少しは安心できるかな、って…
絶対近くには寄らないから…お願い、行かせて」
「…まったく…亜紀ちゃんのことだけは、細かく気が行き渡るねぇ…」
「………ごめん…でもさ!」
「わかったよ(苦笑)。ちょっと廣瀬さんと相談してくるから、おとなしく待ってな」

「…お食事の時間ですよ、お嬢さん?」
「………食べる気、しない…」
少しは落ち着いたとは言え、まだ落込みが激しい亜紀が綾子の言葉に頭を振る。
「…困ったもんねぇ…そんな亜紀ちゃん見たら、朔君、怒るだろうなぁ…」
「…・・・怒るよね、やっぱり…」
珍しく弱気な表情と態度を隠せない亜紀。
どうしても『自分のせいで朔が倒れた』と思い込み、すっかりいじけている様子だ。
「…あれ?朔君と一緒にいたいから、帰って来たんじゃなかったっけ?」
「そうだけど…こんなことになるくらいなら…私…」
「……もう…しょうがない子ね…」
「…………」
「……一目だけよ(ニヤリ)」
「………えっ?」
病室のドアを綾子が開く。そこには熱の影響で若干青ざめた顔をした朔が立っていた。
「……サクちゃん!」
「……はい、松本さん家からのプレゼント」 綾子が茶目っ気たっぷりに笑った。


…未だ熱がある僕は、亜紀のそばに寄ることは出来なかった。病院で大声を出す訳にもいかない。
距離を取りながら見つめ合っていた。亜紀は喜怒哀楽が入り混じった複雑な表情で僕を見ている。
何故だか…何でだか、今でも自分自身さっぱりわからないが、僕は力強くVサインをしていた。
特に意味はなかった…と思う。いや、あったのかもしれない。
だけど、ただ、何となくそうしたかったのだろう。亜紀を元気付けたかったのだろうか?
何があっても大丈夫だよ、俺は……いや、俺たちは…と言いたかったのかもしれない。
とにかく咄嗟に僕は、笑いながら亜紀にVサインを出していた。

「…………プッ…」
亜紀がクスクスと笑い出した。僕の反応が予想だに出来なかったのだろう。
泣き笑いの顔で、声を出さずに口を大きく開け、何かを僕に伝えようとした。
…あの口の動き方から考えると、おそらく『バーカ!』と言ってたのだろう。
堤防で告白された時を思い出して、懐かしさと安堵感から、僕は再び笑った。
つられて、亜紀も笑っていた。もう、そこには泣き顔はなく、とても楽しそうな表情で。


世界で一番、素敵でかわいい笑顔だと思った。
こんな、ささいなことが、とても嬉しかった。
……失ってたまるか、と思った。それだけを強く、誓った。
...2006/03/19(Sun) 19:06 ID:KD2YtsCU    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:表参道
祖父がカメラマン様

早速拝見しました!!

まだ亜紀の病気は治ってないけれど二人の幸せそうな状況に思わず涙がこぼれてしまいます。

台詞の語尾なども本当にサクが話しているようで、
ドラマが蘇ります。

亜紀とサクが今度こそ幸せになれるように宜しくお願いします!!

続編期待しております。
...2006/03/19(Sun) 21:30 ID:DHfhN0Ok    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:たー坊
お疲れ様です。
いやー・・・素晴らしいですね。脱帽です。
感想云々より、読者としてただ期待するのみですね(苦笑)
次回も期待してます。
...2006/03/20(Mon) 01:59 ID:HRLkb/lA    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:ぶんじゃく
祖父がカメラマン様

>「…あんた、あの娘に好きになってもらえて…良かったねぇ…」

この件には思わず目が潤んできました、あんな状況の
息子を見守る母親にこんな言葉をかけさせてしまう「亜紀」という人間はなんなんですかね〜
やっぱり天使なんですね、そう思うしかありません。

そして
>「あんたが倒れたって聞いて、見舞いに行く!って(笑)」
自分の状況を省みずこうさせてしまう「朔」も
素晴らしいですね、同姓として妬けてきます(笑)
それに亜紀らしい言葉ですね。

仕事からの帰宅途中の車の中でふと思いました
この物語をあの二人に読んでもらいたいな〜と
死んでいった恋人を想い残された者の想いを
歌った人と 死んで行く者が残していく恋人の
ことを想う その想いを歌ったあの人。
あの二人ならこの物語をどう歌うのか是非聞いて
みたくなりました。

長々と書いてしまいましたがこれからもマイペースで
頑張って下さいね。
...2006/03/20(Mon) 16:07 ID:HpoKD44k <URL>   

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:ポポ
関係ない話からでごめんなさい。
今日は朝から子供の終業式に出席していました。
昼すぎに帰宅して、子供を寝かしつけてから一週間分の作品をじっくり読ませてもらいましたが、もうぼろぼろ泣いちゃって、起きた6歳の息子に・・どうしたの?と不審がられてしまいました。
すばらしいお話をありがとうございます。

二児の母親として富子さんのやさしさと強さに感動しました。もし息子が将来、サクちゃんと同じような状況になったら、私はここまで強くなれるのかな?そんなことを考えながら読んでいたので余計グッときてしまったのかもしれません。

サクちゃんと亜紀も、お互いに対して一生懸命なところが、とてもいじらしくて・・ギュッ!!ってふたりを抱きしめてあげたいほどです。

色々書きたいことはあるのですが、まだ興奮していてうまく書けません。でもひとつだけ言わせてください。
>…それだけです、この作品は。
それだけで十分だと思います。それだけが見たいです。
お体にくれぐれもお気を付けになって、今後もすばらしい投稿をお願いします。期待してます!!!
...2006/03/20(Mon) 16:26 ID:NXmeAevs    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
今回も多数の温かいコメントをお寄せ頂き、本当にありがとうございます。
徹夜明けの上、これから後輩の披露宴出席…で正直ブチ切れそうでしたがw、一気に気分が晴れやかになりました。
至らない点も多々あるのは承知の上で、今後もお付合い下さいます様、切にお願い申し上げます。

>表参道様
>亜紀とサクが今度こそ幸せになれるように宜しくお願いします!!

任せて下さい。私、それしか考えていませんのでw

>たー坊様
…いや、もうホント勘弁して下さい。恐れ多くて恐縮しまくりです。
私の作品なんて(謙遜でも何でもなく)アナザーストーリーの後追いに過ぎませんし、熟読してから作品を書き始めたので、随分と表現が被っている点が多数あるのは自覚しておりますが…お目溢し下さいm(_ _)m

>ぶんじゃく様
>こんな言葉をかけさせてしまう「亜紀」という人間はなんなんですかね〜

天使です(キッパリ)。それ以外の表現が見当りません。
天使ですから当然天上界に帰らねばならないのですが、ひとりの我侭な男子高校生(17歳)によって、強引に地上に留まらされてしまった…という見方も出来ますねw

>ポポ様
富子が気に入って頂けたみたいで安心しました。第7話の「…なんでだよ!!」以来、一番好きなキャラだったもので。
(主役二人に隠れがちですが、大島智子さん、本当に素晴らしい熱演だったと思います)

…実はウチも結婚してから十数年経ちますが、中々子宝に恵まれず、もし子供が出来たらあんな頼り甲斐のある親になりたいね…と女房とよく話してるものですから。若干妄想入ってるかもしれませんw

>それだけで十分だと思います。それだけが見たいです。
最高の誉め言葉、感激しました。これからも『それだけ』を考えて頑張ります。宜しくお願い申し上げます。
...2006/03/21(Tue) 11:56 ID:8i23n.yk    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:一読者
祖父がカメラマン様

お疲れ様です。今回もじっくり読ませて頂きました。
もう色んな方が感想を書かれていますし、私も同意見なので、一言だけ申し上げます。

今後、職場で見るのはやめます(笑)
今日もかなりウルウルきてしまい、周りの目をごまかすのに慌てたものですから。

続編期待しております。もう、その一言です。
...2006/03/22(Wed) 19:18 ID:swhI5vBw    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
>一読者様
>今日もかなりウルウルきてしまい、周りの目をごまかすのに慌てたものですから。

…それは…申し訳ございませんでしたm(_ _)m
その反面、とても光栄にも感じます。今後も頑張ります。期待して下さい!!(イチロー風に)

本日より第二編を投稿致します。
時期としては以前にも申した通り、発病から約4年後の初夏、骨髄移植をあと半年後に控えた状況の中で、朔の回想を中心に進めて参ります。

前半部は、病院への帰還の日に関する回想。朔が当時理解できなかった事象を理解していく…ちょっと、いや、かなり説明チックな文章になってますが、御容赦下さい。
後半部は、ドラマ版のメインテーマでもある(と思ってます) 『ソラノウタ』に纏わるエピソードを、亜紀が生きていたらこうなったかなぁ…という仮定において、描いてみたものです。
また皆様のリクエストにお応えし、朔と亜紀の会話をかなり増やしてみましたw
相も変らずダラダラ長い文章&構成になっておりますが…根気良くお付合い頂ければ幸いです。

また以前にも申し上げた通り、亜紀への治療方法(投薬etc)については、完全にアナザーストーリー、及びアナザーワールドの2作品より無断転載させて頂いております。
たー坊様並びにグーテンベルグ様の御両名には多大なる不快感を与えてしまいました事、当文稿にて改めて謝罪致します。誠に申し訳ございません。
...2006/03/23(Thu) 02:17 ID:fvkGpkxo    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
「…んっ…あれ?……またか…」
目が覚めると、泣いている。特に、あの日の夢を見た時は、必ず。
「……まったく…なんでだろうな…」

あの日から、事態は好転した。
重荷から開放された亜紀の心身に症状の悪化は見受けられず、また、その年の秋口から投薬認可がされた米国製の抗がん剤が功を奏し、回復とは言えない状態ながら最悪の状況を脱しつつあった。
「病は気から、とは言うが…よくぞここで、とどまってくれた…」
佐藤先生は感無量な表情で、僕に病状の進行状況を解説してくれた。
「…予断は許さないし、一歩間違えばまた危機的状況に陥るのは確かだ…
だが…『その日』が来るまで持ち応えられる道筋は、薄っすらと見えてきたよ…」
先生の言う『その日』 ― それは今から約半年後を目処に設立が決定している機関。
その会話をした時には、設立準備は密かに行われていても、肝心の時期は全く不明であった。
しかし、亜紀を始め日本中で白血病に苦しむ人々にとっての希望の塔 ― 日本骨髄バンク ―
…その存在は、単なる願望ではなく、亜紀の生還を実感させるだけの説得力に満ちていた。

「…従来と同じく、取れる情報は全て取っている。特に、事情を知ってる連中はとても協力的でね…」
「そうですか…もう、直接会ってお願いしたいくらいですよ、その方たちに…」
「…なんなら、一緒に来るかい?」
「………えっ?」
「亜紀ちゃんの話をする時に、必ず君の話もするのだが、皆、非常に好意的でね…
いまどき何て純粋な子だ!…と言って、君も大層評判がよいのだよ(笑)」
「そんな…俺なんて、何も…」
「何もしてない訳は決してないだろう。君が彼女を守り続けたから、今があるんだ。
他の誰にも出来なかったと思うよ、僕は。胸を張っていいと思うけどな…」
「…でも、俺、そばにいるだけで…具体的には、亜紀に何にもしてやれて…」
「その範疇は、今はまだ我々の責務だよ、松本君」
「……先生…」
「…君は今まで通り、亜紀ちゃんの手を握って励ましてくれ。それは、君にしかできないことだ。
その間、我々も医師としてできる最大限の努力をするよ。約束する。信じて欲しい」
「…………」
「そして…その間の我々の行動を、亜紀ちゃんの苦悩を、医学の進歩を、しっかり目に焼き付けなさい。
これから君は、亜紀ちゃんだけでなく、他の人々も救って行かねばならないのだから…」
「……えっ?…それって…」
「…お父さんから伺ったよ、君が医学の道を進もうとしている、と。
それも、わざわざ御挨拶に来て頂いてね…『息子をよろしくお願いします!』と…」
「……親父…何やってんだよ、黙って…」
「とにかく、道は見えて来た。これからも全員が全力を尽せば、その道は必ず開ける…松本君」
「…はい」
「……奇跡を起すぞ。これから」

先生は力強くそう言い切ってくれた。
マイナスにぶれっ放しだった針が少しづつ、でも確かに揺れ戻し始めた様に思えた。
あの雨の日は、奇跡が始まりを告げた日だった。今から思えば。
しかし、その当時の夢を見るたび、何故僕は泣いているのだろう?

カーテンを開け、朝日を室内に呼び込む。
六畳一間のオンボロアパート、机の上に山積された学術書とレポート用紙の狭間に
写真立てがひとつ、無造作に置いてある。
「…おはよ」 夢島に向う途中に撮った最高の笑顔へと声を掛ける。
上京してから唯一欠かしていない、僕のささやかな日課でもある。
(…次に会えるのは…2週間後か…) 今度の帰郷では、一体どんな話をしようか?
少し考えて、すぐにやめた。何を用意した所で、あの笑顔を見た瞬間、どうせすぐ忘れるに決ってるから。
「……それよりも…」 もうひとつの日課 ― 冷蔵庫から牛乳を取り出し一気に飲み干した後、
さっきまで見ていた夢のことを考えてみる。再会の前に整理しておきたいと思った、自分なりに。
僕は再度ベットで横になり、薄汚れた天井を見つめながら、思い返してみる。

泣いた理由は、何となくだがわかっている。
何よりも喜ばしい出来事だった。望みはあると認識できた瞬間、屋上へ駆け上がり、ひとり号泣した。
だけど、そこに至るまでの、あの絶望の日々。
亜紀の心身を極限まで蝕み、僕の思考と精神を凍らせた、あの暗黒の日々。
こけていく頬。血の気を失う白い肌。抜け落ちていく長い髪。
自殺未遂。居た堪れなかった修学旅行。テープでの別れ。剃髪処理。そして、ウルルへの旅立ち。
空港へ向う道程、僕と彼女の脳裏には『美しい死』しかなかった。
あれは、松本朔太郎と廣瀬亜紀が病魔という名の絶望に屈服した日だった。

それは思い出と呼ぶには、あまりにも濃く、あまりにも生々しく。
不安から絶望への変化、刻々と訪れる冥界への合図、正否の基準すら奪われた漆黒の世界。
そして、それらをすべて受け容れながらも、ふたりで足掻きぬこうと誓った雨のプラットホーム。
あの時の気持ちを忘れてはいけない。夢は、僕にそう語り掛けているのだろう。
「……頑張らなきゃな、俺」 亜紀の笑顔を見つめながら、いつしか呟いていた。
...2006/03/23(Thu) 02:22 ID:fvkGpkxo    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
(…色んなこと、あったなぁ…) 当時を反芻しながら、僕は回想し続ける。
「あっ…そう言えば…」 疑問に思いながら、解析を後回しにしていた出来事を思い出す。
(あの時…親父、何で俺のこと、褒めたんだろう…?)

病院へ亜紀とふたりで帰って来た瞬間、僕は親父に本気で怒鳴られた。
『この……この大バカ野郎がっ!!!』
…お袋の怒声には慣れっこだったが、親父が声を荒げるなど、考えたこともなかった。
先入観がない分、そして普段温厚な分、怒ったら本当に怖い…そう思い知らされた。
その後、親父は僕の頭を掴み、髪をぐちゃぐちゃにしながら、こう言った。
『…でも……よく頑張ったな、お前…』
17年間で、本気で怒られたのも初めてなら、褒められたのも初めてで。僕は戸惑った。

意味がわからなかった。褒められるような真似をした覚えは一切なかったし。
(…亜紀を、守ったってことかな?)…とも思ったが、守るだけなら病院から連れ出す必要はない。
現に親父は亜紀のお父さんに会う度に、未だにあのことを詫びているらしい。
何だろう…とずっと引っ掛かっていた。
本人に直接聞こうとも考えたけど、元々口下手な人だし、今さら照れ臭い面も大きい。
結局聞かないまま、解答を得られないまま、数年を過ごして来た。
だけど最近、勉学と看病に全力を注いできた今だから、ようやくわかってきた気もする。
男とは、逃げてはいけないのだと。

あの時の気持ちに嘘はなかった。それは断言できる。
亜紀の最後の願いを叶えてやりたい。一番、綺麗な空を見せてやりたい。
その為には、どんな批判も、どんな犠牲も甘んじて受けようと思った。
だけど、その批判を受けることで、お前は罪滅ぼしをした気になってないか?
亜紀の夢を叶えたい ― その気持ちに逃げ込もうとしたことはないか?
その行為で、どれだけの人達を心配させ、悲しませることを薄々感付きながら、ドンキホーテになろうとした自分はいないか?
…そう今の俺に突っ込まれたら、当時の俺は答えられるのかな?正直、自信はない。

でも、最後の最後でそこを乗り越えた。
何があろうと、手を握り続けよう。戦い続けよう。名前を呼び続けよう。
泥にまみれよう、と思った。みっともなく、這いずり回ろう、と決めた。
亜紀を美しく死なすためではない。
亜紀を少しでも長く、この世に留めておくためだけに。
不安や葛藤を投げ捨て、好きなひとの生のために全力を尽くす。そう、誓った。
その泥臭さとかっこ悪さを親父は瞬時に理解してくれたのだろう。同じ男として。

そして、もうひとつ。最近わかったことがある。
すべてのきっかけになった、あの時の『あの声』。僕に本心を気付かせてくれた『あの声』。
皆目、見当が付かなかった。女性の声、ということ以外は。
最初は、亜紀かな?と思ったが、ウルルに行きたい本人自らがそれを止めるのはあり得ない。
他に思いつく人々 ― お袋、先生、亜紀のお母さん、智世 ― でも皆、違っていた。
…そして、ようやく思い当たった人に話し掛ける。アパートの小汚い天井越しに、空へと向って。
「……ばぁちゃん、だったんだろ?」

僕の理想の関係だった、じぃちゃんとばぁちゃん。
口汚く罵り合って、大声で笑って喧嘩して、それでいて、いつも寄り添っていて。
そして、あの狸ジジィが初恋の女性の骨をどうこう…と言ってるのをあの世から見ていてむかい腹のひとつでも立てていたのかもしれない。
祖母はあの時、確かに僕の背中を押してくれた。
そのままの彼女を愛せ、と。
『…いいじゃないか、サク。病気だろうと、痩せていようと、毛がなかろうと。
だってお前、その娘さんが好きなんだろ?大切なんだろ?
だったら気取る必要なんかありゃしないわね。お前は、まだ子供なんだ。
一緒にいて、とお願いすりゃいいんだよ、そんなもん。
飾るんじゃないよ、サク。そして、そこのお嬢ちゃんも。そのままでいいのさ、ふたりとも』
……多分、こんなことを言いいたかったのかな?と今では勝手に解釈している。
再来週帰ったら、墓参り行くよ、ばぁちゃん。そして何時か、亜紀も一緒に。

「……頑張らなきゃな…」 と再度口に出してみる。
手を伸ばして、写真立ての後ろに置いてある白いスケッチブックを手に取った。
亜紀は『最初から見て!』と怒るが、僕がいつも真っ先に捲るのは最後のページ。
ピンク色のブラウスを着た少女は白い笛を加え、優しく、快活に微笑んでいる。
僕はこの絵を見る旅に、何故か無性に駆け出したくなる。
可愛かった頃(?)の亜紀の自画像を見ながら、僕はこの本を手渡された日を思い出していた。
...2006/03/23(Thu) 02:25 ID:fvkGpkxo    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
「…はい、これ…」
あの生還の日から1年強、医療への道を決め大学受験を間近に控えた僕へのクリスマスプレゼント…と言って、亜紀は笑いながらそれを差し出す。
「…いつ、これを?」
「空港に行く前に書いといたんだ…何かを、遺したくてね」
「…読んでも、いいかな?」
「…どうぞ、好きなだけ(笑)」

ペラペラ…と頁をめくりながら、僕は食い入る様に絵本を読み続ける。
(…これを…隠してたのか、ずっと…)
一時期から病室に入る度、亜紀が何かを隠す素振りがあった。
何時か訪れるその日に備え、ずっと書き上げていたのだろう。僕に見つからないように。
(……覚悟…決めてたんだな、ひとりで…)
それは自分の死に対してだけではなく、残された僕の人生に対しても。
自分の身に何があっても、僕がくじけてしまわぬように。
弱虫で泣き虫の僕が、それでも前を向き走って行けるように、と。
絵本の最後の方に至る。そこに記されていた言葉と絵の数々。
『隣のあの子は、どこへ行ったの?』
『もう見えないよ なぜならお前の中にいるからさ』
(……亜紀…お前…どんな気持ちで書いてたんだよ、これ…)
胸が張り裂けそうになった。涙を堪えるので精一杯だった。
でも僕は必死で歯を食いしばり、唇を噛み締め、涙を押し留める。
もう二度と、亜紀の前では涙を見せない…あの日、そう決めたから。
最後の頁を読み終える。顔を上げると、亜紀は優しく微笑んでいた。

「あげるよ」
「……いいって、こんな大事なもの…」
「うぅん、もらって。元から、サクちゃんに渡したくて書いといたものだし…」
「…いいのか?」
「うん。それに…他の絵本を書く時間、まだまだありそうだしね」
「!!……そうだね…その通りだね…」
「…絵が下手だとか、そういうこと言わないでよ。自分でもわかってるんだから…」
「言わないって(苦笑)…ありがとう。頂くよ…最高のプレゼントだ…」
「……ホントに?(笑)」
「…本当だって(笑)」
うつむくことしか出来なかった当時。少しづつ笑い会える様になった現在。
その温度差にしんみりしだした僕を、亜紀がいつもの様にからかい始める。
「…本当は、オーストラリアで渡す予定だったんだけどなぁ…」
「(ビクッ!!) ……ごめん…」
「誰かさんの心変わりのせいで、タイミングずれちゃったよ…」
「…………」
「はい…遺書代わり」
「…亜紀っ!」
「…『松本君』が死ぬ時、一緒にお棺に入れて焼いて」

「こらっ!」 少し、本気で怒った。
「…………」 すると亜紀は眉と目尻を下げ、哀しげな顔をする。
対応に困り果てる僕。僕は世界で一番、この顔に弱い。
「………ハハッ!!」 そうすると亜紀は我慢できずに笑い出した。
「……もう…」
「お休み、松本君!」 言うや否やシーツを被り、眠ったふりをする。
口では ― 特にテープの中では ― 未だに殊勝なことを言ったりもしているが、
長年付き合って、さらけ出しあって、ようやく確信できたことがひとつある。
…コイツの好きなもの第一位は『困った顔をする松本朔太郎』なのだ、と。

クリーンユニットの中、介護服を着用した僕はそのまま立ちずさむ。
亜紀はまだ、シーツの中で背中を波立たせている。
(……仕方ないな、もう…) 溜息ついでに腰を下ろし、亜紀の頭の辺りをさすってみた。
まもなく、ベットの中から堪えていた嗚咽が聞こえ出した。案の定、亜紀は泣いていた。
...2006/03/23(Thu) 02:27 ID:fvkGpkxo    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:ポポ
お疲れ様です!!!
まず先日は関係ないコメントばかりで、本当にすいませんでした。
悪気はなかったのですが、気分を害されたかろうと思っています。今後は差し控えます。

今日も作品読ませて頂きました。
おばぁちゃんだったんですね、サクちゃんの背中を押してくれたのは。
ドラマでは出てこなかった人ですが、実際はこんなキップがよくて優しい人だったんでしょうね。
サクちゃんもずいぶん大人になった感じがして、頼もしいですね。

続編、期待しています。ソラノウタ、大好きです!!!
...2006/03/24(Fri) 12:22 ID:x.WqLw/g    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
>ポポ様
いつも御愛読、誠にありがとうございます。
今回は亜紀の状況も落ち着き…という前提において進めていますので、ふたりの何気ない会話を多目にしています。
ダラダラ長くて恐縮ですが、今後とも宜しくお願い申し上げます。
あと
>気分を害されたかろうと思っています
全くありませんw 本当に御心配なき様お願い致します。
加えて、御子息の健やかな御成長を心よりお祈り申し上げます。
朔婆ちゃんいついては、富子を更に豪快にした感じで考えておりました。
...2006/03/25(Sat) 08:19 ID:ZEnV7Aa.    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
「……ごめん…」
「本当だよ…まったく…」
「…でもね」 と言って亜紀は涙の理由を説明し始める。

「…今がね、なーんか、こう…幸せすぎて…」
「…………」
「…どうなっちゃうんだろう?とか思っちゃうよ。なんか、また、あるんじゃないか…って」
「………亜紀」
「…トラウマだね、夢島の…でも、やっぱり…すごく、こわいんだよ…」
「…………」
「…弱いなぁ、私…」
「そんなこと、ないよ」
「…こんな、タチの悪い冗談言い合って、笑い合って…」
(…言い合っても、笑い合ってもいないよ。亜紀がひとりで言ってるだけじゃん…)
「そんなことすら、今まで出来なかったでしょ?…お互い、そんな余裕なくて…」
「…………」
「…ようやく、ここまで来れた…来れたんだけど…また明日とか、耳鳴りするのかなって…」
「…ないよ、そんなこと」
「……考えちゃうんだよね、どうしても」
そう言うと亜紀は、僕の胸に顔を押し当ててきた。

「………亜紀…」
「こわいよ…やっぱり、こわいよ…サクちゃん…」
「…………」
「…ここまで来て、別れるくらいなら…あの時、死んでいた方が、まだ…」
「ばか……何、言ってんだよ…」
「やだよ…戻りたくないよ…サクとふたりで、笑っていたいだけなのに…」
僕は黙って、亜紀のまだまだ細い肩を力強く抱き締めた。
下手な言葉なんかより、態度で示したかった。僕の意思を。決意を。
あの日以来、何百・何千・何万と心の中で繰り返してきた、この思い。
それは今さら何が起ころうが、決して1mmたりともぶれたりはしない、と。

しばらくすると嗚咽が止み、彼女は平静を取り戻した。
「……落ち着くなぁ…サクちゃんの、ここ…」
「………甘え下手…」
「……ごめん…」
「まぁ、諦めてるけどね…この件だけは…」
「…ひどいこと、言うなぁ…十分、信用してるし、特別扱いしてるよ?」
「いや、こうなる前にさ…」 と言い欠けたが、途中でやめる。
「…何よ…昔よりは、全然甘えてるつもりだけど…」
「…泣くまで耐えること、ないでしょ?そんなもん…」
「…………だって…」
「だって?」
「………負けたく、なかったんだよね…」
「………………プッ…」
「……サクぅ!!」
怒った亜紀が、僕のわき腹をくすぐり出す。
「あぁーーー!ごめんごめん!俺が悪かったよ!」
「…病人、からかうからだ!」
見れば彼女も笑っている。ストレスと不安は、一旦遠くへ去ってくれた様子だ。

「…でも、変らないな。そういうとこ…」 再び彼女の隣に腰を下ろす。
「…きらい?」
「いや、全然…むしろ嬉しいよ、何だか…」
「……ホントかなぁ…」
「本当だよ…」
「……あやしいなぁ…」
「…もう、いいって」 僕は、苦笑混じりに結論を急ぐ。
「……たまに甘えてくれれば、彼氏としては、満足ですから…」
「…うん、わかった…たま〜〜に、甘えてあげる」
「……あげる、って(苦笑)」
「……ヘンなの(笑)」
「まぁ、亜紀に甘えろって言うのは…」
「…言うのは?」
「…お父さんに『いちいち俺をにらむな!!』って言う位、無理なことなんだろうから…」
「……まだ、にらまれてるんだ(笑)」
可笑しそうに、亜紀が笑う。
自分の周りに笑顔がある空間、それが今の彼女にとって何より嬉しいのかもしれない。
...2006/03/25(Sat) 08:22 ID:ZEnV7Aa.    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:一読者
祖父がカメラマン様

お疲れ様です。今回も楽しく読ませて頂きました。
もし亜紀が生存していたら、一年後とかはこんな感じだったのかもしれませんね。
朔のすべてを信用し愛している亜紀の気持ちが伝わってくるようです。

続編を期待しております。
...2006/03/26(Sun) 18:30 ID:pHUkjjy2    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:たー坊
お疲れ様です。
ドラマと比べ、朔が強くなっていますね。亜紀に対しても・・・。
しかし、朔をくすぐる亜紀に本当に病人か?とつっこみたくなりました。
とりあえず、どんな形でも朔は幸せそうなのが微笑ましいです。
次回も期待しております。

また、私のストーリーと重なる部分につきましては、一切不快な印象はございませんので、ご安心を(笑)
...2006/03/26(Sun) 20:56 ID:7mCvsFBE    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
>一読者様
御愛読、誠にありがとうございます。
>一年後とかはこんな感じだったのかもしれませんね
当時の緊迫感は若干薄れつつも、状況的には楽観も出来ない状態の中でふたりが互いの存在の重要性を分かり合う…そんな姿を描きたいと考えています。
(本当は一進一退と言う状況なのでしょうが、ストーリーが進まないので改竄してますw)
次回以降も御声援、宜しくお願い申し上げます。

>たー坊様
>ドラマと比べ、朔が強くなっていますね
朔が強くなった、というより亜紀が甘えている感じで考えていました。
特に闘病中で外部との接触も殆どない状況ですから、さすがの亜紀も元気な頃よりはそういう面も出てくるのかな、と。
勿論「亜紀は俺が支えなきゃ…」と頼り甲斐のある男になろうとしてる朔が背伸びしている面もあります。
…さすがに見抜かてれるなぁ…お見逸れ致しましたm(_ _)m

>朔をくすぐる亜紀に本当に病人か?とつっこみたくなりました
…これはですねぇ、自分でもやばいかなぁ…とは思ってた箇所です。
まぁ最悪の状態時でも駅の階段上った亜紀ですから、安定時はこれくらい出来るかな…と都合の良い脳内変換で書いてみましたwお目溢し下さい。
今後も御指導御鞭撻の程、宜しくお願い申し上げます。

さて来週は決算ピークで流石に余裕がない為、休載致します。
(場合によっては1作くらい投稿できるかも知れませんが)
ちなみに今後の投稿予定は、亜紀の手術⇒退院の日⇒1年後のある日、で完結致します。
もう暫くの間だけ皆様にはお付合い下さいます様、心よりお願い申し上げます。
...2006/03/26(Sun) 23:13 ID:7nWrD2Os    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
「…じゃぁ、せっかく誉めてもらったから…」
「…誉めてないって(苦笑)」
「私も、サクちゃんの変らずに好きな所、言ってあげるよ」
「………いいよ、別に(照)」
「…聞いて…」
笑顔の向うの瞳は真剣だった。伝えたい何かがある。そう気付いた僕は、背筋を伸ばす。

「………うーんとねぇ…」
(そこまで言っといて……ないのかよ!?)
「……存在、かな…」
「……そんざい?」
あまりに意表をついた答えに、僕は思わず聞き返す。
「うまく言えないんだけど…サクちゃんって、ほら、言葉の人じゃないから…」
「…………」
「ずっと私を支えてくれたのは、言葉じゃなくて、態度とか行動だったからね… 何をし出かすか、わからない恐さはあるんだけど(笑)」
「………そう…」
「とにかく…安心できるんだ…安らげるんだよ、サクちゃんの隣にいると」
「…………」
「大きな優しさと、純粋さで、ずっと私を守ってくれた…包んできてくれたよね…」
「ねぇ……どうしたの?具合でも悪い?」
「…茶化さないの!」
「…ごめん…でも、何だよ、急に…」
僕の照れ隠しから来る冗談につき合わず、亜紀は語り続ける。
「………大好きだよ…昔も、今も…」
「!!!………どうも…」
「だからね……そのままで、いてね…(涙声)」
「……えっ?…」
「…そのままの…呑気で、穏やかで、優しいサクちゃんで…いてね、ずっと…」
「………亜紀…」
「…サクちゃん、不器用だから…この後、私になんかあったら、絶対、変な回り道とかしそうでさ…」
「…………」
「……自分を…責めたりしちゃ…ダメだよ…」
「…………」
「…私は、ね…ホントに、幸せだったんだからね…サクに会えて…」
「…………」
「…私に……何があっても…ずっと…ずっと一緒にいるから…」
「…………」
「……ずっと…サクちゃんの中に…いるから…ね…」

「……亜紀!!」 いたたまれなくなった僕は、亜紀の肩を強く握り締めた。
「…サクちゃん……あれ…読んでね…」 亜紀も涙ながらに、自分の創ったスケッチブックを指差す。
「…………」
「…あそこに…全部、書いてあるから…」
「…………」
目を真っ赤に充血させながらも、亜紀は必死におどけた表情をつくる。
「……あそこに書いてあることに…嘘は、ないぞよ…」

奇麗事ばかりで過してきたわけではない。
互いに見せ付け合ってきた。弱いところ。情けないところ。汚いところも、あったかもしれない。
でも、いざという時、亜紀はいつも前を向いていた。僕を支え、励まし続けて来てくれた。
これからも、そうだろう。何があっても、必ず最後は前を向く。僕に力を与えようとしてくれる。
…それでこそ、廣瀬亜紀だ。僕が好きになった、廣瀬亜紀だ。
それに応えるために、僕は走り続けて来た。そして、これからも走り続ける。ただ、それだけのことだ。

「………わかった?サク…」
「…わかった…ぞよ…」
「……もう…すぐ、ふざけるし…」
「いや、ごめん。茶化した……でも大丈夫だよ、亜紀…」
「………何が?」
「俺…頑張り方、覚えたから…信用してくれてて、いいよ」
「……そっか…」
「でも、自分のためより、亜紀のための方が頑張れるからさ…」
「…………」
「…やっぱり、一緒にいてよ…ずっと…」
「…いるよ、頑張るよ…でもね、自分のやりたいこととか、あった方が…」
「あるよ、俺。やりたいことも、夢もある」
「…何?教えて」
「前に言ったよ、例の日に。変ってないよ、まったく」
「…もしかして…私のいる世界にいたい、ってやつ?」
「そう。それだけ。何も変ってない」
「……(嘆息)…もう…呑気だなぁ、本当に…」
「…そうかな?でも、何と言われようが、それしかないしね…」
「……わかったよ…いてあげる…気の済むまで、いてあげるよ!」
「…ありがとうございます」
「………もう(笑)」
キスは当分お預けだから、僕達はおでこをくっつけ合い、笑い合う。
…覚悟は出来ている。絶対、失わない。いつでも戦う。もう二度と、絶望には逃げ込まない。
そんな決意を新たにした瞬間、顔が険しくなったようだ。すかさず、亜紀がツッコミを入れる。

「……ずるいなぁ」
「…何が?」
「ひとりだけ、成長してさ…なんか、男の顔になっちゃったって感じ…」
「…ようやく、追い付いたってことだよ、亜紀に」
「(大声で)…えぇっ!私、もう追い付かれちゃったの!?」
「……おいっ(苦笑)」
...2006/03/26(Sun) 23:18 ID:7nWrD2Os    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
笑いながら、亜紀は再び僕の胸に顔を押し当ててくる。

「…頑張ろうね」 「あぁ」
「でも…無理しないでね」 「あぁ」
「…ずっと、一緒にいてね」 「あぁ」
「…きらいに、ならないでね」 「あぁ」 「…………」 「?……んっ?」

「……あぁ、しか言えないの!!!?(怒)」
「…流してる訳じゃないよ。真面目だよ、俺…」
「でもさぁ…他にも何か言ってよ、クリスマスなんだし…」
「…そう言われても…」
「じゃぁ、私からリクエストしてもいい!?」
「……好き、とは言ったよ…」
「…だいぶ、前にね…1年以上、前にね!」
「……そういうのは、何度も繰り返すと、軽くな…」
「(完全に遮り) 前、言ったのはダメなんだよね?言ってないのはOKだよね?」
「……う、うん…」
「…ふふ〜ん…じゃぁねぇ…」
「…………」
「…愛してる、って言って」
「また今度ね」

即答した。即座に彼女は再びシーツを無言でかぶる。
「……亜紀〜」
「…もう知らない!意地悪!バカ朔!」
「……そういうのは苦手なんだよ、どうしても…」
「いいもん…もう。さよなら、松本君」
再び他人行儀な呼び方をするが、声は笑っていた。不安と絆を確かめ合った後だ。さっきとは違う。
安心して病室を出ようとする。だけど、ひとつだけ亜紀に伝えておきたいことがあった。
僕はドアノブに手を掛けながら、彼女に背を向けて話し出した。

「…悪い、と思ってるよ…不器用で…」
「(小声で)……ホントだよ…」
「だけどね…軽々しく言えないんだ、どうしても…」
君のことが、何よりも、誰よりも大切だから。
「きっちりと…自信持って言えるようになったら…絶対、言うから…」
「…………」
「だから…もう少しだけ、待ってて…お願い」
「…わかった…そこまで言うなら、待つよ…仕方ないなぁ…」
「……ありがとう」
「そのかわり…私もひとつ、お願いしていい?」
「うん……何?」
「…今度、そういうこと、言ってくれる時は…」
「…………」
「…倒れた時とか、危険な時、以外にしてね…」
「………はい」
「フツーの時でいいからね、フツーの…わかった?」
「…よく、わかりました(苦笑)」
「わかれば…帰ってよろしい(笑)」
「…ありがとうございます(笑)……って、ごめんな…」
「うぅん、逆に…変ってなくて、安心した…」
優しく微笑みながら、彼女は明るく送り出してくれた。初めて一緒に歩いた、帰り道のように。
「…じゃぁね、サク!」 僕は照れながら、退出した。

病院の階段を下りながら、さっきまでの会話を思い出してみる。
『…でもね、自分のやりたいこととか、あった方が…』
(……やりたいこと、って…やっぱり、あれ以外、ないよな…)
僕のやりたいこと。僕の夢。僕の好きな世界。僕の守るべき世界。
それは、亜紀の声が聞こえる世界。
亜紀が、僕のことを呼んでくれる世界。
あの声が ― 僕の回りに、いつでも『サク!』という声が − 響き渡る世界。
その世界を築こう、と思った。守ろう、と誓った。そのために、走り続けようと。
一緒にいるだけで、亜紀の力になる時代…そこからは、もう卒業しよう、と決めていた。
これからは自分の知識と、技術と、意思で守っていこう。
亜紀が、亜紀のままでいられる世界を。
…ふと、左腕に抱えたクリスマスプレゼントに視線を移す。
いても立ってもいられなくなり、僕は再び駆け足で病室に戻った。

「…亜紀っ!」
「!?…な…なに?…どうしたの?」
驚いた表情の彼女のベットの上には、いつもの赤いラジカセがあった。
恐らく、僕の受験へのエールでも吹き込もうとしていてくれたのだろう。
「ごめん、驚かせて…でも、ひとつ、お願いがあって」
キョトンとする亜紀を尻目に、僕は鞄からペンとノートを取り出す。
「書いて、ここに。俺、いつも、見ていたいから」


…当時を回想しながら、僕は窓の外を見上げる。
東京の空は、故郷のそれに比べて、幾分かどんよりしているように思える。
それでも、晴れ渡った時の空模様は、やはり、とてもきれいだ。
空は、何処までも続いている。いつか再び、ウルルの空を見に行こう。今度こそ、ふたりで。

噛み締めるように、噛み砕くように、あの言葉を口ずさむ。
あの日、ノートに書いてもらった、あの言葉。元気の出る、おまじない。
僕の人生で、最も重く、最も尊い、あの言葉を。
「……おまえの脚は、あの子の脚だ…か…」

(…あの時の気持ち、変ってないよな?)
「…なにひとつ、変ってないから……安心しろよ…」
18歳の僕に問い掛けられた20歳の僕は、思わずそう呟き返す。
次の帰郷は2週間後 − 91年7月2日 − その日は、亜紀の21回目の誕生日。
...2006/03/26(Sun) 23:27 ID:7nWrD2Os    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:一読者
お疲れ様です。
朔を励ます亜紀、朔をからかう亜紀、朔に怒る亜紀・・とても楽しそうな亜紀の姿がたくさん見れて幸せです。
朔も成長した姿が見てとれて、頼もしいですね。相変わらず愛情表現は苦手そうですが(笑)

今回、ツボに入ったのはこの会話でした。
>「ねぇ……どうしたの?具合でも悪い?」
>「……あぁ、しか言えないの!!!?(怒)」
第7話の堤防のシーンを思い出しました。ゆっくり休んで、楽しい次回作を期待してます。
...2006/03/29(Wed) 20:33 ID:xP0H2J8I    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
一週間ぶりに帰って参りましたm(_ _)m
地獄の決算処理を終え、戻っては参りましたが…逃げ切れませんでした>海外赴任。
4/25付を持ってバンコクへ着任致します。期限は1年間と言われてますが、どうなる事やら…(嘆息)
当初は4/末と言われつつ、何だかんだでGWまでは伸ばせるだろう…と甘い予測を立ててましたが、とんだ目論見違いでした。

で、今後どうしようか?について凄く迷っております。
実はエンディングだけ完成して、途中が未完という状態なものですから、どこまで投稿すればいいものか?を…
今から考えて投稿し出したら尻切れトンボに終りますし、かと言って途中を飛ばしてエンディングだけというのも変ですし…いっその事、ここまでで終らせようかな、とも。
しかし、それも正直癪に障るのでw、1〜2日考えてみます。愚痴愚痴言ってスイマセンでした。

>一読者様
いつも御愛読頂き、本当にありがとうございます。
>朔も成長した姿が見てとれて、頼もしいですね
ここはですねぇ…ネタばらしになりますが、成長と言うより朔に精神的に背伸びさせる感じで書いていました。
勿論成長もしてるのですが、それ以上に『亜紀の支えにならなきゃ』と必死で無理してる朔がいるとお考え下さい。
で、そんな朔を元気になった亜紀が精神的に解放してあげる…という展開を考えていましたが、力量不足でそこまで描けそうにありません。
前にも書きましたが、もっと早くから始めてればなぁ…と後悔しています。
どうにかいい形で終らせたいと考えていますので、もう暫し御時間を頂戴したくお願い申し上げます。
...2006/04/03(Mon) 01:25 ID:qxZV9zbU    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:表参道
祖父がカメラマン様
いつもお疲れ様です。

お忙しいとは思いますが「空港のない・・・」の
ファンとしては出来るだけ続行の方向でお願いしたいです(涙)

いつもとても楽しみにさせて頂いてますので、許されるならサクと亜紀が幸せになるところがみてみたいと思っています。
ワガママを言ってしまい申し訳ないです。

海外赴任の為の用意などお忙しいとは思いますがお体にお気をつけて執筆の方も(笑)頑張って下さい!!
...2006/04/04(Tue) 00:40 ID:iJg3bt5Y    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:一読者
お疲れ様です。
私も表参道さんのコメントに完全同意致します。

私にも4ヶ月ですが海外赴任の経験があります。
出発前は本当に大変なんですよね(笑)、お察し致します。
ですが勝手を申すと、どうしても朔と亜紀の幸せな姿を見たいんですよ。

もちろん可能な限りで結構ですから、どうにか続けて頂ければ大変嬉しいです。
...2006/04/04(Tue) 22:43 ID:9PFKUWzc    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
>表参道様
>一読者様

いつも御愛読頂き、誠にありがとうございます。
とても温かいコメントを頂き、心から感激しています。
続編の件ですが、この2日間考えた結果、やっぱり行ける所まで行く事にしました。
但し時間との競争になると思いますので、尻切れトンボに終る可能性は否めませんが、朔と亜紀を幸せにする為に、健康に気を使いながらw全力を尽す所存です。
もう暫くの間、お付合い下さいます様、お願い申し上げます。

続編です。本日より亜紀の手術編に入ります。
今回の話は、例によってm(_ _)m たー坊さんの『アナザーストーリー』に沿った形で進行しておりますが、個人的に最も感動したNO,2編の2005/3/9の投稿作品よりヒントを頂きました。
ある夢から、ある思いに気付いた朔の苦悩と、それを受け止め解き放つある人物とのストーリーがメインです。
...2006/04/05(Wed) 02:06 ID:AsZHJaJ2    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
また、夢を見た。また、泣いていた。
でも、ひとつだけ、いつもとは大きく異なることがある。
その日見た夢は、いつものそれではなかった。

元気になった亜紀がいた。
あの笑顔を振り撒き、明るく輝いていた。
「亜紀!」 僕は声を掛ける。でも彼女はまったく反応をしない。
彼女の周囲にたくさんの人達がいた。皆、僕の知らない人達だった。
(……何だよ…何なんだよ…)
名前を呼び続ける。しかし彼女は僕を一瞥だにしない。
僕の知らない人達と、楽しそうに語り合っている。
そのうち、周囲が暗転し彼女との距離が遠去かって行く。
「亜紀!亜紀!!亜紀!!!」 何度も叫ぶ。だが、その声はまったく届かない。
そして、亜紀が見えなくなった。
そこで、目が覚めた。

「………なんて夢だよ…まったく…」
最悪の目覚め方をした僕はベットの上で不機嫌そのもので呟く。
浮かれている、と思った。ドナーが見つかり手術も決った、もう助かったつもりになっているのだ、と。
手術が終るまで、ほんの少しの油断も安心も出来ないはずなのに。
僕は自分自身の未熟さと不明を恥じた。いや、そう思い込もうとした。
それ以外の可能性なんて、考えられなかった。考えたくもなかった。
(…馬鹿野郎…何をいい気になってんだよ、朔…)
ひたすら自分を責めた。すっかり助かった気になっているお調子者の自分を。
((本当は…違うんだろ、それ?))
頭の中で聞こえた、もうひとりの自分の声を即座に打ち消す。そんなことがあるはずがない。

「……すべて、手術が終ってから考えればいいさ…」
((…怖いんだろ?…手術が終った、その後が…))
声が再び聞こえた瞬間、僕は咄嗟にベットの上にあった雑誌を壁に放り投げていた。
その衝撃音で、ふと我に返る。僕は呆然としていた。
「………疲れてんだよ、俺…」
確かに亜紀の手術に加え、大学での研究と報告もピークを迎えている。
そうだ。きっと、そのせいだ。まだまだ青いな、俺も。
原因が特定できたことで気が楽になった。そう、思い込んだ。シャワーを浴びるため、浴室へ向う。

だけどその日、僕は東京に来てからの日課を抜かしていた。
満面の笑顔を浮かべた彼女の写真。白いスケッチブック。
その二つの宝物に、目もくれなかった。いや、見れなかった。


心の中に、何か。得体の知れない重い何かが、残った。


その日から、従来以上に研究に没頭し出した。周囲から白い目で見られる程に。
敢えて忙しくしたかった。と言うより、何かに忙殺されたかった。
勉強と亜紀の手術 − その二つのことしか考えられない様に。
とにかく、あの日の自分の声を打ち消したかった。忘却したかった。それだけだった。

誰にも相談なんか出来やしない。
話した瞬間、誰からも怒られ、軽蔑されることも認識していたし、何より誰に相談しようが、欲しい答えは一つだけだと自分自身がわかっていたから。
『大丈夫だよ。完治した後も、亜紀はお前のそばにいるよ』
それ以外の答えも、慰めも、叱咤激励も要らない。だから、誰にも話さなかった。

しかし、ふと息をつく瞬間に、脳裏に入り込んでくる光景がある。
4年半前の夏 − 夢島で過ごした夢の様なひと時。
あの夜、目を輝かしながら、亜紀は僕にこう言った。

『私はね…絵本、つくりたいんだ』
『色んな国に行って…伝説とか、民謡とか、詩とか探してきて…』

その時の亜紀の声が、笑顔が、脳裏にこびり付いて離れない。

亜紀の夢を叶えさせてあげたい。
そのスタートが少し遅れた分、これから幾らでも夢に向って走れるよう、支えて続けてやりたい。

亜紀に、ずっとずっと、そばにいて欲しい。
この4年半、そう願い続けてきた。今さら、何処にも行って欲しくない。飽きるほど、一緒にいたい。

ふたつの異なる思いが、確実に僕の中に存在する。
そして、そのどちらも、紛れもなく僕の本心だった。何れも否定できない感情だった。
(……最低だよな…)
心底、そう思う。自分をこれほど軽蔑した事は、今までなかった。
でも、自分の世界から亜紀が飛び立っていく…その現実を、僕は肯定も否定も出来ずにいる。
どす黒い自己嫌悪と不安に苛まれながら、日々を多忙に過す事で、僕は亜紀の手術を待った。


亜紀が横浜へ転院する日、僕は勿論、立ち会った。
病室へ向う足取りが、何となく重い感じがする。
ドアをノックして部屋へ入る。亜紀はお母さんと明るく談笑していた最中だった。

「…よっ!」 亜紀はわざとおどけた態度で僕を迎え入れる。
「…よう…」 僕も敢えて軽口で応える。
「…なに、あなたたち、その変なやり取りは(笑)」 亜紀のお母さんが思わず苦笑した。
...2006/04/05(Wed) 02:15 ID:AsZHJaJ2    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:表参道
祖父がカメラマン様

早速、拝見致しました。
サクの心の動きがまるで手に取るように感じる事ができました。

亜紀が健康になるかもしれない、同時にいろんな不安が頭をよぎる、サクの気持ちがとても良くわかります。

「空港のない・・・」に最後までご一緒させて頂きたいと思います!!
執筆頑張って下さい!!
...2006/04/06(Thu) 00:53 ID:SfqRRX5.    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
>表参道様

本当にいつもいつも応援頂き、感謝の言葉もございません。
もうウダウダとは申しません。最後まで頑張ります。最後までお付合い下さい!!!!

……と、珍しくサッパリ決めようと思ったんですが…

本日、海外衛生部(因みに仕事は商社の食品関係です)の同期より「タイも政情不安定だからね〜、ひょっとしたら出発延びるかもよ、○ちゃん」との耳打ちがありまして…えーと…あの国が混乱してるのは今に始まった話じゃないだろうと小一時間(以下略

どうなるかは皆目検討が付きませんが、とにかく今は朔と亜紀の幸せな未来の為にに全力を尽します。いつも愚痴ばかりでスイマセン。

てなわけで、続編です。
...2006/04/06(Thu) 03:05 ID:wmjaR6Pg    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
「そうかな?いつも、こんな感じだよね?」
「まぁ…もう、付き合い長いんで…(苦笑)」
「そのほとんどが、病室だったけどね…」
「…もうすぐ終るよ、それも…」
「……うん、そうだね…もうすぐだよね…」
「…そうだよ」

ふざけ合ってたと思ったら、急にふたりだけの世界を創ったり。
付き合ってられない!とばかりに、お母さんが首を振りながら、席を外す。
どちらからともなく、僕らは手を握り合って、珍しく静かに語り始めた。

「…元気?無理してない?大丈夫?」
「…それ聞くのは、俺の方でしょ(苦笑)…体調は?」
「体調は安定してるけど…やっぱり、精神的にね…
 期待と不安がごっちゃになってる感じ…」
「……そっか、無理もないな…」
「でも…顔見たら、安心した。大丈夫だよ、もう…」
「…こんな顔でいいなら、ずっと見せ続けるよ、俺」
「?…うん、ありがと(…何か、いつものサクちゃんと違うなぁ…)」

亜紀の微妙な戸惑いに気付きもせず、僕はじゃべり続ける。

「…退院したら、何しよっか?」
「……は、早いよ、それ考えるのは…」
「そうか?でも、今まで我慢してきたんだからさ…罰、当らないと思うよ」
「…そうかもしれないけど…まだ、考えられないな、そこまで…」
「……ごめん…無神経なこと、言った…」
「そんな、謝るようなことじゃないでしょ(笑) でもね、あるとしたら…」
「……何?(息を呑む)」
「…サクちゃんと、飽きるまで一緒にいたいな、やっぱり」

彼女がはにかみながら、そう言ってくれた。僕は心底、安心した。

「…はぁぁぁぁぁ…(深い溜息)」
「やだ、何…疑ってたの?ひょっとして(笑)」
「いや、そういう訳じゃないけど…俺も、安心した…」
「…もう…変な所だけ心配性だよね、昔から」

亜紀は呆れた様に笑いながら、こう付け加える。

「信用してよ…前に言ったでしょ?気が済むまで、いてあげる…って」
「!!……ありがとう、嬉しいよ…俺…」
「?…何か、調子狂うなぁ…どうしたの?」
「何だろうね…自分でも、よくわからないんだけど…ホント、安心した」
「……サクちゃん?」
「もう、大丈夫だから…ごめんな、変なこと、言って…」

悟られまい、と意味のない言葉を繰り返す。そんな僕を、亜紀は優しく受け止めてくれた。

「…しかたないよ…だって、この4年半、一番無理してきたの、サクちゃんだもん…」
「……そんなこと、絶対ないよ…よっぽど、亜紀の方が…」
「うぅん、見てればわかるよ…何年間、付き合ってると思ってるの?」
「…でも、俺、本当に無理とか…」
「(途中で遮り)…だから、今度は私がサクの頑張りに応える番だから…」
「……亜紀…」
「…わらわは、ばっちり頑張るぞよ(笑)」
「…うん」
「しっかり、応援しててね。私の応援するの、昔から好きでしょ?」
「…あぁ、俺のライフワークだから、それ」

僕は本心から、亜紀にそう答えた。

「だからね…やっぱり、今は目の前のことだけ、考えるよ…
これからのことは…これから、ゆっくり考える
…その時間を得るための、手術だと思ってるから…」

「!!!………」
亜紀の言葉と決意に、僕は思わず自分の弱さを恥じた。
(…やっぱり、強いなぁ…それに比べて、何やってんだ、俺は…)

「……サクちゃん?どうしたの?」
「ごめん…また、考え事してた…」
「……どんな?」
「いや…もしね、俺が亜紀と同じ目に合ったら、絶対に耐えられなかっただろうな、って…」
「…そんなこと…」
「本当に…ありがとう…頑張り抜いてくれて…」
「……サクちゃん…」
「あきらめないで…ずっと、俺なんかのこと、信じてくれて…」
「…………」
「…今、ここに、いてくれて…ありがとう、本当に…」

僕は心から、亜紀のこの4年半の頑張りに感謝していた。
...2006/04/06(Thu) 03:13 ID:wmjaR6Pg    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:一読者
お疲れ様です。
しばらく考えられる・・とのことでしたので、そろそろ結論出たかな、とサイトを覗いた所、すでに続編がスタートしてたのに驚きました(笑)

実は私も朔と似たような経験を大学時代にしたことがあります。
当時付き合っていた女性がとても活発的な人で、でもその分一緒に遊んでる時は甘えん坊な性格だったので、朔と同じく応援したいという気持ちと、一緒にいたいという気持ちで揺れ動いたことを思い出しました。
結果は私のことなど見向きもせず、とっとと海外留学してました(笑)
でも男って、そういう点では女性より数段ロマンチストなんですよね、本当に朔の悩みがよくわかります。

私も表参道さんと同じく、最後までお付合いさせて頂きます。
空港に行かなかった朔と亜紀の未来がどんな形だったのか・・を見届けさせて下さい。期待してます!
それと・・サラリーマンって本当に世知辛いですよね(泣)。心中お察し致します。
...2006/04/06(Thu) 22:16 ID:uh6NS6bc    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:表参道
祖父がカメラマン様

お忙しい中、執筆お疲れ様です。
「空港の・・・」お話の中のサクと亜紀の台詞を
拝見してると言葉の言い回しなど本当にドラマの二人が話してるようで、感動しっぱなしです。

祖父がカメラマンさんの出発が延びるのを心よりお祈りしております(笑)

>一読者様

こんにちは。

本当に男性って女性より実はロマンチストなんですよねー。
お辛い経験とても良くわかります(笑)

「空港の・・・」是非最後まで見届けましょう!!
...2006/04/07(Fri) 01:54 ID:K70M/XBQ    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
>一読者様
>すでに続編がスタートしてたのに驚きました(笑)

こんな思い付きだけで生きてる典型的なO型人間ですm(_ _)m

>最後までお付合いさせて頂きます

こちらこそ、是非宜しくお願い致します。
最悪、赴任後にあっちから投稿します。それ位の覚悟です!

>表参道様
>言葉の言い回しなど本当にドラマの二人が話してるようで

最高の誉め言葉です。本当にありがとうございます。
何十回とDVDを見た余韻と、やはり山田孝之さんと綾瀬はるかさんの演技を超越した演技(2人とも朔と亜紀そのものでした)が一番の要因だと思いますが、それに脚本と演出の上手さもあるんでしょうね。
朔と亜紀を始め、登場人物が全員キャラ立ちしてるというか・・・
そういう意味で意外と難しいのが潤一郎と、書いた事はないですがボウズでしょうね、両名とも雰囲気と風貌で見せるタイプなので。
個人的には綾子さんの茶目っ気がお気に入りです。

>出発が延びるのを心よりお祈りしております

お願いしますm(_ _)m お祈り下さい

明日から出張なので2編ほどUPしておきます。
ここまではストックがあるのですが、ここから先が……とにかく頑張ります。
...2006/04/07(Fri) 02:57 ID:BzVmdtRo    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
「……それ、逆」
「…えっ?」
「私の方でしょ…どう考えても。お礼言うのは…」
「…そんなこと」
「本当に…言葉にできない…表現のしようがないよ…」
「…………」
「4年半…4年半だよ!…私なんかのために…耐えてくれて…」
「…………」
「何の…何の、見返りもないのに…」
「見返りとかじゃないよ、亜紀(強い口調で)」
「でも…」
「そんなものが欲しくてやってたわけじゃないよ、俺。それだけは信じて」

「…ごめん…言い方、悪かったね…」
「……いや、俺の方こそ…つい…ごめん…」
「ううん…でもね…言葉にすると、色んな思いが混ざっちゃって…」
「…………」
「だから…やっぱり、上手く言えないや(笑)」
「……うん」
「…手術、頑張るよ…私…」
「あぁ…そうだね」
「サクちゃんのために私が出来ることって、今、それしかないから…」
「…そうだよ、それだけだよ、亜紀。俺、それだけで十分だから…」

生きて。 生きて、帰ってきて。 僕の中には今や、その思いしかなかった。

「……絶対、戻って来るからね…サクのところへ…」
「……絶対だよ」
「うん、絶対…だから…もう少しだけ…」
「…………」
「……待っててね…信じててね、お願い…」
「…俺、どこにも行かないから…ずっと、ここにいるから…」
「……サクちゃん…」
「待ってる…俺、信じてるよ…亜紀を」
「ありがとう……大好き。ほんとに…大好き…」
「…俺も……大好きだよ、亜紀のことが…」

この4年半で、片手の本数ほども言ったことのない言葉を発する。
でも普段と違って、照れ臭さも恥ずかしさも、まったくなかった。
俺は、亜紀が好きだ。 自信を持って言い切れる自分がいた。

「……サクちゃん…」
「……亜紀…」

無言で見つめ合った。僕も彼女も、涙腺が怪しくなっているのがわかった。
そんな湿っぽい雰囲気を取り払うように、亜紀がおどけ出す。

「…って、まだ早いよね(笑)」
「そうだね(苦笑) … 今から緊張してちゃ、持たないよな…」
「…ここまで頑張ったんだもん…絶対、大丈夫だよ」
「あぁ…絶対…絶対、大丈夫だ」
「……ねぇ…同じこと繰り返してるよ、私たち(笑)」
「ホントだ…やっぱり、緊張してるんだなぁ(苦笑)」
「…リラックス、しよっか」
「うん…じゃぁ、今、亜紀は何がしたい?」
「今?…うーんとね、そうだなぁ…」
「…………」
「……キスでも…しますか?」
「!!!!……はいっ!!します!!」
「シッ!!……大きいよ、声が(苦笑) もう…」
「………ごめん」

思えばこの数年間、ビニール越しを始めとした様々な間接キスに挑戦してきた。
そのバリエーションの豊富さは、多分、世界でも指折りだと自負している。
だけど本物の(?)キスとなると、本当に、本当に久々で。

「…………」 「…………」 僕らは、互いに照れまくってしまった。
...2006/04/07(Fri) 03:01 ID:BzVmdtRo    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
「…サクがリードしてよ…強引なの、得意でしょ(笑)」
「……人聞きの悪いことを…」
「大丈夫だよ…もう、口内炎、ないから…」
「…そっか……じゃぁ…」
「………うん…」

照れながら、身体を寄せ合う。でも、その前に確認しておくことを忘れていた。

「……鼻つまむの、ナシだよ…」
「しないよ!(笑)」

笑うことで少し緊張が弛んだ。微笑み合いながら、僕らは目を閉じ、顔を寄せる。
唇と唇が触れ合った。互いに動くこともなく、ただ、唇を重ね合わせ続ける。
長い間、闘病に預けていた時間を取り戻す様に、僕らは永いキスをした。


(……だから…俺が、励まされてどうするんだよ……)
病室からの帰り道、またも軽い自己嫌悪に陥る。
しかし今日、つくづく実感した。俺は亜紀の前では、絶対隠し事が出来ないと。
(これからも…見抜かれるんだろうな、色々と)
ただ、亜紀の言ってくれた一言で、随分救われた。
とにかく、目の前の手術のことだけに集中しよう。その後のことは、その後に考えればよい。
強引に思い込むのではなく、今は心の底から、僕はそう思っていた。

出入口を抜け、亜紀のいる病室の方向を見やる。
そこに向い、僕は深々とお辞儀をしていた。
(…頼りない彼氏で、ごめんな…でも……ありがとう…)


「どうだった、デート?満喫できた?」
「…うん、とっても…ありがとう、お母さん…」

その頃、亜紀は頃合を見計らって病室へ戻った綾子と話し込んでいた。

「…でもね…何か、サクちゃん…ヘンだったなぁ…」
「そう?いつも通り、飄々としてる感じだったけど?」
「帰る時は、ね…でも、最初の方とか…少し…」
「そりゃ緊張もするでしょ。この為に、何年間も頑張ってきてくれたんだから…」
「…もちろん、そうなんだけど…」
「…いい彼氏、持ったね…亜紀ちゃん」
「うん!…お母さん、少しうらやましい?」
「こら(笑) お母さんには、お父さんがいますからね。全然うらやましくないですよ〜」

親子がふざけ合う。手術の成功の見通しも高く、特に綾子がとても明るい。
が、そんな会話をしながらも、複雑な視線で亜紀は朔の後姿を病室から見ていた。
(…ねぇ、サクちゃん…何を、心配してるの?)


そんなことがありながらも、時間は刻々と過ぎて行く。
手術の準備や説明 − その対応に追われ、僕も亜紀も何時しか、その日の事を忘れていった。
そして、遂に迎えた移植手術の日。
僕は亜紀の御両親と共に、手術室の前のソファーに座り、亜紀の生還を祈り続けていた。
...2006/04/07(Fri) 03:05 ID:BzVmdtRo    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:ポポ
お久しぶりです。
春休みを利用して子供たちと実家へ遊びにいってました。
お金と時間があれば伊豆まで足を伸ばしたかったんですが、それはGWか夏休みの楽しみにとっておきます。
その時、祖父がカメラマンさんを始め、皆さんが書かれたサクちゃんと亜紀の幸せなお話を、ゆっくり読みたいな、と思っています。

お体に気をつけて頑張って下さい。
私も祖父がカメラマンさんが書かれるサクちゃんと亜紀が可愛くて大好きです!!!
...2006/04/08(Sat) 12:58 ID:RbmRE5fY    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
>ポポ様
>サクちゃんと亜紀が可愛くて大好きです!!!

嬉しいです。ありがとうございます。
2人のキャラ設定をどちらか言うとドラマ前半の方に置いてあるので、そう思って頂けたのかもしれませんね。
あまり人気のある回ではないんですが、実は4話の2人の会話や雰囲気が大好きなので、それが無意識にベースとなった気がします。

続編です。当初はここで終りにする予定でした。
(色々考えてる間に妄想膨らんだので、もう暫しだけ続けますが)
今思えば、書き始めた理由は、これだけだったのかも知れませんねぇ…(余さん風に)
読後に皆様の中で『…よかったね、サク』と思って頂けなら、作者冥利に尽きます。御覧下さい。
...2006/04/09(Sun) 17:03 ID:MXqf6WYk    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
手術室の前、僕は亜紀の御両親と少し離れた所に腰掛けている。
不安気な様子を隠せないお母さんの手を握り締め続けるお父さんの横で、僕は祈るように − いや、祈りながら廊下の壁を見つめ続けていた。
成功の可能性は高い、と聞かされていた。僕のまだまだ乏しい知識でも、そう思えた。
しかし亜紀の元気な顔をこの目で確かめるまでは、安心など出来るはずがなく。
…こんなに時間が経つのが長いと感じられたのは、後にも先にもこの時だけだった。

手術室の赤いランプが消え、暫くすると、執刀医の先生が退出されて来た。
僕ら3人は同時にソファーから立ち上がる。
「先生!娘は!」
「…おめでとうございます、廣瀬さん」
悪夢の4年半が遂に…遂に終りを告げた瞬間だった。

(…よかったぁ…)
目の前が真っ白に、否、目の中に眩い光が飛び込んで来たかの様な感覚を覚えた。
「…ありがとうございます!先生、本当に…ありがとうございます!」
一瞬、我を忘れた僕を尻目に、亜紀のお父さんとお母さんが揃って深々と頭を下げる。
僕も慌てて頭を下げる。お母さんは、感激で言葉も出ない様子だった。
(…まだまだ、子供だな、俺…)

「…とにかく、お嬢さんを褒めてあげて下さい。本当に、よく頑張られましたね
 御家族の方々も、本当に…お疲れ様でした。おめでとうございます」
先生はそう言って、亜紀と御両親の苦闘を労われる。僕には軽く微笑んで下さった。
その横から、手術室から運び出される亜紀の横顔が一瞬見えた。
…本当は一瞬ではない。一瞬にして目頭が熱くなって、視界が失われたのだった。

「…………」
泣き続けるお母さんを支えるお父さんの背中に黙礼をし、僕はその場を離れた。
そこからロビーに向い公衆電話から手術の成功を、実家と智世に伝える。
親父もお袋も芙美子も、智世も、そして智世の家で待機していたスケちゃんとボウズも、皆とても喜んでいた。
ただ、何故か、皆の興奮した声が耳に入ってこない。宙に浮いているかの様な心持だった。
術後経過が心配だから…と取ってつけた様な理由を述べ、僕は手短に電話を切る。
その後、裏口から未だ寒風吹きすさむ外に出て、寂れたベンチに腰掛ける。
今は、ひとりになりたかった。 ひとりで、噛み締めたかった。

何をする訳でもなく、僕は手を組合せ、俯き加減でただ佇んでいる。
(……ほんと…色々、あったなぁ…)
その色々とやらを思い出そうとする。でも、何も思い浮かばなかった。
(……完治したんだ、白血病…)
この事実を確認しただけで、4年半の道程がすべて吹き飛んだ様に感じられた。
(亜紀…もう…苦しまないで、いいんだよ…)
いつしか両目から雫が溢れ、流れ出る。僕は、それを拭おうともしなかった。
(…よかった……本当に…よかった…)

背後から、誰かに強く右肩を1回叩かれた。僕は驚いて顔を上げる。
そこには、亜紀のお父さんが不審そうな表情で立っていた。

「……すいません…こんな、みっともない所を…」
「そうだな…あまり見せるもんじゃないな、そういう姿は」
「…すいません…あの……亜紀は…」
「まだ寝てるよ。当分、起きそうにないな。今は女房が見ている」
「…そうですか」
「…また、寝言聞かされても、たまらんしな…」
「……えっ?」
「どうせ、寝言で呼ぶのは君の名前だろ。まったく、親なんて割に合わない存在だよ…」
「……すいません…」

またも強烈な先制パンチをもらった。この短時間で、僕は3回もすいません…を発していた。

「まぁ、これでも飲みなさい」 と言って、お父さんは缶コーヒーを差し出してくれた。
「…ありがとうございます……いただきます…」
「…あぁ」

以前に比べ多少は和らいだとは言え、相も変らずの微妙な緊張感が僕らの周囲に漂う。
お母さんとは大分前から冗談を言える間柄になっていたが、この人だけには、どうも…
でも、僕はこの人のことが昔から決して嫌いじゃなかった。苦手ではあるけれど。
沈黙に支配された夕闇を振り払う様に、お父さんがタバコに火をつけた。

「…もっと、喜ぶかと思ってたけどな…君は」
「…いや、なんか…喜ぶとか、の前に…ただ、ホッとしました…」
「俺もだよ…終ってみれば、何か悪い夢でも見てただけの様な気がしてな…」
「えぇ…とにかく、よかったです。今は…もう、それだけです…」
「…そうだな…」
「……はい…」
「…………」
「…………」

「…何か、悩んでるんじゃないのか?」
「……えっ?」
「娘が、心配してたぞ。珍しく深刻な顔してた、ってな…」
「……いや…手術の、ことで…」
「違うだろ」 即座に見破られた。

「その事でおかしいと感じたら、わざわざ俺には言わんよ、亜紀は…」
「…………」
「…勘がいいからな、普段と違う何かを感じたんだろ、きっと」
「…………」
「…言ってみろ」
「………いや、もう…済んだことですから…」
「口に出さずに、心の中で溜め込むと、君が疲弊するだけだぞ」
「…でも…本当に、もう…」
「…男同士だから、言えることもあるんじゃないのか?」
「……(男同士だから…言えないんです、あんなこと…)」
「……そうか、わかった…」
「…………」
「残念だよ…少しは、信用してもらえてると思ってたんだがな…」

思わず、お父さんの顔を見る。怒ってるような、寂しいような、複雑な表情だった。
そして、自分を恥じた。真正面から、この人に向き合おうとしなかった自分を。
今までも、そうだった。散々怒られ、叱られ、不機嫌にさせ…の繰り返しだったけど、
僕は何時でもこの人に、真っすぐぶつかっていったはずだ。
この人に − 最も大切なひとの父親に − 男として、認めてもらおうと。
今の、等身大の僕を見てもらおう。怒られても、殴られても、構わない。そう思った。

「……変な、夢を見たんです…」
「…………」
「亜紀が、僕の知らない人達に囲まれて…楽しそうに、笑っていて…
でも、僕が呼んでも、全然返事がなくて…」
「…………」 お父さんは黙って僕の話に耳を傾けている。
僕は堰を切った様に話し出す。

あの日、見た夢のこと……いや、もっと前から、心の何処かで感じ続けていた、ある思いを。

「…夢島に行った時、亜紀、すごく楽しそうに話してくれたんです…自分の夢を、俺に…」
いつしか一人称が僕から俺に変ったのも気付かず、僕は語り続ける。
「絵本、創りたい…世界中を、飛び回りたいって…あぁ、すごく亜紀らしいなぁ、って…」
「…………」
「俺なんかより、叶えたい夢とか希望、たくさん持ってて…えらいなぁ、亜紀は…って…」
「…………」
「…でも、病気になって…全部、奪われかけて…それでも必死に頑張って、生還して… ようやく…あの時の夢にチャレンジできる日が来た…来たんですよ、その日が…」
「……そうだな…それで?」
「…………」
「おい……どうした?」
「………思ったんです、俺…」
「何を?」
「……俺の存在が…亜紀の、夢の…邪魔になるんじゃないか、って…」
「…?……どういうことだ?」
「……俺に、気を使って…亜紀が、自分の夢を追うのを諦めたりしたら…」
「…………」
「…亜紀の…せっかく掴んだ未来の…足枷になりたくないんです、俺…」
...2006/04/09(Sun) 17:07 ID:MXqf6WYk    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
ずっと、そうだった。そう思い続けていた。
亜紀は、何時の日も、僕の憧れだった。僕の、たったひとつの、太陽だった。

好きになった時から、心の奥底に秘めていた、この気持ち。
亜紀は、俺なんかには不釣合だ。俺なんかには、勿体無い、という気持ち。
それが回復という現実を伴って目前に現れた時、僕には動揺を隠す術がなかった。

お父さんは、そんな弱くてカッコ悪い僕の告白を、顔色も変えずに聞いてくれている。

「…すいません…つまんない話、聞いて頂いて…」
「…君は…どうしたいんだ」
「……えっ?」
「君の不安はわかった…それで、君自身は、どうしたいんだ?」

的確に、匕首を突きつけられた気がした。僕は意を決して、語り始める。

「…さっき言ったことは、大袈裟でもなくて…正直、今後が、怖くもあります…」
「…………」
「でも、俺…ようやく、自分の本心に気付いたんです…」
「…………」
「…その…本心に、これからも…従おうかな、って…」
「それは…どんな本心なんだ?」
「…すごい…簡単な、ことでした…」
「…………」
「手術が無事に終って、亜紀が生きてて…亜紀の寝顔を見て… …別に、俺のそばにいようが、いまいが、もう、どうでもいいって…」
「…どうでも、いい?」
「えぇ…俺、亜紀が生きていてくれてれば…それだけで、いいんです」
「!!……」
「…それだけなんですよ、俺…昔も、今も…」

「そうか…それが、君の本心か…」
「…はい…」

お父さんは、おもむろに2本目のタバコに火をつける。

「それで、どうするんだ…これから」
「亜紀の…したいように、させてあげたいと思ってます…」
「…いいのか?君の元から、飛び立つかもしれんぞ」
「かまいません」 僕は、断言した。

「その時は、俺、精一杯応援します…亜紀のことを」
「…………」
「でも、亜紀が疲れたり、傷ついたりした時…必ず、俺の所に、戻ってきてくれるように……俺、頑張ります、これからも…亜紀に、信じてもらえるように…」
「…………」
「…何があろうと…最後に亜紀の隣にいるのは、やっぱり、俺でありたいんです」

何の迷いも、衒いも、偽りも、ない。 今、ようやく気付いた。
これが僕の、ずっと変らない本心だったのだ、と。


「…そうか、わかった」
と言いながら、お父さんは2本目のタバコの火を消した。
「やりたいように、やってみなさい」
「……いいんですか?」
「いいも悪いもないだろう?君たちの問題だ。俺が口を挟むことじゃない」
「……はい…」
「…何か、言われると思ってたか?」
「……えぇ…」
「…17歳の高校生と、お医者様の卵に接するのとは違うさ。
それに…今まで縛り付けた分、あの子も少しは自由にしてやらんとな…」
「…………」
「しかし…本当に、親なんて割に合わない存在だよ」
「…えっ?」
「散々心配させて、ようやく病気が治ったと思った途端、夢はあるわ、男はいるわ…ってな」
「……お義父さん…」
「……お義父さん?」
「あっ…いえ……すいません…」

かなり怪訝そうな表情で、お父さんは3本目のタバコに火をつける。

「…もう子供じゃないんだ、2人とも。君たちの責任で、君たちが決めればいい。 それが一緒の道だろうと、別々の道だろうと…君たち2人の人生だからな」
「…………」
「……もう…俺なんかの、出る幕じゃない…」
「……あの…」
「ただな…これだけは、言っておくぞ…」
「…えっ?」

そう言うと、お父さんはタバコを揉み消し、今まで視線を合せなかった僕の方へ向き直った。

「……よく、頑張ったな…」
「!!!!」
「…この4年半、悩んだことも、苦しいことも、沢山あっただろう… 生死に係る道を選んで…医療の現実を目の当たりにして………きつかっただろう、辛かっただろうなぁ」
「…………」
「それでも…めげずに、くじけずに、真っ直ぐに向き合い続けて……亜紀は…いい奴を選んだ、と思うよ…」

予想もしなかった言葉に、一旦止まった涙が再び流れ出す。僕は、俯き続けている。

「そんな、俺の娘を…そして……」
「…………」
「俺は……『お前』を、心から誇りに思う」

もう、ダメだった。何も考えられなかった。ただ、涙だけが流れ落ちていた。

「これからのことは、お前たちが2人で、ゆっくり決めていけばいい……他の誰のものでもない、お前たちが勝ち取った時間なんだから…」
「…………」
「ただ、今まで…苦しんだ分…笑い合えると、いいな」

「………お義父さんっ!!!!」
何の躊躇も、ためらいもなく、僕はそう叫んでいた。

「…亜紀には見せるなよ、その顔。また心配するからな…」
「……俺…俺っ!!…」
「……ありがとな…朔…」
「!!!………」
「…ありがとう」

そう言うと、お父さんは僕の肩をもう一度叩き、病院内へ戻って行く。
僕は何も言えずに、缶コーヒーを握り締め、ひたすら泣いていた。

報われた、と思った。

別に褒められたくて、やってきたわけじゃない。
誰かに強制された訳じゃない。僕がそうしたかったから、してきただけの事で。
だけど、やっぱり、嬉しかった。とても、とても、嬉しかった。
見ていてくれた人がいた。それだけで十分だった。

そして、それを言ってくれたのが、僕の一番大切な女性の父親で。
この人は、僕を厳しく、そして、ずっと温かく見守ってきてくれたんだ、と。
それに気付いた瞬間、僕はもう、たまらなかった。

ふと、脳裏にあの日の光景が浮かんだ。
雨のプラットホーム。最後までふたりで絶望に立ち向かおう、と誓った日。

「………間違って…なかった……間違って、なかったんだ…俺…」

その瞬間、亜紀が『うん』と微笑んでくれた気がした。あの夏の日のように。
冷気に晒されてすっかり冷えきった缶コーヒーが、今の僕には、とても温かく思えた。
...2006/04/09(Sun) 17:14 ID:MXqf6WYk    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:JBL
祖父がカメラマン様へ

泣きました。
...2006/04/09(Sun) 22:42 ID:ccDfTusc    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:たー坊
お疲れ様です。
海外赴任のお話があるそうで、読者の一人としては、延期及び取り消しがあることを祈るのみであります。

さて、朔の不安と、その先に出した答えにはさまざまな解釈があると思います。今回は、たとえ一緒の道でなくとも、亜紀が生きていればそれでいいというスタンスですね。私のストーリーでは、退院後に希望したことは、お互いに一緒にいるというものを前提にしたものでしたので、新鮮に感じました。
次回も楽しみにしております。
...2006/04/09(Sun) 23:13 ID:kAp9lbpg    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:ぶんじゃく

今回も素晴らしいお話ありがとうございました^^

太陽は常に大地を照らしていなくても必ずまた照らしてくれると誰もがわかってるから皆夜が怖くないんでしょうね、その存在こそが全てで まさに亜紀そのものといった感じですね。

海外赴任だそうですが私は「中止」になることを
祈ってます^^。
...2006/04/10(Mon) 02:29 ID:Pbj0YT0Y <URL>   

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:一読者
参りました。今回はマジで参りました。特に
>「俺は……『お前』を、心から誇りに思う」
>もう、ダメだった。
私もダメでした。ここで涙腺が決壊しました。もう、よかったな朔!の一言です。
ただ・・朔と亜紀は別々の道に行っちゃうんですか?少しだけ心配ですが・・
引き続き、最後まで勝手に(笑)期待しております。

表参道様

はじめまして。こちらこそよろしくお願い致します。
本当に男ってそういう点、ロマンチストなんですよね。笑っちゃうくらい。
ある意味、今回の朔の言動にもその匂いを感じましたし、感動もしちゃいました。
今度、このテーマでゆっくり語り合いたいですね(笑)
...2006/04/10(Mon) 21:34 ID:DlkPYMK6    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
まずは皆様から多くの激励と慰めのお言葉を頂戴した海外赴任の件ですが、一昨日正式に辞令が下りました。
名目上は4/25付ですが、残務処理・現地の受入準備etcで出発は結局予想通りGW明けとなります。赴任手当が半月分トクしましたw
出発が延びた分、少しホッとはしましたが、準備etcで恐らく渡航直前は大混乱するでしょうから、一応辞令日を目処に投稿完了させる様、心掛けて参ります。
皆様から頂いた温かいお言葉の数々、本当に感激しました。ありがとうございます。
拙い作品ながらエンディングに向け、最後まで頑張りますので、もう暫くの間、お付合い下さいます様、重ねてお願い申し上げます。

>JBL様
感想のお言葉、誠にありがとうございます。
思えばJBLさんに書いてみれば?と後押しして頂けたのがきっかけでした。
今は、本当にやってよかった…と思っています。かなりの睡眠時間を犠牲にはしましたがw
あと少しで終了ですので、最後までお付合い頂ければ光栄です。

>たー坊様
御愛読頂き誠にありがとうございます。
朔の答えについては、御指摘の通り如何様にも取れると思いますが、今回は私が勝手に想像した『最もサクらしい亜紀への思い』を彼にしゃべってもらいました。

>ぶんじゃく様
御愛読頂き誠にありがとうございます。
>太陽は常に大地を照らしていなくても必ずまた照らしてくれる
御指摘の通り、亜紀の存在とは朔にとって、本当に太陽そのものだったんじゃないかな…と思い、あの様な表現を使ってみました。若干、某ドラマの影響もありますがw
輝きを失いかけた太陽を必死で守り続けた少年の苦闘も、もうすぐ終ります。
これから太陽の光を浴び続けていける朔の喜びを描きたい…と思っています。

>一読者様
いつもありがとうございます。
>朔と亜紀は別々の道に行っちゃうんですか?
ネタばらしになりますが、別々の道は行かせません。今後もずっと一緒です。
ただ自分に置き換えてみた時、こんな風に悩むのかな…と思い、あの様なややこしい表現になってしまいました。申し訳ありませんm(_ _)m 根がネガティブなもんでw

本日から連投で、私なりのクライマックスである『亜紀の退院の日』を投稿します。
朔が悩んだ様に、亜紀も悩んでます。直面した現実に対し。
その亜紀の悩みを取り除くべく、朔が頑張ります。すごく頑張ります。
自分でも書いててカッコいいなぁ…と思った位、逞しく、凛々しい青年になってます。
でも、その姿が本当の朔かと言うと…?
以前、ぶんじゃく様から頂いたコメントで
>朔が朔である故に、亜紀も亜紀でいられる …というフレーズがありました。
正にそこです。亜紀が望んでる『サクちゃん』ってどんな奴だっけ?がテーマです。

亜紀を支えようと約5年間、背伸びし続けた朔に休息の時間がようやく訪れます。
真編が『よかったね、サク』なら、今回は『サク…お疲れ』と皆様に思って頂ける様、頑張ります。御覧下さい。
...2006/04/13(Thu) 01:52 ID:mUYu2TRY    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
「戻ってこれたんだね…ここに」
「…もうすぐ、5年か…」

退院前から決めていた。
最初に向かう場所は、僕らの始まりの場所にしよう、と。


『始まり、って言うと……中川君の所?』
『……始まる前でしょ、それ』
『そっか(笑) よく考えたら…最初に行かなくてもね』
『それ聞いたら怒るよ、ボウズ(笑)』


退院当日、一足先に実家へ戻った亜紀を迎えに行く。
「…遅くまで連れ回さないでね、初日から」とお母さんに笑顔で釘を刺された。
これから約5年ぶりに、亜紀を後ろに乗せて走る。あの堤防へ、と。


『…決まりだね、最初はあそこに行こうよ!お弁当でも持ってこうか?』
『そうだね…まぁ雨が降ったら、また別の…』
『うぅん…それでも、あそこにしよう。ねっ?』
『……まだ油断はできないんだよ、亜紀。雨に濡れたりしたら…』
『…サクちゃん…ずっと、傘さしてくれるんじゃなかったっけ?』
『…いや、さすけど…それとこれとは別…』
『どうしても、あそこがいいな……色々、話したいこともあるし…』
『……今、聞こうか?』
『…まだ、とりとめないし…いいよ、その時で…』

どことなく、亜紀の表情が曇ったように感じられた。


「…お待たせ!色んな意味で(笑)」
「なに、言ってんだよ…(苦笑) じゃぁ、行って来ます…」

玄関口から元気良く出てきた亜紀を迎え、僕は自転車を漕ぎ出す。
その瞬間、見送りに出ず家の中から様子を見ていたお父さんと視線が合う。
亜紀の退院直前に、酒を酌み交わしながら話した夜のことを思い出した。


『…何せ5年ぶりだからな…期待より、不安や戸惑いの方が大きいはずなんだ…』
『……そう…でしょうね…』
『ただ…あの子は、俺には絶対に見せんからな、そういうところを…』
『…………』
『…まったく、親なんてやつは…』
『…割に合いませんね』
『…おいっ』
『……すいません(笑)』

手術の日以来、ようやく軽い冗談を言えるようになった(…本当に、ようやく…)お父さんと僕は、亜紀の退院後のことを話していた。
苦笑いをしながら、お父さんは一言、僕に命令を下す。

『…お前が…しっかり、受け止めてやってくれ』
『…はいっ!』
『その代わり、失敗したら…また『君』扱いに戻すからな』
『………気をつけます』

この人は、どうしても一言、付け加えたい性格らしい。


「……重い?それとも軽い?」
「わかんないな…人を後ろに乗せるなんて、久々だし…」

そう口では言いながら、ペタルは、決して軽くなかった。それが嬉しかった。

「…誰か、後ろに乗っけてたんじゃないの?可愛い子とか」
「……家族すら乗せなかったよ、ここには…」
「……………バカ…」

聞き取り難い小さな声で亜紀はそう呟くと、僕の背中に強く体を押し付ける。
その『バカ』の中に、様々な感情が込められているのが、何となくだけど、わかった。

「……俺、バカだよ…知ってるよ…」
「(更に小さな声で)……馬鹿…ホント、馬鹿だよ…」

何があろうと、不安はひとつもなかった。
何があろうと、僕の気持ちは微塵も揺るがない。
それだけには、絶対の自信があったから。

空は、晴れ渡っている。口数も少ないまま、僕らは始まりの場所に到着した。


「長かったような、短かったような…」
「でも、俺にはやっぱり、長かったかな…」
「…楽しかったなぁ、あの頃」
「今は、楽しくない?」
「…そういう意味じゃないよ、別に」
「顔に書いてあるよ、亜紀の」
「……えっ?」
「…言いたいこと、あるんでしょ?」
「…………」
「言ってよ。俺も聞きたいから」
「…ホントに、成長しちゃったね…サクちゃん…」

少し寂しそうに、でも何かを決意したかの様な固い表情で、亜紀は語り始めた。
...2006/04/13(Thu) 01:57 ID:mUYu2TRY    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
「…病気が治った後って、やっぱり余裕あるのかな?だから…色々考えちゃうんだよね」
「…わかるよ、なんとなく」
「ここで告白して、好きなものランキングとか発表して…ほんと、楽しかった…」
「…………」
「…でもね…考えちゃったり、するんだよ…
 あそこで告白しなきゃ…サクちゃん、苦しませずにすんだのかなぁ、とか…」
「………そんな…」
「無理するな、って言うくせに…私のことで、無理ばっかりさせちゃってるなぁ、って…」
「…………」
「…聞きたかったんだ、一度…すごく、怖いけど…」
「…何を?」
「……疲れてない?私といることに…」

「ないよ」
これは即座に否定した。疲れてはいないし、疲れたこともないし。
だけど、続きの言葉は発しなかった。亜紀が僕に伝えたいもの − それは別にあるとわかっていたから。

漠然とした『不安』。再び現実と向い合う為に直視せざるを得ない『時間』という壁。
病魔と闘っていた頃は、一瞬たりとも思わなかった。そんな余裕すらなかった。
でも移植に成功し、ほっと安心した感情の隙間に忍び込んでくる全く異質な感情。
それは病気とは異なり、直接的でない分、質が悪い。僕も苦しみ、迷い、悩んだ。

しかし僕は、一番信用し尊敬している男性に、それを受け止めてもらった。
だから今度は、僕が亜紀を受け止める。 亜紀にすべてをぶちまけさせてあげよう…と思った。
僕は亜紀の次の言葉を待つ。

「…優しいなぁ、ホント……そう言ってくれると思ってた…」
「…………」
「でもね…5年間…5年って重いよ、すごく…」
「…………」
「私のせいで、サクちゃんの人生、目茶苦茶にしたんじゃないか、とか…」
「…ちが…」
「違う、って言ってくれるよ。サクちゃんはいつも。
だけど、周りが大学入って、遊んで楽しんでる時に…必死で勉強して、休みの度にお見舞いに来てくれて……どうしても、悪いなぁって思うよ…思っちゃうよ…」

嗚咽を必死にこらえ、亜紀は隠していた感情を語り続ける。

「…本当のこと、言って。後悔したこと、ない?私と付き合ってから…」
「……亜紀はしてるの?後悔…」
「…するわけないでしょ!幸せだったもん、私は……でも、一方的すぎるよ…」
「…………」
「…サクちゃんに、迷惑かけっぱなしだもん、私。…もう…もう、これ以上…」
「…………」
「…これ以上、サクちゃんの人生、こわせないよ……」

同じだった。手術が成功した瞬間、僕が感じたことと。

これ以上、一緒にいたら、自分の存在が相手の夢や未来への足枷になるんじゃないか?という不安。
好きなのに…いや、好きだからこそ、相手の重荷になりたくないという気持ち。
そして僕より数段、負けず嫌いで甘え下手な亜紀は、僕の数倍もそういう感情を背負ってしまったのだろう。
僕は亜紀の隣に座り、あえて肩も抱かずに寄り添い語り始めた。

「実はね…後悔したこと、2回ほどあるんだ…」
「…!!…そうなんだ、やっぱり……」
「ひとつ目は…付き合いたての頃」
「……えっ?」
「まだ、キスする前の話」

きょとんとする亜紀を尻目に、僕は当時の怨みつらみを話し始める。

「…あの頃、亜紀の気持ちが全然わかんなくて…何だか、からかわれてる気がしてね…それで、イライラして、空回りしてるうちに、他の男にキスされてるし…」
「………ごめん」
「後悔、って言うより結構へこんだな…俺じゃ、やっぱりつりあわないよな、とか…」
「…そんなこと、全然なかったんだけど…」
「…で、あげくの果てに、他の奴にキス…」
「しつこいよ!……悪かった、って言ってるじゃん…」
「いーや」

わざとらしい口調で僕は文句を言い続ける。

「この件だけは、『ずーっと』言い続けるよ、俺。多分『ずーっと』文句言ってる」
「……ずーっと、言われちゃうんだ、私」
「うん。ずーっと」
「そっか………(小声で)ありがと」

僕の本心は伝わったらしい。間髪置かず、僕は第二段をぶちあげる。

「…で、ふたつめ」
「……あるんだ、やっぱり」
「あるよ。これはショックだったもん…」
「………なに?」
「…靴下、全体で畳むのを見た時」
「……………プッ…」

堪え切れなくなった亜紀は思わず吹き出した。

「…何それ、変なの」
「だけど驚いた。衝撃だったもの、あれ見た時は…」
「…でも、ゴムの方が先に伸びちゃう気がするけどなぁ…」
「あれだと、全体が伸びちゃうでしょ!」

懐かしい会話に、思わず二人の顔が弛む。

「…以上。のみ」
「…ホントに?」
「のみ」
「……ありがと」
...2006/04/14(Fri) 02:03 ID:b0wC6b6o    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:ポポ
お疲れ様です。
主人の両親が子供を連れて遊びにいってくれてるおかげで、久々にのんびり読むことができました。
サクちゃんと亜紀パパの会話が素晴らしかったです。
なんだか自分の息子がほめられたような気持ちになりました。
亜紀パパも本当の息子ができたような気持ちだったのではないでしょうか?

海外赴任の前で大変だと思いますが、お体に気をつけて頑張ってください。
サクちゃんと亜紀をいっぱい幸せにしてあげて下さいね!!!期待してます。
...2006/04/14(Fri) 17:41 ID:uvCMV.o6    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:表参道
祖父がカメラマン様

執筆お疲れ様です。

自転車に二人乗りする場面凄く感動しました!!
サクがペダルの重さを感じる事ができる幸せ、とても良く伝ってきます。

海外赴任の件も少し延びられたようなのでギリギリまで(笑)続編期待しております。

>一読者様

是非、男性のロマンチストな部分を語り合いましょう!!(笑)
「空港のない・・・」を拝見してると一読者さんと同じく涙腺がゆるみっぱなしです。
サクと亜紀の幸せな姿って良いですね!
...2006/04/14(Fri) 18:56 ID:23aFett.    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:一読者
>祖父がカメラマン様
海外赴任、決定ですか・・・・
おめでとうございますと言ってよいのか、残念ですと言うべきなのかよくわかりませんが、とにかく健康には十分気をつけて、行ってらして下さい。
一日も早いお帰りをお待ちしております。

朔と亜紀の関係についても、一安心しました。
退院編を早速拝見してますが、朔が頼もしくてかっこいいですね!
でも、また二転三転あるんだろうなぁ・・と期待してます(笑)
感動する準備はできております。もう、いくらでも泣かせて下さい!

>表参道様
それでは、これから宜しくお願い致します。
男性がロマンチックなところ・・例えばセカチュー好きな人間は私の周囲にも多くいますが、やっぱり朔と亜紀を幸せにしてやりたかった・・と未練がましいのが、大体男の方ですね(私も含めて)
逆に可哀想だったけど、あのラストだから感動したのよ!と言い切れるのが女性・・という感じですね(笑)
これから他の例も色々あげて語り合いましょう!
>サクと亜紀の幸せな姿って良いですね!
全面的に、賛成いたします。未練がましいと言われようが(笑)
...2006/04/14(Fri) 23:44 ID:E6xctB.6    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
>ポポ様
>なんだか自分の息子がほめられたような気持ちになりました

本当に朔のことが好きなんだな…と伝わってくるコメントですね。そう言って頂けると、作者冥利に尽きます。
とても励みになる温かい感想、ありがとうございました。

>表参道様
>サクがペダルの重さを感じる事ができる幸せ

一番表現したかった箇所です。喜んで頂けて本当に光栄です。
朔も本当に嬉しかったでしょうね…(自分で書いといて変な表現ですがw)
続編も気に入って頂ける様、ギリギリまでw頑張ります

>一読者様
>朔が頼もしくてかっこいいですね!

普段はボーッとしてても、いざという時には…というイメージで彼を考えていました。
特に第6話の病室前で亜紀を抱きしめるシーン…あれ、滅茶苦茶男前ですよね。
あのシーンを少しアレンジした場面を続編に導入しております。お気に召して頂ければ幸いです。

亜紀の退院の日、ラスト3編を投稿致します。
色々な見解があると思いますが、個人的には、こんなふたりの光景が一番しっくり来るのかな…と考えました。
皆様の忌憚の無い御意見・御感想を頂戴できれば幸いです。
...2006/04/16(Sun) 00:38 ID:5twPVTZ6    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
「それにね、さっき俺の人生こわすとか何とか言ってたけど…」
「……うん…」
「こわされた覚えなんて、まったくないから」
「…………」
「…考えたことはあるよ。あのまま、亜紀と付き合わなかったら、どんな感じだったのかなぁ、って」
「…………」
「多分、スケちゃんやボウズとダラダラ毎日過ごして、3年になって急に進路考えて…適当に勉強し始めて、浪人して大学行って…そんな感じだったんじゃないかなぁ…」
「…いいじゃん、そういうのも。ある意味、サクちゃんらしいよ…」
「でもさ…つまんない生活だった、と思うよ。それって」
「……そうかなぁ…」
「変な表現だけど、俺、生まれて初めて夢中になったのって…廣瀬亜紀なんだよね」
「……そうなんだ…うれしいな、やっぱり…」
「亜紀に出会って、好きになって、頑張り続ける亜紀を応援したくなって…それが俺の原点って言うか……多分、今はその続き」
「……続き?」
「そう、気持ちはあの頃のまま。前に聞いたの、覚えてる?
 『サクちゃん、何かやりたいこととかないの?』って」
「…大会前の練習の帰り道…よく運転手してくれてた頃だよね…」
「その時、俺、こう答えたんだよ『亜紀が頑張ってるのを見ながら、考える』って。
今もそうだよ。亜紀が病気になって、それでも一生懸命頑張り続けるのを見て…」
「…………」
「…俺は何がしたいんだろう?何が出来るんだろう?何をすべきなんだろう…って考えただけ。 だから…俺はいまだに、亜紀の応援団だし、運転手なんだよ」
「!!……サクちゃん」
「…病気になって良かった、なんて思わない。あんな思いは二度とさせない。絶対にさせない」
「………ありがとう…」
「でも…今、ここに俺がいて…その隣に、亜紀がいてくれて。
それだけで、今は全然オッケー。これからも、それで十分オッケー…って感じ」
「……うん…そうだね…」
「言い換えれば…R&Rな感じ、ってやつ?」
「それ、嫌い」
「………ダメかなぁ…」
「それだけは…ちょっと…」

完全にスベッた僕は慌てて、話を本題に戻す。

「だから…やっぱり一緒にいてよ、亜紀」
「…一緒にいたいよ、とっても……でも…」
「いてもらわないと、俺が困るの。それに、まだ約束守ってもらってないし」
「?…………」
「…嫌いなものランキング、覚えてる?」
「もちろん!本当に嬉しかったもん…嫌われたけど(笑)」
「…第一位のとこ、守ってないよ」
「えっ?…後ろ、乗ったよ…今日…」
「お爺ちゃんと同じくらい、太るって言ってたよね」
「……!?……」
「…いいよ、もちろん、今すぐ太らなくて。
20年、30年…いや、もっと掛けてそうなってくれればいい」
「…………」
「…体型が崩れて、髪も白くなって、顔にしみとかしわが出てきて… お互い、そんな風になれるまで、飾りあわないでいけたらなぁ…って」
「…………」
「だから…そうなるまで、ずっと、一緒にいようよ…ねっ」

それは現在の僕に出来る、精一杯のプロポーズ。
でも亜紀は、少し不満気な表情で黙っている。

「……ダメかな…」
「……ヘンだよ…」
「………えっ?…」
「前から思ってたけど…サクちゃん、変だよ…」
「……ねぇ…怒ってる?」
「…怒るよ、そりゃ…」
「…ご、ごめん……なさい…でも、何で?」
「付き合った頃から、そんなことばかり言うんだもん…」
「……はぁ?」
「…しみとか、しわとか、水虫とか…今日は太れ、って言うし…」
「…い、いや、その〜…それは…」
「わかってるよ。本当の意味は。すごく嬉しいし、幸せだよ。でもね…」
「(何故か正座しながら)…はい…」
「…でも、私だって、女の子なんだからさぁ…」
「……えぇ…もちろん…」
「少しは可愛いところとか、きれいなところ、見せるよ…頑張るよ………見たい、って言ってよ。そういうところも…」
「……いや、あの…」
「今までだって、痩せてるところとか、坊主頭とかしか見せてないんだから…女の子らしいところ、見せるよ。頑張るよ…綺麗だ、って言ってもらいたいもん…」
「…………(黙って下を向き続ける)」
「…それとも…興味ない?私のそういうところ……」

肩を落とし亜紀は完全に俯いてしまった。そして僕は途方に暮れる。

「ごめん。本当にごめんなさい。でも、そういう意味じゃなくて、あれは…」
「………うっそー」

急に顔を挙げ、してやったりの笑顔を浮かべている。
たこ焼きパパさんまでのダッシュ競争で、僕を欺いた時と全く同じ笑顔で。
……やっぱり、普段言ってることはウソだ。絶対に大ウソだ。
コイツの好きなものランキング第一位は『簡単にだまされてオロオロする松本朔太郎』なんだ。
...2006/04/16(Sun) 00:45 ID:5twPVTZ6    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
「………廣瀬…」
「…怒った?」
「怒ってはないけど…呆れた」
「………ごめんなさい」
「…最近、少し多いよ、そういうの」
「だって…こうでもしないと、私、サクちゃんに甘えっ放しになっちゃう…」
「甘えりゃいいじゃん。意外と嬉しいんだよ、甘えられるって」
「…でも、私、何もサクちゃんにしてあげてないし…」
「だから…」
「言うんだよ…また、優しいこと…」
「…………」
「…その優しさに、甘えっ放しで、ずっと縋り付いてたんだよ、5年間も。これからも…同じことは、繰り返したくないいの…」
「…………」
「…足引っ張って、傷つけて、いっぱい悩ませて…
でも、私の前では平気な顔して、いつも自分だけ苦しんでさ…
…辛いくせに『亜紀がいてくれるだけでいい』とか言って…」
「だって…本心だもん」
「…ほら…すぐ、そういうこと、言う……」

亜紀の両目から、必死にこらえていた涙が溢れ出した。

「…どうすんの、もう…?」
「……何が?」
「私…本当に、サクちゃんがいないと、生きていけないよ……でも…」
「…?…(俺なんて、付き合いたての頃から、そうだけど)…」

「……いいのかなぁ」
幸せに触れた時の彼女の口癖がこぼれる。

「…何もしてあげられなくて…苦しめてばっかりなのに……
そばにいてくれ、って言われて…そのまま、いてもいいのかなぁ…」
「…………」
「…そんなんで、私…サクちゃんのこと、幸せにしてあげられるのかな…」
「………亜紀…」
「…わかんないよ、もう…どうしていいか…」


今更ながら実感する。呆れるくらい、負けず嫌いの頑張り屋だと。
僕のやることには大抵『まっ、いっか』で済ませるくせに、それが自分のことになると途端にハードルが高くなって。
僕もよく不器用って言われるけど、実は僕より数段亜紀の方が上だと思う。
そこが危なっかしくて、ほっとけなくて、応援したくて…好きになり続けた5年間だったのだ、と。

両手を地面につき、すすりあげる亜紀を見た。
僕こそ恩返しをしたかった。僕を支え続けてくれた、この不器用な頑張り屋さんに。
「亜紀…」 「……」 泣きながら亜紀が顔を上げる。
僕は両手を広げ、彼女を迎え入れようとした。あの夏、亜紀が僕を抱きしめてくれたように。
それは決して、亜紀にとって、世界で一番美しいものではないかもしれないけど。

「……何、それ」
「前から…やってみたかったんだ、一度…」
「………バカ…」

有無を言わさず亜紀を抱きしめる。まだ体を硬くしている亜紀に、僕は語り掛ける。

「…前にね」
「…………」
「見返り、って言葉は嫌だって話したよね…」
「………(黙って頷く)」
「でも…もし、ひとつだけ見返り、あるなら…」
「…………」
「ここでね…この場所で、こうしながら…こう、言いたかった・・・」
「………何?」
「おかえり」
「!!………」
「お帰り、亜紀」
「……………サクちゃん!!」

この一言を言うための、言いたいがための5年間だった。
ようやく、言えた。伝えられた。
伝えられる日が、現実に来たんだ。

僕は何度も繰り返した、「おかえり」と。
亜紀も心の重石がとけたのか、赤子の様に泣き叫んでいた。
思い切り、泣いて欲しかった。今後、もう涙なんていらないと思える程に。
暗闇に塗れた5年の月日、一番頑張ったのは君なんだよ、亜紀。
おかえり、亜紀。
ひたすら泣き続ける亜紀を、僕は抱きしめ続けていた。
そして、この先もずっと、抱きしめ続けようと誓ったんだ。だけど、その時…
...2006/04/16(Sun) 00:50 ID:5twPVTZ6    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
頭を振りながら、急に亜紀が体を僕から引き離し出した。
何が起こったのが把握できない僕に、涙でぐちゃぐちゃになった顔を向ける。

「……サクちゃんも、泣いて…」
「………えっ?」
「わかってるよ…ずっと、私の前で…我慢してたの…」


またも、見抜かれていた。 いや。

「私…大丈夫だよ、もう…」

見ていてくれた

「…サクが、我慢しなくても…ちゃんと、泣けるから…」

ずっと、見ていてくれた

「……ダメだよ、そんなの…」

あれだけの深刻な病魔と戦いながら

「無理して…背伸びして…いやだよ、そんなの…」

亜紀は、ずっと

「…それじゃ、サクちゃん、こわれちゃうよ…ダメだよ、嫌だよ…」

僕を、真っ直ぐに、見つめていてくれた

「……泣こう…ねっ」

僕を、見守っていてくれた

「泣き虫でも…かっこ悪くても…いいよ…」

僕を、信じ続けてくれていた

「……そのままの…サクちゃんが、いいよ…」


気が付いたら、泣いていた。
それは何の前触れもなく、自然と両目から溢れ出していた。
涙が5年の苦闘の日々を洗い流すが如く、まるで滝のように。
手の甲で必死に目をこすり、僕は亜紀に再度向かい合った。


「…あ…亜紀……」

「……おかえり、サクちゃん!」


こわれた。
理性と感情の壁が、こわれた。
しがみつくように、僕は亜紀の肩に顔を埋め、泣き喚いていた。


「………呼んで……いっぱい…」

「………サク…」

「……何度でも……呼んで!……」

「…サク……サクちゃん!……サク!!!」


辛かった。苦しかった。恐かった。
逃げ出したくなったことだって、何度もあった。
そんな気持ちを抱えて、走り続けた5年の日々。
こんな僕を、亜紀は病魔に蝕まれながら、必死に見守ってくれていた。
見ていてくれたんだ、僕を。


そして、何よりも。
こんなに、弱くて、小さくて、情けない男を
ずっと、ずっと、信じ続けてくれたひとがいて。
それが、嬉しくて。ありがたくて。とても、とても幸せで。


(…あの娘に好きになってもらえて…良かったねぇ…)

何時しか、お袋が言ってくれた言葉が、不意に、脳裏に浮かんだ。

(…あの娘のこと、好きになって、良かったねぇ…)


僕は亜紀の腕の中で、子供のように、ただ泣きじゃくっていた。
...2006/04/16(Sun) 00:53 ID:5twPVTZ6    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:たー坊
お疲れ様です。まとめて拝読させていただきました。

「脱帽」この一言に尽きます。
素晴らしいとしか言いようがありません。私ごときが書くことに恥ずかしささえ感じました。
お時間もそんなにおありではないようですが、ギリギリまで拝読させていただきたいと存じております。次回以降も楽しみにしております。
...2006/04/17(Mon) 14:15 ID:BsVbFX5A    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:一読者
たー坊さんと同感です。私も脱帽します。もう何か、すごいとしか言いようがないですね(笑)

>僕は両手を広げ、彼女を迎え入れようとした。あの夏、亜紀が僕を抱きしめてくれたように
>「……そのままの…サクちゃんが、いいよ…」
つき合い始めた頃、お互いに一番嬉しかったであろう言葉や行為を5年後に、お互いへ返してあげる・・この関係こそが朔と亜紀なんでしょうね。素晴らしいです。

>「……おかえり、サクちゃん!」
ここで「ただいま」じゃなくて「おかえり」と来るとは・・最初は驚きました。
もう朔も我慢しないでいいよ、昔のままでいいんだよ・・という意味に受け取っています。
世界中で、廣瀬亜紀にしか言えない言葉でしょうね。
今、心から朔に嫉妬してます(笑)。こんな彼女がいれば、男なら皆死ぬ気で頑張りますよ!

出立まで時間も余裕もないとお察し致します。が、可能な範囲で結構です。心から続編を期待しています!
...2006/04/17(Mon) 22:39 ID:/mpUaXNo    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:ぶんじゃく

芸のないことを言うようで恥ずかしいのですが
私も「脱帽」です^^; それしか言えません。

>「…サクが、我慢しなくても…ちゃんと、泣けるから…」

最高の言葉ですね。この一言で朔の5年は全て
報われたんじゃないかと想います。朔だけでなく
二人の5年がこれからの糧になるそんな台詞
ですね。

これかもお忙しい中大変だと思いますが
続編を楽しみにしています。
...2006/04/18(Tue) 02:51 ID:XRSejF7M <URL>   

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:表参道
祖父がカメラマン様

いつも執筆お疲れ様です。

今回、本当に号泣です。

一読者さんと一緒でこんな素晴らしい彼女がいたら男性としては死ぬ気でなんでも頑張れます!(涙)

本当に素晴らしい続編を有難うございます。
やっとサクと亜紀に幸せが訪れたようで感無量です。

出発を控えてお忙しいとは思いますが可能な限りで一話でも多くの続編を期待してます。

>祖父がカメラマンさん
みなさんのこの調子だと「空港のない・・・」が終わっちゃうと暴動が起きますよ(笑)

お体にお気をつけて執筆頑張って下さい。
...2006/04/18(Tue) 19:23 ID:7770LTRA    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
…今回、凄い好評を頂いたみたいなので…このまま終った方がカッコいいかな、とか…
本当はこんな姑息な事しか考えていない人間です。 スイマセンm(_ _)m
数々のお褒めの言葉、こそばゆいですけど、正直それ以上に嬉しいです。本当にありがとうございます。

>一読者様
いつも御愛読頂き、本当にありがとうございます。
>「ただいま」じゃなくて「おかえり」と来るとは・・
実は、これだけは最初から決めてました。もう一つ「お疲れ」も考えましたけど、バイト上りじゃあるまいしw…と思い、おかえりと亜紀に言ってもらう事にしました。
ただ書き終わった後、私も一読者様と同じく朔に嫉妬しましたw

>ぶんじゃく様
いつも御愛読頂き、本当にありがとうございます。
>最高の言葉ですね。この一言で朔の5年は全て
報われたんじゃないかと想います。
最高の褒め言葉をありがとうございます。朔だけでなく、作者の数ヶ月も全て報われましたw
亜紀の言葉は全て朔の頑張りから来たもので、また朔の頑張りは全て亜紀の存在から来たもので。
ふたりの純粋な気持ちこそが、以前頂戴した『朔が朔でいるから、亜紀も亜紀でいられる』というコメントの根幹を成すものなのかな、などと思っています。
でも、こんな言葉を大好きな娘から実際に言われたら…たまんないでしょうね、自分で書いといて変な表現ですけどw

>表参道様
いつも御愛読頂き、本当にありがとうございます。
>やっとサクと亜紀に幸せが訪れたようで感無量です
朔と亜紀は幸せそうに見えましたでしょうか?
本当にそう思って頂けたなら、私も感無量です。何か肩の荷が降りた気さえします…って、未だ少し続けますがw
亜紀の為なら死ぬ気で頑張れる…という全国の亜紀ファンを代表して、朔に5年間頑張ってもらいました。

以前も申しましたが、今回の退院編が自分なりのクライマックスでした。
今後の投稿作品は、もうエピローグというか、後日談に近いというか、ふたりが日々をこんな風に過せていたらいいなぁ…という願望を描いただけのものです。
(まぁ今までも、全部そうなんですけどw)
なので、朔も亜紀も泣くのは今回が最後です。もう、ふたりに涙は必要ないですし。
ついでに『頼り甲斐のあるカッコいい松本朔太郎』も今回でお役御免です。
亜紀という太陽が輝きを取り戻した以上、彼を『何処か抜けてるのんびり屋』へ戻らせてあげたい…と思いました。
そして、その事を一番望んで、一番喜んでいるのは亜紀なんじゃないかな、と。

実はこの後に、親友3人組や谷田部先生との再会も考えていたのですが…力量と時間の欠如から描きたいと思っていた他テーマには手が付けられそうにありません。
よって次回投稿作品で『空港のないセカチュー』を締めくくらせて頂きます。
…とは言っても、相変らずの長文なので5〜6回程度の投稿になると思いますがw
時期は亜紀退院から約1〜1.5年後のある夏の日、別に何事もない宮浦の通常の風景の中で明るく元気にいちゃつき回る朔と亜紀の姿を描いて参ります。

悔いの残らないエンディングと、2つの『アナザー』の輝かしいふたりの未来へ繋がる様、最後まで頑張ります。引続き御愛読をお願い申し上げます。
...2006/04/19(Wed) 02:23 ID:KD2YtsCU    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:ポポ
素晴らしいお話を、本当にありがとうございました。
こんな二人の未来が見ることができて幸せです。

サクちゃん、よかったね。本当によかったね。
亜紀、もうどこにも行かないでね。ずっとサクちゃんのそばにいてあげてね。

まだ涙が止まりません。下手な感想でごめんなさい。
でも嬉しいです。本当にありがとうございました!!!
最後までお体に気をつけて頑張ってください、応援しています!!!
...2006/04/20(Thu) 15:50 ID:CylWwIio    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:KAZU
祖父がカメラマン様

物語も後少しで終るのはとても寂しい気持ちで一杯です(;_:)
アナザーワールド、アナザーストリー同様に長〜く続けて行って欲しいですが仕方がないですね。
残り僅かですが、お体に気をつけて頑張って下さい!!
海外から投稿なんて出来ませんかね…
...2006/04/20(Thu) 16:24 ID:atNV0Jyo    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
>ポポ様
>下手な感想でごめんなさい

…そんな事、絶対ないですよ。最高の感想じゃないですか!

>サクちゃん、よかったね。本当によかったね。
>亜紀、もうどこにも行かないでね。ずっとサクちゃんのそばにいてあげてね

シンプルな分、朔…じゃなくてサクちゃんと亜紀への、とても強い愛情が伝わってきました。
ふたりも感動したでしょうし、私もこんな素敵なコメントを頂いて感動しています。ちょっと涙腺、緩みました。
心配なさらないで下さい。亜紀はもう、何処にも行きません。ずっと、サクちゃんの隣にいてもらいますのでw
最後までお付合い下さいます様、お願い申し上げます。ありがとうございました。

>KAZU様
御愛読頂き、誠にありがとうございます。

>海外から投稿なんて出来ませんかね…

…チャンスがあれば、是非やってみたいです。
ただ環境が変るので、時間的には日本にいる時より余裕はあるんでしょうが、精神的にキツイかなぁ…と。
これで赴任も4回目なんですが、どうにも慣れませんね。やはり、生まれ育った国の環境が一番です。
あとは、何よりネタがもう…(泣) ただ3〜4ヶ月に1度は会議や報告etcで帰国しますので、その際には必ず顔を出そうと思ってます。
温かいコメント、ありがとうございます。最後まで頑張りますので、御愛顧の程、宜しくお願い申し上げます。

最終章、本日より投稿開始致します。
正直、クライマックス終了後のダラダラな展開ですのでw、肩の力を抜いて気楽にお読み頂ければ幸いです。
あと賛否両論…と言うより『否』しかないと思いますが、最後なのでちょっとだけ、ふざけてみました。
皆様も、朔が突っ込まれたり、からかわれたりする場面には何の違和感も感じないと思うのですが、亜紀みたいな出来た娘がそういう場面に出くわしたら、どんな感じになるのかな…?と思い、興味本位で書いてみました。
とりあえず、御覧下さい。
...2006/04/21(Fri) 23:34 ID:8i23n.yk    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
「…じゃぁ、やっぱり、その突然の雨が始まりだったんですか?」
「う…うん…そういうことに、なるのかな…」
「そーなんですか!やっぱり伝説はホントだったんですね!」
「……で、伝説とかじゃ…」
「ロマンティックだなぁ」 「映画みたい」 「見たかったなぁ、そのシーン…」
「…もう!…そんなんじゃ、ないよ(照)」

春休みの期間限定で、亜紀は母校で陸上部の臨時コーチをしている。
谷田部から「私も色々忙しくてね…あんたも手伝ってよ」との誘いを受け即座に快諾したものだ。
そこには、不本意な形で現役生活にピリオドを打った亜紀へのせめてもの贈り物…という谷田部らしい、さりげない思いやりが隠されている。
(実際にピリオドを打った理由は、大木龍之介という男によるものが大半な訳だが)

「…先生らしいな、それ…いいよ、やってみれば」

朔も、電話口で恩師からの提案に諸手を上げて賛成してくれた。『無理厳禁』の条件付で。

「ありがと。無理はしませんから、ご心配なく(笑)」
「じゃぁさ…せっかくだから、あれ使ってよ」
「あれ、って?」
「ほら…12秒91、の時の」
「!!……取っといて、くれたんだ…」
「当り前でしょ。亜紀の自己ベストの、立派な証人だもん」
「……ありがと…うれしいなぁ、こういうの…」
「…こんなことでいちいち泣かないの!」
「……はい、失礼しました(苦笑)」
「ストップウォッチは先生に返しちゃったから、あれしか残ってないけど…」

恩師と恋人の温かい気持ちに包まれて、亜紀はグラウンドに戻って来た。
谷田部が朔に譲り、朔が6年間持ち続けた、思い出のホイッスルとともに。
勿論、アルバイト代など微々たるものである。でも、お金なんてどうだっていい。
もう一度、ここで走れる…その思いだけで、亜紀の心は幸せに満ちていた。

しかし、ひとつだけ困った問題が発生しつつある。
元々面倒見がよい上に、朔との関係の中で『飾らないこと』の心地良さを覚えた亜紀はすぐに後輩達に慕われ、よき姉貴分として人気者になった。否、なり過ぎた。
何かにつれて、『伝説のカップル』『宮浦の奇跡』などと呼ばれる相方との馴初めを聞かれるのである。
最初のうちは「陸上に関係ないことは答えません!」と拒否していたが、敵もさるもの、陸上や学園生活の悩み相談に上手く恋愛をブレンドし、根掘り葉掘り聞き出そうとしていた。

その好奇心旺盛な攻撃の前に、亜紀はたじたじとなり、つい…というパターンが続いている。
今日もたこ焼きパパさんで後輩達に昼食をおごっている際、「先輩達の現役時代はどんな感じだったんですか?」という質問から冒頭の流れに至ってしまっている。
が、照れながらも色々答えてるというのは、亜紀自身が存外にお人好しな部分があるのと、これも相方の影響で,そういう事を別に隠さないでもいっか…と思える自然体のスタンスが身についていたから、であろう。
(変ったなぁ、私…昔だったら、おくびにも出さなかったのに…)

「…で、松本先輩はどんな気持ちだったんですか?その時」
「……えっ?」
「先輩に傘を差し掛けた時の気持ちですよ!本人に聞いたこと、ありますよね?」
「やっぱり、『守ってあげたかった』とか、そんな感じだったんですか?」
「……うん、それがね…」
「…………」 若き小姑達は息を潜め、目を爛々と輝かせ、亜紀の言葉を待つ。
「……自分でも、よく覚えてないんだって…」
「…………はっ?」
「いや、昔、本人に聞いたことはあるのね…でも…
 『あの時の気持ちは言葉にできない』とか『気付いたら私(亜紀)の方へ歩いていた』とか…」
「…………」
「……つまり、何も考えてなかっ…」
「い、いや…そんなことは…ないんじゃないかなぁ…ねぇ?」
「そ、そうですよ…ま、松本先輩、照れてるだけじゃ…ないですか?」

「ないな、それは」 亜紀は即座に断言する。
思えばこの6年間、その純粋さから来る突飛な行動力に何度も救われた。涙した。
が、それと同じ位、何度も唖然とさせられた。別の意味で涙した。
自信を持って言い切れる。あの時、朔は本当に何も考えていなかったのだろう、と。
(…そういうところも、好きなんだけどね)とは流石にお惚気過ぎて言えなかったが。

「…で、でも、よかったんじゃないですか…良いきっかけになったんだし…」
「アンタ、いいこと言った」
「そ、そうですよ!最高のきっかけじゃないですか」
「(軽く首を捻りながら)…そうなのかなぁ…」
「…それで、何て言ってもらったんですか?付き合う時に…」
「……えっ?」
「告白ですよ、告白!松本先輩、どんなこと言ったんですか?」
「その時はもう、お互い完全に意識してたわけですよね?」
「飾らないけど、グッときちゃうような言葉だったんでしょうねぇ…」
「ちょっと、さわりだけでも教えて下さ……って…せ、先輩?」
「…ど…どうしたんですか…急に…」

その質問に移った途端、亜紀の醸し出す雰囲気が急変した。
後輩達は恐る恐る見守るが、亜紀の異様なオーラに言葉を掛ける術もない。

……言えない。死んでも言えない。自分から告白しただなんて。
何を言われるかわかったもんじゃないし、思い返してみれば、納得できないことも多い。
大体、付き合い始めた時、あの男は一体私に何をしてくれたのだろうか?
あの男がしたことと言えば、
・ラジオ番組に本当に洒落にならない葉書を出し
  (本人も物凄く反省してるので、この件は口に出して言ったことはないが)
・怒って問い詰めれば、逆ギレし
・お詫びのテープには、一言『…せつない』とだけ
好きだ、の『す』の字も入っていない
・おまけに待ち合わせ場所もろくに指定せず、私をあちこち駆けずり回させた
(……私、結構…可哀想かも…)


「…言ってもらって…ないんですね…」
「……可哀想、廣瀬先輩…」
「じゃぁ…自然と、そうなったって感じなんですか?」
「(少しビックリした顔を見せ)……う、うん…そんな感じかな」
「あれ、ひょっとして、先輩…」

グループの中でも一際勘の良さげな子が、にやつきながら亜紀を追及する。

「…自分から、告白したんですかぁ!?」

亜紀の純白色の顔面が一瞬にして紅色に染まる。それが何よりの回答だった。
そこから先はもう、ワー!キャー!の歓声の洪水である。

「可愛い!廣瀬先輩、ホント可愛い!」
「松本先輩って、信じられないくらいラッキーなひとだよね」
「こんな綺麗なひとから告白されるって…ありえなくない?」
「(顔面を紅潮させながら)……お願い、もう…ホント、やめて…」

亜紀の悲痛な嘆願を無視して、小姑の一人から最終兵器が投入された。

「…それで、やっぱり告白もテープでしたんですか?」

「えぇーーっ!!」 亜紀は今にも泣き出しそうな悲鳴を上げた。
(…なんでそんなことまで知ってるの!…いじめだよ、もう…)
...2006/04/21(Fri) 23:43 ID:8i23n.yk    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
「やっぱり、そうなんだー!」
そんな亜紀の心中を察しることなく、少女達は騒ぎ続ける。

「ちっ、違うよ!絶対違う!そんな恥ずかしいこと、しないよ!」

完全にムキになった亜紀が必死で否定する。心の中で、あの夏の日の自分に謝りながら。

「えっ、そうなんですか?」
「絶対、ぜーったい違う!」
「なぁーんだ、意外…」
「…えっ?」
「だって有名ですよ、先輩達のテープ交換の話。ねぇ?」
「そうそう。毎朝、下駄箱から紙袋取り出して、屋上に駆け上がって行くって」
「色んな人から聞いたよね〜、その話も」

亜紀の脳裏に、真っ先に3名の知人の姿が浮かぶ。
1人はリーゼント、1人は坊主頭、最後の1人は聖子ちゃんカット…の3人組が。
しかし、朔を除けば一番間近で闘病生活を見守ってくれた親友達が、いくら回復したとは言え、気軽にその当時の話題を後輩にするだろうか?自問自答の結果は『NO』だった。
結局、自分も相方も気付かぬうちに、色んな人々から見られていた…ということなのだろう。
(…ほんと、気をつけよう、今後…たたでなくても狭い街なんだし…)
反省を終えた亜紀は、強引にこの話題の終結を図る。

「…もう十分でしょっ!学校戻りなさい!次、この話題出したら、ホントに怒るよ!」


「……廣瀬さん、ほんっと可愛いね」
「(後輩の)私達から見ても、そう思うよね。顔だけじゃなくて性格も」
「でもさぁ、さっきの告白の話…」
「あれ…絶対、テープで告白してるよね!」
「すごいわかり易いんだもん、表情とか(笑)」
「あんなにムキにならなくてもねー」

皆でクスクス笑いながら、次回の作戦会議を開く後輩たち。

「…でも、今日は少し怒らせちゃったみたいだから」
「次は…ハードル高いかも」
「そうだ!アンタ、この間、彼氏と別れたって言ってたじゃん」
「…彼氏、ってほどのもんでもないよ。何もさせてないし(笑)」
「その男の悪口言ってさぁ…」
「…読めた!男なんかさぁ…の線に持ってって…」
「松本先輩の話に持っていく、と(笑)」
「…結構冷たい人ですよね、こないだ聞いた話だと…とか言ったら」
「(全員で)怒るだろうなぁー、廣瀬先輩」
「またムキになって反論しそうだよねー(笑)」
「『サクちゃんは本当に優しいんだよ!!』とか言い出したりして(笑)」

「…でもさぁ、付き合って何年も経つのに…ホント仲いいよね」
「いくら長期入院してたって言っても…あんなに嬉しそうに話せるもんなんだね、昔の事とか」
「…大切にされてるんだね、廣瀬先輩って、きっと」
「松本先輩も…すごく、愛されてるんだろうね…」
「…いいなぁ」 「…うらやましいなぁ」 「…あこがれちゃうなぁ」
「(全員で)…私たちには、無理なのかなぁ…」

その時、溜息をつく女子高生達の横を、1台の自転車が颯爽と駆け抜けて行った。

「…?…ねぇ、今のって…あの人じゃない?」


その頃、ひとり居残った亜紀はパパさん相手に鬱憤をぶつけていた。

「…もう…ひとのこと、からかってばかり…」
「からかってるわけじゃないさ。みんな、興味深々な年頃だからねぇ」
「…そうなんですか?私もサクも、他人の恋愛とか興味なかったけどなぁ…」
「…お互いのことしか目に入らなかったからじゃないのかい?」
「大木君みたいなこと、言わないで下さい!(笑)」
「ゴメンゴメン。でも、あの子たちも悪気があってやってるわけじゃないよ。 まぁ、これでも飲んで機嫌直しなよ」

と言ってパパさんは、鮮烈な青色の缶に白文字が印象的に入った飲料水を差し出す。
4〜5年前より、この手のスポーツドリンクと言うか健康に配慮した食材が、徐々に文化として根付き出している。

「いただきます!…でも、たこ焼き屋さんで、こういうのが出る時代になったんですね…」
「そうだねぇ。昔はコーラやサイダーだけだったけど、最近はお茶とかも多くてねぇ」
「…そのうち、水とかも売られる時代が来るかもしれませんね(笑)」
「…そうかもねぇ(笑)」

「あの…さっきの話の続きですけど…私たち、そんなにいちゃついてました?」
「……いちゃついてたねぇ(笑)」
「そうかなぁ?…別に人前で手とか繋いだこと、ないんだけど…」
「いや、雰囲気だよ、雰囲気」
「…雰囲気?」
「別にベタベタしてるわけじゃないんだけど、何かふたりでいられるのが楽しい!っていう感じが出まくってたよ。亜紀ちゃんも朔君も」
「……そうですか?そんなつもり、なかったけど…」
「本人たちは意識してないだろうけどさ、周りから見たらそう思えたんだよ」
「…以後、気をつけます。私もサクも……」
「気をつけるこたぁないよ(笑) 見てるこっちも微笑ましいんだからさ」
「……今は…さすがに、ないですよね?そういう感じ…」
「……どうだろうねぇ(ニヤニヤ)」
「…パパさん!(苦笑)」

「…で、どうなんだい?勉強の方は」
「お蔭様で順調です。すごく」
「そっか、よかったねぇ。さすが亜紀ちゃんだ。で、大学は行くのかい?」
「そのつもりです。学びたい分野も見つかったし」
「へぇ〜、何だい、そりゃ?おじさんにわかるように説明しておくれよ」
「えぇ…地球環境の分野を学びたいな、って…」
「ほぉ…環境ねぇ…そりゃまた、何でだい?」
「病気になって初めて、『当り前』のことの素晴らしさに気付いたって言うか… 結局、その当り前の世界って私達からすれば自然のことなのかな、って。
でも今、世界中でその自然が失われ、破壊されつつあって… 何とかしたい、何か役に立ちたい!って考えたんですよ」
「うんうん」
「それに…病院でよくそういう本、読んでたからかもしれないけど…私が病気になったのも、そういう環境破壊とかと無関係じゃない気がして…」
「………」
「そこを正していけば、私のような辛い思いをする人を少しでも減らせるのかな、って」
「そうだねぇ…そうかもしれないねぇ…いいんじゃないか、亜紀ちゃんらしくて」
「ありがとうございます」
「少しでも減らしたいもんなぁ、病気で苦しむ人たちを…」
「えぇ」
「それに…亜紀ちゃんと違って、あんな一生懸命に尽す彼氏、中々いないだろうし」
「…そんなことないですよ(苦笑」
「おっ、噂をすれば…」
「…えっ?」
「探したよ〜、学校寄ったらここだって言うからさ…」

この時間は勤務中であるはずの噂の一生懸命な彼氏が、何故か自転車で現れた。
...2006/04/21(Fri) 23:49 ID:8i23n.yk    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:表参道
祖父がカメラマン様

執筆お疲れ様です。

続編拝見致しました!!
今回も本当に号泣です、ドラマの続きが本当に「空港のない・・・」の内容だったらどんなに嬉しいだろうと一人涙してしまいました。
サクと亜紀は本当に幸せそうで、まさに夢を叶えてもらった感じです。
「空港のない・・・」はまだまだ泣き所満載ですね。
きっと幸せなシーンでも泣けてしまうのは「世界の中心で愛をさけぶ」特有のものですね。

私もKAZUさんと一緒で海外からの執筆是非期待してます(汗)
海外赴任間近でお忙しいとは思いますが、どうか「空港のない・・・」を愛する我がままな読者の為にもギリギリまで宜しくお願い致します!!

>鮮烈な青色の缶に白文字が印象的に入った飲料水

思わず一人でニヤっとしてしまいました(笑)
とってもタイムリーですね(笑)
...2006/04/22(Sat) 01:59 ID:pxSrnANE    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:一読者
お疲れ様です。新作と表参道さんのコメント、まとめて拝読しました。
今回、私と表参道さんのツボがほとんど同じだということを確信しました、ロマンチスト同士ですから(笑)

今までの作品の中でも、今回が一番泣きました。
後輩とたこ焼きを食べながら、朔とのことをのろけたりからかわれたりする、こんな楽しい日常が亜紀に訪れたんだ・・と思った時、もう我慢できませんでした。
退院編の朔じゃないですけど、気付かぬうちに涙が流れてました。今でも少し涙ぐんでます(恥)
ここに至るまでの朔と亜紀の苦悩や葛藤をていねいに描かれて来たからこそ、感動も倍になったのだと思います。

今さらですが、素晴らしい続編を本当にありがとうございます。約2年に渡る私の胸のつかえもなくなりました(笑)
続編も期待してますし、海外からの続編も期待しております(笑)。勝手な希望ですが、何とか是非検討して下さい!

>表参道様
>ドラマの続きが本当に「空港のない・・・」の内容だったらどんなに嬉しいだろうと一人涙してしまいました。
いつものことですが、このコメントにも全面同意致します(笑) 
こんな超ハッピーエンドのドラマがあってもいいですよね!
...2006/04/22(Sat) 21:31 ID:lkJjQPsU    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
まず最初にお詫びがありますm(_ _)m レスNO,100の
>春休みの期間限定で…
の所ですが『夏休み』の間違えでした。お詫びの上、訂正致します。
背景ですが、亜紀退院の約1年後に朔が宮浦へ帰郷(就職)⇒2〜3ヶ月、実家から病院へ通うも、多忙な上、一人暮らしに慣れたせいもあり、病院近くへアパートを探す…という設定です。
説明不足の上、記入ミスしてました。スイマセン。

>表参道様
>一読者様
お二人に喜んで頂けて、とても光栄に思います。
赴任決定後『…どうしよっかな…』と継続の有無を悩んでいた所、真っ先に励まして頂いたお二人にそう言って頂けると、本当に続けてよかった…という気持ちが湧きました。こちらこそありがとうございます。
今後、時間があればお二人の『ロマンチスト談義』wにもぜひ参加させて頂きます。宜しくお願い致しますm(_ _)m

最終章中盤、2編を投稿致します。
タイトルを付けるとしたら『帰って来た松本朔太郎』という感じでしょうか。
ドラマ前半の『亜紀のことしか見えない朔』と『そんな朔が好きでしょうがない亜紀』をイメージしてみました。
上手く描けてるかなぁ…自信はないですが、御覧下さい!
...2006/04/23(Sun) 19:41 ID:fvkGpkxo    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
「…サクちゃん?病院は?」
「あぁ、午前中半休もらって、荷物整理とか、不動産屋との打合せとか…」
「…えっ?…ひょっとして、もう引越し終わっちゃったの?」
「うんっ!」
「いや、うんっ!じゃなくて…私、手伝うって言ってたのに!」
「いいよ、大した荷物ないし。身の回りのものだけだから」
「…怪しいんだけど」
「……な、なにが?…」
「見られたくないものとか、見せられないものとか…」
「…………」
「…まっ、しょうがないか。終っちゃったものは…」
「いや、亜紀には次の機会に手伝ってもらいたかったんだよ」
「…次?」
「家具とか、家電とかそろえる時に、力借りたいなって…」
「…?…うん、別にいいけど…」
「あっ、それと…これを」

朔はポケットの中から鍵を一本取り出した。

「…これ…カギ?」
「うん、鍵……合鍵」
「…!……ひょっとして…」
「一緒に暮そう、亜紀」

一瞬驚いた様な表情を見せた亜紀だが、すぐに少し照れた様な笑みが漏れる

「うれしい…すごく嬉しい!…ありがと」
「…いいかな?」
「…うん…お医者さんが一緒なら、安心だし…」

あの頃は夢にすら思え描けなかった『朔とのふたりでの生活』
そんなささやかで温かい現実が間近に迫っている。

「嬉しいなぁ…ホント、夢みたいだよ…」

ウキウキした表情を隠せずに笑みをこぼす亜紀。
だが一瞬、我に帰り表情を落とす。

「……お父さんが、なんて言うかなぁ…」

もはや朔を娘の彼氏と言うより、完全に息子として接している真ではあるが、やはり、こういう面では人一倍厳格な父親でもある。
朔を認め期待している分、そのハードルもかなり高いものとなっているだろう。
…どう考えても見通しは厳しい。それとこれとは別!と言い出す可能性が高い。

(…まっ、いっか。いざとなったら、荷物抱えてアパートに転がりこめば…)

頑固で負けず嫌いな所は父親譲り。決心した亜紀は、もうこのことで一歩も譲るつもりはない。
そんな亜紀の悲壮な決意を知ってか知らずか、呑気な顔で朔が肩を叩く。

「大丈夫」
「…えっ」
「俺、ちゃんと、筋通すから」
「…サクちゃん…(…逞しくなったね…)」
「お父さんに、挨拶に行くよ」
「…うん」
「今晩、時間を下さい…ってお願いしといて」
「……こ、今晩?」
「?…そりゃそうでしょ、善は急げって…」
「…急ぎすぎじゃない?」
「そんなことないって、この熱い気持ちが冷めないうちに…」
「…いや、だからね…(…何、言いに来るつもりなの…)」
「大丈夫だって、心配性だなぁ」
「……サクちゃん?(…心配するよ、そりゃ!)」
「(真剣な表情で)…ちゃんと、ケジメはつけるから、俺」
「…け、けじめ?…(…もしかして…)」
「俺を信じてよ、亜紀。悲しますような真似、しないから」
「…あのさぁ…(まさか、同棲じゃなくて…いきなり結婚!?)」
「とにかく、今日伺うから」
「…さ、サクちゃん…ちょっと落ち着いて、話さない?」
「ゴメン。もう時間ないんだ、病院行かないと」
「……松本君?」
「じゃ、また後でね。行く前に電話する」
「…あ、あのさ…順序とか…」
「…いよぉっし!」

今晩の真との対決(?)に備え、気合満々に叫ぶと、朔は自転車を漕ぎ出した。
呆気にとられながら、亜紀はその後姿に必死に呼びかける。

「わたしは、どうすればいいのーっ!?」
「待っててよ!迎えに行くから!」

後ろを振り向くこと無く、朔は大声で返答すると、猛スピードで駆けて行く。
その凛々しく、且つ間の抜けた後姿を亜紀は呆然と見過ごすしかなかった。

「…………」
我に返り、冷静に反芻してみる。最愛の彼氏の、過去の行動パターンを。
あの意気込み。思い込み。そして『けじめ』と『迎えに行く』というキーワード。
十中八九、まず間違いない。
(……結婚、申し入れるつもりでしょ…サクちゃん…)
それに気付いた瞬間、亜紀の口から思わず零れ出た言葉があった。

「……順番、逆だよね…絶対…」

恐らく朔の頭の中は、如何に真に認めてもらうか?しかないのだろう。
(一生懸命…なのは、わかるけど…)
その前に、何か言うことだったり、することが普通あるんじゃないだろうか?
結婚する(予定の)当事者としては、そう思わざるを得ない

「……プロポーズとか…指輪、とかは?」

泣き笑いの様な表情で、自転車が駆け去った跡に、亜紀は呟いていた

「……それに…」 まだ愚痴は続く。
視線を道路から店に移すと、苦笑いを浮かべるパパさんと目が合った。
パパさんには何の罪もない。そんなことはわかっている。
でも、年頃の乙女としては、一言物申したいことがある。

「……なにも、ここで言わなくたって…」

別に高級ホテルで夜景を見ながら…なんて考えたことは一度もない。
そばにいれるだけでいい…その気持ちに嘘はないし、変ったこともない。

(…でも…でもさぁ…たこ焼き屋さんで、そんな大事なこと…)

ふと、掌に握り締めているものを見た。
少し錆び付いた古い鍵。でも、大切なのは、見た目でもなんでもなくて。
この鍵が、新しい未来を開くんだよ。
これから本当の意味で、ふたりで歩いていけるんだよ。
そんなことを伝えたくて、頭がいっぱいになったんだろう。あの慌てん坊は。

(…変んないなぁ…ホント、そういうところ…)

そう思うと、もう愚痴も寂しさも消え失せていた。
一番好きなひとの、一番好きなところ。それが変らずに私の目の前にある。
そんな些細なことが、亜紀にとって何より幸せだった。
「…まっ、いっか」 鍵を見つめながら、口癖と共に笑顔がこぼれた。
...2006/04/23(Sun) 19:47 ID:fvkGpkxo    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
「…亜紀ーーーーっ!!!」

遠くの方から絶叫が聞こえ、暫くすると朔が汗だくで帰って来た。
恐らく亜紀の怪訝な表情を後で思い返して、はたと気付いたのだろう。
息を切らしながら、朔は再度語り始める。

「…ごめん…俺、一番、肝心なこと言うの、抜けてた…」
「抜けすぎでしょ!いくらなんでも!」

満面の笑顔で亜紀が返す。小さくなる朔。

「……ホント、ごめん…俺、他のことで、頭いっぱいで…」
「………もう(苦笑)」
「…でね……あの…(ゴクッ)俺と、けっ…」
「(拒否する感じで)いいよ」

「!!…やっぱり…俺じゃ、ダメなの…」
「だから!そうじゃなくて!」

完全に主導権を取り戻した亜紀が、楽しそうに解説する。

「…今、ここで、慌てて言わなくてもいいよ、って意味」
「……でもさ…やっぱり…」

すっかりガム太郎に戻りつつある朔が、再度告白しようとするが
「待ってるから」、とあっさり亜紀にかわされてしまう。

「………亜紀〜」
「…きちんと、言って欲しいから…」
「…………」
「待つよ。いつまでも。その代わり…6年前と同じ言葉は、ダメぞよ」
「………はい(残念そうに)」
「ほら、病院行かないと遅れちゃうんでしょ?早く早く!」

不承不承の朔を追い出すように、亜紀が送り出す。
先刻とはまるで違う、しょぼんとした後姿を見せながら朔がとぼとぼ漕ぎ出す。

(……しょーがないなぁ、もう…)

「サクちゃん!」
「……んっ?」
「頑張ろうね!」
「……えっ?」
「これからも、ふたりで頑張ろうね!」
「……うんっ!」
「…行ってらっしゃい」
「…行って来ます!」

すっかり元気を取り戻した朔が明るく答え、再び自転車を漕ぎ出す。
その後姿に、亜紀も元気良くエールを贈った。


「頑張れ、サクちゃん!ピーッ!」


恩師と恋人の愛情で彩られた思い出のホイッスルを元気よく吹く。
今からがふたりの本当のスタートだよ、という意味を込めて。

その声が響き渡った瞬間、朔は自転車を漕ぎながら片手を無言で突き上げた。
『任せろ、亜紀!』と言わんばかりに。

単純だなぁ…と苦笑いした。お人好しで、調子に乗ったかと思うと、すぐ落込んだり。
呑気なくせに、そそっかしくて。泣きたくなるほど、一本気で。
でも、いざという時、誰よりも頼りになって。誰よりも我慢して、無理をして。
そして、いつも、誰よりも優しくて。温かくて。
そんな風に、いつまでも一番近くで見ていたいと願った。
変らない朔の背中と、変って行く朔の背中の両方を。

もう一度、使い古されたアパートの鍵を見つめる。
そして、胸の辺りで両手で強く抱き締めた。赤子を抱く母親の様に。
「……大好き…」 亜紀は自分でも気付かぬうちに呟いていた。

「…じゃあね、パパさん」
「おう、行ってらっしゃい。頑張りなよ」
「ありがとう……それから、さっきのこと…」
「内緒にしとくよ…特に智世ちゃんには」

ニカッ、と人のいい笑みをもらしてパパさんは約束してくれた。
...2006/04/23(Sun) 19:58 ID:fvkGpkxo    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:表参道
祖父がカメラマン様

早速続編拝見しました。

目をつぶると、そこに高校生より少し成長したサクと亜紀が浮かんできて、同時に涙も。
感動し過ぎて言葉が見つかりません。
感無量です。
なんども同じ感想で申し訳ないのですが二人の幸せな姿は本当に嬉しいです。
まだ物語の途中ですが二人を幸せにして頂いて本当に有難うございます。

いつか「空港のない・・・」とお別れする時が来ると思うとホント寂しいです。
それまでは精一杯応援させて頂くので、勝手なお願いですが(笑)ギリギリまで執筆お願いいたします!!

>朔は自転車を漕ぎながら片手を無言で突き上げた。

このシーンは本当にサクっぽいというかサクでした(嬉)
サクの嬉しそうな後ろ姿がハッキリ想像できて涙してしまいました。

>一読者様
>こんな超ハッピーエンドのドラマがあってもいいですよね!

全く同意見です!!
我々ロマンチスト連合軍としては(笑)幸せなサクと亜紀は見ていて最高に幸せな気持ちになります。
亜紀の性格は世の男性の理想的な性格だしサクの性格も男性から見ても凄く良くわかるというか(笑)
感じるところが多いですよね。

こんど是非、海外から祖父がカメラマンさんにも参加いただいて『ロマンチスト談義』やりましょう!!(笑)
ロマンチスターとしては石丸Pに幸せな完結の「世界の中心で愛をさけぶ」をつくってもらえる様に署名活動でもしたいですねー(笑)もちろんキャストはそのままで。
...2006/04/23(Sun) 21:48 ID:h7tgg8KQ    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:にわかマニア
 2人の情景は皆さんが触れていらっしゃるとおりですが,「ニカッ、と人のいい笑みをもらしてパパさんは・・・」というのも,ドラマ本編の何気ない一コマが浮かんできて,いいですね。
...2006/04/24(Mon) 05:36 ID:JkOG6eYY    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:たー坊
お疲れ様です。

マヌケ全開の朔に、()で表現された亜紀の心の呟きに笑えました。
これも、。情景描写がしっかりとなされているからでしょう。
次回も楽しみにしております。
...2006/04/24(Mon) 18:39 ID:araycgSg    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:SATO
はじめまして。
読んでばかりで、こちらには全然投稿していませんでしたが、改めて最初から読むとなんとも言えない感動がジワジワわいてきます。
ト書きがほとんどなく、会話とモノローグで構成されているので、目の前に映像が浮かんでくるようでした。
ここまでのベストシーンはかなり前の部分になりますが、富子と綾子の会話部分(朔が倒れてしまったあたり)でしたね。あと、主治医の佐藤先生がとても頼もしく感じました。
素敵な話に出会えて幸せです。

追伸
間もなく出発でしょうか。あちらのネット環境が整ったら、また掲示板にいらして下さい。
...2006/04/24(Mon) 22:52 ID:TILSScFo    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:一読者
>祖父がカメラマン様

こんばんは。ロマンチスター・ユナイテッド、略してロンUの一員です(爆)
新作拝見しました。結果、今回もツボがほとんどパートナー(失礼)と同じでした。

>「…ごめん…俺、一番、肝心なこと言うの、抜けてた…」
>「抜けすぎでしょ!いくらなんでも!」
>満面の笑顔で亜紀が返す。小さくなる朔。

この場面、朔と亜紀そのものですよ。
亜紀が白血病で倒れる前の、一番楽しい頃の2人そのものですよ。
空港に行かなかった2人の未来は、ここへと繋がっていたんですね。
最高です。もう、それしか言えません。最高ですよ!
ロマンチスター(笑)としては、ここから涙腺が怪しくなり出して、そして

>「頑張れ、サクちゃん!ピーッ!」

ここでトドメさされました。本日の決壊ポイントです(恥)
上手く言えませんが、ここでこれが来るか!という感じでした。
17年後ではなく、6年後の朔がこの言葉を直接亜紀の口から聞けるなんて・・・・最高です。
ありがとうございました。読むだけの人間が図々しいですけど、とても晴れやかな気持ちになりました。

最後まで応援させて頂きます。なので是非続編または再開の検討を何とかお願いできませんか?
このままだと本当に暴動起きますよ、ロンU中心に(笑)

>表参道様
勝手にパートナー扱いしてしまい、申し訳ありません(笑)。
お詫びに近々、ひとり私の知り合いをロンUの一員に加えられそうです。
詳しくはまた報告しますが、先日「空港のない・・」を読んだらワンワン泣いたみたいなので(笑)
祖父がカメラマンさんが復帰されるまで、チャットみたいな感じで盛り上がりましょう!

>幸せな完結の「世界の中心で愛をさけぶ」をつくってもらえる様に署名活動でもしたいですねー

毎度のことですが賛同します。少なくとも2本は売れますよね(笑)
でも冗談抜きで、ものすごい需要があると思います。テレビ版で人格破壊された人間、たくさんいますから。
本当に、誰か業界にコネのある人とかいませんかね?
...2006/04/24(Mon) 22:59 ID:rjZgba7w    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
風呂上りに覗いてみたら、非常に多くのレスを頂いており、驚きました。過去最多ですかね?
失礼な表現ですが、最初は『…荒しか?』と思った位です…根っからネガティブな人間です、スイマセンm(_ _)m
大袈裟な表現かも知れませんが、今、充実感で満ちています。本当にありがとうございます。
そして何よりも、松本朔太郎と廣瀬亜紀に感謝します…ありがとう(真の口調で)

>にわかマニア様
はじめまして。御覧になって頂けているとは知らず、御挨拶が遅れ失礼致しました。
個人的に、ドラマ版で最も微笑ましいシーンが第4話の『よう、色ボケ魔人ども』の一連の件なものですから、どうにかパパさんの出演シーンを設けたいと考えておりました。
お気に召して頂いて光栄です。残り僅かですが、引続き宜しくお願い申し上げます。

>たー坊様
いつも御愛読頂き、誠にありがとうございます。
>マヌケ全開の朔に
気付いて頂けましたかw ある意味、最高の誉め言葉です。ありがとうございます。
この6年間の苦闘と成長の証は彼の背骨として、しっかり根付いているはずですから、今はそれを潜めて、6年分亜紀に甘えさせてやりたいな…と。
ただ、また亜紀に何かが起こった時、カッコいい朔が帰って来る…と信じてはいますが…どうかなぁ、朔だからなぁ…
残り僅かですが、引続き宜しくお願い申し上げます。

>SATO様
はじめまして。御覧になって頂けているとは知らず、御挨拶が遅れました。残り僅かですが、宜しくお願い申し上げます。
>ベストシーンはかなり前の部分になりますが、富子と綾子の会話部分でしたね
……実は、密かにお気に入りのシーンでした。拾って頂いて、ありがとうございます!
このドラマの特徴は『悪意に満ちた人間が誰もいない』所がベースかな…というのが私見でしたが、その中でも特に嫌味の無い明るいキャラの両母親がお気に入りでしたので、そう言って頂けたのがとても嬉しいです。
ただ佐藤先生は後から見返すと、カッコ良く書き過ぎたかな、これじゃ白い巨塔の里見先生だよな…と少し反省してますw
落ち着き次第、また遊びに来させて頂きます。ありがとうございます。

えー、そして…

>ロマンチスト連合軍(ロンU)のお二人へ
ひとくくりにして大変申し訳ありませんw でも、この時間帯に爆笑したので女房に怪訝な顔をされました。勘弁して下さいw
しかし…失礼な意味では決してありませんが、本当にお二人とも感性のポイントが似ていらっしゃいますねw

>このシーンは本当にサクっぽいというかサクでした
>この場面、朔と亜紀そのものですよ

朔と亜紀のイメージを極力壊さぬ様に努めて来ましたが、そう感じて頂けたなら、とても光栄です。
最後までロンUのお二人wに喜んで頂ける様、頑張ります。引続き御愛読、宜しくお願い申し上げます。
あと向こうから是非参加させて頂きます>ロマンチスト談義。こんな作品描いてますから、私もかなりのもんだと自負しておりますのでw

それと…今まで応援頂いたお礼に番外編にチャレンジしてみます!
本編は明日or明後日で一旦完了、その後エピローグをひとつ投稿して終幕・・・の予定でしたが、おだてられてるうちにwもうひとつ描きたいテーマを見つけたもので。
SSになるか、シリアスになるか、コメディになるか全く不明ですが、出国前には必ずUPします。もう暫しだけ、お付合い下さいm(_ _)m
...2006/04/25(Tue) 03:22 ID:ZEnV7Aa.    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:表参道
祖父がカメラマン様

こんばんは。
ロマンチスター・ユナイテッド、略してロンUの一員の表参道です(笑)

番外編決定有難うございます!!(涙)
思わずPC前で歓喜の叫びをあげてしまいました!!(笑)
一話でも多くサクと亜紀に会えると思うとそれだけで嬉しいです。
本当にお忙しいとは思いますが決して無理をなさらず執筆頑張って下さい。
心から応援しております!!

>こんな作品描いてますから、私もかなりのもんだと自負しておりますのでw

意外なところで強敵出現ですねー(笑)
是非、海外からロンUと熱い言葉のセッションを!!(笑)
祖父がカメラマンさんも相当なロマンチスターだと思われますので、すでにロンUの一員の気が・・・
(笑)
一読者さん、どう思われますか???(笑)

>一読者様

>勝手にパートナー扱いしてしまい、申し訳ありません(笑)。

とんでもないです(笑)
パートナーに指名頂き有難うございます!!
本当に一読者さんとはツボが一緒で(笑)
私はあまり文章を書くのが得意な方ではないので、一読者さんに気持ちを代弁して頂いてるような感じです。
いつもお世話になります(笑)

>先日「空港のない・・」を読んだらワンワン泣いたみたいなので(笑)

とても頼もしい感性の隊員の方が参加して頂けるみたいで嬉しいかぎりですね!!
是非、楽しく盛り上がって行きましょう!!

>本当に、誰か業界にコネのある人とかいませんかね?

同感です(涙)
業界の方が、何かのキッカケでこちらのサイトを見て頂いて書籍にでもしてくれればよいのですが(涙)
そうすればドラマも!!

>少なくとも2本は売れますよね(笑)

ロンU三人で(一読者さん・祖父がカメラマンさん・表参道)30本は確実じゃないでしょうか(笑)
人格破壊を受けた我々としては一人10本ですかね(笑)
本当に「空港のない・・・」のお陰で人格破壊されても路頭に迷わずに生活できてる感じです(笑)
...2006/04/26(Wed) 01:05 ID:cOX1DhZs    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:一読者
こんばんは、ロンU2号です。

>祖父がカメラマン様

お疲れ様です。一員に加わって頂けたようで、非常に喜んでおります。
と言うか表参道さんの言われる通り、元々一員だった気がしてなりませんが(笑)
それと番外編の件、本当にありがとうございます!
言い続けてみるものだなぁ・・と思いました。最高に嬉しいです!
連休中は色々出かけてますが、これから毎日ネットチェックを怠らないように致します。
シャレにならないくらい御多忙だとは思いますが、お体に気をつけて頑張って下さい。
最悪、御着任後の投稿でも全然OKですので(笑)、お待ちしています!

>表参道様

今さらですが、お互い改めて留守部隊として頑張りましょう(笑)

>祖父がカメラマンさんも相当なロマンチスターだと思われますので、すでにロンUの一員の気が・・・
>一読者さん、どう思われますか???(笑)

さっきも言いましたが、元から一員・・と言うより監督みたいな存在だと勝手に思ってました(爆)

>私はあまり文章を書くのが得意な方ではないので、一読者さんに気持ちを代弁して頂いてるような感じです。

いやいやいやいや(笑)、それは私の方です!
いつも表参道さんのコメントに同意します!とかしか言ってませんし(笑)。そして今回も

>本当に「空港のない・・・」のお陰で人格破壊されても路頭に迷わずに生活できてる感じです(笑)

のコメントに完全同意します(笑)。本当に、この物語に救われた感じがしています。
それとDVD購入の件、さすがに1本だけとはいかないですよね(苦笑)、失礼しました。
何本でも買いますから、真面目に誰か映像化してくれないですかね・・・・
...2006/04/26(Wed) 22:37 ID:0k/yC58E    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
>ロンUのお二人へ

いつも御愛読及び御声援、本当にありがとうございます。
これからもロンUの一員として、邁進して行く所存でございますので、宜しくお願い申し上げますw

冗談抜きで、赴任後の楽しみが増えた気がします。
着任当初は本当にバタバタでしょうけど、落ち着き次第、必ず戻って参ります。ありがとうございます。

この後、エピローグ的なストーリーは用意していますが(近日中に投稿します)、本編としては今回の投稿が最後となります。
正式なお礼は改めて別の機会に申し上げますが、先ずは数々の激励やお褒めの言葉を頂戴した事、心より御礼申し上げます。良い思い出が出来ました。
因みに余談ですが、個人的に一番お気に入りの場面は、朔の卒倒編』で病室に入れない朔が亜紀にVサインを出した所でした。
朔らしさと、年齢に応じた幼さと明るさ、それに亜紀が助かる予感…の様な感じを出せたかな、と密かに自画自賛してますm(_ _)m
ストーリー的にはどれも愛着があるので、甲乙付け難しですが、台詞としてはやはり『手術編』での真から朔に贈られた一連の言葉が気に入っています。
と言うより、彼の口を借りて私自身が朔への労いをしたかったのでしょうね。今から思えば。
皆様は、どのシーンがお気に召して頂けましたでしょうか?
今後の参考に……ウソです、私がただ単に伺いたいだけですw もしよろしければ、是非御意見をお聞かせ下さい。

最終章・最終話2編、投稿致します。
亜紀から朔へ、朔から亜紀へと語られる、変らぬ『想い』
それぞれが別々の場所で、互いへの大切な『想い』を抱きしめあう。こんなシーンを当作品のエンディングと致しました。
そして、これからの輝ける未来へ向かい、ある台詞を、ふたりの合言葉にしております。
それでは、御覧下さい。
...2006/04/27(Thu) 02:27 ID:Zfl9QMsE    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
校舎への帰り道、亜紀は遠回りをして海岸沿いを歩く。
潮風が体を包み、透き通った空の向こうから燦々と太陽が照らす。
「…きれいだなぁ、空」 満面の笑みで彼女は呟く。
何気ない日常の中で感じる、何気ない喜びの数々。こんな世界に私は今、生きてるんだ。
生きるって、幸せって、こんな意味もあったんだなぁ…

宮浦の空。私たちを見守り続けてくれた、温かくてきれいな空。
でも、ここでこんなにきれいなら、ウルルの空はどんなに美しいのだろう。
いつか −そう遠くない、いつか― 今度こそ、ふたりで見に行こう。
もう絶望は背負わない。とても小さく、でも、とても大切な希望だけを抱えて。

「…サクちゃん…」

最愛のひとの名前を海に向って呟いてみる。
そうだよね。この海を、風を、太陽を、感じていられる現在。
その時間は、すべてあなたが守ってくれたんだもんね。
絶望・不安・恐怖…そのすべてを背負いながら私のために耐えぬいてくれた。
それでも、私を見放さずにいてくれた。私を支え続けてくれた。
でもね、この間、ふと思ったんだ。そして、気付いたんだ。

病気になってからだけじゃなかった。
その前から、サクちゃんは私を包んでいてくれたんだって。

元気だったけど、自分の殻を破れず、素直になれなかった、あの頃。
病気ですべてを失い、どん底にまで落ちた、あの頃。
でも、あなたは、いつでも同じことを言ってくれた。言い続けてくれたよね。

『そのままで、いいよ』 『亜紀は、そのままがいいよ』って。

その優しさが、真っすぐさが、温かさが、どれだけ私を支えてくれたんだろうって。



だからね。これからは私が支えるよ、サクちゃんを。

私の大好きなひとが、いつまでも変らずにいられるように。

サクちゃんが、私のことでいつも無理してしまうサクちゃんが、

その良さを失わないように。疲れてしまわないように。折れてしまわないように。

いつまでも、穏やかで、優しくて、温かいサクちゃんでいられるように。

サクちゃんが、そのままの私を求めてくれるなら、いつまでも応え続けるよ。

そして、私の声が、笑顔が − こんなものが、本当にあなたの支えになるのなら ー どんなことをしても持ち続けるよ、絶対。

それが、今の私の夢。ささやかだけど、とっても大事な夢。

世界を飛び回りたい、と言っていたあの頃。

それに比べれば随分と小さく、縮んだかもしれない。

でも、その分、強く、固くなった。この夢だけは誰にも触らせない。奪わせない。


「…頑張れ、サクちゃん」

もう一度、海へと祈るように呟いてみた。
あの豪雨の法事から6年、ずっと傘を差し続けてくれた。
楽しい時も、辛く苦しい時も、ずっと自転車で漕ぎ続けてくれた。
お人好しで、おっちょこちょいで、いつもひたむきな、私だけのヒーローにむかって。


「……そなたの脚は、わらわの脚、ぞよ…」
...2006/04/27(Thu) 02:37 ID:Zfl9QMsE    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
(…ほんと……バカだなぁ、俺って…)

一旦は彼女の激励で元気も出たが、少し間を置けば、やはり自分の間抜けさ加減に感動すら覚える。
一体、どこの世の中に、肝心の花嫁さんにプロポーズをし忘れるプロポーズがあるのだろう?

(……世界で…俺だけ?)
そう思うと、さすがに落ち込んだ。

(…今日だけは、カッコよく決めたかったのにな…)
思えばこの6年間、カッコ付けようとした場面は、ことごとく外してきた。 まったくもって、不器用な男だ。
だけど…とも、思う。
今日も亜紀は、そんな間抜けな俺を笑って許してくれた、と。

そう言えば、カッコ付けて失敗した時、いつも彼女は笑っていた様に思う。
厳しい口調だったり、からかい口調だったり、場面場面で反応は様々だったけれど、
その瞳の奥はいつも微笑んでいてくれた。そんな気がしてならない。

『…バカだなぁ…サクちゃんは、そのままでいいの!』

彼女は、そんな時、瞳でこう訴え掛けてくれていた…と思う。

(そのままで、いいんだよな…俺も、亜紀も…)
そう思えた時、先刻の大失態も忘れ、とても晴れやかな気分になった。

(一生懸命、だな…これからも…)
そして、今、心からそう思う。
上辺の見せ掛けではなく、どんなに不恰好でも、全力で、ひるむことなく。
心配はない。だって、それをちゃんと見ていてくれる女性だから。
がむしゃらに、ひたむきに、頑張り続けよう。
そうしていれば、あの声は、あの笑顔は、ずっと自分に向って咲き続けてくれるだろう。

それだけで、いい。
それだけが、欲しいから。
これまでも、そうしてきた。
これからも、そうしていく。

それが、自分にできる、唯一で最大のこと。そう、信じている。

「……いよぉっし…」

小さく、鋭く気合を入れると、彼は自転車の速度を更に上げる。
彼女が後ろに乗っていない時のペタルは、相変わらず、軽い。
でも、軽い理由は多分、それだけでもなく。
この6年間、雨の日も風の日も、いつも全力で漕いで来た。
だから、ほんの僅かでも力がついたのだ、と思う。脚力も、精神も、何もかも。

だけど、まだまだ…とも思った。
ここで立ち止まるわけには、いかないから。
俺には、叶えたい夢がある、と。

亜紀を、ずっと後ろに乗せて、この先も走り続けるために。
親父やお袋も、いつしか年老いて行く。それは、亜紀の御両親も同様に。
また、ひとりの医師として、現在、そしてこれから携わる人々のために。
そして…いつかはわからない。でもいつか、きっと、出会えるはず。
自分と亜紀の間に、いつしか芽生えてくる、新しい生命の息吹のためにも。

俺は、ここで、立ち止まらない。 青年は、そう誓った。

距離にして20m以上ある、坂道の麓に辿り着く。
いつもは歩きながら上る道。でも今日は、駆け上がってやろうと思う。

『頑張れ!サクちゃん!』

耳元に、世界で一番愛しい声が届いた。 彼は気合を入れて坂道に挑んで行く。

おまじない、を唱えてみる。
苦しい時、辛い時、いつでも心の中で唱えてきた。
そして、これからもずっと − きっと、生涯に渡り − 彼は、この言葉を口ずさむ。
その時、ピンク色のワンピースを着た少女が、元気よく笛を吹いた。
そんな気が、した。


がんばれ、サク。がんばれ、俺。 おまえの脚は、あの子の脚だ。



before A.S.(another story) 〜空港のないセカチュー〜  完
...2006/04/27(Thu) 02:44 ID:Zfl9QMsE    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:ぶんじゃく

祖父がカメラマン様
最新作読ませていただきました。
なんと申しましょうか 朔と亜紀 亜紀と朔
らしい物語でしたね、本来のあるべき姿いうか
こうだから朔と亜紀、亜紀と朔といった感じでした

なんだか訳の解らない感想になってしまって申し訳
ありませんが、朔が朔でいるから亜紀も亜紀でいられるそんなふたりの自然な姿でした。
今までで一番泣けてきました。

ロンUのお二人?様
先日彼女と松崎に行ってきたのですが
前日の晩からDVDを二人で観てこちらとしては
気分満点で行ったのですが初めて松崎に行った
彼女の一言は
「やっぱりテレビって上手に撮れてるよね」
でした、あまりのものリアリスト振りに
一瞬眩暈がしてきました、自分の愕然とガッカリ
した表情をみてさすがのリアリストも
「ちょうど雨降ってるし二人であの道歩こうか?」
「防波堤走ってあげようか〜?」
などと言ってましたが、断然断りました!
ここで断るのが男のロマンチックさですよね?
でも正直ちょっとグラットきましたけど^^。
...2006/04/27(Thu) 02:47 ID:NLeZK7CA <URL>   

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:ポポ
主人が出張中で、うるさいのが2人とも学校の行事で夕方までいないので、朝からじっくり読ませて頂きました。ラッキーですね(^^

なんかもう、感想とかうまく言えません。
素敵なお話に出会えて幸せです。それだけです。
サクちゃんと亜紀をいっぱい幸せにして頂いて、本当にありがとうございました。

これからもお体に気をつけて頑張ってください。ずっと応援しています!!!

追伸
みなさん、女性だってロマンチストですよ〜ヽ(´ー`)ノ
...2006/04/27(Thu) 12:39 ID:grF7wDCU    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:KAZU
祖父がカメラマン様

等々物語がエンディングを迎えてしまいましたね(;_:)
でもこれからの朔と亜紀の未来永劫に続く幸せを予感させる内容で幸せな気分になりました!!
前にも書かせて頂きましたが海外からの投稿を期待しております(お願い笑)。
海外に行ってもお体に気をつけて頑張って下さい(^^♪
...2006/04/27(Thu) 17:56 ID:n/cg7ER2    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:JBL
祖父がカメラマン様へ

感無量…
5月の晴れ渡った空!!、という感じです。

海外赴任大変でしょうが、お身体気をつけて下さい。
...2006/04/27(Thu) 20:08 ID:VuxbdjoM    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:一読者
お疲れ様です。
最終章を今、読み終わりました。感想というか、なぜか「やった!」と思いました。
別に俺が何をしたわけじゃないんですが、とにかく「やった!」と大声で叫びたい。今、そんな気持ちでいっぱいです。
この物語に出会えた俺は幸せです。
こんな幸せな朔と亜紀に出会えて、俺は本当に幸せです。
今、泣きながら笑ってます。竹中直人みたいな状態になってます(笑)

文才とか全然ないですけど、一回だけ真似させて下さい。
「頑張れ朔、頑張れ亜紀、君らの脚は俺らの脚だ。」
この作品を読んで思ったことは、こんな感じです。自分でも何を言ってるのかわかりませんが(恥)、とにかくこんな感じです。

一番好きなシーンは、もう少し待って下さい。
連休の間に全編読み直します、最高の楽しみができました。
それと、しつこいですが番外編も楽しみにしています(笑)

今まで本当にお疲れ様でした。そして、これからもよろしくお願い致します。
『空港』のないセカチュー、万歳!!
祖父がカメラマンさん、万歳!!
ついでに、ロマンチスター・ユナイテッドも万歳!!(笑)
最高のハッピーエンドを、ありがとうございました!!!!


〜ここからロンUバージョン〜

>ぶんじゃく様
>あまりのものリアリスト振りに一瞬眩暈がしてきました
そうなんですよ、おっしゃる通りなんですよ。
「なんでアンタはここで、そういうこと言うの?」という発言を悪気なく平然とできちゃうんですよね・・・・
でも具体的に話し出すとセカチューから逸脱するので、控えておきます(笑)
・・・・でも、よく考えると亜紀も優しいんですが結構リアリストですよね、特に第5話の結婚話とか。
あの時ほど朔の気持ちが理解できたシーンはありません(笑)
>ここで断るのが男のロマンチックさですよね?
完璧です。ようこそ、ロンUへ!!(笑)。多分、パートナーもそう言うはずです(笑)

>ポポ様

初対面でいきなりですが、悪気は無かったんです、お許し下さい<(_ _)>
でも、女性の方が大抵シリアスな反応が多かったものですから・・いや、何でもありません<(_ _)>
表参道さん、フォローよろしくです・・・・
...2006/04/27(Thu) 22:19 ID:PKuzRnwc    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:表参道
祖父がカメラマン様

いつも執筆お疲れ・・・さまです(涙)
たった今続編を拝見致しました。

本当に切なさが止まりません(涙)
「空港のない・・・」が終わってしまう寂しさと
サクと亜紀の幸せな姿を感じられる嬉しさ。
とても複雑な心境になってしまいました。

>距離にして20m以上ある、坂道の麓に辿り着く。
いつもは歩きながら上る道。でも今日は、駆け上がってやろうと思う。

サクのこの気持ち、坂道を駆け上がるのはささいな事ですがサクがこういう気持ちになれたと思うと嬉しくて嬉しくて、きっとサクにとっては約5年半ぶりくらいの気持ちの高揚感だったのではないかと自分勝手な解釈でサクの気持ちに思いを馳せています。

祖父がカメラマンさんのお陰でとても素晴らしい、この感動は言葉ではうまく表現できませんが、
素晴らしいサクと亜紀に再び会えた事を心の底より感謝致します。

本当に有難うございました。
一読者さんと重複致しますが番外編心より楽しみにしています。
一先ず一旦本編終了という事でお忙しい中本当にお疲れ様でした。
お仕事と海外赴任の用意の傍らの執筆活動は本当に大変だったと思います。
私達読者の我がままを聞いて頂き続編のお約束まで本当に有難うございます。
海外赴任大変だと思いますが、絶対に「世界の中心で愛をさけぶ」に帰ってきて下さい、祖父がカメラマンさんがいつ帰って来られても良い様に全員で盛り上げておきますので!!
本当にお疲れ様でした。

>皆様は、どのシーンがお気に召して頂けましたでしょうか?

こんなに素晴らしいラストを拝見してしまうと
「空港のない・・・」から一番は選べません(涙)
あえて言うなら月並みですがサクと亜紀はもちろん二人を取り巻くすべての人々です(涙)

>ロンU隊員・一読者様
私も使わせていただきます!!

『空港』のないセカチュー、万歳!!
祖父がカメラマンさん、万歳!!
ついでに、ロマンチスター・ユナイテッドも万歳!!(爆)
最高のハッピーエンドを、ありがとうございました!!!!

>「頑張れ朔、頑張れ亜紀、君らの脚は俺らの脚だ。」

一読者さん、この台詞は本当にツボが一緒でした!!
最終話を読み終えた時にこの台詞の感想を!!と思ったら先を越されてました(涙)
この感動はどうしたらよいのでしょうね(涙)

>ぶんじゃく様
>あまりのものリアリスト振りに一瞬眩暈がしてきました

私もロンUのパートナーと同意見です(笑)
本当に急に現実に帰る時ありますよね(笑)
二人でいるのに一人だけ思い出に浸っている時が幾度となくありました(汗)

>ここで断るのが男のロマンチックさですよね?
パートナーと重複しますが、まさに完璧な回答です!!
ようこそロンUへ!!(笑)

>ポポ様

初めまして。
ロンUの表参道と申します。

いつもお名前拝見してます。

今回の件に関しましては(汗)えー、決して女性がロマンチストではない、などと申しているのではなくてですねぇ(汗)
えー、新隊員のぶんじゃくさん・総監督の祖父がカメラマンさん、バトンタッチお願いします(汗)

改めましてポポさんこれからも宜しくお願い致します。
...2006/04/28(Fri) 00:30 ID:45dV2tyI    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
昨日、会社での送別会を終え、先程まで泥の様に寝ていました。
ゆっくりできるなぁ…と思ってた矢先に電話、これから女房とその友人どもに食事驕りに出掛けて来ます。
何かマリノスが勝ったらしいので、非常にテンション高く戦々恐々としていますが…大体、今日だけは自由にさせてくれるんじゃなかったのかよ…以上、本日の愚痴でしたm(_ _)m

数多くの激励とお褒めのコメント、本当にありがとうございました。私の方こそ巧く言葉で表せません。最高に感激しています。
皆様への返信とエピローグ2編(ひとつ増やしました)は明日改めて投稿致します。先ずはお礼方々御挨拶までに。
ありがとうございました!!……それでは、行って来ます…(憂鬱)
...2006/04/29(Sat) 17:52 ID:UiLb9/Tk    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:たー坊
お疲れ様です。
GW中に、大変な状況ですね。
それにも関わらず、エピローグ編までUPしていただけるとは、大変嬉しいです。
どうせなら、私がこの先書く必要がないほどに仕上げてください!「before A.S」など付けずに、メインにしてください(笑)楽しみにしております。
...2006/04/29(Sat) 22:49 ID:wQVNAimU    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:一読者
>これから女房とその友人どもに食事驕りに出掛けて来ます。
>…大体、今日だけは自由にさせてくれるんじゃなかったのかよ

か、監督・・・・(号泣)
本当にお疲れ様です、いろんな意味で頑張って下さい!(爆)

>エピローグ2編(ひとつ増やしました)は明日改めて投稿致します

今週二回目のやった!という感じです(笑)
となりのロンU見習い共々すごく楽しみにしています!
(さっきまで男女のロマンの質の違いについて言い合ってましたが、この作品については意見が完全一致しました)

あと見習いより「白夜行の続編とか興味はありませんか?」と聞いて下さい、とのリクエストがありました。
監督、いかがですか?(笑)

>ロンU1号様へ

>この台詞の感想を!!と思ったら先を越されてました

これもまた、やった!という感じですな(笑)
しかし感心するくらい、お互いツボが一緒ですね〜
隣のロンU見習いから「生き別れた兄弟とかいない?」と聞かれております(笑)
...2006/04/30(Sun) 17:59 ID:ia1N9heM    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
>ぶんじゃく様へ
>本来のあるべき姿いうかこうだから朔と亜紀、亜紀と朔といった感じでした

光栄です。ふたりをそんな感じに、何も気にせずに笑い合えていた時代に戻してあげたい…それだけで始めた作品でした。そう感じて頂けた事を、とても嬉しく思います。

>朔が朔でいるから亜紀も亜紀でいられる

以前も申し上げましたが、この作品のメインテーマです。いち早く気付いて頂き、コメントをお寄せ頂いた事、とても感謝しております。
今まで御愛読ありがとうございました。今後も宜しくお願い申し上げます。

>ポポ様
>サクちゃんと亜紀をいっぱい幸せにして頂いて

そう感じて頂けて非常に光栄です。これで10話も単体で見れるようになりましたでしょうか?w
それと本当に温かいコメントの数々、ありがとうございました。これからも宜しくお願い申し上げます。

>みなさん、女性だってロマンチストですよ〜ヽ(´ー`)ノ
その通りですよね〜w 男女間の隔てなんかないですよね〜w

>KAZU様
>これからの朔と亜紀の未来永劫に続く幸せを予感させる内容で幸せな気分になりました!!

具体的な描写はプロポーズ失敗以外、何も書けませんでしたが、その様に感じて頂けた事、とても光栄に存じます。
これからのふたりの具体的な幸せ街道は、2つの『アナザー』にお任せし、私も見守らせて頂こう…と思ってますw
今まで御愛読ありがとうございました。海外からの投稿も頑張ってチャレンジしてみます!!

>JBL様
>感無量…5月の晴れ渡った空!!、という感じです

そう感じて頂けて、私も感無量です!! 最高のコメントを感謝致します。
それと投稿に関する応援のお言葉、本当にありがとうございました。
身体・精神ともに注意を払い、あちらでも頑張ります。今後とも宜しくお願い申し上げます。

>一読者様
>感想というか、なぜか「やった!」と思いました

私も『やった!!』と思いましたw 本当に長きに渡る御声援、感謝の言葉もありません。ありがとうございました。

>「頑張れ朔、頑張れ亜紀、君らの脚は俺らの脚だ。」
…巧いじゃないですかw(世辞抜きです)、次回作は宜しくお願い致しますw
でも私がふたりに贈りたかった気持ちも、正にこの様な感じです。御代弁、ありがとうございますw

>「白夜行の続編とか興味はありませんか?」
…ありません、スイマセンm(_ _)m
……リアルで白夜な夫婦生活を過しておりますので…これ以上は、もう…
ただ昨日、女房の友人達(私の同級生もいます)と白夜話してた時に、朔⇔亜紀と亮司⇔雪穂の関係の違いについて、非常に面白い見解が出ていたので、次の機会にUPします。
あまりロマンチックな内容ではありませんが…w

>表参道様
>きっとサクにとっては約5年半ぶりくらいの気持ちの高揚感だったのではないか

…言われて初めて気付きました。流石ロマンチスターですねw
朔は山道を5年半〜6年登り続けて来たのでしょうが、亜紀が回復するまでの気持ちは『使命感』に近いものだったのでしょう。
亜紀の生還によって、それが『高揚感』という明るく前向きな気持ちに変ったのでしょうね。
…安心して海外へ行けますw 続編、宜しくお願い申し上げますw

>私達読者の我がままを聞いて頂き続編のお約束まで本当に有難うございます
…カッコつける訳でも何でもなく、私自身がやりたいからやっただけです(本心)、一切気になさらないで下さい。
こちらこそ、本当に長き間熱心に応援して頂いた事、感謝の言葉もありません。ありがとうございました!!
そして、これからも宜しくお願い申し上げます!!…ですが…

>総監督の祖父がカメラマンさん、バトンタッチお願いします(汗)
お断り致します(キッパリ)
総監督でもありませんし、女性がロマンチストじゃない…等、『私は』一言も言っておりませんのでw

>たー坊様
>GW中に、大変な状況ですね

A.Sでの朔以上に大変な状況でした…お察し頂き、誠にありがとうございます。
それと一番御迷惑を掛けてしまった筈なのに、最後まで激励のお言葉、本当に感謝しております。ありがとうございました!!

>どうせなら、私がこの先書く必要がないほどに仕上げてください!
…謹んで、お断り申し上げますw 1人のファンとして今後の益々の御活躍、心より期待しております。
でも…あまり朔を苛めないでやって下さいねw

いつも以上に長々としたコメントでごめんなさいm(_ _)m
まぁ(当面は)最後と言う事で、何卒お目溢し下さいw
...2006/04/30(Sun) 22:38 ID:5OxGvbJc    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
ちょっと長くなりますが、最後に後日談みたいなものを語らせて下さい。

恐らく海外赴任がなければ、創作も投稿もしなかったと思います。
ただ赴任が確定となった時、あれだけ感動し、泣いて、考えさせられた作品に対して自分なりの落とし前をつけたいな…という非常に私的な感情から開始致しました。
今から思えば海外行ってからでもできるだろ!というツッコミを自分自身に入れたいですがw
まぁ、思い立ったが吉日という事で。その時はそう思いました。

創作自体はあっという間でした。と言うのも以前から自分なりに『こんな未来が朔と亜紀にあったらなぁ』とボンヤリ考えていたものを文章化しただけなので。永年の妄想癖が功を奏しましたw
心掛けていた事は2つ。極力、朔と亜紀らしさを失わない様にしよう…という事と、ドラマ観賞時に琴線に触れまくった数々の名台詞や名シーンを転用しよう…という点です。
非常にシンプルですが芯の強い台詞が多かったので、殆ど苦労はありませんでした。
見返してみると、亜紀の死を前提にしたものではなく、ハッピーエンドを前提にしても、そのまま使い回しできる言葉や光景が多かったので助かりました。
一番の思い出のシーンは…『…あんた…あの娘に、好きになってもらえて…よかったねぇ…』ですね。
卑怯な妄想でしょうが、もし亜紀が助からなかった…としても、朔が空港に行かない事で亜紀の生存に対しベストを尽した上で、こんな言葉を誰かから貰えたとしたら…その後の彼の17年の迷走は無かったのかな、と。
それに、誰よりも亜紀が朔の迷走を望んでいなかった筈ですし。だから、こんな言葉を使ってみました。

あと御好評を頂いた『亜紀の退院の日』編ですが、あれは第6話の朔のモノローグ
『…泣いてはいけないと思った。僕が泣くと、亜紀が思い切り泣けなくなるから…』
から彼の本当の意味での苦悩が始まったと考えていましたので、そこから解き放ってあげよう、と。
そして、それを解放してあげるのは『時間』ではなく、廣瀬亜紀という天使にお願いしよう、と。
亜紀との始まりの場所で、亜紀の存在によって、我慢と背伸びの日々から解き放たれる朔の姿を事実上のラストに持ってこよう…と決めておりました。
まぁ思い返せばキリがないのでwこの辺りにしておきます。全て、良き思い出です。


それと、一応『朔のプロポーズ(?)』の経緯と経過につき、補足説明をさせて頂きます。
経緯は、ひとり暮らしを決意→賃貸契約→カギを見る→亜紀が遊びに来る(妄想)→あんなことやこんなこと…(超妄想)→一緒にいたい→でも、中途半端はしたくない→よし、ケジメをつけよう!…といった思考回路です、恐らく。
勿論、冷静に考えれば自分の収入や亜紀の進学等のクリアすべき難問が沢山あるのですが、そこはもう、彼が(夢島の夜の時のような)無敵モードに入ったw…と、お考え下さい。
フォローする訳ではないですが、こういう一直線な朔の性格が好きなもので、敢えて暴走してもらいましたw

その後の経過については…十中八九、無残なものでしょう。真にボコボコにされるでしょうねw(実際、殴られたりとかはないでしょうが)
まぁ綾子さんが非常に妥当な妥協線を見出してくれるはずです、その辺りは。
(土日限定で宿泊可とか、何かしらの目標のクリアを条件に1年後に再考とか)
朔・亜紀にも真にも、双方に対しフォローもストップも出来る唯一の存在ですので。
ですが、そこまで描く時間も裁量も、何より収拾を付けられる自信が無いのでw 後は皆様の御想像にお任せ致します。


それではエピローグを2つ、投稿させて頂きます。(番外編は…また別の機会にでも)
亜紀退院から3〜5年後、結納も終り、とうとう式直前…という時期に、別の場所で同時に行われている会話という設定です。
1つは朔と亜紀の会話。夫婦生活って色々あって、恋人同士のままでいるなどヒジョーに難しいにも程があり過ぎるのですが(←実感こもり過ぎ)、でも朔と亜紀だからこそ、何時までもこんな風でいてもらいたいなぁ…という妄想に近い願望を作品化してみました。
ついでにもう一言、私が一番好きなのはダントツで第3話です。

そしてもう1つ、最終投稿作品には朔も亜紀も出て来ません。
『退院編』で最高に頑張ってもらった真にも、今回は御遠慮頂きました。
富子はチラッと出て来ますが、この人も『朔の卒倒』編で頑張ってもらったので、殆ど出番なしです。
今まで殆ど描写してこなかった2名の親に、この作品のラストを飾ってもらいます。
私や、この作品に最後までお付合い頂いた皆様 − つまり朔と亜紀の事が好きで好きでしょうがない人達の気持ち、
ふたりの未来を温かく見守る親の様な気持ちをイメージしたものを、2人に語ってもらいます。
(この作品はポポさんのコメントを拝読している時に急に思いつきました。ありがとうございます)
…調子に乗って、わざとらしくタイトルとか付けてみちゃいましたw 前編・後編セットで御覧下さい。

短い間でしたが、お付合い頂きまして心から感謝しております。
皆様から頂戴した激励やお褒めの言葉、本当に嬉しかったです。感激しました。
向こうに行っても頑張ります。これからも朔と亜紀の事を、何卒宜しくお願い致しますw ありがとうございました!

P.S 6日まで日本におりますので、時間見つけてちょくちょく顔出します。
...2006/04/30(Sun) 22:48 ID:5OxGvbJc    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
「…やっぱり、中古でも買わない?そろそろ…」
「いいよ、もったいないし…」
「でもさ、安月給だけどローンくらいは組めるよ、俺」
「…そうじゃなくて」
「何?」
「もう…鈍感だなぁ、いつまで経っても…」
「…だって…わかんないよ、そう言われても…」
「……ここがいいの、私は…」

式場での打合せの帰り道、相変らずの二人乗りで、亜紀を家へ送っている途中での会話。
年齢的にも、そろそろ自動車に変える?という僕の提案は、上述の意見によって却下された。

「…5年間、乗るの我慢したんだよ…元、取り返さなきゃ…」
「本当にいいの?これで…」
「これがいいの…わかった?」
「…はい、わかりました」

僕の背伸びと痩せ我慢は見事に玉砕した。とても、うれしい玉砕だった。

「ねぇ…ひとつ、相談していい?」
「…うん、何?」
「………やっぱり、いいや。恥ずかしいし…」
「それ…何なわけ(笑)…言ってよ」
「…うん…あのね…」
「…………」
「……『あなた』って、呼んで欲しい?」
「…えぇっ?」
「いや、籍入れたらね…そう呼んだ方が、いいのかなぁって…」

唐突な質問と、その言葉の新鮮な響きと気恥ずかしさで、僕はひとり照れまくった。
が、後部座席に腰掛ける亜紀からは、僕の真っ赤な顔は見えなかったらしい。

「…どっちがいい?今まで通りか、それとも…」
「亜紀は?どっちが呼び易い?」
「そりゃぁ、今まで通りの方が、呼び易いけど…」
「じゃぁ、そっちでいいよ」
「もう…自分のことでしょ、真面目に考えてよね」
「だから…亜紀の好きな方でいいって、本当に」
「…優柔不断だなぁ…ちゃんと引っ張ってよ、旦那さんなんだから」
「…じゃぁ、ひとつリクエスト」
「何?」
「……『お前さん』って呼ぶのだけは、勘弁して」
「絶対言わないよ!(笑) … もう…すぐ、そうやってはぐらかす…」

亜紀は脹れっ面を装いながら、僕の背中に体を預けている。
そんな他愛のない会話を続けながら、亜紀の家のすぐ前まで来た。

「どうする?寄ってく?」
「いや、今日はいいよ。片付けなきゃいけないことも、結構残ってるし」
「…お父さん、まだ帰ってないよ(笑)」
「…今さら、そんな理由で逃げ出しません(苦笑)」
「そっか…じゃぁ、また週末にね」
「うん。あとで電話するよ」

亜紀を送った僕は、実家へ戻ろうとペタルを踏み直す。
「ねぇ!」 背後から、再び元気の良い透き通った声が響いた。

「…さっきの、件だけど…」
「えっ?」
「やっぱり…今まで通りで、いい?」
「……いいよ」
「ずっと…ずーっと、サクちゃん!って呼んでていい!?」

「うん!」 僕も勢い込んで、そう答える。
本当は、そう呼んで欲しかった。これからも、ずっと。

「……よかった…」

あの頃と同じ、いや、それ以上に可愛らしい笑顔が、僕の目の前に広がる。
そして、あの日と同じように、亜紀は僕を明るく送り出してくれた。

「じゃぁねー、サク!!」


世界で、一番美しいものが、今、僕の前にあって
世界で、一番優しい音が、今、温かく僕を包んで


……ねぇ、おじいちゃん…
好きな人と一緒にいれるって…どうしてこんなに、幸せなんだろうね…




before A.S 〜 『空港』のないセカチュー 〜
エピローグ・その1 『僕を、呼ぶ声』   完
...2006/04/30(Sun) 22:52 ID:5OxGvbJc    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
「えっ、外しちゃうんですか?とっても可愛いのに…」
「言い張って聞かないんですよ、この人。『もうすぐ新しいのが来るから、いいだろ』って」
「…勿体無い気がしますけど…」

私用で近くまで来た綾子が、松本写真館に差し入れに立ち寄ると、ちょうど店主がレイアウトの一部を変更しようとしていた時だった。

「いや…もう、いいでしょ…これは」

はにかんだ様な独特の口調で潤一郎は言葉少なげに語る。

「最近ね…この写真見ると、何だか辛くなっちゃってね…」
「…辛い?」
「えぇ…これね、いい笑顔だとは思うんですけど…」
「…………」
「なんか…こう…ふたりに言いたくなっちゃうんですよ・・・」
「…何を、です?」
「お前達……無理に、笑わねぇでもいいぞ…って」
「!!………」
「この写真撮る前に…朔の奴ね、部屋に上がって大泣きしてるんですよ」
「…そうだったんですか」
「亜紀……ちゃんも…」
「いいのよ、もうウチの娘みたいなもんでしょ?今更、そんな他人行儀な(笑)ねぇ?」
「そうですよ。朔君なんて気付いたら、何時の間にか『お前』呼ばわりされてましたし(笑)」
「…そうすか?…じゃぁ…」

人の良い笑顔を見せて、潤一郎は往時を偲び続ける。

「亜紀もね…すごく素敵な笑顔だと思うんですよ… これ見る度にいつも思います…『あの馬鹿には勿体ねぇ』って」
「……そんな(苦笑)」
「でもね…心の何処かで…不安や諦めとか、あったんじゃねぇかなぁ、って…」
「…………」
「だから、逆に、こんな澄み切った笑顔なのかな、って…いや、わかんないっすよ、本当の所は…」
「…………」
「嬉しいから笑ってるんでしょうけど…伝えたいんですよ、こいつらに…」
「……何て?」
「…心配する事、もう、なーんもねぇから…気にせず笑え、って」
「!!……あんた…」
「………松本さん…」

「この間ね…御主人と話した時に、いい事おっしゃってましたよ」
「ウチの…主人がですか?」
「えぇ…『人間って、忘れて行けるんですねぇ』って…」
「……あのひとが?」
「はい。『最近じゃ、あれだけ苦しみ悩んだ事も、全てがおぼろげに感じるんですよ』って…」
「…………」
「…でね…もう、いいかなって…」
「……何を、ですか?」
「あいつらに…忘れさせてやりませんか、これ」
「!!………」
「私達が、覚えててやればいいんじゃないですかね、この頃を」
「…………」
「…とっとと忘れて、とっとと幸せになっちまいな…って…」
「…………」
「…写真、外しておけば、そのうち皆、忘れていくでしょうから…」

「…そうですね…もう、忘れてもいい頃ですね…」
「あれから…大分、経ちましたもんねぇ…」

ふたりの母親が涙をうっすら浮べながら、潤一郎の発案に賛同する。

「…いいですか?外してやって…」
「えぇ、外して…あげて下さい」

綾子の了解を得た潤一郎が軽く笑みをこぼした後、笑顔の新郎新婦に一礼をする。
(…忘れろ、朔……忘れちゃいな、亜紀…)
声なき声で呟くと、彼はとても優しい手つきで、優しく壁から写真を外してやった。
(すぐに…新しいの、飾ってやっからよ…)


「御主人に…お伝え頂けますか」
「…はい、確かに」
「まぁ、他に写ってる連中には…それとなく、なっ?」
「芙美子には私から言っておくよ。先生には…何も言わなくても、あの人なら…ね」
「ボウズや智世にも…聞かれたら、伝えておきますから」
「……ねぇ、スケは?」
「もう忘れてるだろ、あいつは(即答)」
「それもそうね、スケだからね(即答)」
「………(笑)」
「…おかしいですか、奥さん?」

夫婦漫才の手本を見たかの様な綾子の笑みに、富子が苦笑混じりに問い掛ける。

「いえ、全然…亜紀は幸せだな、って思っただけです」
「そうですかぁ?」
「そうですよ、こんな温かい家族や仲間に迎え入れられて…少し、羨ましいくらい(笑)」
「…でも代々、立派な貧乏家系ですよ、ウチは(笑)」
「お金なんかじゃないです……あの娘は、いい家に嫁ぎました…」
「あら。褒めてもらっちゃったよ、あんた」
「………ども…」

照れ笑いを浮べながら、潤一郎は幼いふたりの写真を大事そうに抱え、裏口に消えて行った。


(…そっくりだな、朔君に…あの照れ方も、あの優しさも…)

色々と感じた。ちょっとだけ、本気でうらやましい…とも思った。
こんな素敵な家族の一員になることのできた、自分の娘のことを。
最愛の男性の横で、再びウェイディング・ドレスを着れる自分の娘のことを。
そして、もう、ふたつほど。

そんな亜紀を見ていられる、私は何て幸せなんだろう、と。
こんな風に喜んでいられる、私は何て幸せなんだろう、と。

(…この幸せは、すべて、あの日から始まったんだな…)

みんな、頑張った。亜紀も、夫も、私も。
朔君の家族、友人達…みんなに、励まし、支えてもらった。
佐藤先生を始めとする、亜紀の治療に携わって頂いた方々…今でも感謝のしようもない。

でも、思う。そのきっかけは全て、きっと、あの日の少年にある、と。
ひたむきに、ただ、がむしゃらに。
亜紀の未来の為に、雨の中を這い蹲り、駆けずり回ってくれた、あの少年に。

「…………」
そっと、目を瞑ってみる。
瞼の裏に、病院への坂道を自転車で一心不乱に駆け上がる少年の姿が浮かんだ。


(呼んでいい?って聞いてないから…亜紀に、怒られちゃうな…)
茶目っ気たっぷりに心中で呟いた後、一言、声を掛けてみる。

(…ありがとう、サク……これからも亜紀のこと、よろしくね…)

写真の跡がくっきりと残った少し汚れた壁に向かって、綾子は、軽くウィンクをした。




before A.S 〜 『空港』のないセカチュー 〜
エピローグ・その2 『笑え!』   完
...2006/04/30(Sun) 22:56 ID:5OxGvbJc    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:JBL
祖父がカメラマン様へ

ただただ、良かったです。
またしても、泣かさせていただきました。
...2006/05/01(Mon) 20:29 ID:hpre0RjI    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:たー坊
お疲れ様です。
エピローグ2話を拝読いたしました。
朔と亜紀がメインになりつつある中で、松本夫妻と綾子の登場と泣かせる要素が多く、それでいて切なくなりすぎずに爽快感すら感じさせ、前を向けるという印象を持ちました。

これは、海外で落ち着いてからも執筆していただくしかありませんね。
出発前にもう一話!(笑)
期待しております。
...2006/05/01(Mon) 21:36 ID:4/GtctVs    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:一読者
>祖父がカメラマン様
>次回作は宜しくお願い致しますw
・・・・いや、絶対に無理ですから(驚)。ありえないですから!勘弁して下さい!

>……リアルで白夜な夫婦生活を過しておりますので…これ以上は、もう…
そ、そんな深い事情があるとは知らずに(笑)・・・・失礼しました<(_ _)>(御気分を害されたら本当にすいません)
白夜行とのロマンチックではない対比話、とても楽しみにしております。
番外編は、もういつでも結構です。いつまでも待ちます。
・・こんな素敵なエピローグを2つも投稿して頂いて、これ以上わがまま言えませんよ(号泣)!

>エピローグ・その1 『僕を、呼ぶ声』
KAZUさんの真似ですが(謝)、2人の未来永劫に続く幸せが、作品全体から伝わってきました。
ホント最高です。こうやって朔と亜紀はずっと寄り添い続けていけるんだなぁ・・と実感できました。
今、「君を乗せて」をBGMに再度読み直しました。更に涙が止まりませんが、どうして頂けますか?(泣)

>「ずっと…ずーっと、サクちゃん!って呼んでていい!?」
>「うん!」 僕も勢い込んで、そう答える。
>「じゃぁねー、サク!!」

もう好きなだけ呼んでいいぞ、亜紀!好きなだけ呼んでもらえるぞ、朔!
・・・・感無量です。これ以上言葉にできません。素晴らしい朔と亜紀の未来を、ありがとうございました!!

>エピローグ・その2 『笑え!』   
・・・・エピローグ1だけで号泣だったのに、続いてこれですか!
ある意味、勘弁して下さい(涙)。お腹いっぱいでもう入りません(涙)
朔と亜紀が出てこないでも、これだけ感動させられるって・・ホント何なんでしょうね、この「世界の中心で愛をさけぶ」という作品のパワーは。

>「…心配する事、もう、なーんもねぇから…気にせず笑え、って」
>「…とっとと忘れて、とっとと幸せになっちまいな…って…」

潤一郎さん、あんた最高だよ!最高の父親だよ!(大号泣)
もう高橋カツミーが目前で話しかけてる感覚に陥りました(笑)、ついでに今日はとうとう嗚咽まで出しました(恥)

>(呼んでいい?って聞いてないから…亜紀に、怒られちゃうな…)
>(…ありがとう、サク……これからも亜紀のこと、よろしくね…)

綾子さん、あなたも最高の母親です!(大号泣その2)
最高しか言葉知らないのか?と言われても構いません、最高です!
前にも書きましたが真さんと富子さんを加えて、これだけ素晴らしい親たちに育ててもらったからこそ、朔と亜紀があるのでしょうね。
明日帰郷しますが、久々に両親孝行をしようと思いました(笑)。単純な性格ですが、そう思っています。

本当に御疲れ様でした。ありがとうございました。
ゆっくり休んで、出発と次回作の準備(笑)を頑張って下さい。
お時間があるうちに是非色々語らせて下さい。最高のエピローグでした、超万歳!!!(涙&笑)
...2006/05/01(Mon) 22:08 ID:29VRCSg2    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:表参道
祖父がカメラマン様

エピローグ2話拝見しました。
読み続けて行く内に本当幸せな気持ちになってしまいました(号泣)

>「ずっと…ずーっと、サクちゃん!って呼んでていい!?」
>「うん!」 僕も勢い込んで、そう答える。

最高でした(涙)
一番最初の病気の心配も何もない時の、ただの高校生だった二人に戻ったみたいで本当に嬉しい大満足のシーンでした。
サクと亜紀が本当に幸せになったんだと、実感できました(涙)

>(呼んでいい?って聞いてないから…亜紀に、怒られちゃうな…)
>茶目っ気たっぷりに心中で呟いた後、一言、声を掛けてみる。

亜紀と綾子、本当にカワイイ母子ですよね。
もちろん真も。
松本夫妻も本当に最高でした。

祖父がカメラマンさん、お忙しい中本当にお疲れ様でした。
「空港のない・・・」のお陰でとても充実した時間を過ごす事ができました。
出発までゆっくり休んで執筆の疲れを癒して下さい。
本当に有難うございました。
是非海外からも遊びにきて下さい。

ロンU2号!?さまへ

>隣のロンU見習いから「生き別れた兄弟とかいない?」
>と聞かれております(笑)

(笑)
実はロンU1号・2号は前世がサクと亜紀だったのかも(爆笑)
...2006/05/01(Mon) 23:32 ID:neID9V0A    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:ぶんじゃく

祖父がカメラマン様

>でも、思う。そのきっかけは全て、きっと、あの日の少年にある、と。

全てが集約された言葉ではないでしょうか、
人間あっての物語なわけで、作者様があの少年を
理解しあの少年になれたからこその物語では
ないでしょうか?勝手に解釈してすいません^^
「朔お前本当に良いやつだな」
この言葉を掛けてあげたいです。
「お帰り亜紀、世界の中心へ」
この言葉を掛けてあげたいです。

>今から思えば海外行ってからでもできるだろ!
同じツッコミを入れておきます^^


女性もロマンチストですよ、
ただ男性の多くのそれは空想・想像の中であって
女性は現実も含めてロマンチックになれるんでは
ないでしょうか。
           以上新隊員より。
...2006/05/02(Tue) 02:13 ID:F2EgqIOk <URL>   

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
有休取ったのはいいんですが、意外とやる事も少なく、結構ヒマしています。渡航準備も殆ど女房が終らせてくれてましたし、友人連中も明日から休みというのが多くて…
簡単に言うと誰も相手にしてくれないので、早速戻って来てしまいましたm(_ _)m

>JBL様
>ただただ、良かったです

ただただ、嬉しいですw 本当にやって良かった…と思っています。朔の行動力を見習った結果かもしれませんw

>たー坊様
>これは、海外で落ち着いてからも執筆していただくしかありませんね。

…冗談抜きで、もうネタがないんですよw 書き上げたいテーマは大体やり終えちゃいましたし、強いて言えば結婚生活くらいなのでしょうが…どうも…

何故か朔の台詞が
「なぁ亜紀…俺達は、醜かったな…」とか「だけど、わからなかったんだ…他の愛し方なんて…」など作風が全然違う世界に行ってしまいそうなのでw暫くゆっくり考えます。

>一読者様
最後までお付き合い頂きまして、本当にありがとうございました。エピローグ2編も、お気に召して頂けた様で、心底安心致しました。潤一郎、結構いい味出してましたか?
お隣の見習いの方(?)にも、是非宜しくお伝え下さいw

あと白夜の件は気にしておりません…そういう事にしておいて下さい、洒落にならなくなるのでw

>表参道様
やはりロンU2号さんと同じコメントになってしまいますがw長きに渡る熱烈な御声援、本当にありがとうございました。引続き今後も宜しくお願い致します。

>サクと亜紀が本当に幸せになったんだと、実感できました

レスNO,46での
>亜紀とサクが今度こそ幸せになれるように宜しくお願いします!!
>任せて下さい。私、それしか考えていませんのでw

の約束が果たせて一安心しております。
ロンUにも続々加盟者が増えられているw様子ですのでオリジナルメンバーとして一読者様とふたり、今後も頑張って下さい!w

>ぶんじゃく様
>作者様があの少年を理解しあの少年になれたからこその物語ではないでしょうか?

…PCの前で『…いやぁ、そんなぁ…』とか本気で照れてしまいました(←馬鹿)
本音を言うと、あの少年になりたかったのでしょうね、私は。
自分語りしてスイマセンが、性格的に諦めや割り切りが早いタイプなので、余計あの少年の純粋さ・がむしゃらさ、に憧れ、またその素晴らしさを見つけて愛しんでくれた、あの少女に憧れ、何よりふたりの関係そのものに憧れたのだと思います。

…自慢でもなんでもないですが、朔と亮司、性格的にどっちに似てる?と聞かれたら完全に後者!と答える自信はありますw(別に犯罪は起してませんが)
なので次回朔…じゃなくて作を書くとすれば、セカチューではなく白夜の世界に行くと思います(一読者さん、見解コロコロ変えてスイマセン)。
ただ朔を描いてる時は『こうでありたい!!』『こうであって欲しい!!』という前向きな発想だったのに対し、亮司を描く時は『…こうだろうなぁ、きっと』という自分を切り売りするかの様な後ろ向きな発想になるのでしょうがw 関係ない与太話をクドクドすいませんm(_ _)m

>「朔お前本当に良いやつだな」
>「お帰り亜紀、世界の中心へ」

最高の手向けのお言葉、しかと受け取りました。今までありがとうございました!!……ロンU話はまた次の機会に是非w(面白そうなテーマですね、これ)
...2006/05/02(Tue) 19:59 ID:OjHrNe3.    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:表参道
祖父がカメラマン様

>簡単に言うと誰も相手にしてくれないので、早速戻って来てしまいましたm(_ _)m

早速戻ってきて頂いて有難うございます(笑)

>本音を言うと、あの少年になりたかったのでしょうね、私は。

この気持ちとても良くわかります。
私も年を取る度に、世の中のしくみとか世渡りとかいろいろな事がわかってきて十代の頃のような後先を考えない行動や熱い気持ち等がなくなっていくような気がします。
もちろん成長もしていると思うんですが(汗)
ただ自分もそうなんですが時折あの頃の、今とは違う人を好きになった時の現在よりも無鉄砲で真っ直ぐな感情表現が懐かしくもあります。
いろいろな捉え方があるとは思うんですが、そういう気持ちでサクや亜紀に自分を重ねていた方も多いのではないでしょうか。
自分もその一人ですが(笑)
そこが「世界の中心で愛をさけぶ」の魅力の一つかもしれないなと感じたりしてます。
みなさんはいかがでしょうか??

>約束が果たせて一安心しております。

約束を果たして頂き本当に有難うございます。
サクと亜紀と私共々感謝しております(笑)
これからも宜しくお願いします(笑)

>ぶんじゃく新隊員様

>「朔お前本当に良いやつだな」
>「お帰り亜紀、世界の中心へ」

祖父がカメラマンさんも書かれてましたが本当に最高のお言葉ですね。
拝見していて胸がジーンときました(涙)

>ただ男性の多くのそれは空想・想像の中であって
>女性は現実も含めてロマンチックになれるんでは
ないでしょうか。

素晴らしいです!!
まさにその通りだと思います。
ロマンチックって良いですねー。
ぜひまたロンU談義しましょう!!
...2006/05/03(Wed) 14:34 ID:lYlGYB6c    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:ポポ
祖父がカメラマン様

>これで10話も単体で見れるようになりましたでしょうか?

難しいかもしれませんが、チャレンジしてみますね!!!
もしダメだったら、この作品を読んで気分を落ち着かせようと思います(o゜▽゜)o

エピローグ2編、ゆっくり読ませて頂きました。
今回もやっぱり泣いちゃいました。子供たちが遊びつかれて寝ていてくれて助かりました(^^ )

亜紀がやさしくて可愛いいまま、彩子さんそっくりのとっても素敵な女性になりましたね。
病気を克服してサクちゃんの所に帰ってきてくれたら、きっとこんな感じだったのだろうなぁ、と思いながら泣いていました。
うまく言えないですけど、サクちゃんを幸せにしてあげられる女性は小林明希さんを始め、たくさんいると思います。
でも一番幸せにしてあげられるのは、亜紀、あなただけなんだよ!!!そんなことを感じました。

いつまでもサクちゃんを呼んでてあげてね、亜紀。
どんなことがあっても亜紀を手放しちゃだめだよ、サクちゃん。

私もこんな言葉をふたりにかけてあげたいです。これで私もロンUに入れますでしょうかo(^▽^)o
それとエピローグ2、本当に素晴らしかったです。私もこんな温かくて強い親になろう。そう決めました。

今まで素敵なお話の数々、本当にありがとうございました。
海外でもお体にはくれぐれも気をつけて頑張ってください。
ずっと応援しています!!!頑張れピッ(^^ )
...2006/05/04(Thu) 19:52 ID:B4BaTO8c    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
>表参道様

早速お相手して頂きありがとうございましたm(_ _)m

>十代の頃のような後先を考えない行動や熱い気持ち等がなくなっていくような
>現在よりも無鉄砲で真っ直ぐな感情表現が懐かしくもあります

…十代の頃から後先考えて生きるタイプだった私wには、余計朔の様な純粋さが眩しく見えたのだと思います。
それと、緒形直人さんの演技が秀逸だったからでしょうが、朔って今でも『無鉄砲で真っ直ぐな』所を多く残したまま大人になれたんじゃないかな…と勝手に想像しております。
あと朔と亜紀に惹かれた理由、ちょっと長いですが(従来通り)、下の方にある考察を書いておりますので御覧下さい。
ロンU隊員として国内最終レポートとなりますw

>ポポ様

>でも一番幸せにしてあげられるのは、亜紀、あなただけなんだよ!!!

…実はコメントを頂く度に密かに感動していましたが、本当に優しい気持ちにさせて頂ける言葉の数々、こちらこそありがとうございました。
やっぱりコメントが『お母さん』ですよね。サクちゃんと亜紀を我が子の様に見守られている感覚が、非常に強く伝わって来ます。母性って、強く逞しいなぁ…
(他に女性の方、いらっしゃりませんよね?念の為)

>ずっと応援しています!!!頑張れピッ(^^ )

最高のソラノウタ、ありがとうございますw 頑張ります。
ポポさんも、いつまでも御家族仲睦まじくお過ごし下さい。
あとロンU加盟の件は、1号さんと2号さんに伺って下さいw 多分、何の問題もないと思いますがw

>一読者様

先日、話題に上った朔⇔亜紀と亮司⇔雪穂の関係の相違点について報告致します>ロンU隊員としてw
女房の友人に言わせると(因みに大の山田孝之さんファン)、白夜行10話での亮司と雪穂の台詞に、この2カップルの最も大きい相違点がある、との事。
それは、いみじくもふたりが同時に感じ、同時に後悔した事でもありました。

『愛し方が、わからない』←ここだそうです。

ただ彼女(小中専門のカウンセラー)から言わせれば、現代社会で決して珍しい悩みではなく(まぁ雪穂ほど極端なのは中々…とは思いますがw)、むしろ朔と亜紀のふたり ― ひとの愛し方を本質的に理解出来ている ― 方が珍しい部類に入るんじゃないか…との事。
ここからは、説明が面倒なのでw会話調に変えます(うろ覚え)。

私『そうか?朔と亜紀より、白夜のふたりの方が珍しいでしょ、どう考えても』
友人K『違うって。亮司や雪穂みたいな症候群、腐る程いるよ。自分本位な見方しかできない子』
女房『…雪穂はともかく、亮司は自分本位じゃないでしょ?(←この女も山田さんオタク)』
友人K『雪穂を止めも出来ず、自首も出来ず、結局自分の弱さを克服せず流されただけでしょ、彼は?ある意味、雪穂以上に自己中だよ。最後、あんな歪に育った初恋の人を放り出して、自分だけ解放された様なもんでしょ?』
私『(…イタイとこ突くなぁ、こいつ…)』
友人K『でも多いのよ、そういう自己陶酔型って言うか、僕をわかって!!私を見て!!ってタイプが…』
友人F『わかる。ウチのバイトの子でも多いよ、そういうの』
友人K『そういう意味で、朔と亜紀って珍しいよ。まぁドラマの中の登場人物なんだけどさw』
私『…そうだな、殆ど見掛けないかもな、あんな純粋な子達は今時…』
友人K『結構紹介するのよ、カウンセリング受けに来た子達に。で、言うのね。相手の長所を認めて、そこを好きになれた
朔と亜紀の様な関係を、貴方達も誰かと作りなさいって…』
女房『なるほどねぇ…相手の長所を認め合う、か…』
友人K『それが中々出来ないでしょ、皆。でも朔と亜紀が最初から互いのそれを見抜けたのって、やっぱり親じゃないかな…って思うのよ、最近』

これ以上、書くとキリがないのでwこの辺りにしておきますが、彼女曰く
『愛し方・愛され方を家族からちゃんと教わって来たふたりだから、あの若さでお互いをきちんと愛せた』
『そこが多くの人を感動させ、未だに幸せにさせたい!!とか思わせるんじゃない?特に中年男性とかに(←私への嫌味)』
『だから自業自得ではあるけど、白夜見てると可哀想だよね。亮司の父親が真だったら、雪穂の母親が富子だったら…と思うとね…』

が、その日の結論でした。以前から一読者さんが言われていた『こんな素晴らしい親に育てられたからこそ…』の御高察と不良カウンセラーの言っている事が合致したので驚きましたし、感心致しました。
で、私がセカチューの世界を愛して止まないのも、きっと朔と亜紀だけでなく、彼等を取巻く温かい環境にも大きな要因があると感じた次第です。
あまりロマンチックではありませんがw興味深い話題だったので報告させて頂きました。

…長文になりすぎて、今日もぶんじゃくさんから頂いたテーマに触れられませんでしたm(_ _)m
出発前に、この話題だけは触れたいので再度参りますw
...2006/05/05(Fri) 01:22 ID:AsZHJaJ2    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:一読者様
お疲れ様です。田舎から戻って参りました。
まず最初にロンU古参隊員として、前に頂いていた宿題を提出します。

>皆様は、どのシーンがお気に召して頂けましたでしょうか?

結局、ひとつには絞れませんでした。どうやっても無理無理です(涙)。順不同でベスト5を上げさせて頂きます。

・レスNO,7
>「だって…だって俺!!…亜紀とだったら!ウルルじゃなくてもいいし!」

これがすべての始まりです。この言葉は心の奥底でずっと聞きたかったセリフでした。

・レスNO,40
>「…あんた、あの娘に好きになってもらえて…良かったねぇ…」

監督自らお気に入りの場面を我々が外すわけないじゃないですか!(笑)。冗談抜きで号泣したシーンです。

・レスNO,77
>「俺は……『お前』を、心から誇りに思う」

これを見た瞬間、目の前が涙で何も見えなくなりました。真さんの無骨な優しさにやられました。

・レスNO,91
>「……そのままの…サクちゃんが、いいよ…」

どれか一つ選べ、と言われたらこのシーンです。もう言葉とかで表せないですよ(涙)。
それと朔に軽い殺○を初めて抱いたのもこのシーンでした(笑)

最後は、ロンU見習がどうしても入れて!と言うので、このシーンを選ばせて頂きました。

・レスNO,106
>「これからも、ふたりで頑張ろうね!」

「だってはるかちゃんが笑顔でこのセリフ言うシーンがあったら、絶対泣くでしょ!」と隣でギャーギャー言ってます(笑)。そして、確かに号泣するでしょう(恥)
亜紀らしい最高の言葉でした。受けた朔の最高の笑顔が目に浮かぶようです(涙&怒)

それとエピローグ2話は除外させて下さい(涙)。あれは両方とも反則です(涙)

>潤一郎、結構いい味出してましたか?

いい味どころじゃないです、本当に最高の父親像ですよ!
帰省中、意味もなく親父に優しく接していました(笑)

あぁ、でも本当に終わっちゃうんですね。寂しいなぁ。
だけど本当にありがとうございました!この作品は俺の宝物です!
これからも何回も読み直しさせて頂きます。
再開と白夜行の新作(またも「やった!」という感じです)、それと海外からのロンU談義、楽しみにしています!お疲れ様でした!!!!
...2006/05/05(Fri) 21:23 ID:.4ATjrLw    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:一読者
帰省前にCookie消していったので、名前は自分で様つけてるし、文字色は違うしと間抜けな真似して申し訳ありませんでした<(_ _)>
隣の見習いにバカ扱いされました(悔)

〜ロンUバージョン〜

>ぶんじゃく様

光栄です!今後よろしくお願い致します。

>女性は現実も含めてロマンチックになれるんでは
ないでしょうか。

一言で言うと強いんでしょうね、男より。現実は現実として受け止めた上で、さぁどうしようか・・みたいな腹のくくり方ができるのだと思います。
逆に言うと男はすぐ空想の世界に逃げたがるのかもしれませんが(苦笑)
以前そういう経験をしたことがありますが、これは後日改めて報告致します(笑)

>ポポ様
>これで私もロンUに入れますでしょうかo(^▽^)o

まったく問題ございません!!女性初のロンU加盟の方を迎え入れられて光栄です!
多分1号さんも同じ意見だと思われます(笑)
近々デビューさせるウチの見習いをビシビシ指導してやって下さい!

>祖父がカメラマン様

>『愛し方・愛され方を家族からちゃんと教わって来たふたりだから、あの若さでお互いをきちんと愛せた』

その通り!だと思いました。私はご友人の方のように体系立てた考察とかできないですが(恥)

>きっと朔と亜紀だけでなく、彼等を取巻く温かい環境にも大きな要因があると感じた次第です

『空港のない・・』でも朔と亜紀の親が出てくる場面でいつも泣いていた私としては、もう完全同意致します。見習いが今、印刷してじっくり読んでいます(笑)。
こんな感じで今後も遊びにきて下さい!新作同様(笑)いつまでもお待ちしています!
...2006/05/05(Fri) 21:39 ID:.4ATjrLw    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:表参道
祖父がカメラマン様

国内最終レポート拝見いたしました。

>私がセカチューの世界を愛して止まないのも、きっと朔と亜紀だけでなく、彼等を取巻く温かい環境にも大きな要因があると感じた次第です。

本当にその通りだと思います。
彼らの周りのとても魅力溢れる人達・環境があるからこそ、こんなにも沢山の人達を魅了してやまないのでしょうね。

「空港のない・・・」が終了してしまって「世界の中心で愛をさけぶ」の中毒症状が益々進行している日々です(汗)
幸せになったサクと亜紀の事はは本当に嬉しいのですが、やはりお別れするのは辛いですね(涙)
できる事なら「サザエさん」のように永遠に続いて欲しいなぁーっと勝手に思ってます(笑)

素敵な物語を本当に有難うございました。
祖父がカメラマンさんの海外からの参戦を心よりお待ちしております。
お体にお気をつけてお仕事頑張ってきて下さい。

>ポポ様
>これで私もロンUに入れますでしょうかo(^▽^)o

二号さんと同じくもちろん大歓迎です。
ぜひ女性の視点からみた亜紀の気持ちなど教えて頂きたいです。

>一読者様(二号さん)

新隊員の方が続々と増えてきて嬉しいですね(笑)
メンバーの方が増えたら署名でも集めて石丸Pに講演会でもお願いしましょうか??(笑)
...2006/05/05(Fri) 23:08 ID:f3RnejkM    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
「今日頑張って明日ゆっくりするのと、その逆とどっちがいい?(冷笑)」と小学生の子供みたいな問い掛けをされて、今必死に明日の時間を確保する為、書類整理等に没頭しております。
なので今日は手短に。

>一読者様

>この作品は俺の宝物です!

そのお言葉こそが、私にとっても宝物です!!w
あと好きなシーン、選んで頂いて感謝しております。見習いの方にまで選んで頂けて光栄ですw

…ただ『監督』は止めて下さい(苦笑)、背番号はゼロでお願い致しますm(_ _)m

>表参道様

>できる事なら「サザエさん」のように永遠に続いて欲しいなぁーっと

さぁて、来週以降の番外編は

※初めての、夜(キャーッ!!!←馬鹿)
※松本写真館での大宴会(エピローグ2の続編)
※思い出す、という事(結婚後のふたり)
※その他諸々

以上でお送り致します、ンガッムグッw

…大分時間を置いてからの再開になるでしょうが、そこまで言って頂けるならやります!……でも、ホントに間隔は空くと思いますが…
(第一やると言ったはいいものの、頭の中、構想ゼロです)

ここで止めとけばいいものを…とは自分でも思いますが、まぁ典型的なお調子者のO型人間ですので、死ぬまでこの性格と付き合いますw

>ぶんじゃく様

すいません、そういう事でまた明日にでも…
...2006/05/06(Sat) 00:21 ID:wmjaR6Pg    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
>ぶんじゃく様

先ずお礼を申し上げる事を、ひとつ忘れておりました。

>同じツッコミを入れておきます^^

細かいネタを拾って頂き、ありがとうございましたw

>ただ男性の多くのそれは空想・想像の中であって
>女性は現実も含めてロマンチックになれるんではないでしょうか

深い話題ですね。自身にも痛切に感じられる所がある分、色々考えました。
優先順位が違うのでしょうね、男女間で。
先日の彼女さんとの松崎旅行のお話を拝見して思いましたが、(失礼ですが)ぶんじゃくさんの心中は恐らく『…ここが朔と亜紀の育った場所か…』という様な感覚だったと思うんですよ。
ところが彼女さんは、先ず目の前の光景の『認識』から感情処理が開始されたと言うか(下手な表現でごめんなさい)。
つまり目前の光景=現実に対し、彼氏さんwは『朔・亜紀>>>>風景』と捉え、彼女さんは『風景≧朔・亜紀』という様な感じだったのかな?…と。
我が家も例えば知人から紹介されたレストランに行く場合、私は知人からの情報(あれが美味い、よく○○が来るetc)の確認から入ろうとしますが、女房は情報遮断した上で完全に『まず自分の目で確かめる』作業から入りますね。ロマンチックな話でも何でもないですがm(_ _)m
それだけ女性の方がドラスティックであり、且つ自信があるのでしょうね>自分の視点に対して。

セカチューでは殆ど感じる事はありませんでしたが、『白夜行』での主人公2名はその典型かも知れません。
現実の厳しさも自身の醜さも全て容認した上で、それでも『太陽の下、亮と一緒に歩くんだよ』と夢を持ち続けられた雪穂。
逆に現実認識を重ね夢を見る事すら出来なくなり、『笹垣と共に自身も消す』『栗原典子という存在に溺れていく』事を選んだ亮司は、ある意味で空想の世界(=自分の都合の良い世界)に逃げ込んだ、と言えるかも知れません。

…関係ない話をクドクドすいませんでしたm(_ _)m
非常に興味深い話だったので、調子に乗りました。
ですが、こんな感じで今後もお付合い頂ければ幸いです。

……それでは一旦、行って参ります(正式には明日早朝ですが)
ロンU話はしたいわ、続編は約束しちゃうわ…と何だかんだと今後も顔出す事になりそうですw
頻繁とは行きませんが落ち着き次第、戻って参ります。今までありがとうございました!
そして、今後も何卒宜しくお願い申し上げますm(_ _)m   
...2006/05/06(Sat) 19:14 ID:wmjaR6Pg    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:セカチュー患者
祖父がカメラマン様

先日は私のスレにお返事頂き、ありがとうございます。続編、楽しみにお待ち申しております。

いてらっしゃいませ^^
...2006/05/07(Sun) 00:59 ID:v3ai5Iwg    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:一読者
>祖父がカメラマン様

お疲れ様です。もう到着された頃でしょうか?

>…大分時間を置いてからの再開になるでしょうが、そこまで言って頂けるならやります!

狂喜しました!(涙)
おそらく表参道さんを始めとしたロンUメンバー全員の感想も同じだと思います。
また、あの朔と亜紀に会えるんですね!最高です!(号泣)

落ち着かれてからで結構です。いつまでもお待ちしております。
お体に気をつけて、頑張って下さい!!
...2006/05/07(Sun) 22:06 ID:BzVmdtRo    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:ぶんじゃく

祖父がカメラマン様

>ぶんじゃくさんの心中は恐らく『…ここが朔と亜紀の育った場所か…』〜〜彼女さんは『風景≧朔・亜紀』という様な感じだったのかな

その通りですね^^育った場所か〜って毎回
思ってます、ここをあの二人が歩いたんだな〜
って思ってます^^

カウンセラーさんのお話非常に興味深く読ませて
いただきました。

再開あるんですね!!「おかえり」っと
声を掛けられる日を待ってます。

一読者様
>一言で言うと強いんでしょうね、男より。現実は現実として受け止めた上で、さぁどうしようか・・みたいな腹のくくり方ができるのだと思います。

そうですね、強いんですよス・ゴ・ク!
空想の世界には私も逃げますよ^^
特に仕事中や彼女の機嫌がよろしくない時
にはすぐに「亜紀」ちゃんが出てきます(笑)
ま〜だからこそお互いが必要なんでしょうね
うまく出来てるもんです。

表参道様
>石丸Pに講演会でもお願いしましょうか??(笑)

講演会の後に車座になって座談会なんてのも
いかかがでしょうか?^^
...2006/05/08(Mon) 04:26 ID:Y/GDCWdo <URL>   

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:表参道
祖父がカメラマン様

海外の地はいかがですか??
慣れるまで大変だと思いますがお体にお気を付けて
お仕事頑張って下さい。
こちらに遊びにきて下さるのをお待ちしてます。

>…大分時間を置いてからの再開になるでしょうが、そこまで言って頂けるならやります!……でも、ホントに間隔は空くと思いますが…

有難うございます!!感激です!!
時間を置いてからでも間隔空いても良いので是非お願いします!!
ちなみにロンU話も是非!!(笑)

>一読者様(2号さん)

>狂喜しました!(涙)

まさに狂喜しましたよ(笑)
早くサクと亜紀に会いたいですね!!
こちらのサイトに出会って「セカチュー中毒」が緩和しているのだとばかり思っていましたが、自分でも気づかない内に重症になっている気が(笑)
2号さん(一読者さん)はどうですか??

ぶんじゃく様(ロンU3号??さん)

>講演会の後に車座になって座談会なんてのも
いかかがでしょうか?^^

素晴らしい企画です!!(涙)
DVDでも観ながら一晩中でも語り明かしたいね!!!
石丸Pのシーンごとの説明付きで(笑)
「世界の中心で愛をさけぶ」について聞きたい事も伝えたい思いも、山のようにあるので(笑)
本当に夢の企画です(涙)
...2006/05/10(Wed) 01:03 ID:dqo0xMYg    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:一読者
>3号様(ぶんじゃく様)

>強いんですよス・ゴ・ク!

すべてがわかった気がします(笑)
男が甘い夢を見て、こうなったらいいよね〜位の軽いタッチで話をふっても、えっ?とか、はっ?っていうリアクションが返ってきたりします。
大体その後の反応は同じですね。「そうなれば嬉しいけど、その前に・・」という感じの反応です(涙)。
こっちは全部わかった上で、そう言ってるんだよ!と泣きたくなる時もあります。
そんな時に、心の中で亜紀が優しく両手を広げてくれてたりする瞬間は私にもあります(恥)。

>1号様(表参道様)

>自分でも気づかない内に重症になっている気が

1年間かけてようやく立ち直れたかな・・と思った矢先に年末の再放送を見て、再び病にかかりました。
(当然DVDは持ってますが、人間って不思議ですね)
夢遊病患者のように色々な掲示板を巡ってるうちに、ここに辿り着き、幸せな亜紀と朔の姿に目がうるみだしている時に、最終兵器とも言える「空港のない・・・」を拝見し、結果以前より重症となりました(涙)。
おそらく不治の病でしょう、もう覚悟してます(笑)

>DVDでも観ながら一晩中でも語り明かしたいね!!!

ロンUだけでなく、当然この掲示板の全員の人たちが参加することになるのでしょうが(笑)
私としては石丸Pだけでなく、森下佳子という方も是非お呼びしたいですね。もう一晩中、問い詰めたいですよ(笑)
...2006/05/10(Wed) 23:14 ID:4zf0V3Yc    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:表参道
>2号様(一読者様)

>おそらく不治の病でしょう、もう覚悟してます(笑)

同感です(笑)
でも人間不思議なもので自分の中でこの病は完治して欲しくないと願ってたりします(笑)
もっと言えばさらに重症になりたいです(笑)

>私としては石丸Pだけでなく、森下佳子という方も是非お呼びしたいですね。もう一晩中、問い詰めたいですよ(笑)

さすがロンU2号さん!!
森下さん、良いですねー。
ホント問い詰めたい事がたくさんありすぎて、
一晩じゃ足りないかもしれないですね(汗)
問い詰めている場面を撮影してロンUのバイブルとして一生保存版にしましょう!!
...2006/05/13(Sat) 18:25 ID:Z8jCO6UI    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:にわかマニア
 ロンUの同志の皆さん(こんな呼びかけ方って,何だか不破哲三っぽいかなァ)
 石丸・森下ときたついでに,どうせなら,堤・行定両監督に原作の片山さんも交えて,「徹底検証・朝まで生討論」しませんか。
...2006/05/13(Sat) 19:32 ID:ZSDuUIYE    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:一読者
>1号様(表参道様)

>森下さん、良いですねー。

自分で提案しといて何ですが、石丸氏には何でも聞けそうな気がしますけど、森下女史を目の前にすると、迫力に圧倒され何も聞けそうにない気もしてきました(汗)
聞くとしたら、やっぱり「何故あそこまで若い2人を追い込めるんですか?」ということですかねぇ(汗)

>にわかマニア様

>何だか不破哲三っぽいなァ

別にマル○ス主義ではありません(笑)。強いて言えば、朔と亜紀が幸せならばそれでOKだというくらいでしょう。
背番号ゼロの方も以前そんな内容のことをおっしゃってましたし(笑)

>「徹底検証・朝まで生討論」しませんか。

いいですね!問題はスケジュールの調整が鬼のように大変そうだというところでしょうが(笑)
ただ、今でもこれだけの人間がこの作品に熱い思いというか、病気に掛ってる(笑)ことは認識させたいですね。

>祖父がカメラマン様

お元気ですか!落ち着かれたら、遊びにお出で下さい!
いつまでも続編同様、お待ちしております!
...2006/05/14(Sun) 18:30 ID:b0wC6b6o    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:たー坊
皆様、色々と盛り上がってますね。
ここに、早いところ祖父がカメラマン様が復帰してくることを願うばかりです。
...2006/05/14(Sun) 21:54 ID:Y.JyDB5A    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:ポポ
>祖父がカメラマン様へ

お久しぶりです!!!海外でのお暮らしはいかがでしょうか?
久しぶりに時間があったので読み返していたら、私なんかにはもったいないお言葉を頂いていたのに気づいたので、遅いですけどレスさせて頂きます。

>(この作品はポポさんのコメントを拝読している時に急に思いつきました。ありがとうございます)

こちらこそありがとうございます!!!
再開、あるんですね。本当に楽しみにお待ちしていますヽ(´ー`)ノ
お体に気をつけて、これからも頑張ってください!!!

>ロンUの皆様へ

お久しぶりです。
拝見していると、皆さんの彼女(奥様)はしっかりされた方が多いんですね〜(^^ )
私は主人がかなり年上なせいか、昔からしっかりしろ!!!とかボーッとしない!!!とか怒られています(T T)
亜紀へのサクちゃんの優しさのように、皆さんも彼女を大切にしてあげてくださいね(^^ )
...2006/05/16(Tue) 16:58 ID:WpWypA92    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:ぶんじゃく

ロンU1号・2号様

「3号」拝命ありがたく頂戴いたします^^

講演会ではここの皆さんの作品を読んでいただいて
是非 映像化・もしくはラジオ小説の様な形でも
かまわないので皆さんの作品をなんらかの形にして
いただきたいですね、こんなに素晴らしい作品を
ネットの中だけでなんてもったいなさすぎですからね

あの方達にはその責任があると思います(笑)
...2006/05/19(Fri) 01:51 ID:HGYiQNNg <URL>   

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:表参道
ぶんじゃく様

> こんなに素晴らしい作品をネットの中だけでなんてもったいなさすぎですからね

同感です!!
自分も含めみなさんをこんなに重症な患者にしたんですから保障はして欲しいですよね(笑)
責任重大です(笑)

ぶんじゃくさんもロンU3号として講演会実現にむけて是非一緒に頑張って下さい♪

>2号様(一読者様)

>森下女史を目の前にすると、迫力に圧倒され何も聞けそうにない気もしてきました(汗)

そうなんですよねぇ(笑)
石丸Pにはいろいろ聞けそうなんですが森下女史は・・・、強敵ですね(笑)
でもいろいろ聞きたいですよね(笑)

>ポポ様

>亜紀へのサクちゃんの優しさのように、皆さんも彼女を大切にしてあげてくださいね(^^ )

ご指導有難うございます(笑)
でも本当にサクの優しさって男性からみても理想なんですよねー♪
少しでもサクの優しさに近づけるように毎日精進します!!

>祖父がカメラマン様

お元気ですか??

落ち着かれたら久しぶりにお顔をだしてくださいね。
復活を心よりお待ちしてます。
...2006/05/21(Sun) 18:41 ID:D9b5r6Do    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
ロンUの皆様 並びに 御愛読頂いている皆様へ

落ち着いてもいませんし、あまり元気でもありませんが(案の定、胃がやられました)生きております。
だから来るなっと言ったのに、付いて来た女房が入院しバタバタの極みでした。
でも1回だけ惚気させて下さい(二度としません)。やっぱり嬉しいもんですね、一緒に居てくれるって事が、何よりも。

今、こちらへ着てから感じた事や考えた事等を、朔と亜紀の関係に置き換えて、作品化していきたい…と考えています。
もう暫く時間はかかると思いますが、お待ち頂ければこの上なく光栄です。

来週末くらいには少しは落ち着くと思うので、その際に近況報告などさせて頂きます。
何だかんだ言って、生きています!御心配なくw
本当にありがとうございます。
...2006/05/21(Sun) 21:27 ID:0u8/nfJM    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:ふうたろう
 祖父がカメラマンさん、はじめまして。そして、このスレに「お帰りなさい」。

 わたしは、ふうたろうといいます。祖父がカメラマンさんの、この物語を読ませていただき、幸せな気持ちにさせていただいた一人です。

 異国の地での慣れない生活、多分大変だと思いますが、奥様共々、お体に気をつけてください。
 そして、また、新たな物語の展開の書込みも、よろしくお願いします。待っております。
...2006/05/23(Tue) 06:29 ID:r/jy2GnE    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:一読者
3号様(ぶんじゃく様)

>皆さんの作品をなんらかの形にしていただきたいですね

現実的な?可能性を考えると、ラジオドラマは非常に「あり」かもしれませんね。
テレビより制作費やギャラも安いでしょうし、何より山田君という超一流のナレーターがいますから。
ひょっとしたら、祖父がカメラマンさんもその辺を考慮されて、モノローグを多くされたのかもしれませんね(笑)

>あの方達にはその責任があると思います

責任というか、もう義務だ!と言い切りたい気すら致します(笑)

ポポ様&1号様(表参道様)

>亜紀へのサクちゃんの優しさのように、皆さんも彼女を大切にしてあげてくださいね
>でも本当にサクの優しさって男性からみても理想なんですよねー♪

毎度のごとく、超同感です!私も近づけるよう、日々精進して参ります(笑)
朔の優しさはわざとらしくないし、押し付けがましくもない。本当にいいヤツだなと思います。
ただ、見習いはしますが、現実的にはかなり難しいですね(苦笑)
それに私の相手も亜紀ほど優しくないですし・・・お互い様ですけど、現実とは厳しいものです(涙)
だから、このサイトで会える朔と亜紀の姿に癒されているのかもしれません。

祖父がカメラマン様

お久しぶりです!!まずは安心致しました。
しかし、本当に大変そうですね。奥様のお具合は、その後いかがでしょうか?
続編のことは気になさらず、ゆっくりとご静養と奥様のご療養に専念されて下さい。
我々はいつまでも待つ心構えができておりますから(笑)。ラジオドラマの話も出ていますし(笑)
とにかく、お体だけは本当にお大事に!落ち着かれたら、」また語らいましょう!
...2006/05/23(Tue) 23:00 ID:3WMJzOIU    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:表参道
祖父がカメラマン様

ご無沙汰しております(汗)
奥様の容態は如何ですか??
海外に赴任されてすぐの奥様の入院でとても大変だと思います。
祖父がカメラマンさんも体調には十分お気を付け下さい。

>やっぱり嬉しいもんですね、一緒に居てくれるって事が、何よりも。

結婚されてると一緒にいるのが凄く普通になってしまう事もあるような気がします、しかし好きな人と一緒に居られるという事はとても素晴らしい事なんですよね。
祖父がカメラマンさんのこの気持ちがまさに「世界の中心で愛をさけぶ」だと勝手に思ってしまいました(汗)

2号様(一読者様)同様いつまでも、17年でも(笑)待ち続ける心構えですので安心して(笑)
お体だけはお大事に落ち着かれたら戻って来て下さい。
お忙しい中本当に有難うございます。

2号様(一読者)

ご無沙汰しております
最近目が回るほどの仕事の忙しさで、こちらのサイトはチェックしていたのですが中々書き込めませんでした(涙)

>私の相手も亜紀ほど優しくないですし・・・お互い様ですけど、現実とは厳しいものです(涙)
>だから、このサイトで会える朔と亜紀の姿に癒されているのかもしれません。

同感です(涙)
サクと亜紀には本当に癒されます。
ある意味サクと亜紀は自分達の憧れのカップル・または理想なんでしょうね。
人間生きているといろいろな事があって、相手に優しく出来ない時とか、本当の気持ちとは違う言葉を言って相手を傷つけたりとか・・・。
サクの真っ直ぐさや相手を想う気持ち本当に憧れますね。

>ラジオドラマは非常に「あり」かもしれませんね

「あり」ですね☆★
ラジオだと数年後に続編があるとしても年齢を重ねた感じも見えないし山田くん・綾瀬さんのコンビでまた「世界の中心で愛をさけぶ」の可能性高いですよね♪
なんか一人で盛り上がってきました!!
やっぱり署名活動ですかね??(笑)
...2006/06/11(Sun) 19:38 ID:DGMrO1RU    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:たー坊
相変わらず盛り上がってますね!

祖父がカメラマン様

奥様の具合はいかがでしょうか?異国の地で色々と大変かと思いますが、再びこのスレに顔を出していただけるものと思っております。
...2006/06/13(Tue) 18:19 ID:Ld4vJI0U    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:一読者
>1号様(表参道様)

お久しぶりです!ロマンチックな日々をお過ごしでしょうか?(笑)
お仕事、本当に大変そうですね。くれぐれもお体には、お気をつけ下さい。
私の方は最近蹴球三昧の日々を過ごしておりましたが、さすがに昨日の悪夢から現実逃避したくなり、朔と亜紀に癒されに戻ってきました(涙)

>サクの真っ直ぐさや相手を想う気持ち本当に憧れますね

所詮ドラマの中の人間だろ!と言い切れない自然な優しさがあるんですよね、朔には。
二十歳を過ぎた大人が高校生を見習うのも癪ですけど(笑)、私もあんな優しさを持ちたいと思いますし、相手からもそう言われています(涙)

>「あり」ですね☆★

「あり」でしょ(笑)。ラジオって映像に比べて制約がかなり少ないと思うんですよね。
ここはひとつ、W杯が終ったら本気で署名活動してみますか!?(笑)

>祖父がカメラマン様

お元気ですか?その後、奥様のお具合は如何でしょうか?
とても大変な状況だと思いますが、1号さん同様、再開を17年でもお待ちしております。
その時は「・・・・よく、頑張ったなぁ・・・・」と褒めて下さい(笑)
...2006/06/13(Tue) 22:35 ID:UQbdsd32    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:表参道
>二号様(一読者様)

大変ご無沙汰しております。
最近仕事がとてもドラスティックな展開でバタバタとしておりました。
あまりロマンチックな日々が過ごせていません(涙)
どんなに忙しくても二号さんと一緒で悪夢(仕事)の毎日から逃げ出したくて、こちらは覗いていたのですが中々ゆっくり書き込む時間がなく今日に至りました(笑)

>所詮ドラマの中の人間だろ!と言い切れない自然な優しさがあるんですよね

そうなんですよねぇ(涙)
もう何度目かになりますが、改めてサクは本当に男性目線で見ても憧れです。
現実にはあの優しさは中々難しいですが(汗)
いつも理想と現実の狭間で葛藤しております(笑)

>W杯が終ったら本気で署名活動してみますか!?(笑)

かなり、「あり!」ですよね。
本気の話でなにか良い手はないものでしょうか・・・??(涙)
主役の二人があまり年齢を重ねない内にTBSさんに頑張ってもらいたいです。
久しぶりにサクと亜紀に会いたいですねぇ(涙)

>祖父がカメラマン様

お元気でしょうか??
新しい土地には慣れられましたか??
祖父がカメラマンさんがいつ戻って来られても良いようにみんなでチカラを合わせて、しっかりこちらは死守しておきますので安心してお仕事頑張って下さい。

>二号様(一読者様)
>その時は「・・・・よく、頑張ったぁ・・・・」と褒めて下さい(笑)

うまい!!!
...2006/07/16(Sun) 19:30 ID:RXpvSFWo    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:一読者
>一号様(表参道様)

ちぃーすっ(笑)
色々大変そうですね。お察し致します。
でも、この掲示板にいてくれたことが確認できて、ホッとしました。

>あまりロマンチックな日々が過ごせていません(涙)

私も実はロマンチック?な日々に終わりを告げ、現実と向き合う日をとうとう迎えてしまいました。
11月に結婚します。相手は例の見習いです(笑)
現実的に朔と亜紀の関係がありえるのか?
理想と現実の狭間を自分の身を持って体験してみます(泣)

>久しぶりにサクと亜紀に会いたいですねぇ(涙)

会いたいですねぇ、本当に(涙)
見習いが言ってましたが、多分このスレッドにいる朔と亜紀が、私たちが一番好きで、一番会いたかった2人なんだろうなと思ってます。
あぁ、本当に会いたいなぁ、久々にあの2人と。

>うまい!!!

サンキュー!!!(笑)


>祖父がカメラマン様

お元気ですか?一号さんの言うとおり、ここは死守します。
私たちにとってのウルルみたいなものなので。
いつか世界で一番きれいな空を見れる2人の姿を期待しています!
...2006/07/22(Sat) 21:57 ID:2Ej4eiu6    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
御愛読頂いている皆様へ

御無沙汰しております。
先ずは数々の温かいコメントを頂戴しながら、多忙さにかまけ、何の返信もしなかった私の無礼極まる対応に尽き深くお詫び申し上げます。
本当に申し訳ございませんでしたm(_ _)m

言い訳ですが、やっぱりあちらのネット環境が思わしくなく(唯一返信したレスはドサクサ紛れに工場の会議室から打ちましたw)、何故か閲覧は出来るけど投稿が出来ないという状況が続いてまして…某匿名大型掲示板とかは大丈夫だったのですが。
それと…プライベートが色々あり過ぎました。嘘の様な本当の話ですが、女房が倒れた後、心配で見舞いに来た義父(71歳)まで倒れる、というw
今でこそ笑い話ですが、流石にあの時は呆然と致しました。一体、俺が何かしたのかよ!!!!みたいなw

そんなこんなが重なり、すっかり御無沙汰しておりましたが、ようやく仕事もプライベートも落ち着き、一昨日休暇を兼ねて女房と二人(義父は3週間前に叩き返しましたw)、無事帰国致しました。9月初旬までは日本におります。
今後も、ようやく(今日は多いなぁ、この表現が)現地の生産状況が軌道に乗り始めた事もあり、1ヶ月置き位には短期間ながら帰国できそうです。今までは正直、それ所じゃなかったんで…

まぁセカチューに関係ない話題はこの辺りでお終いにして、先ずはリハビリがてらw他の方のスレを拝読し、新作の構想に移りたい…等と考えております。

コメント頂いた皆様への個別の返信は近々させて頂きますが、先ずは取り急ぎ近況報告とお詫びまで。
本当に色々と御心配をお掛けして申し訳ございませんでしたm(_ _)m
そして、これからも従来以上に宜しくお願い申し上げます!ありがとうございました。
...2006/08/15(Tue) 16:10 ID:ZOUnmjMI    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:にわかマニア
 第5話の埠頭での会話ではありませんが,
「おかえりなさい」。
 でも,暫くすると,また任地に戻られてしまうのですね。任地でも閲覧・書き込みができるようになるといいですね。
...2006/08/19(Sat) 07:41 ID:JK4wW0.2    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:表参道
祖父がカメラマン様

ご無沙汰でした!!

おかえりなさい!!

お元気そうで本当に良かったです。

いつもチェックしているので祖父がカメラマンさんの帰国された書き込みは拝見していたのですが、
最近仕事が激務でしてコメント遅くなり本当に申し訳ないです。

>他の方のスレを拝読し、新作の構想に移りたい…

その言葉お待ちしておりました!!
ロンUは新作を17年でも何年でもお待ちしてますよ☆

日本との往復は大変だと思いますがお体にお気を付けて無理をなさらずロンUの為にも何卒頑張って下さい(笑)

>二号様(一読者様)

おめでとうございます!!
見習いさんがお相手ならきっとサクと亜紀に負けない素敵なカップルになれると思いますよ☆

実は私も先日彼女のご両親に挨拶に行ってきたばかりなんですよ(汗)
本当に緊張しました(涙)

お互い頑張りましょうね☆
...2006/09/03(Sun) 19:05 ID:lYlGYB6c    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
出立前に(とは言っても決算の関係で9月末には一時帰国しますが)覗いてみたら、懐かしいお方から、とても嬉しいメッセージが!!!
奇遇ですね。本当は二号さんへの祝福のメッセージを書かせて頂く予定でしたが、まとめてお祝いさせて頂きます!!!

>一読者様
>表参道様

ようこそ、安らぎの無い世界へ!!!

………冗談が過ぎましたm(_ _)m 本当におめでとうございます。
私は連れ合いとしか一緒に生活をした経験が無い為、一概には言えませんが、色々あっても、何だかんだで上手く寄り添って行けるもんですよ>夫婦って。
まぁ当方がそう感じてるだけで、先方(?)がどう思ってるかは知りませんし、知りたくもありませんがw

結婚して約9年、秘訣も何もありません。
「互いを思いやる気持ちを忘れずに」……無理です(キッパリ)
ただ相手の存在を決して否定しない。相手がいてくれるから、自分もここに存在している。
そんな気持ちを日常の中で一瞬、ごくたま〜〜にw思い出してみる…それだけで十分だと思います。

偉そうに語り込んでホントすみませんm(_ _)m
既婚者として、少しだけ何の得にもならないアドバイスもどきを贈らせて頂きましたm(_ _)m

『寒い晩だな。寒い晩です。妻のナグサメとは、正に欺の如きもの也』(斎藤緑雨「眼前口頭」より)

私の密かに好んでる言葉で、かくありたい…と思ってる理想像でもあります。これが朔と亜紀だと、

「……今日は、冷えるね…」
「…うん…(朔の腕に体を寄せて)でも、こうしてると温かいよ…サクちゃん…」

てな感じなのでしょうかw


最後にもう一言だけ。お二方の御成婚に、ささやかな引き出物を差し上げたく、考えております。
……大体の構想は出来ました。明るいやつと、ウエットなやつと、どちらがお好みでしょうか?
出来ましたらリクエスト頂きたく、宜しくお願い申し上げますm(_ _)m
...2006/09/04(Mon) 00:36 ID:pPdl92gU    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:にわかマニア
 久々のご帰国をみんなで喜び合っていたのも束の間,もう任地に戻ってしまわれるのですね。
 どうか,お気をつけて。
...2006/09/04(Mon) 20:25 ID:WFKqEAMM    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:表参道
祖父がカメラマン様

お祝いのメッセージ有難うございます。

>ようこそ、安らぎの無い世界へ!!!

顔が引きつってしまいました(笑)

その他アドバイスも有難うございます。
先輩からのメッセージとして胸に焼き付けておきます!!

>『寒い晩だな。寒い晩です。妻のナグサメとは、正に欺の如きもの也』(斎藤緑雨「眼前口頭」より)

深いですねー。
サクと亜紀バージョンとてもわかり易いです☆
久しぶりに祖父がカメラマンさんのサクと亜紀に会いたいですねー。

>ささやかな引き出物を

お忙しいのに申し訳ないです。
でも最近、祖父がカメラマンさんの物語に飢えていたので喜んで頂きます!!

希望は明るいやつでお願い致します。
私事なんですが実は最近、体調がすぐれなくて、
本日病院に行ったんですが、ドクター曰く虫垂炎の疑いがあるとの事(汗)
明日もう一度検査をする事になりました(涙)

祖父がカメラマンさんの明るいお話で私のマイナスオーラを吹き飛ばしてやって下さい(涙)

虫垂炎だった場合、即入院かもしれないので「引き出物」の感想が若干遅くなったら申し訳ありません。

では楽しみにお待ちしております。
...2006/09/04(Mon) 22:57 ID:yLJWpml2    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:ぶんじゃく

祖父がカメラマン様

お久しぶりですね。
お元気そうでなによりです。
9月末の一時帰国心よりお待ちしています。

一号様・二号様に便乗して私もひとつ
引き出物を頂戴したいのですが、
私は両方をお願いしたいです。
人間ってゆうのは欲張りな生き物ですから^^;
まー冗談はさておき9月末楽しみにしています。

一号様
二号様
両先輩共におめでとうございます。
月並みですが末永くお幸せに^^

しかし我ながら芸がないな〜(汗)
...2006/09/08(Fri) 01:20 ID:U5ptOfOA    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:たー坊
祖父がカメラマン様

先日は私のスレッドにコメントをいただきましてありがとうございました。月末の一時帰国をお待ちいたしております。その時までには続きをUPしておきますのでw
...2006/09/08(Fri) 17:57 ID:wtz2n2Jk    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:熱烈なファン
落ちないで
...2006/09/18(Mon) 09:25 ID:fl2kmZP6    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:表参道
ぶんじゃく様

大変ご無沙汰しております。

お祝いのお言葉有難うございます。

先輩方の話を聞いているとこれからが大変みたいですが・・・(汗)

祖父がカメラマンさんからの引き出物本当に楽しみですね。

>祖父がカメラマン様

祖父がカメラマンさんの一時帰国をみんなで首を長くしてお待ちしております☆
...2006/10/01(Sun) 16:38 ID:ezFi.8AQ    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
またもや御礼と御挨拶が約束より遅れてしまい、毎度の事ながら申し訳ございませんm(_ _)m お陰様を持ちまして、一昨日に無事帰国致しました。
それでですね…1年間の出張の予定が大幅に縮まりました。原因は例のクーデターです。
現地は殆ど動揺もなく平穏無事な感じでしたが(私なぞ日本の友人のメールが第一報でした)、やはり会社側としては安全やら保障やら、色々と考えるのでしょうね。
残留or帰国の条件を提示され熟考した結果、まぁ政情不安定だから手取増やして…と回答したら、じゃぁ(金が)勿体無いから帰って来い、という羽目になりましたw
人も土地も温かな住み易い国ですが、女房も倒れた事もあって、まぁこれはこれで…という感じです。
残務処理と引継、ついでに国内での新事業(ちゃんと次を用意してる所が嫌らしいですなw)参加で暫くは行ったり来たりの生活です。年末くらいに落ち着ければOK…ですかね?

まぁ、そんなこんな騒がしい日常になりそうな事と、構想を色々練ってみた結果、殆ど本編と同じくらいの長編になりそうな事が確定したのでwチョビチョビと行かせて頂きます。
前回の様にハイペースで進みませんし、大分おちゃらけた内容になっていますが、今回も最後までお付き合い頂ければ、この上なく幸せに存じます。

それでは再開致します。
にわかマニア様、表参道様、ぶんじゃく様、たー坊様、熱烈なファン様。本当にありがとうございます。
今回も『頑張り』ますので、是非御愛読下さいます様、心よりお願い申し上げます。

そして表参道様&一読者様。本当におめでとうございます。
ささやかに過ぎる引出物ですが、是非お受け取り下さい!!!!


『空港』に行かなかった朔と亜紀の未来の続きを妄想しまくるシリーズ第二弾。
今回は出発前後に皆様から頂戴した温かいお言葉の数々を、作品の中に散りばめてみました。

尚、初めてお読みになられる方は、御手数ですがレスNO,130を御一読下さい。
その日の夜を描いた番外編です。先ず最初の出番は、この人から!!!!
...2006/10/06(Fri) 00:30 ID:LcScP4pk    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
「お帰りなさい!」


長年聞き慣れた言葉が、今日もまた仕事帰りの真の耳に心地良く響く。
しかし本日の音色は、彼が長年に渡り聞き慣れたそれではなかった。

「…何だ、お前か……珍しいな」

目の中に入れた所で一切痛みを感じない程に溺愛する娘からの言葉に、彼は照れ隠しをするかの如く、ぶつきらぼうに応える。
ところが、その無愛想極まりない対応に、あの勝気極まりない愛娘が何の反応も示さない。
…何処となく表情が強張っている。よほどの心配事でもあるのだろうか?

「……あのね、お父さん…」
「どうした?珍しく深刻な顔して」
「お母さん………いないの…」
「何っ!?」
「…留守電にね、『食事してから帰る』とは残ってたけど…それ、5時頃だし…」
「……今、何時だ…」
「…………9時…」
「4時間も音沙汰無しか!携帯は?」
「…今日に限って…忘れちゃったみたい…」

何かった時の為に…と真が買い与えた当時は未だ物珍しい携帯電話が、主に置き忘れられたまま、テーブルの上に寂しく放置されている。

「…ねぇ……何か、あったのかなぁ…?」
「…………」

これ以上はない程の不安げな表情で、亜紀は父親を縋る様に見上げていた。


亜紀は思う。人間の心配のバロメーターは、その対象により大きく左右される、と。
例えば今回の出来事が、自分の婚約者に起きた場合なら、

『………また、忘れてるよ…(怒)』
『携帯の意味、わかってるのかなぁ……(呆)』

…だけで済む話題だろう。恐らく。いや、確実に。
だが、あの気丈でしっかりものの母に限って…と思えば、逆に不安が増大するばかりだし、遂には良からぬ想像まで脳裏を駆け巡る。
こんな状況を経験した事がない真の横顔にも、流石に不安が色濃く滲んでいる。

そんな父娘の鼓動を更に高めさせるかの様に、最悪のタイミングで受話器のベルがけたたましく鳴り響いた。

「…おい待て、亜紀!俺が出る!」

…と父が言い始める前に、気丈で機敏な娘は受話器を既に左耳にあてていた。


「(低い声で)……はい…廣瀬ですが…」
『ウワッハッハッハ!!!!』

何故か受話器の向こうからは、得体の知れない多数の嬌声が届けられた後、彼女にとって長年聞き慣れた呑気そうな声が小さく響いた。



『…あ…亜紀?……俺だけど…』



「……さ、サクちゃん?…あっ、ごめん。今ね、すごく取り込んでて…」

後で電話するよ、という約束を律儀に守る律義者に謝りながら、亜紀は会話を打ち切ろうとする。
今日に限っては、流石にそれどころではない。

『ち、違うんだよ!…お義母さん、探してるんでしょ?』
「えっ?何で?…何で知ってるの?」
「おい、それ、朔か?何があったんだ?」

意外なタイミングでの娘婿の登場に、冷静沈着な真も慌てて電話の傍に駆け寄って来た。

『……いや、それがね…俺も、よくわかんないんだけど…』
「…………(ゴクリ)」
『…お義母さん……ウチに、いる…』
「えぇっ!何で?」
『…いや…わかんないんだけど…俺が帰って来たら、もう出来上がってて…』
「……お母さんが!?」
『それに…何でだか、わかんないけど…他にもいるし、色々と…』
「………どーいうことなの、一体!!」
『だ…だから、俺もわかんないんだって…って、うわっ!???』
「…サクちゃん?ねぇ、サクちゃん!?」
「もういい!亜紀、代れ!」

と叫ぶや否や、真は亜紀の掌から受話器をひったくった。

「おい、朔!どういうことだ!ちゃんと説明しろ!」

ところが頼りにならない頼りの娘婿は既に電話口におらず、どこか聞き覚えのある数々の声だけが聞こえてきた。


『…おい、やめろって!説明してるんでしょ、今!』

『……あたしゃ寂しいよ、お前さん。何さ、亜紀ちゃん亜紀ちゃん…ってさ』

『…痒いんだよ、お前らは!大体なぁ、結婚前から廣瀬の尻に敷かれてどうすんだ、お前?』

『そうよ!たまにはアンタも亜紀にガツンと行かないと、一生頭上がんないわよ!』

『お兄ちゃ〜ん!頑張れ〜!!』


(……何が起こってるって言うんだ、一体…)
流石の真も、受話器の向こうで起きている騒動に対応しきれずに固まっていた。
...2006/10/06(Fri) 00:33 ID:LcScP4pk    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:ふうたろう
 祖父がカメラマンさん、お帰りなさい。
 彼の国は政情不安ながら比較的落ち着いているとニュースで聞いておりましたが、さぞ不安でいらっしゃったことでしょう。しかしそんな中、ご無事にお帰りになれて、本当によかったです。


 別スレでは、相変わらずセカチュー談義に花を咲かせていますが、最近では、主人公以上に周囲の人物論が交わされています。これも多分にドラマ制作に当たって、人物設定が主人公以外にもきちんとできていることが、それらの人物への想像を膨らませやすい要因かと思うところです。

 そんな人物たちとともに生きていく朔太郎と亜紀のこれからの展開、楽しみにしております。 
...2006/10/06(Fri) 06:03 ID:VVjyLiZA    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:表参道
>祖父がカメラマン様

お帰りなさーい!!!

日本に戻って来られるみたいで本当に良かったです。

しかも引きで物!!!
やっぱり良いですねー☆

松本家・廣瀬家、出演者全員の顔がすぐに浮かびます。
台詞だけで一人一人の表情が浮かんできて・・・(涙)
嬉し涙です(T_T)

本当に帰ってきた「空港のない・・・」って感じで
(涙)
今は一人PCの前でニヤニヤしております。
サクと亜紀も元気そうで良かったです☆

>殆ど本編と同じくらいの長編になりそうな事が確定したのでwチョビチョビと行かせて頂きます。

素晴らしい!!
長編期待しております!!

今回の番外編を拝見する限りでは、異国の地で大変な環境にも関わらず充電をしっかりされてこられたようなので続編を心より楽しみにしております。

バンザーイ!!
...2006/10/07(Sat) 00:32 ID:AhcQ1.EM    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
>ふうたろう様

数々のお心遣い、誠にありがとうございます。
今回の騒動も折込済っちゃぁ済でしたが、やはり現実的に起ると当事者的には、それなりに怖いものがありましたw

>人物設定が主人公以外にもきちんとできていることが

私としても、ここが心残りと言うかネックでした。
時間が無い中で作り上げたとは言え、やはりその後の朔と亜紀の未来を描くのに、友人3人と恩師を抜かしては片手落ちだろうと…
番外編では(本編で)出番がなかった分、この4人に活躍してもらおうと思ってます。
物凄いダラダラな展開ですがw今後も御覧頂ければ幸いです。


>表参道様

>サクと亜紀も元気そうで良かったです☆

喜んで頂けたみたいで良かったです☆
20日まで日本で決算処理→11月中旬まで向こうで引継…というスケジュールなので、出発前に2〜3作はUPしたいと考えています。
しつこいですが、本当にダラダラな展開になると思いますけど、何卒今回も最後までお付合い下さいm(_ _)m

>台詞だけで一人一人の表情が浮かんできて・・・

最高のお褒めの言葉、感謝感激です。
これに浮かれる事なく、今後も精進して参ります!!
...2006/10/09(Mon) 22:30 ID:MQyTP7XE    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:KAZU
祖父がカメラマン様

ご無沙汰しております。
グーテンベルク様のアナザーワールド本編も終わってしまいちょっとショックでしたが、また祖父がカメラマン様の物語が読めるのは嬉しさ100倍です。(^^♪
お体をお大事に頑張って下さい!!
...2006/10/12(Thu) 12:43 ID:CGXURXNc    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
>KAZU様

こちらこそ御無沙汰しております!!
アナザーワールドを包んだ爽やかな数々感動には遠く及ばない愚作ですが、ひたすら朔と亜紀の幸せだけを願い、今後も執筆して参ります。
今回も御愛読頂ければ光栄ですm(_ _)m

半期決算も終り来週より一旦任地に戻ります。
期間は短いですが、何より久々のひとり暮しができる事が楽(以下略)
本当はもう1〜2作UPしたかったのですが、力量不足により序盤の1作だけでした、スイマセン。
次回は11月中旬以降の再開となります。引続き宜しくお願い申し上げますm(_ _)m

続編です。真の心情と亜紀への愛情が少しでも表現できてればいいなぁ……御覧下さい。
...2006/10/14(Sat) 23:30 ID:lz3PipGo    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
『…よーし、わかった。お前が言えないなら、俺が廣瀬にガツンと言ってやるよ!!』

『だから、やめろって!やめてくれよ!』

『いいぞ〜、ボウズ!(笑)』
『ガツンといけ、ガツンと!(笑)』
『お兄ちゃんにお手本見せてあげて!(笑)』

受話器の向こうからは、勢い込む者1名、慌てて止めに入る者1名、冷やかし3名の声が順に届く。

『いいか!廣瀬!!』

ボウズ、と呼ばれる青年の威勢の良い声が『廣瀬』の耳元に響く。彼は決して間違えてはいない。
ただ彼の誤算は、同じ廣瀬は廣瀬でも、年齢も容姿も、何より立場が違う人間に喧嘩を吹っかけている事なのだが。


『俺はなぁ、お前が朔を選んだ時に固く心に誓ったんだよ!お前なんかより絶対にいい女を見つけてやるってな!』

『(全員で)イェーイ!!!』

『イェーイじゃねぇだろ、イェーイじゃ!』

『だからな!俺は、お前のお母さんを嫁にもらう!』

『(更に大きな声で)イェーイ!!!』

『何をわけのわかんねぇ事、いってんだよ!おい!』

『悔しけりゃなぁ、何時でも取り返しに来い!受けて立ってやる!』

『ボウズ!かっこいい!』 『お前、男だ!男だよ!』

『いい加減にしろよ!スケちゃんも智世も!』

各自が発言する度に朔がつっこむ…というパターンが何度か繰り返された後、その喧騒の背後から、新たな女性の声が2つ出現する。

『……うれしい!中川君、もらってくれるの?私のこと!』

『…松本ぉ〜〜!!ビール切れたわよ、ビール!!』


(…あぁ、なるほどね。あいつらの他に谷田部先生までいるのか。大層なもんだな…ハハ…)


真がその状況を認識し得たのは、朔の悲鳴と共に電話が切れてから数十秒経過した後であった。


「………お父さん?」

「…ダメだな、もう。ありゃ、単なる酔っ払いだ」

「……どうしよっか?」

「ほっとけ。後は朔がどうにかするだろ…」

不機嫌な態度を表す反面、心底では妻に対し
(…まぁ、あいつもたまには羽目のひとつやふたつ、外してもな…)
と容認してる部分もあるのだが、彼は決してその手の感情を表面に出さない。
そして娘も、その父の思いを知ってか知らずか、憮然とした表情で佇んでいる。

「…何だ、不満か?」

「うん……お父さん、あれ見て…」

亜紀はリビングのカウンターに飾られている写真立てを指差す。
そこには幼き日の自分と婚約者の笑顔、その周りには両家の人間と恩師・友人の笑顔がデコレートされている。
この笑顔が囲んで来てくれたから、ここまで頑張ってこれた。彼女にとって、宝物の様な一枚だ。

「今の話だと…あの中で、その場にいないのって私とお父さんだけじゃない?」

「まぁ…そういうことになるな…」

「…何だか…納得、いかないんだけど…」

彼女は恨めしそうに自らの宝物を見やる。
この数時間前、同じ写真を巡って松本写真館にてある種の感動的なやり取りがあった事なぞ、勿論彼女は知る由もない。

「……不公平だよ、お母さんばっかり楽しんで…」

「まぁ、そう言うな…それより、このあと…」

「(途中で遮り)お父さん!!」

亜紀が急にニヤニヤと笑みを浮べる。何かを思いついた模様だ。

「私達もさぁ、お邪魔しちゃおうよ、今から!」

「何っ?」

「だってズルイよ、どう考えても!どうしてお父さんと私だけ仲間外れにされなきゃいけないの?」

「…別に、そういうわけではないだろ…」

「私が運転するからさ。どうせ、お夕飯も用意してないんだし(笑) 今から御馳走になっちゃおうよ!ね?」

「…お、おいっ…」

膨れっ面を装いながらも、自分のアイデアに楽しみを禁じ得ない亜紀は言い終えるや否や、脱兎の如く部屋へと駆け上がる。
その娘の素早い決断力と行動力に、父は苦笑いを浮べる以外に術が無かった。


(…まぁ、ウチでは大人数で食卓囲んで…って言うのは殆どなかったしな…)

亜紀が昔から松本家の食卓に出入してるのも、朔の家族と仲が良い…という以外に、きっとそんな側面もあるのだろう。

(…嫁ぐ前に…父娘ふたりそろって…も悪くはないが…)

ネクタイを外し、ラフな格好に着替えながら、一瞬そんな感慨にふけった。
しかし。


(…でも…あいつが喜んでるなら…それはそれで、な…)

我ながら始末に終えない親馬鹿だ…と、ひとり、苦笑した。
...2006/10/14(Sat) 23:34 ID:lz3PipGo    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:一読者
皆さん、お久しぶりです!!

>祖父がカメラマン様

お帰りなさい!まずはご無事で何よりでした。
実は会社で色々とあったせいで、この2〜3ヶ月まったく掲示板を見れませんでした。留守を守る、とか偉そうなことを言ったくせにスイマセン。
セカチューに全然関係ない話なので詳しくは語りませんが、お陰で結婚が延期となりました(泣笑い)
別にもめたわけじゃなく、相手も社内なのでお互いそれどころじゃなかった・・と言った感じです。
と言っても11月の予定が1月に延びただけです。祖父がカメラマンさん曰く「安らぎのない世界」への参加が遅れて嬉しいです(笑)

待望の新作、じっくり拝読させて頂きました。幸せいっぱいの朔と亜紀に再び会えて、最高に感激してます。
非常に滅入っていたので、私も明るい話が読みたいところでした。この先の展開、楽しみにしています!
それからウエットな方も是非お願いします(笑)思い切り泣かせて下さい。いつも通り、勝手に期待して勝手にお待ちしております。

>表参道様

うちの見習いも驚くというより呆れてました。「何で結婚のタイミングまで一緒なの?」と。
本気で前世で何か縁があったとしか思えなくなってきました。
とりあえず「安らぎのない世界」への参入、おめでとうございます(爆)
お体の方、軽症であることを心よりお祈りしております。お互い、これからもロマンチックに頑張りましょう(笑)!!
...2006/10/25(Wed) 21:30 ID:RLoLg86o    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:空港のない物語のファン
 祖父がカメラマン様の海外赴任中、度重なるアマゾン川シリーズのイタズラ投稿で埋もれかけていましたので、上げておきます。
...2006/11/29(Wed) 22:28 ID:IiRxmA9U    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:表参道
>祖父がカメラマン様

ご無沙汰しております。

お元気でしょうか?

私の方は昨年末から体調を崩したり、仕事に追われてたりとサイトはチェックしてたんですが書き込みまで至らずとても久しぶりになってしまいました。

最近やっと落ち着いてゆっくりできる時間も増えたので祖父がカメラマンさんの「空港のない・・・」
の二人の物語が恋しくて・・・(涙)

現在はドラマの朔太郎のようにわざと忙しくして仕事で寂しさをまぎらわせています。

お忙しいとは思いますが続編期待してますので
落ち着かれましたら執筆お待ちしてます。

>一読者様

ご無沙汰してます。

安らぎのない世界には突入されましたか??(笑)

私の方は相手の仕事や自分の仕事など諸事情があり
まして今年の後半くらいになりそうな気配です(汗)

よろしければ先輩の近況を聞かせて下さい(笑)

ロマンチックな近況期待してます(笑)
...2007/02/18(Sun) 23:40 ID:4x7nF/ig    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:ぶんじゃく

久しぶりに登場した分際であえて一言
なんだかものすごく楽しそうな展開の途中で・・
う〜〜ん続きが楽しみです。

最近は否応なしにリアリストナぶんじゃくでした。
...2007/03/09(Fri) 01:23 ID:yA1MZHfc    

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今ここは萌えショータイム中
...2007/04/21(Sat) 18:13 ID:WBKAxPjk    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:邪魔だ
うざい
...2007/04/22(Sun) 10:37 ID:e4ecN7hM    

             恋愛の泉  Name:喜枝
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...2007/04/23(Mon) 18:21 ID:OLx3zGvs    

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...2007/04/24(Tue) 17:59 ID:qZ3DKsOs    

             愛バカ日誌  Name:山口
貴方のセフレゲット活動応援します
...2007/04/26(Thu) 19:08 ID:pHUkjjy2    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:いちファン
名作の過去スレ行き、断固阻止!!!
...2007/04/28(Sat) 02:17 ID:eNUYQjJo    

             不倫大作戦  Name:悦枝
地域別で相手を探せるから不倫OK!
...2007/05/01(Tue) 14:57 ID:PUTIUq1c    

             10万人のH友探し  Name:山口
おもに人妻が多く集まっております
...2007/05/03(Thu) 19:09 ID:JN3POKyI    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:良識ある読者
無為無策無責任の管理人へ
187から197まで一括削除希望
...2007/07/22(Sun) 13:56 ID:2s9lVCqE    

             御礼に代えて  Name:祖父がカメラマン
今から遡る事、20年前の10月23日。

ふたりが、ウルルへの旅立ちを決行した日。
亜紀が『空港』で、遂に力尽きてしまった日。
朔が『空港』で、たすけてください…と叫んだ日。
そして、このスレ的には、ふたりが『空港』に行かなかった日。

セカチューを、そして朔と亜紀を愛する全ての人間にとって、絶対に忘れ得ない日 − それが、10月23日。
そんな、節目の日に。そして、朔の37回目の誕生日の前日に。


不肖、祖父がカメラマン。約1年ぶりに戻って参りました。


御無沙汰しております。皆様、お変わりなくお過ごしでしょうか?
毎度の事ながら、またも皆様との約束を守らず、長期に渡り消息を絶った不義理の数々、心より謝罪申し上げます。

私の方は……まぁ、本当に、色々ありましたw
その色々については割愛させて頂きますが、自分にとっていちばん大切なもの・大切なひと、それは何なのか?
そんなことを痛感させられた一年間でした。朔の気持ちが少しだけ…ほんの少しだけ、わかった気がしています。
…とは言っても、別に女房は生きてますし、病気もしてませんw まぎらわしくてスイマセンm(_ _)m
今、ふたりで、それなりに幸せに生きてます。それだけで十分です。そう、心から思えるようになりました。

まぁ私のつまんない近況報告は、この辺りにします。お目汚し致しましたm(_ _)m
今日はこれから10話と最終回のDVDを女房と見て、思いっきり瞼を晴らす予定ですw


そして、今更ですが。再開させて頂きます。
生きること・慈しむこと・頑張ること。その素晴らしさを誰よりも示してくれた朔と亜紀に、何か恩返しがしたくなったので。
で、私に出来ることは、下手な文章を書くしかないかな、と。少しでも、ふたりを笑顔にさせてあげることなのかな、と。
そんなことを、考えました。だから、また、書きます。少なくとも、書き掛けの分だけは終らせますw

また、近日中に出戻って参ります。先ずは御挨拶まで。そして、再び…宜しくお願い申し上げますm(_ _)m
...2007/10/23(Tue) 22:21 ID:TYlzbqZU    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:ぶんじゃく

オォォ〜お久しぶりです^^
一年振りの帰国お疲れ様でした。

再開楽しみにしています、書きかけの分だけ
なんていわずこれかもずっと続けて下さいね。

私は明日リアリストと共に松崎に行くのですが
なんだか不思議なタイミングですね。

こちらこそこれからも宜しくお願いします。
...2007/10/24(Wed) 01:31 ID:.17hGm06    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:表参道
お帰りなさいませご主人様!!
じゃなくて(笑)
祖父がカメラマンさんお帰りなさい!!

本当に首を長くして復活をお待ちしてました(涙)

この一年、いろいろな事があったようですが、
とにかく帰ってきて頂いて、しかもこの場所を忘れずにいて下さった事に感激です!!

お忙しい中の執筆大変だとは思いますが楽しみにお待ちしております。

頑張って下さい!!
...2007/10/24(Wed) 01:48 ID:Xzg2Act2    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:双子のパパさん
 祖父がカメラマン様、はじめまして、そして、おかえりなさい。海外勤務お疲れ様でした。
改めて、初めから祖父がカメラマン様の物語を読ませて頂きました。
 亜紀と朔、家族や仲間の絆を強く感じました。私事ですが、10月の初めに松崎に行って参りました。そのとき見た景色と、祖父がカメラマン様の物語が重なりとても感動いたしました。
 これからも楽しみに待たせて頂きますので、よろしくお願いいたします。
...2007/10/24(Wed) 13:47 ID:LyY4TgMc    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
>ぶんじゃく様

>オォォ〜お久しぶりです^^

御無沙汰しておりましたm(_ _)m

>書きかけの分だけなんていわずこれからもずっと続けて下さいね

頑張りますっ!!改めて宜しくお願い致します。
……私も『春夏秋冬』の続きも楽しみにしておりますw

>明日リアリストと共に松崎に行くのですが

タイミングと言うのは重なるもんですね、不思議と。
また彼女さんの『リアリストぶり』を拝聴したいものですw


>表参道様

>本当に首を長くして復活をお待ちしてました(涙)

感謝の言葉もございませんm(_ _)m 本当にありがとうございます。
もう、あんまり感動のシーンとかはないと思いますが、その分『笑顔』を増やしたい…と考えております。
引続き、お楽しみ頂ければ幸いです。今後も宜しくお願い致しますm(_ _)m

>お帰りなさいませご主人様!!

………w なんか流行ってるみたいですね、それw


>双子のパパさん

はじめまして…だったんですねw 意外な感じですが

>改めて、初めから祖父がカメラマン様の物語を読ませて頂きました

ありがとうございますm(_ _)m …さぞかし大変だったでしょうw
私も自分が何処まで書いたのか、どんなストーリーだったのか、うろ覚えだったので先程まで読み返していましたw

>これからも楽しみに待たせて頂きますので、よろしくお願いいたします

こちらこそ、宜しくお願い申し上げますm(_ _)m
エラくダラダラな展開になりますが、最後までお付合い下されば光栄です。


てな訳で心機一転、来週以降に続編をUPします!!…したいなぁ…できるかなぁ……
とにかく『完走』を目標に頑張ります。皆様、またお付合いの程、重ねてお願い申し上げます。
...2007/10/26(Fri) 03:00 ID:pfmv0VNo    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:ぶんじゃく

松崎は何度行っても良い所だと思いますよ(私は)
リアリストは助手席で威張って映画のDVDを見てましたね^^;(セカチューのDVD観たかったのに)

完走めざしてがんばって下さい。
...2007/10/29(Mon) 23:17 ID:r71SCbb6    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
>ぶんじゃく様

>完走めざしてがんばって下さい。

頑張ります。ただ恐らく、途中でめげそうな気が大いにしますので…その時は『がんばれピッ♪』と声をお掛け下さいw


では、改めて再開致します。
が、その前に…あまりにも×2、中断期間が長かったのでm(_ _)m簡単にストーリーのおさらいをさせて頂きます。

初めて御覧になられる方は、御足労ですがレスNO,>>129-130を御一読下さい。
とうとう結婚式を間近に備え、式場の帰り道に『今後の呼び方』について相談し合う朔と亜紀(NO,129)と、同時刻に松本写真館で『幼い朔と亜紀の結婚写真』について語り合う松本夫妻&綾子(NO,130)。
その後、何故か綾子が(松本家に)居残った上、これまた何故か谷田部先生&朔の幼馴染3人も合流し大宴会をやっており、唖然とする真&憮然としながら父を引き連れ宴会に合流しようとする亜紀(NO,176%182)…という展開です。
当面は、その『何故』について説明して行く流れです。なので暫くの間、亜紀は登場しませんm(_ _)m もう少々お待ち下さいm(_ _)m

あと再開に当り、幾つか設定の追加と言い訳を少々。

・時期をはっきり決めていなかった結婚式の時期は、亜紀退院から約4年後、つまり亜紀発病後から数えて『9年目』と致しました。 その設定理由については、おいおい朔の口からでも語ってもらおう…と思ってます。
 あと詳しくは触れてませんが、退院後の亜紀は大学に進学した…という設定ですので、卒業後即入籍という感じで捉えて下さい。 この当りは最早『アナザーストーリー』ではなく『アナザーワールド』の流れになってますが…典型的なO型人間のテキトーさという事で何卒お目溢し下さいm(_ _)m
 ですが、智世は目出度くスケちゃんの嫁さんになっています。その他のキャラについては追々。しかし…完全なイイとこ取りですな、我ながらm(_ _)m

・朔と亜紀以外の登場人物についてですが、やはり出て来たからには…という事で、全員にそれなりの見せ場を用意したいなぁ…と考えてます。
 なので……やっぱり長いです、おそらく本編以上に。ダラダラ感は否めませんが、どうしても『彼らの9年後』も描きたかったので。
 本編とは大分異なった雰囲気になってますし、ファンの方にとっては『こんなの○○と違う!!』という表現も幾つか出てくるかもしれませんが、あくまでも私なりに捉えた9年後を描いてみたい…と思っています。


先長く、見通し暗し…という感じですが、何卒お付合い下さいます様、皆々様には改めてお願い申し上げますm(_ _)m それでは、手始めに2編投稿します!!
...2007/11/01(Thu) 23:03 ID:0QFht.Dg    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
一方。

「……だからさ、説明してくれよ。何なんだよ、いきなり…」
「相変らず野暮だねぇ、お前さんは。ふたり(朔と亜紀)の結婚祝いに決まってるじゃないか」
「…肝心の…新婦、いないけど…」
「細けぇこと言ってんじゃねぇよ、この年がら年中色ボケ魔人が」
「そうよ!大体私達だって、あんたが『来る』なんて知らなかったんだからね!」
「…く、来るって……ここ、俺ん家…」

智世のあまりにも…な発言に、朔は凍りつく。しかし、彼女達の言い分もわかる。
住み慣れたアパートを引き払い、亜紀と新居に入るまでの間、実家と病院の仮眠室を頻繁に使い分ける朔の多忙な日常は、家族・関係者の誰しもが把握し難いものとなっていた。
唯一、定期報告を受けている(=義務付けている)亜紀以外は。

「……松本ぉーーー!!ビール、まだぁーーー!?」
「………はいはい、今いきます!今、行きますよ!!」

一向に埒の明かない幼馴染3名との会話を途中で打ち切ると、缶ビールの束を抱え朔は居間へと戻る。
が、彼を呼び返した恩師は、この数十秒間の手持ち無沙汰感に、すっかりご立腹らしい。

「……お待たせしました…」
「遅過ぎっ!ホントにあんたって、病院(で見掛ける時)以外は別人ねぇ…」
「…そんなに、違いますか?俺…」
「(病院で)先生してる時は、少しはしっかりしてる様にも見えるけど…それ以外は相変らずボーッとしてるわよね」
「………すいません…(不服そうに)」
「…最近、すっかりガム太郎に戻っちゃいましてねぇ。迎える側としては心配でなりませんよ、あたしゃ」
「…………(…お袋……余計なこと、言うなよ…)」
「あら、そうなの?じゃぁ結婚するの、考え直させないとなぁ…」
「……おっ、お義母さん?」

戻ったら戻ったで、新郎は息つく間もなく壮年女性3名のサンドバックとされる。
合流後20分以上経過しても、彼は今日の催しにおいて、存在感も発言権も得ることが出来ずにいた。


事の発端は、偶然なものである。

幼い新郎新婦の記念写真が取り外された跡を、綾子が感慨深く眺めていると、その様子に気付いた富子が、お茶菓子を持って再び現れた。
基本的に、このふたりは、昔からウマが合う。
思い出話に世間話…四方山話に花が咲き、気がつけば時計の針は間もなく5時を指そうとしていた。

「…あら、大変!さすがに戻って、夕飯の支度しないと…」
「……あの、奥さん…もし、よかったら…なんですけど」

富子から綾子へ、『ある』提案が示される。

「…ウチで食べてきません?夕飯」
「えぇっ?」
「いいじゃないですか。お互い忙しくて、今まで中々こんな機会もなかったし。」
「……いや、でも…」

…と遠慮する素振を見せながらも、実は綾子にとって、かなり魅力的な提案である。
娘から何度となく聞かされてきた『松本家の食卓』のにぎやかさは、彼女にとって単純に興味があったし、また亜紀の入院当初 − あの外泊許可の晩に − 彼女の帰宅を待ち続けていた『すき焼き』の恨みも果してやらねばならない(?)。
そんなこんなで、綾子にとっては、以前からお邪魔してみたい場ではあった。

ひとつ懸念があるとすれば、夫と娘の食事の支度であったが、
(…子供じゃないんだから…出前取るか、亜紀が作ればいいわよね…)という自問自答で、あっさり解決。
それに。あれほど溺愛している娘との別離を、あの夫が寂しく思っていない理由(わけ)がなくて。
(……たまには…父と娘、水入らず…もいいでしょ…)
邪魔者は、とっとと退散しましょ…と心中で茶目っ気たっぷりに呟く。
だが彼女の誤算は、せっかく父との食卓をセッティングしてやったにも関わらず、娘がその思惑を大きく越え、父親を引き連れ松本家に接近中…な事なのだが。無論、今の綾子に知る術はない。

「…じゃぁ、お言葉に…甘えちゃってもいいですか(笑)」
「もちろん!大歓迎ですよ!ねぇ、あんた?」
「……朔にも、どうにか連絡つけてみますか。『珍しいお客さんが来てるから、たまにはウチで飯食え』って…」
「是非!お願いします」
「…奥さん、そんなに珍しいもんじゃないでしょ?あれ(=朔)は」
「いや、実家での朔君が見たいんですよ。ウチ(=廣瀬家)では、借りてきた猫みたい…あっ」
「…………(苦笑)」
「……相変らずですか、あいつは(苦笑)」
「…すいません(苦笑)…私と亜紀と、だけの時は普通なんですけど…(笑)」

亜紀と綾子とは和気藹々としながら、真が帰宅した途端フリーズする息子の姿を想像し、両親は同時に苦笑した。

「…ただ…連絡、取るって言ってもなぁ…一体、何処をうろついてんだか…」
「………相変らず忙しそうですもんねぇ、朔君…」
「…忙しいのか、だらしないだけなのか…私は後者だと思いますけどねぇ」
「………奥さん(苦笑)」
「まぁ、風来坊みたいなもんですから…あいつの居場所を知ってるのは、亜紀……亜紀『ちゃん』くらいなもんでしょう」
「……あんた(笑)」
「……松本さん(笑)」
「………(苦笑)…どうも、まだ、照れくさくって…ね」
「しょうがないねぇ、このひとは。まぁ、いいや。店閉めて、買い物に行って来るよ」

と、富子が店仕舞いの準備に取り掛かろうとした瞬間、威勢の良い…否、良すぎる声が店舗内に響き渡る。

「こんにちはーーっ!(綾子を見て)…あれ、おばさん!? なんで、ここにいるの!?」
「……まーた、騒がしいのが来ちゃったねぇ」

富子が苦笑交じりに、その快活な女性を見て呟く。
そこには、先日の町内会の慰安旅行の写真を受取に来た『大木家の嫁』がいた。


「…うんっ!私も入る!私も、ここで御飯、食べてく!」
「……私も、って……あんたねぇ…」

事情を聞くや否や、食事会への参加を申し出る智世に対し、富子は思わず呆然とする。

「…あんただって一応は主婦だろ? 旦那の食事の支度は、どーすんだい!?」
「…?……いいじゃん、ウチの旦那も一緒に呼べば…」
「…………あんたねぇ…(溜息)」
「おかずの用意は全部、大木家がします!!(キッパリ)…いいでしょ、おばさん?」
「(途方に暮れた表情で)……どうします、奥さん?」
「どうするも、こうするも(笑) せっかくですもの、私としては智世ちゃん達がいてくれた方が…」
「そーでしょ!さすがは『亜紀の』!おばさん!!」
「………ちょっと、いいかい…あんた、何で『亜紀の』を強調するんだい?」
「…い、いや…気のせいだよ……ね、ねぇ…『朔の』おじさん?」
「…まぁ、何だっていいよ(苦笑) とっとと旦那に電話しな。まぁ来るかどうかは、知らねぇが…」

「来るに決まってんじゃん <即答T>」
「100%来るわよ、あいつは <即答U>」
「…来ると、思いますよ(笑) <即答V>」
「……………(苦笑)」

オッズ1.0倍の意味の無い予想をした後、智世が自宅へと電話する。

「もしもし、私!…今?…うん、朔ん家…」
「……あいつの家じゃねぇ…俺の家だ、ここは」
「………えぇ、今『松本写真館』様にお邪魔してる最中ですのよ…」
「…………バカだねぇ、あんたも(苦笑)」
「…もしもし…うん、それでね!来たら驚いてさぁ…」

松本夫妻のツッコミを軽く捌きながら、かくかくしかじか…を簡単に伝え、智世は電話を切る。

「来るって」
「(3人で同時に)………やっぱり(笑)」
「うん。酒も魚も、ありったけ揃えて来るって」
「…………(笑)」
「だけど…1ヶ所、寄ってから行く、って言ってた」
「…どこ、寄って来るって?」
「……禅海寺、『顕良和尚も連れて参ります!!』だって(笑)」
「……まーた、酒癖の悪いのが一匹増えんのかい?やれやれ…」

と言う割には、満更でもない表情で富子が呟いた。


「…いや、お断りし申す。拙僧、御仏に仕える身であるからにして…」
「…そうか…じゃぁ、来週の漁労(組合)の合コン、別の奴を探さねぇとな…」
「……行く。両方、行く。すぐ支度するから、待ってて」
「…………俗だねぇ、お前さんは…」

龍之介、顕良和尚を楽勝でクリア。
そうして悪友2名は、大木家からの持ち出し品が満載のミニバンに同乗し、更なる買出しにスーパーへと向う。
以下、そのスーパー内での会話。

「でもよう…買い過ぎじゃねぇか、これ?」
「いいよ、余ったらウチで食うから」
「!!…ま、まぁ、金はお前持ちだから、いいけどよ…」
「…経費で、落とす(キッパリ)」
「はぁ?」
「……似たようなこと、やってんだろ?お前の所も…」
「…まぁ、な…(ニヤリ)」
「……だろ?(ニヤリ)」

次期事業主2名の嫌らしい会話が続く。この当りは、流石に10年という年月を感じさせる。

「……だけど長いよなぁ…お前達との、腐れ縁も…」
「…『縁』とか使うところがニクイね、お坊さんは」
「…茶化すなよ(苦笑) こう見えて、結構、感慨深いもんがあんだから…」
「……あぁ、そうだな…」

柄にも無く、しんみりとした雰囲気に浸る2名。
そして話題は、その『縁』を取り持って来た、あるカップルの事に移行する。

「…朔と廣瀬の、頑張りがあってこそ…かもな…」
「だろうな…あの時、亜紀ちゃんが亡くなってたら…何となく皆が『とおえん』になってたかもな…」
「……それはな…『そえん(疎遠)』って読むんだよ…」
「…そうなの?」
「…………まっ、そんなことはともかく…いよいよか、あいつらも…」
「…とうとう、ゴールインだもんな、もうすぐ…ホント、頑張ったよ…」
「……(ボソッと)一発逆転とか、ねぇかな…」
「ねぇよ、絶対」

顕良和尚(以下ボウス)のささやかな願望を、龍之介は非情にも一刀両断で切り捨てた。
...2007/11/01(Thu) 23:08 ID:0QFht.Dg    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
「!!…そ、そこまで、言い切らなくてもいいだろっ、お前…」
「ねぇよ。あり得ねぇよ。て言うかお前、ま〜だ諦めてねぇの?亜紀ちゃんを…」
「いや、それはねぇよ。当の昔に諦めてっけどさ……でも…」
「…でも、なんだよ…」
「…やっぱり、廣瀬って…それこそ『あり得ない』くらい、いい女だな…って思うんだよ、最近…」
「………いい女って言うか…まぁ、すごい娘だよな」
「いねぇぞ、普通。あんなの。容姿端麗で、頑張り屋で、気さくで、明るくて…って…」
「……それは…そうだな、確かに」
「だろ?…で、いざ、ゴールインってなると…朔にはもったいねぇ気がしてならんのよ、俺には」
「…(苦笑)…もったいなぇ、って言うけどさ…朔ちゃんだって、十分すげーぞ。
 高3の時のテストは殆ど県内トップだし、ストレートで医大受かるし…」
「いーや、認めねぇ。あいつが東大に受かろうが、ノーベル賞を獲ろうが、朔は朔なんだよ!」
「…まぁ……そういうとこ、あるよな。朔ちゃんって(笑)」

ボウズの強い口調に、龍之介は笑いながら同意する。
(…普通に考えりゃ…スーパーエリートなんだけどな、あいつは…)
そこを微塵も感じさせない所が、朔の、朔らしさだと思ったから。そして
(…結局、こいつが一番の仲間思いなんだな…昔も、今も…)
口調や表現こそ乱暴だが、ボウズの言わんとする所は、年月や地位が変わって行く中で『何も変わらず』そのままであり続ける、親友への最高の褒め言葉だ…と感じられたから。
(…ホントいい奴だよな、ボウズ…昔も、今も……モテないけど…)

「ホント、いないぜ…廣瀬みたいな奴。俺も数多くの女性と、つき合って来たけど…」
「………ねぇ、いつ?どこで?誰が?何を?どのように?」
「…お前は中学の英語の教師かよ!俺だって、色々あるんだよ!」
「………いくらで?」
「その発想から離れろ、って言ってんだよ!どういう意味だ、いくらで?って!」
「…いや……プロの方、かな?って…」
「プロじゃねぇよ!俺は坊主だぞ!…お前の知らない所で、俺だってなぁ…」
「まぁまぁ、お前さんもさ…」

散々からかい尽くした後、龍之介が話題を締めようと、話題を転換する。

「…親父さんに反発してないで。早く見合いして、身を固めろよ。そろそろ、いいだろ?」
「……いやだね。親父が持ってくる相手なんて、堅苦しいのばっかりだぜ!?」
「お前さぁ……何か勘違いしてねぇか?」
「えっ?
「亜紀ちゃんがいい、あんな女は他にいないって言うけど…あれは多分、朔ちゃんとつき合ってるから、そうなんだよ」
「…どういう…意味だよ…」
「…上手く言えねぇけど…朔ちゃんが相手だから、亜紀ちゃんもノビノビしてられんじゃねーの?」
「…………」
「そういう…『相性』みたいなのがあるんだよ、男と女には。あのふたりは、それにピッタリ嵌っただけの話でさ…」
「…………」
「…お前さんにも、絶対いるよ!! そういう、ピタッと嵌る運命のひとが…」
「…………」
「だから…そういう女性と巡り合うには、まずは見合いを…」
「…お前の所は……どうなんだよ…」

不服そうに押し黙っていたボウズが、ぼそっと呟く。

「……俺の所、って?」
「…とぼけんな。お前と智世のことだ…」
「あぁ、そういうことね…」

恋愛経験豊富で、結婚生活も順調。自分の最も得手なジャンルを意気揚々と、大木『先生』が語り続ける。

「フツーに幸せだよ、ウチは。上手くやってる方なんじゃねぇの?色んな意味で、つき合い長いし…」
「…………ノロケやがって…」
「…そうだ!! お前さん…ウチ見に来いよ、後学のために。 相手が亜紀ちゃんじゃなく、ウチの(=智世)なら、嫉妬とかもないだろ?(笑)」
「…じゃぁ、満足してるんだな……智世との生活に…」
「あぁ、満足してますよ〜。十分に」
「…………若い、農大生(ポツリ)…」
「………………えっ?…」
「…図星かよ…」
「………………」


攻守逆転。後手:中川顕良(独身)


「…見ちゃったんだよ、偶然。早朝の町内清掃の時にな…」
「………………」
「随分、若い娘だったな…隣に乗ってたのは」
「……あっ、あれね…あのことね!ば、バカだなぁ…お前…」
「………………」
「…とっ、東京から実地研修で来てた娘だろ?そ、その案内で…乗せてただけ…」
「朝、6時前にか」
「!!……べ、勉強熱心って言うの?(研修は)8時からだけど、そ。その前に、って…」
「(意外にあっさり)あぁ、そういうことか」
「そっ!そーなんだよ!それで、宿泊先に迎えに行った帰り…」
「…最近の女子大生の宿泊先は、モーテル街の方角にあるのか?」
「!!!!」
「まったく……何やってんだよ、お前は!?」
「………………」
「そんなんで、よく俺に偉そうに説教できるな!?あぁ?」
「………おっしゃる通りです…」
「まぁ智世も…ある程度は承知の上で、一緒になったんだろうけど…」
「………………」
「俺がとやかく言ってもしょうがねーけど…いい加減にしとけよ、お前」
「………はい…」

「まぁ……黙っといてやるよ」
「!!……あ、ありがとう、和尚!」
「その代わり…今度の合コンは、俺優先で…な…(ニヤリ)」
「あ、当たり前じゃないっすか!和尚!」
「特に……あの娘、来るんだろ?」
「……あの娘、って?」
「とぼけんなよ〜。ほら、俺が前に好みだって言った…」
「(何故か浮かない表情で)……あ、あぁ…」
「…クミちゃん、だっけ?組合の会計やってる。ああいう派手目なタイプ、好きなんだよ」
「………………」
「ん?どうした、スケ?」
「………その娘は……ダメだ…」
「はぁ?」
「……あの娘だけは…ダメ…」
「まっ、まさか!お前!」
「………………」

少しだけ偲びなさそうに微笑む幼馴染の横顔が、ボウズには悪魔に見えた。

「………(智世に)言う…」
「!!ち、違うよ!まだ、そういう関係じゃねぇって!誤解すんなよ〜、もう…」
「……………まだ?…」
「あっ…………………」
「………言う…」
「ちょ!ちょっと…」
「洗いざらい、智世に全部言ってやる!」
「ま、待てよ、ボウズ!ご、誤解だから…」
「ふざけんな!お前、どれだけ智世を泣かせりゃ気が済むんだ!それでも男かよ!」
「…お、男と女の事はなぁ!お前みたいに恋愛経験の『ない』奴には、わかんねーんだよ!」
「ない、って言うな!……少ない、って言えよ…」
「どっちも似た様なもんだろ!この、生臭○○○○坊主が!」
「…い、言いやがったな!この、見境ナシの腐れ○○○野郎が!」
「何だと、この野郎!」
「そっちこそ、何だよ!」

とても20代半ばの男性とは思えない下品な罵り合いが、店内に響き渡る。
この当りは、10年の年月が流れようが、人間の本質は変らない…という事を如実に表している。

そして周囲も、シラっとした冷たい視線で彼らを見ている。
その冷たい視線の中から、ポツリと、冷たい声がひとつ、彼らの耳に届いた。


「………何やってんの…あんた達…」
「!!!…せっ…先生!?」


谷田部敏美、ここで登場。ちなみに未だ、絶賛独身中。
...2007/11/01(Thu) 23:12 ID:0QFht.Dg    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:双子のパパさん
こんにちは 祖父がカメラマン様

 物語読ませて頂きました。何年たっても変わらない情景が浮かんできます。
 亜紀が病に倒れたこと、生還したことで、朔と亜紀はもちろん、家族や仲間が強い絆で結ばれていると感じました。
 亜紀と真が、この場にどうやって登場となるのか楽しみであります。

>先長く、見通し暗し…という感じですが、

いつまでも楽しみにさせて頂きますので、無理なさらず、マイペースで執筆なさってください。
...2007/11/02(Fri) 12:13 ID:9YM4S1Nk    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:表参道
早速拝見しました!!

やっぱり良いですねー!!

スケちゃんとボウズの会話も本人達の顔が目に浮かびます☆

>先長く・・・

是非、「before A.S〜『空港』のない・・・」を
「北の国から」のような息の長い作品にして頂ける事を期待してます!!

スケちゃんとボウズ、昔と変わってなくて安心しました(^_^)
...2007/11/03(Sat) 01:44 ID:jLNQf/OM    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:ふうたろう
 祖父がカメラマンさん、お久しぶりです。
 物語の再開、ありがとうございます。再開された物語を、楽しく読ませていただきました。


 「朔太郎がいるからこそ、亜紀が生き生きと亜紀らしくいられる」というのは、全くそのとおりだと思います。かつ、亜紀の存在が朔太郎の潜在能力を引き出し、医師となっていったように思えます。
 ですから、朔太郎が一方的に支える関係でなく、互いに支え合う、それが朔太郎と亜紀との関係なんでしょうね。


 「世界の中心で、愛をさけぶ」に関する話題が乏しくなって、寂しく感じていた近頃でした。しかし、この物語がその寂しさを解消してくれそうな予感です。

 祖父がカメラマンさん、これからの展開をとても楽しみにしております。
...2007/11/03(Sat) 05:44 ID:lACs3Kg.    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:にわかマニア
 祖父がカメラマンさん。お帰りなさい。
 物語の再開を大変嬉しく思います。
 やはり2人は「サクがいるから亜紀が輝いている」という相性的にピッタリ嵌った運命のカップルなのでしょうね。
 それにしても,他のアナザーものにも共通して言えることですが,スケちゃんのあのキャラには思わず笑ってしまいますね。どこか憎めない存在というのか・・・
...2007/11/03(Sat) 07:33 ID:LevMV./.    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
…皆様の御愛読とコメントの数々、本当にありがとうございます。
こんな義理を欠き続けて来た男の出戻りを温かく迎えて頂き、感謝の言葉しかございませんm(_ _)m
これからもダラダラ続けて参りますので、引き続き御愛顧の程、何卒m(_ _)m致します。


>双子のパパさん様

>亜紀が病に倒れたこと、生還したことで

『亜紀さえ生きててくれれば』が、この物語?の永久普遍のテーマです。つか、それしかありませんが。
亜紀が戻って来てくれたから、こんなに沢山の笑顔が生まれたんだよ…という展開になると思います、間違いなくw

>亜紀と真が、この場にどうやって登場となるのか楽しみであります

…普段は滅多にこういう発言はしないのですが『このシーンだけ』は自信があります!!
期待してお待ち下さい…まだ、だいぶ先ですがm(_ _)m


>表参道様

>「北の国から」のような息の長い作品にして頂ける事を期待してます!!

期待しないで下さいm(_ _)m
冗談はともかくw、本当に長い間、お付き合い頂き感激至極です。今後も引き続き、御愛読下さい!!

>スケちゃんとボウズ、昔と変わってなくて安心しました

これは自分の体験談ですね>半分以上。
高校の頃の連中とつるむと、何故か昔のノリに戻っちゃうんですよ、未だにw
スケちゃんとボウズも、そんな関係であって欲しい…と思って、あんな描写をしてみました。


>ふうたろう様

御無沙汰しておりましたm(_ _)m

>「朔太郎がいるからこそ、亜紀が生き生きと亜紀らしくいられる」
>互いに支え合う、それが朔太郎と亜紀との関係なんでしょうね。

正に、おっしゃる通りです。ホントそれだけなんです、この一連の話はw
そんなふたりを描きたく、また、そんなふたりであって欲しい…等と開始当初の頃ボーッと考えていた時、レスNO,14でぶんじゃく様より

>朔が朔であるが故に亜紀も亜紀でいられんでしょうね

…という素晴らしいコメントを頂き、以後、勝手にこのストーリーの背骨にさせて頂いておりますw
このフレーズ、今後も至る所で、色んな人間から語られる予定です。楽しみにお待ち下さい!!

あと、この場を借りて、ぶんじゃく様にも改めて御礼を。

本当に最高のコンセプトを頂戴し、感謝感激雨あられですm(_ _)m
ですが使用料や著作権等は一切お支払い致しませんm(_ _)m
悪しからず御了承下さいm(_ _)m


>にわかマニア様

御無沙汰しておりましたm(_ _)m

>スケちゃんのあのキャラには思わず笑ってしまいますね

…ホント、書いてて楽なキャラですw 私の中では真と双璧ですね。
基本的にお調子者なんだけど、実は心配りが細やかで、相手に弱みを見せないタイプで…私の実体験で言うと一番モテるタイプはこの手の男ですw
智代には申し訳ないですが、結婚後も、ある程度「火遊び」を続けている設定にさせてもらいました。
私の方は今、この執筆でいっぱい×2なので、とても手を付けられませんが、ふうたろう様が延べられていた

>…に関する話題が乏しくなって

を打破する為にw今流行りの『スピンオフ』企画があれば、一番目にやってみたい存在ですね>スケちゃんは。


今後は当面の間、1〜2週間に2編ぐらいづつ投稿…という形になりそうです。
しつこいですが、皆様、今後ともお付き合いの程m(_ _)m申し上げます。
...2007/11/06(Tue) 00:19 ID:8bDK89uc    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
「へぇー、松本の家で、今からそんな事するんだ…」

場所は変ってスーパーの駐車場。
夕食の買出しで偶然同じスーパーへ居合わせた谷田部に、龍之介が簡単な経緯を説明中。もちろん、先程のボウズとの喧嘩の理由はノーコメントだが。
その喧嘩相手は未だ機嫌を損ねているらしく、ぷいっと明後日の方向を向いている。

「そっか…じゃぁ皆さんに、よろしく言っといて」
「えっ?行かないんですか、先生?」
「行かないわよ(笑) 悪いでしょ、急に。部外者が…」
「そんなこと言わずに行きましょうよ〜、ここで会ったのも何かの縁だし…」
「…そうですぞ。『縁』は大事です。このバカタレにしては、良い事を言いました…」

『縁』という得意分野が話題に上った途端、ボウスがしゃしゃり出る。
龍之介が睨みつけるも、秘密を2つも握られている以上、強気には出れない。

「…かって司馬遼太郎氏は 『人間は人間関係によって、人間として存在できる』と喝破されました。『縁』とはまさしく、それです。人間はただ一個で存在する場合、単なる畜類に過ぎません。 その人と人とが接し、関係する『縁』の中にあるからこそ、人間は人間でいられるのです…」
「……ねぇ、中川…あんた、スーパーの駐車場で、何を熱く語ってるの?」
「!!…つ、つまり…拙僧が申し上げたいのは、人間関係において『縁』ほど大事なものはない!という事です…」
「…だったら、最初からそう言いなさいよ(笑) でも……『縁』ねぇ…」
「左様。先生も今まで、数あまたの『縁』を台無しに…」
「…何か言った?(←氷の微笑)」
「………いえ…」

「…そ…そーですよ、先生!」
ここで龍之介がボウズの応援に加わる。
話題をこっちに振った方が、自分の悪行がバレる可能性が薄まる。

「ボウズの言う通り『縁』は大事ですよ!それに今から帰ったって、どうせ独り…」
「…何・か・言・っ・た・?」
「………いや…」

龍之介、あえなく轟沈。余計な一言は時に、すべてを台無しにしてしまう。
しかし、それとは関係なく、谷田部は谷田部で迷い始めていた。

(……確かに…今から、帰ってもねぇ…)
縁が無いと言うより、教師生活に心血を注いで来た結果、現在の状況がある。
その事自体は、別に後悔していない。自分が選んで、自分が進んだ道。むしろ、誇りでさえある。
ただ、少しだけ鬱陶しい。灯りの無いマンションの玄関に入る瞬間の侘しさが。
(………しば漬け、食べたーい…って訳でもないしな…)
少し前に流行ったCMを心中で真似てみたものの、虚しさがつのるだけだ。
しば漬けよりも、鍋物の方がいい。そこにアルコールがあれば、なお嬉しい。
お酒は ぬるめの燗がいい 肴はあぶった イカでいい 灯りはぼんやり 灯りゃいい

「……行っちゃおうかな…私も、関係者みたいなもんだし…」

こうして、彼女の電撃参戦も決定した。



「…えっ…谷田部先生『まで』来たの…?」

会社からの帰宅後、意味も状況もわからないまま、宴会の設営準備係にさせられた芙美子は、谷田部の顔を見た瞬間、素っ頓狂な声を上げる。
否、上げてしまった。

「………私、帰る!」
「いやいやいやいや、先生」
「まぁまぁまぁまぁ、先生」

以下、先刻のスーパー駐車場での会話。

『…でも…いくら何でも悪いでしょ。何も連絡せずにお邪魔するのは…』
『……先生、なーに言ってるんですか!?』
『えっ?』
『スペシャルゲストっていうのは、ビックな存在なんですよ?スペシャルな人が、そんな細かい事、気にしてどーすんですか!?』
『…そっ…そう?(照)』

龍之介のいい加減なおだてに乗った谷田部も悪い。
しかし、驚く…と言うより『呆れる』といった感じの芙美子を見て、彼女のプライドは酷く傷付いた。

「…私だってね!『まで』扱いされてまで、他人様の家で食事するほど落ちぶれちゃいないわ!」
「いやいやいやいやいやいや(笑)」
「まぁまぁまぁまぁまぁまぁ(笑)」
「何よ、バカにして!大木!知ってる!?私だってね、ディナーに誘えばホイホイ連いてくる男の1人や2人いるのよ!(名前)聞きたい!?」
「聞きたくないっす(キッパリ)」
「!!…そ、それにねぇ!この年齢になっても『お見合いして下さい』って売込みが、けっ、結構あるんだからね!」
「……どれくらい、ですか?」
「………1……2…通…」
「…………月?」
「…………年…」
「…………」

同じく独身のボウズが恩師の肩をポン、と叩く。もう無理しないでいいですよ、先生…とばかりに。
赤子の様に素直にウン、と無言で頷く谷田部。これにて一件落着…かに見えたが…

「…あらま?先生!?」
「…あっ、誰かと思えば先生じゃないですか?」

玄関先の騒ぎを聞きつけ、何事?…と台所から富子と綾子がおっとり刀で駆けつける。

「ホント、奇遇ですね(笑) 今日は、どうしてこちらに?」
「…すっ、すいませーん、急に…あっ、それより廣瀬さん。この度は本当におめでとうござ…」
「……しっかし、驚いたねぇ。まさか先生『まで』来るとはねぇ…」

呑気な感想を、富子が思わず漏らす。当然、彼女には何の罪も悪気も無い。
だが、場は再び凍りついた。

「…………やっぱり、帰る!」
「いやいやいやいやいやいや(笑)」
「まぁまぁまぁまぁまぁまぁ(笑)」

むずがる恩師の両脇をむんずと掴み、卒業生2名が強引に松本家の中に引きずり込む。
まるで看守が服役中の人間を監獄に押し込めるかの如く。


そんなこんな…で約30分後。8名の前に大量の魚や野菜にアルコール、そして大きな鍋が用意された。


「…それでは皆様、お待たせ致しました!乾杯のグラスをご用意下さい!!!!」

仕切るのは勿論、この男。
大木龍之介、26歳。自他共に認める宮浦の宴会部長。

「偶然が偶然を呼び、何故か今日、ここにお集まりの皆様!この偶然を無駄にする事なく、大いに盛り上がりましょー!!!!」
「(大声で)イェーイ!!!!!!!!」
「それではグラスを片手にご起立下さい!皆さん、準備はいいですかー!!!!」
「……ちょ…ちょっと…いいですか?」

意外な人間が水を差す。乾杯の音頭をストップしたのは芙美子であった。
...2007/11/06(Tue) 21:03 ID:8bDK89uc    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
「…なんだよ、気が利かねぇ…盛り上がってるのに、関係ねぇ話、すんじゃねーぞ…」

珍しく怪訝な表情と不機嫌な声で、潤一郎が娘に釘を刺す。
実はこの頃、朔の結婚以外とは別に重大な問題が松本家で密かに進行していた。芙美子の件、である。

彼女もお年頃。当然、浮いた話の1つや2つ、ある。いや、正式に言うと、現在は1つしかない。
高校の頃から付き合いを重ねてきた男性が、芙美子にもいる。
その彼が、この度、東京へ転勤になるらしい。そして彼から、結婚を前提に一緒に来て欲しい…と言われているらしい。
何故『らしい』なのか?それは彼女が家族や周囲に伝えていないからである。

(…ようやく、お兄ちゃんとお義姉ちゃんが…の時に…私まで、言えないよね…)

思えばこの9年間、彼女はずっと見続けてきた。義姉の苦闘の歴史と、実兄の努力の日々を。
そしてこの9年間、松本家自体が良かれ悪しかれ長男中心に廻ってきたのも事実。
そんな9年間を過ごして来た芙美子は何時しか、思いやりに秀でた分、アピールが不得手な女性になっていた。

こんな時『行動力の塊』の様な義姉、または『突拍子のない代名詞』である兄に相談すればよさそうなものだが、
(…私には…真似できない……あのふたりのようには、とても…)
慎み深い性格に、一種のコンプレックスが加味されてしまった芙美子は、誰にも言わず、ひとり悩んでいる。
そして、そんな娘の様子を薄々気付いている父親が『…ここでは、言うなよ…』と軽く釘を刺した次第。

だが、父の心配は全くの取り越し苦労であった。空気を読み過ぎてしまう娘が、この場でそんな発言をする訳もない。
むしろ彼女の心配と発言は、至極道理に適った物であり、他の7名が気付かない方が不可思議な内容だったから。

「……あの〜、主役のふたりは…呼ばなくてもいいのかな?」

…全員が一瞬の沈黙の後、同時に『ああっ!』という表情をした。


「…すっ、すいません、奥さん!私、朔に連絡取るの、すっかり抜けてました!」
「……しょうがねぇなぁ…何やってんだ、お前…」
「…あんたが自分で言ったんだろ!『あいつをどうにか呼びますか』って!」
「…………」

夫婦間の責任のなすり付け合いが富子の圧勝に終ると、さーてどーしますか?を全員で相談する。

「…まぁ朔は置いといて…亜紀を、どーやって呼ぼうか?」
「あっ…いいのよ亜紀は、呼ばなくて…たまには、主人とゆっくりさせてやろう…と思って…」
「…おばさん!それ、ナイスだよ!大体ねぇ、亜紀はおじさん(=真)のこと、大切にしなさ過ぎなんだから!」
「…いつまで経っても『サクちゃん、サクちゃん!』だからねぇ…お父さんも、お辛いでしょうねぇ(←他人事)」
「……よく、飽きないわよね…感心するわ、変な意味で。あいつら、今日も何処かに出掛けるの?」
「…式の下打ち合わせ、らしいっすよ…ふざけるな!大体、俺という親友がいながら、何で教会でなんだよ、あいつらは!?」

上から順に智世→綾子→智世→スケ・谷田部・ボウズの順。その大半が親友&恩師による罵倒?のオンパレード。
そしてボウズの友情&寺院経営の一員としての愚痴を、大木夫妻が絶妙のモノマネで受け返す。

「……だって…サクちゃんの隣で…もう1回、ドレス着たかったんだもん…」
「………あ…亜紀…(デレデレの表情)」

ドッ!と盛り上がる友人&恩師。親族関係者4名は、その光景を苦笑いしながら楽しんでいる。
その雰囲気を一瞬で察知し、宴会部長が話題の〆に入る。

「…決まりっすね。マジな話、ふたりとも式が間近で何だかんだ、疲れてるでしょうし…」
「…………(全員、無言で頷く)」
「………それに…」
「………それに?」

妻の問い返しにニヤッと笑い、龍之介、この宴会のメインテーマを決定付ける。

「…こういう話題は……本人達がいない方が、盛り上がりますし!!」

再び、いや、先程よりもっとドッ!と盛り上がる他7名。かくして宴会は、主役2名を除いて催される事となった。
誰もが、『真』の『ま』の字も出さないままに。

「……でも奥さん、いいんですか?ウチでの朔が見たい…って、おっしゃってたのに…」
「いいんですよ、別に。そんな珍しいもんでもないですから(笑)」
「…………(苦笑)」

綾子一流の茶目っ気たっぷりの回答に、富子が苦笑いする。これで、準備万端。憂いナシ。

「それでは、今日の偶然を祝って!!かんぱーいっ!!!!」「(全員で)かんぱーいっ!!!!!!!!」


気心が知れた関係、未だにイチャイチャし続けるカップルの噂話…盛り上がる要素は全て揃っている。
偶然の宴会は、開始20分を過ぎた辺りで既にピークを迎えんばかり…の勢いである。
そんな折、松本家の玄関に一台の旧い自転車が止まった。

(…うるさいなぁ…何やってんだよ?こんな時間に…)

…ここの所、近隣や病院関係者、更には患者さんまで気遣ってプレゼントくれたり、食事会に誘われたり…
有難い、とわかってはいるが、今日はたまの休みだ。ゆっくり寝たい。
(…家で、くつろごうと思ったけど…いいや…荷物だけ取って、仮眠室に行こ…)

気配をさとられぬ様、恐る恐る玄関の引戸を開ける。
だが、そこに脱ぎ捨ててあった靴の数は想像を大きく凌駕していた。彼は、思わず声を出す。

「!!…な…何、これ?」
「……あぁーーーーっ!!朔ぅぅぅーーーー!!!!!!!!」

宮浦が誇る絶叫マシーン、健在。居間から出てきた智世に早速、発見されてしまった。

「とっ、智世!何でいるんだよ、こんな時間に!?」
「(一切聞かずに) どーしたの!?どこで聞いたの?何で『来た』のよ、あんた!?」
「…き…来た、って……ここ、俺んち…」

ずかずか歩み寄る幼馴染の異性の背後から、今度は同姓の幼馴染2名がひょっこり顔を出す。

「おっ!来やがったな、この色ボケ大魔神!!」
「…飛んで火に入る夏の虫、だね…お前さん(ニヤリ)」
「!!…ぼっ、ボウス!スケちゃん!何で!?何なの、いったい!?」
「いやいやいやいやいやいや(笑)」
「まぁまぁまぁまぁまぁまぁ(笑)」

拉致するかの様な勢いで両脇を抱え、先刻の谷田部と同じく − いや、もっと乱雑に − 悪友2名は
彼を玄関先から連れ去り、居間へ連行する。

「…お待たせしました! 新郎だけの入場です!!!!」

龍之介の紹介と共に新郎は皆が待つ居間へ引きずり出された。
ボウズと智代の下手糞な『結婚行進曲』のアカペラに乗せて。

「…あら!今日はこちらにお帰りですか、松本先生?」
「……おっ!…お義母さん!?」
「あっ、そう言えば…松本ぉーーー!あんた、医師会との合コンの話、どうしたのよ!!」
「せっ!先生!?」

あまりに意外なゲスト2名を前に、彼はひたすら驚いている。
松本朔太郎、26歳。言わずと知れた主人公。この間の悪さは、もはや、芸術。
...2007/11/06(Tue) 21:05 ID:8bDK89uc    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:にわかマニア
 祖父がカメラマンさん
 他のアナザーものでも大いなる謎になっているのですが,あの仲間たちで最大の酒乱は誰なのか,楽しみに拝見しています。ひょっとして,綾子がダークホースになってくるのか,あるいは,真の酔いつぶれた姿も見てみたいような・・・
...2007/11/07(Wed) 21:29 ID:czB/tluA    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:双子のパパさん
 こんばんは、祖父がカメラマン様

 物語読ませていただきました。

 芙美子の心境も複雑ですよね。9年という月日が、思いやりのある、素敵な女性になったのだとわかりました。正直に言いますと、本編でも、芙美子目線で見たことがなかったもので、考えさせられました。
 朔は状況も把握する間もなく、酔っ払いの面々におもちゃにされるのでしょうか?気の毒でもあり、ある意味、うらやましくもあります。
...2007/11/10(Sat) 01:37 ID:mJ2ut./c    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
>にわかマニア様

>あの仲間たちで最大の酒乱は誰なのか

何の根拠もありませんが、思い込みだけでこんな設定にしております。

※S級(全く酔わない)
  ・潤一郎:どれだけ飲んでも変らない、俗に言う『アルコール=水』体質
  ・真:建設業の方は大体バケモンです、私の経験から言うと
  ・龍之介:漁師ですからね〜、それに若い頃から鍛えてるぽいですしw

※A級(ヒジョーに強い)
  ・富子:性格的にもキャラ的にも強そう
  ・朔&ボウズ:幼少の頃からスケに鍛えられた上に、朔に関しては祖父の影響も大
  ・谷田部:晩酌慣れ、教師はストレスが特に多い職種でしょうし…

※B級(フツー or 少し弱い)
  ・智世&芙美子:特に理由はありません、何となくですw
  ・綾子:この人もキャラ的な感じから受ける所が大です。真の晩酌に多少付き合う程度なのではないでしょうか?

※C級(下戸に近い)
  ・亜紀:病気の事もありますが、元々好きじゃない感じがするので。何よりも今回は『運転手』ですからw、彼女は一滴も飲みません。

で、今の所、完全に酔っ払ってるのは綾子さんとボウズの2人です。
綾子は嬉しさ余って…という感じで酔ってますが、強いはずのボウズが何故悪酔いを?…については、追々描写します。
簡単に言うと『ある人物』が『ある狙い』を持ってボウズを罠にはめた…という設定にしております。


>双子のパパさん様

>本編でも、芙美子目線で見たことがなかったもので、考えさせられました。

本編で殆ど描写されていない分、ある意味では描き易いキャラですね。
彼女の心情は、自分がこういう立場だったら?…と想像して書き上げております。
私が、あんな状況を克服して『しまった』兄と義姉を持ったら…精神的にはキツイでしょうね、正直。
もちろん潤一郎も富子も、朔と比較してあーだこーだ…と言う様な了見の狭い親ではないのですが。

そんな引っ込み思案の芙美子を、励まし解放してあげるシーンも後半に予定しています。楽しみにお待ち下さい。
因みに彼女を解放する役目は『行動力の塊』である義姉にお願いしようかと考えていますw


続編です。ただでなくとも盛り上がりに欠ける展開の中、今回は特に中だるみ状態ですm(_ _)m
ただ今後の展開の上で、どうしても挿入したいエピソードだったもので…
次回は久々に9年前のある場面に戻ります。そのプロローグとして御覧下さい。
...2007/11/14(Wed) 22:42 ID:lz3PipGo    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
「…えっ?じゃぁ、亜紀は知らないんですか?お義母さんが、ウチに来てるの…」
「大丈夫よ、子供じゃないんだから(笑) 私も、あの娘も」
「…いや…でも…絶対に心配してますよ、亜紀…」
「……亜紀ちゃんが心配なんじゃ、ないんじゃないの?(ニヤニヤ)」
「………どういう、意味だよ…」
「…亜紀ちゃんに怒られるのが、心配なんじゃないの〜!?」
「なっ!何、言ってんだよ!?」

龍之介の絶妙のツッコミに思わず固まる、いつも通りの朔。そのいつも通りのリアクションに、周囲は爆笑の渦。
宴会に連れ込まれて以来、あらゆる人間・あらゆる角度から彼は、ちょっかいを出され続けている。
冒頭の亜紀への電話のシーンは、一瞬の間隙を突いて、彼が必死に電話口まで辿り着いたのであった。
その甲斐むなしく、すぐ悪友3人に見つかり再度拉致されてしまった訳だが。

その後、たたでなくても盛り上がっていた所に、朔という思いも寄らない最高級の『具』が加味された宴会という名の『鍋』は、ますます煮えたぎって行く。
ある者は笑い、ある者は叫び、ある者は歌い…もう、しっちゃかめっちゃか、阿鼻叫喚の世界に近い。
だが。その盛況ぶりに、ひとりだけ加わらない − いや、乗り切れない者がいた。

(……いい加減に、してくれって…俺、疲れてるんだよ、マジで…)

口にこそ出さないものの、心中で溜息混じりに呟く。
実は、心中ですら朔が、この手の愚痴を吐くのは非情に珍しい。


きっかけは、約4年半前に遡る。故郷での就職を決めた彼が、真に報告へ出向いた時のこと。

会合場所は居酒屋。亜紀退院後、即座に家屋内での禁煙を決められてしまった真の、たっての希望である。
気持ちよさそうに煙を吐き出しながら、彼は朔に語り掛ける。

「…いいのか? それで…」
「はい、もう…決心しましたから…」
「……やっぱり、亜紀のことか?」
「………えぇ…」
「…どうかな…一緒にいたい気持ちも、わからんではないが…」
「…………」
「…まだ、先は長いんだ。将来を考えれば、東京で最先端を学ぶのも、決して…」
「…………」
「……言っても、聞かんか…どうせ…」
「………すいません…」
「…………」

怒ってる様な、それでいて何処か申し訳なさそうな表情のまま、真は黙ってグラスを空にする。
黙って朔が、空になったグラスにビールを注いだ後、意を決した様に話し出す。

「…お義父さんが言われた様な事も、考えました…とても、重要な事ですから…」
「…………」
「……でも…やっぱり近くにいたいんです、俺…」
「…いてあげたい、じゃなくてか?」
「違います……俺が、いたいんです…亜紀のそばに…」
「…………」
「……色々、考えました…でも結局、それしかないんです…俺には…」
「…………」
「だから、ここで……この街で働きます、俺…」
「…………」

不器用な朔の話を、視線を合さず聞いていた真がビール瓶を持ち、朔のグラスに近づける。
不器用な真にとって、この行為は『わかった』という意味を示すのであろう。

「あっ、ありがとうございます…」
「……ひとつだけ、アドバイスしておく…」
「…お願いします」

余談だが、朔は真との会話が決して嫌いではなかった。いや、むしろ好きであると言ってよい。
亜紀や綾子の前では、その隠れたサービス精神を大いに発揮する為、散々ネタの対象とされて来たが、こと2人だけで話す時 − 特に仕事や人生設計について − これほど的確で真摯な助言をしてくれる人間は、朔の身辺において他にはいなかったから。
むしろ亜紀退院の直後や就職間もない頃は、朔の方から積極的に誘ったものだ。
だが最近は、一種の照れ隠しからか、真が上手く煙に巻く様になり、余程の時以外は相談に応じてくれなくなったが。

閑話休題。再びシーンは居酒屋での会話に戻る。

「……言い訳を、するな…」
「……えっ?」
「忙しい…とか、疲れてる…を、出来ない理由にするな」
「…………」
「…人間、いくらでも、都合のいい言い訳が出来るからな……俺だって、そうだ…」
「…………」
「そんな時はな…出来ません、じゃなく…どうやったら出来るか、を考えろ。それしか、前に進む道はないんだよ…」
「……はいっ」
「(ボソっと)……まぁ、お前なら……な…」
「!!…あっ、ありがとうございます」

深々と頭を下げる朔に、真は無言で顎を上に動かし『空けろ』というサインを出す。
慌てて飲み干した『息子』のグラスに再びビールを注いでやった後、『父』は無愛想に、且つ温かい表情で呟いた。

「………頑張れ」
「…はいっ!」


そんな師からの教えを、弟子は今日まで愚直に守り通す。
愚痴や言い訳から自分を遠ざけるかの様に、ある意味ストイックに生きてきた。

だが最近は、新人を卒業した中堅医師としての責任や業務量の増加。それに加え、準備の大半を亜紀がやってくれてるとは言え、結婚式を間近に控えた慌しさや焦燥……さすがにキレ易くなっている自分に気付いていた。
特に今日は、ひさびさの休日。そして亜紀が別れ際に言ってくれた、あの言葉。

『…ずっと……ずーっと、サクちゃん!って呼んでて、いい!?』

その言葉とあの声を噛み締めて眠りたかった。ついでに、枕でも代わりに抱きしめたかった。申し訳ないが、それが本音である。


(……みんなが喜んで、楽しんでるんだから…それでいいじゃないか…)
頭の中で、もうひとりの自分が諌める。いや、頭では理解できている。
しかし、どうしても感情のコントロールが難しそうだった。
普段だったら、そんな自分の様子をいち早く察知して『…サクちゃん』と微笑み掛けてくれる女性も、今日はいない。
そんなイライラが募る中、周囲は喧騒と自分へのからかいの渦。得体の知れぬ苛立ちだけが高まった。
(………ちょっと…落ち着かなきゃヤバイな、俺…)

「…………」 無言で立ち上がり、部屋を出ようとする。しかし悪ノリしている周囲が、彼を易々と手放す訳も無く。

「おい、朔!お前、どこ行くんだよ!」
「…………トイレだよ…」
「ウソだね!お前、ぜんっぜんっ飲んでねーじゃん!おいっ!お前、俺の酒が飲めねーのか!?」
「………………」

9名の中でも特に、と言うか今日は何故か格別に酔い方が酷いボウズが、性質の悪い絡み方をする。
ますます苛立つ朔に、今度は芙美子と智世の冷やかしがシャワーの如く降り懸かる。

「…わかった!お兄ちゃん、まーたお義姉ちゃんに電話しに行くんでしょ〜」
「あらぁ、お熱いわね〜……ま〜〜た、亜紀に会いたくなっちゃった!?」
「………………」

限界が、来た。頭の中が真っ白になり、耳の奥からプッツンという音が響く。
しかも相手が綾子や谷田部ではなく、実の妹に幼馴染2名。キレる条件は全て出揃った。
うるせぇよっ!!!!…と怒鳴りそうになった。いや、実際『う』まで言い掛けた。
その瞬間、まるで何かを見越したかの様なタイミングで、彼の耳に呑気そうな声が届く。

「…おーい、朔よ〜」

険しい表情のまま、その呑気そうな声の方角を睨みつける。
そこには、いつも通りの呑気な顔をした、潤一郎がいた。

「…………何?」
「庭の水道使って、ビン何本か冷やしてきてくんねーか? もう冷蔵庫だけじゃ持たねぇよ、こりゃ(笑)」
「………………」

(……俺が!?) と言わんばかりの顔つきで、父を見返す。
しかし父は、相変わらず呑気そうにニコニコしているだけである。

そして、ハタと気付いた。父は自分に、あるサインを出しているのだ、と。

(……ビンじゃなくて…頭、冷やしてこい…いいから…)

父の温和な表情が、それを物語っている様に思った。いや、そうとしか思えなかった。
冷静さを取り戻した息子は、バツが悪そうな苦笑いを浮かべながら、ちょこっと頭を下げて居間を出た。


(…やっぱり…かなわないな、いつまで経っても…)

障子を閉め、縁側に立ちながら彼はつくづく思い知らされている。
いつも、こうだった。見ていない様で、見ている。じっと、見つめ続けてくれている。そんな、父である。

(……ありがたいな、ホント…)

しみじみ思いながら、短い縁側を歩む。 が、ふと、ある事を思い出した。 彼は、再び立ち止まる。
そんな父 − 優しくて、温厚な父 − から、たった1度だけ、思いっきり殴られた日のことを。

(…そうだ……あの日も、ここだった…)

朔は遠い目をしながら、じっと庭先を見つめ往時を思い出していた。
...2007/11/14(Wed) 22:51 ID:lz3PipGo    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:たー坊
ご無沙汰しております。
再開に狂喜乱舞している一人です。

真と亜紀の到着時にはどーなってしまうのか気掛かりではあります。
...2007/11/15(Thu) 20:12 ID:O2wVIVh6    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:表参道
執筆ご苦労様です☆

今回、真とサクの会話の場面よいですねー(涙)

二人の姿が目に浮かびます。

サクが縁側でこれから思い出すであろう場面を考えるだけで涙がでそうです(T_T)

ボクもたー坊さんと同じで更新がある度、狂喜乱舞してしまう一人です。

次回も楽しみにしております。
...2007/11/16(Fri) 00:10 ID:LlY4YNr6    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
>たー坊様

御挨拶は、あちらのスレで行いましたので割愛致しますm(_ _)m

>真と亜紀の到着時にはどーなってしまうのか気掛かりではあります

変な表現ですが時間で換算すると、あと15〜20分程度で松本家到着…という感じです。
亜紀にも暴れて?もらいますが、それ以上の活躍を真にしてもらう予定です。 楽しみにお待ち下さい。
私の方は、この父娘が到着した所で年内は脱稿予定です。師走はさすがにバタバタしそうなのでw


>表参道様

>二人の姿が目に浮かびます

最高のお褒めの言葉、ありがとうございますm(_ _)m
朔と亜紀以外の組み合わせでは、一番この2人のからみが描き易いですね。
お互い不器用で真っ直ぐな者同士、非常に波長が合う感じがします。 因みに今後もちょくちょく出て来ます>この2人の会話


続編を投稿する前に、うざったい説明を少しだけm(_ _)m
今更ですが、この物語は『亜紀が奇跡的に助かった』という奇跡的な前提が全てのベースです。
つまりドラマで描かれた各人の言動の前提が、ガラッと一変している部分も多く……今回の話は、その際たるものかも知れません。
ドラマでは『死んだ人間の願いひとつ…!!』と朔を殴り飛ばした潤一郎の息子への思いが、亜紀が生きていたら、どう繋がったのだろう?…そんな事を考え、書き上げてみました。
そして、あんな不器用で純真で優しい息子を育てた父は、こんな男であって欲しい…と言う私自身の妄想を多分にブレンドしてw

9年前、松本家の縁側で、こんな場面がありました。
昔を懐かしむ様な感覚で御一読頂ければ幸いです。
...2007/11/17(Sat) 21:14 ID:Br9Hb.D.    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
「……ちゃんと、謝るんだよ…朔…」
「…………うん…」
「…お父さん…あんたのこと、本当に心配してたんだからね…」
「……うん……わかってるよ…」

あの日 − 亜紀を病院から連れ出し、亜紀を病院に連れ戻し、亜紀と誓い合い、そして卒倒した − あの日から5日後。
点滴と静養の為、入院していた朔が富子に付き添われ、実家に戻って来た。
そして今、潤一郎の待つ居間へと歩を進めている。

「…お兄ちゃん!!」
居間に入った瞬間、彼の視界と聴覚に飛び込んできたのは、半べそをかいた妹の声と顔。
父は、彼に背を向けたまま、ずっと庭の風景を見ている。

「…大丈夫?もう、大丈夫なの!?」
「………あぁ…もう…」
「心配したんだよ、私!このまま、お兄ちゃん、帰ってこないんじゃないかって…」
「……芙美子…もう、大丈夫だから…」
「………………大丈夫、だと?」

低い声と共に、背中を向けていた父が、息子の方へ歩み出す。

「……大丈夫、って……なんだ…」
「………………」
「…なにが、大丈夫なんだ?…こんだけ心配掛けて、こんなに迷惑掛けて…」
「………………」
「……ちょっと、あんた…」「……お父さん…」
「………ごめんなさい…は?」
「………えっ?」
「……ごめんなさい、の一言もねぇのか!お前は!!」

聞いた事が無い程の大声を上がると同時に、父は息子の横っ面を思い切り張り上げる。

「あんたっ!!」「お父さんっ!!」
母と妹の悲鳴に耳も貸さず、父は倒れている息子を引きずり上げると、そのまま縁側から庭先まで投げ捨てた。

「………………」 息子は、庭先で崩れ落ちている。
「あんた!やめなよ!やめておくれって!」 母が、息を切らしている父の左腕を必死に掴む。

「私が!私が悪いんだよ!知っていながら止めなかったんだよ、ふたりを!」
「………………」
「だから、悪いのは私なんだって!お願いだよ!殴るなら、私を…」
「……そんなんじゃ…ねぇよ…」

いつもの穏やかな潤一郎は、何処にもいなかった。
富子を振り払うと、泣きじゃくる芙美子を一瞥もせず、朔の横たわる庭先へと降りる。


「………………」 朔は、じっと地面を睨んでいる。
悔しかった。本当は、畜生っ!と父に飛び掛って行きたかった。俺の気持ちが、あんたなんかに!!…と。

でも、できない。それは、どんなことがあっても、やってはいけない。
だって、俺は、このひとを心配させたから。悲しませてしまったから。

何を、どう言い訳しようが、それが事実。それだけが、真実。
だから、言い訳してはいけない…と思った。朔は、ずっと俯き続けている。


「………朔…顔、あげろ…」「………………」
痛みと悔しさに耐えながら、朔は毅然と顔をあげる。

「……無茶、しやがって…」「………………」
父が息子へと、静かに語り始める。

「…無事だったから…まだ、いいようなもんだ…」
「………………」
「あのまま、空港行って…亜紀ちゃんがロビーで倒れたり、搭乗してから悪化したり…そうなったら、お前、どうするつもりだったんだ?」
「………………」
「………お前が……トドメ、さした様なもんじゃねぇか…そうなったら…」
「………………」
「お前…そんな気持ち抱えて、ずっとこれから生きていくのか?生きていけんのか?……その時、亜紀ちゃんの…お父さんやお母さんに、顔合わせ…できんのか?」
「………………」
「……それも…知ったこっちゃねぇか?」
「………えっ…」
「…亜紀ちゃんの願いさえ叶えられれば、俺は…俺なんて、どうなっても構わねぇ…ってか?……いい、ご身分だな?悲劇のヒーローは!!!!」
「………………」

朔は父を見上げながら、唇を強く噛み締め続ける。うっすらと、血が滲むほどに。

その通り、だと思う。父の言ってる事は、何ひとつ間違っていない。
それでも、もう、どうしようもなかった。どうすることも、できなかった。
一番、美しい空を、亜紀に見せてあげたい。
それ以外には、もう、何も、考えられなかったし、考えたくもなかったから。

そして、もうひとつ、あの日に決めたことがある。
亜紀にまつわる全ての負の感情を背負おう、と。俺が全部ひとりで受け止めよう、と

だから、すべてを甘んじて受け入れよう…とだけ思った。朔は、唇を噛み締め続ける。

「………気持ちは……わかる…」
「………えっ?」
「……お前の、気持ちは…わかる、って言ってんだ…」
「…………父さん…」

険しい表情も、厳しい声色も変っていない。
だが父は、息子の心情を全否定はしなかった。

「亜紀ちゃんの夢、かなえてやりてぇ…って…気持ちは、わかる…」
「………………」
「………すごく、悩んだんだろう…お前…」
「………父さん!!」
「…言っちゃいけねぇことだとは、思う……でも、お前の気持ちは…わかる」
「………………」

我慢できずに、朔の両目から、涙が溢れ出す。

「……別に…お前が、悪いわけじゃねぇ…」
「………………」
「もちろん…亜紀ちゃんが、悪いわけでもねぇ…」
「………………」
「…誰が、悪い訳でもねぇ……病気だ……病気が悪いんだよ!全部!!!!」

不条理に過ぎる若いふたりの運命へ憤りを叩きつけるかの様に、潤一郎が叫んだ。
...2007/11/17(Sat) 21:18 ID:Br9Hb.D.    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
「だけどな……お前、家族の気持ちも…ちっとは、な…」
「………えっ?」
「…亜紀ちゃんのことで、頭いっぱい…なのは、わかっけどよ…」
「………………」
「……母さん、な…お前が(空港に)出掛けた後、ずっと…仏壇の前で、おがんてたぞ…」
「!!!………」
「ずーっとだ、ずっと…両手、合わせて…じっちゃんと、ばぁちゃんに…」
「………………」
「……『助けて、ください』って……『あの子たちを、助けてやってください』…ってな…」
「………母さん!!」

涙でぐしゃぐしゃになった顔を、朔は縁側で見守る母親の方向に向ける。

「…芙美子だって……心配してたんだぞ、お前のこと…」
「………………」
「…『お兄ちゃん、捕まっちゃうの? 亜紀ちゃんが途中で倒れたりしたら、お兄ちゃんのせいになっちゃうの?』って…」
「………芙美子…」
「……『お兄ちゃん、悪くないのに!何で、こんなに苦しまなきゃ…』…大変だった、泣き喚いて…」
「………………」
「……まっ…俺は、そんなに…心配してなかったけどな…」

照れ隠しの捨て台詞を吐いた後、不器用な父は、不器用な息子に、一番伝えたい思いを語る。

「………だから…ひとりで、背負い込むな…」
「!!……父さん…」
「…ヒーローぶって、ひとりで全ての罪をかぶる…みたいなツラ、しやがって…」
「………………」
「…………望んじゃいねぇ…」
「………えっ?」
「……誰も……望んじゃいねぇ…」
「………………」
「…そんなお前を、誰も…だーーれもっ、望んじゃいねぇ!!!」
「…………はいっ…」
「……誰よりも、亜紀ちゃんが望んじゃいねぇ…そんなこと…」
「………………」
「…ガキのくせに……ひとりで、カッコつけんな…馬鹿野郎…」
「………すい…ま…せん……でした…」

嗚咽の影響で呼吸が出来ない位の状態になりながら、ようやく朔は、言葉を発する事ができた。


「……今度……もし、な…」
「………えっ?」
「……また、亜紀ちゃんの具合が…悪くなって…」
「………………」
「…何を言われようが…何をされようが!…どうしても、連れ出してやりてぇ時は…」
「………………」
「…………言え…」
「………えっ?」
「……チケット……多めに、取ってやっから…」
「!!!!」
「……どうせ…言うこと、聞かねぇだろ…お前らは…」
「………………」
「…だったら……行ってやっから、一緒に…」
「…………父さん…」
「一緒に……お願いしてやっから、廣瀬さんに…」
「………父さん…」
「…ひとりで……いいか、ひとりで背負いこむんじゃねぇ、朔…」
「……父さん!」
「ガキの人生っていうのは…親の責任、なんだよ……なっ」


「父さん!!」
何かに取り憑かれたかの如く、朔は同じ言葉を叫び続ける。
ひとりじゃ、ない。ひとりじゃ、なかった。
俺は、このひとの息子だ。そう、叫びたかった。世界中に、誇りたかった。

今まで息子だけを見つめていた父の瞳は、おもむろに、縁側のふたりに向けられる。

「(富子に向い)……いいか?こんなとこで…」
「(涙ぐみながら)………はいよ…」
「…芙美子、すまねぇけど…そん時は、留守番しててくれ…」
「………オッケー…(泣き笑い)」
「(再び朔を見て)………謝れ…」
「………えっ?」
「……母さんと、芙美子に…謝れ…」
「…………はいっ…」

彼は、自分の母と妹の方へ向き直ると、両手をつき、額を地面にこすりつけ、大声で叫ぶ。

「………心配…かけて……ごめんなさい……ごめんなさい!」

朔は、ひたすら、叫び続けていた。



(……あったなぁ…そんなこと…)

式が間近なせいか、よく昔の事を思い出す。だから、ここ最近、涙もろくて困っている。
朔は目じりの辺りを指で拭うと、再び庭先に視線を移す。
何をする訳でもなく、彼はずっと、その光景を見つめている。

(…あった……あったんだよな、確かに…ここで…)

この庭先で、そんな出来事が、あった。
そんな場面が、昔。その昔、確かに、あった。
あの出来事を『昔』と言い切れる『今』。そのことが、とっても、嬉しかった。
...2007/11/17(Sat) 21:21 ID:Br9Hb.D.    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:ふうたろう
 祖父がカメラマンさん、
 物語の進展を楽しませていただいております。

 3つ前のレスの件で、少しばかり。

 「亜紀が奇跡的に助かった」
これは、確かに、この物語の大きな前提であり、かつ、多くのセカチューファンの願いだと思います。

 ただ、わたしはこの物語の前提として、もっと大きな前提があるんだと思っています。それは、朔太郎が空港に行く途中で、冷静さを取り戻したことだと思います。


 朔太郎が冷静になって引き返さなければ、亜紀の奇跡は起こらなかった、わたしはそう思います。それ以前の冷静でない朔太郎は、亜紀しか見えなかった。だから、前レスのとおり家族の存在も見失っていたのでしょう。もちろん自分自身も見失っています。

 また、前レスを読んでいて、亜紀の家族(真と綾子)は朔太郎のあの行動を、どう思っていたのだろうと、今さらながら考えてしましました。


 祖父がカメラマンさんの物語は、朔太郎と亜紀以上に、周囲の人物を丁寧に描いていらっしゃいます。おかげで、ついつい主人公の二人のみ目が行きがちなのを、もう少し広角的に捉えるようにさせてもらっています。

 今後の展開も楽しみです。
...2007/11/18(Sun) 18:54 ID:AThq7Xis    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:ぶんじゃく
次々に新作をアップされているのに
なかなか読めていません^^;近日中に
じっくり読ませていただきます。
...2007/11/21(Wed) 22:10 ID:rkrzoak2    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
>ふうたろう様

>ただ、わたしはこの物語の前提として、もっと大きな前提があるんだと思っています。
>それは、朔太郎が空港に行く途中で、冷静さを取り戻したことだと思います。

……正に御高察の通りですm(_ _)m 私が唯一、描きたかったのは、そこだけなのかもしれません。そこを御理解頂けた事に、心から感謝致します。 久々に書き始めた当初の気持ちを思い出す事が出来ました。
私も、朔に冷静になって欲しかったのでしょうね。冷静に『自分の本当の気持ち』を見つめ直して欲しい、と。
で、朔の本当の気持ちって何?……それは『亜紀と一秒でも長く、一緒にいたい』。私には、それしか思い浮かびませんでした。

そこで、朔に素直な思いをぶつけてもらいました。
それを、亜紀が素直に受け止めてくれました。
この物語はきっと、ただ、それだけのことです。
そして恐らく、それだけのことが、ぶんじゃく様の言われる『朔が朔であるから、亜紀も亜紀でいられる』 − このテーマに繋がるのではないかな、と。

それから9年。ふたりが、そしてふたりを見守り続けて来た周囲がどうなっているか? 書きながら自分で楽しんでる部分も多分にありますw
相も変らずダラダラ続いて参りますが、今後もお付き合い頂ければ光栄です。


>ぶんじゃく様

>近日中にじっくり読ませていただきます。

…ご多忙の折、色々お気遣い頂き、返って恐縮至極でございますm(_ _)m
年内は今日も含めて、あと2回の投稿で一旦切り上げます。 年末年始にでもお目通し頂けたら幸いです。


それでは不定期連載『9年後の彼ら』シリーズを開始します。第一弾は、ある意味で前半戦の主役の、この男。
酸いも甘いも吸い分けた、いい男になっていて欲しい…そんな願いを込めて書き上げました。
なおヒロインとその父の登場は、次回となります。お楽しみに♪
...2007/11/25(Sun) 16:35 ID:ocDtM2aQ    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
「…………」

往時を思い出し、朔は縁側に腰掛け、じっと実家の庭を見つめ続けている。
周囲の喧騒も、先刻までの苛立ちも、全てを無視したかの様に、ただ、じっと。
が、その時。そんな彼を現実に引き戻すかの如く、誰かが彼の右肩を2回ほど軽く叩いた。

(……違うよな…)

0.1秒の刹那で、彼は瞬時に的確な判断をする。
ずっと自分の肩をポンポン!!…と小気味良く叩き続けて来た女性は、今日この場にいない。
しかし、そこは哀しくも長年の習慣。まさにパブロフ。
頭では違うと認識しつつも、彼は躊躇する事なく、その顔を右後ろへ直角に振り向ける。

いつも通り、そこには相手の右人差し指が待ち構えており、彼の頬へと軽く突き刺さる。
違っているのは、その指の太さ。何よりも、その笑顔の種類。
普段の太陽の様な輝きではなく…クシャクシャっとした、多少むさ苦しい笑顔が彼を待っていた。


「……何やってんの、スケちゃん…」
「………びっくりした?(笑)」
「……別に…(苦笑)」


半分は照れ隠しによる反発だが、もう半分は違う。何となくだけど、わかっていたから。
亜紀不在のこの場で、先刻の自分の様子をいち早く察知し、フォローしてくれる人がいるとすれば…?
朔は無意識下で、ぼんやりと予想していた。来るとすれば、あいつだろうな…と。

『…私と大木君だけは、ないね。 性格似すぎてて、そういう対象にならないよ、お互い(笑)』
龍之介を評する時にいつも言う、亜紀の口癖をふと思い出した。


「…どうしたよ、元気ねぇじゃん?」
「いや、まだあのノリに付いていけないだけ…それよりさ」
「んっ?」
「スケちゃん…全然、酔ってないでしょ?今日」
「おっ、鋭いね…さすがは、お医者様だ」

そう言いながら、よっこらせ…と龍之介も縁側に腰を下ろす。

「ボウズと約束してんだよ…どっちかが先に行っちゃった時は、片方は冷静で…って」
「…なるほどね。2人揃って酔っ払ったら、凄いことになるもんね(笑)」
「で、今日はアイツが初っ端から飛ばしまくってるからさ…」
「…確かに(苦笑) どーしたの、アイツ?」
「……まぁ、色々あんじゃねーの?特殊な世界だしさ…」

さぅきの朔同様、半分は龍之介の本音。
複雑な規律や環境に置かれてる悪友に、たまには羽目を外させてやりたい…との思いがあって、この会に誘ったのだから。
しかし、もう半分は口封じ。妻に余計な事を告げ口される前に…と、朔と亜紀のラブラブ話(←半分以上は創作)を聞かせてみたら、こちらの思い通り和尚はヤケ酒に走り、早くも潰れてくれた。持つべきものは、素直な友人。
だが、この事は別に朔に報告する必要も無い。

「…そっか……大変なんだろうね、ボウズも…」

龍之介、ここでも思う。持つべきものは、素直な友人。

「……それだけじゃ、ないかもよ…」
「えっ?」
「…お前さんの顔見て、当時の恨みが蘇ったのかもよ〜(ニヤリ)」
「まさか(苦笑) 今さら、それはないでしょ?」
「いやいや、今さら…だからだよ。とっくに忘れてたけど、いざ結婚となると…ってやつなんじゃないの〜?」
「…そんな(苦笑)」
「あっ…今さら、で思い出した…俺、伝言預かってたんだ、朔ちゃん宛に」
「誰から?」
「……安浦」
「へっ?こっちに戻って来てんの?あいつ」
「いや、未だ大阪に赴任してるって。結婚のこと、風の噂で聞いたんでしょ。この間TELして来てさぁ…」
「ふーん…」
「式には改めて電報送るけど、その前に(朔に)伝えてくれって…」
「………あの時は、すまなかった…って?」
「ちげーよ(笑) ま〜〜だ、こだわってんのかよ、あんなことに!?」
「あっ、当たり前でしょ!? 一生、忘れないよ…あの時のショックは…」
「…しょーがねーな、もう(苦笑) 俺のキスで忘れさせてやったと思ってたのに…」
「…スケちゃん(苦笑)」

昔なつかしの『ファーストキス事件』の話題でひとしきり盛り上がる2人。

「そんなことじゃなくてさ…どうしても言いたいんだと、アイツが…」
「……何を?」
「…『ありがとう』って…お前さんに…」
「…えっ?…安浦が、俺に?」
「…亜紀ちゃんを、支えてくれて…ありがとう、って」
「!!……な、何で?」
「…『俺でも、他の誰でもダメだった。松本じゃなきゃダメだったんだよ』…って言ってたよ」
「…………」
「…『松本がいたから、廣瀬が頑張れた。松本以外の誰かじゃ、廣瀬はあんなに頑張れなかったよ、絶対』って…さ」
「……安浦が…そんなことを…」
「…ふたりが結婚する、って聞いて…どうしても言いたかったんだと、それを…」

朔の仇敵?の伝言を伝え終わると、龍之介はタバコに火をつけ、とても美味そうに煙を吐き出す。

「……そっか…うれしいな、正直…」
「だろ?」
「うん…俺、今度電話してみるよ、アイツに…」
「そうしてやれよ。朔ちゃんはさ、色んな奴を負かしてここまで来たんだから…」
「…そんなこと、ないって(苦笑)」
「…ボウズを負かし、安浦を負かし…他にも亜紀ちゃんの事が好きだった奴らなんて、腐る程いただろうしな…」
「…………(少し満足気な表情)」
「…たくさんの奴を泣かせて来たんだ…ちゃんと、幸せになんねーとな」
「だね…わかってるよ、スケちゃん…」
「そうかい…」
「…うん……俺、絶対に幸せにするよ、亜紀を…」
「…………………」
「……スケちゃん?」
「…………だから、野暮だって言うんだ…お前さんは…」
「えっ?」

普段よりも2オクターブほど低い龍之介の声と、その発言内容に、朔は驚いた表情を示す。

「…幸せにするとか、考えなくていいんだよ。お前さん自身が幸せになることを考えてりゃいーの!…あとは、亜紀ちゃんがどーにかしてくれるよ(笑)」
「そっ!そんな…そこまで頼りなくないよ!俺だって…」
「違うって。 お前さんの幸せこそが、亜紀ちゃんの幸せだって言ってんだよ」
「!!……スケちゃん…」
「…気取らずにさ、今まで通りでいいんじゃねぇの?朔ちゃんは。多分、そんな所に惚れたんだろうし…」
「…………」
「だいたい『幸せにする!』とか気張らなくても、自分で勝手に幸せになるよ、亜紀ちゃんは(笑) 幸せにしてもらおう…とか、そんなヤワなこと考えるタマじゃねぇだろ、あの娘は?」
「……そうだね(苦笑)…その通りだ…」
「だろっ?(ニヤリ)」
「うん……ありがとう、スケちゃん…」
「…どう、いたしまして」
「………絶対、幸せになるよ…俺…」
「………………だからさぁ…」
「えっ?」
「…んなこたぁ、いちいち口に出さなくていいんだよ!心の中で思ってりゃいいじゃねぇか、好きなだけ!」
「………ごめん(苦笑)」
「……しょーがねぇなぁ、もう(苦笑)」


「ねぇ!!何時まで2人で、こそこそ話してるのよ!!」

絶叫マシーン、再び。居間の方角から智世の大きな叱責が届く。

「…やべぇ、ウチのが怒ってるよ〜」
「そろそろ、戻りますか…」

幼馴染2名、再び顔を見合わせ苦笑しながら、連れ添って宴会場へと戻って行く。


「すいませ〜ん!ちょっと長引いちゃいました〜」
「遅いよ!どうせロクでもないこと、朔に吹き込んでたんでしょっ!?」
「…はっ?結婚って、こんなに素晴らしいもんだよ…って話をしてただけだけど?」
「…ウソ!ウソだ!絶対、ウソだね!」
「えっ、違うの?お前、そう思ってないの?」

龍之介のすっ呆けたコメントと表情に、周囲は一層ドッ!!と盛り上がる。
その様子を端から見ている朔もニコニコ笑っている。もう、気分はかなり落ち着いたらしい。

「…おい、朔!お前、何処行ってたんだよ!? 俺を置いて…寂しいじゃねーかよ…」
「…今度は泣き酒かよ、ボウズ(笑)」
「…この野郎!お前、飲みが全然っ足りねぇんだよ!俺が鍛え直してやる!」
「おっ…望むところだ、受けて立ってやるよ!!」

悪酔いしているボウズと肩を抱き合いながら、朔は利き手で目の前のグラスをヒョイと空にする。
疲れてたし、早く横になりたかったし、片付けたい事もあるにはあったけど……

(……せっかく、だもんな…明日のことは、明日考えよ…)

今日は思い切り楽しんじゃおう。 そう、決めた。
そんな吹っ切れた朔の様子を見て、周囲も一段と盛り上がる。皆がビールを持って一斉に彼へと群がり出した。
...2007/11/25(Sun) 16:39 ID:ocDtM2aQ    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:にわかマニア
 ほのぼのとした気持ちで拝読させて頂きました。
 最終回のテープに出てきた「私と大木君は似ている」をここに持ってきたのですね。第1話のリクエスト葉書が読まれた日の夜釣りの場面や,第8話の防波堤で後ろから突き落としそうになる場面が浮かんできました。
 スケちゃんは何となく,あの4人組(ヒロインを入れれば5人組)の中で,最も相談役的な役回りのようなイメージがありますが,だから亜紀もあのテープの中で,スケちゃんに対してだけ「サクちゃんを宜しく」と託したのでしょうね。
 「お前さん自身が幸せになることを考えてりゃいーの… お前さんの幸せこそが亜紀ちゃんの幸せ」というところでは,第8話のプロポーズのセリフが「俺を幸せにして」だったのを思い出しました。
...2007/11/26(Mon) 12:57 ID:yslTgtjQ    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
>にわかマニア様

いつも御愛読頂き、ありがとうございますm(_ _)m

>スケちゃんは何となく,最も相談役的な役回りのようなイメージ

おっしゃる通りですね。彼に対しては『非常に頭のいい男』という印象を抱いてます。いや、テストの点数とか漢字の読み書きの類じゃないですよw
何て言うか、勘所が鋭いんでしょうね。パッと周囲の空気を読みきってしまう能力に秀でてる…そういう奴って周りが見える分、カッコつけしいになり易いんですよねw

だからスケちゃんの中には、自然体で生き続ける朔へのある種の羨望と、(自分と)同タイプのくせに朔みたいな相手をゲットした事でノビノビし出した亜紀への羨望があったのかな…等と考えてます。後付ですがw

>第8話のプロポーズのセリフが

このシーン、3話の『お姫様だっこ』の次に好きです。朔の優しさを余す所なく描いた素晴らしい演技と演出でした。
当然、あとで出て来ます>このシーンの焼き直し


お待たせしました。ヒロインとその父、満を持しての登場です。
これで11人、揃い踏みです。この続きは来年の……時期不明ですm(_ _)m ストックが底を尽きましたm(_ _)m
但し、絶対続けますので!! 行方不明にはなりません!!
姿を晦ます時は『…探さないで下さい』の一言を書き残した上で逃亡しますm(_ _)m
...2007/12/01(Sat) 17:26 ID:eBhbMRU6    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
「おめでとう、朔!」
「おめでとう!この野郎!」
「お兄ちゃん、おめでとう!」
「…おめでとう、お前さん」
「……まさか、あんたに先越されるとはねぇ…この、不届き者!」
「いっ、いっぺんに来られても(苦笑) 今から順々に片付けますから!」

年功序列により、谷田部が優先して注ぐ。その並々としたグラスを高くに翳し、主人公は一言。

「…みんな!ありがとう!…松本朔太郎、行きまーす!!!!」

昔、何かのアニメで聞いた様なフレーズを叫ぶと、クイッと一気飲み。周囲はますますヤンヤの喝采。
朔もノッて来た。さぁ、夜はこれから!! 宴会がピークに向け急上昇!!……し掛けた、その刹那


ピンポーン♪


その場の全員にストップを掛けるかの如きタイミングで、松本家のチャイムが無機質に鳴り響いた。


「…なんだい、こんな時間に!非常識だねぇ…」
「…いや…非常識なのは、ウチでしょ…」
「………いいや。朔。あんた、行っておいで」
「おっ、俺?」
「あんたが一番、酔ってないだろ!いいから早く行っといでよ!」

理不尽な母の命令を受け、朔は不服そうに父を見やる。
父は、ニコニコしている。先程と同じ様に。ただ唯一、眼の光と力だけが全く異なっていた。

(……言い出したら、聞かねぇんだから…早く行ってこいよ、いいから…)

その弱々しさと頼りなさは、さっきまでの父と別人であった。
そして、そんな父の姿が、ごく近い将来の自分の立場と完璧にラッピングした様な気がした。

「…………」 脳裏に浮かんだ予知夢を振り払うべく、彼は首を振りながら廊下へ出て行く。


ピンポーン♪


「…はいはいっ、いま行きますんで!」

(………はい、は…1回でいい…)

「…………えっ?」

何かが、聞こえた気がした。 いや、悪寒がした。
9年間、叱咤され続けて来た落ち着きのある低い音程が、なぜか脳裏をよぎる。

…じっ、と目を凝らして玄関先を見る。曇り硝子の向こうは、闇に紛れて殆ど見えない。
だが、人が『ひとり』だけ立っている様子だ。シルエットから判断するに、女性っぽい。近隣の方のクレームだろうか。

(……気の、せいか…な…?)

何か強烈なプレッシャーを感じ取り、彼は玄関まで辿り着くことが出来ない。
そんな朔を催促する様に、もう1回、呼び鈴が鳴った。


ピンポーン♪


…仕方が無い、謝っちゃおう。祝い事なんで…と言えば、小言は言われても許してくれるでしょ。
覚悟を決めた彼は框を降り、そろそろ…という感じで扉を開け、相手と顔を合さぬ様に顔を出す。

「…すっ、すいません!こんな夜分遅くに…・………って…」
「……………………」
「…………えっ?……」
「……………………」
「………えぇっ!?…」
「……………………」

そこには、彼にとっての『太陽』が、燦然とそびえ立っていた。

「……あ………亜紀?…」
「……………………」

太陽は、輝いている。 いや、怒りに燃えている…と言った方が適切であろうか?
身に纏っている赤のボーダーは、燦々と燃え盛る彼女の心中を表すが如く、夜目へと激しく突き刺さり、その髪型 − そう、太陽が纏わり突く雲を振り払うが如く、セミロングの髪を後ろで束ね、雲一片もない夕空の様に細い輪郭と鋭い目つきを露にした今の彼女の険しさは、普段の彼女にはないものだ。

『…ずっと……ずーっと、サクちゃん!!って呼んでて、いい!?』

つい先刻、そんな乙女チックな台詞を、乙女チックに叫んでいた女性と同一人物とは思えなかった。
いや、思いたくなかった。


世界で、いちばん恐いものを、見た


「……もう…終りましたけど……今日の、診察は…」
「…ホント、つまんないよね。 松本君って」
「つっ!………つまんない、って…」


世界で、いちばん冷たい音を、聞いた
...2007/12/01(Sat) 17:29 ID:eBhbMRU6    

             Re: before A.S〜『空港』のないセカ...  Name:祖父がカメラマン
「ふぅぅ〜〜ん、私に内緒で、こういうことするんだ? あ・な・た・は」

落ち込む朔を尻目に、亜紀は入り慣れた松本家の玄関に『ひとりで』ずかずかと入り込む。
当然、朔は亜紀の後を追う。これこそが『彼』の作戦であった。

「…隠し事、するんだね…」
「……だ、だから…俺も、知らなかっ…」
「別れましょ(キッパリ)」
「…えぇぇぇぇーーーっ!?」
「……もう、一緒に生きていく自信が…なくなっちゃったよ…(俯く)」
「…ちょ!!ちょっと……ごっ、誤解…」
「………君は…あれか?」

狼狽する朔の背後から届く、世界でいちばん冷たい音 PartU
それも今日は、通常の『お前』扱いではなく、久々の『君』ヴァージョンで。

「……娘だけじゃなく…俺から、女房まで奪うつもりか?」
「!!!…そっ…そっ…そそっ……そんな…」
「そっ、そーだったの!? サクちゃん!!!!」
「だっ!…だっ、だから……ち、ちっ、違うよ!」
「…すまんな、亜紀……ここまでの悪党とは、俺も見抜けなかった…」
「…うぅん。違うよ、お父さん。9年間も、こんなに男に騙され続けた私が、バカなんだよ…」
「………………」

強烈無比かつ矢継ぎ早に繰り出される父娘タッグの猛攻に、朔は身を硬くし、ひたすら耐えている。
いや、わざとやっているのは、わかっている。
そうだとしてもだ。性質が悪すぎるんじゃないか、この親子は?
また、そういう悪ノリを真顔でやり通すのは、つくづく勘弁して欲しい…と思った。


あの日の病院での光景が脳裏を過ぎる。 朔は今すぐ、卒倒したかった。


「……で、何時まで玄関に立たされてればいいんだ?俺達は…」
「……あ、あぁっ!…すっ、すいませ…」
「…それとも、あれか?『呼ばれてもないのに、何を厚かましい』とでも思っているのか?」
「!!!…だっ………だっ…だっ、だっ、誰も……」

誰も、そんなこと思ってませんよ or 誰も、言ってないじゃないですか、そんなこと。
その何れかを言いたかったのだろう、きっと。
意表を付かれ過ぎて、朔はその1/4程度も言葉に出来なかったが。

(…………)
花嫁の父は、ちらっと横目で花嫁の様子を確認する。
…必死で目を吊り上げてはいるものの、両の頬がぷるぷると震え、よく見れば左手で自分の太腿をつねっている。
(…ダメだな…次、なんかあったら爆笑するな、こりゃ…)
もう少し、ストレス発散を兼ねて朔で遊びたかったが、肝心の娘の様子がこれでは仕方が無い。

「……いいから…早く、案内しなさい」
「………は…はい…」

真は自ら話題を打ち切り、嬌声が響く松本家の食卓へと歩を進めた。



「……もう…ずるいよ…(ビシッ)」
「…いっ!……いたいよ、亜紀…」

玄関で靴を脱ぎ、框を上がり、居間へ向うその数秒間で、朔は亜紀のトーアカマタ攻撃を受け続けている。
脇腹中心に、もう十数発は被弾しただろうか?
亜紀にとっては、何故か仲間はずれにされた寂しさもあるが、それは朔に言ってもしょうがない。
居間で楽しんでる連中 − 特に自分の母親と、親友の(はずの)旧・聖子ちゃんカットの2名 − に対しての怒りを、
まぁ簡単に言うなら、朔に八つ当たりしてるに過ぎない。

むしろ今回の件で、朔個人に対しては、ある種の感謝の気持ちしかない。
(……いいもの、見せてもらっちゃったなぁ…サクちゃんに…)
それくらい、先ほどの父と自分に責められた時の朔のリアクションの数々は、彼女にとってツボだった。


でも。八つ当たりされた方からすれば、たまったもんではない。
彼は心中密やかに、リベンジの念を強く持ち始めていた。
その対象はもちろん、自分を木っ端微塵に打ち砕いた、婚約者と、その父親に対して。


(……だいたいなぁ…) 亜紀の地獄突きを受けながら、朔はひとり、心の中で呟く。

いつまでも、高校生の頃のサクちゃんのままだと思うなよ。
俺だって、病院では『期待の星』って言われてんだ……何の期待だか、よくわかってないけど…
…と、とにかく…俺だって社会人だ。それなりに処世術の一つや二つ、持ってるんだよ…のか?…

まったく自信と根拠の無い強がりを、朔は心中で繰り返す。
何はともあれ、宮浦市立病院の『期待の星』とやらが思い付いた処世術は、たったひとつ。

(……俺…絶っ対に、お義母さんのこと、大切にしよ…)

さっきの、たった2〜3分で味わった、あの恐怖。
息つく間もなく攻撃され、反撃の暇も与えられず、黙り込めば追撃をねじ込まれる。
あんな場面が・あんな瞬間が、これからも。
それも、さっきの様なからかいモードではなく。例えば亜紀が何かで臍を曲げて、実家に帰っちゃった時。
そこで、あの父娘に囲まれた時。あの父娘に攻め立てられた時。孤立無援で耐えられるのか、俺は?

頼れるのは、綾子さんだけ。それが、朔の辿り着いた結論。

(……絶対に、ポイント稼ぐぞ…今日は…)

これから数秒後の廣瀬家全員の対面式を前に、彼は決意を固くする。
それは、今日の宴会でいまいち自分のスタンスを見つけられなかった彼にとって、大きな参加意義となった。
ただし、冷静に考えれば。
既に泥酔状態の綾子にいくらサービスした所で、彼女がその事を覚えている訳はないのだが。


そんなこんなで、花嫁とその父。 花婿にエスコートされ、とうとう居間の前に到着。
...2007/12/01(Sat) 17:31 ID:eBhbMRU6    

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