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過去ログNo1
オリジナル・ストーリー  Name:極夜
こんにちは、極夜です。

みなさんが投稿されている作品を拝見しまして、私も機会があれば作品を書いてみたいなぁ…と思いまして、私も書いてみようと思います。
しかし、私は中学三年生で、約一ヵ月後に入試が控えています。なので、しばらくは投稿できないと思います。そこはご了承ください。

さて、私は、『ラヂオの時間』『みんなのいえ』そして、『THE 有頂天ホテル』で有名な三谷幸喜さんの作る作品のように、ユーモアあふれる作品を作ってみたいと思います。

みなさんからの意見も募集したいと思います。できる限り意見を採用したいと思いますが、できないこともあります。そこもご了承ください。
もちろん、テーマは「世界の中心で、愛をさけぶ」です。
...2006/02/13(Mon) 16:37 ID:neZA5FXc    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:ぶんじゃく
楽しみにしています。受験と共に頑張ってください。
...2006/02/14(Tue) 01:38 ID:pd5IPRPw <URL>   

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:ぱん太
極夜さん

 こんばんは。初めまして。当方、専門バカのアホ外科医でございます。僕も執筆を試みているのですが、なかなか時間が無い&文才が無いで書けない日々が続いています。ノンフィクションなら書けるんですが。学術論文とか.................。
 高校入試ですか。今年の高校入試ってことは、平成の生まれですね。頑張ってくださいませ。僕は平成元年度の高校卒業です。センター試験の元年でもありますね。年喰ったなぁ〜。家出(大学に入って上京)してから、もう16年かぁ〜。
 昭和から平成にかわった1月7日は中学のクラス会やってました。他のクラス担任だった先生から「天皇陛下が崩御したのに、クラス会やんの??」と突っ込まれました。当方、クソ田舎の出身なので、周りはヤンキー(死後?)ばっかりです。高校入試に落ちて、就職した方たちが、当時流行っていたのかビーバップハイスクールのようなアタマしてました(知ってます?)。97人の中学同期のうち、20人も落ちるアホ中学でした。学区(郡内)で一番アホな中学でした。僕も例外なく、推薦入試を受けた県内トップの高校に落ち、近所の三流高校(?)に行きました。うちの3人兄弟、みんな、この三流高校です。三流高校なのに、他のどこにも地理的に行けない一部の天才がいたりして、5〜60人は国公立大学には入れます。高校までの通学距離が20キロ以上なんてオネーチャンもいました。それもチャリンコ通学。同じ町内だというのに。スゲェ〜環境.............。高校1年生の時には、上の兄貴の同期が教育実習に来ておもちゃにされ(?)、3年生のときには下の兄貴が教育実習に来て、みんなからおもちゃにされました。休み時間になると皆で「お〜い、ぱ太の兄ちゃん、見に行こうぜ!」と職員室にゾロゾロと.........。兄貴が教育実習に来て良かったなと思ったのは、一緒に車で通学できたことくらいでしょうか。家から高校までは8キロの山道だったので、2週間楽させて貰いました。部活の指導も僕の所属していた陸上部だったので、帰りも一緒と言うことで。
 高校は選べるなら、とことん選んだ方が良いですよ。僕は県内にある地域医療に携わる医師を育てる某医科大学に行きたいがために、県内トップの高校を受験し(落ちましたけど.............。ついでにやる気が無くなって、学区内の進学校を敬遠し、三流高校に行きました)、結果的に地元の高校に進学しました。後で知ったことですが、僕の行きたかった某J大学は、三流高校からは受け入れないようです。某J大学にこだわっていなければ、中学受験で合格していた東京の私立に進学していました。私立進学は、親の「お兄ちゃんと一緒に住むなら良いよ」との条件でしたが、クソ兄貴は、京都に行きやがった。結果的にノンビリと田舎で中学・高校時代を過ごすことになりました。大学入試は、某J大学、東大、慶応落ちまくり、結果的には都内の某国立大学医学部に入学しました。そういやぁ〜、慶応入試の前日、渋谷に行ったら、オウムが踊ってました。悪い予感はしてたんだけどなぁ〜。
 中学では、どうして勝てない親友(現経済産業省の課長補佐)がいて、高校でも勝てない奴(コイツは大学で遊んでしまったらしく、今は地元で銀行員やってます)がいたのに、入学した国立大学は首席入学&首席卒業でした。正直「この大学、アホかよ??」って思っちゃいました。駅前に建つ立派な附属病院をお持ちなのですが、僕は一度も働いたことが無い。卒業のときに大学に残るように慰留されましたが、僕はどうしても学外で心臓手術の多い病院に出たかったし、腕も磨きたかった。ちなみに、経済産業省の課長補佐殿は、卒業時に学長が土下座して慰留をしたそうです(ホントかな??)。コイツは、中学の頃からどうしても経済政策をやりたかったらしく、大学も高校(コイツは学区内の進学校です)の担任から「東大を受験しろ」と言われたのを無視して喧嘩し、結果的に一橋だけしか受験しなかったようです。学生結婚(と言っても卒業間際の2月ですが)した奥様はTBSに就職。親友がOECDに赴任になると、半年遅れて漸くパリ支局に異動になったと思ったら、TBSはオウム関連のゴタゴタで800人規模(当時のTBSの社員数が1300人くらいだったと思います)の人事異動を決行し、親友の奥様にも帰国命令が。結果的には受け入れずに、退社しました。今は、大学で教員やってます。ついでに、この奥様を介して合コンで知り合った某アナウンサーは、先日結婚されました。そりゃ、34歳(今年35歳)だもんな。そろそろ結婚しないと、行き遅れますわな。でも、昨年末までは、「誰か、お医者さん紹介して」云々のメールが届いてました。この方、ご実家が開業医でございます。僕の結婚式のときに「司会やって!」って頼んだら「絶対に嫌だ!」と返されました。
 実は、僕も癌患者です。2003年12月1日に膵臓癌の手術を受け、去年の8月には肝臓に転移した癌を切除しました。思いっきり、医者の不養生です。ちなみに、下の兄貴は骨肉腫が全身に転移し、31歳で亡くなりました。最終的にはホスピスで亡くなりましたが、ホスピス入所前に入院していた東京医科大学八王子医療センターは骨paget(時間が出来たら調べてみてください。こつページェットと読みます)からの癌転化と診断していますが、後日、慶応の講師に診断を仰いだところ、「これ最初から癌だよ」との診断。結果的に亡くなるんであっても、兄貴が当初の段階でセカンドオピニオンを求めていたら、もう少し違ってきたかも知れない。一方の僕は、激しい腹痛のため、救急車で勤務先の病院に行ったら、膵臓の影を指摘され、「このまま検査入院だね」と入院させられた次第。当初入院していた内科病棟では、教授回診で、教授から神妙そうな顔で「残念ながら悪性腫瘍を疑います。外科では手術可能と診断しているようなので、明日にでも転床していただきます」と言われました。家内は「もう少し、経過観察できないんですか?」と食い下がると、「膵臓癌は進行が早いんです。すぐに手術した方が良い。幸いにも肝胆膵外科の教授が主治医になってくれるようです。先生(僕のこと)の上司でいらっしゃいますもんね。」と言われました。当時の僕は、臨床研修修了後、アメリカに渡り、5年間心臓移植の手解きを受け、帰国したばかり。心臓外科に所属して一般の心臓手術を手掛けながら、移植外科にも籍を置き、再生医療の研究をしていました。肝胆膵外科の教授は移植外科の教授も兼任し、僕の直属の上司だった訳です。外科に転床すると、すぐに家内とともに教授室に呼ばれ、カルテ、検査資料、レントゲンフィルムをデスクの上に並べられて「どう診るよ?」と聞かれました。「大血管や神経叢にも絡んでいません。メタ(転移)も無いようなので、手術可能と言うところでしょうか」と応えた気がします。「その通りだね。手術は膵体尾部(後ろ半分てことです)切除と脾臓の合併切除を行います。正味、3時間半くらいでしょう。多分、輸血も必要ないでしょう。ステージは、術中に診てから決まります」と教授。ついでに、「今日から手術が終わるまで風邪引くといけないから外出禁止」と一言。家内に対しては「奥さんも大変だと思うけどさ、まぁ〜、一緒に頑張りましょう。今日は、奥さんが待っていると思って、前の仕事急いで終わらせて来たんだよ」と。ちなみに、家内もこの大学の教官です。

 癌て何が怖いんですかね。自分自身、分からなくなることがあります。心臓病や脳血管障害と違って、突然死が無いので、死への準備が出来ると言う人もいます。最近では告知は当たり前ですが、ほんの10年前まではタブーでした。僕が学生のときも、しばしば、そんな現場に遭遇しました。兄貴が亡くなったのは97年ですが、告知不要(告知していなくても入れる)ホスピスに入っていたので、兄貴が自分に先が無いのを悟ったのは、亡くなる1ヶ月前だったようです。受け入れるまでは、職場復帰への意欲もあったようですし、病身の自分を見られたくなかったのか、友人との接触も一切断ち切っていました。受け入れてからは、友人とも会ったり、自分の死後のことを親に話したりしたようです。それも、1週間程度だったのかなぁ〜。その後は、脳転移により失明し、全身不随に陥り、寝たきりとなりましたね。

 僕はと言うと、昨年9月から職場に復帰し、こんな時間まで遊んでいるアホ外科医です。

 今日は、この辺でオヤスミします。
 ではでは。
...2006/02/14(Tue) 02:12 ID:vZXES.1s    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:極夜
ぶんじゃくさん、ばん太さん、こんにちは。
良い作品を書くことができるのか心配ですが(国語の点数がものすごく悪いので)、精一杯頑張りたいと思います。(受験も)
お2人ともすごい時間に書き込んでいますね。(笑)

追加情報:@オリジナル・ストーリーなどと大げさなことを書きましたが、短編集になると思います。

A皆さんも話を書きたくなりましたら、意見を出すだけでなく、お話を投稿してもかまいません。
...2006/02/14(Tue) 17:50 ID:xe9rz7UY    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:極夜
今日はまるで春が訪れたかのように暖かいですね。(関東地方)眠い・・・(笑)

さてさて、第一回目のテーマは、『どすこいロミオとジュリエット』にしたいと思います。(変わるかもしれません)
亜紀が病気に倒れていない設定にする予定です。基本的にどの作品もそうする予定です・・・。
少し『ラヂオの時間』に似ているかもしれません。

また、時間があれば投稿します。
...2006/02/15(Wed) 15:41 ID:LKlXG5o2    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:極夜
とりあえず、1話が完成しました。長いかも・・・。

『二年D組のロミオとジュリエット』…第1話

サク:1987年7月のある日。担任の矢田部が9月の始めに開催される僕達の高校、宮浦高校の学園祭のクラスの出し物を一方的に決定した。

「はーい注目!2年D組はこれをやります。」
黒板に力強い字で『ロミオとジュリエット』と書かれていた。
「うそー」「まじぃ!?」などと生徒たちが反発したが、
「ブーブー言わない!!」と谷田部に制された。さらに、「はーい、後学級委員、よろしく」
と言い、教室の裏側に移動した。
谷田部の言葉を受け、廣瀬亜紀と安浦が席を立ち、黒板の前に移動する。
廊下側の一番後ろの席で、亜紀を見つめる松本朔太郎(サク)にほほえむ亜紀。それをみてサクもにやける。そこに、
「デレデレすんな!この…色ボケ魔人!!」
と、サクの前の席の中川顕良(ボウズ)が叫んだ。亜紀はサクと付き合っている。しかし、ボウズはまだ亜紀に思いを寄せている。
「魔人って…変な奴だなぁ。お前さん。」
と廊下に寝そべっている大木龍之介(スケちゃん)が言う。彼が廊下にいるのは、違うクラスだからだ。寝そべっているのは、谷田部に見つからないようにする為だ。
しかし、
「松本、中川、大木!!」
といつも谷田部に見つかってしまう。
サク、ボウズ、スケちゃん、STOOD UP!そして、スケちゃんは自分のクラスに逃げるようにして帰る。
それを見てほほえむ亜紀と上田智世。智世はスケちゃんにひそかに思いを寄せている。ちなみに、サク、スケちゃん、ボウズ、智世は幼なじみ。

「ロミオ、ジュリエット、演出、脚本以外は全て決まりました。やりたい人、いませんか。」
と、安浦。しかし、誰も挙手しない。
くじ引きで決めることになった。(谷田部の提案)

数分後・・・
ジュリエットは池田久美、ロミオは安浦、そして・・・
「サクちゃんどうしよう。私、脚本になっちゃった。」
とサクの席の横にしゃがんでいる亜紀が言った。亜紀は脚本の当たりくじをひいたのだ。
「日ごろの行いが悪いからだよ。イタズラばっかり。だからバチが当たったんだよ。(笑)俺は当たりひかないよ。絶対」
とニヤけながら、サクはくじを引きにいく。
その裏で亜紀は膨れっ面。
しかし・・・

授業の終わりを告げるチャイムが校内に響く。
「・・・・・・」
声が出ないサク。それを見て、亜紀はサクが演出のくじを引いたことを知った。
いつまでたっても動かないサク。そこで
(しょうがないなぁ)
と思い、亜紀は、
「サクちゃん、上履きの上ににゴキブリ、いるよ。」
と言った。
「えっ!!!」
と思わず足元を見るサク。しかし、上履きの上にゴキブリは一匹もいない。
「ハハハハッ!いるわけないじゃん、ゴキブリ。」
と、亜紀は笑う。
「・・・そういうとこ、ホント意地悪だよね、亜紀。」
とサクは言った。
すると、亜紀は突然サクの腕をつかみ、
「わらわは、コロッケパンが食べたいぞよ。」
と言い(with smile)、歩き出した。

昼休みだった。
...2006/02/17(Fri) 19:50 ID:hXJAgqgM    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:極夜
試しに読んでみましたが、そんなに長くないですね。意外と。
駄作です。すみません。
...2006/02/17(Fri) 19:54 ID:hXJAgqgM    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:SATO
極夜さん
早速読みました。
学園コメディーみたいで面白いです。
谷田部先生の「ブーブー言わない!」は今でも顔が思い浮かぶくらいの名セリフだと思います。この一言で「強権発動」してしまうところが何か好きですね・・・
...2006/02/17(Fri) 23:59 ID:TwxvYc3.    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:ぱん太
極夜さん

 こんばんは。
 なかなかの力作ですね。文才の無い僕には難しいことに気がつきました。文章(小説)を書ける才能ってスゴイことですよね。新聞社でアルバイトしていたせいか、文章を書くと新聞記事みたいになっちゃう。

 さてさて、僕も帰宅しますかね。今日疲れたぁ〜〜。

 ではでは、執筆と受験勉強頑張ってくださいませ。
...2006/02/18(Sat) 02:37 ID:KDCtcBdI    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:極夜
SATOさん、こんにちは。
これからもっと盛り上げていこうと思います。
私の塾にも谷田部先生のような熱血(?)な先生がいます。やはり、厳しさの中にも優しさが込められています。

ばん太さん、こんにちは。
お風呂、勉強をしていない時間などを使って一生懸命考えました。
新聞社でのアルバイトを生かせばきっと表現豊な作品ができるのではないか、と思います。ゆっくり休んで疲れを取ってください。

そろそろ塾の時間だ・・・。(泣)
...2006/02/18(Sat) 09:30 ID:jALqJqj6    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:極夜
第2話です。

『2年D組のロミオとジュリエット』…2話

サク、亜紀、スケちゃん、ボウズ、智世は学校の屋上にいた。皆コロッケパンを食べている。
「へえ、仲良く演出と脚本かい、お前さんら。」
とスケちゃんが言った。それを聞いて一気に2人分のコロッケパンを頬張るボウズ。智世はその横で坊主の食欲に呆れていた。
ボウズに対し、さっきからサクは食欲が無い。
「サクちゃん、食べないなら私が食べちゃうよ。」
と亜紀がサクのコロッケパンに手を伸ばした。
「ストップ、亜紀!」
策が慌てて顔をあげる。と、そこに、ちょうどコロッケパンを頬張っていたボウズの姿がサクの目にとまる。
「うおっ!これだ!」
と、サクが突然叫んだ。ビックリする亜紀、スケちゃん、智世、ボウズ。ボウズはパンをのどに詰まらせた。
「どうしたの、サク!そんな大声出して!」
今度は智世が叫んだ。その後ろでボウズは苦しそうだ。ボウズの背中をスケちゃんがさすっている。
「今、坊主の食い意地見て思いついたんだよ、案を。相撲部のロミオとジュリエットが恋する物語がいいと思う!日本風って事で相撲部。」
とサクは続けた。
いきなりテンションが高くなったサクに亜紀は笑顔。
「話はどんな感じなの、サクちゃん。」
「あっ!知りたい!教えてよ、サク。」
と亜紀と智世が作に質問攻めをする。
しかし、
「それはまだ・・・」
とサクが言った。まだストーリーは決まっていないらしい。
そのとき、チャイムが鳴った。
「やべ、もう昼休み終わりかよ!」
とスケちゃんがもうダッシュで走り、教室に向かっていった。そのあとに智世、復活したボウズが続く。
「サクちゃん、早く!」
と、亜紀がサクを急かす。
「ひはひふっへ!」通訳:今行くって!
と口がハムスターのように膨らんだサクが叫んだ。どうやら、食べる時間が足りなかったので慌ててパンを詰め込んだようだ。

そして、掃除の時間・・・
サクは水道でバケツに水を入れている。
そこに亜紀が接近してきた。
「サクちゃん、決まった?お話。」
と質問する亜紀に、
「まだ。後で考えるんだよ。」
とサクが言った。
すると、亜紀は満面の笑みで、
「じゃあ、後で一緒に考えよーよ。」
といい、その場を立ち去ろうとした。しかし、サクの足元に何か生き物のようなものを発見。
「サクちゃん、足元にゴキブリ・・・」
と言ったが、サクはいたずらだと思い込み、
「もう騙されないよ。」
と足元を見た。

その後すぐ、サクの悲鳴が廊下中に響き、生徒達の注目をあつめたのはいうまでも無い。

その数秒後、ゴキブリが廊下をサササッと現場から逃走しているのが目撃された。
...2006/02/18(Sat) 13:12 ID:rTzW7rIs    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:極夜
訂正がありますね。
サクが策とか、作になってます。
あと、1話では、谷田部先生が矢田部になっているところがありますね。
他にもあるかもしれません。
...2006/02/18(Sat) 13:20 ID:rTzW7rIs    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:極夜
第3話です。

『2年D組のロミオとジュリエット』…第3話

2学期が始まった。

2年D組はサクと亜紀が夜まで考えた「対立する男女それぞれの相撲部が健気なロミオとジュリエットの姿に心を引かれ和解する」という話を劇で行うことにした。名づけて、『どすこいロミオとジュリエット』
ジュリエット役の池田は「冗談じゃない」と猛反対したが、サクのしつこい説得で渋々承諾した。

始業式の日の放課後も2年D組は劇の練習をしていた。
「あ〜、ようやく完成したぁ。」
と、智世が目の前においてあるセット+小道具の山を見ていった。智世はこれらのものを作る係だったのだ。
「でも、できてよかった。」
と、亜紀が智世の横で言った彼女は智世がセットを作るのを手伝ったのだ。2人とも疲れたのか、地面に座っていた。
「いや〜、お疲れさん、ブース!」
「これ、廣瀬が手伝わなかったら、ひどいできだったろうな。」
と、見物に来ていたスケちゃんと、ボウズが言った。
普通なら、もっと早くセットが作れたのはさらなり。(「言うまでも無い。」っていう意味。・・・かな?)
「誰のせいでこんなに遅れたと思ってんのよ!」
と、智世が大きな声で怒鳴った。

時は約1週間前。松本写真館での出来事。

亜紀と智世が黙々とセットを作っていた。
しかし、
「ZZZZ……」
「お前さん、未だにオムツはやばいんじゃないんでちゅか?」
「うっせーよ!!!俺は相撲部員Aをやらなきゃいけねーから、こんな、紙でできたまわしをつけなきゃいけないことになってんだよ――――!」
と、寝ているサク、追いかけっこをしているスケちゃん&ボウズが時々2人の集中力を妨げる。(サクは関係ないかも)
「うっさい!黙りなさいよ〜!」
と、注意しても無駄。

数分後・・・

ドタン、バタン、ドッシ――――ン!!グシャッ!

「何、何の音?」
「セットの方かな。」
たこ焼きを買って戻ってきた智世と亜紀が行った。
「うわ…中川君」
「りゅ〜のすけ―――!!」
スケちゃんとボウズがせっかく二人が作ったセットや小道具をめちゃくちゃにしていたのだ。
「ZZZZ……」
約1名、爆睡中。
この後、サク、スケちゃん、ボウズは鉄拳を食らった。
そして、急遽セットの修理or作り直しが始まり、今にいたる。

「今日は練習終わり!今度の日曜日なんだけど、午前10時から午後2時まで練習をしたいと思います。お昼は、近所のパン屋さんが用意したいとおっしゃっていますので、用意する必要はありません。では、解散。」
という安浦の一言で本日の練習は終了した。

日曜日の昼食が原因で、大事件が起きるとは、誰も知る筈が無かった。
...2006/02/20(Mon) 18:56 ID:X/70P8V6    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:極夜
第4話!

『2年D組のロミオとジュリエット』…第4話

日曜日。この日は9月にもかかわらず、炎天下。

生徒達は実際に亜紀と智世が作った小道具を身に付けて練習をしている。
オフコース(もちろん)、女性陣には不評。
しかし、意外にも、男性人には大好評。練習の合間にふざけあっている者もいた。

グゥ〜〜〜〜

一人、また一人とお腹を鳴らしていく。そろそろ昼食の時間なのだ。太陽も南中(←理科で習う)している。
しかし、パンを届けてくれるはずのパン屋さんの車がやってこない。
しばらくして、谷田部が駆け寄り、
「さっき電話があったんだけど、パン屋さんの車、故障したんだって。誰か、パンを取りに行ってくれるとうれしいんだけど。」
と言った。
誰も行こうとするものはいなかった。
だから、
「行こう、サクちゃん、智世、中川君。」
と亜紀が3人に促す。
もちろん、3人は快く承諾した。4人はダッシュでパン屋さんへ向かった。

数分後、4人はパン屋さんに到着した。
「ありがとね、わざわざ。こんな暑い中。」
と、店員は声をかけ、パンを渡した。
「じゃ、失礼します。」
と4人はパン屋を去った。

走っていると、「おーい!」という聞き覚えのある声がした。スケちゃんの声だ。スケちゃんは、七輪を抱え、魚の入った袋を掲げて4人に手を振っていた。

ジュージューと魚が七輪の上で焼けている。魚の香ばしい匂いがあふれていた。
5人は先に焼きあがった魚を食べていた。
もらったパンはと言うと、炎天下の中、数十分間置きっぱなし。このままでは……

更に数分後、昼食を焼き魚で済ませたサク達4人はスケちゃんと別れた。
「もうこんな時間だ!急げ!怒られるぞ!」
とボウズが叫び、サク達はダッシュで学校へ向かった。

案の定、大遅刻の4人は、谷田部や、クラスメート達にこっぴどくしかられた。
その後、生徒達はパンを頬張った。
そして、午後の練習が行われ、日曜日の練習は終わった。
明後日は学園祭。皆気合を入れて帰っていった。
しかし・・・

稲代総合病院。
腹痛を訴える宮浦高校の生徒が殺到。全員2年D組の生徒だが、佐藤医師がそれを理解するのは不可能だった。

宮浦高校。
本日、学園祭前日の2年D組の出席者はクラス全体の半分ほどしかいなかった。
「……」
谷田部の表情は険しい。生徒達の表情も。
「ほとんどが…明日、来るのは無理みたい。」
意気消沈だった。

「やばいことになったなぁ、お前さん。」
と、スケちゃんが言った。
「ロミオとジュリエット役の池田と安浦もダウンだよ。どうしよう。」
と、智世。
「…よし。もうこれしかない。」
と、サクはスケちゃんとボウズの肩をガシッとつかんで言った。
「な、何だよ。サク。」
「おい、まさか…」
「サク?」
「サクちゃん…?」

そして、翌日。学園祭当日を迎えた。

―――続く!




今日、一気に投稿しました。
...2006/02/20(Mon) 19:57 ID:0w0DIP2s    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:SATO
学園祭の直前に集団食中毒ですか・・・
なんか、「スウィングガールズ」みたいな話で面白くなってきましたね。
スケちゃんを含めた5人はどうやって責任を取るのでしょうか(^^)
...2006/02/20(Mon) 21:37 ID:aPbln5qE    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:ぶんじゃく

盛り上がってきましたね、
やっぱり亜紀のいる文化祭 良いですね。
...2006/02/21(Tue) 01:23 ID:rkrzoak2 <URL>   

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:極夜
SATOさんのおっしゃるとおり、ちょっとスウィングガールズのハプニングを入れてみました。これからボウズとスケちゃんが・・・
健康な亜紀がいることでまた変わったセカチューができるんですね。
さて、今日は第5話を…


『2年D組のロミオとジュリエット』…第5話

ロミオ役の安浦、ジュリエット役の池田どころか、クラスの半分以上が欠席という事態が発生してしまった。
そして、今日は「どすこいロミオとジュリエット」の劇の本番の日。
学園祭のクラスの出し物が始まった。ちなみに、この出し物は、合唱コンクールのように点数が各学級に出され、点数が最も高かったクラスが大賞を取るようになっている。

1年生の出し物が終わり、2年生に移る。

スケちゃんのクラスがソーラン節を踊っていた。
「スケちゃん、絵になってる。」
スケちゃんの格好といい、踊りっぷりは漁師を想像させた。しかし、表情だけがおかしい。
そして、スケちゃんのクラスの演技は終了。次のクラスの出し物が始まった。ちなみに、サク達のクラスは2年生の一番最後。2学年で考えると、最も緊張する順番だ。(私のクラスの合唱コンクールも最後の方でドキドキしました。結果は・・・ビリに近かったりする。)

「お、おれ、とと、トイレに・・・」
と、お腹をこわしてもいないのに逃げようとするボウズ。そんな彼ををサクが鷲づかみ。バレバレだったのでボウズは逃走を諦めた。

そして…
「そろそろ準備しないと。このクラスの次だ。」
と、サクが立ち、ステージへと移動した。
亜紀、ボウズ、智世、クラスメート達、そして、なぜかスケちゃんも移動。

そして、ついにサク達の出番が来た。

「……マジでやるのか。」
「そうらしいな、お前さん。」
渋々会話するボウズとスケちゃん。彼らは、安浦&池田のかわりとして、ロミオとジュリエット役を演じることになったのだ。
「いくよ。」
と、亜紀がブザーを鳴らした。
会場にブーッという音が響いた。



終わりまでつなげたかったのですが、塾に行かなければなりませんので、ここで切ります。
非常に短い文章になっています。申し訳ありません。
...2006/02/21(Tue) 18:44 ID:SGGSoFa2    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:極夜


『2年D組のロミオとジュリエット』…最終話


劇が始まった。
「舞台はキュピレット学園相撲部。そこには男子相撲部と女子相撲部がありました。しかし、2つの相撲部はとても仲が悪く、毎日のようにケンカをしていました。」
智代のナレーション(臨時)に合わせて無事だった生徒達が演技をした。

「ある日、運命的な、また、禁断とも言える恋が芽生えました。」

「どすこ〜い、どすこい!」
ジュリエット(スケちゃん)が一人練習を続ける。そこに、部活を終え、帰宅するロミオ(ボウズ)登場。
ジュリエットの優雅なシコを見たロミオは見とれてしまう。
「そなたの優雅な……、ま、まま…るで天女だぁ…」
ボウズ、セリフを忘れた。そのせいで、焦って次のセリフが分からなくなったボウズ。
サクが奥でカンニングペーパーを出した。
「わ、我の名は、ロ…ロミ『夫』…と申す。そなたの名は?」
と、ロミオの名前がロミ夫になってしまった。
ブッと一瞬吹出すスケちゃんだが、
「ブブブ…(笑)、わ、私の名は、ジュ、ジュリ『江』・・ッブ!」
また、ジュリエットの名も、『ジュリ江』になってしまった。会場中で笑いが起きた。

そして、2人のワンシーンが終わる。

「何してんのよ、2人とも!」
と、智世が怒鳴る。
「まぁ、智世。名前ぐらいいいじゃない。結構うけてるぞよ。」
と、亜紀が2人をかばった。
そして、亜紀と智世は準備に取りかかる。

「…なぁ、お前さんよ。いい事思いついちゃったんだよなぁ。」
「なんだよ、スケちゃん。」
「チッチッチ。あのなぁ、この劇さ、俺達で内容変えちゃわない?」
「うおっ!な〜んかおもしろそうじゃん。気晴らしって分けだ。」
「そうそう。」
と、怪しげな会話をするスケちゃんとボウズ。
「出番だよ〜!」
と、智世の声が聞こえた。2人は「は〜い」とこたえてステージに飛び出した。

「ロミ夫とジュリ江の淡い恋が始まってまもなく、2つの部にそのことが知られてしま………えっ!?」
と、智世が驚いたのは、いきなりスケちゃんとボウズが台本と違うことをやっていたからだ。
いきなり、相撲部の大会が始まっていた。そんなシーンの予定はないはずだった。
「どうなってんだ?」

スケちゃんとボウズがしきり、勝手に話ができていたのだ。
「へ〜い、優勝フォ〜!(?)」
ロミ夫が大会に優勝。
「キャ〜、キャ〜、ジュリ江、負けちゃう〜」
スケちゃんの色っぽい演技。誰もがしらけるはずだか、なぜか大うけ。
結局、ジュリ江は決勝敗退。

「いい加減にしてよーーー!2人とも〜!」
「台本どおりにやって!」
と、注意されても無視。

そのとき、ヅラが取れた。
「あっ、ロ、ロミちゃん、わたし、ヅラだったの、ごめんね〜。」
ヅラが取れたスケちゃんがアドリブ。
「いいんだ、ジュリ江!ぼくは、君を愛しているんだ!!!」
「ロミ夫〜〜〜!」
ロミ夫とジュリ江は抱き合い、キスをした。

強制的に幕をとじたサク。しかし、それがグッドタイミングで、感動的(?)な作品ができたのだった。会場が拍手の音で埋め尽くされた。

午後は、サク達はアトラクションを楽しんだ。

そして、結果発表。
「大賞は、2年D組!」
見事に大賞を取った。
ハプニングはあったが、そんなことは忘れ、閉会式が終わるまでサク達ははしゃぎ続けたのだった。

END



終わりました!これで勉強に集中できます。感想と意見をよろしくお願いします。
...2006/02/22(Wed) 16:33 ID:8HGwQ1Q2    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋
『極夜』だと、白夜の対義語で、暗いイメージになってしまうことに気付きましたので、合格をイメージした『栄光の架橋』に名前を改めます。

作品を読み返しますと、「どすこいロミオとジュリエット」の内容が薄くなってしまいましたね。申し訳ありません。


余談:あと一週間ほどで入試で、その数日後が卒業式。……素晴らしい友達に出会えたのに、お別れ。何かさびしいです。
昨日、体育の授業でサッカーをしたとき、顔面にボールが当たりました(泣)

ホントに余談でした。クラスメートがこれ見てたらヤバイです。
...2006/02/25(Sat) 12:51 ID:kT.co69Q    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:SATO
極夜改め栄光の架橋さん
学園コメディーを楽しませていただきました。
入試頑張って下さいね。
それが終わったら新シリーズの開始を楽しみにしていますよ。
...2006/02/25(Sat) 23:42 ID:2vIMRFiU    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:ぱん太
極夜改め栄光の架橋さん

 こんばんは。あと1週間で入試ですか。頑張ってくださいませ。僕は三流高校だったので、「こんな高校落ちる方がアホなんだよ」くらいに思ってました。
 気を引き締めつつ、且つ緊張しすぎず、入試を楽しんでくださいね。
 ついでなので白状します。大学入試でカンニング(?)しました。英語の最初の方で分からなかった問題があって飛ばしていたのですが、試験終了1分前に前の席の受験生が答案用紙を立てて確認しているのが、たまたま目に入ってしまいました。僕の分からなかった問題が目に入り、急いで書き入れてしまった次第です。
 こんなことやってるから、罰があたって癌になるんでしょうね。ちなみに、合格発表を見に行った際、僕の前の受験番号はありませんでした。

 ではでは、栄光の架橋がかかることを祈っております。
...2006/02/26(Sun) 01:30 ID:Sd1FbNXs    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋
SATOさん
こんにちは。いつも書き込みをありがとうございます。大した作品ではなかったと思いますが、楽しんでもらえてうれしいです。はい、入試、頑張ります。
新作の案は、実は、少しできています。でも、今は入試が控えているので、終わるまでは作品の書き込みは控えます。本音を言わせてもらいますと、「早く受験から解放されて遊びたい。」です。(笑)

ぱん太さん
「ば」ではなく、「ぱ」だったんですね。失礼しました。私の受ける高校は県内でもレベルが高いところです。でも、何故か去年より倍率がかなり低いので、少し希望が持てます。できる限り頑張ったのなら、結果がどうでも気にしないようにはします。栄光の架橋を頑張ってかけます!でも、その直後、卒業なんですよね……友達と別れたくない…

余談(学校の出来事):給食でドレッシングを取り忘れてただゆでただけの野菜を一生懸命食べました…。ちなみに、今日の給食の献立は、私のクラスのリクエストメニューでした。
...2006/02/27(Mon) 15:33 ID:cARS4CC6    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:にわかマニア
 栄光の架橋さん
 なかなか楽しい学園コメディーでした。スケちゃんのあのキャラなら,さもありなんという感じですね。

>給食でドレッシングを取り忘れてただゆでただけの野菜を一生懸命食べました…。

 原作の夢島の献立は,確か,亜紀が「野菜スティックの盛り合わせ」を作っていたはずですが,何となくそのシーンが浮かんできました。
 原作の亜紀のセリフに「給食のカレービーンズ」とあることから,「謎解き」スレで「中学校における完全給食の実施」が話題になっていましたが,栄光の架橋さんの学校も完全給食なのですね。

 もうすぐ入試ですか。ご健闘をお祈りいたします。
...2006/02/28(Tue) 00:03 ID:ORJrPts2    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋
にわかマニアさん
書き込み、ありがとうございます。
ところで、完全給食って何ですか?(馬鹿ですみません…。)
昨日なんか、デザートを食べるスプーンを取りわすれ、慌てて取りました。お箸で食べるのは嫌だったんで・・・。
入試、正直言って不安です。学力はもちろん、(立ったら勉強しろって感じですが)空腹でお腹がなったりとか…頑張ります。


↓日記みたいですね。
余談:・今日、掃除の時間、トイレに入ったら、いるはずの人たちがいませんでした。隠れていたそうですけど。(?)
・こんな時期に席替え。もう卒業直前だからする必要は無かったと思いました。
・5時間目は社会だったのですが、担当の先生が変な声を出して生徒を笑わせていました。
・ちなみに、卒業式は「旅立ちの日に」と「生命が羽ばたくとき」を歌います。
・そういえば、前にコンセントがお尻に刺さった方がいましたなぁ…。Fさん(女子)
...2006/03/01(Wed) 16:40 ID:U/Evx4jA    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋
「立ったら」じゃなくて「だったら」でした。
...2006/03/01(Wed) 16:41 ID:U/Evx4jA    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:にわかマニア
>ところで、完全給食って何ですか?

 これは,ちょっとしたゼネレーション・ギャップでしたね。
 「完全給食」というのは,パンまたは米飯と副食一式が供される給食のことで,各自弁当持参で牛乳のみが提供される「ミルク給食」に対して用いられる言葉なのですが,最近では死語になってしまったかもしれませんね。
 もともとは,GHQの援助で脱脂粉乳(このコトバから鼻をつまんで喉に流し込んだイヤな思い出が浮かんでくるのは40代後半以上の人でしょう)が提供されていたのが,パンと副食まで拡大していったという経過があります。1960〜70年代には小学校はほぼ完全給食になっていましたが,中学校ではミルク給食のところが多かったようです。
...2006/03/01(Wed) 19:09 ID:6w2GtxNw    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋
にわかマニアさん
やっと「完全給食」の意味が理解できました。ありがとうございます。そうです、完全給食です。多分、今の中学校のほぼ全てが完全給食でしょう。お母さんはミルク給食だったのでしょうか。(禁句かも)

入試が控えている割にはよく書き込むなぁと思っていらっしゃる方も多いでしょう。実は、書き込みが気になって1日に一回程度このサイトに来てBBSを覗いているのです。意外と時間はあるものです……


毎度おなじみのコーナー、余談です。(タイトルが変)
・本日、技術で作った(作ったといっても絵柄をパソコンでデザインしただけ)マグカップが届きました。クラスメートの1人のマグカップが不気味でした。骸(むくろ)って書いてありました。
・今日で普通の授業は終わり。明日から、特別時間割です。明日とうとう、受検票配布です。(県立高校は受験ではなく、受検らしいです。多分。)
・昨日、塾でお守りGET!!先生がコスプレして応援していました。

・先週、3年生を送る会が開催されました。吹奏楽部の演奏、ソーラン愛好会によるソーラン節、合唱部の合唱、さらには3年間の写真が大公開されちゃいました。ちなみに、私は1枚写っていました。(1年生の時のもの)修学旅行の写真が出たとき、懐かしく思いました。ホテルの各部屋にインターホンがついていた?
…部屋を暗くして怖い話をしていたときのこと。いきなり「ポーン」とインターホンが鳴り、慌てふためく班員達(もちろん、私も。)。私にぶつかった班員は、「ギャ―!」って叫んだ。…インターホンを押した人物は、隣の部屋の方でした。
奈良公園の鹿ちゃんたち、元気か〜〜〜?

・学年末テストの成績が今日配布されました。結果はベストスリーに入っていました。(^o^)

以上、余談でした。
...2006/03/02(Thu) 17:25 ID:ntfgvscI    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:SATO
栄光の架橋さん
私も昨年の夏は国家試験の受験生でしたが、ちょくちょく掲示板を見ていて、書き込みもしていました。それでも合格しましたよ。
休みの日は朝から図書館に出かけて一日勉強、平日は仕事帰りに静かな雰囲気の喫茶店に寄り道して勉強していました。自宅に帰ってまずすることがPCを起動して、ここの掲示板を見ることでした。
この時期にやっていたテレビドラマも結構観てました。「義経」「電車男」「いま、会いにゆきます」は欠かさず観ていましたが、何といっても「ドラゴン桜」は自分が置かれた境遇と通じるものがあって好きなドラマでしたね。(さすがに直前二週間は録画しておいて、試験が終わった後にまとめて観ましたが・・・)
掲示板にしても、ドラマにしても一日頑張った自分へのご褒美のようなものでした。
...2006/03/02(Thu) 23:32 ID:2N6AXUNs    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋
SATOさん
書き込みありがとうございます。
やっぱり毎日のように掲示板に書き込む方は私以外にもいらっしゃるんですね。良かった…(^_^;)
私も世界の中心で、愛をさけぶを見てからドラマに熱中し、見るようになりました。


余談:・もう休み明けが入試。緊張します。そして、本日受検票配布。縁起の悪い番号ではありませんでした。…よかった。私の受ける高校、私の中学校から受験する人が少なすぎ。(笑)

・今日、学年解散式が開催され、先生方が卒業(+入試)記念のプレゼントをくれました。(+過去にお世話になったが、異動してしまった先生方のビデオレター、先生方が生徒から学ランを借り、応援団気取りをしたり……とにかくいろいろ楽しかったです。)最後には、合唱コンクールや体育祭のソーラン節、3年生を送る会で使用されたエンドロールが収録されていました。文化祭の合唱コンクールで他のクラスで歌われた「木琴」は戦争の悲惨さを激しく感じられる程、鳥肌が立つ程見事な歌いっぷりでした。もちろん、そのクラスが大賞でした。
入試アイテムといえば、「きっとかっとぉ!」で有名なキットカットです。もちろん、それもプレゼントされました。あと、先生のメッセージも。
受検グッズもいろいろあるものです。キットカット(上記参照)やら、カール(受カール)、ハイレモン(入れるもん)…など、多数。

・卒業まで一週間きりました。来週の今日は合格発表。受ける前から緊張。

・担任の先生を2回ほど部屋に閉じ込めました。(ドア閉め攻撃!)先生は、「やられた…」と一言。正直、先生をからかうのは最高です。(笑)
...2006/03/03(Fri) 16:57 ID:Cp.kAp2c    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:ぱん太
栄光の架橋さん

 こんばんは。
 >(県立高校は受験ではなく、受検らしいです。多分。)
僕の高校入試(19年前)も受検でした。担任曰く、試験を受けるんではなく、検査を受けるんだと。同じ県だったりしてね。
 
 中学のときの同期とは、今でも遊んでるのは、ホント数人ですねぇ〜。一匹だけ、三十年来の悪友(?)という気持ち悪い(??)奴もいたりして。ちなみに、この悪友、父親同士も中学・高校の同期だし、兄貴も中学・高校の同期だ.............。コイツと一緒だったのは幼稚園と中学だけだけど、何故か今でも一緒に遊んでます。なんなんだかなぁ〜。就職とか結婚とかしちゃうと、友人層も変わったりしちゃうので、親友と言うのは大切にして下さいね。

 ではでは。
 
...2006/03/05(Sun) 03:00 ID:.wJ7FBHM    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:にわかマニア
 いささか「トリビア」的なタネ明かしですが・・・

>県立高校は受験ではなく、受検らしいです。
>僕の高校入試(19年前)も受検でした。担任曰く、試験を受けるんではなく、検査を受けるんだと。

 これは,「入学試験」の性格付けにからんできますが,単に上位から得点順に定員までとるというだけではなく,要求する水準を満たしているかを「検定」する(基準に達していなければ合格者数が定員を下回ることもありうる)という考え方に基づくものでしょう。ですから,試験を受ける際に納める手数料の国立学校特別会計における勘定科目も「検定料」となっているのです。通常,各自治体の勘定科目や手数料条例もこれに準拠していますから,国公立の場合,「受験」ではなく「受検」とか「検定」と表記されることになります。
 ちなみに,授業料や「受験料」を非課税取引とした消費税法の規定も「検定」となっています。
...2006/03/05(Sun) 03:54 ID:DImNB0sU    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋
やっと入試終わった―――!…っていっても昨日ですけど。数学がものすごくやばいです。傾斜配点もありますので、多分……志望校、落ちると思います…。国語は記号問題全部正解だったんですけど、数学のせいで不安です。応用力が無い……。3月10日が恐い。
まぁ、その軒は置いといて…。暗い話ですみません。


ぱん太さん
友達っていうのはとても大切な存在ですもんね。大切にします。年が経過しても友達は友達のままです。
…私は、9年間、つまり、小・中学校の生活中ずっとクラスが同じ人がいます。高校で別れるのでしょうか、それとも…?

にわかマニアさん
受検についての解説、ありがとうございます。にわかマニアさんって物知りですね。世界の中心で、愛をさけぶの解説もよくしていらっしゃいますね。



余談:・今日卒業アルバム配布。クラスのランキングがありました。…私は、「ミステリアスな人」「授業中まじめな人」で1位でした。…どちらもあてはまらないんですけど、クラスの皆さん。
・今日先生の背中にシールを張りました。(イタズラ)しかし、彼は気付かない。…いつのまにかシール取れていました。凸ピンしようとも思いました。


最近、余談長いですね。

そろそろ、新作出したいと思います。大した作品にはならないと思いますが、よろしくお願いします。
...2006/03/07(Tue) 16:51 ID:Aeb9ejoI    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋
第2作目ができましたので投稿します。


逃亡者・ボウズ〜感動の家族物語〜 …第1話


サク:1987年8月(英語でいえば「August in 1987」)。僕は家族の存在の大切さを知った。…ボウズの逃亡によって。


小さな町、宮浦のある平凡な家から、壮大な物語が始まる。その家は中川顕良(ボウズ)、宮浦高校の2年生の少年の家だ。彼の家は寺。
第一学期終業式の前日。
「顕良!」
ボウズの父親の声が家に響く。
その声にビクッとなり、ボウズは慌てて父の待つ部屋に飛んできた。
「ど、どうされました?」
おどおどしながらボウズは聞いた。
「お前も、高校を卒業したら僧侶の道を歩くだろう。その軒だ。」
と力強い声で父は答えた。僧侶と聞いたとき、ボウズの顔色が変わった。彼は、僧侶になることに反対しているのだ。
父は続けた。
「それでだな、7月の22日にお前のその髪をな…」
このあと、ボウズは猛反対したが、父の意思をかえることはできなかった。

翌日。第一学期終業式。ボウズの足取りは重い。そこに、
「おっす!ボウズ!」
「Good morning!お前さ〜ん!元気ないよ〜!」
と彼の幼なじみの朔太郎(サク)と龍之介(スケちゃん)がいつものようにボウズに挨拶した。
「……」
しかし、いつもは返事をするボウズだが、昨日のことがあり、返事が出ない。
「どした?」
とサクが心配そうに聞いた。
「実は…」
とようやく口を開いたボウズだが…

キーンコーン……

学校のチャイムが鳴った。このチャイムが鳴り終わると遅刻。(そういえば私の友人はよく遅刻しました。)
「やっべ!急げ〜!」
「ボウズ、後で聞くよ!」
とボウズの話を聞かずにサクとスケちゃんは去っていった。
しばらくして状況を理解したボウズは叫び声を上げて学校へ走っていった。

もちろん、3人は遅刻した。

そして一学期が終了。
サク、ボウズ、スケちゃん、そして、亜紀、智世は町の名物(?)のたこ焼きパパさんで昼食(たこ焼き)を食べていた。
「ボウズ、ボウズ!朝の話、聞かせろよ。」
とサクがボウズの横に座って言った。
「サンキューなぁ、サクぅ!」
とボウズは話を覚えていてくれたサクの背中をバシバシ叩いた。そして、昨日の話をサク達に伝えた。
「…なんか、中川君、可愛そう。」
「な〜んだ、そんなことかよお前さん。」
「別に僧侶でもいいんじゃないの、ボウズなんだし。」
「そんなんで何悩んでんのよ!男らしくしてよ!」
など、様々な感想がボウズの耳に届いた。上から順に、亜紀、スケちゃん、サク、智世。

しばらく沈黙の時が流れた。

数分後、
「あ〜〜!思い出した!」
とスケちゃんが突然叫んだ。いきなりの大声にその場にいた人々は全員驚いた。
「せっかくの夏休みじゃん♪何かキャンプしたいと思わな〜い?」
「じらさないで早く言いなさいよ!」
「そう焦んなよ。お前さん。あさっての7月22日に夢島っていうトコでキャンプしようと計画立てたんだよ。3泊4日。」
「夢島ってあのリゾートにしようとしたあの夢島?」
などと会話が流れた。
ボウズはこの計画に大×100賛成した。こうして、夢島キャンプが決定したのだった。


7月21日。キャンプの準備をするのだが、ボウズが「父親にばれないようにする為、学校でやろう」と言ったので、準備は学校ですることに。
夜の学校で準備。このまま夢島に直行することになっているのだ。ボウズは家出したことにしているらしい。準備は昼にできるのだが、サク達がいろいろ馬鹿をやったので夜になったというのは言うまでもない。
「夜の学校ってこわいね。サクちゃん。」
「…う、うううう、ううん。こ、怖くないさ。」
「フフッ。バレてるよ、サクちゃん。怖がってるの。」
「……」
と亜紀がサクをからかっていた。夜の学校は不気味なものである。ボウズ、スケちゃん、智世も多少は怯えている。
そこに、
誰かの足音が聞こえた。動きが止まる5人。
「そこ〜!何やってるの!?」
女の人の声だった。スケちゃんが慌てて懐中電灯の光を声のする方に当てる。正体は谷田部だったのだが、光がいいところに当たったので、お化けのように見えた。

「出た―――――――――――――!!」

一目散に逃げる5人。荷物も忘れずに持ち帰った。

「なんだ、松本達か。」
と谷田部はその場を去った。


東の空から太陽が顔を出してきた。
サク達は港に来ていた。
「怖かった―」
「でもあれ、谷田部先生だったよ。」
「よく分かったよなー、亜紀。」
と、サク、亜紀、智世が会話した。
「行くぞー!お前さんら。」
「置いてくぞー!」
とスケちゃんとボウズが船に乗ってさけんだ。
「待てよー!」
と3人も船に乗り込んだ。

船は夢島へと出港した。
...2006/03/07(Tue) 20:07 ID:ct640KjA    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋
皆さんこんにちは…なんでこんな時間に書き込んでいるんだと思っていらっしゃる方も多いと思いますが、腹痛の為、I was absent from school today.(私は今日学校を休みました。)明日は卒業式。心配です…。


逃亡者・ボウズ〜感動の家族物語〜 …第2話


7月22日(夢島キャンプの日)朝。中川家では…

「………」
ボウズの父がボウズの置手紙を見て険しい表情を浮かべていた。その内容は、
『僕は出て行きます。心配しないでください!』
だった。文字は殴り書きだった。父親に対する反発が表現されていた。
「あの馬鹿野郎…ま、すぐに戻ってくるだろう。」
とその場を後にした。


夢島。宮浦から少し離れた小さな島。その入り口には古い建物が立っていた。夢島は以前、リゾート地にする計画があったが、中止され、取り壊されること無く建物はそのまま残っていた。
「着いた着いたー!夢島!」
とハイテンションなボウズ。
「いいから手伝えよ、お前さん!」
とスケちゃんが彼のお尻を軽く蹴り飛ばした。サク達はスケちゃんの指示で荷物をホテルらしき建物に運んでいた。ボウズは渋々荷物を運んだ。

「うわ、汚い。こんなところで寝るの?」
ホテルの中は荒れ放題だった。とても寝ることはできないだろう。…ということで、全員で掃除することになた。
「おいおい、遊びたいぜー」
「せっかく夢島に来たのになぁ。」
ブツブツと愚痴をこぼすボウズとサク。
「こらー!ちゃんとやらないとまた夜になっちゃうじゃない!」
と智世が2人に怒鳴った。
慌てて作業を始める2人。亜紀がニコニコしている。

思ったより、作業は長引き、一日は整備で幕を閉じてしまった。

翌日。7月23日。
朝はスケちゃんが用意した魚を焼いて食べた。
「おいしい!」
「これだからキャンプは楽しい。」
焼きあがった魚をおいしそうに食べる亜紀と智世。
「おい、それは俺のだ!どけよ、ボウズ!」
「馬鹿言うな!俺のもんだ!手をだすんじゃんじゃねー、サク!!」
サクとボウズが最後の一匹を奪い合っていた。ホントに醜い争いだった。
「やめなって…」
と注意しても止まらない。朝から食い意地がはっている。
「よっしゃ!俺の勝ち!」
サクから勝利をもぎ取ったボウズ。魚を天に掲げた。
「も〜らいっ!」
スケちゃんがボウズの手から魚を奪った。そして、ガブリと食いついた。ちょっぴり漁夫の利?
「ふざけんな!スケ!それは俺の魚だ!」
「どこに名前が書いてあるのさぁ、お前さん♪」
「チクショ―――!」
ボウズの叫び声が響いた。

「ほんっと馬鹿だね、あいつら。」
「いいじゃない。あれがいい所なんだから。」
こっそりと会話する亜紀と智世であった。

午後は海水浴。天気もよく、絶好の海水浴日和だった。
「お前水着着ても不細工だな〜!」
「うるさい!龍之介!」
スケちゃんの言葉にむっとして貝殻を投げつける智世。
「いってーよ!」

一方、ボウズは泳げないので浅いところで泳ぐ練習をしていた。
そこで、赤い物体がもぞもぞと砂の中を動いているのを発見した。
「何だこれ?」
そーっとさわってみる。しかし、その正体はもちろんカニ。ボウズは絶叫した。指を挟まれたのだろう。

サクは砂浜に座って砂をいじっていた。亜紀がまだ準備中だったのだ。
そこに、
「サ〜ク!」
亜紀の清らかな声が聞こえた。サクは振り返った。そこで、服をパラッと脱いだ。亜紀の水着姿にしばらく見とれるサク。亜紀は海に飛び込んだ。
「早く、サクちゃん!」
と水しぶきをあげながらサクを誘う。
「…お、おうっ!!」
とようやく我に帰ったサクは満面の笑みで海に飛び込んだ。
海草を投げあい、ビーチボールで遊んだり、水をかけあったり、ボートから突き落としたり……(ドラマと変わんないですね)

それぞれが楽しいときを過ごしていた。

「あ〜たっぷり遊んだ!」
日が西に傾いた。サク達は夕食の準備に取り掛かった。
「じゃ〜ん!たこ焼きをつくりま〜す!」
とサクがたこ焼きを焼く機械を取り出した。
「パパさんに教わった成果を見せてやる!」
サクは油を敷き、生地をそれぞれの穴に流し込んだ。
しかし、亜紀はあることに気付く。
「サクちゃん、タコは?」
タコが無いのである。そのかわり、昆布の佃煮・カスタードクリーム・肉類・野菜類・果物類・他様々な素材が置いてあった。どうみてもたこ焼きに入れるものではない。
「フフフッ!いい事に気付いたな……これもイベントの一つ。たこ焼きの中が不明な状態で食べるんだ。ワクワクするぞ。あ、もちろん普通のタコもあるよ。まともなものを最も多く食べた人の勝ちさ。」
サクが口にした言葉を聞いてテンション↓な4人。しかし、サクは気にも留めず、たこ(?)焼きを作り続けた。

1人の皿にたこ焼きが2,3人分あった。
「よし、いただきま〜す!」
1人テンションが高いサク。他はテンションが低い。
「うが〜!からしかよ〜!!」
泣き目でさけぶスケちゃん。
「すっぱい!梅干!?」
すっぱそうな顔で亜紀が言った。
「何で昆布の佃煮なのよ!」
昆布の佃煮入りを食べた智世。」
「カスタード…ソース無ければ美味いな。」
と落ち着いて食べるサク。
「ウッガ―――――!フルーツ―――!ソースにはあわねえ!」
果物の入ったたこ焼きを食べたボウズ。
他に、イナゴ、ケチャップ、チーズ、あんこ、わさび、チョコなど…
結局もっとも多くはずれを食べたのはボウズだった。
「じゃあ、最も多くたべたボウズには、明日罰ゲームがありますんで。」
とにっこりほほえんでサクは言った。
「バ、罰ゲームゥ!?」
とボウズは驚いた。
果たして、罰ゲームとは……
...2006/03/08(Wed) 13:00 ID:Jg48XFvg    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋
皆さん、おはようございます。
本日は卒業生の晴れの日、卒業式です。長いようで短かった3年間を思い出しながら過ごしていこうと思います。卒業生はもう少ししたら学校に集合のようです。号泣してしまいそうです。…一人一人卒業証書をステージの上で配るようです。
まぁ、今日は精一杯楽しみ、泣いてきます。
では。
...2006/03/09(Thu) 08:18 ID:UuOMCHSo    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋
約一時間半前に無事卒業式が終わりました。やっぱり号泣しました。ふと気付いたのですが、女子は泣く方が多いのですが、男子は泣かない方が多いのです。やはり女子の方が涙もろいのでしょうね。

不思議なことが1つありました。
私は内弁慶で、普段学校でもあまり話さない生徒なんです。声も当然小さく、卒業証書授与の練習時も声が小さいと注意されていました。しかし、今日は奥の保護者にまで聞こえるほど大きな返事ができたのです。奇跡だと思いました。名前を呼ばれる瞬間、誰かに「がんばりなさい」と背中を押されて応援されたような気がしました。そのせいか、ものすごく充実した卒業式になりました。

卒業式の流れです。
「旅立ちの日に」を歌ったときから、涙が止まりませんでした。周囲の人々も嗚咽をこらえて一生懸命歌っていました。「生命が羽ばたくとき」のときは「旅立ちの日に」以上に涙が出ました。ついでに、鼻水も。
退場するときは在校生が「蛍の光」をリコーダーでふいてくれ、またまた号泣。でも、親に見られるのは恥ずかしいので我慢して退場しました。退場した後はもう顔の原型がわからないほど泣きました。そのあと、親友と「あ、泣いてるじゃ〜ん♪」というふうに会話しました。あの学校に入ってよかったと思いました。
今までで一番素晴らしい卒業式でした。二度と忘れません。
4月から皆別々になってしまうのですね。でも、心のつながりはいつまでもあり続けると思います。担任の先生もそのようなことをおっしゃっていました。

クラスメートのみんな、それぞれの人生をがんばって走るのだぁ!!

掲示板の皆様も頑張ってください!

余談:卒業証書をいれる筒のふたを開けるとき、「ポンッ!」という音がします。それで遊んでいる無邪気な生徒(女子)が数名いました。
私もそういうことけっこうするんですけどね。(笑)

長々と書いてしまいました。
...2006/03/09(Thu) 13:30 ID:UP9bCldo    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋
今日県立高校の合格発表でした。

第3話。


逃亡者・ボウズ〜感動の家族物語〜 …第3話


7月24日。朝からボウズは元気が無い。夕べのたこ焼きパーティーで罰ゲームが決定してしまったからであろう。それは今日執行されるため、余計に彼の不安を駆り立てている。
「ボウズ。フライパンとって。」
「早く卵割れ!」
など、ボウズは朝からこき使われていた。ボウズは思った。これが罰ゲームならどんなにうれしいことか、と。
この後もこき使われ続けた。

ボウズが雑用をこなしている間、こんな会話がスケちゃんを中心として行われていた。もちろんボウズはその場にはいない。
「昨日の罰ゲームの軒で話があるんだよ〜ん、お前さん。」
「あの雑用が罰ゲームじゃないの?サク。」
「そういうつもりなんだけどな。朝昼晩いろいろ働かせるつもりだったんだ。何かあるの?スケちゃん。」
「あれじゃおもしろくないだろ。」
「他に何かするの?大木君。」
「実はな、あいつを………………………するんだよ。」
「なんかそういうのもおもしろそうだな!」
「えっ。ちょっと中川君可愛そう。(ニコッ)」
「ちょっとだけってわけ?亜紀。」
「智世こそ。顔に書いてある。やりたいって。」
「ばれたね。」
「なんか全員考えが一致してるよ。」
「よし!決まり!じゃあ夜実行だぜい!お前さん!」
『オ〜〜〜!』
結局、スケちゃんが考えた罰ゲームが実行されることになった。このあと、ボウズを引っ掛ける為に会議(罰ゲーム実行委員会?)が行われた。

昼。ボウズ父はいつも家出しても1日足らずで帰ってきたボウズが2日も帰ってこないことに少し焦りを感じ始めていた。だが、あと1日待つことにした。(のんきな父だと思う方がいると思いますが、気にせずに…)

同じ頃、サク達は夢島探検をしていた。これも、ボウズへの罰ゲームへの第一歩となっている。何故か必要のなさそうな大きな荷物を背負っているボウズ。これも引っ掛けの第一歩。
「眺めいいね〜!サクちゃん♪」
「ああ。夢島から見る宮浦も結構いいな。」
サク達は島から見える青々した海と自分達の故郷、宮浦の景色に見とれていた。…約1名を除いて。
サク達の後ろには急な坂を荷物を背負って登ってきてくたくたになっているボウズがいた。
このあともサク達は夢島探検を日が暮れるまで続けた。

「そろそろ元の場所に戻ろう。」
とサクが言い、元のキャンプ地に戻ることになった。
「おい、誰か荷物もってくれよ。」
「しかたねえな。」
ボウズが頼み、スケちゃんが手伝った。一行は歩き始めた。先ほどよりはキャンプ地に近い場所にいたので、10分程度でそこに戻れることになっている。
しかし、ここからがショータイムだった。

5分経過…
「あっ!忘れ物したぜ!」
スケちゃんが忘れ物に気付いた。これも作戦のうち。
「ボウズ、お前とって来いよ。でも、暗い道だから迷うな、気をつけろよ。」
「……分かったよ、行けばいいんだろ、行けば!そのかわり、待ってろよ!」
とサクに頼まれたボウズは懐中電灯をもって走っていった。
「よし、準備開始!」
とサク達は駆け出した。

暗い道を1人で歩くボウズ。心は不安でいっぱい。
そこに、
「おい、顕良!」
とボウズ父の声が。ビクッとなるボウズ。
「こんなところにいたのか!今から髪を剃れ!」
と言った後、駆け出す音が聞こえた。
「うわ、来た、親父め!」
逃げるように駆け出すボウズ。無我夢中で逃げた。
数分後、何とか逃げきった。しかし、
「あれ……迷った?」
慌てて走った為、道に迷ってしまった。
「お〜い、サク〜!廣瀬〜!スケ〜!智世〜!」
と大声を出したが返事が無い。そのとたん心細くなって目から涙がこぼれた。
「泣いてるし、俺……」
涙をぬぐう。どれほど待ってもサクたちは来ない。ついには、
「すみません、親父…グスッ…親父……誰か、たすけてください…たすけてください…」
とつぶやいた。意外とボウズは泣き虫弱虫である。(決めつけてますね…)
次の瞬間、
「ブ…ブワッハハハハハ!おっかし〜!」
と奥から笑い声が聞こえた。
すぐに理解したボウズは、
「おっまえら〜〜〜!ひっかけか〜〜〜!」
と声のしたほうに懐中電灯の光を当てて叫んだ。しかし、ボウズ、単純である。
このあとボウズの怒りがサクたちに注がれたのだ。
ボウズ父の声はスケちゃんが録音したもので、足音はスケちゃんが出したのだ。おそらくスケちゃんは、前から計画していたのだろう。

そして、7月25日。夢島キャンプは幕を閉じた。

「よっこらせっと。」
スケちゃんは船から荷物を下ろした。そして、カバンを担ぎ、
「俺、今から東京にいる彼女とデートしに行くから。あばよ。」
と去ろうとした。しかし、
「待て。スケ。」
とボウズが引きとめた。
「俺さ、夢島じゃ満足できなかったぜ。だから、俺も東京に連れて行け!」
とスケちゃんに訴えた。
どんなに説得してもボウズの意志は動かなかった。結局東京行きは決定した。


―――――――――――――――――――――――――
今回は単純すぎますね。話が。(笑)
感想やアイデア、お待ちしています。
...2006/03/10(Fri) 19:30 ID:nOEina.k    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:たー坊
はじめまして。たー坊と申します。アナザーストーリーを執筆させていただいている者です。
早速、拝読いたしました。高校時代の5人が目に浮かび、微笑ましいです。
次回も楽しみにしております。
...2006/03/12(Sun) 00:35 ID:NbPb3GW6    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋
たー坊さん
こんにちは。書き込み、ありがとうございます!最近書き込みが少なく、少ししょんぼりしていたところに書き込みをいただいたのでものすごくうれしいです!
たー坊さんのアナザーストーリーはいつも楽しく拝見しています。これからも執筆を頑張ってください。楽しみにしています。
私も頑張ります。
...2006/03/12(Sun) 16:43 ID:WbeY4U4o    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:一読者
栄光の架橋さん

>最近書き込みが少なく、少ししょんぼりしていたところに

いやいや、みんな喜んで読んでますよ(笑)
等身大の5人が描かれていて、心の清涼剤と言うか、とても楽しんで拝見しています。
何より中3でここまで書けるなんてスゴイ!の一言
私なぞは読むことしか出来ないんで、偉そうなことは言えません。頑張って下さい、応援してます!
...2006/03/12(Sun) 18:41 ID:vuk0dqFM    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:朔五郎
栄光の架け橋さん

初めまして。
私が創作を始めたころ、このBBSにはもう既に、たかさん、SATOさんといった方たちが、さかんにショートストーリーを書かれていました。栄光の架け橋さんの作品は、ドラマがオンエアされていたころの雰囲気というか熱気みたいなものが感じられて、とても懐かしい気がします。
これからも、頑張って書いて下さい。よろしくお願いします。
...2006/03/12(Sun) 22:24 ID:zo0VKSC6    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋
朔五郎さん
おはようございます。あと、はじめまして。書き込み、ありがとうございます!うれしいです。
なるべくドラマに近い雰囲気を出そうと思って書いたのですが、意外と雰囲気は出ていたようですね。これからも頑張ります。


卒業してまだ数日だというのに、友達に会いたくて仕方ありません……。
...2006/03/13(Mon) 09:57 ID:vVNUPvM6    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋
前の書き込みから少ししか時間がたっていませんが、投稿します。


逃亡者・ボウズ〜感動の家族物語〜 …第4話


東京に向かって走る新幹線。その中には東京の彼女とデートの予定があるスケちゃん、そして……
「東京で新しい人生を発掘するんだ〜!」
「サクちゃん、この駅弁おいしいよ♪」
「うおおっ!うまい!」
「少しぐらい静かにしなさいよ!周りのお客さんに迷惑でしょ、め・い・わ・く!!」
東京に行く予定が無いはずのボウズ、亜紀、サク、智世。
何故こうなってしまったのか?…時は数十分前。


「俺、今から東京にいる彼女とデートしに行くから。あばよ。」
と荷物を担いで出発しようとするスケちゃん。しかし、
「待て。スケ。」
とボウズが彼を引きとめた。
「俺さ、夢島じゃ満足できなかったぜ。だから、俺も東京に連れて行け!」
とボウズは叫んだ。ここまでは前回の内容。続きはここから。
「は?十分満足してたじゃねえか。」
「してねーよ!初日は掃除で終わるし、カニに指挟まれるし、変なたこ焼きたくさん食べさせられるし、おまけに罰ゲームで大恥かかされたり……もう我慢の限界だ―――!!」
「別にカニは私たち関係ないと思うんだけど…」
「うっせーよ!廣瀬!アンラッキーだったんだって〜!」
「罰ゲームは俺じゃなくて…ス…」
「うおっ!待て!サク!」
「たこ焼きのアレは私たちも食べたんだから我慢できるでしょ!?子どもじゃないんだから。」
「第一、家に帰ればすむ話だろ!何で東京なんだ、東京!」
「親父に髪剃られるんだよ!家出すりゃぁ心配になって髪剃るどころじゃなくなるだろ?それ利用して髪剃り中止+夢島enjoyって作戦だったのに、イライラばかりが溜まっちったんだよ!」
「うわ……卑怯だなボウズ。」
「髪剃られた方がいいんじゃないの?アンタ。」
「早く家帰ったほうがいいと思うよ。」
「うっせ―――――よ、とにかく俺は東京に行くんだ〜!」
とこんな会話が数分続けられた。結局ボウズの説得に失敗。ここでボウズはスケちゃんと一緒に東京に行くことが決定したのだった。
しかし、このあと……
「あばよ、3人とも。」
「俺は田舎モン脱出だ!お前らは田舎モン!ガッハッハッハァ!」
スケちゃんとボウズはその場を去ろうとした。
しかし、あのボウズに「田舎モン」と言われたサク達3人は、
「待て待て待て!田舎モンはねーだろ、ボウズ!」
「そうよ!生意気!このガキ!」
「中川君だって田舎者でしょ!…東京行ってみたいし。中川君だけずるい。」
とありったけの言葉をマシンガンのように発した。
「あ―――!うっせーなぁ!もうっ!来るんなら来いよ!」
「えっ!おい…これ以上来られると俺が困るんだけどなぁ!お前さんよ!」
頭に血が上ったボウズは勝手に3人の東京行きを許可してしまい、彼女とのプライベートな時間を邪魔されたくないスケちゃんは大きく動揺した。
結局5人で東京に行くことになり、今に至る。


もう昼近い時間になっていた。宮浦ではそれぞれの家族がそれぞれの子どもの帰宅が無いことに不安になっていた。
「…あの馬鹿、どこいっちまったんだよ。」
「亜紀……」
それぞれの家族がサクの家に集まっていた。仕事中の親も連絡を受けて来ていた。
「でもまだ昼前だからきっと帰ってくると思いますよ。」
という言葉もあまり不安を消すことはできなかった。


新幹線。すやすや眠る一行。しかし、
「おい!起きろ!東京だぞ!」
スケちゃんの声に眠りから覚める4人。
東京に着いたのだ。

――――――――――――――――――――

そろそろ終盤です。
...2006/03/13(Mon) 10:59 ID:vVNUPvM6    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:ポポ
はじめまして。
いつも楽しく拝見させて頂いてます。
読んでるだけで思わず笑みがこぼれてくる・・そんなとても微笑ましい作品をいつもありがとう。
私も高校時代が一番楽しかったから、朔や亜紀のはしゃぎっぷりがよく理解できます。

栄光の掛橋さんも朔や亜紀に負けないくらい、楽しい高校生活を送れるよう、勉強頑張って下さいね。
私もこれから上の息子を連れて、塾に行って来ます(笑)
...2006/03/13(Mon) 15:14 ID:.CL2.PIE    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋
ポポさん
こんにちは。書き込み、ありがとうございます。
「読んでるだけで思わず笑みがこぼれてくる・・そんなとても微笑ましい作品をいつもありがとう」というポポさんのコメントに私も思わずもうれしくなりました。このように作品を書くことでもみなさんと交流できるのだと実感しました。これからもよろしくお願いします。
息子さんも入試という試練にこれから立ち向かうのですね。がんばってください!何かアドバイスできることがあれば協力します。
...2006/03/13(Mon) 15:34 ID:U.sOW0Bg    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋
ラストです。


逃亡者・ボウズ〜感動の家族物語〜 …最終話


東京駅。サク達は新幹線を下車した。
「うぉ!これが東京か!宮浦とは比べモンにならねえな。」
とボウズは宮浦と対照的で、高層ビルが立ち並ぶ東京の景色に見とれていた。
「サークちゃん♪いい事教えてやるよん♪」
「…何だよ、スケちゃん…」
とスケちゃんとサクが会話を始めた。
「東京にはな、かわい子ちゃんがウジャウジャいるんだぜ。」
「まじっ!?……あ…。」
サクは亜紀の視線に気付いた。
「サク!!」
「いでででででででっ!」
亜紀はサクの耳を思いっきり引っ張った。浮気をしないように誓わせる為だろう。この後、サクは「浮気を絶対にしない」と誓った。(誓わされた?)
「おらおら、早く行こうぜ!」
ボウズは東京観光をする気満々だった。ついでに、スケちゃんの彼女を見ようともしているらしい。
「ちょっと、親に連絡しなくていいの!?」
と智世が注意しても、それぞれがそれぞれの世界に入ってしまい、通じなかった。結局、親に連絡しないまま東京観光が始まってしまった。
おまけに、スケちゃんは東京駅にいた彼女とデートに出発してしまった。智世は少しヤキモチをやいた。

東京タワー。
「うわ、たっけえ!東京の景色一望だぜ!うひょ〜い!」
と1人大はしゃぎのボウズ。ストレスで頭がおかしくなったのだろうか。
「夜景だともっときれいかな?」
「うん、うん…」
誓っても周囲の女性の方に目を向けてしまうサク。
やっぱり美人が多いな…と亜紀が横にいるのにもかかわらず、思っていた。
数分後。
「サク、サク、サク!!!」
亜紀の突然の声ではっと我に帰るサク。もう東京タワーを出発するようだった。

上野動物園。
「パンダだ!かわいい!」
「ホントだねー!」
亜紀と智世は可愛い動物達に興味津々だった。サクとボウズは退屈そうだった。
「あっ!サルだ!」
「よく見てみると意外とかわいいね。」
サルを見てはしゃぐ女性陣。(上野動物園ってサルいました?…まあ、いいか。)
一方、男性陣はというと、
「全然かわいくねーじゃん。まったく女って変だな。」
「ま、サルも変だけどな。顔赤いし。」
とサルを見て好き放題感想を言っていた。そのとき、
「キ―――ッ!!!」
一匹のサルがサクたちを睨んで激しく鳴いた。威嚇だろう。(私もサルの前で変なことを言ったらサルにキ――って鳴かれたことがあります。恐かった…)周囲の人々がクスクス笑った。
「何やってんだか…。」
呆れる女性陣。
この後もいろいろな動物を見た。

お昼は雑誌に載るようなレストランで食事を取った。ちなみに会計は割り勘。

デパートで買い物に夢中の亜紀と智世。
「これなんかいいんじゃない?」
「ホントだ――!」
「これいくらかな?」
などと楽しそうに会話する2人。
「お、重い…」
「スケちゃんの奴、ずりーよ!」
と奥で愚痴をこぼすサクとボウズ。時間が経過するたびに2人が持つ荷物も増えていった。
「おわっと!」
サクはマネキンにぶつかって荷物を倒した。倒れてきたマネキンとキスを……
周囲は笑の渦で満たされた。亜紀はマネキンにさえ軽く嫉妬。

東京でいろんな思い出を残したサク達は東京から撤収した。都合上日帰りである。スケちゃんは東京に宿泊するらしい。
新幹線内。
「疲れた…」
「お疲れ様、サクちゃん♪いろいろ付き合わせちゃってごめんね。」
「いいよ、平気平気。」
「よかった♪」
より一層仲良くなったサクと亜紀。
「結局災難続きだったな、俺。」
「アンタはそうなんだって。昔から。諦めなって。」
「う〜……」
珍しい(?)智世とボウズの会話もあった。


日が暮れかけたときにサク達は宮浦に到着した。
「帰ってきた〜!」
「…お父さん達心配してるかな?」
「でも、智世が連絡したんだろ?」
「えっ!?してないよ!」
『…えっ!?』
改めて親に連絡されないまま観光してしまったことに動揺する一行。
智世は、連絡しとけばよかったと後悔した。
そこに、
「あっ!お兄ちゃんだ!」
サクの妹、芙美子の声が聞こえた。声がすると同時に大勢の足音がドタドタと聞こえてきた。
「サク!何してたの?こんな時間まで!」
「亜紀!大丈夫か!?」
「智世!心配してたんだよ!」
サク、亜紀、智世の両親の声が聞こえた。
3人は家族の存在の大きさを感じ、それぞれの家族の胸に飛び込んだ。そして、家族の温もりを改めて感じた。
そして、それをじーっと見ていたボウズのもとに、
「顕良!!」
あの強い声がちいさな駅に響いた。思わずビクッとなるボウズ。
「どこに行ってたんだ、4日も!」
「ご、ごめん、親父……!」
頭を下げてボウズ父に謝るボウズ。
「もう…心配かけるなよ、顕良。」
「は、はい…。」
ボウズも感極まってボウズ父の胸に飛び込んだ。それを優しい目で見守るボウズ父。
ボウズは、父の厳しさの奥に優しさがいつも宿っていたと実感した。
ボウズが落ち着いたところで、
「顕良。これは運命なんだ。」
「へ?」
ボウズ父はバリカンを取り出した。どうやら最後の最後でボウズの作戦は失敗したらしい。
「また逃げられると困るから、今ここで剃るぞ。」
「えっ……そんな馬鹿な――!」
次の瞬間、ボウズ父は犯人を追う警官のようにボウズを追いかけ始めた。数秒後、反応の遅かったボウズはとうとうボウズ父に捕まった。ボウズは、一瞬だけ、逮捕された容疑者の気持ちを理解した。
「覚悟!」
「ギャ――――――!」
ボウズの悲鳴が響いた。
こうして、翌日からドラマ6話からのボウズの頭に変身したのだった。


サク:1987年7月25日午後7時02分。逃亡者・ボウズは逮捕された。でも、彼の逃亡のおかげで僕は家族のありがたさを理解することができ、生活がリフレッシュしたような気がした。Thank you,ボウズ!

亜紀:これで逃亡者・ボウズ〜感動の家族物語〜は完結です。ご愛読ありがとうございます。


END

――――――――――――――――――――
やっと完結です。最終話は少し長いかもしれません。あと、上野動物園にサルがいたかどうかは覚えていません。実際にはいないかもしれません。そうでも、いるという設定でよろしくお願いします。
最後のサクの語りの午後7時02分は気付いた方もいらっしゃると思いますが、ドラマ版の亜紀の誕生日、7月2日に合わせてみました。
感想と新作のアイデアを募集中です。できる限りアイデアは採用したいと思いますが、できないこともあります。ご了承ください。
...2006/03/13(Mon) 16:55 ID:U.sOW0Bg    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋
栄光の架橋です。
私もコメディーとは異なる作品を1作作ってみることにしました。今までの作品ではサク、ボウズ、スケちゃんと書いてきましたが、それだと少し作品に合わないと思いましたので、今回は朔太郎、顕良、龍之介と書きます。亜紀と智世は今までどおりです。
もちろん今までのような作品も別にして書きますので、よろしくお願いします。
さて、どのようなお話かといいますと、下をご覧ください。


〜STORY〜
1987年10月24日、亜紀が旅立った日から数ヶ月が経過し、朔太郎達は高校3年生になった。
1988年7月2日。1人の少女が宮浦高校に転校してきた。その少女の名は小林明希。彼女との出会いによって朔太郎の、止まってしまった心の時計が再び動き始める。
高校最後の年を舞台に朔太郎の亜紀を失った喪失からの再生を描く。


…といった感じです。私はできるだけ長編にするつもりですが、もしかすると少しで終わってしまう可能性もあります。また、しばらく更新されないこともあるかもしれません。ご了承ください。
できるだけ一週間にい1,2回を目安に更新したいと思います。
...2006/03/15(Wed) 11:20 ID:dhYJRAjg    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋
まず、こちらはコメディーです。3作目ですね。


戦場の幼稚園〜F4との戦いの日々〜 
第1話「最悪の職場体験学習」


夏が過ぎ、秋を向かえた宮浦。夏の蒸し暑さやセミの声の代わりに、涼しくなり、夜にはコオロギたちが合唱するようになった。
そんな秋のある日のこと。
「はーい、注目!来月、こんなものをします!」
谷田部が黒板をバシッと叩いた。一瞬で、おしゃべりをしていた生徒達の目は黒板に向けられた。
黒板には、「職場体験学習」と書かれていた。さらにその下にはたくさんの職場の名前が書かれていた。
「何だよー、職場体験学習って!」
「何か面白そう!」
など、嫌がる生徒や、興味を抱く生徒、など様々な生徒がいたが、
「ブーブー言わない!!」
と谷田部の定番のセリフで皆黙る。
「これは実際に働く人々と一緒に仕事を体験して社会についてよりよく学習する為のイベントです。2年D組を体験させてくださる職場はこの通りです。今から誰がどこに行くかを決定します。あとはよろしく、学級委員。」
と説明すると谷田部はさっさと教室の後ろに移動した。その代わりに亜紀と安浦が黒板の前に出てきた。
職場には、パン屋、レストラン、ホテル、スーパー、幼稚園・保育園……など、たくさんの種類があった。宮浦の外の職場もあった。

決め方は4,5人のグループを作り、グループの代表がくじを引いて数字が小さかった順に好きな職場を決定するという方法だった。
当然、サク、亜紀、ボウズ、智世はグループを組んだ。
「どこがいいと思う?ボウズ。」
「俺はあの宮浦軒っていうパン屋か、ミヤウラっていうレストランがいいぜ。」
「うおっ!俺も俺も!」
「あんた達はさ、食べることしか脳がないの!?」
「まあまあ、智世。男の子は食べ物が大好きなんだって。それに精神年齢も低いっていうじゃない。」
「ムッ!じゃあ何がいいんだよ、亜紀、智世!」
「やっぱり幼稚園か保育園だよね♪智世。」
「うんうん、子供達可愛いもんね♪肌がプヨプヨで…。」
「うん♪」
「てめーらこそ女子の趣味じゃねーかよ!」
「何か文句でも?」
「い、いえ………な…い…です。」
「お利口だね、中川君♪」
「あ、は〜い(^O^)…やっぱ俺幼稚園か保育園がいいな〜。」
「ボウズ!釣られるなよ!」
「サ〜クちゃん。だったら多数決でもする?」
「ま、結果は見えてるけどね。」
「う……わかったよ、幼稚園・保育園にするよ…(ーー;)」
「えらいね、サクちゃん♪」
「………(サク、少しニヤける。)」
「じゃあ、決定!亜紀、くじ引きにいって!」
「うん、智世。」
長ーい会議が終わり、亜紀はくじを引きに行った。
しかし……

「あれ?安浦君、くじは?」
くじ引きする雰囲気が感じられないので、亜紀は安浦に尋ねた。
「えっ……廣瀬たちが話し合ってるときにもうくじ引きしたよ?」
と安浦は少し緊張気味で答えた。
「もうこの、英徳幼稚園しか残ってないよ。」
安浦の言うとおり、もう英徳幼稚園しか残っていなかった。どっちみち、サクとボウズは幼稚園に行かなければならなかったのだ。
亜紀は少し疑問に思った。
幼稚園、保育園は人気なはずなのに、何故英徳幼稚園だけは人気がないのだろう………と。
「まぁ、いっか。」
とサクたちの下に駆け寄った。

「みんな、私たちの班、あまりだけど、英徳幼稚園っていう幼稚園に行くことになったから…。」
と亜紀が伝えた。
「英徳……変な名前。」
「どっかにそんな名前の大学とかありそうだな〜!」
とサクとボウズはへらへら笑っていたが、智世だけは「嘘…マジ…?」と言いそうな表情をしていた。
「どうしたの、智世?」
と亜紀は心配になって尋ねた。
「英徳幼稚園って、F4と呼ばれて恐れられているお坊ちゃまグループがいるところじゃん……。」
「それってやばいの?」
「噂になってるよ。赤札をもらった幼児は執拗な嫌がらせに合うの……。」
「でも、先生がいるじゃねーか!」
「先生でさえ、F4の保護者に罰を加えられてしまうから注意できないんだって。…その保護者は大企業の社長さんばかりだから……。」
「マジかよ!」
「大変だ……。」

こうして、F4と対決する運命を背負ったサクたち。どうなってしまうのだろうか……。
...2006/03/15(Wed) 12:11 ID:dhYJRAjg    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋
こちらは長編です。


世界の中心で、愛をさけぶ〜喪失からの再生〜
第1話「もう1人のアキとの出会い」


「好きよ、サクちゃん、大好きだよ…ありがとう。」
セーラー服姿がとても似合う少女が少し間の抜けていそうな少年に微笑んで告白した。そして、堤防に腰をおろした。少年も、ようやく意味を理解し、ニッコリ笑い、少女の隣に座って2人で楽しそうに会話をした。

明け方。青やピンク色のアジサイが咲いている見晴らしのよい丘で少年と少女はキスをした……。

倒れた自転車の横で泣き崩れる少年をやさしい笑顔でやさしく抱いている少女。少年は世界で一番やさしい音を聞いた。

試合に出場できなかった少女は100メートルを走り抜き、少年が彼女のタイムを伝えた。
「12秒…91!」
次の瞬間、少女は満面の笑みで、「自己ベスト!」とはしゃいだ。少年も一緒にはしゃいだ。彼女の笑顔を見た少年はとても幸せそうだった。

夢島と呼ばれる島で海水浴をする少年と少女。タイムポストで将来のメッセージをお互いに作った。

…しかし、その翌日、少女は倒れた。この時から2人にさまざまな試練が襲ってきた。

数ヵ月後…空港で力尽きる、やせ衰えた少女。最後に
「好きよ、…サクちゃん…。」
と弱弱しく言い、少女は気を失った。
「たすけて…ください。……たすけてください…たすけてください……。」
少年は少女を抱き、弱弱しく呟いた。

その翌日、彼女は旅立った。

オーストラリアのある巨大な岩の上。少女の母が泣き崩れ、少女の父がやさしく彼女を下に連れて行った。
少年は喪失していた。少年の視界は白と黒で満たされていた。しかし、少女の骨だけは変わらなかった。
少女との思い出が頭に浮かんできた。ついに少年は耐え切なくなり、
「アキ――――――――ッ!!!」
亜紀…少女の名前を大空に向かって叫んだ。

――――――――――――――――――――

少年は小さな部屋の中で目を覚ました。彼の頬には涙の跡がついていた。

朝…起きると泣いている…悲しいからではない…夢から現実に戻ってくるときにまたぎこさなくてはならない亀裂があり、僕は涙を流さずにそこを乗り超えることができないのだ……

「サクー!早く起きな!遅刻するよ!」
サクと呼ばれたその少年…朔太郎は母・富子の声が聞こえたので慌てて学校に行く準備をした。
「もっと早く起こしてくれよ!」
「起こしたけどアンタが起きなかったんだよ!まったく高校3年生にもなって……。」
「もういい!行って来る!」
朔太郎は自転車をフルパワーでこいでいった。遅刻を防ぐためでもあるが、少女…亜紀のことを思い出さないようにするためでもある。
「お兄ちゃん、前と比べると落ち着いたね。」
「まぁ、そうだねえ。亜紀ちゃんが死んで間もないころと比べたらずいぶん明るくなったけど……まだね…。」
「もう亜紀さんが亡くなって随分経ったね。」
「そういえば…今日は亜紀ちゃんの誕生日だねえ…7月2日。」

宮浦高校。
チャイムが鳴ると同時に朔太郎は3年B組と書かれた教室に飛び込んだ。
「よっ!センチメンタルジャーニー!ギリギリセーフだぜ。」
と顕良が朔太郎に声をかけた。その周りには同じクラスの智世、龍之介がいた。龍之介も3年生になってようやく朔太郎たちと同じクラスになることができた。
彼らはいつもどおり会話をしたが、亜紀についての話題は避けていた。それで、朔太郎は彼らに感謝をしていた。

「はい、おはよう!」
担任の谷田部が入ってきた。出歩いていた生徒はそれぞれの席に座り、静かにした。
「今日から3年B組に新しい友達が来ます。…入って!」
と谷田部が言うと、転校生が入ってきた。少し大人びた雰囲気が出ている少女だった。
「自己紹介して、小林。」
「はい。」
その少女は谷田部に言われ、返事をした。

「小林明希(アキ)…です。」

アキ…と聞いて2年D組だった生徒たちは驚いた。廣瀬亜紀の姿が脳裏をよぎった。

朔太郎はアキという言葉を聞いただけでかなり動揺してしまった。


こうして、朔太郎の喪失との戦いが幕を上げたのだった。


続く。
...2006/03/15(Wed) 12:54 ID:dhYJRAjg    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:SATO
怒涛の勢いで次々ストーりーがアップされてますね。

「逃亡者ボウズ」では東京見物が楽しかったです。私は東京在住ですが、意外と東京タワーとか上野動物園などは行ってないんですよね〜。東京に来て興奮気味のボウズの姿は「ウォーターボーイズ2005」を思い起こさせました。

「戦場の幼稚園」は『花より男子』のパロディーでしょうか(^^)F4は手ごわいですからね。亜紀たちの奮闘ぶりを楽しみにしています。

「喪失からの再生」では、ドラマ本編よりも1年早く、それもスケ・ボウズ・智世とともに朔は小林明希と知り合うわけですね。しかも谷田部先生の教え子ということで・・・これからの展開が興味深いですね。
余談ですが、高校3年生の小林明希をイメージしてみたのですが、市川○衣さん、沢○エリカさんあたりはいかがでしょう?ひねったところでは長○まさみさんも面白いかもしれません(^^)
...2006/03/15(Wed) 21:13 ID:xjOjSyoo    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:にわかマニア
 1か月でレス50件とは,かなりのペースですね。
 ドラマ本編と同じく,やはりボウズは「運命」からは逃れられなかったのですね。実家の寺を継いで僧侶になったクラスメートという設定は映画にも登場しますが,私の高校時代の同級生にも地元(広島)ではかなり知られた名刹の住職の子がいて,「珍念」と呼ばれていました。

>ひねったところでは長○まさみさんも面白いかもしれません(^^)

 そうなると,「皿の割れる喫茶店」ならぬ「窓ガラスの割れる学校」ってことに・・・
 これだと,「F4」モードですね。
 

 
...2006/03/16(Thu) 08:39 ID:LkVX1m6I    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋
SATOさん
書き込みありがとうございます。
怒涛の勢いでストーリーがアップされるのは、暇になると書き込みたくて仕方なくなってしまうからです。高校(ちなみに、栄光の架橋がかかりました。)の入学までに中学の内容を整理しておかないといけないというのに遊んでばっかりで(泣)……書き込みばかりしています。
私も東京観光中のボウズを想像していると、ウォーターボーイズ2005夏を思い出しました。
新作ではおそろしい幼稚園児といえば…と考えていたら、花より男子のF4の姿が頭に浮かんできました。それで幼稚園児版F4を登場させてみました。
小林明希のイメージはみなさんにおまかせします。
…確かに3人ともイメージに合っているかもしれませんね…。


にわかマニアさん
書き込みありがとうございます。
ハイペースの理由はSATOさんへのコメントをご覧ください。
人間は生まれつきそれぞれの運命を持っているのです。(笑)ボウズの運命は……
そういえば映画にも僧侶が登場していましたね。今思い出しました……。
中学生の時、私の周りにも珍キャラと言える友達がたくさんいました。友達って素晴らしいですよね。
窓ガラスの割れる学校…私の中学校も昔よく割れました。(笑)
F4をゲスト出演させてみました(幼稚園児版)。
...2006/03/16(Thu) 10:00 ID:6NVIFsmg    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋

戦場の幼稚園〜F4との戦いの日々〜
第2話「宣戦布告」


日曜日。サク達は英徳幼稚園へ行く方法を調べる為、松本写真館に集まっていた。
「電車に乗って10分…バスで10分程度行くと着くわけだ。」
「結構遠いな。」
「合計20分なんだ。」
「F4のクラスに当たらなければいいなぁ。」
4人とも会う前からF4を恐れているようだ。
「一回下見してくるか。」
とサクが言った。
「サクちゃんが行くんだったら私も行く!」
続いて亜紀が言った。
「よし、行くぜ―――!英徳幼稚園!」
サクが写真館を飛び出し、亜紀がその後を走って追いかけていった。
サクの祖父、謙太郎は英徳幼稚園と聞いたとたん、作業をする手を止めた。
「ちょっと待ってよ!」
と智世とボウズも彼らを追いかけようとしたが、
「待った!」
と謙太郎に止められた。
「どうした、じいさん!」
ボウズが謙太郎に尋ねた。
すると、謙太郎は、
「今日は英徳幼稚園で運動会があってな…。運動会のたびにF4は荒れるらしいから、危険だ。通りかかった人にもいろいろなことをしてくるそうだから…。」
と苦渋に満ちた表情をして言った。謙太郎の話によると、彼の親戚がF4にいろいろやられたとか……。
「大丈夫かな……あの2人。」
「あの2人は自分達の世界に入ると止まらないからな…。」
と智世とボウズはサクと亜紀を心配した。
だが、現在午後3時。運動会はそろそろ終盤だった。


バスが「英徳幼稚園前」というバス停に止まったので、サクと亜紀は下車した。
「………何か…」
「…すごく大きい幼稚園だね……。」
2人の前には宮浦高校ほどの広さがある立派な建物が建っていた。
すでに運動会は終わったらしく、先生達が後片付けをしていた。しかし、2人は運動会のことは知らない。…F4がまだ近くにいることも……。

30分後…
「そろそろ帰る?」
「うん。」
2人はある程度下見したので、引き返すことにした。
いきなり亜紀がサクと手をつないだ。驚くサク。
「こういう風に歩いたこと、あんまりないよね。」
「…あ、ああ……。」
この後2人は手をブンブン振って歩いた。当然、歩きにくかった。
その2人の背後からリムジンが接近……
「あのカップル、ムカツク…止めろ!」
「あ、はい!司様!」
1人の幼稚園児に命令され、サクと亜紀の横で車を止める運転手。
「何だ!?」
急にリムジンが横に止まったのでサクと亜紀はビックリした。
リムジンからパーマがかかった幼稚園児が出てきた。
「サクちゃん、可愛いね、この子!」
と亜紀はのんきにもそんなことを言った。その言葉で幼稚園児は怒り、
「お前らムカツクんだよ!庶民のくせに!」
と怒鳴った。驚く亜紀。
「何なんだよ、お前は!」
とサクは園児に怒鳴りつけた。亜紀のことになるとサクは注意しても止まらない。
「俺様は松本司だ!英徳幼稚園のF4だ!」
松本と聞いてむっとするサク。しかし、その直後しまったと思った。司はF4の一員だった。
「お前、松本朔太郎だろ。おれと同じ名字なんて…!無礼な奴だ!隣はお前の彼女の廣瀬亜紀だろ。あと、中川顕良と上田智世もいるんだろ?今度来るんだろ?可愛がってやるよ。サ・ク・ちゃ・ん★」
と司はサクを挑発した。
「何だと!上等だ!この野郎!」
幼稚園児・松本司の挑発にのった高校生・松本朔太郎。
「サク!挑発に乗らないで!」
と亜紀が止めてもサクは止まらない。
そして、最後には……

『お前ら、F4に宣戦布告だ!覚悟しとけ!』

と大声でサクは叫んでしまった。あ〜、とショックを受けた亜紀。F4は恐ろしい。
「ふん、いいだろう。逃げんなよ、松本朔太郎。」
と言い残し、司はリムジンに戻った。司が戻るとリムジンは出発した。

F4の松本司に宣戦布告したサク。その運命は……?

続く。
...2006/03/16(Thu) 12:22 ID:r8jR1gZc    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋
一つとんでもないミスをしましたのでお詫びを申し上げます。

39:一読者さん
励ましの言葉をいただいたのに返事を忘れてしまい、本当に申し訳ありません。ごめんなさい。無視ではありません。
ご愛読していただいて本当にありがとうございます。「楽しい」という言葉を見ますとうれしくなりますし、作品を書くなりよりのエネルギーになります。家族からも「お前はギャグセンスがある。」と言われております。これからも頑張ります。
これからもよろしくお願いします。
最後に、返事を書き忘れて本当にごめんなさい。
...2006/03/16(Thu) 12:30 ID:r8jR1gZc    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:一読者
>一つとんでもないミスをしましたのでお詫びを申し上げます。

いやいやいやいやいや(笑)
そんなことを気にしないで下さい、返って恐縮しちゃうんで。
色々なアイデアが湧き水のように生まれて来て凄いなぁ・・と感心しています。若いっていいなぁ。
これからも楽しみにしています、頑張って下さい。
...2006/03/16(Thu) 17:53 ID:2hP3ibW.    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋
一読者さん
書き込みありがとうございます。これからは返事の書き忘れが無いように念入りにみなさんの感想を拝見したいと思います。
始めは全然アイデアが浮かばず、できていた作品だけでも、と書き込んでいるうちにアイデアが次々と出てきたのです。今連載(?)している幼稚園の話意外の新しい作品のアイデアが2,3個程浮かんでいます。兄が想像力豊かな方で、彼にアイデアを出してもらっていることもあります。
前にフジテレビで放送されていた「こち亀」のようなスケールの作品もできてしまいそうです……。
とにかく、読者が楽しんでもらえるような作品作りを目指したいと思います。

今日で卒業式から1週間……友達に会えないことがこんなに寂しいとは……(-_-;)
...2006/03/16(Thu) 18:29 ID:6NVIFsmg    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋

世界の中心で、愛をさけぶ〜喪失からの再生〜
第2話「初めての会話」


朔太郎:1988年7月2日。亜紀の最後の誕生日から1年経ったその日に「アキ」という名の少女が宮浦高校に転校してきた……


「小林の席は、あの空いている席。」
と谷田部は朔太郎の席の隣の空いている席を指差した。
「はい。」
と返事して明希はその席に移動し、席に着いた。
その後、谷田部はいくつか行事について説明してホームルームは終了した。

休み時間。
明希が席を離れた。その隙に、顕良は朔太郎に話しかけた。
「サク、サク!結構美人だな、小林って奴!」
「え、あ、ああ……。そうだな…。」
しかし、朔太郎の頭には亜紀のことでいっぱいになっていた。またつらい日々が蘇ってきたので、
「ボウズ!お前興奮しすぎなんだよ!」
とボウズの頭をバシッと叩いた。いつも通りにすることで亜紀のことを忘れる為だ。
「ボウズって言うな!」
と顕良は叫んだ。
「お前さ〜ん、ボウズはボウズなんだからさぁ〜!」
と龍之介がボウズの頭を下敷きでゴシゴシこすった。
「やめろっ!摩擦熱が!」
「うるさいよ、あんた達!先生来るよ!」
と智世が3バカトリオに注意した。いつの間にか休み時間は終了していた。
「しゅいませ〜ん!」
と龍之介は自分の席に座った。…ちなみに席は廊下側の列で、龍之介・顕良・朔太郎と縦に3人続いている。朔太郎が一番後ろ。その隣の列の顕良の隣に智世・朔太郎の隣に明希。
朔太郎達のやりとりを見て明希はくすっと笑った。朔太郎がそれに一番早く気付いた。
「な…何?」
と朔太郎は明希に恐る恐る尋ねた。
すると、明希は答えた。
「だって、松本君…たち見てると何か心が和むっていうか、親近感が沸くみたいな……。」
「ふーん……。」
と朔太郎は少し照れたような顔で言った。そして、前を向き、顕良のイスに落書きをし始めた。
明希はそんな朔太郎に興味を持った。
それで、
「松本君……」
と彼を呼ぼうとしたが、先生が入ってきたので、話しかけることができなかった。


―――続く
...2006/03/17(Fri) 11:03 ID:4wy4lURw    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋


戦場の幼稚園〜F4との戦いの日々〜
第3話「開戦」


職場体験学習まであと1週間となった。サク達は未だにどのクラスを訪問するか決定していなかったので、急遽決めることになった。
「エーデルワイス組にF4のリーダーの松本司とメンバーの1人、小栗類がいて、チューリップ組に残りのメンバー、松田総二郎・阿部あきらがいるんだとさ。」
とサクが下見した結果を伝えた。
「エーデルワイスとか、すげぇ名前だな。さっすが英徳幼稚園!」
「……何でエーデルワイス組とチューリップ組の紹介しかないわけ?」
「…なんか、英徳学園中等部の家庭科の授業でその2つ以外の部屋が全部使われちゃうんだって。同じ日に行く予定だし。」
今の会話より、サク達はF4のいる部屋で職場体験をしなければならないということが判明した。
「リーダーの松本司がいる部屋が一番荒れているらしい。」
「じゃ、俺、チューリップ組!」
「私もチューリップ組!」
「私も………。」
と亜紀達はチューリップ組を選んだ。しかし、各部屋2人ずつ。
「俺だってチューリップ組がいいよ!」
「ダメ!サクちゃん、この前松本司君に宣戦布告したじゃない!サクちゃんはエーデルワイス組!」
「まじかよっ!サク!」
「度胸あるね―、サク。」
ボウズと智世はそう言いながらもどこかうれしそう。
結局、ジャンケンで決めることになった。(サクはエーデルワイス組決定。)
ジャンケンの結果、亜紀、敗北でエーデルワイス組決定。
「サクちゃんと一緒だからいいよ〜♪」
と亜紀は意地を張った。彼女は負けず嫌いな性格。
「強がっちゃって……。」
とサクは小声で呟いた。
こうして、担当クラスが決定した。

サク&亜紀:エーデルワイス組
ボウズ&智世:チューリップ組


そして、当日を迎えた。

サク達はそれぞれの部屋に到着した。
「待ってたぞ、松本朔太郎!」
サクの身長の半分程度の身長のF4のリーダー、松本司がサクを見て叫んだ。
園児の1人がサクの背中に赤札を張った。
「いけ!」
と司が叫ぶと同時に園児がサクに襲いかかった。

「来いっ!!!!」

とサクは気合を入れた。幼稚園児に対して。(笑)
松本朔太郎VS松本司が開戦した。


―――続く
...2006/03/17(Fri) 11:34 ID:4wy4lURw    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:SATO
「小林編」では、ドラマ本編でも他の投稿ストーりーでも一切語られることのなかった「もう一人のアキ」と、朔太郎やスケ・ボウズ・智世とのふれ合いがどう深まっていくのか楽しみです。

「F4編」では、幼稚園児相手にムキになる朔が何となく可愛いですね。
...2006/03/18(Sat) 00:45 ID:.hcZhQSk    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋
SATOさん
書き込み&感想ありがとうございます。
できるかぎり明希とサク達の心のふれあいを描いていこうと思います。
サクの性格なら、挑発されたら幼稚園児に対してもムキになるかなぁと思い、書いてみました。
これからも頑張りたいと思います。
...2006/03/18(Sat) 10:16 ID:c5sZTd.o    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋
F4の性格がうまく表現できないと思いますが、よろしくお願いします。


戦場の幼稚園〜F4との戦いの日々〜
第4話「サクと亜紀」


職場体験学習がついに始まった。

エーデルワイス組。
サクは始まって早々松本司(幼稚園児)に振り回されていた。
「もっとやれー!」
と司が園児達に命令し、園児達はサクの制服にクレヨンや絵の具、ボンドなどで落書きした。
「待て待て待て!クリーニングに出さなきゃいけなくなるだろ!」
とサクが止めても園児達は攻撃をSTOPしない。司の命令は絶対なのだ。
高校生・松本朔太郎は幼稚園児にさえ苦戦していた。(笑)
一方、亜紀は女の子達の世話をしていた。実は、サクを襲っているのは男の子ばかりだった。
「じゃあ、お姉ちゃんと一緒にハンカチ落しでもやろっか♪」
「は〜い、亜紀お姉ちゃん♪」
と、亜紀と女子園児は定番のゲーム、ハンカチ落しをやっていた。サクとは違い(?)、園児達もすぐに懐いてきた。
「亜紀、のんきにゲームなんかやってないで助けてくれ!」
とサクは亜紀に助けを求めた。
しかし、
「まて〜!」
ハンカチを落された亜紀はサクのことが眼中に入っておらず、ハンカチを落した園児を無邪気に追いかけていた。まるで幼稚園児だった。
「彼女にまで見捨てられてるよ〜!」
と司は大爆笑。
その近くで落ち着いて紅茶を飲む園児がいた。彼こそ、F4の1人、小栗類だった。司とは正反対で、とても落ち着いている。
「あのカップル、行動はまったく反対だけど、いいカップルだと思う。」
と類はサクと亜紀を観察して言った。
「はぁ!?訳わかんね―よ。類。」
と司。


チューリップ組。
智世はF4の1人、松田総二郎にナンパされていた。阿部あきらは人妻が好みなので、離れていった。
ボウズは何気に幼稚園児の人気者。精神年齢が一緒だからだろう。
「ねえねえ、ボウズボウズ!この子ものすごく可愛くない!?」
「どこがだよ!ナンパ野郎に騙されるな!」
「お茶でも飲みましょう、智世さん。」
「うわ〜うれしい〜!」
「そいつ精神年齢何歳だよ!」
「龍之介なんかよりこの子の方が100倍可愛い!」

その頃…
『ハ…ハ………ブワックショイッッッ!!!!!!!』
職場体験学習をサボって海で釣りをしていたスケちゃんが大きなくしゃみをした。
「……おわ――――――――!」
次の瞬間、くしゃみの反動で海に落ちた。
「ブルルルルルルル………さむいっ…誰か噂でもしてるのかな……。」
海から這い上がったスケちゃんは呟いた。


昼休みになったので園児達は食堂に移動した。その間、サク達は昼ご飯を屋上で食べていた。
「疲れた………。」
「サクちゃん、なんか、制服が素敵な仕上がりになってるよ……。」
「いろいろガキどもに……。」
「松本司って恐ろしいみたいだな……。」
「ガキなんて言ったら可愛そうだよ、サクちゃん。」
「だよなぁ、廣瀬♪」
「中川君、なんか穏やかだね……どうかしたの?」
「ボウズの奴ね、園児の人気者になってすっかりお友達。」
「へえ…すごいね、中川君。」
「だろっ、だろ!?もしかして惚れた?」
「………惚れてない……。」
「………………。」
「……ごめんなさい。」
「辛気臭いよ、亜紀、ボウズ!……サク、アンタものすごく恐い顔してる………。」
智世の言うとおり、サクはものすごく恐い顔をしていた。
「サクちゃん?」
「いや……宣戦布告したのにやられっぱなしで……。」
「仕返ししたいの?まちなって、サク!」
「おいおい、またやられるって!」
しかし、こんな時のサクは説得が通じない。
「サクちゃん、午後園児達と外で遊ぶことになってるんだけど、松本司君以外の子を連れてくよ。」
「亜紀………。」
「そうすれば、一対一でいけるよね…。」
「ありがとな、亜紀!!がんばるぜ!」
「うん♪わらわは、おぬしを応援しておるぞよ。」
サクと亜紀はしばらく微笑んで見つめあっていた。

一方、蚊帳の外のボウズと智世。
「……なんか、すごい。あの2人……。」
「改めて失恋したぜ……。」

そして、昼休みが終わった。


―――続く

――――――――――――――――――――

なんかすごい駄作(サブタイトルも)となっておりますが、今後もよろしくお願いします。
...2006/03/18(Sat) 11:46 ID:c5sZTd.o    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:clice
栄光の架橋様
こちらこそはじめまして。
亜紀のいない世界と亜紀のいる世界を、同時に書き分けていくことは大変でしょうが、とても楽しい作業なんだろうなと文面から想像致します。
文章を読ませて頂いて、アイデアも然る事ながらリアルタイムな感性が其処彼処から感じられ、大人が想像で書くのとはまた違った世界がそこに展開しているように思います。
もちろん経験はしていて忘れているだけなんですが、これからもそんなリアルな朔と亜紀の世界をぜひ届けて下さい。
...2006/03/18(Sat) 12:06 ID:BZhfAftM    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋
cliceさん
こんにちは。書き込みありがとうございます。
私は人を感動させたり、笑わせたりすることが大好きなので、書いているときはとてもウキウキします。ウキといっても猿ではありません(笑)。
子どもには子どもの世界、大人には大人の世界があるのでしょう。
これからも頑張りますので、よろしくお願いします。
cliceさんの作品も楽しみにしています。お互い頑張りましょう。
...2006/03/18(Sat) 15:56 ID:MVH95R2A    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:双子のパパさん
 栄光の架橋様 はじめまして。

 アイデアあふれる作品を、楽しく拝読させていただいております。二つの作品を同時に書かれるというのは、とても大変だと思いますが、本当に楽しまれているようですね。若い力ってすばらしいですね。

 私個人的には「喪失からの再生」の展開が、とても気になります。これからも楽しみにさせていただきます。
 遅くなりましたが、御卒業おめでとうございます。
...2006/03/19(Sun) 01:44 ID:xdXK1unc    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋
双子のパパさん
はじめまして。書き込みありがとうございます。
1人でも多くの人が楽しんでもらえるととてもうれしいです。
「喪失からの再生」は今までの作品とは少し異なっているため、自信はありません。けれども、完結まで達せられるように頑張ります。

卒業のお祝いの言葉、ありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
...2006/03/19(Sun) 11:39 ID:bPTNzwOg    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:たー坊
お疲れ様です。
今の所は大事にもならず、安堵しております(笑)
まぁしかし・・・口があんぐりです。私だったら・・・引っ叩くでしょうね(失言?)
ガチンコバトルを楽しみにしております。くれぐれも亜紀を人質に捕られないように・・・・・・。
...2006/03/20(Mon) 02:04 ID:HRLkb/lA    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋
たー坊さん
亜紀は人質にはとりません。サクと司の一対一の戦いにする予定です。
……最近調子に乗って良い作品を書けていませんが、これからもよろしくお願いします。
...2006/03/20(Mon) 09:38 ID:VcstzFq2    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋

世界の中心で、愛をさけぶ〜喪失からの再生〜
第3話「宮浦」


昼休み
朔太郎は谷田部に「小林に宮浦高校を案内して」と頼まれて明希を案内した。
「一通り案内したと思うから、そろそろ昼飯食べるか。」
「うん…。」
朔太郎は一通り案内が終わったので昇降口に向かった。
昇降口は生徒でいっぱいだった。コロッケパンなど、昼食を買うためだった。朔太郎と明希もそこにいた。
「すごい人……何してるの?」
あまりにも多くの生徒がいたため、まだ転校したばかりの明希には何がなんだかわからなくなっていた。
「みんなパンを買ってるんだ。特にコロッケパンが人気で、早くしないとなくなっちゃうから、俺、買ってくるよ。小林もいるだろ?」
「うん…。」
と明希が言うと朔太郎は駆け出した。
朔太郎の姿は人ごみに紛れて見えなくなった。
ほんの数秒後、朔太郎は人ごみの中から出てきた。かなり慣れていたのだろう。
「はい、コロッケパン。…どこで食べる?」
と明希にコロッケパンを手渡してから朔太郎は尋ねた。
「じゃあ、図書室かな。私、本借りたいから。」
と明希は答えた。
「分かった。じゃ、行こう。」
明希の希望に添って朔太郎は図書室に向かって歩き出した。明希もその後に続いた。

図書室
朔太郎と明希はイスに腰掛けてコロッケパンを食べた。2人の間は、イス一脚分空いていた。
朔太郎は漫画を片手にコロッケパンを頬張っていた。
「松本君。」
「ムガッ……(ゴクッ)…、何?」
「さっきコロッケパン買うの早かったね。」
「まぁ、前から買ってるから…。」
「前にも誰かに買ったりとかしてたの?」
この明希の質問で、朔太郎の顔が少し曇った。亜紀のことを思い出したからである。しかし、明希は亜紀の存在を知らない。
朔太郎の顔を見て、明希は慌てて話題を変えた。
「私、宮浦に来たのも本当に少し前だから、今度宮浦も案内してくれる?」
「…あ、いいよ。いつ?」
「えーと、今週の日曜日。」
「分かった。」
朔太郎の顔も先程と同じ表情に戻っていた。しかし、先程の朔太郎の表情を見ていると、どこか悲しそうだった。
1年前に何かあったのだろうか、と明希は疑問に思った。しかし、今は聞くのをやめた。触れてはなさそうな感じだったからだ。しばらく時間をおいてから聞こう、と明希は思った。

日曜日
朔太郎と明希は宮浦高校で合流した。
朔太郎はまず明希にたこ焼きパパさんを紹介しようと思った。
「おぅ、ガム太郎!」
たこ焼きパパさんを営む通称:パパさんが朔太郎に声をかけた。
「ガム太郎は余計だよ。…2つくれあと、コーラ2つ。」
と朔太郎は明希をベンチに座らせてパパさんのところに駆け寄って言った。そしてポケットから財布を出し、注文した。
たこ焼きとコーラを持って朔太郎は明希の前に座った。
「ここのたこ焼きは宮浦では結構有名だし、味もいい方だなんだ。」
「へぇ、そうなんだ。」
2人は楽しそうに会話しながらたこ焼きを食べた。
朔太郎の表情を見てパパさんはほっとした。

朔太郎と明希は防波堤に腰掛けていた。青々とした海から吹いてくる風は気持ちよかった。上空ではトビがピーヒョロロロー…と鳴いていた。
「たこ焼き、おいしかった。海もきれい。」
「よかった。不味かったらどうしようかと思ったよ、俺。」
「ところでさ、松本君って何でガム太郎って呼ばれてるの?」
「いっつもベタベタしてる…してた……からかなぁ…。」
朔太郎は苦笑いをして防波堤から飛び降りた。
「次行くよ。」
朔太郎は歩き出した。
以前見せた表情といい、今の動揺といい、朔太郎は何かを隠しているような気がした。
「置いてくよ―?」
朔太郎が遠くからボーっとしている明希を呼んだ。
慌てて明希は朔太郎の方へ駆けていった。

次に朔太郎は明希をある丘に連れて行った。
そこは、亜紀が1人になりたいときによく来るあの紫陽花の丘だった。
以前のようにたくさんの紫陽花が咲いていた。
明希は「きれい!」とたくさんの紫陽花に見とれていた。
朔太郎も紫陽花にしばらく見とれていた。


――今年も去年と同じようにたくさんの紫陽花が咲いていた。今までと何も変わらない世界――でも、君だけがいない。僕は君のいない世界であとどれだけ生きなければならないのだろう、亜紀………


思わず涙が流れる朔太郎。明希に気付かれないように涙をぬぐった。

「今日はありがとう、松本君。」
朔太郎と明希は田んぼ道を歩いていた。その先には亜紀の家が見えていた。
「じゃ、ここで。」
と明希は足をとめた。
「私の家、あそこだから。」
と明希は指をさした。明希の家は亜紀の家からもう少し後ろの方にあった。
「じゃあ、また明日!」
と明希は朔太郎に手を振って帰っていった。
朔太郎は亜紀が初めてサクと呼んでくれた日を思い出していた。その日も今と同じ感じだった。
朔太郎は頭を思いっきり振って走り出した。


――彼女…小林を見ているとどうしても君を思い出してしまう。こんな状態で僕はこれから生きていけるのかな、亜紀。


朔太郎は家まで全速力で走っていった。


―――続く。


――――――――――――――――――――

やっぱりシリアスな話は全然ダメですね……
...2006/03/20(Mon) 14:35 ID:/9l64O5g    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:ポポ
>やっぱりシリアスな話は全然ダメですね……

そんなこと、全然ないですよ〜
むしろ15歳でこんなお話を考えられる想像力の豊かさに感心しています。サクちゃんのこと、幸せにしてあげてくださいね。

それから遅れましたけど、卒業おめでとう!!!
中学時代の仲間と離れるのはつらいでしょうけど、本当に高校時代って楽しいから、期待していていいと思いますよ。
私も主人も、いまだに遊んだり連絡とってるのは大体高校時代の友人ですから。色々遊んで、頑張ってね!!!
...2006/03/20(Mon) 16:32 ID:NXmeAevs    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋
ポポさん
励ましの言葉をありがとうございます。
単純なお話になってしまうと思いますが、サクちゃんを幸せにします!(…結婚式みたいですね)
これからもよろしくお願いします。

卒業のお祝いの言葉もありがとうございます。
私は友達を作るのが少し苦手なので心配ですが、良い友達とであって中学校以上の生活をおくりたいと思います。兄も高校時代が一番楽しかったと申していたので、絶対大丈夫だ!と信じます。
ちなみに今日中学校時代の友人と遊ぶ予定です。(^O^)楽しみだなぁ♪
...2006/03/21(Tue) 10:05 ID:0emcKTRY    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋

世界の中心で、愛をさけぶ〜喪失からの再生〜
第4話「ロミオとジュリエット」



田んぼ道の横を小さな川が流れていた。そのわきを宮浦高校の生徒達が登校していた。
その中に朔太郎もいた。だが、朔太郎は力なく自転車をこいでいた。「亜紀のいない世界」をしっかりと認識してしまったからであろう。
そこに、
「よっ!お前さん!」
「何か疲れたな〜。」
と龍之介と顕良が朔太郎の自転車の後ろにのしかかった。
「重っ!!!」
急にペダルは重くなった。古い自転車に3人の高校生が乗っているのだから当然だ。

―――僕がどんなに泣いて願っても、亜紀が帰ってくることなど、あるはずがない……

「よしっ!」
と朔太郎は気合を入れてペダルを思いっきりこいだ。しかし、彼の頭には、後ろに龍之介と顕良がいるということはなかった。
朔太郎の自転車はそのままバランスをくずし……
「えっ!」
「おおおおい!サク!」
「うわっ!」

 バッシャ―――――――ン……

歩いていた生徒達の足が止まり、視線が一点に集中した。クスクスと笑う者もいた。その先には川……ではなく水浸しになった朔太郎と龍之介・顕良そして、自転車。彼らはバランスを崩して川に落ちたらしい。
「サク!ビショビショじゃねーか!」
「…………ごめん。」
川から上がった朔太郎は力なく謝った。そして、自転車に乗り、びしょ濡れのまま学校へ向かった。

「なんだあいつ……。変だな。」
「きっと『亜紀ちゃんのこと、思い出したけど一生懸命生きるぜモード』に入ってるよん。サクちゃん……」
「じいさんの時みたいなやつか。」
朔太郎の背中を心配そうに見つめる龍之介と顕良だった…。近くにいた智世も心配そうだった。3人の顔を見ていた明希には彼らの表情が現す意味が理解できなかった。

ホームルーム
「はーい、文化祭、これやるから!」
担任の谷田部が黒板に「ロミオとジュリエット」と書いて言った。2年D組だった生徒達は「またかよー!」などとブーブーと文句を言ったが、
「ブーブー言わない!初めての人もいるんだから。」
と生徒達を制した。そして、いつものように学級委員を呼び出し、さっさと移動した。
「サク!サク!お前演出やれよ!」
と顕良が朔太郎に言った。朔太郎・顕良・龍之介は朝川に落ちたため体育着姿だった。制服は窓際に干してある。
「え……なんで。」
「ほら、お前去年やったじゃん、どすこいロミオとジュリエット。あれおもしろかったからさー。」
「それに、他にやれそうな奴いないじゃん。お前さん。」
「めんどくさいんだよ、考えるの。」
「後で手伝ってあげるから!」
「嫌だって言ってるだろ!」
と会話が繰り広げられていたそのとき、
「演出やりたい人、いませんか?」
と学級委員がクラスメート達に尋ねた。しかし、誰も挙手しない。
しめたと思い、
「はーい!ここにいます、松本朔太郎でっす!」
と龍之介と顕良が朔太郎の腕を掴み、叫んだ。クラスメート達は「おー!」と騒いだ。
「ちょっ……何勝手に決めてんだよぉ!」
と朔太郎は2人の手を振りほどいて慌てて言った。しかし、他に立候補者がいなかったため、演出は朔太郎に決定した。
「松本君。私も手伝っていい?」
と明希が朔太郎に尋ねた。
「え…いいけど。」
と朔太郎は承諾した。

チャイムが校内に響いた。



―――続く

――――――――――――――――――――

今回の明希は存在感が……

前は一週間に1,2回と申しましたが、こちらの作品は毎日1話ずつ投稿しようと思います。20話程度の予定です。
...2006/03/21(Tue) 19:49 ID:bxmyC0wc    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋

戦場の幼稚園〜F4との戦いの日々〜
最終話「決着」


英徳幼稚園の昼休みが終わった。
亜紀はエーデルワイス組の園児達を全員(F4以外)を外に連れ出した。

サクは誰もいない教室で精神統一をしていた。司と勝負する為である。
しばらくすると、誰かの足音が聞こえてきた。その足音はエーデルワイス組の前で止まった。その直後ドアが開き、
「何だこりゃ!誰もいないぞ!」
と司の声がした。司が来たのである。
サクは立ち上がり、司の元にゆっくり歩いていった。
「校庭見てみろよ。」
とサクは校庭の方を指差した。サクが指さした方を司は見た。
そこには亜紀を中心として楽しそうにドッジボールをするエーデルワイス組の園児達がいた。皆かわいらしい笑顔でドッジボールを楽しんでいた。
「一対一でやるっていうのか?」
司は一瞬で朔太郎が何をするつもりなのかを理解した。
「俺は、お前に宣戦布告したからな。男らしく一対一で行こうぜ。」
司も意外とあっさり承諾して朔太郎VS司の一対一の勝負が幕を挙げた。
「ルールは?」
と司が聞いた。それを聞いてサクは「あっ。」と間抜けな一言。サクは一つのことに熱中したら周りが見えなくなるタイプである。対決のルールも決めていなかったらしい。
「ふん。俺様に宣戦布告しておいてルールも決めてないのか。」
と司は見下すような言い方をした。それでサクはムッとした。
司はかまわず続けた。
「この前の運動会でビリになって俺様はムシャクシャしてるんだよ!だから運動会形式でいこうじゃないか!」
何故か司がルールを決定した。

校庭。亜紀やボウズ、智世、園児達がサクと司を見守っていた。
一本の綱が用意された。1回戦は綱引きのようだ。
「幼稚園児には負けない!絶対に!」
とサクは気合を入れた。そして、何故か類が開始の笛を鳴らした。
全力で綱を引くサクと司。当然ながら、サクが優勢だった。
しかし、司が突然面白い顔をした。志村けんがアイ―ンをしたときのような顔。サクは思わず「ブッ!」と吹出し、綱を離してしまった。その隙に司は綱を引き勝利を収めた。
「卑怯だぞ!お前!」
サクは怒鳴ったが、司は「賢い者が勝つんだよ!」と言い、それを受け入れなかった。1回戦は司の勝利。

次に、2つの籠が掲げられた。玉入れだ。
またまた類が笛を吹いた。
サクは司に邪魔されないうちに玉をたくさんいれようとしたが、なかなか玉は入らない。籠を支える園児が司の命令で籠をゆらして玉が入りにくいようにしていたからである。さらに司が足で砂を蹴ってサクにかけてきた。それが目に入り視界を失うサク。
「このやろー!」
とサクはでたらめに玉を投げた。その玉は司の籠を支える園児に当たり、その園児は思わず手を離した。倒れる籠。こぼれる玉。慌てて拾おうとする司。しかし、終わりを告げる笛が鳴った。
アクシデントにより、サクがわずかな差で勝利した。
司は籠を離した園児に近づき、
「何で離しやがったんだよ!役立たず!」
とその園児に怒鳴り、蹴り飛ばした。それを見てサクと亜紀がほぼ同時に走り出した。それを見てボウズと智世は慌てて後を追いかけた。
始めに着いたのは亜紀だった。亜紀は司の頬を思い切り叩いた。パーンという音が校庭に響いた。
「偶然の事故を他人のせいにするなんて、馬鹿げてる!あなたに毎日のように命令されて、失敗すると殴られたり蹴られたりする相手側の気持ち、理解できる!?あなたがやられたどう思う!?自分がされて嫌なことは相手にやっては絶対駄目!他人の気持ちをもっとよく考えなさいよ!」
と亜紀にしては珍しく怒りの形相で司に訴えた。司は何も言えず、叩かれた部分を手でおさえていた。そして、亜紀の言葉を思い出していた。
――他人の気持ち……
「亜紀…。」
智世は取り乱した親友を落ち着かせるように声をかけた。
次にサクが司の元にやって来た。
「他人の気持ちを考えることはとても大切だ。あと一つ、俺からお前に言いたいことがある。」
と司に静かに語りかけた。
「それはな、何事にも一生懸命になって、正々堂々とやることだ。そうして何かをやり遂げるとすごく気持ち良くなると思う。俺は卑怯な手では得られない大切なものを得られると思うんだ。でも、悪いことには一生懸命になるなよ。正しいと思ったことを正々堂々と、一生懸命やれ!あと、何よりも楽しむことを忘れるな。」
とこれは熱く語った。
「…………。」
司は、二人の言葉が心に刻まれたような気がした。
「これで1−1だ。最終決戦しようぜ、松本司!」
とサクがにっこりして言った。
司は、サクの言葉に導かれるようにして「おぅ。勝負だ、松本朔太郎!」と初めて笑顔を見せて言った。
サクと司はお互いの拳をガツンとぶつけた。
そして、
「ごめんな。」
と司は先程蹴り飛ばした園児に謝った。笑顔を見せる園児。その奥で亜紀も司に笑顔を向けていた。

3回戦は徒競走だった。
サクと司はスタートラインに着いた。
類が笛を吹いた。

――――正々堂々、一生懸命楽しんで走る……

サクと司は全力で駆け出した。園児達の応援の声が聞こえた。
司は途中で転んだが、諦めずに最後まで走りぬいた。
順位は1位:サク2位:司となった。
「よく頑張った!司!」
とサクは司を優しく抱いた。
「おい、サク!……お前のおかげで何が大切か良くわかった……あり…が…とな…。」
司は照れながらサクに言った。
司はサクや亜紀の声で大切な何かを受け取ったようだ。
こうして職場体験学習は幕を閉じた。

END



おまけ


職場体験学習から数日後。

亜紀の家では…
仕事から帰った廣瀬真は新聞を手に取り、地方のページを開いた。廣瀬綾子が持ってきたお茶を一口飲んだ。そのとき、
「ブッ!」
とお茶を吹出した。
「どうしたの?」
と綾子は真に駆け寄って尋ねた。
「これこれ。」
と新聞のある記事を指差した。
そこにはサクと亜紀の笑顔の写真が写っていた。内容は、「天才か!?F4に教育した高校生」と書かれていた。
そこに亜紀がやって来た。
「…………。」
「亜紀ちゃん、がんばったのね。」
「…えっ?何が?」
「えらいえらい。あなた、ね?」
「……まあ、な…。」
「え?何?」
「うふふ……。」
「フッ。」
「あのー、……何かあったの……?…………もういいや。」
意味が分からず、亜紀は諦めて部屋に戻った。
少し家族の距離が縮まった瞬間だった。

サクの家では…
「あんたすごいすごい!サク!東大推薦で受かったりしちゃって♪」
「東大は無理だって。それにこれくらいじゃ無理だろ。」
「ほぉ。やるねぇ。」
「お兄ちゃんばっかりずるい!」
「……お爺ちゃんのところで今日は寝ようっと…。」
松本家から避難するサクだった。


――――――――――――――――――――

疲れた……。何か今回は思ったことをサクと亜紀に言わせちゃいましたね。あくまでも私の意見です。(笑)
...2006/03/21(Tue) 21:43 ID:ZLXSS/7w    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:SATO
ほとんど連日にわたる投稿お疲れ様です。
「F4」は人として大切なものを訴えかけるメッセージが感じ取れました。
(幼稚園児と遊ぶ亜紀が『赤い運命』の直子にカブりました。これは余談ですが)

「喪失からの再生」は次はどうなるのか、毎回待ち遠しいです。テレビでは緒形直人さんのモノローグだったのがこちらでは違和感なく山田孝之クンのモノローグとして想像できますよ。
小林明希の家は廣瀬亜紀の家の近所なのですね。朔太郎が明希をエスコートする度に亜紀を思い出してしまうのでは・・・と思うと辛いですね。余談ですが、朔太郎が明希をエスコート中に廣瀬真とバッタリ会ったらお互いどんな反応をするでしょうか。(朔太郎は慌てふためくでしょうが、明希の前で『挨拶しなさい』のお説教は『武士の情け』で勘弁してあげて欲しいような気がしますが・・・)
...2006/03/21(Tue) 23:25 ID:biQ66I3U    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:にわかマニア
 SATOさん

>明希をエスコート中に真とバッタリ会ったら・・・朔太郎は慌てふためくでしょうが、明希の前で『挨拶しなさい』のお説教は・・・

 ドラマ本編の最終回から類推するに,まずは「まだ生きていたのか」に始まって,隣に連れがいるのを見て「もう娘のことは忘れたか」と畳みかけ,ますます慌ててフリーズするサクに「相手の女性に失礼だぞ」でトドメを刺すなんて展開になりかねないですね。
 でも,それだとサクの立場がなくなるので,栄光の架橋さんがどんな「助け舟」を用意していらっしゃるのか,楽しみに待つことにしましょう。


 栄光の架橋さん
 連日の力作お疲れ様です。
 遅くなりましたが,卒業・進学おめでとうございます。
...2006/03/22(Wed) 00:31 ID:AC61QrOs    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋

SATOさん
最近日本では人を傷つける事件が多発していますので私の意見を書いてみようと思いました。
私は赤い運命は見てなかったので直子の性格がよく分かりませんが、偶然かぶったんですね。(笑)
「喪失からの再生」は自信ありませんが頑張ります。
明希の家を亜紀の家の近くにした理由は…恥ずかしいですけど適当です。(-_-;)何か物語の役に立てばいいのですが……。
モノローグに違和感がなくてよかったです。


にわかマニアさん
そういう展開は今のところ頭にないです……。でも、がんばって取り入れてみようと思います。

卒業と進学のお祝いの言葉、ありがとうございます。
...2006/03/22(Wed) 10:27 ID:QEmz/kyU    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋

世界の中心で、愛をさけぶ〜喪失からの再生〜
第5話「」


朔太郎と明希は1988年版「ロミオとジュリエット」のアイデアをともに考えていた。その場所は何故か朔太郎の家だった。(朔太郎の部屋)最初明希が「小林明希です。」と言ったとき、朔太郎の家族は皆驚いた。朔太郎の表情も重く見えた。明希も驚いたが、気にしないことにした。
ちなみに朔太郎は龍之介と顕良の計らいで2年連続で演出になってしまった。
「スケちゃんにボウズ、智世のやつ…手伝うって言ったくせに……」
朔太郎はぶつぶつと3人の文句を言っていた。
明希は朔太郎の部屋を見回した。上のほうにアイドルのレコードがたくさん置いてあった。
「松本君ってアイドルのレコードたくさん持ってるんだね。アイドル追いかけたりとかしてる?」
「………と、とにかくさ、早く決めよう。」
と明希の言葉を聞いて朔太郎は顔を赤くして言った。
しばらく頭をかかえる朔太郎。そんなとき、明希は床に一枚の葉書を見つけた。
そこには、「思わず涙の切ない話」と書かれていた。その後にはたくさんのネタが書いてあった。ところどころ線で消されていた。
明希はネタを黙読していった。そして、
「松本君!これ使ったら?」
とその葉書を朔太郎に差し出した。
その葉書を見た朔太郎は固まった。朔太郎の頭にミュージックウェーブというラジオ番組に投稿した葉書のある文が浮かんできた。

実は彼女は白血病になってしまったのです。

――僕があんなことを書いたから君は白血病になってしまったんだろうか…亜紀……

「…君、……松本君!」
という明希の呼びかけで朔太郎は我にかえった。
「……なに?」
「どう?それ、なんか役に立たないかな?」
「え、ああ。使ってみるよ…。」
と朔太郎は作り笑いをして葉書をピラピラ揺らして言った。
そこに、
「朔太郎!小林さん!ご飯できたよ!」
と朔太郎の母・富子の元気な声が聞こえてきた。
「今行く!」
と朔太郎は返事をし、立ち上がり、歩き出した。明希もその後に続いた。

今日の松本家の夕飯は亜紀を誘った時と同じく、鍋だった。
潤一郎は食事中だというのにテレビをつけ、お笑いの番組を楽しそうに見ていた。食事中、朔太郎はテレビをぼんやりとした表情で見ていた。そんな兄を心配そうに見る朔太郎の妹・芙美子。
「小林さんは……朔太郎とは…そういうお付き合いで…。」
「いいえ、違います……文化祭の劇の手伝いで…。」
「あ、そうよねえ、ごめんなさい、変なこと言って…。」
「あ、でも、松本君にはこの町と学校を案内してもらったり、コロッケパン取ってきてもらったりしてもらって……彼はいい人ですね。」
と明希が言うと、富子の目に涙が浮かんできた。
「あの……」
と明希は心配した。
「いいのいいの。何か、うれしくなっちゃてねぇ…。」
と目をこすりながら言った。明希は泣いた理由を聞こうと思いたが、
「あっ!」
と朔太郎が突然大声を出した。驚く一同。
「どうしたの、お兄ちゃん?」
「文化祭のアイデア、思いついた!!」
と言って朔太郎はテレビのほうを見た。釣られてそちらを見る一同。そこには1組のお笑いコンビが漫才をしているのが映った。
蚊帳の外の鍋。
朔太郎のアイデアとは………
「お笑いコンビのロミオ&ジュリエットがお笑いコンテストに出場して漫才をするっていうやつさ。」
と朔太郎はアイデアを説明した。朔太郎の笑顔に思わずほっとする朔太郎の家族たち。明希も朔太郎の笑顔を見て幸せそうだった。
しばらく松本家+明希の楽しい会話が続いた。


―――続く
...2006/03/22(Wed) 11:25 ID:QEmz/kyU    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋
サブタイトルを入れるのを忘れました。
タイトルは「初めての訪問」です。
失礼しました。
...2006/03/22(Wed) 11:27 ID:QEmz/kyU    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:双子のパパさん
  栄光の架橋様 おつかれさまです。

 お邪魔させていただいたら、たくさんの作品が更新されており、まとめて拝読させていただきました。
 「喪失からの再生」毎日更新されるとのことで、1ファンとしてとてもうれしいです。亜紀と明希…朔の心の中の変化はあるのでしょうか?とても楽しみにいたしております。
...2006/03/22(Wed) 17:00 ID:23/3DYP.    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋
双子のパパさん
毎日と書いてしまいましたが、土・日曜日は更新できないこともあるかもしれません。更新できる可能性もあります。
あとは大きな予定があるときに更新できなることがあります。それ以外は更新したいと思います。
20話程度の短い話ですがよろしくお願いします。

25日あたりは横浜に行くので更新できないと思います。ご了承ください。
...2006/03/22(Wed) 17:54 ID:w5/bRI8M    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋

世界の中心で、愛をさけぶ〜喪失からの再生〜
第6話「喧嘩」


夕食を終えた後、朔太郎は文化祭の劇のアイデアを忘れないうちにストーリーを作ろうとずっとノートとにらめっこをしていた。
「…………。」
アイデアはあるが、話をどのように展開するかで行き詰っていた。朔太郎は指で鉛筆をくるくる回していた。ノートには字の後がたくさん残っていた。
そこに明希がお茶を持ってやって来た。
「まだ考えてるの?」
と明希は机にお茶を置きながら言った。
「小林こそもう9時だよ。家族は心配しないの?」
と朔太郎も明希に聞いた。
「あっ……もうそんな時間だったんだ……さすがに親も心配するね。」
と明希は言った。今気付いたようだ。そして、明希はふすまの方に移動した。
「何してるの?小林……」
「え?あ、ふとん。…ふとん敷いてから帰ろうと思って。」
どうやら明希は朔太郎のためにふとんを敷こうとしているらしい。
「ありがと、小林。」
と朔太郎は、楽しそうにふとんを敷く明希に穏やかな笑顔で言った。そういわれた明希もうれしそうだった。



――ふとんを楽しそうに敷く小林の姿に、僕は亜紀の姿を感じた……

 回想:「たたまないの?」
    洗濯物を見て朔太郎に尋ねる亜紀。



朔太郎は亜紀の姿を振り切るように再び文化祭の劇作りに集中した。
「やっと敷き終わった―――――!」
と明希は伸びをした。ふすまの中がものすごく散らかっていてふとんを出すのに苦労したのだ。
明希は朔太郎のほうを見た。朔太郎は作品作りに集中していた。再びふすまの方を見ると、何か箱のようなものが見えた。何かに惹かれるようにその箱を取り出す明希。ふたを開けると、青いウォークマン、たくさんの写真、カセットテープが出てきた。
明希はまず写真を取り出した。何枚か見ると、一人の少女が笑顔で写っている写真が出てきた。誰なのか気になったので、朔太郎に尋ねることにした。
「松……」
「よっしゃ――――!!できた!」
明希が声をかけると同時に朔太郎が近所迷惑になりそうなほどの大声で叫んだ。そして、彼は後ろをむいた。そこには………
朔太郎は言葉が出なかった。そこにあったのはあの日ふすまの奥に閉じ込めた亜紀との思い出の品々。次々と脳裏をよぎる亜紀との楽しい思い出、つらい地獄のような日々……

――そのときの僕の頭の中は滅茶苦茶だった。

静まり返る部屋。
「松本君、どうしたの…?」
と明希が心配そうに聞く。しかし、
「………触るなよ………………。」
「え?」
「触るなって言ってるだろ!!勝手に触るなよ!他人のくせに!早く帰れ!!」
と朔太郎は明希の手から写真を奪うように取り上げ、叫んだ。
明希は今まで見たこともない朔太郎の様子に呆然としていた。
「帰れ!!!」
と朔太郎は明希を部屋の外に追い出した。

明希は朔太郎の家族に気付かれないように平然と「お邪魔しました。」と笑顔で言って朔太郎の家を離れた。家族も微笑んで明希を見送ってくれた。
外はバケツをひっくり返したような激しい雨が降っていた。朔太郎の家族に騒ぎが気付かれなかったのも、雨の音のせいだろう。
大雨の中、明希は傘も差さずにしょんぼりして帰った。

部屋で呆然とした様子で立っている朔太郎。

――だから、思わず小林に怒鳴ってしまったんだ……


翌日。
「小林――!」
谷田部が明希の名前を呼んだ。しかし、返事はなかった。
朔太郎は隣の席(明希の席)を見た。そこの席は空いていた。
「明希のやつ、どうしたんだろうな。」
と顕良が朔太郎に尋ねた。朔太郎は黙っていた。ただ、明希の席を切ない表情で見つめ続けていた。
昼休みも食欲が出ず、明希の席を見つめる朔太郎。


――そのときの気持ちは言葉にならなかった。ただ、小林のことが心配で仕方なかった。


朔太郎は午後の授業をさぼって田んぼ道を自転車で走っていた。
亜紀の家の前を通過した。
「あれ?今の…サク君?」
庭で花に水を与えていた亜紀の母・綾子は目の前を一瞬で駆け抜けた自転車に乗った少年を見て呟いた。
明希の家の前に立つ朔太郎。


――気がついたときには僕は小林の家の前に立っていた。


緊張しながらインターホンを押す朔太郎……

「明希ちゃん、クラスメートの松本朔太郎君っていう子がいらっしゃってるよー。」
と1階から母の声が聞こえてきた。松本朔太郎と聞いてビックリする明希。
「あ、うん。通して。」
とおどおどしながら答えた。
その数分後、朔太郎は明希の部屋に入ってきた。そして、差し出された座布団に正座した。
しばらく沈黙の時が流れた。
先に声を出したのは朔太郎だった。
「昨日は……ごめんな。ちょっといらいらしててさ。それに、風邪もひかせちゃったみたいだし……。」
と朔太郎は謝った。いつもの朔太郎に戻っていた。
「私のほうもごめんね。9時まで居座ってて…それに傘ささなかったから熱だしちゃっただけだよ。」
と明希も謝った。昨日の大雨の中傘もささずに帰ったため、熱を出したらしい。
「俺が怒っちゃったのはこの写真の女の子についてのことだから、小林は悪くないよ。」
と朔太郎はカバンから亜紀が写っている写真を差し出した。
「松本君。……この女の子……」
「廣瀬亜紀っていうんだよ。」
明希が質問し終わる前に朔太郎は答えた。
「へぇ、名前、私と同じなんだ。」
「小林は明るい希望で明希だろ?こっちの亜紀は白亜紀の亜紀なんだ。」
「どんな性格なの?」
「えーと……………………」


――僕は語り始めた。亜紀との幸せな日々を……


「去年の6月に学年主任をしていた先生が亡くなってさ、亜紀が葬式で弔辞を読んだんだ。それが彼女との出会いだったんだ。」

雨の中弔辞を1人で読む亜紀に傘を差し掛ける朔太郎。
「好きよ、サクちゃん。大好きだよ。」
亜紀に告白される朔太郎。

「よくつまらないことで喧嘩もしたよ。」

図書館で安浦にキスされる亜紀。
「何やってるんだよ、おい!」
安浦に怒鳴る朔太郎。
「心が狭いんだよ、俺は!」
嘘をついた亜紀に怒鳴る朔太郎。

「亜紀のおかげで俺はいろいろなことを学んだ。」

「ペダル…ペダルって軽いんだよ。…ひとりだと。……いなくなるってそういうことだよ……」
嗚咽をこらえながら訴える朔太郎。ただ「うん。」とやさしく答えてくれる亜紀。

最後の100メートル走で自己ベストを達成する亜紀。
すれ違いながら走り続ける人生の中で亜紀の顔を見れることに幸せを感じる朔太郎。

「この写真、夢島っていう島で遊んだときにとった写真なんだ。」

海水浴をしたり、一緒に料理したり、タイムポストをしたりする朔太郎と亜紀。

「夢島で俺たちは最高の時間を過ごしたんだ。」
と朔太郎はさっぱりした顔で言った。
「それで……今亜紀さんはどこでどうしているの?」
と明希は聞いた。その言葉に戸惑う朔太郎。
「ごめん。聞いちゃいけないことだった?」
「いや、大丈夫。今、彼女は遠いところで1人でいるんだ。」
と朔太郎は答えた。しかし、涙が彼の視界を埋め尽くした。そして、彼の頬に一筋の涙が……
「あ、すっきりしちゃってさ。じゃあ、お大事に!」
涙を慌ててぬぐって朔太郎は立ち上がった。
「うん、また…。」
明希は朔太郎に手を振った。朔太郎も手を振り返した。そして、ドアを開け、降りていった。
朔太郎の姿が見えなくなると、明希は手を振るのをやめた。
「もしかして……」
と1人呟く明希。その直後、後悔の念に襲われ、号泣した。亜紀の死を理解したのだ。

朔太郎の部屋。
帰宅した朔太郎はカバンから子ビンを取り出した。その中には白い粉のようなものが入っていた。亜紀の骨だ。朔太郎はそのビンを見つめていた。


――僕はこのまま君を閉じ込めてはいけないと思った。君を送ってやらなければいけないと思った。僕は君の運転手だから………亜紀―――


―――続く

―――――――――――――――――――――――――

今日か明日のどちらかで25日の分として、2話更新したいと思います。
...2006/03/23(Thu) 11:41 ID:gogZvO4c    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋

世界の中心で、愛をさけぶ〜喪失からの再生〜
第7話「友情」


翌日の放課後
校庭にはそれぞれの部活がまもなく開催される大会に勝つために気合を入れて練習していた。
その中に智世もいた。今までより一生懸命練習している姿が最近良く見られるようになった。まるで1年前の亜紀だった。
「おい、ブ〜ス!」
と龍之介が智世に声をかけた。彼の隣には顕良もいた。
「ブスブスうっさいわよ!龍之介!」
智世も2人に気付き、持ち前の大声で叫んだ。2人は智世の方に駆けてきた。
「お前さん、最近良く練習してるなぁ。どうかした?」
と龍之介にしては珍しく智世のことを心配した。
智世の頬はほんのり赤く染まった。しかし、恥ずかしかったのか、顔をそむけた。

一方、朔太郎は亜紀の骨をまくため、山道を登っていた。隣には明希がいた。
「まさか亜紀さんが亡くなっていたとは思ってなくて。松本君、本当にごめんね。」
と明希は深く深く頭を下げた。
「いいよいいよ。それにもう過ぎたことだし……。」
と朔太郎は笑顔で言った。けれども、その笑顔の奥に悲しみが潜んでいた。
2人は頂上にたどり着いた。そこは亜紀が好きと言った場所、紫陽花の丘だった。朔太郎はそこにまこうと思ったのである。
「紫陽花、減っちゃったね。」
と明希が言った。もう7月の中旬。紫陽花ももう咲く季節の終わりを迎えていた。

――不思議なことに、ピンクの紫陽花が一本もなかった。残った青い紫陽花も、やさしい青色でなく、真っ青だった。目の覚めるような鮮やかな青。何故だか、撒くのにふさわしい場所とは感じられなかった。だから、僕は撒くことができなかった――――

朔太郎と明希はしばらく紫陽花の丘で景色を見ていた。


「おい、智世。そのお守り、何だ?」
顕良が智世が首から下げているお守りを見つけ、智世に尋ねた。
龍之介と智世の視線もそのお守りに集まった。
「これは…………亜紀からもらったの。」
と智世はお守りを両手でやさしく持ち、懐かしそうに言った。

――――――――――――――――――――
時は昨年10月。
亜紀は智世・龍之介・顕良が病院を訪れた翌日、智世だけを再び病院に呼んだ。
「入るよ、亜紀。」
と智世は亜紀の病室のドアを開けた。
そこにいた亜紀は以前と比べると肌も白くなり、すっかり痩せていて、以前の面影が全く感じられなかった。その姿は何度見ても辛かった。
「どうしたの、亜紀。私だけ呼んじゃって…。」
と智世は棚の上に荷物を置き、イスに腰掛けた。
すると亜紀は、智世に毛糸でできた小さなお守りを渡した。
「ありがとう、亜紀。…これ…お守り?」
と智世が言うと、亜紀はにっこり笑って頷いた。
「智世への…お守り。私…もしかしたら…もう学校に行けないかもしれないから…がんばって…作ったんだ。来年の大会で…私の分も…がんばって…。」
と亜紀はゆっくり、ひとつひとつの言葉に思いをこめて言った。
その言葉に涙がじわじわ込み上げてきた智世は、
「馬鹿言わないでよ!がんばれば学校に来れるよ、きっと!」
と叫んだ。そして泣き崩れた。
そんな智世をやさしく包む亜紀。
「わらわは……、お主を…応援している……ぞよ……。…だから……がんばって……智世……。」
と亜紀は親友を応援した。亜紀の目からも涙があふれていた。
「あきぃ…!」
「ともよ…」
2人はお互いの胸の中で泣けるだけ泣き続けた。同時に、お互いの温もり、そして友情を感じ取っていた。いつまでも……いつまでも……

その数日後、亜紀は旅立っていった。
亜紀が天国に旅立っていく煙を眺める智世・顕良・龍之介・谷田部………
智世はこのとき誓った。

――亜紀、来年の大会はあなたの分まで頑張って走るよ。そして、あなたを絶対に全国大会に連れて行くから!!!!だから、安心して眠って、亜紀――――

誓いながら亜紀からもらったお守りを見つめた。

――――――――――――――――――――

智世は1年前の出来事をお守りを見つめながら龍之介と顕良に伝えた。
3人とも涙があふれていた。
「だから、私、亜紀の分まで頑張る。だから、今こうして練習してるの。」
と涙をぬぐって智世が言った。
「そうか、頑張れよ、ブス。」
「俺も仏様に祈っとくぜ……。」
と龍之介と顕良が言った。そして、2人は智世の邪魔にならないように帰っていった。

智世は空を見上げた。
そこには青々とした大空、雄大な雲、黄金に輝く太陽があった。
「よし!」
と智世は気合を入れて練習を再開した。


―――続く

――――――――――――――――――――

今回は女同士の友情を描きました。書いている本人が泣きました。…多くの人が感動の嵐に包まれますように…
…無理だと思いますけど(笑)
...2006/03/23(Thu) 14:30 ID:.rxI5NOs    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:SATO
智世の亜紀への想いが伝わってきて感動的でした。将来、智世が授かった娘に『亜紀』と名付けたのはここが出発点だったのかなーと思いました。そんな智世の気持ちを理解したスケとボウズも「イイヤツ」ですね。友情が感じられて良かったです。

余談ですが、私は智世ファンです。このような形で智世の出番を作っていただいて嬉しかったです。
...2006/03/24(Fri) 00:19 ID:Hc4DI3as    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋
SATOさん
実はこの亜紀と智世の友情を描こうと思ったときに、「長編にしてみようかな」と思い、世界の中心で、愛をさけぶ〜喪失からの再生〜を作りました。この作品の原点は7話にあったのです。

次の回も智世がメインになる予定です。(亜紀と智世の友情もメイン)あまり上手な作品は書けないと思いますが、よろしくお願いします。
...2006/03/24(Fri) 10:30 ID:XeK27CFQ    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:ポポ
いつも楽しみに読ませてもらっています。
サクちゃんが温かい友情で亜紀を失った悲しみから抜け出せてきているようで、とても安心しました。

あと、私も智世が大好きなんです!!!
明るくて、意地っ張りで、素直で・・友だちになって欲しいタイプの子ですよね。
亜紀の思いを受け継いで頑張る智世を応援しています。頑張ってくださいね!!!
...2006/03/24(Fri) 12:27 ID:x.WqLw/g    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋

世界の中心で、愛をさけぶ〜喪失からの再生〜
第8話「絆が呼んだ奇跡」


朔太郎達はたこ焼きパパさんで昼食を食べていた。
「いっせーのーせっ!」
龍之介の合図で朔太郎・顕良・智世・明希は期末テストの結果を一斉に見せた。
「おー!サク!お前また1位かよ!」
「あんた、中間テストも1位だったよね?」
顕良と智世のセリフより、朔太郎は2回連続一意を取っているらしい。
「松本君って意外と頭いいんだね。」
と明希は朔太郎に言った。
「まあね。でも、意外は余計だよ。」
「あ、ごめん。」
「小林だっていきなり20位なんてすごいじゃん!」
「がんばったんだ〜!」
朔太郎と明希の会話は今までと比べると弾んでいた。
「何かあの2人、恋人みたいだな。」
と顕良は羨ましそうに朔太郎と明希を見つめていた。
そこに龍之介が突っ込んできた。
「お前さ〜ん♪」
そして、龍之介は顕良の成績表を奪い取って智世の方に駆け寄った。
「バッカヤロウ!それは……!」
「うわ!ボウズ、あんた下に10人しかいないじゃない!」
「それで青山学院大学行きたいのかよ!」
「うっせーな!お前はどうなんだよ!お前は!」
「あっ!まて!ボウズ!」
「………アッハッハッハ!お前ビリじゃん!」
「うるせー!お前と百歩五十歩だろ!」
「龍之介、五十歩百歩だって…………」
ある意味こちらの会話も弾んでいた。

放課後
智世は亜紀との約束を果たす為に部のなかで誰よりも必死に練習していた。亜紀からもらったお守りは肌身離さず持っていた。
いつの間にか他の人々の姿は消え、智世だけがグラウンドに残って練習していた。1年前の亜紀のように…。
智世は女子800メートルに出場することになっている。
「よっ!お前さん!」
と龍之介がやって来た。驚く智世。
「何?龍之介……」
「俺、明日見に行く。お前さんの走り。」
「え……だってあんた、そういうのには…」
「去年、嘘ついちまったからな。…今年は見たいんだよ!ちゃんと。」
「………………。」
2人の脳裏には1987年7月19日の出来事が浮かんできた。

――――――――――――――――――――
「せこい嘘ついてんじゃないわよ!」
と駅のホームを泣きながら走って電車の中にいる龍之介に叫んだ。
「帰れよ、ブス!」
龍之介も泣きながら叫んだ。
「何年一緒にいたと思ってんのよ!」
「ブスが泣いたら見れねーんだよ!」
「こんくらいで私のこと振り切れると思うなよ!」
「…俺のことなんか……追いかけんなよ……」
過ぎ去った電車の中で泣く龍之介。
――――――――――――――――――――

「ま、今度はマジだから。…あばよ。」
と龍之介は帰っていった。
智世もしばらく龍之介の背中を見つめていた。そして、練習を再開した。


大会の日
体をほぐす智世。首から下げているお守りを見た。

――亜紀。今日11時から予選なんだ。亜紀と同じ時間だね。亜紀の分も頑張って走るから―――

と再び亜紀に誓った。
「おーい!」
と顕良の声がした。声のしたほうを向くと顕良以外にも朔太郎・明希……………そして、龍之介がいた。
「なっ。来ただろ。」
と龍之介が言った。智世の顔も笑顔であふれた。
「調子、どう?」
と明希が智世に尋ねた。
「もう完璧!予選通過できそう!」
と智世は興奮して答えた。
「なぁ、そのお守り、何だ?」
と朔太郎が智世に聞いた。智世の顔は少し曇った。しかし、
「亜紀……から。」
と意を決して言った。そして、前に龍之介と顕良に話した話をした。
「そっか。亜紀が……」
と朔太郎は少し残念そうに言った。


――智世には贈り物があったが、僕にはなかった…。やはり僕は君にとって単なる通過点だったのだろうか……


数分後
『女子800メートルに出場する選手は選手集合所に集合してください。』
というアナウンスが鳴り響いた。
「じゃ、行ってくる!」
と智世は元気に飛び出していった。

智世は800メートル走の最後の組だった。前の組が次々とスタートしていった。智世の緊張が高まってきた。

――緊張してきた…どうしよう……亜紀…

と思っていたその時……

――大丈夫だよ、智世!

どこからか女性の声が聞こえた。その声は亜紀の声にそっくりだった。
「亜紀!?」
思わず振り返る智世。当然、どこにも亜紀はいなかった。空耳だ、と智世は思った。でも、緊張はひいていた。
そして、智世の番が来た。
「位置について……よーい!」
選手達は位置に着き、限界まで集中力を高めた。

パ―――ン……

音が響き、選手達は一斉にスタートした。そのとたん、会場中が応援の声で満たされた。
「いいぞ!智世!」
「マジで行けるんじゃない?これ!!」
「がんばれ、智世!」
「がんばれ!お前さ〜ん!!」
顕良・朔太郎・明希・龍之介が出せる限りの声を出してトップを走る智世を応援した。
智世自身も勝てそうだと感じていたので余計に調子が出てきた。
そして、レースも終盤に入った。
「あっ!」
智世は残り100メートルのところで転倒してしまった。2位だった選手が前に出た。しかも、智世は転んだときに膝をすりむいてしまった。ジンジンと痛みが走っていた。

――ごめん…亜紀…私、もう…

智世が諦めかけたその時…

――智世!智世!!

また亜紀の声が聞こえた。顔をあげるとゴール地点で亜紀が手を広げて立っていた。

――智世、まだ間に合うよ!走って!私のところまで来て!!―――智世!!!!

亜紀は必死に訴えた。智世は立ち上がり、無我夢中で亜紀の元へと走り出した。亜紀は笑顔で智世が来るのを待っていた。
「亜紀、あき―――――――!!」
そして智世は亜紀の胸に飛び込んだ。
数分後、アナウンスが流れた。

『ただいまの結果…第1位…0.3秒の差で、第…4レーン、宮浦高等学校…上田智世!』

そのアナウンスに智世は嬉しさのあまり飛び上がった。
「亜紀、亜紀!私、亜紀との約束、果たしたよ!」
と智世は叫んだ。そんな智世に、
「智世、よく頑張ったね。……ありがとう……」
亜紀は涙声で声をかけた。2人ともしばらく笑顔で見詰め合っていた。涙で頬が潤っていた。
そして、智世は感極まって泣き出し、亜紀の胸に飛び込んだ。そして、あのお守りをもらった日のように泣き続けた。亜紀は智世をやさしく抱いて笑顔で智世を見つめていた。亜紀の目から涙が再びこぼれた。

――ありがとう、智世……ありがとう、ありがとう…

しばらくして智世は顔を上げた。…もうそこに亜紀はいなかった。しかし、亜紀の温もりは智世の肌に残っていた。

――さっきのは夢ではない…亜紀が私を助けてくれたんだ…。ねぇ、亜紀。私達、ずっとずっと友達だよね。これからも親友でいようね……


と智世はお守りを見つめて心の中で呟いた。

「お〜い!智世!」
と朔太郎達が智世に駆け寄ってきた。
「お前さん。いい走りしてたぜ。感動した。」
と龍之介は智世に言った。智世の顔はリンゴのように真っ赤になった。
「あ、亜紀、亜紀が助けてくれたんだよ…」
と智世が言った。一瞬その場にいた皆がフリーズした。だが、
「まぁ、とにかくお祝いだ、お祝い!」
と顕良が言った。そして、朔太郎達は智世を胴上げした。数十分彼らは胴上げし続けた。

輝く太陽が、智世には亜紀が微笑んでいるように見えた。

こうして、大会は幕を下ろした。


―――続く


――――――――――――――――――――

今回は我ながら力作です。…多分
...2006/03/24(Fri) 12:36 ID:XeK27CFQ    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋
ポポさん
私が書き込んでいる最中での投稿ですね。
これからサクは浮いたり沈んだりする可能性が高いです……。でも、最終的には亜紀の死からの再生を果たしますのでご安心ください。これからも亜紀は登場するかも?
確かに、智世は太陽のような存在ですね。落ち込んだときには厳しくして励ましたりしそうですよね。友達がたくさんできるタイプでしょう。
智世は第8話でも頑張ってます。(笑)
...2006/03/24(Fri) 12:45 ID:XeK27CFQ    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:たー坊
お疲れ様です。
友情あふれるストーリーでした。
それは、今、生きる者と空にいる者と・・・感動的でした。
次回も期待しております。
...2006/03/26(Sun) 21:04 ID:7mCvsFBE    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:SATO
直近の「智世2部作」は亜紀との友情・思い入れがよく伝わってきました。所々にテレビ放送部分が回想で挿入されていたので、1年後の話なんだな、と改めて認識出来た次第です。
なんか、この内容を「スペシャル編」でテレビ放送してもらいたくなりましたよ。
...2006/03/26(Sun) 22:12 ID:KiIbrRV6    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋
たー坊さん
感動的だったという感想が入っていて嬉しいです。書いてよかったと思います。
たー坊さんもアナザーストーリー頑張ってください。毎回楽しみです。


SATOさん
回想場面を入れることで1年後の世界を実感させられたということでよかったです。
私もこの2つの話をテレビで見てみたいです。


このまえの作品はできがよかったので次の作品から、また下手くそな作品になってしまう可能性があります。

余談:今日は高校のオリエンテーションでした。…明日は高校でテスト……
帰りのバスはその高校の生徒でいっぱいでした。
ちなみに、女子高です。
...2006/03/27(Mon) 17:28 ID:tAs7KsR2    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋

世界の中心で、愛をさけぶ〜喪失からの再生〜
第9話「薄れゆく記憶」


猛暑の中、1台のバスが山道を走っていた。周囲は木々で囲まれていた。そのバスから歌声のような音がもれていた。
重い表情の運転手・乗客たち。後部座席のほうを見ると、朔太郎と龍之介が歌を歌っていた。それもバスからもれるほどの大声で。その周りで明希と智世が大声で彼らを注意していた。彼女達もそれはそれでうるさい。1人青山学院大学の赤本をイライラした表情で見つめる顕良。しだいに彼のボルテージは上昇していき……
「あ―――!うるせ――――!」
と赤本を床に叩きつけて怒鳴る顕良。赤本を叩きつけた音でバスの中はし――んと静まり返った。
「何だよ、ボウズ。いきなり。」
「ボウズって言うな―――!うるさいんだよ、お前ら2人!」
「そうよ、そうよ!黙りなさいよ!」
「うっせーんだよ、ブ〜ス!」
「そっちこそ黙りなさいよ、リーゼント!」
「んが―――――!!黙れ黙れ黙れ!」
と言い争いはエスカレートしていき、乗客たちの表情はますます曇っていった。
「いい加減にしてよ!4人とも!他のお客さんに迷惑でしょ!」
と明希がありったけの声で叫んだ。再び沈黙する車内。
乗客達へと視線を移す4人。乗客たちは4人を睨んでいた。
「すいませんでした………。」
と謝って4人は速やかに着席した。ようやく乗客たちの表情も緩やかになった。
「小林、いつの間にかそこまで気、強くなったんだな。」
「おかげさまで。」
という朔太郎と明希の会話が小声で行われた。高校で朔太郎達がいろいろ馬鹿をやっているうちに明希が強くなってしまった。
静かになったバスはそのまま山道を登っていった。

――一学期が終わった。僕達はスケちゃんの提案で山にキャンプしに行くことになったのだ…

朔太郎達は青々とした木々が生い茂る、山の上のキャンプ場に到着した。
朔太郎達はかくれんぼをすることにした。…ある条件付で。それは、1番目に見つかった者は文化祭でロミオ役、2番目はジュリエット役をするという条件だ。これは朔太郎の提案だ。演出の朔太郎は鬼を務めることになった。

――僕はこのキャンプで亜紀のことを忘れようと思った。亜紀をボロボロにしてしまった後悔から逃げるかのように……

合図でキャンプ場中に散らばる4人。しばらくして朔太郎は10数え始めた。

「いーち、にー、さーん…………」

そして、10数えると、朔太郎は駆け出した。

顕良は大きな岩の陰に隠れた。その岩のすぐ隣に小さな川が流れていた。川と岩の間にはぎりぎり隠れられる程度のスペースしかなかった。
龍之介は木に登って葉っぱで身を隠した。ほぼ完璧にカモフラージュしていた。
明希と智世はロッジの裏に隠れた。これも見つかる確率は低い。

朔太郎は顕良が隠れている岩の近くにやって来た。
周囲を見回しても仲間達の姿は見られない。
「もうちょっとあっちか…?」
朔太郎はより奥へ進んでいった。
それを見た顕良はガッツポーズを作った。そして喜びのあまり後ろに寝転んだ。しかし、その裏には…

バッシャ―――ン……………

後ろには川があったので、顕良は大げさな音を立てて川に落ちた。後ろを振り返る朔太郎。
「あ、ボウズ見っけ。」
あっさり見つかってしまった顕良。これで2年連続ロミオ役決定。
「NO――――!!」
顕良の絶叫がキャンプ場にこだました。

「…ボウズの奴、捕まったね。」
「すごく声大きいよね、中川君って。」
ロッジの裏でひそひそと会話する智世と明希。少し離れた場所にも顕良の叫びは聞こえたらしい。
「あっ……松本君だ……」
と明希は呟いた。確かに、朔太郎が顕良を引っ張ってこちらに歩いてくるのが見えた。息を殺す明希と智世。

ガタッ!

明希が足を滑らせて物音を立ててしまった。すばやく反応する朔太郎。
(やばっ………)
2人がそう思ったとき、少年が飛び出してきた。
「なんだ。違うのか。」
と少年を見て朔太郎が言った。どうやら、少年が立てた音だと思ったのだろう。すぐにまた別の場所に移動した。
「あ〜、行った、行った。」
ほっとする明希と智世。密かに先程の少年に感謝した。

龍之介が登った木に寄りかかる朔太郎。そのうえで龍之介は焦っていた。

――ボウズしかいね―じゃん…見つかったら俺、またジュリエットかよ……

と龍之介は思った。
「あ――!何か災難ばっかりだな、俺!」
と顕良は龍之介が登った木を思いっきり蹴った。龍之介は、「ゆらすな!」と思った。何とか落ちずにすんだ。しかし、蹴った衝撃で彼の横に一匹のクモがすすーっと降りてきた。龍之介の顔は青ざめた。
「……ギャ――――――!!」
次の瞬間、龍之介は木から落ちてきた。
「何やってんだよ、お前!」
「危ねー、スケちゃん!」
落ちてくる龍之介を見て叫ぶ朔太郎と顕良。叫ぶと同時に龍之介を支えた。
「あ、危なかった…」
「さ、サンキューな、お前さん!」
運良く助かった龍之介は朔太郎と顕良に抱きついた。しばらく抱き合って喜ぶ3人。しかし、
「スケちゃん見っけ。」
とニンマリして朔太郎が言った。しまったと思う龍之介。でももう遅い。
これで、龍之介も2年連続でジュリエット役に決定した。
伝説のロミオとジュリエットが復活したのだった。

夕方
朔太郎達はカレーを作り始めた。
顕良は涙をボロボロ流しながらタマネギを切っていたどうやら目が痛くなりやすいタマネギだったらしい。彼にはニンジンや肉を切る作業もあった。
龍之介は水を汲んできた。その後筋肉痛になった。
料理は女の得意分野…ということで料理は明希と智世が担当した。
朔太郎はジャガイモの皮むきをしていた。亜紀が以前夢島でジャガイモの皮をむこうとしたときのことが朔太郎の脳裏に蘇った。

――――――――――――――――――――
夕食の準備をする朔太郎。その横で笑顔でジャガイモを取り出し、皮をむき始めた。しかし、むくというよりは切り落とすと言った方が正しかった。
「いいよ……」
「手伝うよ♪」
「…お願い!…やらないで……」
その後、海を眺める亜紀の目の前に生姜湯を差し出す朔太郎。
コップを受け取ると泣き始める亜紀。それを朔太郎に見られた。
「…苦手?」
心配そうに尋ねる朔太郎。
亜紀は首を横に振り、
「…大好き…!」
と笑顔で言った。その笑顔を見て朔太郎はやさしい笑顔を見せた。
――――――――――――――――――――

思わず「フッ」と笑う朔太郎。顕良が「どうした?」と聞いてきたが、朔太郎は答えなかった。その直後指を切る顕良。「何やってんのよ、あんた!」と智世が慌てて消毒した。その一部始終を笑顔で見つめる朔太郎。

――なぜだか、亜紀のことを思い出しても辛くならなかった。もう君の事を忘れかけているのだろうか、それともどうでもよくなってしまったのだろうか、僕にも分からなかった……

いつもと違った笑顔を見せる朔太郎を見つめる明希。

その後、朔太郎達は星空の下でみんなで作り上げたカレーを食べた。

楽しい一日が終わりを迎えようとしていた。


―――続く

――――――――――――――――――――
今回は少しコメディーが入っていると思います。
...2006/03/27(Mon) 19:17 ID:tAs7KsR2    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:朔五郎
栄光の架橋さん

物語が進むうちに、どんどんオリジナリティが出てきて、スタイルが出来ましたね。
続きを楽しみにしています(^^)
...2006/03/27(Mon) 21:32 ID:ZaF3A5rU    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋
朔五郎さん
最近物語を書くのに慣れてきました。けれども上手く書けないこともあると思います。でも、頑張って最後まで執筆したいと思います。
...2006/03/28(Tue) 16:15 ID:jxCGxMVw    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋

世界の中心で、愛をさけぶ〜喪失からの再生〜
第10話「明かされた過去」


朔太郎達は予約しておいたロッジの中で眠った。夜中中、顕良と龍之介のいびきが部屋中に響いていた。
カーテンから少し朝日がすり抜けてきた。
日の光を浴び、明希は一行のなかで一番早く目覚めた。明希は2段ベッドをはしごを伝っておりた。明希の下では朔太郎が寝ていたのだ。
明希はせっかくだから、ということで朔太郎の寝顔を撮ろうと思い、カバンからカメラを取り出した。焦点を朔太郎の顔にしぼった。パシャという音が響いたが、誰も起きなかった。昨日はしゃいだ疲れが溜まったのであろう。皆熟睡していた。
朔太郎の寝顔を撮った明希は上機嫌になり、もう一枚撮ろうと思った。それで、もう一度朔太郎のほうに顔を向けた。…その時、明希はあることに気付いた。朔太郎の頬に一筋の涙が伝っているのだ。
「まぁ、いいか。」と明希は気にせず、シャッターを切った。フラッシュの光で朔太郎は起きてしまった。
「わぁ!」
と明希は驚いた。それに対し、朔太郎は寝ぼけた顔で「どうしたの?」と頭をポリポリかきながら聞いた。
「いや、…なんでもないの…」
と明希はカメラを強引にカバンに押し込んで慌てて答えた。寝ぼけている朔太郎はそれに気付かなかった。しばらくして、朔太郎は頬を伝っている涙を慌ててぬぐった。
「………」
「………」
しばらく沈黙した。数分後、最初に口を開いたのは明希だった。
「松本君、散歩に行かない?」
「あ、うん…いいよ。」
そして、朔太郎と明希はそっとドアを開けて外に出て行った。


朔太郎と明希はしばらく歩いた後、見晴らしのよい丘に腰掛けた。登ってくる朝日が美しかった。
「ねえ、松本君…。」
「ん?」
「さっき、泣いてたよね。寝てたとき。」
「あ。あれは……」
朔太郎の戸惑い振りで、明希は、朔太郎が泣いていたのは亜紀が関係あるのだろうと知った。
「亜紀さん…廣瀬…亜紀さんが関係あるのね…」
と明希はやさしく、穏やかに言った。
「………まだ泣いてたのか、俺。」
「え?」
「俺さ、亜紀が死んでから毎朝毎朝起きたら泣いているんだ。多分、亜紀のいる夢から、亜紀のいない現実に戻ってくるときにまたぎ越さないといけない亀裂みたいなものがあって、涙を流さずには超えられないのかもしれないな。それに、起きてるときも亜紀を思い出すたびに泣いてたんだ、俺。でも、昨日はそうじゃなかったんだ。思い出すと自然と微笑んでさ。もう亜紀のこと忘れたかと思ったのに、まだ忘れられないんだな。」
「……ねえ。」
「?」
「一度しか聞かないから…教えて。…廣瀬亜紀さんと別れるまでの……こと…。」
「……わかった。」
明希に頼まれ、朔太郎は亜紀との日々を再び話し始めた。

――――――――――――――――――――
夢島で倒れた亜紀を背負って走る朔太郎。救急車から降りてきた亜紀の父・真に頬を思いっきり殴られて倒れる朔太郎。

病院に駆け込んで綾子と真に亜紀に合わせてほしいと頼む朔太郎。すると、真が冷静に言った。
「白血病なんだ…。君に何ができるんだ分かったら帰ってくれ。」
その口調は朔太郎を突き放すような言い方だった。朔太郎は目を大きく見開いて瞬きもせずに驚いていた。その瞬間、彼の心の中に絶望が一気に広がっただろう。

その夜、泣きながらハガキを書く朔太郎。その目からは涙がたれていた。

亜紀を元気付けようとロミオとジュリエットの稽古を張り切る朔太郎。
病室から亜紀の笑い声が届いた。
真に認めてもらい、教えられた部屋に駆けていく朔太郎。ノックしようとしたとき、彼の肩を誰かが叩いた。振り向くと、マスクをつけた亜紀がいた。抱き合う2人。
「もう一回呼んで…サクちゃんって。」
「サクちゃん…」
「もう一回…」
「サク…」
「もう一回…」
「サク…サクちゃん…」
2人は絆をしっかりと確かめ合った。

亜紀に引っ掛けられて本当の病名をばらしてしまう朔太郎。
その夜、病室で1人泣き続ける亜紀。
翌日、外泊許可が出た亜紀は学校に登校した。朔太郎の誘いで午後の授業をサボり、防波堤に来た2人。
「私…一回も好きって言われてない!」
と朔太郎に言う亜紀。その後笑顔で朔太郎に詰め寄った。

その日、亜紀は朔太郎の家で夕食を食べた。朔太郎の家族に病名を話す亜紀。だが、家族は素直にそれを受け止めてくれた。亜紀はそれを嬉しく思っていた。

数日後、同じ病気の真島が亡くなったことを知り、絶望する亜紀。海で自殺未遂。海に向かって歩いていくところを朔太郎に見つかった。
「何考えてるんだよ、亜紀!…落ち着け、何やってるんだよ!」
「今死んだって同じじゃない!!!……どうせ死ぬんだったら、何で辛い治療受けなきゃいけないの!?……みんな卒業して、社会に出て、結婚して…そういうの横目に見ながら暮らすんだよ…うらやましがって…ひがんで…『かわいそうね』って言われて…いいことなんか何もないのに、慰めにいいこと探して……私、そうやって暮らすんだよ、…一生だよ!…何で私だけそんな目にあわなきゃいけないの――!!!!………何で…私が何したって言うの!?」
「治るかもしれないだろ!」
「気休め言わないでよ!」
「何で悪いことばかり考えるんだよ!」
「サクちゃんだって思ってるくせに!私が死ぬと思ってるくせに!」
「…そうだよ、思ってるよ……思っちゃうよ!…だけど…、俺の知ってる…廣瀬亜紀は…鼻血出ても保健室行かないんだよ!…雨の日でも1人で弔辞読むんだよ!…白血病でも自己ベスト更新するんだよ!…誰よりも負けず嫌いで…上昇志向の塊みたいな父親と…強がりで優しい母親から生まれて…恐竜みたいにたくましく育てって言われて…だから、俺は廣瀬亜紀を信じる!…だから、絶対にうらぎんなよ!!!」
朔太郎は自分に言い聞かせながら言った。
「…………はい……、はい…。」
泣きながら答える亜紀。説得に成功した朔太郎は亜紀としっかり手をつないで海岸へ歩いていった。

修学旅行でオーストラリアに行く朔太郎。その直後、亜紀が再び面会謝絶になった。
朔太郎は岩の上…世界のへそで空の写真を撮った。

亜紀から別れを告げるテープを受け取る朔太郎。
嫌いなものランキングを作って亜紀に聞かせた。五つ以外は全部好きという内容だった。
「結婚して……」
プロポーズする朔太郎。
「俺を幸せにして……」
その後、2人はキスをした。

松本写真館でタキシード姿の朔太郎とウエディングドレス姿の亜紀が形だけの結婚写真を撮った。その後、龍之介達も加わって全員で写真を撮った。
空を久しぶりに見た亜紀は幸せそうだった。その日から朔太郎は空の写真を撮り続けた。

しかし、朔太郎と亜紀の幸せな日々は血のにじむような夕日の日に幕を閉じてしまった。

容態が急変する亜紀。日をおうごとに増える写真。日をおうごとに弱っていく亜紀。
綾子に許可をもらい、病室に入る朔太郎。そこにはニット帽をかぶった亜紀がいた。ベッドから落ちた亜紀の元に駆け寄った。
亜紀がニット帽を取った。亜紀は髪を剃っていた。
ビニールカーテン越しにキスをする朔太郎と亜紀。

亜紀のテープの中に「世界で一番青い空が見たい」というメッセージが入っていた。クリーンユニットが取り外される一週間でウルルに行く計画を立てた。
亜紀は友人や両親達にメッセージを残して朔太郎とともに空港へ向かった。
途中で1人で行くことを決心した亜紀は朔太郎をタクシーから突き落とし、やっとの思いで駅のホームにたどり着いた。
しかし、朔太郎に追いつかれ、結局一緒に行くことに…
空港で手続きをしている間に亜紀はイスから落ちてしまう。体中あざだらけだった。最後まで生きようとする亜紀は最後の力を振り絞って朔太郎とともに登場ゲートへ一歩一歩踏みしめながら歩いていった。……しかし、少し歩いたところで力尽きた。亜紀を抱き起こす朔太郎。
「亜紀、亜紀…」
朔太郎の必死の呼びかけで目を開ける亜紀。
「サクちゃん…やっぱり……あの世なんて…ない…天国…なんて…ない…」
弱弱しく呟く亜紀。
「もう、しゃべるなよ…」
「ここ……」
目を閉じる亜紀。
「ここ……天国だもん……」
と微笑みながら言った。その亜紀を強くきしめる朔太郎。
朔太郎を必死に見つめる亜紀。そして、
「好きよ………サクちゃん……」
と残った力をふりしぼって朔太郎に言った。防波堤で朔太郎に告白したときと同じ言葉だった。すべてはあそこから始まったのだ……
しばらく朔太郎を見つめて静かに目を閉じる亜紀。朔太郎はその瞬間、孤独を強く感じた。朔太郎は絶望した。

「たすけて…ください……たすけてください…たすけてください………」

朔太郎は亜紀を強く抱きしめたまま顔を真っ赤にして泣きながら呟いた。しかし、亜紀の目はもう開かなかった。

――――――――――――――――――――

明希は朔太郎の壮絶な日々を聞いて涙をこらえきれなくなっていた。
しばらくそのままでいた。


―――続く
...2006/03/28(Tue) 20:27 ID:3kK.isQs    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:一読者
お疲れ様です。
いや〜、シビアなテーマに挑戦されてますね。驚きましたし、感心することしきりです。
34歳の時の明希でさえ、言葉を失った朔と亜紀の別れに、17歳の彼女はどのような反応を示すのでしょうか?
朔が立ち直れるきっかけを、明希の元気なパワーが与えてくれるよう願ってます。続編、頑張って下さい。

あと、栄光の架橋さんが書かれるボウズが好きでツボにはまってます。
こういう要領悪くて憎めない奴、必ずクラスに一人いたよね(笑)昔の同級生に久々に会いたくなりました。
...2006/03/29(Wed) 20:43 ID:xP0H2J8I    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋
一読者さん
コメディーはしばらく休止します。とりあえず長編を完結させます。…まだ約10話程度ありますが。
元中3が考える話なので単純なストーリーになる可能性は大です。

私もこの前高校のオリエンテーションに行ったとき話せそうな人が見当たらなくて、中学校生活をあと一年でもいいから送りたいと思いました。ちゃんとやっていけるのか心配になってきました。中学の友人とはみんなバラバラになっちゃいましたので…
私の中2、中3の担任の先生が私の中学校から去ってしまうことになりました。それもショック……

私のクラスにもおもしろい人がたくさんいました。
...2006/03/30(Thu) 11:42 ID:qzCIFoms    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋

世界の中心で、愛をさけぶ〜喪失からの再生〜
第11話「心の傷」


山道を下るバスの中。龍之介と智世が妙にくっついて座っていた。まるで……
朔太郎と明希は楽しそうにおしゃべりをしていた。
顕良は1人でまた青山学院大学の赤本を見つめていた。
「あのー……」
と智世が朔太郎・明希・顕良に呼びかけた。一斉に振り向く3人。
「話したいことがあるんだけどー…」
しーんと静まり返るバス。それに戸惑いながらも、
「実は俺と智世……」
「今日の朝……付き合ったんだ…」
と龍之介と智世が言った。更に静まり返るバス。その後、2人は朔太郎達から質問攻めされた。
告白の経過はこうだった。

――――――――――――――――――――
それは朔太郎と明希が散歩に行ってから数分後のこと。
龍之介が起き、意を決したような表情で智世の肩をゆすった。
「何…龍之介……?」
目をこすりながら智世が言った。その智世に龍之介は「来いよ。」と目で合図してロッジから出た。疑問に思いながらも後を追う智世。
2人は顕良が落ちた川のそばのベンチに腰掛けた。
「………………」
「………どうしたの、龍之介…そんな顔して…」
龍之介の今までにないような表情を見て智世は心配そうに言った。すると、龍之介は咳払いをして、
「……俺は……お前のことが……す…好き…だ……。」
と小さな声で言った。思わず耳を疑う智世。確かに、彼は今「自分(智世)のことが好き」と言った。
「え、どうしたの急に……?」
「だから、お前のことが好きなんだって!」
「どうして!?」
「あのときさ、お前が大会で走ったとき…転んでもすぐ立ち上がって奇跡的なゴールをしたあれだよ。あれ見て…何か、胸が熱くなる感じがして…」
「…………」
「と、とにかく……俺と…付き合ってください…。」
と龍之介は深く頭を下げた。以前から龍之介に淡い恋心を持っていた智世は顔を赤くしたが、彼の告白を受け取った。
しばらく彼らはお互いを見詰め合って微笑んだ。鳥達が彼らを祝福するように鳴いていた。

――――――――――――――――――――
龍之介と智世が話し終えると乗客たち全員が2人に大拍手した。余計照れる2人。
「すっげーよ、すげーよ!!」
と顕良は拍手してはしゃいだ。しかし、彼の声は朔太郎達4人の耳にはいていなかった。4人は我を忘れて会話していた。そのため、顕良の言葉が入ってこなかったのだ。
顕良は孤独を感じてしまった。


――話しているサクたちを見ていると、何故か孤独感がこみ上げてきた。廣瀬が亡くなったと知った時と同じようなような孤独感だ…
廣瀬の奴…何で死んじまったんだろうな…


顕良は力なく席に座り、赤本を再び見つめた。

数日後。松本写真館
朔太郎達は集まって勉強会(?)を開いていた。しかし、顕良だけがそこにいなかった。
「ボウズの奴…どうしたんだろうな……」
「来いって電話したんだけどなぁ…」
「そういえば中川君さ、バス降りるとき、元気なかったね…」
「ああ、確かにそうだったかも…そんなことにも気付かなかった……幼なじみなのに…!」
と朔太郎は顕良の様子に気付かなかったことを悔やんでいた。それを心配そうに見つめる明希。
そんなとき、遠くから太鼓の音が聞こえた。
「今日は祭りだぞ、朔太郎!」
と朔太郎の父、潤一郎がカメラのレンズを丁寧に磨きながら言った。
「あー…そう。」
と朔太郎は素っ気無かった。しかし、
「……………あっ!いいこと思いついた♪」
とガーッと勢いよくイスを突き飛ばして朔太郎は立ち上がった。
「ボウズを…」
と朔太郎が言いかけたところで明希は、
「お祭りに誘おうって言いたいんでしょ?」
と笑顔で言った。以心伝心。明希だけでなく、龍之介達も分かっていたが。
「じゃ、さっそく行こう!」
と朔太郎は興奮気味に言って、写真館を飛び出していった。明希達も走っていった。
息子の張り切りぶりに笑顔の潤一郎。

一行は顕良の家の前に来ていた。
「中川君の家って本当にお寺なんだね。」
と明希が言った。彼女はまだ一回も顕良の家に来たことがなかった。顕良の家は木造だった。
朔太郎がインターホンを押した。
しばらくして、顕良の父親が家から出てきた。
「おー、みんなそろってどうした?」
と彼は朔太郎達を見て言った。
「おじさん、ちょっとボウズを借りてもいいかなぁ?」
と龍之介が聞いた。
「おう、いいよいいよ。なんか顕良のやつ、落ち込んでやがるから元気付けてくれ!」
と顕良父は豪快に笑って言った。そして、数分後、嫌がる顕良の腕を鷲づかみして出てきた。
「よっ!」
と朔太郎は顕良の顔をしっかり見て挨拶した。顕良は顔をそむけた。顕良の顔は曇っていた。

その後、朔太郎達は半ば強引に引っ張るようにして顕良を祭りが行われる神社に連れてきた。
もう日は沈み、祭りは始まっていた。宮浦中の人々が神社に集まっていた。クラスメート達の顔も時々見られた。(時々→sometimes)
朔太郎達は顕良を元気付けるように話し掛けた。
「俺、帰る……」
と顕良は呟いた。
「何言ってんだよ!1人でも……」
と朔太郎が言い返そうとすると、
「うるさい!!帰るって言ってるだろ!」
と朔太郎の手を振り解いて叫んだ。しばらく見詰め合う朔太郎達と顕良。そして、逃げるようにして顕良は走っていった。朔太郎達は呆然と立っていた。


――走り去るボウズのの姿が…亜紀の葬式から逃げる僕と全く同じように見えた。ボウズも…いや、ボウズだけでなく、智世もスケちゃんも、亜紀がいなくなってから今まで心の奥に僕と同じような喪失感を持っていたのかもしれない……辛いのは僕だけではないのだと思った…


神社の祠の前まで走ってきた顕良は座り込んだ。そしてしばらく俯いていた。彼に与えた孤独感は亜紀の死からも影響が来ているだろう。亜紀を失った喪失感…
そのとき、顕良の方に足音が近づいてきた。その足音は顕良の前で止まった。思わず顔を上げる顕良。そこには……

「廣瀬……?」

彼の目の前には1年前の元気な姿の亜紀が立っていた。


―――続く

――――――――――――――――――――

めちゃくちゃです。とにかくめちゃくちゃです。ごめんなさい…。
顕良達の前にも亜紀を登場させたいと思ったのです。
...2006/03/30(Thu) 13:08 ID:qzCIFoms    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:朔五郎
いいですねー。
こういう大胆な展開、個人的に大好きです。
たまーに、収拾させるのが難しくなったりしますけど(^^;;;チャレンジを続けてください。たのしみにしています(^^)
...2006/03/30(Thu) 20:32 ID:AJN8tULg    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋
朔五郎さん
私はめちゃくちゃな性格なので、見苦しい点もございますが、最後までよろしくお願いします。
今見直してみるとホンッとに大胆ですね。
...2006/03/30(Thu) 20:43 ID:NMOcEs/E    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:ぱん太
栄光の架橋さん

 こんばんは。
 精力的な執筆が続いていますねぇ〜。羨ましい限りです。これからも、楽しみにさせていただきますね。

 ではでは。
...2006/03/31(Fri) 00:14 ID:jHEi8MJE    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋
ぱん太さん
あんまり期待されても不安になってしまいますが、楽しみにしていてください。

――――――――――――――――――――
今日は中学校で離任式があります。久々に友人に会えます。…余談ですが、卒業生は3月31日までは卒業した学校の生徒であり、4月1日からは次の学校の生徒になるようです。だから私は今日まで中学生ということですね。明日から高校生!
……嬉しいような…寂しいような……

一つ連絡があります。明日から数日間母の実家(東京)に遊びに行きますので更新できません。パソコンがないからです…。兄のノートパソコンを持っていけばいいと思ったら、インターネットにつながってなかった…
――――――――――――――――――――
今日、ハプニング大賞です!(笑)
...2006/03/31(Fri) 09:00 ID:tgSFDb5M    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋

世界の中心で、愛をさけぶ〜喪失からの再生〜
第12話「深まる絆」


朔太郎達は人ごみの中を駆け回っていた。顕良の気持ちも理解せずに強引に祭りに誘ってしまったことを謝るために…イライラさせてしまったことを謝るために…

そのころ…
「廣瀬……?」
顕良は突然目の前に現れた亜紀の姿に驚きを隠せなかった。
「廣瀬がいるはずがない、これは夢だ」と思って顕良は自分の頬をつねった。夢なら痛くないはずだ。しかし、
「いっで――――!!」
これは夢ではなかった。強くつねりすぎたのか、頬に走る痛みに耐え切れず、暴れる顕良。…ホントに不運な男だ…(笑)
そんな顕良を見て亜紀はやさしく微笑んだ。そして、顕良の横に腰を下ろした。顕良は体中が熱くなるような感覚に襲われた。鼓動が早くなった。
「……なか…………ボウズ!」
亜紀がいきなり「中川君」ではなく「ボウズ」と呼んだことにビックリする顕良。それにもかかわらず、亜紀は続けた。
「お祭り、楽しいよ。行った方がいいんじゃないの?」
「………………廣瀬、悪いが俺、今頭の中、めちゃくちゃで……」
「いいから、いこ。」
と亜紀は拒否する顕良の手を引っ張って駆け出した。


亜紀と顕良は神社の中までのんびり歩いていき、露店が並ぶ道に来た。
「…………」
「♪」
しばらく2人は黙っていた。それでも亜紀は何気に楽しそうだった。
「廣瀬さぁ、死んだんじゃなかったのかよ…?」
と意を決して顕良は亜紀に聞いた。しかし、亜紀がいない。
「やっぱり、夢だよなぁ…」
と顕良が横を向くと、リンゴ飴の店の前に亜紀がいた。彼女はあの笑顔で手招きしていた。
顕良は訳がわからないままそっちに駆け寄った。
「何?」
「リンゴ飴、買って♪」
「……はぁ?何で!」
「買ってほしいんだけどなぁ。」
「…………………」
その数分後、亜紀の手にはリンゴ飴が握られていた。結局亜紀に口説かれて顕良はリンゴ飴を買ったのだ。
いつも尻に敷かれていた朔太郎の気持ちをちょっぴり理解できた気がした。顕良の表情も少し和らぎ、亜紀の方を見た。
…また亜紀がいない。
「あれれ?」
キョロキョロと周りを見回すと、亜紀は金魚すくいの店の前にいた。

今度は亜紀と顕良の両方とも金魚すくいをしていた。
亜紀は器用に金魚をすくっていた。紙もしばらく破けなかった。
顕良はその逆で、1,2匹すくったところで紙が破けた。

「廣瀬、お前すげーな…」
顕良は金魚が7,8匹程度入っている袋を見て言った。亜紀の顔は誇らしげだった。
「よっしゃぁ!廣瀬、今日は祭りが終わるまで付き合ってくれやぁ!」
と顕良はいつもの調子で叫んだ。もう何がどうだってかまわないと思った。
そんな顕良を見て、亜紀は安心したように微笑んだ。亜紀は今日だけでも付き合ってあげようと思った。
「うん。」
と顕良に満面の笑みで言った。
その後、2人は焼きそばを買って夕食を食べたり、花火を見たり、ゲームをしたりして祭りを楽しんだ。
もう顕良の心には喪失感も孤独感も、なかった。今までの顕良に戻っていた。
それを見て嬉しいような、寂しいような表情をする亜紀。でも、意を決して顕良を誘うようにして歩き出した。
数分後…
「あっ!ボウズ―――!!」
と遠くから顕良を呼ぶ声が聞こえた。朔太郎の声だった。振り向くと人ごみの中から朔太郎が走ってきた。亜紀は朔太郎の姿を切なそうに見つめた。朔太郎の後ろから龍之介・智世・明希も走ってきた。
「おぅ!みんな!」
顕良も4人の方へ駆け寄った。
「あれ、ボウズ…元気になってる。」
「心配かけてごめんな!」
などと会話した。朔太郎が顕良に近づいてきた。そして、
「ごめんな、ボウズ…」
と謝った。顕良は「いいって、いいって!」と笑顔で言った。
朔太郎を見て、顕良は後ろにいるはずの亜紀を呼ぼうと思って振り向いた。
…しかし、そこに亜紀の姿はなかった。辺りを見回してもいなかった。
顕良は、亜紀が自分を元気付ける為に来てくれたのだ、と思った。そして、目の前にいる親友達と心でつながっている、と実感した。思わず顕良は微笑んだ。
「何、気持ち悪い!笑っちゃって…」
「うっせーなぁ……ほら、祭り行くぜ!」
「おう!行っちゃおう!お前さん!」
「まだまだ楽しめるもんな!」
5人は再び祭りを楽しみ始めた。彼らは祭りが終わるぎりぎりの時間まで祭りを楽しんだ。


―――続く

――――――――――――――――――――
相変わらずめちゃくちゃです。
...2006/03/31(Fri) 09:50 ID:tgSFDb5M    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:朔五郎
めちゃくちゃじゃないですよ(マジ)

これは、あくまで持論ですけど、創作するときは、読者の方の期待に応えようとか、綺麗でまとまった文章を書こうとか、あまり考えないでいいと思います。
思うように書くうちに、度肝を抜いたり、ヒンシュクをかったりするようなものも出来てしまうでしょう。
だけど評価は読者の方に任せて、思い切った作品を見せていただきたいと思います(一読者として)

「リンゴ飴」というのが効いてますね。これが「チョコバナナ」とか「クレープ」では、この味は出ません。上手いなあと思いました。
...2006/04/01(Sat) 01:28 ID:9dyuxjxQ    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋
みなさんお久しぶり(?)です。
昨日、六本木ヒルズで桜めぐりのツアーに参加したり、展望台で東京の景色を見たりして楽しみました。
鯛焼きを買おうと思ったら一時間待ちだったので、買わずに帰りました。
ちなみに、伊東美咲さん達が帽子を追いかけるCMありますよね。あのCMは六本木ヒルズの屋上庭園で撮影されたようです。

…浅田美代子さん、さんまのスーパーからくりテレビのご長寿早押しクイズに出場されるようですね。(罰ゲーム)


朔五郎さん
分かりました。変な仕上がりになってしまっても、自分で作った作品に誇りを持ちます。目が覚めました。ありがとうございます。
お祭りといえばリンゴ飴と思って書きました。個人的な好みはチョコバナナです。クレープはそんなに…
...2006/04/03(Mon) 17:46 ID:a6c3CaVE    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋

世界の中心で、愛をさけぶ〜喪失からの再生〜
第13話「龍之介の熱意」


8月中旬に入り、夏はピークを迎えた。この日も炎天下な一日だった。
朔太郎のクラス、3年B組は文化祭の劇の練習をしていた。
谷田部の提案でまたロミオとジュリエットをすることになっており、かくれんぼのせいで、龍之介がジュリエット、顕良がロミオを演じることになった。
演出しているときの朔太郎は鬼同然だった。
厚さのせいでばてる顕良・龍之介・その他のクラスメート達に竹刀を持って接近し、バシバシと……

練習が滞ったことがしばしばあったが、何とかこの日の練習は終わった。

「おつかれさまー!」
「またね〜♪」
生徒達が次から次へと下校していく。
智世は友達を見送るとすぐに陸上部の部室へと向かった。あと数日で全国大会が開催され、その出場権を持つ智世は毎日のように練習していた。

智世は校庭でランニングしたり、スタートの練習をしたり、ストレッチをしたりしていた。
智世はため息をつき、その場に座り込んだ。
そこに、
「よっ!」
と最近付き合い始めた龍之介がコーラのビンを持って声をかけてきた。

2人は朔太郎がよく亜紀の走りを見ていた場所に腰をかけた。そして、コーラを飲んだ。
「さっき、ため息ついてたな。…何かあったのか?」
と龍之介は心配そうに聞いた。
「実は…最近調子悪くて。」
「え……」
「い、いや、病気とかそんなんじゃなくて…!」
「じゃあ、何?」
「タイムが伸びないのよ。これじゃ上位入賞できないよ。」
「何も上位入賞しなくても……」
「何いってんの!上位入賞しないと亜紀との約束が…」
「おい、亜紀ちゃんとの約束は一緒に全国大会に行くことだろ!」
「それで終わりなわけないでしょ!?」
「……………」
「亜紀と約束したんだし。勝つって。」
智世はそこまで話したところでもう一度コーラをぐいっと飲んだ。
2人の話し合いは次第に言い争いになっていった。
「何だよ、さっきから約束約束って!それじゃ亜紀ちゃんがまるで…」
「うるさいなぁ!!」
智世はコーラのビンをドンと音を立てて置いた。しんとなる校庭。
「……おい」
「…………もう、私のことはほっといて。…もう終わりかもね。私達。」
そう言った後、智世はすっと立ち上がり、その場を去っていった。龍之介はただ呆然としていた。

そして、全国大会の前日となった。智世は大会の会場の近くのホテルへ移動した。
朔太郎・顕良・龍之介はたこ焼きパパさんでたこ焼きを食べていた。
龍之介は元気がなく、いつものような食欲はなかった。
「あ〜あ、智世の奴やってけるかなぁ!……スケちゃんがいなくて!」
と顕良が言った。彼なりに龍之介を気遣っていた。朔太郎も心配そうに龍之介を見つめていた。
「………もう駄目かもしんないんだ。」
いきなり龍之介が呟いた。動きがフリーズする2人。
「えっ、何が!?」
「智世との付き合い。」
と言って龍之介はイラついたようにたこ焼きを一つ頬張った。
「何があったんだ?」
その後、龍之介は朔太郎と顕良に先日の出来事を話した。

「……情けねえだろ?俺。」
と龍之介は鼻でフッと笑って言った。表情はかなり切なかった。
「まあ、智世も馬鹿じゃねえよ。な、サク。」
「ああ。彼氏のお前が説得すれば分かってくれるさ。今度は亜紀のためじゃなく、自分自身のために走ればいいってことを。」
と朔太郎達は龍之介を励ました。
「ありがとな、お前さん。」
と龍之介は自信なさそうな表情で笑って言った。
彼は一年前彼女がいた。その彼女と言い争いになったことがあり、龍之介は彼女を説得した。しかし、失敗した。それが原因で連絡が取れなくなり、付き合いが解消されてしまったのだ。
龍之介は自分が再び説得することで智世と別れてしまうのではないかと恐れているのだ。
その後、朔太郎達はたこ焼きパーティーを開き、食べられるだけたこ焼きを胃に詰め込んだ。

その夜
龍之介は亜紀が朔太郎に告白した防波堤に腰掛け、智世が宿泊している方向をぼーっと見つめていた。
数分後、誰かが龍之介の方を叩いた。思わず振り向く龍之介。振り向くと、指が頬に刺さった。誰だろうと思って見上げると、亡くなったはずの亜紀が微笑んでいた。
龍之介は驚きを隠せなかった。
亜紀は、「久しぶり♪大木君」と言い、龍之介の横に腰掛けた。
「私、ここでサクちゃんに告白したんだ。…フフッ…好きなものランキングとか恥ずかしいことやっちゃった!」
と亜紀は朔太郎に告白したときのことを笑顔で、恥ずかしそうに教えた。
「へぇ………」
と龍之介は戸惑いながらも言った。少し微笑んでいた。
「私とサクちゃんもくだらないことでよく喧嘩したんだ。」

――――――――――――――――――――
職員室前。安浦が亜紀に「ごめん」と謝って教室に戻っていった。
「何で本当のこと言わないの……?」
「サクなら分かってくれる…」
「わからねえよ!」
と朔太郎は嘘をついた亜紀に怒鳴った。そして
「亜紀が何考えてるのかわからねえよ……」
と訴えるような口調で続けた。
「サク、聞いて…」
「心が狭いんだよ、俺は!!」
――――――――――――――――――――

「ああ、あったね。」
と龍之介はおかしそうに笑いながら言った。亜紀も微笑んだ。
「でもね、分かったんだ。」
亜紀は夜空を見上げてさっぱりとした表情で言った。
「友達やカップルは、喧嘩や挫折を繰り返して一歩一歩近づいていくんだぁって。」
「……………」
龍之介は亜紀の言葉の意味を吟味していた。
「大木君の前の彼女は大木君の優しさが分からなかったんじゃないのかな?大木君、普段ふざけてて不良っぽいけど、根は優しくて、いい人だと思うなぁ。智世なら大木君の優しさ、分かってくれると思うよ。」
「…………」
「頑張ってね……お前さん。」
と亜紀は立ち上がり、去っていった。
「亜紀ちゃん、ありがとな…」
龍之介が振り向いたとき、亜紀はもういなかった。それでも龍之介は深々と頭を下げた。そして、彼はある決心をした。

翌日
智世は会場で調子を最終チェックしていた。やはり、調子は良くない。おまけに、龍之介との付き合いも終わってしまいそうなので彼女の心は不安でいっぱいだった。
「なんであんなこと言ったんだろ〜、私…」
と智世は呟いた。その直後、智世の出場するレースが始まるというアナウンスが流れたので緊張もしてきた。

――どうしよう、勝たなきゃいけないのに、勝たないと…

と心の中で呟いたとき、
「智世―――――――――!!!」
龍之介の叫び声が聞こえた。思わず声のしたほうを向いた。龍之介が駆け寄ってきた。
「…………」
無言の智世。
「智世、聞いてくれ。俺は、お前自身のために走ってほしいと思ってる!…亜紀ちゃんのためでもあるけれど、走るのはお前なんだ!……だから……だから、今日はお前のために走るんだ!」
と龍之介はせっせと訴えた。その龍之介に心を打たれた智世は「はい……はい…」と返事した。お互いほっとした表情をした。

その後、智世はレースで見事に上位入賞を果たした。自分自身のために走った智世は大きな感動を得た。

2人の絆もより一層深まった。

―――続く
...2006/04/03(Mon) 19:41 ID:lL5LutxQ    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋

世界の中心で、愛をさけぶ〜喪失からの再生〜
第14話「最後の文化祭」


8月が終わり、9月に突入した。
新学期が始まってから早くも数日が経過した。
第一日曜日
この日の宮浦高校は大勢の人々でにぎわっていた。そう、この日は文化祭だった。休日ということで、より多くの人々が宮浦高校を訪れていた。

午前10時。各クラスの出し物が始まった。舞台裏で最終練習をする龍之介と顕良。
そして……

『次は3年B組……「ロミエット」です。』

アナウンスが体育館に響いた。不思議なタイトルにざわめく観客達。
それにもかかわらず、王子の格好をした顕良とドレスを着た龍之介が手を熱く握ってスキップしながら登場した。2人とも谷田部の許可を得て厚化粧をしていた。
それだけで観客は大爆笑した。
顕良と龍之介はものすごい屈辱感を味わったような気がした。しかし、演技に集中、集中……

「ロミオとぉ!!」
「ジュリエットでぇ!!」
『ロミエット、でぇ〜す♪』
2人が君が悪いくらいの声で叫んだ。それで再び会場に笑の渦ができた。

「1!たこ焼き少女!」
と顕良が野太い声で言った。それでささっと準備するセット係。パパさん役(?)の智世がセットのベンチに腰掛けた。渦巻状の模様がレンズに大きく書かれているおもちゃの眼鏡を掛け、付け髭をしていた。服装はアロハシャツに短パン。これらのグッズはすべて龍之介からレンタルしたものである。
ジュリエット(以下ジュ)「おっさ〜ん、たこ焼き一つくださいなぁ★」
パパさん「あいよ。」
効果音(生徒A)「ガブ」
ジュ「おいしゅうございますぅ〜!」
ロミオ(以下ロ)「見事であーる。」
ジュ「むっ?おっさ〜ん(恐い顔で)これ、たこ入ってないんだけどなぁ?」
パパさん「えー?どれどれ?…あらほんと。」
ジュ「むきーっ!ゆるさぁん!」
ロ「開戦!」
効A「カーン!」
効B「バキッ、バキキ………」
ナレーション(ナ)「ジュリエットはパパさんを殴りました。こうして、タコが入っていないことからジュリエットは非行に走りました。
…そして10年が経ちました。」
ジュ「もう、こんな荒れた人生、嫌だわぁ…」
ロ「じゃあ、もとに戻ろう、ジュリエット!」
ジュ「でも、もう仕事にも就けないかもぉ!」
ロ「どうしよっかな、どうしよっかな?」
効「コツコツコツ…」
ナ「足音が聞こえてきました。」
ロ「お、お主は!パパさんではないかぁ〜!」
パパさん「ジュリエット!俺のたこ焼屋、継いでくれ!…タコは、忘れるなよ。」
ジュ「…えっく、えっく…ありがとー!パパさ〜ん!」
ナ「こうして、ジュリエットはパパさんの後を継ぎ、タコの漏れがないたこ焼を生涯作り続けましたとさ。めでたしめでたし……」
効「チャララーン♪」

そして、セットを2分程度片付け…
ジュ「2!最後の一本!」
龍之介が乙女のような透き通った声を出した。それと同時に家のようなセットが運び込まれた。今度は全身真っ白な服装で、茶色の腹巻を巻いた智世が畳にねっころがった。頭には坊主頭のカツラをかぶっていた。そこに髪の毛が一本だけ生えていた。
智世がばけたおじさんをみつめるロミオ。
ジュ「ロミ君、どうしたのぉ?」
ロ「おぅ、ジュリちゃん。父上の髪がとうとうあと一本になってしまったのだよぉ!」
ジュ「そういえばずいぶん減ったわねぇ」
ロ「そうだろ……あっ、あっ……ハックショイィィィ!」
効「ピュ―。」
ナ「ロミオのくしゃみでロミオの父の最後の一本が抜け落ちてしまいました。」
父「ぎゃああああ!わしの髪がああああ!」
ナ「それ以降、ハゲ頭になったロミオの父は、元気をなくしてしまいました。」
ジュ「なんとかしないとまずいわぁ。ロミ君。」
ロ「わかってるんだけどなぁ。」
ナ「ふと、ロミオの目にマジックがうつりました。」
ロ「これだぁ!」
ナ「そして、ロミオはマジックを手に父の待つ部屋へと急ぎます。」
効「キュッキュッ…キュキュキュ………」
ナ「ロミオはマジックで父の頭を塗りつぶしました。…翌日」
父「ルンルンルン♪」
ジュ「あらぁ、ロミ君のお父様。髪がふさふさですね。」
父「だろう、だろう!今日起きたら頭がふさふさになってねぇ!ふんふん♪」
ジュ「ロミ君、大成功ね!」
ロ「おう!父上もご機嫌になった――!…ボケがあったからぁぁぁあ!」
ロ&ジュ「ロミエット、これにて終了デ―――ス!」
龍之介と顕良が手を握って深くお辞儀した。会場中から大拍手が発生した。
ステージの奥にいた朔太郎と明希も拍手を送った。そのとき――


――ありがとう、サクちゃん。おもしろかったよ!


誰かが朔太郎の肩を優しく叩き、朔太郎に声を掛けてきた。その声は亜紀の声だった。
「亜紀!?」
朔太郎は思わず大声を出して振り向いた。しかし、誰もいない。横に明希がいるだけだった。あとの生徒はセットの片付けをしていた。
「亜紀……さんの声がしたの?」
「………ああ。…でも、空耳だろう。」
と朔太郎は前を向いた。
そして、午前の部が終わった。


朔太郎達は文化祭で特別に設置された屋台で昼食を買い、教室で食べていた。
朔太郎は天ぷらうどん2杯、顕良はカレー+チョコバナナ、龍之介は焼きそば+たこ焼、明希と智世は天ぷらそばを食べていた。飲み物は男がコーラ、女がお茶といった感じだった。
「いやいや、疲れたー!」
顕良がコーラを一口飲んで言った。龍之介も焼きそばを頬張りながらうんうんと頷いた。
「ありがとな、みんな。」
朔太郎は天ぷらうどんを両手に持って頭を下げて言った。一同、微笑む。
「ほんっと、私も疲れた、疲れた!」
と智世は顕良の背中を思いっきり叩いた。「おわっ!」と言って持っていたチョコバナナを手放す顕良。チョコバナナは見事にカレーの中に飛び込んだ。
「あ――っ!俺のチョコバナナ!……ええい、もう5本買ってくる!」
と顕良はダッシュで教室を出て行った。
「カレーバナナっていうのはおいしいのかな?」
と明希が朔太郎に聞いた。
「いや、まずいだろうな……」
朔太郎はカレーバナナを想像して気持ち悪そうな顔で言った。
穏やかな昼休みが過ぎていった。

午後
朔太郎達は各クラスの出している店を回った。
お化け屋敷で智世が飛び上がって顕良にぶつかり、顕良がまたチョコバナナを落したり、盲導犬にえびの天ぷらを揚げようとした朔太郎が手をかまれたり、輪投げで明希が空の牛乳ビンを当てたり、生物部のコーナーでゾウリムシを見て龍之介が飛び上がったり……など、朔太郎達は文化祭をとても楽しんだ。

そして、文化祭が幕を閉じた。


―――どうやら、僕はもう亜紀がいない喪失から卒業できたようだった。これからは毎朝起きると泣くということもないだろう、夢と現実の間の亀裂も二度と空くことがないだろう、…僕はそう思った。喪失という牙が再び僕に食いつこうとしているのに僕はまだ気が付かなかった……


茜色の太陽が西の地平線ににゆっくりと沈んでいった。


―――続く

――――――――――――――――――――

今回はコメディーのような回でした。この作品も次回から終盤に入っていきます。
...2006/04/04(Tue) 19:42 ID:DIGafah6    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:一読者
亜紀が、素晴らしいですね。
優しくて、元気で、明るくて。
我々が恋をした廣瀬亜紀が本当にそこにいる気がしました。
朔を始め、今後も仲間たちを温かく支えていってあげて欲しい、と願っています。

私はこういう執筆系は大の苦手で、皆さんの作品を読ませて頂くたびに凄いなぁ・・としか感想が出てこないのですが、最近とあることに気付きました。
生きている亜紀、天国にいる亜紀、ストーリーには直接出てこない亜紀・・・・
様々な素晴らしい物語が同時進行中ですが、このサイトにあるすべての作品の根底に廣瀬亜紀がいるんだな、と。

栄光の架橋さんを始めとする皆様の益々のご活躍を期待しております。
...2006/04/04(Tue) 22:45 ID:9PFKUWzc    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:栄光の架橋
一読者さん
廣瀬亜紀の死がなければ私のこの作品は生まれていません。だから、私の作品の根底にも廣瀬亜紀は存在していますね。
サクの存在も大きいけれど、亜紀の存在がより大きく見えますね。
...2006/04/05(Wed) 10:19 ID:B503RTLg    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:雑種犬
また改名です。栄光の架橋から雑種犬に変更しました。これからは雑種犬です。よろしくお願いします。


世界の中心で、愛をさけぶ〜喪失からの再生〜
第15話「写真撮影」


月曜日。(文化祭の振替休日)制服の朔太郎は猛スピードで自転車を漕ぎ、田んぼ道を走っていた。その表情はにやけていた。
そして、廣瀬家の前を急行列車のように一瞬で通り抜けた。
その約1,2分後、朔太郎は明希の家の前で急ブレーキを掛け、自転車から降りた。
そして、得意げな表情で明希の家のインターホンを押した。その直後「はーい」という明希の声が聞こえ、ドタドタと走る音が聞こえた。
明希はドアを開けた。まだ9月のはじめなのに明希は宮浦高校の冬服を着ていた。
その後、明希の家族や親戚がスーツ姿で出てきた。
1人、小さな男の子がいた。その子は明希の親戚の女性の足元に隠れながら朔太郎を見つめていた。
「あの…この子は…?」
と朔太郎はその男の子を見て言った。
「あ、一樹!私のお母さんのお姉さんの子どもで、つまり………」
「あ、そうなんだ。」
明希が答え終わる前に朔太郎はのんきな顔で言った。
「ちょっ…松本君、最後まで言わせてよぉ…」
と明希は苦笑いをして言った。
「じゃ、行きましょう。僕が松本写真館まで案内しますから。」
朔太郎は明希の家族+親戚一同に笑顔で言った。
その後、朔太郎を先頭として明希達は松本写真館へ歩いていった。
静かな田んぼ道に自転車のタイヤが回る音が小さく響いていた。周囲からはセミの声が聞こえていた。
「ねえ、明希ちゃん。松本写真館ってこのへんじゃ有名なの?」
と一樹の母が尋ねた。一樹の家族は朔太郎達と同じ県内に住んでいるのだが、宮浦とはかなり離れている。
一樹も運動会の振替休日なので、今日ここにきた。彼らは評判がいいと明希の母に言われてわざわざこの宮浦に来たのだ。
「ええ。そうです。彼…松本君はその写真館の店長の息子さんなんです。」
「へえ。明希ちゃんと彼、もしかして…?」
「…!いやいや!!違いますよぉ!……そんなんじゃないです!!!」
「明希お姉ちゃん、顔赤いよ。」
「えっ…あ、ああだからぁ…!うるさいよ、一樹!」
「ははっ。照れてるなぁ。」
と明希と親戚達の会話が朔太郎の裏で楽しそうに行われた。
昨日、つまり文化祭で朔太郎は明希に、親戚の写真を撮ってほしいと頼まれたのだ。当然、朔太郎は快く引き受けた。

十数分歩いたところで松本写真館に到着した。
「お、きたきた!サク!」
写真館には潤一郎・富子・顕良・龍之介・智世がいた。顕良(朔太郎風に言えばボウズ)たちは見物に来たんだな、朔太郎は思った。
朔太郎は自転車を駐車場のわきに止めた。今まで、自転車を引いて歩いていたのだ。

まず一樹の家族だけが写真を撮り、次に明希の家族も加わって写真を撮ることになった。
「はーい、鳩が出ますよ!……この私の光り輝く頭から!(高橋克実さん、ごめんなさい。)」
と潤一郎が、言った。それでおかしくて笑う一樹達。笑が少し落ち着いたところで潤一郎が写真を撮った。
次は明希達も加わった。今度は朔太郎が潤一郎の手伝いを受けて写真を撮ることにした。
いくら潤一郎が説明しても朔太郎の作業はどこか危なっかしい。レンズを落としそうになったりした。
一樹はそんな朔太郎に少し興味と親近感が沸いてきて、じーっと彼を見つめていた。
ようやく、写真を撮ることに成功した。
「松本さん、どうもありがとうございました。」
と一樹の両親が頭を下げた。潤一郎も「いえいえ。」と笑顔で深く頭を下げた。
「ねえ、最後に松本君たちも写真に写ろうよ。」
と明希が提案した。朔太郎は夏服、顕良・龍之介・智世は私服で写ることになった。
朔太郎がタイマーをセットした。そして走ってみんなの中に飛び込んだ。
そしてとびっきりの笑顔でみんな写真に収まった。
朔太郎は、ウエディングドレス姿の亜紀の写真が自分に優しく微笑みかけているような気がした。

数分後、一樹が朔太郎に駆け寄ってきた。
「これ…サク?」
と一樹は写真館内で見つけたアルバムを開いて言った。一樹がいきなり「サク」と呼んだことに朔太郎は驚いたが、
「そうだよ。」
とすぐに優しく答えた。一樹が指をさしたのは朔太郎が傷だらけになって自転車に乗っている写真だった。
「僕…頼みがあるんだ。」
「え?何?」
「僕、サクに自転車教えてほしくなっちゃったんだ。」
「………え!?」
一樹のいきなりの提案に朔太郎は面食らった。
一樹は自転車を教えてもらうことよりも、朔太郎と一緒にいたいと思っていた。だから、それを提案したのだ。彼は朔太郎の行動を見て彼を気に入ってしまった。
「やっぱり、ダメだよね。サク、ごめんね。」
と一樹は駄目だと思ってとぼとぼと歩いていったが、
「いいよ。教えてやるよ。」
と朔太郎は優しく引き受けた。
「ホント?」
「ああ、ホントさ。」
「やった―――!」
一樹は朔太郎の意外な答えに大声を出して喜んだ。


―――続く
...2006/04/05(Wed) 11:07 ID:B503RTLg    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:雑種犬

世界の中心で、愛をさけぶ〜喪失からの再生〜
第16話「自転車」


朔太郎達は昼食はおなじみ、たこ焼パパさんで食べることにした。
今日は朔太郎達以外にも一樹達も来ているのでたこ焼パパさんは混雑していた。
「熱いから気をつけろよ、一樹。できたばっかりだからな。」
「うん、ふーふーして食べるからだいじょうぶだよ、サク。」
「そっか。」
「おいしいね、サク!」
「おう、うまいだろう。このたこ焼もここじゃ有名なんだぜ。」
「そうなんだ!」
朔太郎と一樹はもうここまで仲良くなっていた。そんな2人を明希達は安心したように見ていた。
「あの人見知りで、学校でもなかなか友達ができなかったあの一樹があそこまで元気になってる…」
一樹の母が驚いたように言った。
「そうなんですか?」
朔太郎の母・富子が聞いた。
「ええ。学校でもいじめられて暗くなっていた子ですから、びっくりですよ。あんなに明るくなったのも、松本朔太郎君のおかげです。……ありがとうございます。ほっとしました。」
一樹の母が涙声で言い、富子・潤一郎に深く深く頭を下げた。2人も頭を下げた。
「あいつも、約一年前あることがあって暗くなってました。」
「え……?何かあったのですか?」
「実は、あの馬鹿、全身全霊で愛した彼女を白血病で亡くしたんです。」
「そうだったんですか……」
「でも、明希さんと一樹君に出会ってサクもずいぶん明るくなりました。こちらこそ、ありがとうございます。」
今度は富子が一樹の両親・明希の両親に頭を下げた。潤一郎も頭を下げた。
「あ、写真は出来上がり次第、送りますんで。ね、ね。」
数分後、潤一郎が言った。

昼食を終えた後、朔太郎と一樹は昔朔太郎が自転車の練習をした川原に来た。
自転車は写真館に保存してあったサク太郎の昔の自転車を使うことにした。
「じゃあ、俺が後ろ持っててやるよ。」
「うん。」
朔太郎は一樹が自転車にまたぐのを見計らって自転車の後ろを持った。
「よし、漕げ!」
朔太郎の合図で一樹は自転車を漕ぎ出した。しかし、朔太郎が後ろを持っていても、自転車はバランスを崩して倒れた。一樹も転んでしまった。
「いってぇ……」
一樹は思わず呟いた。膝をすりむいていた。
「一樹、まっすぐ前を向いて漕ぐんだ!」
「……うん…」
一樹は朔太郎の言うとおり、下を見ずに前を向いて自転車を漕ぎ出した。
始めは何度も転んでしまった。
しかし、何回も転んで練習したかいがあってふらつきながらもなんとか自転車を前に進めることができた。
「やった、サク!やったよ!」
一樹は飛び上がって朔太郎に言った。
「よくやったぞ、一樹!少し休憩しよう。」
その後、朔太郎と一樹は川原に腰掛けて休憩した。
朔太郎は智世からもらった消毒液で一樹の傷を消毒した。
あと、龍之介からの差し入れのサザエを顕良が以前くれた七輪で焼いて食べたりした。
サザエの味は印象に残った。

そして、練習が再開された。
今度は朔太郎はある程度自転車が勢いをつけたら手を離すことにした。それで転ばなければ成功である。
しかし、いつも手を話したところで一樹は転んでしまった。ひどいときには、まだ手を離さないうちに転んだりした。
何回練習しても一樹はすぐに転んでしまった。もう一樹の膝や肘は擦り傷ばかりだった。

ガシャン……

一樹はまた転んだ。いつの間にか日が傾きかけていて辺りが薄暗くなっていた。
「もう……できないよ――……サク!もう終わりでいいよ………」
一樹はとうとう泣き出した。
このままの方法ではいけないと朔太郎は思った。そして、自分がはじめて自力で自転車を漕げたときのことを思い出した。

――――――――――――――――――――
今と同じ場所で自転車の練習をする幼い朔太郎とその祖父・謙太郎。
何度も転んでしまう朔太郎。
そのとき、
「サク!」
謙太郎が朔太郎の前方で手を大きく広げていた。
朔太郎は謙太郎の方へ自転車を一生懸命漕いでいった。そして、見事に成功した。
「乗れた、乗れたぞサク―――!ははは!」
謙太郎は朔太郎を優しく抱き上げ、嬉しそうに叫んだ。
朔太郎の顔も晴れ晴れとしていた。
――――――――――――――――――――


――僕はおじいちゃんと練習したあのときのようにしてみよう、そう思った。


一樹は芝生の上で俯いて泣いていた。
「一樹!!!」
突然朔太郎が厳しい声で叫んだ。びくっとして真っ赤になった顔を上げる一樹。前方で朔太郎がしゃがんで手を広げていた。
「来い!ここまで来い!」
と朔太郎は厳しい表情で言った。
決心した一樹は再び自転車にまたがり、朔太郎のほうへと自転車を漕いでいった。
あのときと同じように、一樹は見事に朔太郎の元へ転ばずにたどり着いた。
「サク、僕、自転車乗れたよ!!」
一樹は嬉し涙を流して朔太郎に抱きついた。
朔太郎の目からは涙があふれていた。そして、一樹の言葉に何度も何度も頷き、
「よくやったーーー!一樹!ほんとによくやった、よくやったよ…お前………」
と涙声で言って一樹を力強く抱きしめた。茜色の夕日が朔太郎と一樹を優しく照らした。


そして、日が暮れて星が見え始めていた。朔太郎と一樹は芝生の上に寝て星を見ていた。
「きれいだろ、一樹……」
「うん!きれい!」
「………」
朔太郎は星に夢中になっている一樹をやさしく見守っていた。
そんなとき、
「あ、一樹いたよ、おばさん!」
明希の声が聞こえた。そして、足音が近づいてきた。
「あ、ママだ―――!」
一樹は飛び上がって走っていった。
朔太郎も立ち上がった。そして、「おう!」と明希に声を掛けた。
明希も微笑み返した。
一樹は道路に右左見ずに道路へ飛び出した。一樹の横から大型トラックが接近してきていた………
驚いて立ちすくむ一樹。
慌てて走り出す朔太郎達。しかし、朔太郎は置いてあった自転車につまづき、転んだ。慌てて顔を上げる朔太郎――――



―――続く
...2006/04/05(Wed) 11:56 ID:B503RTLg    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:雑種犬

世界の中心で、愛をさけぶ〜喪失からの再生〜
第17話「闇から希望へ」


小さな宮浦の町に救急車のサイレンが鳴り響いた。
朔太郎は先程転んだときに足を捻ってしまい、立ち上がることができなかった。でも、一樹が飛び出したところに救急車が止まっているのは認識できた。
そして、救急車は稲代総合病院のある方向へと走り出した。
「おい!!待て!!」
朔太郎は救急車に叫んだが、救急車は朔太郎との距離をどんどん広げていった。
「ちくしょうっ!」
朔太郎は足を引きずりながらも自分の自転車の元へ歩き、痛みをこらえながら自転車を漕ぎ出した。


稲代総合病院へ続く坂道を朔太郎は登っていた。しかし、突然激しい痛みが走り自転車ごと激しく転んだ。
動こうとしても動けなかった。
「くそおおおおお!動け!動け!!!」
朔太郎は自分の体に向かって叫んだ。
そして、根性で立ち上がり、自転車を置いたまま自力で走り出した。
数分後、ようやく病院にたどり着いた。今の朔太郎は心身ともに傷ついていた。
病院の入り口には顕良達がいた。
「あ、サク!大変だ……が………に…」
友人達の言葉も意識が薄れてゆく朔太郎には届かず、朔太郎はその場に倒れてしまった。


まぶしい朝日が朔太郎の目に入り込み、朔太郎はゆっくり目を開けた。視界には病院の天井と点滴スタンドがうつった。
顔を横に動かすと両親がいた。
「昨日…何か救急車が止まってたんだ。何でか知ってる………?」
と朔太郎は弱弱しく両親に尋ねた。
しばらくどうしようかというような表情で潤一郎と富子は顔を見合わせたが、富子が口を開いた。
「昨日…一樹君を庇おうとした明希ちゃんがね……代わりに事故に遭っちゃって…」
それを聞いて朔太郎は慌てて起き上がったが、潤一郎が「待て!」と抑えた。富子は続けた。
「それで…大型のトラックだし……おまけに打ち所が悪かったから、助かる可能性は低いって……お医者様が……」
それを聞いて朔太郎は愕然とした。一気に体の力が抜けた。
その後、朔太郎は夜までずっと力なくベッドで寝ていた。



「サク。卵焼きもって来たよ。これ食べて早く元気になりな!」
富子が朔太郎の病室にお弁当箱を持ってきた。カーテンをめくったその時…

カツ――――ン……

弁当箱が床に落ち、卵焼きが床に散らばった。ベッドにいるはずの朔太郎がいなかった。シーツや枕が投げられた跡が残っていた。

慌てていなくなった朔太郎を探す富子達。しかし、どこを探しても朔太郎はいない。


そのころ、朔太郎は亜紀が自殺しようとした海にいた。彼の顔には生気が感じられなかった。
そして、朔太郎はゆっくり、ゆっくり海に足を踏み入れていった。
海水が胸のところまできたが、それにもかかわらず、朔太郎は進んでいった。


――もう生きていくのが恐くなってしまった…大切な人を失ってしまうから……
僕は勘違いしていた。亜紀のいない喪失から卒業したのではなく、亜紀の死から逃げていた…
僕の心は今も昔も変わらず灰のままだったのだ……


いつの間にか朔太郎の姿は海の中に消えていた。
朔太郎の周りは真っ暗闇だった。朔太郎はもう自分は死んだのだ、と思った。
ゆっくり目を閉じようとしたとき――


――サクちゃん!死んじゃ駄目!


亜紀の声が聞こえた。目を開ける朔太郎。そこにはあの懐かしい亜紀の姿が遭った。
「亜紀!……会いたかった。…ほんとに会いたかった!」
「……………それでいいの?」
「いいに決まっているだろう……やっぱり、俺、亜紀がいないと生きていけないんだ。」
「……………」
「だから、これからは一緒に暮らそう………」
「……………」
「なぁ……亜紀…」
「……………………なにそれ……サクちゃん………そんな弱虫だったんだ………何で好きになったのかな、こんな男…………」
「なんだよ、亜紀………」
「何で逃げるの?現実から。」
「…どうしたんだよ、亜紀………」
「答えなさいよ!!!」
「……今死んだって同じって言ってたじゃないか!!!そうなんだろ!?亜紀!」
「………………」
「だったらさぁ……何で辛いこと経験するんだよ!?」
「………………」
「生きててもしょうがないだろ、なぁ、亜紀!!!」
「……人間はさ、試練があるからこそ心が成長して、輝く人生を送ることができるんだよ!!?私、病気で不幸せだったてサクちゃん、勝手に思い込んでるけど、私、世界で一番っていえるくらい幸せだった!!ものすごく幸せだった!!……サクちゃんと出会えて、一緒に過ごしたから……だからサクちゃんだって幸せになれるんだよ!どんなに辛いことがあっても人生を曲げないで頑張って…そういう人に幸せが来ないなんてこと、絶対無いんだよ!!だから、最後まで生きて!!!私、サクちゃんのこと、ずっと見てるから!」
「……………」
「のんきでも時には厳しいお父さんと、何でも優しく受け止めてくれる模範的なお母さん、元気で明るくて便りになる妹に囲まれて生きている松本朔太郎を、私は信じる!!……だから、誰よりも長生きして!!!サクちゃん!!」
「…………わかっ…た。……わかった。亜紀…俺、亜紀の分まで頑張って生きるよ……。」
「……それでこそサクちゃんだよ。」
「…ハハッ……亜紀も。」
「サクちゃん。……キスでも………キスでもしませんか?」
「……しよう。」
2人は約一年ぶりにキスをした。やっと再会できた喜びをかみしめながら……ずっとずっと…
そして、2人はお互いを見つめて微笑みあった。
「好きよ、サクちゃん。大好きだよ。」
「……俺も、好きだ。俺は、廣瀬亜紀が好きです。」
「ありがとう。サクちゃん。これからは私の変わりに誰かを乗せて走ってね。」
「………分かった。」
「………もう、サクちゃん、大丈夫だよね。」
「………ああ。」
「…………」
亜紀はしばらく間を置いて、朔太郎に手を差し出した。朔太郎も満面の笑顔で手をつないだ。
2人は強く強く手を握りながら、歩いていった。


気がつくと、朔太郎は砂浜で寝ていた。もう朝になっており、朔太郎は立ち上がった。すると、
「サク!サク!」
と冨子と潤一郎、芙美子が朔太郎に駆け寄ってきた。
「この馬鹿!どこに行ったかと思ったぞ!」
「お兄ちゃん……よかったぁ………」
「もう、勝手に抜け出したりすんじゃないよ!」
朔太郎は家族の言葉の一つ一つを大切に聞いていた。
「ごめん…………あと…ただいま……」
と朔太郎は照れながらも言った。朔太郎は天から注がれる朝日を見て、生きる希望が湧いてきた。


――今まで心の奥に渦巻いていた心の闇が消え去り、僕の心には希望の光がともった。
これからはどんなことがあっても乗り越えていけそうな気がした。
ありがとう、亜紀……ありがとう、僕を育ててくれた家族……ありがとう、僕の人生………


―――続く
...2006/04/05(Wed) 13:03 ID:B503RTLg    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:ぱん太
雑種犬さん

 改めまして、こんばんは。
 精力的な投稿が続いていますね。毎回、楽しみにしています。頑張ってくださいね。
 僕も頑張ります。

 ではでは。
...2006/04/05(Wed) 17:25 ID:SMTVvO7.    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:雑種犬

世界の中心で、愛をさけぶ〜喪失からの再生〜
第18話「朔太郎の祈り」


朔太郎が海に行き、無事に戻ってきた日から一週間が経過した。朔太郎は海から帰ったあと、一週間の入院生活を送った。捻った足のほうも以外にすぐ治るようだ。
朔太郎は順調に回復したが、トラックにはねられた明希は未だに危険な状態だった。手術は何とか成功したが、まだ安心できない状態だ。
朔太郎は毎日のように明希の病室をのぞいていた。しかし、明希は眠り続けていた。
そして、朔太郎は退院することに成功した。
朔太郎が病院から出ると、顕良・龍之介・智世が花束を持っていた。
「ほらよ、サク。」
顕良が代表して朔太郎に花束を贈呈した。
「サンキュー。」
朔太郎は嬉しそうに花束を受け取った。
「さって、行きますか。」
龍之介が、持ってきた朔太郎の自転車にまたがって言った。そして、後ろに乗るように促した。
「おっし!」
朔太郎は自転車の後ろに座った。今までは亜紀の指定席だった。
「しゅっぱーつ!」
と龍之介は全力で自転車を漕ぎ、坂道を下っていった。
「待ってよー!りゅーのすけー!」
「徒歩の俺達の身にもなろーや、おい!」
そのあとを智世と顕良も慌てて追いかけた。でも、下り坂なので上りよりは楽だった。

龍之介は宮浦高校に一番乗りで入り、自転車置き場に自転車を止めた。
「お疲れさん。お前さん。」
と朔太郎は龍之介にお礼を言った。
「あー疲れたなぁ。お前さん、1000円くれよ。自転車賃。」
「ずるいよ、スケちゃん!俺の自転車だろ!」
「運転したのは俺だよん♪」
「は!?何だよそれえ!」
と朔太郎と龍之介がいつもの調子で言い争いを開始した。
そこにへとへとになって顕良と智世がやって来た。
「あんた達、もう一時間目始まるよ!」
と智世が2人に腕時計を見せて言った。顕良も智世も肩で息をしていた。そうとう走ってきたのだろう。
「やっべ!谷田部に怒られるぞ、お前さん!」
「おわっ!課題出される!」
「急げ!!」
朔太郎達は猛ダッシュで昇降口に飛び込んだ。しかし、残り一分だったので、間に合わずに遅刻した。課題プリントが5枚出された。

放課後
朔太郎は放課後になるとすぐに病院へ直行した。明希の様子を見に行く為である。
自転車を漕いでいく朔太郎の姿は職員室にいた谷田部にも見えた。谷田部はまた亜紀が病気になった頃の朔太郎に戻ったのではと心配したが、部活の方へ向かった。

朔太郎は病院に着くとすぐ、大きな足音を立てて明希の病室に向かった。ドアをそーっと開けて中を見てみた。相変わらず……
明希の母がそばについていた。
富子に卵焼きを持たされた朔太郎は、「あのー……」と明希の母(以下:明希母)にそーっと声を掛けた。
「あ、朔太郎君。…入って。」
と明希母は不安な顔を隠して作り笑いを浮かべ、朔太郎に言った。
朔太郎は軽く頭を下げて中に入った。
「あの…明希さんは……大丈夫なんでしょうか…」
と朔太郎は差し出されたイスに腰掛けてから聞いた。
「まだね…」
と明希母は残念そうに言った。彼女はどう見ても疲れていそうだ。その様子が亜紀の母・綾子になんとなく似ていた。寝る暇も惜しんでいたのだろう。
「あの…おばさん……僕が代わりに見ていますから、休んでいて…ください。…あまり疲れるとおばさんの方も…」
と朔太郎は心配そうに言った。
「じゃあ、お願いね。」
と、明希母は言い、病室を去っていった。


宮浦高校
「ありがとうございましたー!!」
陸上部員が大声を出して谷田部に頭を下げた。
部員が解散した後、谷田部は朔太郎が亜紀を見ていたコンクリートに腰掛けた。朔太郎のことが心配になっていた。
そこに、
「先生。」
亜紀の声が聞こえた。谷田部がビックリして横を見た。そこには亜紀がいた。
「廣瀬……どうして?」
と谷田部が聞いた。目は大きく開いていた。
「ちょっと…みんな、私がいなくなってから、どこかおかしくなってたから……一人一人手助けしてたんです。」
と亜紀は答えた。
「………ふーん。」
「先生、サクなら大丈夫ですよ。」
「え……?」
「私、サクに言ったんです。サクのこと見てるって。だから最後まで生きろって。それに、分かるんです。もう大丈夫だって。…今、サクは小林明希さんに生きてほしいから…顔を見たいから行ってるだけです。昔とは違いますから、大丈夫です。」
「そっか。廣瀬、しぶといなぁ。死んでも出てきてる。」
「負けず嫌いでいじっぱりですから。…先生も私の理想の存在でした。これからも厳しく、時には優しい先生でいてください。」
「やさしく、時には厳しく…でしょう。まったくもう…」
「フフッ…そうですね。」
「あー。今日廣瀬に会えてよかった。」
「?」
「…何か、あんたがいなくなってから感じていたもやもやしたものが吹き飛んだって感じ。ありがと、廣瀬。」
「……よかった。これで…みんな大丈夫ですね。」
と亜紀は立ち去ろうとした。しかし、
「あと、サクちゃん…をよろしくお願いします!」
と亜紀は最後にいい、走っていった。いつのまにか、亜紀の姿は見えなくなっていた。
谷田部は大きく伸びをして職員室へと戻っていった。

病院
朔太郎は明希のそばを離れなかった。ただじっと明希を見つめていた。


――たすけてください。僕をここまで支えてきてくれた人を…。もう1人の"アキ"を…小林明希を……たすけてください。


と朔太郎は強く願い続けた。けれども、空港でのときとは違い、絶望の心はなかった。小さな可能性でも信じていたから……
すると…………
「サ……ク……」
と明希の声がかすかに聞こえた。…うわ言だった。それでも、朔太郎は確信した。もう大丈夫だ、と。
そして、朔太郎は彼女の手を強く握り締めた。そして、
「明希!!」
朔太郎は思わず、「小林」ではなく「明希」と叫んだ。


――――――――――――――――――――
明希の周囲は真っ暗闇。どこにどう進んで良いのか分からず、不安が心を覆い尽くしていた。
「サク……」
と呟いた。「松本君」ではなく「サク」と自然に出てきた。
そこに、一筋の光が見えた。そして、光が強くなっていく。そこに、
「明希!!」
というどこかで聞いたような男の声が響いた。朔太郎の声だ。
明希は朔太郎の声だと認識し、光のほうへ歩んでいった。
光が明希の視界を覆い尽くした。
――――――――――――――――――――

明希がゆっくりと目を開けた。視界にまず映ったのは、病院の天井。そして、その次に、朔太郎の姿が映った。
「アキ…………さん…?」
朔太郎は身を乗り出して明希の目が開いているのをよーく確認した。「アキ」と呼んでしまったので最後に「さん」をつけた。
表情とセリフが合っていないので思わずぷっと吹出す明希。
「…なに!?」
と朔太郎は思わずムキになった。
「いや……松本…君…らしいなぁ……って…思って…」
と明希は精一杯の笑顔を見せて言った。思わず顔が緩む朔太郎。口が笑っていた。
「とにかく、よかった―――!!!!」
と朔太郎は跳ね上がった。床にズシンという音が軽く響いた。
「じゃ、おばさんとこに行ってくる!」
と朔太郎はドアを勢いよく開けてバン!と閉めた。ドアが閉まっても朔太郎が走る足音が聞こえた。

電話という手段があるのに朔太郎は気付かず、自転車で明希母の待つ明希の家へ急いだ。

廣瀬家の前を通過しようとしたその時…
「おい。」
あのずっしりとした迫力のある静かな声が朔太郎の耳に入ってきた。ビクッとして急ブレーキを掛ける朔太郎。振り向くと……

「そんなに急いでどこに行く?」
亜紀の父・廣瀬真が立っていた。



―――続く
...2006/04/05(Wed) 19:17 ID:iE.Z16C2    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:雑種犬

ぱん太さん
こんばんは。もうあさってが入学式なので明日までには「世界の中心で、愛をさけぶ〜喪失からの再生〜」を完結させたいと思います。
ぱん太さんも早く元気になってくださいね。
...2006/04/05(Wed) 19:20 ID:iE.Z16C2    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:SATO
お久しぶりです。
展開がシビアになってきたので、息をひそめて読ませていただいておりました。とりあえずは一安心です(^^)
亡くなったはずの亜紀がクラスメートや恩師の前に現われるのは『いま、会いにゆきます』みたいで微笑ましかったです。(『世界の中心〜』に負けず劣らず『いま、会い〜』も大好きなもので♪)
入水自殺を図ったサクを励ます亜紀は何か、ドラマ7話の逆バージョンのようで、頼もしかったです。
廣瀬真がいよいよ登場ですね。完結編を楽しみにしています。

※回想場面のセリフが丁寧に再現されていますが、DVDを何度も見直されたんですか?私もDVDを持っておりますが、まともに見れるのは6話あたりまでで、その後はだんだん見るのが恐くなってしまいます・・・(苦笑)
...2006/04/05(Wed) 21:11 ID:3a24bAW.    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:雑種犬
SATOさん
お久しぶりです。
喪失してしまった朔太郎を亜紀がすくうシーンがほしいなぁと思ったら、7話のシーンが浮かんできまして、逆バージョンを作ってみようと思いました。
私もいま、会いにゆきますをほぼ毎週見ていました。…映画は見ていません……
最終話はかなりドラマ版に近くなってしまう可能性がありますが、よろしくお願いします。

回想場面は、映像を見るのはやはりつらいので、「朔太郎と亜紀の部屋」というホームページを参考にしました。
...2006/04/06(Thu) 10:05 ID:/qoD0oIc    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:雑種犬

世界の中心で、愛をさけぶ〜喪失からの再生〜
第19話「最高の食卓」


亜紀の父・真に突然声を掛けられてしまった朔太郎の動きは停止していた。真は朔太郎が今最も苦手な人物だからである。
「そんなに急いでどこに行く?」
と真は聞いた。
朔太郎はようやく我に帰り、自転車をその場に止めた。
「えっと…あの……えー…そのぉ…………」
と朔太郎は明希の事を言い出せず、うろたえた。
それを見て真はフッと鼻で笑い、
「…人に会ったら挨拶しなさい。」
と朔太郎をしかった。
「あ、すいません……。えーと…こ…こんにちは。」
と朔太郎は真の言葉を素直に受け入れ、挨拶した。それを見て吹出す真。
「………?」
「い、いや……まぁ、とにかく……少し、散歩するか?」
「……………」
「返事。」
「…あ、はいっっ!!」


朔太郎と真は宮浦をのんびり、時間をかけて散歩した。2人は今、宮浦高校が見える田んぼ道を歩いていた。周囲では鳥や虫の鳴き声が響いていた。
空は青く、綿飴をちぎったような雲がいくつも浮かんでおり、それぞれがゆっくりと動いていた。
真はそれらを聞き、見つめていた。
「こうしてみると、宮浦はいい町だなぁ。」
「……はい…」
「のんびりと時間が流れて。」
「…………そうですね。」
「俺は仕事仕事の毎日でこんなことにも気付かなかったよ。」
「…亜紀が…昔言ってました。何かを失うことは何かを得ることなんだと。」
「……………」
「僕も…亜紀がいなくなってから多くのことを失いました。でも、友達の存在や、生きていることの大切さが身にしみて分かったような気がして……今は生きているのがとても楽しいんです。」
「……そうか」
朔太郎の言葉を聞いて真は安心したように言った。

2人は防波堤に腰掛け、休憩した。夕日が美しく、やさしい海が茜色に染まっており、きらきらと輝いていた。それはまるで、生命を象徴しているようだった。
鳶が独特の鳴き声を発して宙を舞っていた。
波の音が心地よく、海から吹く風は歩いて疲れた体を癒してくれた。
2人はしばらく沈黙していた。
最初に口を開いたのは真だった。
「………もう忘れたか。亜紀のことは……」
と朔太郎に言った。いきなり話した真に驚く朔太郎。
「………どうなんでしょう。」
と間を少しおき、朔太郎は言い返した。
「失礼だぞ。相手の女性に。」
「えっ!」
朔太郎は顔を真っ赤にした。夕日のせいでより赤く見えた。
「聞いたぞ。綾子に。最近、引っ越してきた小林さんの娘さんとよく一緒にいるって。」
(見られてたんだ……………)
「……まだ亜紀のことは忘れられません。でも、いつかは忘れていくのでしょう。」
と言い、朔太郎はカバンから亜紀の骨が入った子ビンを取り出した。
それを見つめる真。
「忘れたいのでも忘れないのでもなく、人間は忘れていくんだよ、生きていく為に……」
と真が言った。
「……………」
「よく頑張ったなぁ…サク。約一年間、喪失と一生懸命戦っていたそうじゃないか。亜紀のことを愛してくれてありがとう…もう十分だ。」
「……………」
「本当にありがとう………」
と真は頭を深く深く下げた。
「……こちらこそ……」
と朔太郎も頭を下げた。そして、子ビンを見つめた。
「亜紀を……今度ちゃんと撒いてやらなきゃ……」
と朔太郎は立ち上がった。
「あ、サク…お前に……」
と真は立ち上がったサクに話し掛けたが、
「今日はありがとうございました!!!」
と言い、真の声をさえぎってしまった。そして、防波堤から降り、自転車に飛び乗り、走っていった。
「……ったく…あいつは……」
と真は呟き、防波堤に腰をおろした。そして持ってきた包装紙を見つめた。そして、ため息をついた。
その時…
「お父さん。」
亜紀の声が聞こえてきた。真の横には亜紀が腰掛けていた。当然真は驚いた。でも、驚きを隠そうとした。
「お父さんって本当に負けず嫌いだね。」
最愛の娘にそういわれ照れる真。
「う、うるさいっ!」
慌てて照れ隠しをした。しかし、顔は真っ赤。
「顔、赤いよ。」
「夕日だ、夕日!!」
「ふーん。」
と亜紀は父をからかっていた。真でさえ亜紀に翻弄されていた。
「ごめんね。」
「は?…何がだ?」
「お父さん、私のこと思ってくれてたのに気付けなくて……反発したりして……」
と亜紀は以前真に反発し続けてきたことを謝った。
「…もういいんだ。俺もぎこちなかったからなぁ。」
と真は言った。それを見て微笑む亜紀。
「あの、もう一つ話があるんだけど……」
「何だ?」
「私がサクちゃんに描いたそのプレゼント…」
と亜紀は真が持っている包装紙を見て言った。
「これがどうかしたのか?」
「……それ、私からサクちゃんに渡したいの。」
「え……どうやって渡すんだ、お前。」
「サクちゃんの誕生日の日に直接………」
「まあ、どうするのか知らないが、お前にまかせるぞ、亜紀。」
と真は亜紀に包装紙を渡した。
「ありがとう。」
と亜紀はお礼を言った。
「あと、お母さんのこともよろしくね。」
「ああ。」
真は海を見つめながら言った。
「ありがとう。またね……」
と亜紀は言い残し、去っていった。
真は亜紀が去ったのを察してから泣き出した。自分の愛情が亜紀に理解してもらえ、そして、再び会話ができたからだ。亜紀がいる間は泣きたいのをこらえていたのだ。


亜紀は次に懐かしい廣瀬家にやってきていた。綾子が夕食を作っている。カニクリームコロッケだ。
コロッケを見て亜紀を思い出す綾子。切なくなり、表情が寂しくなった。
「何であの子があんな目に……」
と呟いた。彼女も亜紀が亡くなってから朔太郎と同じように喪失していたのだ。
すると、誰かが綾子の肩をトントンと叩いた。
「あなた?」
綾子は真だと思って振り向いた。頬に指が刺さった。次の瞬間、綾子は絶句した。そこには亜紀がいたのである。
「亜紀ちゃん……?」
「フフッ…びっくりしたでしょ?」
と亜紀はにっこり笑って言った。
ふと、綾子の目が赤くなっていき、涙があふれ出た。それを見て亜紀の目からも涙があふれてきた。
「亜紀!!」
「お母さん!!」
2人は再会した喜びを感じ、抱き合った。亜紀は綾子の胸にうずくまって泣いた。綾子も泣きながら亜紀を優しく包んだ。そして、亜紀が落ち着くのを待った。
十数分後、亜紀は落ち着き、
「今日、夕食一緒に作りたくて……」
と言った。綾子もうんうんと頷き、亜紀にエプロンを差し出した。亜紀は喜び、エプロンをつけた。

「あー危ない、そんな切り方じゃ!」
指を丸めずに野菜を切る亜紀に綾子は慌てて注意した。
「切るときは、こうやって指を猫みたいに丸めて切るの。そうすれば安全でしょ。」
「あ、そっか!」
亜紀も納得した。
次はカニクリームコロッケを油に入れる。亜紀は高いところからコロッケを落とした。そのせいで…
「あつっ!」
亜紀の手に油がはねて亜紀は飛び跳ねた。
「揚げ物を入れるときは、こうやるの。」
と綾子はお手本を見せた。亜紀は手を冷やしながらそれを見ていた。
「こう?」
「そうそう!いい感じよ。」
その後は何とかコロッケを入れることができた。
ついでに、亜紀は夕食を食べることにした。もちろん、真も。
「いただきます!」
亜紀が元気な声で叫び、真と綾子も続いて「いただきます。」と言い、夕食を食べ始めた。
「おいしい!」
亜紀はできたてのカニクリームコロッケを頬張って言った。
「うまいな、いつもより!」
と真が綾子を見て言った。
「それ、亜紀ちゃんが揚げたのよ。」
と綾子は夢中でご飯を食べる亜紀を見て言った。
「ほう……揚げるの上手いな、亜紀。」
「フフッ!お母さんに入れ方教えてもらったんだ!」
と亜紀は笑顔で真に言った。コンソメスープやサラダも素晴らしいできだった。
それに、会話も今までで一番弾んでいて、幸せな夕食となった。
「また来るね!」
と言い残し、亜紀は去っていった。

その後………
「もう食べる機会はないと思っていたのに、今日できちゃったね。」
「そうだな。」
と真と綾子は幸せそうに会話した。今、2人は一緒に皿洗いをしている。


朔太郎達も鯖の味噌煮・味噌汁・おひたし・豆などを食べていた。
朔太郎も亜紀と一緒に遊んでいた頃の朔太郎に完全に戻っていた。

そして、一日が終わりを迎えた。


――続く
...2006/04/06(Thu) 12:00 ID:bTdkkdlI    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:雑種犬

世界の中心で、愛をさけぶ〜喪失からの再生〜
第20話「最初で最後のハッピーバースデー」


10月中旬。
宮浦高校では10月はじめに夏服から冬服に衣替えされた。
冬服姿の朔太郎は学校が終わるとすぐに自転車をフルパワーでこぎ、稲代総合病院へと向かった。
朔太郎は着くや否や、病室ではなくリハビリルームに駆け込んだ。
そこにはリハビリに励む明希がいた。朔太郎は明希を見つめていた。
明希も朔太郎に気づき、にっこり笑顔で手を振った。それを見て朔太郎はにやにやした。
そこに、
「鼻の下伸びてるよ、お前さん♪」
「よ!でれ・でれ夫(でれ・でれお)」
「仲いいねー、サク!」
いつものメンバー、龍之介・顕良・智世が朔太郎をからかった。
「う……うるせーな!もう…」
と朔太郎はぶつぶつ呟いた。
「明希!元気?」
と智世は明希に声をかけた。大きな声だったので、看護士たちににらまれた。
「あと一週間ぐらいで退院できるって!」
と明希はうれしそうに言った。
「うっそマジ!?」
朔太郎は先ほどの智世よりも大きな声で目を見開いて言った。看護士の冷たい目線が朔太郎に突き刺さった。
それでも朔太郎は懲りずに、大声で会話。
「うるさいっ!!!」
ついに1人の看護士がぶち切れて朔太郎たちを外に追い出した。
「おまえのせいで追い出されちまったじゃねーかよぉ!」
と顕良がかばんで朔太郎の頭を一発バシッとたたいた。
「ま、明日来ればいいじゃん。」
と龍之介は朔太郎から自転車のかぎをうばい、朔太郎の自転車に差し込んだ。そして、自転車にまたいだ。
「おう、乗れよ!」
と龍之介が言った。智世、顕良が後ろに乗った。
「おい、俺は?」
と朔太郎が聞いた。
「お前は後で来い!!」
と顕良が言った。そして、龍之介はひゃっほーい!!と言って坂を下っていった。
「あーもうっ!!」
朔太郎は全速力で後を追った。

そして、一週間後…10月23日。朔太郎の誕生日だった。
明希が病院から出てくるのを待つ朔太郎。
数十分後、明希が看護士に見送られながら病院から出てきた。
「あっ!よう!」
と朔太郎は激しく両手を振って明希に挨拶した。
「どれくらい待ってたの?」
「うーん…分からない。」
「…ほんとに………サクは……あっ!松本君は…」
「いや、サクでいいよ。明希。」
「えっ!?今、明希って言った?」
「おう。言ったさ。」
「いいの?」
「亜紀に言われたんだ。誰かを自転車の後ろに乗せて走れって。だから、いいんだよ。」
「……………分かった……。」
「よし!じゃあ、早速、乗って!」
と朔太郎は明希に目で合図した。後ろに乗れと。
明希は笑顔で「うん!」と言い、朔太郎の自転車の後ろに乗った。
「じゃ、いくよっ!」
と朔太郎は自転車をこぎ始めた。そして、自転車は病院を離れていった。
窓から亜紀の主治医だった佐藤医師が朔太郎の様子を穏やかな笑顔で見つめていた。

「それでさ、今日母ちゃんが俺の誕生パーティーに明希も連れてきてくれって言ったんだけどさ、来る?」
と朔太郎が後ろに乗っている明希に尋ねた。
「サク…今日誕生日なんだ。」
「あれ?知らなかった?」
「だって教えてもらったことないよ、私。」
「あ、ごめん……」
「まったくもう……天ボケなんだから…」
「ごめん。」
「行く!場所は?いつやるの?」
「えーと……松本写真館で、午後6時から。明希の退院祝いでもあるんだってさ。いきなり誕生パーティーって言い出すからさ、びっくりしたよ。」
と朔太郎が言うと、明希は朔太郎の背中に顔を当てた。一気に汗が飛び出し、鼓動が早くなった。でも、久々の感覚だったので、うれしさがこみあげてきた。朔太郎はのんびりと自転車をこいでいった。


――僕は今幸せだった。亜紀がいなくなって喪失したぶん、今生きていることが純粋に楽しく、幸せだ。これからは明希と走っていこうと思った。
やっぱり君の言うとおりだった。何かを失うことは、何かを得ること。君を失って、今を生きるという喜びを得たよ、亜紀。


そのころ、写真館では潤一郎や富子、真や綾子が準備をしていた。

そして夕方……
朔太郎・明希をはじめ、顕良や龍之介、智世・谷田部・たこ焼きパパさん・一樹・一樹や顕良たちの家族の姿も見えた。
そして6時になった。
誰かの足音が松本写真館に近づいてきた。そして、その人物は写真館のドアを開けた。
みんないっせいにそこを見る。そこには亜紀の姿があった。驚く者がいれば、喜ぶ者もいた。
「亜紀ちゃん……何で…?」
富子は仰天し、亜紀に近づいた。潤一郎や芙美子も驚いていた。手を握ると、温もりが感じられた。
「お久しぶりです、おばさん。また遊びに来ちゃいました。」
と亜紀は笑顔で言った。
「ま、いっか。いっか!そんなこと。入って!亜紀ちゃん!」
と富子は亜紀を写真館に入れた。
「よっ!亜紀!!」
と朔太郎は亜紀に声をかけた。顕良たちも亜紀に近づき、会話に加わった。
「はじめまして。小林明希です。」
と明希は亜紀に頭を下げた。
「こちらこそ、はじめまして。廣瀬亜紀です。」
と亜紀も頭を下げた。
「これからも、サクちゃんをお願いします。」
「…うん!」
もう2人は意気投合していた。
まずみんなで「ハッピーバースデー」を朔太郎に歌った。朔太郎は照れていた。亜紀と明希は朔太郎を見て「こんなところに惹かれるよね!」
「そうそう!そこが可愛くて!」
などと目で会話。口は歌を歌っていた。2人とも笑顔だった。
歌い終わると、朔太郎はふーっとケーキのろうそくを消した。一発で消えた。一同は拍手を贈った。
そして
「我息子、松本朔太郎の誕生日と、明希ちゃんの退院を祝って………かんぱーーーーい!」
と潤一郎がハイテンションでさけび、みんなでジュース・お茶・ビールなどが入ったグラスをカツーンとぶつけた。
「私、中川顕良は最近覚えたお経を読みまーす!」
「おう、いいぞ、顕良!!」
顕良がお経を唱え、その姿を見てみんなが笑った。とくに顕良の父が酒も入ったせいでおおうけだった。
「俺は魚の漢字を読み当てます!」
と龍之介が叫んだ。
鯖……「さば!」○
鮪……「まぐろ!」○
帆立……「はぁ?何だそれ!?」
「ほたてだよ、バカヤロー!」
と龍之介の父が龍之介に叫んだ。
「おい、帆立は魚じゃねーよ!!智世!!」
「いいじゃない、ちょっとくらい……」
「ブ――――――――――ス!!」
「うっさいわよ!リ――――――――――ゼントッ!」

パコン!!

智世は龍之介の頭をスリッパで叩いた。みんな大爆笑。
「私、上田智世は飼い犬のミルちゃんで芸をします!」
と智世が父から飼い犬を奪い、芸をはじめた。
「お手!」
と言っても犬は何もしないで座っていた。
「ふせ!」
犬はぼけーっとしていた。
「おすわり!」
なんと、立ち上がった。
「むかっ…!お手!」
犬はあくびした。
「お・て!」
犬は智世の手に噛み付いた。
「いったーーーーい!」
「ざまーみろ、智世!」
龍之介が冷やかした。
「黙りなさいよ、リーゼント!」
今度はスリッパを投げつけた。また一同大爆笑。

そして、朔太郎の写真をみんなに見せたり、松本夫妻・廣瀬夫妻が作った自慢の料理をみんなで食べたりした。もちろん、パパさんのたこ焼きも。あとは、いろいろ雑談したり、星やテレビを見たりした。

午後9時……いよいよ閉幕。
「最後に……廣瀬亜紀さんから松本朔太郎に一言お願いします!」
と富子が叫んだ。びっくりする亜紀。でも、亜紀は朔太郎と向き合った。
「サクちゃん。私、一年前の今日、サクちゃんにプレゼントあげたかったんだ。でも、できなかったから、今ここでプレゼントするね。はい、サクちゃん。お誕生日おめでとう!」
と言い、亜紀はあの包装紙を差し出した。
「あ、ありがとう!!」
朔太郎はこれ以上ないといえるほどのうれしそうな顔でプレゼントを受け取った。
「サクちゃん。今まで私を愛してくれてありがとう。…これからは小林明希さんを後ろに乗せて走ってね。…ありがとう。サクちゃん。」
と言い、亜紀は朔太郎に頭を下げた。
「こっちもありがとう。亜紀。」
と朔太郎も亜紀に頭下げた。その瞬間、写真館中に拍手が響いた。
そして、朔太郎の最高の誕生日が幕を閉じた。


―――続く


――――――――――――――――――――
予告
次回ついに最終回!朔太郎は亜紀に最後の別れを告げる!そして、朔太郎の新たな人生が始まる!
...2006/04/06(Thu) 13:17 ID:bTdkkdlI    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:雑種犬

世界の中心で、愛をさけぶ〜喪失からの再生〜
最終話「かたちあるもの」


10月23日の夜は、パーティーの後片付けで、朔太郎は夜遅く帰宅した。時計を見ると、もう11時だった。
「ふぁ〜」
と朔太郎はあくびした。包装紙の中身が気になったがもう眠くて仕方がないので朔太郎はさっさと着替えて布団にもぐりこんだ。
その5分後、部屋には朔太郎のいびきが響いた。

翌日。10月24日。この日は亜紀の命日である。
朔太郎は朝起きると、すぐに着替え、亜紀からもらった包装紙を慎重に開けた。
その中身は、「ソラノウタ」と書かれた一冊のうすい絵本だった。
朔太郎は骨の入った子ビンを机の上に置き、絵本を読み始めた。

――――――――――――――――――――

ソラノウタ

生きていくあなたへ

もしもお前が
枯れ葉って何の役に立つの? ってきいたなら

私は答えるだろう
病んだ土を肥やすんだと

お前はきく
冬はなぜ必要なの?

すると私は答えるだろう
新しい葉を生み出すためさ

お前はきく
葉っぱは何であんなに緑なの?

そこで私は答える
なぜって、やつらは命の力にあふれているからだ

お前はきく
夏が終わらなきゃいけないわけは?

私は答える
葉っぱどもが、みな死んでいけるようにさ

お前は最後にきく
隣のあの子はどこに行ったの?

すると私は答えるだろう
もう見えないよ

なぜなら、お前の中にいるからさ
お前の脚は、あの子の脚だ

がんばれ

――――――――――――――――――――

最後のページにはピンク色のワンピースを着た小さな女の子がホイッスルを吹いている絵が描いてあった。
「上手いじゃん…絵……」
と朔太郎は微笑んだ。それと同時に一滴の涙が目からこぼれ落ちた。亜紀の朔太郎に対する思いやりを感じたからである。
朔太郎は目をこすった。
「サク!明希ちゃん来てるよ!早くしな!」
という富子の声が1階から聞こえてきた。
「今行く!」
と朔太郎は返事し、カバンを持ち、部屋を出て行った。
朔太郎は明希を自転車の後ろに乗せて登校した。

放課後
朔太郎は屋上で子ビンを見つめながらぼーっとしていた。亜紀の骨をどこに撒いてやろうかを考えているのである。
そうやっているうちに部活をしていた生徒たちもいつの間にかほとんどいなくなっていた。

ピーッ!

ホイッスルの音が聞こえた。谷田部が陸上部員を集合させていた。
朔太郎は亜紀が走った最後の日を思い出した。

――――――――――――――――――――

競技場のスタートラインに着く亜紀。
「位置について!」
亜紀の100メートル先でスットプウォッチを片手に持ち、朔太郎は叫んだ。
クラウチングスタートの体制をとる亜紀。
「よーい!」
亜紀は集中力を高めた。

ピッ!!

朔太郎はホイッスルを鳴らした。それとほぼ同時に走り出す亜紀。快調なスタートだった。
亜紀は疾風の如く競技場を駆け抜けた。そして、ゴール!!
朔太郎はストップウォッチを止めた。
「12秒……91」
と朔太郎は亜紀にタイムを教えた。
「…ベスト……自己ベスト!!」
亜紀は自己ベストを達成したので嬉しそうにはしゃいだ。
「やった――――――!!」
朔太郎はストップウォッチを宙に高く投げ飛ばした。そして2人はいつまでも自己ベストを喜び合った。
思えば、このときから亜紀はすでに病におかされていたのだ。

――――――――――――――――――――

「……そうだ…あそこだ…」
朔太郎は走り出した。校舎内を猛スピードで駆けて行った。

朔太郎が立ったのは校庭の、いつも亜紀が放課後練習していた位置だった。
朔太郎は子ビンを軽く振り、中に入っている骨を掌の上に出した。そして、手を上に差し出し、風が吹くのを待った。
静かに目を閉じる。心の中で「よーい……」と呟く。すると、ホイッスルの音が聞こえた。
それと同時に飛んでいく亜紀の骨。
亜紀の骨は風に乗って散らばっていく。
朔太郎も後を追いかけるように走り出した。
「走れ―――!!アキ―――――――!!!」
と朔太郎は声が枯れてしまうのではないかと思えるほど声を振り絞って叫んだ。

そして、朔太郎は走り抜け、その場に寝転んだ。
夕日によって輝く雲、茜色に染まる空が美しかった。


そして月日は流れ……
「松本朔太郎!」
「はい!!」
谷田部に名前を呼ばれてステージへと登っていく朔太郎。胸には「祝 卒業」と書かれたあの卒業式によくつける造花の付いたものがつけられていた。
「松本朔太郎。本校を卒業したことをここに証する。御卒業、おめでとうございます。」
と校長が朔太郎に卒業証書を差し出した。
朔太郎はそれを受け取り、礼をした。そしてステージを降り、席に戻った。
そして、式歌「仰げば尊し」や「蛍の光」そして、最後に校歌を精一杯歌って卒業式が終わった。

朔太郎は校門の前で宮浦高校を見つめていた。
「3年間、ありがとうございました!!」
亜紀の死という辛いこともあったが、朔太郎にいろいろなことを教えてくれた宮浦高校に朔太郎は頭を深く下げ、お礼を言った。
朔太郎の顔は晴れ晴れとしていた。
そこにチャリンチャリンという自転車のベルの音が聞こえた。
見てみると、朔太郎の自転車に乗った龍之介、智世、顕良、そして……明希が笑顔で立っていた。
「いくぜい、お前さん!」
と龍之介が朔太郎を誘った。
「…おし!行くぜ!」
と朔太郎は満面の笑顔で叫んだ。そして、龍之介達の方に全速力で駆け寄った。
朔太郎達は走って宮浦高校を去っていった。人生を走るかのように……


朔太郎の部屋の机の上に一枚の紙がおいてあった。
そこにはこんなことが書いてあった。

――――――――――――――――――――

かたちあるもの

夜空に消えてゆく星の声 儚げに光る鈍色の月
2人で泳いだ海は何故 束の間に色変えてゆくんだろう
このまま眠ってしまいたくない あなたをまだ感じてたい
もしもあなたが寂しいときに ただそばにいることさえできないけど
失くす痛みを知ったあなたは 他の愛をつかめる そう祈っている…

いつかあなたが夜に迷い ふとあの日を見つめ返すなら
まぶしすぎる太陽の中で 微笑む私を思ってね
重ね合わせてゆく好きの強さ 泣くことさえ愛に変えた

強がる愛の弱さ両手に 抱えてもろい絆を確かめてた
でもこのときを生きるあなたを ずっとずっと見守る My love その心に…

泣きたいときや苦しいときは 私を思い出してくれればいい
寄り添える場所 遠い夏の日 温もり生きる喜び 全ての心に…

――――――――――――――――――――

そして…

白衣を着た智世が何かの液を試験管に入れてさらに他の液をその中に入れた。
それをふって変化を見つけようとする智世。大学での実験だった。

漁師についての話を実際の漁師から伺う龍之介。彼は将来漁師になる決意をしたらしい。

顕良は滝に打たれて修行をしていた。彼の父が修行を見守っていた。
顕良は僧侶になることを決めたらしい。

朔太郎は明希と一緒に電車に乗って何か会話をしていた。
降りる駅に着くと、今度はバスに乗り換えた。そして、2人は仲良く同じ大学の中に入っていった。それは医大だった。

休日は朔太郎は明希を自転車の後ろに乗せていろいろな場所に出かけた。

それぞれの光(みち)を進む朔太郎達をきらきらと輝く太陽がやさしく見守っていた。



―――完―――





―――――――――――――――――――――――――

全21話です。最終話のサブタイトルはドラマの最終話と同じです。どうしてもこのタイトルにしたかったのです。
個人的には7話と8話がお気に入りです。
短い間でしたが、ありがとうございました。しばらくは高校生活に集中したいと思いますので物語の書き込みはストップします。

これからもよろしくお願いします。
...2006/04/06(Thu) 17:41 ID:hQuaHirM    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:一読者
全21話、とても楽しかったです。特に発想の豊かさに驚嘆しました。
亜紀が生きているストーリー、亜紀が亡くなった後のストーリー・・と色んなスタイルがありますが、天国に行った亜紀がそのままの姿で帰ってくる、というのは意表を付かれましたし、とても感動しました。
若いから発想が柔軟というのもあるのでしょうが、それ以上に、絶対センスありますよ!
しばらくは高校生活をエンジョイされるのがよいと思いますが、やはりその才能を眠らせとくのは勿体ないので、なるべく早く復帰して下さい(笑)

あと皆さんと同じ意見ですが、やっぱり高校時代は人生の中でも特別な時間です。
私もいまだにバカ騒ぎしたり、泊りがけで遊びに行くのは大抵高校の連中ですね。
生涯の友人を見つけられる時間だと思います。じっくり3年間、楽しんで下さいね。ひとまず、お疲れ様でした!
...2006/04/06(Thu) 22:17 ID:uh6NS6bc    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:双子のパパさん
 お久しぶりです。21話読まさせていただきました。
 とても楽しかったです。また、亜紀のセリフには感動し、涙あふれることもありました。SATO様と同じで、楽しく、幸せな時の5話ぐらいまではよく見るのですが、ソラノウタ、かたちあるものを久しぶりに読んでしまい、また涙でございました。

 人によって違うと思いますが、私は今までの人生の中で高校3年間が一番楽しく、輝いていたと思います。
 雑種犬様も、朔に負けない仲間を作り、有意義な時間を過ごされますようがんばってください。
 学業等大変かと思いますが、夏休み等長期の休みの時、また物語が読めるのではないかと、勝手に期待し、待たせていただきます(笑)
 おつかれさまでした。
...2006/04/07(Fri) 03:17 ID:WPUAJlWs    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:雑種犬

一読者さん
楽しんでもらえて嬉しいです。
高校生活に慣れたらまた書きたいと思います。長く待たせてしまうかもしれませんがよろしくお願いします。
友達ができるかどうか不安(内弁慶なので家と外では性格が全く反対になってしまうので…)ですが、頑張ります。


双子のパパさん
お久しぶりです。
楽しさ+感動を与えられて嬉しいです。今は最後までやり遂げた充実感でいっぱいです。
私も夢中になれるものを見つけて悔いなく高校生活を送りたいと思います。
先程も書きましたが、高校生活に慣れたら書き込みを再会したいと思います。でも、私はなれるのに時間がかかりますので、長く待たせてしまうと思いますが、書き込みます。


これからもよろしくお願いします。
...2006/04/07(Fri) 15:21 ID:vHCXLc5s    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:にわかマニア
 雑種犬さん
 112番の投稿に「もうあさってが入学式」とありましたから,今日が入学式ですね。改めて,ご進学おめでとうございます。

 一樹を親戚の子という設定にすることで,小林とサクの出会いを高校在学中に繰り上げた場合の問題をうまく処理されていましたね。特定の人にだけしか見えない「いま会いにいきます」に対して,こちらの方は,「亜紀はみんなの中に生きている」ということがうまく描かれていたと思います。

 他の皆さんもおっしゃっておられるように,高校時代って最も充実した時期だと私も思います。もっとも,これは歳月を経た後に振り返ってみての述懐ですから,その当時は,悩んだり苦しんだりで「何が青春だ」と思うときもあるかもしれません。
 でも,思う存分,学園生活をエンジョイしてください。
...2006/04/07(Fri) 17:55 ID:Hb7rr06U    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:SATO
物語完結お疲れ様でした。
亜紀と両親との再会場面はジーンときましたよ。特に真の強がりな気持ちがよく伝わってきました。
廣瀬亜紀が小林明希にサクを託すところは『いま、会いにゆきます』で澪が永瀬さんに巧を託す場面に似ていましたが、二人の「アキ」が笑ってバトンを引き継いだので、さわやかさが残りました。(亜紀は『立派な人』だったんですね・・・)
他の方もコメントされていましたが、小林明希が転校生として宮浦高校にやって来るという斬新な発想が楽しい物語の展開に繋がったと思いました。本当にお疲れ様でした。
しばらくは、高校生活をエンジョイしながら、『一読者』として皆さんの投稿ストーりーをお楽しみ下さい。
...2006/04/07(Fri) 23:56 ID:LKHwzLFA    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:朔五郎
完結おめでとうございます。
最初から読み返してみましたが、スゴいですね。この発想は、なかなかできるものじゃないと思いました。
気が向いたら、また書いてください。楽しみにしております(^^)
...2006/04/08(Sat) 01:09 ID:.7rFTEWc    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:雑種犬

にわかマニアさん
お祝いの言葉、ありがとうございます。入学式中、何度も何度もお腹が鳴りました。
一樹を登場させたのは、単純に、登場させたかったからであり、効果に関してはあまり考えていませんでした。(恥ずかしい…)
適当に人物を登場させただけなのにすごい効果を出したのですね。
高校生活、頑張ります。


SATOさん
親子・友人の久々の再会は生きていている人、亡くなった人、どちらをとっても感動しますよね。
亜紀が明希にお願いするシーンも自分で考えて書きましたが、確かにいま、会いにゆきますのあのシーンに似ていますね。意識していませんでした。
しばらくは一読者として物語を楽しみます。


朔五郎さん
他の方とは違った物語を作りたいと思い、考えた末にこの展開になりました。
高校生活に早くなれて復帰したいと思います。


みなさんのコメント、ありがとうございます。


コメントがあれば返事を書き込みます。
...2006/04/08(Sat) 10:39 ID:Jg48XFvg    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:ポポ
お久しぶりです。
本当に楽しく読ませて頂きました。
涙あり、笑いありのすばらしいお話の数々に、未来の三谷幸喜さんの誕生を予感しました(~~
そして亜紀はサクちゃんをはじめ、みんなの中でずっと生き続けてるのですね、感動しました。

最後に高校入学、おめでとうございます!!!
前にも言いましたが、かけがえのない3年間になると思います。思いっきりエンジョイして下さいね。
...2006/04/08(Sat) 13:08 ID:RbmRE5fY    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:雑種犬

ポポさん
お久しぶりです。
三谷幸喜さんほどは上手く書けませんでしたが、楽しかったです。
亜紀は皆の中でちゃんと生きているということが表現で着てよかったです。
感動してもらえてよかったです。
お祝いの言葉、ありがとうございます。
3年間頑張ります。
...2006/04/08(Sat) 15:56 ID:Jg48XFvg    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:たー坊
お疲れ様です。

遅ればせながら、最終話まで拝読させていただきました。
短期間の間に21話に及ぶストーリーをお書きになられたことは、これからの高校生活をおくられる上で、大きな財産になるのではないでしょうか。
3年間は本当にすぐに過ぎ去ってしまいます。私の高校時代は、正直なところ”最低”と言えるでしょう。そして、それを決めるのは自分自身に他なりません。目標を決め、毎日、すべきことをしながら、3年をエンジョイなさってください。
...2006/04/09(Sun) 23:23 ID:kAp9lbpg    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:にわかマニア
 1か月半で書き込みが100件を突破というのは,かなりのハイペースですね。
 記録的には,続編ストーリーものでは「老舗」の朔五郎さんのシリーズが1か月で300件に達してパート2に突入というのがありますが,ドラマ本編の放映終了1週間後(特別編の3日後)という時期で,しかも複数の作者による競作でしたから,これはまあ「別格」でしょう。むしろ,2年も経った今なお,新しいストーリーが生まれ,次々とアップされているのが何ともすごいことだと思います(余談ながら,3週間後にスタートした「祖父がカメラマン」さんの方も80件に達しています)。
 物語の上では,主人公たちはもう卒業してしまいましたから,雑種犬さんとは,いわば「入れ違い」ですね。でも,物語の何箇所かに「歳月が流れ」というところがありましたから,実際に高校生活を体験してみて感じたことを「落穂拾い」のエピソード的に書き足してみることもできそうですね。
...2006/04/11(Tue) 12:48 ID:9hSU2Tz6    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:雑種犬

お久しぶりです。雑種犬です。


たー坊さん
そういえば中学校も気付けばもう卒業してしまっていたという状況でした。高校もそうなんでしょうね。
私の学校は65分授業のため、眠いです。
3年間頑張ります。


にわかマニアさん
「世界の中心」は放送終了から2年経過しても多くの人々にまだ愛されているのでしょう。私もその1人です。
高校生活を参考にしてサク達が卒業するまでのお話を書いてみるのもいいですね。
...2006/04/14(Fri) 17:33 ID:dOO9SsRc    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:ポポ
お久しぶりです!!!
たまたま変な時間に見ていたら、雑種犬さんの書き込みがあったので嬉しくなっちゃいました。

高校生活、楽しくなりそうですか?
私も高校の3年間はあっという間に過ぎ去っていった感じでした。
サクちゃんや亜紀に負けないくらい楽しい時間をおくって下さい、応援してますよ。
...2006/04/14(Fri) 17:46 ID:uvCMV.o6    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:雑種犬

ポポさん
お久しぶりです!
高校生活にはまだ慣れていません…。私は不器用なので、他の方より慣れるのに時間がかかるんだと思います。
だから、きっと大丈夫だと思います。楽しい高校生活を送りたいと思います。
...2006/04/17(Mon) 17:09 ID:2gqfdzXQ    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:ポポ
雑種犬さんへ

高校生活、きっと大丈夫ですよ。
ゆっくりあせらずに、そのまま仲間と接してください。
きっと雑種犬さんの良さをわかってくれる友人や恋人にめぐり合えますから(^^
これからも応援しています、頑張ってね!!!
...2006/04/20(Thu) 15:59 ID:CylWwIio    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:雑種犬

ポポさん
いろいろやっているうちに高校生活に慣れてきました。友達との会話も前よりははずんできました。今は希望でいっぱいです。
応援のメッセージ、しっかりと受け取りました。頑張ります!!
...2006/04/20(Thu) 18:10 ID:NQk2SsZ6    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:雑種犬

皆さんお待たせしました。
久々に短編を書きます。



亜紀の挑戦〜サクへの贈り物〜
第1話「挑戦の始まり」



1987年10月中頃。宮浦高校の冬服を着た生徒達が朝日を浴びながら会話をしたり、ふざけあったりしながら宮浦高校の正門をくぐっていた。

昇降口に亜紀の姿があった。今ちょうど登校してきたのだ。
亜紀は自分の上履きを取り出し、更にその奥を見た。そこにはしわくちゃになった茶色い袋が入っていた。
それを見た亜紀の顔は笑顔でいっぱいになった。
そして、それを取り出し、中をのぞいた。中には水色のウォークマンが入っていた。

亜紀は屋上に行き、イヤホンを耳にはめ、腰をおろした。そしてウォークマンのを起動させた。
『あ…あ…松本朔太郎です。夕べのご飯は鮭のムニエルでした。……鮭が袖に付いて袖が生臭くなりました…亜紀のことだろうから、これ聞いて笑ってるだろ…鮭の生臭さはきついぞよ。……明日は亜紀の番だよ。』
テープはそこで切れた。サクの予想通り、亜紀は笑っていた。
ご存知の通り、サクと亜紀は毎日毎日テープで交換日記をしている。
亜紀は視線をウォークマンに移した。ウォークマンの裏側には「Happy birthday」と書かれていた。
そこで亜紀はふと疑問に思った。
「……そういえば…サクちゃんっていつ誕生日なんだろう……」
亜紀はしばらくぼーっと考え込んでいた。

放課後
学校の周囲に見える小さな山々は紅葉し、秋の深まりを示していた。
赤く染まった葉は夕日で更に赤く染まり、美しさを増していた。

亜紀はサクの自転車の後ろに乗っていた。サクは自転車を漕ぎ、走っていた。
「サクちゃん。」
と亜紀はサクに突然声をかけた。
「ん?」
「…誕生日、いつなの?」
「あれ?言ってなかった?」
「言ってないよ!…私も朝気付いたけど……」
「……そういえばいった記憶ないな…10月23日だけど……?」
「10月23日…もうすぐだね。」
「…………そうだな。」
「私、サクちゃんにプレゼント用意しなきゃね。」
「えっ……」
サクは思わず声を出し、自転車を漕ぐ足を止めた。
「どうしたの?サクちゃん?」
「い、いやいや、べべ、別に……」
とサクはおどおどして言った。顔が赤くなっていた。秋のいきなりの発言に緊張と驚きが高まったのだろう。
「何くれるの?」
とサクは聞いたが、
「サクちゃん、早く!日が暮れちゃうよ!」
と亜紀が制した。
「あ。」
サクは慌てて自転車を漕ぎ出した。


その夜。
サクはニヤニヤしながらご飯を食べていた。朔太郎の異様な様子に家族達はフリーズしていた。
けれども、亜紀のことを考えているのだ、とすぐに理解した。

一方亜紀。
亜紀はミュージックウェーブを聞きながらサクに贈るプレゼントは何がいいかと考えていた。
「何がいいかな……?シャツ…?ペンダント…?帽子…?うー……微妙……」
亜紀はなかなか思いつかないので、机に顔をつけた。
その時、

「お次はラジオネーム:スズメさん……『私は彼氏の誕生日に私の手料理をプレゼントしました。彼は前から私の手料理に興味をもっていたので、せっかくだからということで作ってみたんです。……」

それを聞いて亜紀は飛び起きた。
「そうだ!私の手料理をサクちゃんにプレゼントすればいいんだ!」
亜紀は「よしっ!」と大声で気合を入れた。
下にいた綾子と真は上から聞こえた娘の声に思わず顔を上げた。

先程のラジオの投稿には続きがあった。

「…でも、私は料理がものすごく下手くそです。案の定、彼氏はその味のせいで具合を悪くして、私達は別れてしまいました。くだらない話ですが、ものすごく、切ない…切ないです……。料理が苦手な方は手料理をご馳走するのは避けたほうがいいですよ。』
…ふーん…かわいそうなお話ですねー…泣いていいんだか、笑っていいんだか…あっ、スズメさん、失礼しました…。全国の料理が下手な皆さん、注意してくださいねー。……以上、「私の失敗談+教訓」でした。来週は……」


亜紀は成績優秀、かつ運動神経抜群の優等生だが、料理だけは苦手なのだ。
はたして、亜紀の決心したサクへのプレゼントは吉と出るか、凶と出るか……


サクの誕生日が刻一刻と迫る……




―――続く
...2006/04/21(Fri) 22:06 ID:SGGSoFa2    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:雑種犬

亜紀の挑戦〜サクへの贈り物〜
第2話「調理実習」


亜紀がサクにプレゼントを贈ると決心した日の翌日。
サク達2年D組は家庭科室にいた。全員エプロンと三角巾を身につけていた。そう、調理実習だ。
ドアを開け、家庭科担当の先生が入ってきた。
「今日は前回の授業で話したとおり、それぞれの班で決めた料理を作ってもらいます。では、作業開始!」
と教師が言うと、生徒達はグループごとに作業を始めた。
当然のことながら、サク・亜紀・ボウズ・智世は同じ班を組んだ。スケちゃんは別のクラスなので、不在。
「俺達の班は…カレーを作るんだよな。」
「うん。」
サク達の班はカレーライスを作るのだ。

亜紀・智世が野菜などを切り、サク・ボウズが料理することになっていた。
「亜紀。玉ねぎとじゃがいも切って。私はにんじんとお肉切るから。」
と智世は亜紀に指示した。明らかに智世は楽な作業を狙っている。
「うん。」
そうとは知らずに亜紀はささっと走り、スーパーの袋からじゃがいも数個と玉ねぎ一個を取り出し、包丁を持った。


――カレーかぁ……これ作ってあげようかな……


と亜紀はじゃがいもの皮をむきながら(切り落としながら?)考えていた。1,2秒ごとにボトッ、ボトッという音が流しに響く。
「いたっ!!!」
次の瞬間、亜紀の悲鳴が聞こえた。
「亜紀!!」
亜紀の声を聞いたサクは慌てて亜紀に駆け寄った。
「亜紀、大丈夫?」
「うん。ちょっと指切っちゃっただけ。」
亜紀の指からはほんの数量の血が出ていた。
「俺がやるよ、亜紀。」
サクは亜紀の代わりにじゃがいもを手に取り、器用な手つきで皮をむき始めた。
亜紀はサクを申し訳なさそうに、また、寂しそうに見つめていた。


――こんなんじゃサクちゃんに手料理作るなんてできないよ…



亜紀は「はー」とため息をつき、後ろをふと見てみた。
周りでは生徒達が野菜を切ったり、食材を煮込んだりしていた。
「調理するくらいはできるかな…?」
と亜紀は呟いた。

一方、ボウズは肉と野菜を炒めていた。(最初から煮込めばカロリー控えめ、だそうです。)ボウズの手つきも危ない。
「中川君!私がやろっか?」
と亜紀はボウズに声をかけた。
「え?大丈夫なの?廣瀬……」
「うん。」
ボウズは亜紀の様子を見て、亜紀に調理を任せることにした。
亜紀は菜箸で野菜や肉をかき混ぜた。しかし、意外と上手くいかない。野菜や肉はどんどん焦げていき、ついには……


「…………うっ!にっが……」
真っ黒になった野菜&肉入りのカレーを食べてサクは顔をしかめた。サクだけでなく、亜紀・智世・ボウズも。
教師が止めても亜紀は意地を張って調理し続けた為に具が真っ黒に焦げてしまったのだ。ルーの溶け具合も最悪だった。ところどころにルーの塊が残っていた。
「おいボウズ!もっとかき混ぜろよぉ!!」
サクはカレーの入った皿をスプーンでコンコンと叩きながら言った。
「わ、悪かったよ……」
とボウズは亜紀を庇い、謝った。
亜紀の表情はどんどん暗くなっていった。その様子に智世が気付いた。

放課後。
陸上部でも亜紀は実力を出せていなかった。
亜紀はしゅんとしてコンクリートに腰掛けていた。
「亜紀…さっきから変だよ。どうかした?」
智世が亜紀の隣に腰掛け、声をかけた。
「………」
「亜紀?」
亜紀は泣いていた。
「どうしたの?調子でも悪いの?」
と智世が聞くと亜紀はゆっくり首を横にふった。そして、
「サクちゃんの誕生日にね、手料理プレゼントしようと思ったの…。でも、あんなできだから…。」
「亜紀が作ったんだ、あのカレー…」
「…………」
「…別に手料理じゃなくてもいいじゃん。他にもあるじゃん、いろいろ。」
「それじゃなきゃ駄目なの!なんか、どうしても手料理作ってあげたくて…」
「……………」
「……………」
「よし。亜紀。今度の日曜、私が料理教えてあげる!」
「え?」
「…嫌?」
「…………ううん!教えて、智世!」
亜紀はいつもの調子で智世に言った。智世の表情も明るくなった。

亜紀は智世に料理を教わることになった。




――続く
...2006/04/22(Sat) 14:24 ID:QEmz/kyU    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:にわかマニア
 新作は「料理ネタ」で来られましたか。
 食べるところが無くなってしまうくらい厚く切るイモの皮の剥き方に「強制終了」をくらった夢島のシーンは,シリアスな物語の中にあって,ちょっと笑える一コマでしたね。
 たー坊さんのところの物語の方は,それから10年近くの歳月を経ていますから,みっちり「修業」を積んだようですが,この物語のように1987年の秋の時点だと,「ルーが塊のまま入ったカレー」というのも「さもありなん」という感じですね。
 もっとも,原作に登場する亜紀は,お弁当持参のデート(映画やドラマではカットされた動物園)を提案し,実行していますから,そこそこの腕前ではあったようです。ただし,原作の夢島のメニューはレトルトものと生野菜という組み合わせでしたから,食事は二の次といった感じでした。
 ただ,ドラマの亜紀は,原作と違って優等生という描き方をした分,どこか「苦手科目」があった方が人間臭くていいという判断があったのかもしれません。このあたり,手先は器用だけど,どこかぬけたところがあるサクと「不器用」さの対比という効果も計算していたのかもしれませんね。
...2006/04/22(Sat) 17:46 ID:/47GJu8I    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:朔五郎
うーむ、着眼点が素晴らしいですね(^^)
ところで、ドラマ中では智世の「腕前」は披露されていなかったと思いますけど、家が商売をやっている場合、母親の代わりに食事の準備をする、などということもあるかもしれませんね。そのことも含めて、先の展開を楽しみにしております(^^)
...2006/04/22(Sat) 23:48 ID:niZjhlcc    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:雑種犬

にわかマニアさん
今回の話は、家庭科の教科書を見ていたときに思いついたものです。成績優秀、運動神経抜群の優等生タイプの亜紀が唯一苦手とする「料理」をサクにプレゼントと言うのも面白いかなと思いました。


朔五郎さん
私の家は商売を営んでおりませんので分かりませんが、おそらく店を営む家庭では子どもが親の代わりに食事を準備することもありえるでしょうね。
智世は亜紀よりは料理できるでしょう。(笑)
...2006/04/23(Sun) 15:58 ID:QqopDszo    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:たー坊
お疲れ様です。
新シリーズといった感じですか?
非常に楽しみにしておりました(笑)

私のストーリーでも智世が亜紀に料理を教えたことはあるのですが、その時は朔に合格点の料理を振舞うことができました。
雑種犬様のストーリーではどうなるか!?
非常に楽しみです。高校生活をエンジョイしながらお書きになってください。
...2006/04/23(Sun) 19:49 ID:AlAkXc3g    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:祖父がカメラマン
御無沙汰しています。
自分の執筆活動で手一杯で、今まで他の方の作品にコメントの一つも出来ませんでしたが、ようやく目処がついたので出発まで色々カキコさせて頂きます。

再開作品、早速拝見しました。
朔も亜紀も自然体でとてもいいなぁ…と微笑ましい気持ちで満たされました。
私も創作してる時、極力心掛けてはいるのですが、やはり当時のふたりと倍くらいの年齢差がある為、上手く描き切れませんでした。
そういう点、っぱり、リアル高校生は強いなぁ…(羨)

これからも柔軟な発想と温かい視点の作品を期待しております。高校生活と共に頑張って下さい!
...2006/04/23(Sun) 20:25 ID:fvkGpkxo    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:ぱん太
雑種犬さん

 こんばんは(おはようございます?)。一度寝たのですが1時過ぎに目が覚めてしまい、未だ寝付けません。ま、明日、昼寝でもします。入院中の身なので、時間を弄ばしている今日この頃でございます。
 諸々、励ましのお言葉やフォローのお言葉をいただきまして、ありがとうございます。ホントに感謝しております。
 「リアル高校生」の物語ってのはスゴイですねぇ〜。ホントにある意味リアルです。先日、僕の義姉が雑種犬さんと同じ高校の出身である旨お伝えしましたが、僕の初恋(なのかな?)相手も、同じ高校でした。彼女は心臓を患っていて、某J医大病院への入退院を繰り返していて、1年の半分は病院から通学していたようです。小学生の時に知り合って、僕も先天性の心臓病だったので、打ち解けて話すようになり、なんとなぁ〜く好きになった感じでした。彼女は僕より1歳年上でしたが、彼女が高校3年生の11月に、心不全で亡くなりました。心臓移植が出来ていれば、普通に女子大生になって、就職して、結婚していたかも知れませんね。自分が先天性の心臓病だったこともありますが、彼女の「死」をもってして、僕は心臓外科に進んだのだと思っています。

 どうやら、雑種犬さんとは微妙に共通する話題がありそうですね。でも、1990年のお生まれなんですよね。僕の1990年は大学に入った年です。人生結構早く流れますね。最近は加速度的に進んでいる気がします。ところで、雑種犬さんの高校は、まだ私服ですか?県内唯一の私服高校、是非是非守っていただきたいですね。

 では、次回作を楽しみにしております。
...2006/04/24(Mon) 03:50 ID:lq1imHO.    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:雑種犬

たー坊さん
そういえばたー坊さんの物語でもそんなシーンがありましたね。かなり前の方ですよね。
それなりの内容には仕上がっていますので、乞うご期待!…ちょっぴり自身ありませんが……。
たー坊さんも頑張ってください!


祖父がカメラマンさん
お久しぶりです。
確か海外赴任されるんですよね?(間違ってたらごめんなさい…)おめでとうございます!
祖父がカメラマンさんの作品のサクと亜紀も新たな道を歩きはじめましたね。読んでいると微笑ましいです。
幸せなサクと亜紀の姿を自身もって描いていってください。楽しみにしています。


ぱん太さん
改めて手術成功おめでとうございます。
昼寝…うらやましい……。授業中、いつ指名されるか分からないので眠くても眠れません…(泣)……基本的に授業中は寝てはいけないんですが…
給食前はお腹がぐーぐー鳴って大変です……
亜紀のセリフどおりですね…その女性の存在があったからこそ、今心臓外科医として頑張るぱん太さんがいらっしゃるのだ、と思います。これからも頑張ってください。
私は正しく言えば1991年生まれです。学年内では若い方ですね。
私の高校は未だに私服です。…式や写真撮影をするときは正装を着ます。結局、その正装も各自が自由に用意するので、スーツの人もいれば、制服のようなものを着る人もいます。スカートだったり、ズボンだったりもします。
これからもお体に気をつけて頑張ってください。
...2006/04/24(Mon) 18:56 ID:IMjRxDT6    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:ポポ
>今は希望でいっぱいです

そうだ!!!その意気だ!!!頑張れ〜!!!
高校生活を楽しく過ごせるよう、ずっと応援してますよ。
とても可愛らしい新作の続きも楽しみに待ってます!!!
...2006/04/27(Thu) 12:45 ID:grF7wDCU    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:ぱん太
雑種犬さん

 こんばんは。
 やっと退院が見えて来た夜更かしの不良患者@アホ外科医です。
 入院中は結構暇なので、皆様の物語をヒタスラ読んでおります。皆さん、発想力と文才がスゴイですね。僕には論文かノンフィクションしか書けません。要は資料が無いと文章が書けないということですかね。留学から帰って来たときに、学生時代のバイト先(新聞社)の上司から「ぱん太君、半生を本にしてみたら。僕があとがきを書いてあげるから」と言われて、間も無く3年。未だに書けていません。癌であることが発覚したときも執筆を薦めて下さいましたが、こちらも手付かず。就職すると、意外に時間が無いもんです。「なら、暇な今に書け!」と言われそうですが、どう書き出して良いものやら、何とも難しい。つくづく理系人間だなと思う今日この頃です。
 学校が始まって諸々大変だとは思いますが、今後も楽しみにさせていただきますね。

 ではでは。
...2006/04/29(Sat) 01:16 ID:bnJ/fHPg    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:雑種犬

みなさんお久しぶりです。
いろいろ事情があってしばらく書込みができませんでした。申し訳ありません。
また更新が遅れると思いますがこれからもよろしくお願いします。

ポポさん
応援のメッセージ、ありがとうございます。
上にも書いたとおり、更新が遅れることがまたあるとおもいますが、きちんと一つ一つの物語を書いていきたいと思います。
これからもよろしくお願いします。


ぱん太さん
もう今ごろは退院していらっしゃるのでしょうか?とにかく、ご回復おめでとうございます。これからも元気に頑張ってください。
長い文章の書き出しは難しいですよね。私も入試のとき作文の書き出しをどう書けばいいのか迷いましたよ。
学校、いろいろ大変です。でも楽しいです。
これからもよろしくお願いします。
...2006/05/09(Tue) 19:56 ID:UuOMCHSo    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:雑種犬

亜紀の挑戦〜サクへの贈り物〜
第3話「忍び寄る計画」


「お疲れ様でしたー!!」
陸上部員達の元気な声が宮浦高校の校庭に響いた。それと同時に部員達はそれぞれ散っていった。
亜紀と智世は当番で器具を片付けていた。
「…亜紀はカレー作ってあげるの?」
と智世は亜紀に聞いた。
「…うー……何か自信ないから……」
と亜紀はハードルを倉庫にしまいながら言った。その表情は少し寂しげだった。
「じゃあ何がいい…」
「わかんない」
亜紀、即答。
智世は自分の質問が言い終えていないのに即答した亜紀を見て思わずずっこけそうになった。
「どうしたの智世。」
亜紀本人は智世が転びかけた理由に気付いていない。
「あきぃ〜、ホントに作る気あるのぉ〜!?」
「あるよ!!」
亜紀は思わずムキになって大声を出した。その表情は真剣そのものだった。サクのことになるとこんなに真剣になるんだぁと智世は少し感心した。
「ごめん…変な事言って…」
智世は亜紀に頭を下げて謝った。
「智世、さっきから変だよ?」
しかし、亜紀はまたその理由を理解していない。
智世は改めて呆れた。
「じゃあさ、サクに聞いてよ。」
「?」
「何食べたいか。」
「あっ!そっか!サクちゃんに聞けばいいんだ!」
亜紀のテンション、↑。
智世は我が子を見るような、そんな表情で、大喜びしている亜紀を見つめていた。
そこに、
「亜紀!!」
サクの声が聞こえた。
「あ、サクちゃんだ!」
亜紀は一瞬でサクの声がしたほうを勢いよく振り向いた。
「亜紀、ファイト!」
智世は亜紀の背中を押した。
「うん、頑張るぞよ。」
と亜紀は答え、サクの方へ駆けて行った。智世はその後姿を微笑ましげに見つめていた。
そして後ろを振り向いた。
「……げ」
そこにはハードルの山、クラウチングスタートに使う器具の山、その他多くの陸上器具が残っていた。
「亜紀――――!!手伝ってから帰ってよ―――!」
智世の叫びが校庭にこだました。しかし、亜紀からの返事は返ってこなかった。


そんな智世の事も知らずに亜紀は嬉しそうに、自転車を漕ぐサクの背中に体重をめいいっぱいかけて寄りかかっていた。
「…重いよ、亜紀。」
サクは亜紀の全体重を背中に受け、とても苦しそうな表情で自転車を漕いでいた。
「やだよっ♪」
しかし、亜紀は言うことを聞かない。いつものことだ。
サクは軽くため息をついたが、諦め、自転車を強く漕いだ。

数分後―――

「サクちゃん、何か食べてみたいもの、ある?」
と亜紀はサクに聞いた。
「え?どうしたの、いきなり……」
サクは亜紀のいきなりの質問に驚き、逆に聞き返した。
「いいから!」
亜紀は誕生日プレゼントのつもりで手料理を作ってごちそうするなどとは言えず、早く言うように促した。
「えーと……」
サクはいきなりの質問に戸惑った。
さすがに無理があったなと思った亜紀は、
「じゃあ今週の日曜日までに考えておいて。」
と言い、自転車から降りた。亜紀の家に着いたのだ。
そして、亜紀は帰っていった。
その後姿をサクはボーっとして見ていた。


その夜
サクは布団にもぐりこんでミュージック・ウェーブを聴いていた。
「何がいいかなぁ…」
サクは亜紀の質問の答えを、帰ってからずっと考え込んでいた。
「どうせなら俺が食べたことのないようなものがいいな…」
とサクは再び呟いた。その時、ある言葉が浮かんできた。

――――――――――――――――――――

屋上でテープの交換日記を聞くサク。
「こんばんは!!廣瀬亜紀です!!」
あまりの大音量に、サクはあわててウォークマンのイヤホンをはずし、音量を下げようとした。しかし、
「フフッ…びっくりしたでしょ?」
亜紀の罠。
「7月3日。今日の晩御飯、うちはコロッケでした。家のコロッケって、お父さんの好みでカニクリームなの。だから、普通のじゃがいものやつ、あまり食べたことないの。………」
にやけるサク。

――――――――――――――――――――
にやける自分を思い出してあわてて首をふるサク。
それより、その亜紀のセリフを思い出したサクは亜紀の家のカニクリームコロッケを食べてみたい、そう思った。
さらにもうひとつ、アイデアが浮かんだ。



翌日
登校した亜紀は上履きを下駄箱から取り出した。
亜紀の下駄箱の中には茶色い、くしゃくしゃのしわがついた袋が入れられていた。

亜紀は屋上でウォークマンのスイッチを入れた。
「松本朔太郎です。
 亜紀、俺、決めたよ。………お主の家のカニクリームコロッケを食べたいぞよ!あ、食べるのはいつでもいいから。亜紀の都合に合わせて。」
それを聞いた亜紀の顔にはサクが初めてテープをくれた、告白する前と同じような笑顔があふれていた。

「よし、智世に報告するぞよ!」

亜紀はウォークマンを自分のカバンに詰め込むと、教室へ走っていた。


――――――――――――――――――――

―――続く


久々に書き込みました。
...2006/05/12(Fri) 19:03 ID:/5J6UO3A    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:朔五郎
お久しぶりです。

なんと、カニクリームですか(^^)
サクは喜ぶだろけど、カレーより難しいかも(^^;;;
猛特訓して、サクを喜ばせてあげてください。
...2006/05/12(Fri) 19:09 ID:2G..k0tQ <URL>   

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:雑種犬
朔五郎さん
お久しぶりです。
亜紀の家の定番メニューで勝負してみたいと思いましたんで…
他の方の作品に似てしまうと思いますが、よろしくお願いします……
...2006/05/13(Sat) 13:24 ID:DMZU41h.    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:SATO
「廣瀬家の十八番」カニクリームコロッケでいよいよ勝負ですね。
綾子をうまく乗せて手伝ってもらえるといいですね。
...2006/05/14(Sun) 13:22 ID:c2hrzeMo    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:雑種犬

SATOさん
お久しぶりです。
私はいつも前もって展開を考えずに、ぶっつけ本番で書き込んでいます。なので、綾子が登場するかしないかは書き込むときにならないと分かりません。
これからも頑張って執筆したいと思いますので、よろしくお願いします。
...2006/05/14(Sun) 19:08 ID:PVOhP/fk    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:雑種犬

亜紀の挑戦〜サクへの贈り物〜
第4話「亜紀の猛特訓」


日曜日
亜紀はカニクリームコロッケの材料入りの袋を提げて智世の家に入った。
「おまたせ〜…」
亜紀は部屋に入ると袋を机の上にどさっと置いた。
「じゃ、早速……」
「始めよっか。」
まだ亜紀が到着してから間もないうちに料理の特訓が開始された。
亜紀と智世はまずエプロンを身に着けた。しかし…
「あれっ…あれ……?」
亜紀はエプロンの後ろのボタンをなかなかつけられずにいた。
「………………」
先が思いやられる、そう思う智世だった。



1.ホワイトソースを作る

「亜紀。まずバターを溶かして。」
智世は作業をする亜紀のアシスタントをすることになった。
亜紀は言われるがままにバターを鍋の中で溶かし始めた。
「次に小麦粉を加えて少し炒めて。」
と智世が言うと亜紀は鍋の中に小麦粉をどさっと加えた。
数分後……
「次に牛乳を入れて。」
「おぅ。」
亜紀は鍋に牛乳を勢いよく入れた。
「そしたら弱火で、手早くかき混ぜて。」
「うん。」
亜紀はコンロをぐるっと回し、勢いよくかき混ぜた。しかし…
「亜紀亜紀!!逆逆!それじゃ強火だって!!」
亜紀はコンロを逆に回し、強火にしてしまっていた。
その後、亜紀はかき回す勢いを強めすぎて、ソースの量は半分程度になった。そのうえ、一時強火にしたため、色も少々汚かった。
「亜紀、塩コショウ加えて味付けして。」
「うん。」
亜紀は鍋に塩コショウを加えた。
ようやく完成。おそらく、通常の二倍ほどの時間がかかっているだろう。


2.具を切り、炒める

「亜紀、野菜切って。」
「うん。」
亜紀は玉ねぎ・セロリなどをみじん切りにした。当然、危なっかしい切り方の連続だった。
そして、カニの身をほぐした。
「あとはバターで具を炒めて。」
「うん。」
亜紀はバターを鍋に加え、野菜類を入れた。
「野菜がしんなりしたらカニ入れて。」
「うん。」
亜紀は、野菜がしんなりするタイミングを智世に教えてもらい、何とかカニを入れるのに成功した。
「次はさっきのホワイトソースを加えて。」
「うん。」
亜紀は先ほど作ったホワイトソースを加えた。これで完成。
「あとは数時間カニクリームを冷やす。」
「そんなに手間かかってるんだ、カニクリーム…」


3.クリームを取り出し、衣をつけ、揚げる

数時間後
「また勝った―――!」
「あー!亜紀強いよぉ、オセロ!」
「だっていつもサクちゃんと対戦してるもん♪」
「あいつオセロ強いの?」
「…正直なところ、弱い……」
「だよね。」
「あ、智世。そろそろ?」
「あ、そうだね!」
オセロをしていた2人は冷蔵庫に駆け寄っていった。

「あとはクリームをちょうどいい大きさに分けて、『小麦粉→溶き卵→パン粉』の順につけて揚げるだけ。170〜180℃で。」
「うん。」
亜紀は智世に言われた順に衣をつけた。そして、油で揚げた。
その間も智世の手助けが多くあった。

そして―――
「あとは野菜と一緒に盛り付けて…」
「完成っ!」
ついにカニクリームコロッケが完成した。気になるそのお味は……
「美味しい♪」
「意外と出来がよかったねぇ」
大成功。
「これで大丈夫だね!」
「…本当に大丈夫?」
「大丈夫、だいじょうぶっ!ありがとう、智世!」
亜紀は自信満々だった。

そして、サクの誕生日を迎えた―――


――――――――――――――――――

―――続く
...2006/05/14(Sun) 20:01 ID:PVOhP/fk    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:たー坊
雑種犬様

お疲れ様です。
いつのまにやら新編がスタートしていたのですね。
一読者として、とても嬉しい限りです。
果たして、朔が気に入るのか気になります。
...2006/05/14(Sun) 21:52 ID:Y.JyDB5A    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:ポポ
>雑種犬様へ

お久しぶりです!!!
とっても楽しいお話、拝見させて頂きました。
亜紀が苦手なお料理を頑張ってますね。微笑ましいというか、なんだか手伝ってあげたい気持ちになっちゃいました(^^ )

主婦なので料理のことだけは詳しいです。何かわからないことがあったら聞いてください(o゜▽゜)o
続編も期待してます、頑張ってください!!!
...2006/05/16(Tue) 17:03 ID:WpWypA92    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:双子のパパさん
お久しぶりです 雑種犬様

 カニクリームコロッケですか。あの包丁使いの亜紀には、ハードル高いですね。ホワイトソースが難しいですよね。気をつけないとブラウンになってしまいます(笑)朔はおいしく食べることができるのでしょうか?楽しみです。
 高校生活はいかがでしょうか?そろそろ中間テストの時期でしょうか?何かなつかしい響きがします。私の場合、勉強もせず、テスト期間中は早く帰れて、連れと遊びに行った思い出がよみがえるのですが・・・。

 これからもお邪魔させていただきます。充実した高校生活をおくれるように、がんばってください!!
...2006/05/17(Wed) 16:41 ID:RTEu2Clw    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:雑種犬

たー坊さん
お久しぶりです。
新編が始まったものの…来週中間テストがありますので、更新がここのところ進んでおりません。時間をうまく使って更新していきたいと思います。
これからたー坊さんの作品をまとめて拝見させていただきます。


ポポさん
お久しぶりです。
書いている私自身も、物語を頭の中で映像化するとほほえましく思います。
お言葉に甘えて、もし分からないことがあったら質問させていただきますね。


双子のパパさん
カニクリームは見る限りではそんなには包丁は使わない、というのがラッキーですね。その分…ホワイトソースには注意が必要ですね。
ホワイトソース→ブラウンソース…一度やってみたい気もします。
来週中間テストです。昼食を食べずに下校します。そのかわり、三日連続です。お昼までで終わりだとついつい遊びたくなるのでしょうね……勉強しないと…
どんどんお邪魔してください♪書き込みを楽しみにお待ちしています。
...2006/05/18(Thu) 18:40 ID:C7h56tqY    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:たー坊
中間テストですか?
それはそれは大変ですね。
将来的には大学推薦に大きくかかわるものですから、決して手は抜かないで下さい。

私のストーリーは息抜きの時間にでもお読みいただければと思います。
...2006/05/19(Fri) 23:42 ID:Geplekg2    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:kaku
雑種犬さん

初めまして、こんばんわ。雑種犬さんのストーリー一気に読まさせてもらいました。実は最近このサイトを見つけたので・・・笑
〜喪失からの再生〜では途中、涙を流しながら読んでいました。今回の亜紀の挑戦〜サクへの贈り物〜
もすごい楽しんでよんでいます。
中間テスト大変だと思いますが頑張ってください。次回を楽しみに待っています。
...2006/05/24(Wed) 01:31 ID:9YvEjVoE    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:雑種犬

たー坊さん
こんばんは。
ごめんなさい、……手抜きしすぎてしまいました……やはり予習・復習は日ごろからちゃんとやっておかないといけませんね…
これからもたー坊さんの作品、読んでいきたいと思います。感想はなかなか書き込めませんが… 


kakuさん
はじめまして。
ご愛読ありがとうございます。これからもいろいろな作品を読んで泣いたり笑ったりしてください。
これからもよろしくお願いします。
...2006/05/24(Wed) 19:16 ID:uuz9Utbw    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:ぱん太
雑種犬さん

 こんばんは。
 職務に復帰して2週間余り。漸くペースが掴めてきたところです。体力的な回復は、まだまだ先ですねぇ〜。改めて、「外科医って体力勝負だよ」と痛感しています。
 中間テストは、もう終わったのでしょうか。高校に入って初めての中間テスト。焦りますよねぇ〜。僕は、夕方寝て、早朝に起き出し、その日のテストの中身を強制的にアタマに突っ込むタイプでした。テストが終われば、その記憶は、隅っこのどこかに格納される感じでしょうか。中学生の頃から、テスト勉強は、ほぼ一夜漬けでしたね。

 さてさて、関東も梅雨に入ってジメジメとした季節がやって来ました。体調に留意して、高校生活をエンジョイしてくださいね。

 ではでは。

ぱん太
...2006/06/16(Fri) 02:13 ID:vw4fS0WM    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:雑種犬
みなさんお久しぶりです。


ぱん太さん
遅くなりましたが、ご復帰おめでとうございます。
中間テストは終わりました。中学校のときと比べて点数がガクッと下がり、一時期はショック、ショックな日々を送っていました(笑)。
つい先日、校内模試もありました。さらには、来週の月〜水曜日にかけて第2回定期テストがあります(泣)。

「亜紀の挑戦〜サクへの贈り物〜」ですが、今度連載を開始する新しい長編小説の中に取り込みたいと思いますので、結末はまた後ほど物語の中で書いていこうと思います。長く待たせた上、勝手な判断を下してしまって、申し訳ありません。

上にも出たように、今度新しい小説を連載したいと思います。
スタートはできれば7月2日にしたいと思います。多くて週一度の更新、遅くても一ヶ月に一度は更新したいと思っています。
...2006/06/27(Tue) 21:24 ID:DCWxAukM    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:雑種犬

世界の中心で、愛をさけぶ
〜もうひとつの純愛物語〜

第1話





少年・松本朔太郎(以下:サク)は住みなれた宮浦の町の中を全速力で駆け抜けていた。自分が通う高校、周囲を田んぼが囲む道、小さな山々が次々と視界に映る。そして、走り抜けたその先には、沖縄には及ばないが、青々とした海が広がっていた。
サクは目の前の堤防の坂を一気に上った。そして、堤防の端まで走り、どこまでも広がる、きらきら光る海を見つめていた。
すると、誰かがサクの肩をとんとんとたたいた。思わず振り返るサク。そこには少女の姿があった。
顔はよく見えなかったが、制服は宮浦高校のもので、髪は後ろでしばっていた。
すると、少女は「びっくりした?」とサクに聞いてきた。
サクはそりゃびっくりするだろう、と思い少し笑って「したよ。」と答えた。
しばらく沈黙した。少女が海を見つめているのでサクも海を見つめてみた。さっきより海が輝いて見えた。
しばらくすると、少女はサクのほうを向き、手を差し出した。
サクは何がなんだか分からなかったが、とりあえず手をつないでみた。
すると、少女はサクの手を握ったままゆっくりと歩き始めた。サクもつられて歩き出した。
2人の先にはきらきらと黄金ともいえる光を放つ太陽が見えた。何かを祝福しているようだった………



「サク!起きな!!もう12時だよ!」
下から大きな怒鳴り声が近づいてきた。それに反応してサクはびくっと飛び起きた。
そこはサクの部屋だった。
CDや雑誌、漫画、学校で配布されたプリントなどが部屋のあちこちに散乱していた。
「……………夢か」
サクはぼさぼさになった髪をさらに掻きながら言った。先ほど見た夢がぼんやりと頭に残っている。
すると、サクの部屋のドアがバンと開けられた。そこにいたのは、サクの母・富子だった。さっきの声の持ち主だ。
「今何時?」
サクは大きなあくびをしてから聞いた。
「さっきも言ったでしょ!12時だよ、12時!」
「へっ!」
サクの頭が一気に覚醒した。
サクはあわてて制服に着替えて通学カバンを手に取り、家を飛び出した。
「サク!今日は……!」


サクには富子の声も届かなかった。


1987年 6月


サクは自転車を出せる限りの力を振り絞ってこいでいった。
サクは祖父・謙太郎が営む「松本写真館」の前を通り過ぎようとしていた。そのとき、
「おいサク!」
誰かの声が聞こえた。サクは自転車の急ブレーキをかけて振り向いた。そこには彼の幼馴染・ボウズとスケちゃんがいた。2人とも制服ではなく私服だった。2人は不思議そうな目でサクを見つめていた。
サクは自転車をその場に止めて2人の元に向かった。
「おい!何のん気に居座ってるんだよ!もう12時だぞ!谷田部の鉄拳が……あれ……」
怒鳴りかけたサクはふと考えてみた。おとといが金曜日……ということは…
「きょ…今日ってまさか……」
サクははっとした。
「そうだよ…お前さん…」
「日曜だって。」
今日は日曜日だった。サクは寝ぼけていたのだろう。


「ほんとお前さんは昔からおっちょこちょいだねぇ」
「……ほっといてくれよ」
サク・ボウズ・スケちゃんは防波堤に移動し、釣りをしていた。サクの夢に出てきた堤防とは別の場所だ。
曜日を間違えたサクをボウズとスケちゃんがからかっていた。サクは恥ずかしそうにうつむいていた。

3人は取った魚介類を3等分して袋に入れ、再び松本写真館に向かっていた。
「よっ!お寝坊さん!」
「うっせーよ、ボウズ!」
「ボウズって言うな!」
またこんな調子だった。こんな風にやっているうちに3人は写真館に到着した。
「ちぃ〜すっ!」
スケちゃんがドアを開け、写真館に入った。サクとボウズも後に続いた。
「おぅ、龍之介〜!お、サクにボウズもか。」
中にいた謙太郎は3人に声をかけた。
「爺さんの好きなもん、取ってきたぜ」
スケちゃんがサザエの入った網袋を謙太郎に見せた。
そのとき…
「こんにちは〜」
後ろから新たな客が入ってきた。それは…
「げっ!来た来た!絶叫マシーン!」
「うっさいわよ!」
サクたちの幼馴染、智世だった。写真館に彼女独特(?)の大声が響いた。
さらにその後ろには…
「…廣瀬?」
サクたちのクラスメートである亜紀がいた。いつもは髪をしばっているが、私服だと髪をしばっていないようだった。
「お爺さん、この前の写真、できてます?」
智世が謙太郎に尋ねた。
「おう、できてるよ」
謙太郎はそういうと、引き出しから品物を取り出した。
「ありがとうございます。」
智世は出来上がった写真を受け取り、亜紀は謙太郎にお金を払った。
「……松本君。何で制服着てるの?」
亜紀はサクの服装を見て不思議そうにたずねた。
サクはあわてて腕で服が見えないように隠したが丸見え。亜紀はそんなサクを見て笑った。
「こいつさぁ、今日学校行くと思い込んでたんだよ」
ボウズがサクを指差して言った。
「そうなんだ。」
亜紀、普通に納得。
「行くよ、亜紀。」
智世は亜紀に声をかけた。
「うん。」
と亜紀も答え、智世の方に駆け寄った。そして2人は去っていった。

「サク。」
謙太郎が急に声をかけてきたのでサクはあわてて振り向いた。
何かと思うと、謙太郎は机の上にある七輪を指差した。

サクは外でサザエや魚を焼いた。うちわで扇ぐとたまに火花がバチッとはねた。



「そうなのよ〜サクったらねえ」
夕飯の食卓では富子がサクの失敗談を話してしまい、サクは妹・芙美子に大笑いされ、父・潤一郎に鼻で笑われた。
サク、またまたうつむく。

6月の第一週の日曜が終わった。


翌日
サクは自転車に乗りながら、周囲に宮浦高生がいるのを確認して学校に向かった。

サクは自転車置き場に自転車を置き、鍵を抜いた。
すると、チャイムが鳴り響いた。あまりにも慎重に登校してしまったので、遅くなってしまったらしい。
「やべっ!」
サクは慌てて昇降口に向かった。

その頃…
亜紀もまた遅刻を免れようと走っていた。廊下を走っていると、亜紀は何かを踏んだような感じがした。見てみると、自転車の鍵のようなものが落ちているのを発見した。
「誰のだろう…これ。」
亜紀は一人でつぶやいた。
「まあ。後で生徒会に届ければいっか。」
と亜紀は鞄に鍵を入れ、走り出した。すると、誰かの背中にドンとぶつかった。
「す…すいません!」
「……すいません!」
2人の謝る声がかぶった。亜紀がぶつかった相手はサクだった。
サクは何かもぞもぞしていた。
「松本君…どうしたの?」
亜紀は気味悪そうにサクに聞いた。
「ああ廣瀬。……なんか、鍵がなくて……」
「何の?」
「自転車。」
それを聞いて亜紀ははっとした。そして、鞄からさっき拾った鍵を取り出し、「これ?」とサクに聞いた。
それはまさにサクの鍵だった。
「あ!これ…どこで?」
「すぐそこの廊下……」
「ありがとう…………」
サクは亜紀から鍵を受け取り、お礼を言った。
「あ、もうこんな時間だよ、行こう。」
亜紀が時計を見て促した。
「え!」
サクも自分の時計を見て慌てた。そして、2人で階段を駆け上った。

亜紀は昨日のサクのドジ、鍵をなくしてもぞもぞするサクに興味を持ち始めていた。


亜紀は陸上で鍛えた脚力でぎりぎり間に合ったが、サクは見事に遅刻した。



続く
...2006/07/02(Sun) 10:57 ID:Rh.1I2Qk    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:clice
雑種犬様
こんにちは、新しいお話読ませて頂きました。素敵な書出しですね。
ちょうどパソコンの前で唸っていたところ、サイトを覗いて「もうひとつの・・」のタイトルにご無沙汰も省みずつい親近感を覚えてしまいました。
さりげないけど、亜紀のいるもうひとつの世界の物語の決定版になるかも・・・楽しみですね。
...2006/07/02(Sun) 13:07 ID:j5O7L6eU    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:雑種犬
cliceさん
こんにちは。
タイトルがなかなか思いつかず、「もうひとつの」の部分はcliceさんの作品を参考にさせてもらいました。勝手に取ってしまい、申し訳ありません
この先どんな展開になるのか分かりませんが、よろしくお願いします。
...2006/07/02(Sun) 16:35 ID:Rh.1I2Qk    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:雑種犬

書き忘れ。
今日は亜紀の誕生日でした。私から亜紀へ一言。

Happy birthday!!

です。

今日書き込めてよかったです。
...2006/07/02(Sun) 16:44 ID:Rh.1I2Qk    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:たー坊
廣瀬亜紀の誕生日に”朔との出会い”という良いプレゼントができましたね。
次回も楽しみです。
...2006/07/03(Mon) 02:23 ID:t1r7zoFQ    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:雑種犬

たー坊さん
こんにちは。今回の作品ではサクと亜紀の出会いからできる限り忠実に書いていこうと思っています。
まぁ…楽しみにしていてください。
...2006/07/08(Sat) 15:53 ID:Yb8gBt3M    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:雑種犬

世界の中心で、愛をさけぶ
〜もうひとつの純愛物語〜

第2話



亜紀は大きな足音を立てて教室に飛び込んだ。まだ谷田部は来ていない。
「セーフ……」
亜紀は肩で息をしながら窓際の自分の席に着いた。
「まだ来てなくてよかったねー、亜紀。」
後ろの席の智世が声をかけてきた。亜紀は「うんうん。」と肯き、鞄の中の教科書やノート類を机の中に入れ始めた。
智世はふと廊下側を見た。教室の廊下側の端にはサクとボウズの席があった。
ボウズと、クラスの違うスケちゃんがいつものように陽気に話している。しかし、
「あれ?サク、まだ来てないんだ。」
智世の言うとおりサクはまだ自分の席についていない。それどころか、教室の中にもいない。
「サクって?」
亜紀は智世に聞いた。亜紀の頭の中には「サク」という名前はなかった。
「ああ、サクって言うのは……」
と智世が言いかけると、

「はーい!席について――!!!」
谷田部が教室に入ってきた。
すると生徒たちはばたばたと音を立て、慌てて自分の席に着いた。
騒がしかった教室も嘘のようにしんと静まった。

そして、谷田部が出席を取り始めた。
「……松本!!」

返事がない。クラス全員の注目がサクの席に集まる。そこにはサクでなく、スケちゃんが座っていた。
「大木!!あんたの席はそこじゃない!!」
「へっ!へいっ!!!」
谷田部に見つかったスケちゃんは慌てて立ち上がり、教室から出て行った。
廊下から「あ〜!みつかっちた…」というスケちゃんの嘆きが僅かに聞こえた。
智世は思わず吹き出していた。

すると、スケちゃんとは別の足音が廊下から聞こえてきた。
それを聞いて谷田部はサクの行方を知った。
「す……すいませんっ……ぜーぜー…」
サクが苦しそうに息をして教室に飛び込んできた。
「何してたの?松本。」
谷田部が少々あきれたような顔で聞いた。
「あの、鍵、2回も落としちゃって………」
とサクは鞄から鍵を取り出そうと鞄を探った。しかし……
「あれっあれ?」
また鍵をなくしていた。その場に鞄を落とし、自分の体のあちこちを探るようにさわりまくった。
床には鞄から飛び出たノートや教科書が散乱した。
亜紀はしばらくサクに釘付けになっていた。無意識に。
「はいはい…もういいから松本、座って。」
谷田部は一回ため息をつき、サクに着席するよう促した。
「えー…あと学級委員……」

ホームルーム終了。


その夜

『次回のミュージック・ウェーブは「身近にいる放っておけないようなのん気者」、「身近にいる放っておけないようなのん気者」…』

亜紀は人気ラジオ番組・ミュージック・ウェーブを聴きながら勉強に取り組んでいた。
次回のお題を聞いた亜紀は思わずサクを想像した。そして思わず微笑んだ。


翌日
「亜紀!今日パパさんとこで食べてこう」
「うん♪」

亜紀は部活帰りに智世と一緒にたこ焼きパパさんでたこ焼きを食べていた。
「調子出そう?」
智世はたこ焼きをほおばって亜紀に聞いた。対する亜紀は無言で何かを書いている。
「何書いてんの?」
智世は口の中のたこ焼きをごくりと飲み込み、再びたずねた。
すると、亜紀は顔を上げた。
「あ。これ?葉書書いてるんだ。」
「葉書?友達に?」
「ううん。ラジオ番組。」
「ミュージックウェーブとか?そういうやつ?」
「うん。」
「何について書いてんの?」
「……ふふっ。秘密」
「教えてよー、亜紀!」
「やだよ」
すると亜紀は智世のたこ焼きを「うりゃっ」という感じで取り、頬張った。
「ああ!!亜紀!一個につき100円徴収!」
「ずるいよぉ〜!…しかも高っ!」
「問答無用!」
「あっ!私のたこ焼き!」
仲の良い亜紀と智世をパパさんは煙草を吸いながらほほえましげに見ていた。

そして、亜紀は智世と別れ、ポストの前に立っていた。
「ウォークマン、当たりますように……」
亜紀は手を合わせて拝んでいた。
その近くをボウズが歩いてきた。

――廣瀬だ………

ボウズは思わず近くの建物に隠れ、亜紀をしばらく見ていた。
亜紀は何度も何度も「ウォークマン、当たりますように…」と拝んでいた。


数日後の夜

亜紀は勉強の手を止めてラジオに全神経を集中させていた。

松本家
サクはお風呂から上がり、自分の部屋に入った。そこにはなぜか芙美子がいた。
「……何してんの?」
サクは思わず妹に質問した。
「ラジオ壊れたの。そうでもなきゃこんな汚い部屋入らないよ。」
妹はてきぱき答え、再びラジオを聴いた。番組はミュージック・ウェーブ。

「汚い……か…」
サクはぼーっと自分の部屋を見回した。


『お次の葉書は…ジュリエットさんからのお葉書です。よみますねぇ。…「私のクラスに、よく自転車の鍵をなくしてもぞもぞしている、ちょっぴり幼い、見ているだけで微笑んでしまうのん気者がいます。」…へえー、会ってみたいですね。…』

「お兄ちゃんみたいだね。」
芙美子が兄をからかった。
「……別人だろ」


廣瀬家
「あー…当たらないぃ……(泣)」
亜紀はいっきに集中力を失った。先ほどの「ジュリエット」は亜紀の投稿だったのだろう。
亜紀はふと時間割表を見た。
「やった!明日、村田先生の授業だ!」
そこには「生物 担当:村田」という文字があった。
喜んだ亜紀は再びシャープペンを持ち、勉強を始めた。もちろん、ミュージックウェーブを聞きながら。


翌日
いつものように谷田部が教室に入ってきた。しかし、いつもと違い、なぜか表情が暗かった。亜紀はそれが少し気になった。
そして、重い表情をした谷田部が口を開いた。

「学年主任の村田先生が入院されました。」

「入院!?」などと生徒たちは周りの生徒たちとがやがやと騒ぎ始めた。

生徒たちが騒ぐ中で、亜紀は呆然としていた。


――村田先生…昨日まではあんなに元気だったのに………?


亜紀は何か胸騒ぎがした。

そんな亜紀にサクが一番早く気づき、亜紀を見ていた。


先ほどまで雲ひとつなかった青空が、今はどんよりとした灰色の雲で満たされていた。
そして、雨がポツ、ポツと降り始めた。


―――続く



少しシリアスです
...2006/07/08(Sat) 16:58 ID:Yb8gBt3M    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:雑種犬

世界の中心で、愛をさけぶ
〜もうひとつの純愛物語〜


第3話


しとしとと振り続けた雨が放課後になってようやく降り止んだ。
「あーあ…これじゃ今日は練習ないね。」
と智世は横にいる亜紀に声をかけた。
朝から降り続けた雨の影響でグラウンドのあちこちに水溜りができていた。
「そうだね…」
亜紀はぼーっとして答えた。その表情からして、どこか元気がない。
「亜紀…どうしたの?」
智世はそんな亜紀の様子に気づき、声を再びかけた。
「村田先生…どこで入院してるのかな」
亜紀はゆっくりと口を開いた。
「そりゃ…このあたりじゃあ稲代総合病院しかないでしょ。入院するんなら」
「そうだね」
亜紀は笑顔を少し取り戻し、ゆっくりと歩き出した。
曇っていた空から太陽がゆっくりと顔を出し始めた。
湿ったグラウンドの土に暖かい太陽の日差しが差し込んだ。太陽の光を浴びる青々とした葉がとても輝いていた。

「でもねー、あの病院ができてからあたしんちの店が…あ、薬局だよ、薬局。上田薬局。あの病院のせいでうちの売り上げが……」
智世はべらべらと家庭の経済の悩みをぶちまけていた。
しかし…

「あれ…亜紀!どこ行ったの亜紀ぃぃぃぃ!!私の悩みも聞いてよ――――――!!」

亜紀の姿はなかった。


その頃、サクは自転車置き場で自分の自転車にまたごうとしていた。
すると、
「松本」
後ろから声が聞こえた。振り返ると谷田部が立っていた。その手には花束。
「あの…」
その少し異様な様子にサクは首をかしげた。
「あのさ。稲代総合病院ってわかるよね?」
「へっ…え、まぁ」


稲代総合病院
亜紀は稲代総合病院の前で乗ってきたタクシーから降りた。
「よし」
亜紀はゆっくりと病院に入っていった。


亜紀は401号室と書かれた部屋の前にたどり着いた。確かにそこには村田の名前が書かれていた。
亜紀は深呼吸をし、ドアをノックした。
「どうぞ」という懐かしい声が聞こえてきた。最後にあってから間もないはずなのになぜか懐かしく聞こえた。
「失礼します」
と言ってから亜紀はドアを開けた。
ドアを開けて中をのぞくと村田が驚いたような表情で亜紀を見ていた。
「廣瀬…さん?」
「あの…なんか、心配になっちゃって…思わず…来ちゃって…」
亜紀は緊張したような口調で村田に声をかけた。そんな秋に村田は優しい笑顔を向けた。
「こっちにいらっしゃい」
そして、ベッドの脇にあるいすに座るよう。手で促した。
亜紀はうれしそうな表情を浮かべ、棚に荷物を置き、いすに座った。
「調子…どうですか?」
「まぁまぁよ」
「よかったです…元気そうで…」
「でしょう?」
そしてしばらく言葉が見つからなくなり、病室は沈黙に包まれた。
そんな中、村田の表情は少し曇っていた。
「……………廣瀬さん」
そして、意を決したように口を開いた。

そのとき、コンコンとドアをノックする音が聞こえた。
「はい」
村田は話を区切り、ドアの外の訪問者に返事をした。
ガチャリとドアが開き、訪問者が中に入ってきた。それは…

「松本君…何してるの?」
花束を両手に抱えたサクだった。びっくりした亜紀は思わず立ち上がった。
「見舞い……谷田部に頼まれて…」
サクも亜紀がいたことに驚いておどおどと話した。
「そうなんだ。」
亜紀、納得。
「松本君もいらっしゃい」
村田はサクにも優しい笑顔を向けた。
サクは頭を下げ、置いてあったいすをずずずと引きずり、ベッドの横に置き、座った。
亜紀はサクが持ってきた花束を花瓶に入れ、棚の上に置いた。

亜紀は再びいすに座り、鞄から生物の教科書を取り出した。
「先生。いまいち分からないところが…」
亜紀は教科書をめくり、村田に質問した。村田も「どれどれ?」と教科書を覗き込んだ。そして、説明開始。
普段勉強とはまったく無縁と言えるサクには話の内容が分からず、サクはただきょろきょろと周りを見たり、スケちゃんから借りた雑誌や漫画を読んだりなどしてすごした。

話題はいつの間にか各々の家族や趣味などの話になっていた。
「松本君の朔太郎って萩原朔太郎の朔太郎なんだ」
「えっ?あの詩人の萩原朔太郎ですか?」
「そうそう」
「僕のお爺ちゃんが、子孫に作家の名前付けるのが趣味で」
「お爺ちゃんってこの前写真館にいたあの…?」
亜紀は以前写真を取りに来たときのことを思い出した。
「そう。あの人」
「そういえば廣瀬さんは何で亜紀なの?」
「お父さんが、私が恐竜みたいに逞しく育ちますようにって願いをこめて「白亜紀」から「亜紀」っていう部分をとったんです。」
「お父さんに感謝しなきゃね、廣瀬さん」
村田はにっこり笑っていったが、その瞬間、亜紀の表情が少し曇った。
亜紀はそれを隠すように、
「松本君って兄弟いるの?」
と聞いた。
「ああ。妹が一人。」
「名前、なんていうの?」
「芙美子。なんか生意気な奴でさ」
「いいなぁ妹がいて」
「廣瀬は一人っ子?」
「ふふっ。そう」
「ふーん」
「村田先生は兄弟とかいらっしゃるんですか?」
「東京のほうにねえ………」
日が暮れるまで3人は話し続けた。

そして、帰るときが来た。
「今日はありがとう、廣瀬さん、松本君。こんなに楽しく話したのは久しぶり」
村田は心からうれしそうにお礼を言った。
「先生!」
亜紀は突然大きな声を出した。
「また…来てもいいですか?」
と一呼吸置いて言った。
「いいよ」
村田はにっこり笑って答えた。
「あと、松本君。廣瀬さんをちゃんと送ってね。あ、もちろん松本君も来てもいいわよ」
「あ、はい…」
「いこ」
そして、亜紀とサクは病院を後にした。

サクと亜紀が出て行ったとたん、村田の表情はとても悲しげで、今にも泣き出しそうになっていた。



太陽が西に沈んでいき、宮浦の町の一日が幕を閉じようとしていた。




―――続く
...2006/07/15(Sat) 18:22 ID:qGBwC2Mo    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:clice
雑種犬様
書きたいストーリーの色というか、文章を通して雑種犬様がイメージしているであろうカット、カットの情景が自然に目の前に現れてきます。
ドラマの出発点となったあの時から、少しづつずれていくもう一つの世界・・ドラマの設定と雰囲気を細部まで忠実に再現しながら進んでいく物語にとても共感を覚えますし、上手く書かれるなと思います。
それが私達が好きになったドラマの中の彼らだと思いますし、だからこそもう一つの世界で生きていく彼らのことを、これからも雑種犬様の文章の中で見ていける気がします。
でも、それを書くという作業は大変ですけど、ちゃんと伝わっていると思いますよ。
...2006/07/16(Sun) 08:23 ID:Eo3TdiGE    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:雑種犬
cliceさん
こんにちは。
ドラマの雰囲気を崩さず、かつ自分自身の世界を広げていこうと思って書きました。それがきちんと伝わっていたようでうれしいです。
よりドラマの雰囲気に近づけるためにドラマと同じシーンも少し取り入れてみようかと思います。
お褒めの言葉も大変うれしく感じました。ありがとうございます
...2006/07/16(Sun) 17:35 ID:7exySnkE    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:雑種犬

世界の中心で、愛をさけぶ
〜もうひとつの純愛物語〜


第4話




空を見上げると夕焼けの朱色と空の空色が美しいグラデーションを作っていた。時間を経るたびに白い輝きを放つ星たちが次々と姿を現してきた。海の上を飛ぶ鳶はそれと逆に姿を消していった。
そんな光景を亜紀はぼーっと見つめていた。
周囲は虫の鳴き声、穏やかな波の音、そして、シャーという音が亜紀の耳の近くに聞こえていた。
とても涼しげな光景だった。
「ふあー…」
亜紀は大きなあくびをひとつして目の前の少年の背中に寄りかかった。
「うわっ…」
と急に少年が驚く声が聞こえた。それで亜紀はびくっと背中から顔を離した。
「ごめん、松本君…」
「急に寄りかかるからびっくりした…」
「ごめんごめん…」
少年――サクは亜紀を自転車の後ろに乗せ、送っているところだった。
「いいよ。疲れてるんだろ?」
とサクは亜紀に促した。
「うん…」
と亜紀は今にも寝てしまいそうな顔で答えた。そして、また大きなあくびをひとつし、サクの背中に再び寄りかかった。
サクと亜紀を、淡い黄色に光る月が照らしていた。


――廣瀬!

どこからか声が聞こえた。顔を上げてみる。そこには紺色の空で輝く大小さまざまな星たちが広がり、そしてサクがいた。
どうやら亜紀はあのあと眠ってしまったらしい。
「松本君…」
「宮高だよ。」
亜紀が聞く前にサクは答えた。そこはサクたちが通う宮浦高校の校門の前だった。のん気なサクが即答したということは亜紀がなかなか起きなくて困ったということになるのだろう。
「ごめん。」
亜紀は謝ったが、サクは「いいよいいよ。平気」と言った。
「じゃあバイバイ」
「…うん」
と挨拶を交わし、サクと亜紀は別方向に走っていった。
亜紀は体に暖かいぬくもりを感じていた。それはサクの背中に寄りかかったときの背中のぬくもりと同じだった。
「松本君って…暖かい」
と亜紀は夜空の下でつぶやいた。



別の日
亜紀は下駄箱で靴を履き替え、教室に向かっていた。
自転車小屋の横を通ると、体をもぞもぞと探るサクがいた。
「また鍵なくしたんだ…」
と亜紀はサクに聞こえないようにつぶやいた。そして教室に向かって歩き出した。が、思わず足が止まった。動かなかった。そして自然とサクの方を見つめていた。他のものは眼中になかった。ただ、亜紀にはサクの姿だけが見えていた。
胸が熱くなるような気がした。少しどきどきした。
「なんだろう…これ……」
亜紀は自分の胸を片手で押さえながら言った。


放課後
「ありがとうございました――」
陸上部員の大きな声がグラウンドに響いた。そして部員たちは各々の荷物を取りにいった。
「疲れたねー亜紀」
智世は亜紀に声をかけた。
「そうだねー」
亜紀もにっこり笑って答える。ふと横を見た。グラウンドの外でいつものようにサク・ボウズ・スケちゃんがアイスなどを食べながら練習風景を見ていた。
亜紀は朝と同じように、サクの姿を一心に見つめてしまった。ボウズがサクとスケの肩をバンバンたたいて何かさけんでいた。けれど、何を言っているのか分からなかった。

「亜紀…亜紀?」
智世の声が聞こえた。亜紀はびくっとして「な、何?」と聞いた。
「いや、何かぼーっとしてたから」
「あ、ごめん」
「いこ」
「うん」
智世が歩き出した。亜紀も後に続いた。
再び振り向いてみたが、もうサクたちはいなかった。


亜紀は智世と別れた後タクシーを利用して稲代総合病院に来ていた。もちろん村田の見舞いだ。

「こんにちは、先生」
「いらっしゃい」
亜紀は一度見舞いして以来1週間ほど、学校が終わるたびに村田の見舞いに来ていた。
「今日はどうだった?学校」
「今日もいつもと同じ感じで楽しかったですよ。智世がさっきたこ焼きをのどに詰まらせちゃったんですよ。大木君の話をしたら。もう一時はどうなるかと思いましたよ…」
「上田さんはおっちょこちょいだからねぇ」


『へっくっしょん!!』
帰り道で智世は大きなくしゃみをした。
「くしゃみもでかいんだな、ブース!」
スケがからかった。
「うっさいわよスケベ!」


「でも通りかかった松本君がお茶を差し出して強引に飲ませたら治ったんですよ〜。なんか松本君っていつもいつも鍵なくしてもぞもぞしてるかわいいところがあるのに、そういうところは頼りになるんですよ。で、あと、松本君、今日…」
いつの間にか亜紀の話題はサクのことで埋め尽くされていた。それを村田はほほえましげに聞いている。
「で、ラジオ番組に松本君の事書いて送ったらキーホルダー当たったんですよ!」
と亜紀は「Music Wave」と洒落た字で書かれたギター方のキーホルダーをうれしそうに見せた。
村田もうれしそうに話を聞いていた。
「廣瀬さんって松本君に恋した?」
いきなり村田が衝撃的なことを聞いてきた。
「…え?」
亜紀は思わず間抜けな声を出した。
「松本君のことを話してる廣瀬さん、とても幸せそうよ」
「そ、そうですか…?」
亜紀の顔は淡く染まった。そして、亜紀はキーホルダーを鞄にしまい、いすに座りなおした。
「松本君を見たとき、何か胸が熱くなって…なんか言葉で言い表せないような気持ちになったんです…これって恋でしょうか?」
と亜紀は改まって聞いた。
「私もね廣瀬さんとおんなじくらいのときだったかなぁ…生物学にとっても詳しい男の子がいたの」
「……」
「最初は何なんだろうなこの人って思ってたんだけど、彼にいろんな事教わっているうちに廣瀬さんが今言ったのと同じような気持ちになった。」
「恋…ですか?」
と亜紀が聞くと、村田は満足そうな顔でうなずいた。
「あ…もしかして、先生は彼の影響で?」
「そう。生物の教師になったのよ。彼には食物連鎖とか子孫を残す意味とかいろいろ教えてもらってこんなに面白いこと、教えないわけには行かないと思ってね。教えないないともったいないって」
「そうなんですか……素敵ですね」
「あなたと彼はきっと上手くいく。頑張れ!!」
「ふふっ…はい、頑張ります」
亜紀はにっこり笑って答えた。村田もにっこりと笑った。
「じゃあ、先生。また明日!!」
と亜紀は元気よく手を振り病院を後にした。

「頑張れ……廣瀬さん」
村田はつぶやいた。

廣瀬家
亜紀は部屋でミュージックウェーブを聞いていた。
亜紀は聞きながらキーホルダーを手に取り、
「青春かぁ…」
とうれしそうな表情でつぶやいた。



――続く
...2006/07/16(Sun) 18:38 ID:7exySnkE    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:双子のパパさん
 お久しぶりです 雑種犬様

 なかなか時間が作れず遠のいておりました。
新作まとめて拝読させていただきました。第一話につながる朔と亜紀たちの描写、亜紀の心情、とても上手く書かれていてすばらしです。感激しております。このままDVDに手をのばしてしまいそうです(笑)

 もう、一学期も終わりですね。途中テスト結果でショックを受けられたようですが…。
 学生の特権?楽しい夏休みをお過ごしください。

次回作、楽しみさせていただきます。
...2006/07/19(Wed) 12:58 ID:xdXK1unc    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:雑種犬
双子のパパさん
お久しぶりです。
以前国語の先生が「もしも小説を書くなら、『なぜなら〜だからだ。』というような説明で書くのではなく、できるだけ情景の描写を描いて自然に説明したほうが良い」とおっしゃっていました。それでできる限り情景描写を取り入れおてみよう!と思いまして、以前より描写を増やしました。
感激されるとのコメントを頂きまして、うれしいです。
DVDに手を伸ばすとまた世界の中心で、愛をさけぶを忘れられない日々が始まりますね(笑)。

テストの事はもう復活しました。
夏休み前の大きなイベントといったら学校祭だけですね。
あ、『どすこいロミオとジュリエット』はやりませんよ(笑)。

夏休みといっても課外が入ったり、宿題は多いなどで…少しテンションが落ちます……。

これからもよろしくお願いします。
...2006/07/19(Wed) 19:27 ID:AiAvkyo2    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:朔五郎
こんばんは。
誰もが知っているけど、誰も手をつけなかった 「村田先生」というキャラに注目する発想が 「違うなあ」 と感心してしまいます。
とてもおもしろいです。これからも楽しみしています。
...2006/07/19(Wed) 20:49 ID:ScFjZyHs <URL>   

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:雑種犬
朔五郎さん
とにかくドラマの舞台を鮮明に書きたかったので村田先生も登場させてみました。ほかの作品と違うところを出してみたいと言うのも村田先生登場の理由のひとつです。
ご感想、ありがとうございます
...2006/07/21(Fri) 21:11 ID:oQzsl01U    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:雑種犬

世界の中心で、愛をさけぶ
〜もうひとつの純愛物語〜


第5話




亜紀と智世は部活帰りにたこ焼きパパさんでたこ焼きを食べていた。
「智世…」
と亜紀はたこ焼きを爪楊枝でぷすぷすと刺しながら静かに智世に語りかけた。
「な…なに?…たこ焼きならもう詰まらせないから!!」
智世は数日前亜紀とたこ焼きを食べていたときにたこ焼きを詰まらせた件を気にしていた。
「あ、あと…りゅ、龍之介も関係ないからねっ!!」
「え?そんなこと聞いてないよ?」
一人勝手に焦る智世を見て亜紀は不思議そうに聞いた。
そのとたん、智世の顔は赤く染まった。真っ赤と言えるほどに。汗もにじみ出てきた。
「え…あのっ、その……」
焦る智世。
亜紀はそれを見て智世も自分と同じような時期にあると思った。
「で、亜紀。どうした?」
智世は汗をハンカチでふき取り、たこ焼きを一個口に運んでから聞いた。声は少し聞き取りづらかった。
「恋したみたい…」
「ぶっ!!!」
亜紀の突然の発言に智世はたこ焼きをのどに詰まらせた。
「あっ!!智世!智世!これで二回目だよ!!詰まらせたの…」
「ほへははんはのへいはっへ〜!!(それはあんたのせいだって〜!!)」
「何言ってるのか分かんないよー!!」
と亜紀は智世の背中をどんどんとたたいた。その一部始終を通りかかった人々が見ていた。


十数分後
「はぁ〜助かった…」
智世はほっとした様子で言った。たこ焼きは何とか取れたようだ。
2人は蛙や虫が合唱する田んぼ道を歩いていた。周囲は薄暗くなっていた。
「で、さっきの話なんだけど」
「なっなに…さっきの話って」
「ほら、私が……恋…したって…話……」
智世の質問に亜紀は俯いて小さな声で答えた。おそらく彼女の顔は先ほどの智世の様に赤く染まっているだろう。
「ああ。それね」
「どうアタックしたらいいかな…って」
と亜紀は空を見上げながらぼんやりと言った。
空にはあの日――サクの自転車に乗って帰った日――と同じ風景があった。しかし、以前と違うのは曇っているからなのか、星のきらめきが小さかったところだった。
「あっ!ならいい方法がある!!」
しばらくの沈黙の後、智世が手をパンとたたき、叫んだ。何かをひらめいたのだろう。
そして、亜紀の腕をつかんだ。
「え?どこいくの?」
「いいからついてきて!!」
亜紀が質問しても答えることなく、智世は今まで歩いてきた道をUターンした。

そして2人がたどり着いたのは小さな店。そこには駄菓子や小さなおもちゃ、キーホルダーなどが並んでいた。
「何するの?智世」
亜紀は、子供のように店内をうろうろしている智世を見てたずねた。
「いいから」
とだけ答え、智世はどんどん店の奥に入っていった。亜紀はそのまま店の入り口で立っていた。
数分後、智世は亜紀の元に戻ってきた。手には茶色い紙袋があった。
「はい、これ」
智世は紙袋を亜紀に手渡した。
亜紀は受け取るとすぐに紙袋を開けてみた。中には……
「うわっ…何これ!?」
「それはフナムシのおもちゃ」
宮浦の町ではおなじみの「フナムシ」のリアルなおもちゃと、
「これは…ガム?」
すでに開けてあるガムがあった。
「いやいや、ただのガムじゃないんだよね」
と智世は亜紀の手からそのガムを取り上げ、「一枚とって」と促した。
亜紀は疑問に思いながらも一枚取った。すると、バシッという音が聞こえ、指に痛みが走った。見てみると、それはガムではなく、ガムと見せかけて一枚取り出すと仕掛けが働き、指を挟むというおもちゃだった。
「これ使ってみたら?」
と智世は言った。
「え…うん」
亜紀も少し戸惑いながら肯いた。
「あ、それで………」
と亜紀は再び口を開いた。
「ん?」
「智世って松本君たちと仲良いよね?」
「うん」
「何で仲いいの?」
「……えっ?」
亜紀の意味不明ともいえる質問におもわず智世は首をかしげた。
「ごめん」
亜紀は焦り、智世に慌てて謝った。それを見て智世はなぜか罪悪感を感じ、
「あ〜、幼馴染なんだ。サクたちは」
と答えた。
「幼馴染?」
「そう。結構長い付き合いなんだよ」
「へえ〜そうなんだ…」
と亜紀はうれしそうに答えた。

――あぁ…よかったぁ…智世と松本君が普通の関係で…


亜紀と智世はさっき通った道を再び歩いていた。
「じゃあ、バイバイ」
「うん。また明日」
2人は手を振って別れた。
亜紀は智世をある程度見送ったところでくるりと後ろを向き、自分の家へと歩き出した。その際、もう一度空を見上げた。
太陽は完全に沈み、空は漆黒に染まっていた。雲がなくなったのか、今は星たち一つ一つがきれいな輝きを見せていた。ちょうど、あの日のように………
「おやすみ」
とつぶやき、亜紀は田んぼ道を走っていった。

翌日
亜紀は昼休み、弁当を食べ終えると図書室へ行った。借りた本を返すためだった。
本の返却を済ますと、亜紀は新しい本を探した。今回は何にしようかと本棚を見ていると、日とるの本に目が留まった。それはオーストラリアの先住民・アボリジニーについての本だった。
「…これにしようっと」
亜紀はその本を取り出し、貸し出しコーナーへと歩いていった。

放課後、亜紀はいつものように村田を見舞うために稲代総合病院へと向かった。
着くとすぐに亜紀は村田が入院している401号室の前に来た。
401号室の前に何か札が張ってあった。
「え……」
亜紀はその札を見て驚いてつぶやいた。



――続く
...2006/07/23(Sun) 13:23 ID:gogZvO4c    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:SATO
しばらくです。
「もうひとつの純愛物語」シリーズは第一話の前日談みたいな感じでいいですね。ドラマの舞台となった「宮浦」の情景が浮かんでくるようです。

村田先生の病室に札が貼られて「とうとう来るものが来たか・・・」と緊張感が走りました。
...2006/07/23(Sun) 22:11 ID:ce8y606o    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:雑種犬
SATOさん
お久しぶりです。
これからドラマと話が近づいていき、また違った方向に向かっていく感じです。
...2006/07/30(Sun) 18:27 ID:IGi5pm7o    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:雑種犬

世界の中心で、愛をさけぶ
〜もうひとつの純愛物語〜


第6話




稲代総合病院
401号室―村田が入院している部屋の前で亜紀は呆然としていた。
401号室のドアには札がはってあった。そこには「面会謝絶」と書かれていた。
しばらく動けないでいた亜紀はくるりと振り返り、診察室へと走り出した。
「すいません…!」
と言い亜紀は診察室へ飛び込んだ。中にいた医師は驚いていた。
「あの、401号室の村田さんの容態は……?」
「まぁ…こちらに座って…」
医師は焦る亜紀をいすに座るように促した。亜紀は置いてあったいすに座った。
「あの…どうなんでしょうか……」
「……………このままだと…厳しいところだな」
「え…」
亜紀の表情は青ざめた。
「でも、まだ希望を捨てちゃいけない。そうだろう?」
と医師は亜紀を励ますように言った。
「…そうですね………」
返事する亜紀の声には、元気がなかった。

病院を出る亜紀の足取りはとても重く見えた。
血のにじむような真っ赤な夕焼けが亜紀の頬を照らしている。
亜紀はタクシーに乗ることも忘れ、一心不乱に坂を走って下り始めた。


坂を下りきったときには真っ赤な夕焼けは地平線に姿を隠し始め、西の空に不気味な色を作っていた。
亜紀はその場に立ち止まりその異様な光景をぼーっと見つめた。まるで何か嫌な事を象徴しているように感じられた。それは……

――そんなこと…ない……。絶対にない!!

亜紀は顔を横にぶんぶんと振り、再び走り出した。


「…ごちそうさま」
と呟き亜紀は茶碗を重ね、台所に運んだ。
「亜紀ちゃん?…結構残してるじゃない……」
「調子悪いのか?」
「…違う」
と言い残すと亜紀は自分の部屋に戻っていった。
しょんぼりした娘の背中を綾子・真は心配そうに見ていた。

亜紀はまだ寝るには早いというのに布団に完全にもぐっていた。
そこに、こんこんとドアをノックする音がした。すぐ後にドアが開けられ、光が差し込んでくる。
「亜紀ちゃん」
部屋に入ってきたのは綾子だった。
「どっか調子悪い?」
「…………………」
亜紀は言葉で答える代わりに枕元で首を振った。布団がもぞもぞ横に動いた。
「言えば楽になるわよ」
と綾子はベッドの横に座り、亜紀の背中を優しくなでながら言った。
母が背中をなでて気持ちが軽くなったのか、亜紀の目から涙がぽろぽろとこぼれた。しだいに鼻水が出てくる。それをすーっとすすった。
綾子は娘が落ち着くまでやさしく見守っていた。
「村田先生、もうだめかも…」
「どうして?」
「今日見舞いに行ったら面会謝絶になってて…」
「だから最近帰りが遅いのね」
「……私…どうしたらいいの?」
「………亜紀ちゃんがしたいこと、すればいいのよ」
「…………」
「…ゆっくり寝なさい」
と言い、綾子は立ち、部屋を後にした。ドアが閉まると同時に部屋は真っ暗になった。
「………私がしたいこと………」
亜紀はベッドから飛び出した。そして机に向かい、できることを考えてみることにした。


急に真っ暗な視界に光が差し込んできた。それがだんだんまぶしくなり、亜紀は目を開けた。
いつの間にか朝になっていたのだ。亜紀は座ったまま寝ていた。
「寝ちゃった」
亜紀は大きなあくびをして立ち上がる。
「結局いい案浮かばなかったな」
そのとき、亜紀の手に一冊の本が触れ、床に落ちた。それは図書館で借りたアボリジニーに関する本だった。
それを手に取り、読んでみる。そこには亜紀が以前村田から聞いた生物の命の循環・埋葬の仕方などが書かれていた。
「……………」
しばらく時を忘れて本を読んでいた。
「亜紀ちゃーん、ご飯!!」
下から綾子の声が聞こえた。
「今行く!!」
亜紀は大きな声で返事をし、本を閉じた。




―――続く
...2006/07/30(Sun) 19:11 ID:IGi5pm7o    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:SATO
雑種犬さん

久しぶりに転校生・小林明希編を読んでみましたが、青春ドラマのようで面白かったです。何度読んでも面白いものは面白いです!!
「セーラー服と機関銃」にハマッているせいか、読んでいて小林明希が長澤まさみさんに見えてしまう今日この頃です。(1ヶ月前だったら沢尻エリカさんだったかもしれません)

「セーラー服と機関銃」を観た感想ですが、長澤まさみさんと堤真一さんのコンビが絶妙で、コメディ風の展開ながら生きることの大切さ、人間同士の絆の大切さを訴えかけてくるようです。プロデューサー(ドラマの企画・制作をする人のことです)が「世界の中心で、愛をさけぶ」と同じ人なので、ところどころで「おっ」と思う場面やキャラが登場してます。例えば、星泉(長澤まさみさん)の教室の席の場所は廣瀬亜紀とまったく同じですし、担任の先生は智世(本仮屋ユイカさん)のお父さん役だった人、商店街のおじさんにたこ焼きパパさん役だった人が出演しています。来週は介ちゃんこと、田中幸太郎さんがゲスト出演しますよ。

それでは、お元気で。
...2006/10/22(Sun) 00:56 ID:00NyPe1o    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:雑種犬
皆さん、お久しぶりです。
雑種犬です。
本日再び投稿してみました。


SATOさん
お久しぶりです。
私の作品を読んでもらったうえに楽しんでもらってうれしいです。
私は「セーラー服と機関銃」を全く見ていませんでした…(泣)(興味はあったのですが…)
智世のお父さん…あのワンちゃんを抱えていた人ですね…少しお気に入りでした

では
...2006/12/16(Sat) 18:16 ID:9KsEF/j.    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:ぱん太
雑種犬さん

こんばんは。ご無沙汰です。
高校生活、如何お過ごしですか?
いろいろとフォローいただきまして、ありがとうございます。
改めて、オリジナル・ストーリを読んでいて、自分の闘病中に、このBBSを見るのが楽しみだったなぁ〜と思い返しました。
とりあえず、再発も乗り越えて、職場復帰も果たしています。ですが、昔のようにはいきませんねぇ〜。かなり体力が落ちました。なんか運動を始めて体力増強を図りたいと思います。家内によく言われるのですが、「双子の運動会に出たら、アナタ、絶対に怪我するわよ」と。昔の感覚で走ったりしたら、怪我するんでしょうねぇ〜。そろそろ、年相応と考えなければいけない年齢になっちゃいました。ワンコとの散歩だけでは、物足りなくなって来た今日この頃です。

ではでは、また。
...2007/06/17(Sun) 01:02 ID:uFt3OZbg    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:雑種犬
ぱん太さん

お久しぶりです。

>いろいろとフォローいただきまして、ありがとうございます。
こちらこそ改めて私の作品を読んでいただき、ありがとうございます。

決して軽い病ではない癌を乗り越えて現場復帰をされたということで心から嬉しく思います。
やはり体調を維持するのには規則的な生活習慣、バランスの良い食事、散歩などの運動を欠かさない、これがベストだと思いますので、頑張ってください!!

私も今年で朔と亜紀と同じ高校二年生に進級しました。おまけに現在は6月。朔と亜紀が生きたころに次第に近づいており、言葉に表せないような、そんな気持ちがしてきました。

さて、ここで余談ですが、私は5月末に囲碁部に入部しました。そこで一つ問題が……いつも陣地を一つも取れずに完敗してしまいます(泣)
さらに言えば一勝もしておりません(笑)

…朔が亜紀と囲碁をやってもこんな風な結果になるんだろうなとふと思いました。

では、これからもお元気で。
...2007/06/17(Sun) 19:23 ID:ywgGc.Wc    

             西伊豆は本因坊秀和生誕の地  Name:にわかマニア
 雑種犬さん
 囲碁部ですか。
 白石と黒石の争いでも,サクと亜紀が対戦していたのはオセロでしたが(第8話),きっと「ガムのおもちゃで騙される人のいい松本朔太郎」は策士・亜紀には歯が立たなかったのでしょうね。

 さて,西伊豆と言えば,ドラマの聖地(松崎),恋人たちの聖地(恋人岬)であると同時に囲碁の聖地でもあります。幕末の名棋士・14世本因坊秀和(1820〜1873)の生誕の地に程近い最福寺の郷土資料館には,各種の資料が展示されています。
 修善寺から山越えの道をバスに揺られること50分。海が見えてきたら,沼津や清水からの船も発着する土肥です。松崎はここからさらに50分かかるのですが,その途中にある恋人岬の数個手前の「下小田」というバス停の近くに,その最福寺はあります。
...2007/06/18(Mon) 00:28 ID:w2qu8fE2    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:ぱん太
皆様

皆様に支えられて、僕も再発を乗り越えることが出来ました。ホントにあるがとうございました。
僕が癌に罹患したことで、一次は辞めようかと思っていた体外受精も再開し、再開後の1回目で運よく着床することができました。双子の子育ては大変ですが、それいじょうに、いろいろと面白い発見もあります。
こんな機会を楽しむ時間を下さった主治医に感謝感謝でございます。

今後は、定期的に訪問するようにします。

ではでは。
...2007/06/18(Mon) 01:02 ID:2C0fNWxA    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:ぱん太
皆様
こんばんは。明日は休暇のため、夜更かしをして、書き込んでいます。
ここのBBSも荒れちゃいましたねぇ〜。おまけに、僕の日本語も微妙に変です。失礼しました。

雑種犬さんは、囲碁部ですかぁ〜。うちの甥が囲碁好きのようなんですよ。今、中学1年生ですが、2年くらい前に本屋に連れて行って、「欲しい本、買ってあげるよ」って言ったら、囲碁の本を持ってきたのを覚えてます。その甥も、今は電車オタクになりつつあり、国立の小学校に行っていたのに、中学受験して、別の国立の中学校に入りました。「なんで?」って聞いたら、「あっちのほうが電車に乗ってる時間が長いんだよね」という回答。なんとも、不思議な子供です。
ま、その家は、亡くなった兄の家で、もう10年近く(12月で丸十年)になるので、結構頑張ってる母子家庭だと思います。
甥も、進路を色々と考えているらしく、本音は医者になりたいらしいです。でも兄貴(ヤツの父親)がやっていた開発者もやってみたいと言ってますが、6年かけて考えるんでしょう。

最近、あちこちのスレッドが荒れているので、雑種犬さんのスレッドを見ると、安心します。同郷のせいもあるんでしょうけど。

ではでは
...2007/07/04(Wed) 01:52 ID:PC4fCl5s    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:雑種犬
7月2日――…から少し遅れましたがドラマ放送開始から3年、また、亜紀の誕生の日がやってきました。
まさか亜紀がサクに告白したあの日から20年経ったその日に定期試験を受けているとは思いませんでした。


にわかマニアさん
>西伊豆と言えば,ドラマの聖地(松崎),恋人たちの聖地(恋人岬)であると同時に囲碁の聖地でもあります。
西伊豆には聖地がたくさんあるんですね(笑)
このドラマの聖地である松崎には、放送から3年もの月日が経過しているにもかかわらず一度も行ったことがありません。あらゆるテレビ番組で松崎が映されているのをよく見ますが、是非行ってみたいものです。

ぱん太さん
>うちの甥が囲碁好きのようなんですよ。
囲碁は終局のタイミングがつかめなかったり、いろいろ難しいのですがこれが結構面白いんです。
>「あっちのほうが電車に乗ってる時間が長いんだよね」
ぱん太さんの甥の方のおっしゃることも何か分かる気がします。私はコンビニなどに買い物に行く時近くにコンビニがあっても「近くにあるコンビニに行っても面白くない。もう少し遠くに行ってみようかな」と思ったりします。おそらくこんな感覚でしょう。
...2007/07/04(Wed) 16:17 ID:nw7AmTYs    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:ぱん太
雑種犬さん

こんばんは。
学生は明日から夏休みのようですねぇ〜。今も、某県の学校は8月26日までの夏休みだったりするんでしょうか?僕も小学1年生のときまでは8月いっぱい休みだったんです。それが2年生になったときに、「省エネのために冬休みを長くする分、夏休みを短くする」ということになったようです。僕が高校生の頃に、県立高校は独自に決めていいということになった気がします。高校時代も、もう20年前ですからねぇ〜。

ではでは。
...2007/07/21(Sat) 02:49 ID:X1vH0BkQ    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:にわかマニア
 雑種犬さん
 部活をやっていると,夏休みと言っても,大会などで大変なのではないですか?
 そう言えば,亜紀も期末テストの後,陸上大会に向けて猛練習の日々でしたね。放映開始前に報道各社に配布され一部のテレビ情報誌に掲載されたプロフィール表によれば,亜紀は生徒会の役員もしていたようですから,もし,夢島で倒れなかったとしたら,文化祭(自らも劇のヒロインでしたね)の準備で休みどころではなかったかもしれません。
...2007/07/29(Sun) 00:36 ID:ykAcgxPw    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:ぱん太
部活動ですかぁ〜。懐かしいですねぇ〜。
僕は高1の時点では、陸上競技における県内トップの高校にいました。全国高校駅伝も、僕が入る前の年に全国大会に出てました。残念ながら、ぼくの在校時には、駅伝では全国に行くことが出来ず、個人で5,000Mのインターハイに出場するのがやっとでした。
それも、これもいい思い出でしたね。
自分の高校2年は、自分で言うのも何なんですが、一番輝いていたと思います。恋にも、勉強にも、運動にも。初恋の女性を亡くしたのも、高校2年の秋でしたしね。
そのバックボーンが、今の自分にはあると自負しています。

>雑種犬さん
この時期でしか、体験できないことが多々あります。ぜひ、それらを楽しんでくださいね。

ではでは。
...2007/07/30(Mon) 22:42 ID:g884fe6g    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:にわかマニア
>高校2年は、自分で言うのも何なんですが、一番輝いていた

 そう言えば,私も高2の時は学校祭の実行委員をやっていて,生徒会室に泊まりこんで,夜通し歌い明かしたことがありました。今となっては懐かしい思い出です。
...2007/08/02(Thu) 16:37 ID:PXpHqLn2    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:ぱん太
どうも、こんにちは。
にわかマニアさんの高校時代って何年前なんでしょう??僕は、もう20年前ですよ。年喰ったなぁ〜と改めて知る今日この頃です。かつてのインターハイ選手も、今では、ワンコの散歩で走る程度。体力落ちしたね。それとは打って変わって、日に日に成長する我が家の小悪魔たち。ヤツらの運動会には、僕は、走れるんだろうかと思います。家内からは、「昔の感覚で走ったら、あなた、絶対に怪我するわよ」と言われる始末です。
日本ハムの新庄が引退の理由として、「追いつくと思っていたフライに追いつけなくなった」と言っていた気がします。新庄は、あまり好きではありませんが、引退の理由には共感するものがありました。僕も数年前に職場のメンツで野球をやったときに、同じ感覚になりましたから。

いつまでも、若い感覚でいようとは思いますが、真理と違って体は正直ですね。

ではでは。
...2007/08/05(Sun) 16:19 ID:YeRKNd2.    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:ぱん太
×真理
○心理
でした。
最近、ケアレスミスが多いのも年齢のせいでしょうか??
...2007/08/05(Sun) 16:20 ID:YeRKNd2.    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:進行役
イタズラ投稿放逐のため
ただいま議事整理中
...2007/10/22(Mon) 05:06 ID:YwCO13jU    

             Re: オリジナル・ストーリー  Name:ぶんじゃく

進行役様
いつもご苦労様です。
他力本願ですいませんが ありがとうございます。
...2007/10/23(Tue) 00:34 ID:JEA95V8s    

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