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過去ログNo1
アナザーストーリー4  Name:たー坊
皆様こんばんは。アナザーストーリーを執筆させていただいております、たー坊です。
皆様のおかげでパート3が終了し、パート4に突入させて頂くことになりました。
今までお読み頂いた皆様、初めてお読みいただける方々、素人が書いている物語ですので、拙く、お見苦しい点が多々あるかとは思いますが、これからもよろしくお願い致します。


パート1へのリンクです。↓

http://www.alived.com/cgi/yyai/yyplus.cgi?mode=past_one&no=4038&pastlog=11

パート2へのリンクです。↓

http://www.alived.com/cgi/yyai/yyplus.cgi?mode=past_one&no=8806&pastlog=14

パート3へのリンクは、過去ログに入った時点でお知らせいたします。これからもよろしくお願い致します。
...2005/11/30(Wed) 21:24 ID:KkzI0loA    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
しん様

コメントをいただきましてありがとうございます。
パート3がいっぱいになりましたので、こちらの新スレに、お返事を書かせていただいております。
これからも、許す限り続けて生きたいと考えておりますので、よろしくお願い致します。

他の作者の皆様の作品も素晴らしいですので、そちらの方もお楽しみ下さい。

次回は明日以降にUP致しますので、お読みいただければ幸いです。
...2005/11/30(Wed) 21:29 ID:KkzI0loA    

             Re: アナザーストーリー4  Name:KAZU
たー坊様
パート4突入おめでとうございます(^^)
今後の物語の展開を楽しみにしております。お体を大切に無理せずに頑張って下さい!!
...2005/11/30(Wed) 21:33 ID:TMj3sXAA    

             Re: アナザーストーリー4  Name:SATO
早速お邪魔させていただきました。
次回作を楽しみにしていますが、くれぐれも無理せずにマイペースで創作してください。「〆切」はありませんから(^^)

※〆切を意識しながら作品を作り上げていく本物の作家やライターの仕事は本当に大変なのだ、とつくづく思う今日この頃です。
...2005/11/30(Wed) 21:37 ID:JnxURxuQ    

             Re: アナザーストーリー4  Name:朔五郎
新装開店おめでとうございます。
まずは、ご挨拶まで(^^)
...2005/11/30(Wed) 23:16 ID:vd68W3e6    

             Re: アナザーストーリー4  Name:サイトのファン
たー坊さんへ
執筆お疲れ様です!!
まとめて拝読させて頂きました。
たー坊さんの世界の中心で、愛をさけぶ(アナザーストーリー)もパート4に入ったのですね!!
長期の出張が多い私の楽しみは
家に戻り、たー坊さんのアナザーストーリーを拝読
させて頂き、温かい気持ちになり一息つくことです。
龍之介と智世が結婚してしまい、次はボウズと恵美か?サクと亜紀か?楽しみですね!!
亜紀の就職もどうなるか?
又、芽衣のことも心配です。
以前もお願いしましたが、のんびりで結構ですから
パート100を目指して私達ファンに
サクと亜紀と友人達と家族の微笑ましいストーリー
を届けて下さい。
続編、お待ちしております!!
...2005/12/01(Thu) 01:09 ID:sjWXmulQ    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
KAZU様
お心遣いありがとうございます。
だいぶ寒くなってきましたが、少しずつ続きを書いています。
とうとうパート4に突入致しましたが、これも皆様の励ましのお言葉のおかげです。
これからもよろしくお願い致します。

SATO様
おかげさまで、パート4に突入いたしました。
幾度となくいただきました激励のお言葉に、かなり心が救われております。おっしゃるとおり、のんびりとマイペースで続けられたらと思います。
これからもよろしくお願い致します。

朔五郎様
わざわざありがとうございます。
おかげさまで、パート4に突入いたしました。「ようやく」の中にも「早かったな」と思います。この1年と少しの間、気が付けばかなりの数を書いてきたことに気付きました。
これからもそれを少しでも伸ばせるように続けていきたいと思いますので、よろしくお願い致します。

サイトのファン様
お疲れ様です。長期出張とは大変ですね、最近冷えてきておりますので、お体には留意なさいますようにお願い致します。メンタル面でのサポートの役割を担えるほどのパワーがこの物語にあるのかどうかは別にして、喜んでいただけているのなら幸いです。
パート100まで書くことは想像できないのですが、すこしでも長続きできるように頑張りますので、これからもよろしくお願い致します。
...2005/12/03(Sat) 00:49 ID:jLNQf/OM    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
真館の外に龍之介と智世が待っていた。
ぞろぞろと全員が外に並ぶ。

夏の青空、プカプカ浮かぶ白い雲の間から強めの太陽の光がタキシード姿のドレス姿の2人を一層輝かせている。
そんな2人を羨ましげであり、何故かどことなく懐かしそうな目で新郎新婦を見つめるのは亜紀だ。

9年前、明日をも知れない体で母・綾子のウエディングドレスを身に纏い、タキシード姿の朔と結婚写真を撮り、ブーケトスをした時のことが鮮明に蘇る。

“智世が立っているところに私がいたのか・・・。”
“朔ちゃんはいつ立たせてくれるのかな・・・?”

再び人生最高の時をいつかいつかと待ちわびる亜紀の視線の先には、カメラマン・朔が、新婚ホヤホヤの2人の記念撮影をしている。
智世は亜紀が見たことのないほどの笑顔で記念撮影・・・・・・。

朔もまた幼馴染みの人生最高のこの瞬間を最高の形で収めようと神経を集中させていた。
そして、何枚かシャッターを切ると、見計らったように谷田部が告げる。

谷田部「それでは、お待ちかねの方が2名くらいいらっしゃいますでしょうか?(笑)・・・ブーケトスを行ないます!」
亜紀「(来た!)」
恵美「(絶対に・・・獲る!!)」

並々ならないムードを醸し出す亜紀と恵美がいる。
そう。亜紀のブーケを受け取った谷田部が結婚し、その時谷田部から放たれたブーケをその手掴んだ智世が、今日結婚した。
この効果絶大と思われる“ブーケジンクス”にあやかろうと内心必死の2人・・・。
何としてもブーケを掴んで、亜紀と恵美は恋人に結婚を迫ろうと企んでいた。
そのことを知っている朔とボウズは、ブーケを掴んで欲しいような欲しくないような複雑な胸中でその時を待つ・・・。

恵美「亜紀。」
亜紀「何?」
恵美「やっぱり、私に譲る気はないのね?」
亜紀「当然でしょ。」
恵美「・・・私も渡す気はさらさらないわ・・・絶対に獲るから邪魔しないでね。」
亜紀「それは私のセリフよ・・・足を踏まれないように気をつけた方がいいと思うよ?」
恵美「構わないわよ・・・でも・・・。」
亜紀「分かってるよ・・・どっちが獲っても恨み言は一切なし!」
恵美「OK!」

谷田部「それでは・・・上田・・・じゃない、大木?準備はいい?」
智世「上田でいいですよ(笑)・・・いつでもOKです!!!」
谷田部「それじゃあ・・・いってみましょうか!・・・せーのっ!!!」

呼吸を合わせ、後ろ向きの智世の両手からブーケが放たれる。
高々と上がったブーケは、綺麗な放物線を描きながら参加者の方へ・・・・・・・・・。
最前列に陣取った亜紀と恵美の方向へと飛んできた・・・。

恵美「来た・・・もうちょっとこっち!」
亜紀「ナイスコントロール!」

どちらかというと亜紀が有利か!?
そんな状況に思えた。

しかし・・・・・・。

亜紀「あれ?」
恵美「???」

なかなか落ちてこないブーケ。
それから1秒後、1番ブーケを欲しがる亜紀と恵美の頭上を通過していった・・・。
慌てて振り向く2人が見たものは・・・・・・ボウズの手の中にあるブーケだった。

朔「・・・・・・おめでとう。」
ボウズ「・・・へ?」
龍之介「恵美と末永くお幸せに・・・。」
ボウズ「いぃ〜〜〜???!!!」
智世「な〜に〜そのリアクションは!?幼馴染みのよしみかなんか知らないけど、アンタのところに飛んでいったありがたいものなんだから、ないがしろにすんじゃないわよ!!」
ボウズ「・・・・・・・・。」

絶句するボウズ。
それを見て大喜びしたのは恵美だった。すかさずボウズのところに歩み寄る。
そして、落ち込んでいるのは亜紀だった。
“人生はプラスマイナスゼロ”以前自分が言ったことを思い出した。

“病気になったのがマイナス。”
“奇跡の生還を果たしたのがプラス。”
“朔ちゃんと一緒にいる時間がとても多かったここ3年がプラス。”
“でも、朔ちゃんと大喧嘩した上に、就職先が決まらないし、ブーケを獲り損ねたことがマイナス。”

無理やりにでも思わないとテンションをあげられなかった。

「次はプラスが来てくれるはず。その時は私が結婚できるから・・・。」

と・・・・・・。

ブーケトスを終えた一同は、再び写真館の中へ。
富子と綾子が作った料理を食べながら、しばしの間歓談の時間となった。
感動を与えるような段取りは全て終わっているので、宴会にはならないように程よくアルコールも入った。
そして、日が暮れかけたころに、谷田部が司会として最後の仕事を始めた。

谷田部「・・・陸上部の元エース。病気で入院してしまった廣瀬の分まで頑張ろうと、ひたすら練習していたことを思い出します。雨の日には大木をつき合わせて軽いジョギング・・・。“県大会で上位に入って全国大会への切符を手に入れて亜紀を羨ませてやるんだ!”・・・私と話をする時には、そんなことを話していたね・・・・・・結局、それは叶わなくて・・・そんな上田を支えたのが大木だった・・・・・・。式とか会とか名のつくものには出席しない大木が、卒業式以外に出席した唯一の大会でした。応援に来て・・・レースが終わった後、競技場の裏で放心状態の上田の頭を何も言わずに撫でながら慰めたこと、私だけが知っていました。・・・・・・・いつもはヘラヘラしててチャランポラン。そんな言葉がピッタリの大木ですが、いざと言う時はやる男ということを知っていましたから、ようやくこの2人がくっついたのかなと思っていましたが、結局、松本と廣瀬に遠慮したまま・・・・・・。よく頑張ったねぇ・・・上田。十分すぎるほど頑張ったよ・・・大木も・・・・・・。他人の幸せを願って、お互いの気持ちが分かりきっててもそれを抑えて・・・あんたたち、本当にいい人だよ(笑)。これからは、自分たちの幸せを第一に!・・・そこで大木!さっき廣瀬も言ってたけど、絶対に上田を幸せにしなさい!!!・・・一生をかけて幸せになってください・・・。これで、私の挨拶にします!そして、披露宴もこれでお開きに致します!」
智世「ありがとうございます。」

龍之介も頭を下げた。
少し長い一日が終わりを告げた。
親たちを見送った後、着替えて片づけをしている4人を手伝った。
すると・・・。

龍之介「みんな、ありがとう!」
智世「うちのダンナが無理難題を言い出したらしいけど・・・本当に感激しました!」

深々と頭を下げる2人。
それを見たボウズはすかさずつっこむ。

ボウズ「まあ、いいってことよ。その代わり、2次会はお前らがやれよな。」
恵美「そうね・・・それくらいのお返しを要求してもバチは当たらないよね?それに・・・。」
智世「それに?」
亜紀「朔は仕事終わり、すぐに来てカメラマンをしたから、残業代が欲しいってさ。」
朔「料金は3割増しになります。」
龍之介「・・・・・・。」
智世「・・・・・・・・。」
龍之介「ま、気を取り直して・・・家で二次会といきましょ!!!」
ボウズ「よし、そうこないと男じゃないぞ!」
恵美「宴会ね!」
亜紀「行こ!!」

あっという間に外へ行く5人。
その後ろでは、朔が・・・。

朔「ちょっと待てよ・・・。」
 「俺のカメラマン代は?」
 「俺の貴重な労働時間はどうなるんだよ・・・?」
 「亜紀・・・おい?」
 「誰かぁ〜〜〜〜!!!!!!!」

魂の叫びが宮浦の街中に響いた。
                    ・
                    ・
                    ・
やがて新居に到着した6人。
玄関に入ろうとした時に恵美があることに気付いた。

恵美「犬小屋は?」
智世「コロは別居。実家に置いてきたわ。」
恵美「コロ、大丈夫かな?」
智世「まあ、毎日薬局では会うんだから・・・。」
恵美「それならまあ・・・。」

しかし、そんな飼い主の気持ちをよそに、忠犬は密かに薬局を抜け出した。
“シタタタ・・・・・”と、アスファルトを蹴る音がなんとなく聞こえる。
一方・・・。

龍之介「おいおいおいおい!!!新居を汚すな!おいっ!!!」
ボウズ「あ〜?聞こえねぇなぁ?」

ボウズが大いに酒を飲み暴徒化寸前のような状態になっていた・・・・・・。
恵美もまた制止役の立場を忘れてしまっている。

恵美「智世はいいねぇ・・・こんな新居で新婚生活だなんて・・・羨ましい、」
亜紀「そのセリフは私。恵美はブーケ獲ったから・・・おめでと。」
恵美「確かにブーケは心強いジンクスよ。でも、それも全ては“良ちゃん”次第なのよ?」
朔「“良・・・ちゃん”???」
智世「あ、新しい呼び方?」
恵美「そう。婚約したらそういう呼び方をするって決めてたの。」
朔「そうなの?・・・ボウズ、おめでとう。これからもお幸せに。」

呆然とするボウズの意思確認もしないまま、ボウズと恵美の婚約?が、確認された。
その時、ドアの方から“カリカリ”と変な音が聞こえる。
亜紀が不審に思ってドアを開けると、誰もいない・・・。が、次の瞬間足元にコロを見つける。

亜紀「どうしたの?」
コロ「(拾ってくれたのに、何で置いてかれたのか分からないよ。)」
亜紀「なに言ってるか分からないけど・・・。」

亜紀が智世を呼んだ。
智世はコロを見つけると、頭を撫でてから玄関に上げて、足を拭いてからリビングに連れて行った。

続く
...2005/12/03(Sat) 00:58 ID:jLNQf/OM    

             Re: アナザーストーリー4  Name:朔五郎
しかし、ボウズ・・・
そんなに酒を飲んで「破戒坊主」になってて大丈夫なんでしょうか(苦笑)
「嵐を呼ぶ忠犬」コロの登場ですね。楽しみです。
これからも、素晴らしい物語を楽しみにしております。
...2005/12/03(Sat) 05:29 ID:jjCjSkPQ    

             Re: アナザーストーリー4  Name:北のおじさん
たー坊様

遅ればせながらパート4突入おめでとうございます。
最近は読ませて頂くだけで、応援の書き込み一つ出来ず申し訳ありません。
仕事を終えこちらの掲示板でたー坊さんの新しい物語を読む事をいつも楽しみにしています。
心温まるたー坊さんの物語、少しでも長く続けて楽しませて下さい。
...2005/12/03(Sat) 07:34 ID:UM6dG6Y2    

             Re: アナザーストーリー4  Name:ぶんじゃく

たー坊様
パート4突入おめでとうございます。

いつきてもここはほんわかさせてくれます@^^@
この感じはなんだかサザエさんに似ている感じかな?
(失礼でしたら取り消します^^;)

このドラマの中に入っていきたくなるくらい素敵です
これからもマイペースで末永く続くことを願っています。
...2005/12/04(Sun) 00:42 ID:NGX7ACc. <URL>   

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
朔五郎様
ボウズはなんだかんだ言って、切り替えが上手なタイプだと、私は思っています。やる時はやる、恵美影響もあるかとは思います。
そして、次回はコロが6人に大きな影響を与える・・・かもしれません。次回もお読みいただけましたら幸いです。

北のおじさん様
ご無沙汰しております。
最近はお見かけいたしませんでしたので、どうなさったかなと思っておりましたが、相変わらず、お読みいただけているとのことで、嬉しく思います。
気がつけば、”4”に突入しましたこの物語、都合の許す限り続けられたらと思います。
これからもよろしくお願い致します。

ぶんじゃく様
どういう印象をお持ちになられるかは、そのお方次第ですので、サザエさんであろうと、他のイメージであろうと、私は構いませんよ(笑)それに、ほのぼの路線で書いていますので、それに近いイメージをお持ちならば、私もうれしく思います。
これからもよろしくお願い致します。
...2005/12/04(Sun) 21:08 ID:2S26iUtw    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
龍之介「うまいか?」
コロ「(最高。)」

新婚の2人そっちのけで主役になっているコロは、2次会ということで用意されたから揚げを本当に美味しそうな顔をして食べている。

智世「でも、あんたどうすんの?犬小屋ないわよ。」
恵美「そうだね・・・どうする?コロ?」

2人に頭を撫でられながらコロは他人事のような表情・・・。

ボウズ「マヌケ面・・・。」

ボウズが毒づくようにつぶやいた・・・。

亜紀「まあ夏だし、バスタオルでも下に敷いてあげればいいんじゃないの?」
朔「そうだね。」
ボウズ「近いうちに犬小屋を用意してやれよ。」
龍之介「そうだな。頼んだよおまいさん。」
朔「俺!?・・・知らない。」
龍之介「そんな冷たいこと言うなよ。」
朔「日曜大工で作ってやればいいじゃない。ボウズと2人で。」
ボウズ「何で俺まで巻き込まれるんだよ?」
朔「俺、忙しいし。」
ボウズ「ここにいる奴で基本的に時間に縛られないやつは・・・と。」

一斉に龍之介に視線が集まる。

龍之介「・・・・・。」
智世「他力本願もいい加減にしなさいよ。飼い主なんだから。」
龍之介「俺が拾ってきたわけじゃないぞ。」
亜紀「でも、コロは大木家だもんね?」
コロ「(ウン。)」

コロはペロリと舌を出して、シッポをフリフリ。

龍之介「何で?俺は智世とは結婚したけど、コロとは結婚してねぇぞ?」
コロ「(スケ、お前冷たいこと言うな。)」

そんな驚くような口調で意思疎通を図ろうとしたか不明だ。
そして次に恵美がコロの弁護をはじめた。

恵美「スケちゃん、元々智世は“上田智世”でしょ。そしてコロも“上田コロ”よね?」
龍之介「ああ。」
恵美「そして智世は“大木智世”になったと。それで飼い犬のコロも、自分の意思でここに来たということは、同時に“大木コロ”になったということじゃない?」
龍之介「それは智世と結婚したら、コロも自然にくっついてくるってこと?」
恵美「うん。」

「それは理不尽じゃないの?」
そんな顔の龍之介。しかし、ここにいる全員が「コロに犬小屋あげてよ。」と無言で訴えていた。
「作るのも面倒だ。」と思った龍之介は提案した。

龍之介「飼うのはいいぜ。ただ、犬小屋はなし。・・・そのかわり、散歩から帰ってきた時には、玄関で足を拭いてから家の中にあがること。」
朔「へぇ・・・優しいなぁ。」
ボウズ「だってよ、コロ?・・・ペットの犬っていい身分だな。」

コロは何となく分かったのか、龍之介の手をペロペロ舐めた。もちろんシッポも左右に揺らす。
すると・・・。

ボウズ「それじゃあ、始めますか?」
朔「今・・・8時。俺、10時になったら帰るから。」
龍之介「今夜は帰さないよ〜〜??おまいさん?」
朔「俺に言うセリフじゃないでしょ・・・。」

呆れ顔の朔とバカ面の龍之介を尻目に、2次会後半が「カンパーイ!!!」の声とともに始まった。
さすがにビール掛けまですることはないが、女性陣が作ったつまみと思い出話を肴に、大いに盛り上がる新居。
リフォームを自分たちでしたこともあって、勝手知ったる他人の家状態になっている。キッチンからトイレまで使い放題だ。

ボウズ「よっしゃ、飲め飲め。」
恵美「・・・良ちゃん、一応僧侶なんだから、少しは禁欲って言葉を知ったら?」
ボウズ「「めでたいんだから堅いことを言うなと・・・・言ってみる。」
恵美「私、車なんだから。」
ボウズ「泊まればいいだろ。」
恵美「それなら・・・まぁ・・・。」
ボウズ「よし、決まり。」

そういうと、恵美のグラスにビールを注ぐ。
そしてコロは・・・酔っている?

朔「コロ・・・?」
コロ「(・・・スケに飲まされた・・・。)」
亜紀「酔ってるの?」
コロ「(ウン。気持ち悪い・・・・・・。)」

朔と亜紀にそのような目で気持ちを伝えようとしつつ、フラフラと亜紀のもとに。

亜紀「ちょっと・・・大丈夫??」
朔「まずいな・・・。」
コロ「(ゲフ・・・。)」

そのままだるそうに寝そべってしまった。
見かねた2人と智世は、タオルケットを用意して、部屋の片隅にコロを運んだ。

亜紀「コロ・・・?」
コロ「(大丈夫、大丈夫。)」
智世「いざとなったら、ここに医者がいるぞ?」
朔「獣医じゃないけど、何もしないよりはマシだと思うから。」
コロ「(いらない。医療ミスで死にたくないもん。)」
朔「その目は信用してないだろ・・・お前・・・。」
コロ「(だって、生まれてすぐに捨てられて、それを智世に拾われて幸せなのに・・・・・・まだ死にたくないよ。)」
亜紀「朔、コロは意外に強いから大丈夫だよ・・・。」

亜紀の根拠のない一言。
智世は龍之介の相手もせず、コロを心配していた。
それからはドンチャン騒ぎが続いた。ボウズはなぜかビールかけをやりたがり、それを恵美が制止し続けた。龍之介と朔は智世を挟んでくだらないバカな会話。亜紀はコロの様子を見続けた。

二次会とは名ばかりの飲み会はこのあとも続いたのである。
                                ・
                                ・
                                ・
時刻は10時過ぎ・・・。

恵美「ごちそう様。」
ボウズ「なんだか飲み足りないな。」
恵美「良ちゃんはほどほどでいいの!」
ボウズ「それにしたって足りないっての。」
朔「あれ位でいいんだよお前は。」
ボウズ「暴れなくて済むってか?」
朔「そういうこと。」

軽く不機嫌になるボウズ・・・。
一方。

智世「みんな、本当にありがとう。」
龍之介「いやー・・・何か最後まで色々してもらっちゃって・・・。」
亜紀「ホントだよ・・・でも、おめでとう。」
朔「ま、当分は集まる場所はここになりそうだけど。」
智世「ノンベのボウズ以外は歓迎する。」
ボウズ「ちぇ・・・。」
亜紀「スケちゃんとボウズが飲んだら大変なことになるもんね。」
龍之介「亜紀、そりゃねぇだろ。」
朔「いや、かなり的確な分析だよ。」
龍之介「そんなー!ツレナイよおまいさーん!!」
智世「はいはい。アンタは片付けを手伝え!手伝え!」

すると、“トトトトトトトト・・・・・・・・・・・”と、足音を響かせながらコロが朔の足元にやってきた。
朔は頭を少し乱暴に撫でながら話しかける。

朔「大丈夫か?」
コロ「(大丈夫。)」

シッポをフリフリしつつ、つぶらな瞳で朔を見つめる。

智世「アンタは中に入りなよ。」

智世はそういうがコロは一向に中に入ろうとしない。
するとボウズが・・・。

ボウズ「もしかして、コロはスケと智世に気を遣ってんじゃねーのか?」
恵美「あー・・・そうかも・・。」
亜紀「何で?どういうこと?」
ボウズ「そりゃ・・・。」

ハッキリとは口に出せないボウズの代わりに、朔が亜紀に耳打ちした。

朔「初夜でしょ。」
亜紀「あー・・・なるほど・・・。」

するとボウズが
「マセガキ。」とコロに一言。

戸惑う新婚の2人を残し、大木家を後にする4人と一匹。

智世「あ、ちょっと・・。」
龍之介「コロはどうすんだ!?」
朔「俺かボウズか亜紀で預かる。明日には帰すよ。」
智世・龍之介「・・・・・・。」
恵美「じゃあね。ごゆっくり!(笑)」
智世「・・・・・・・・・・・・。」

なんとなく見つめあった2人はドアを閉めて部屋に戻った。
そしてそのまま愛し合ったのである。

一方、4人と一匹はというと・・・・・・。

続く
...2005/12/08(Thu) 19:50 ID:PrmTjimM    

             Re: アナザーストーリー4  Name:双子のパパさん
 たー坊様   今さらながら パート4突入おめでとうございます。
 思えば、1年遅れでこのドラマにハマリ 映画版を観て 本 DVD サントラなどなど買い続けた日々でした。触りもしなかったパソコンに向かい 妻に動かし方を聞きながらこのサイトをみつけました。
そして、1番最初に たー坊様の作品に吸い込まれました。物語を読ませていただいて 私のようなものがコメントなど書かせていただいてもよいものかと悩みましたが、この気持ちを伝えたくて書かさせていただきました。たー坊様よりお返事もいただき とても、とてもうれしかったです。暇さえあれば パソコンに向かっている私があるのは このドラマとたー坊様のおかげだと思っております。
 
 私は最近 浮気?をしておりました。というのは他の方々の作品を少しずつですが、読まさせていただいておりました。どの方々の物語もとても気になる展開です。ただ私にとっては膨大な量の物語で皆様の物語に追いつくのは何時のことになるのやら・・・

 まだまだこれから寒くなります。どうかお体にはお気をつけてください。これからも楽しみにさせていただきます。よろしくお願いします。
...2005/12/09(Fri) 00:44 ID:fHR7q9co    

             Re: アナザーストーリー4  Name:朔五郎
コロの「気遣い」には腹を抱えて笑ってしまいました。優しいのか、生き抜くための知恵なのか・・・
これぞ、たー坊さんオリジナルの世界ですね(^^)
スケちゃん、智世さん、末永くお幸せに!!
...2005/12/10(Sat) 17:12 ID:0RS/aYTU    

             Re: アナザーストーリー4  Name:ぱん太
たー坊様、こんばんは。
今回も読ませていただきました。
コロも飲まされましたかぁ〜。行き付けの福島のワンワンペンションで一緒になったワンコは、飼主と一緒に水割り飲んでました。グラスいっぱい..........。うちのワンコも、僕は見ていませんが、家内が行き付けの居酒屋に連れて行き、飲ませているようです。大丈夫なんだろか??まぁ〜、元気に生きているので、大丈夫なんでしょう、多分.............。
物語は'95年を進行中でしたっけ?ポケベル文化が広がってきた時期ですかね?うちの家内が、今の子機くらいの大きさ(と言われていたそうです)の携帯を持つようになったのも、’95年だったと記憶してますし、PHSが始まったのも'95年だったと思います。コミュニケーションの手法がガラリと変化した時期ですね。忙しくて、なかなか逢う時間が少ないサクと亜紀にも、こんな時代の波がやってくるのでしょうか。

ではでは、次回も楽しみにしております。
...2005/12/11(Sun) 03:24 ID:pp1kdHiA    

             Re: アナザーストーリー4  Name:SATO
コロの仕草は絵本を見ているようで可愛いですね。
大木家の家族が増えた、というより朔たちの仲間が増えたという表現がピッタリでしょうか。

ブーケトスですが、さっきまで観ていた「1リットルの涙」でその場面がありました。ブーケトスを受け取ったのが亜也だったのですが、その直後に別れの手紙を麻生君に渡したのが切なくて悲しかったです。観終わってから、「世界の〜」の8・9話の展開と似ているとも思いましたが、こういうドラマを観終わるとしばらく余韻にひたってしまいます(涙)
...2005/12/13(Tue) 22:15 ID:0xlA4lkw    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
双子のパパさん様
なにやら、最大級の賛辞をいただいたようで恐縮です。ありがとうございます。
今は、他の皆様の作品をじっくりとお読みになって下さい。私が、この場をお借りして書き始めた原点があります。
時々、お時間がある時にでも、コメントをいただけたらと思います。
次回も楽しみにしていただけましたら幸いです。

朔五郎様
え〜・・・多少、下ネタが入ってしまったかなと思っておりますが、コロの性格上(?)あのようにした方が笑いが取れるかなと思いまして・・・(苦笑)
コロは結構毒を吐きます。次回以降も少しずつそのキャラを発揮してもらおうと思ってます。
これからもよろしくお願い致します。

ぱん太様
今回も貴重なネタのご提供をありがとうございます。
ふと思ったのですが、犬にも酒に強い弱いとかはあるのでしょうかね?あれば、コロはどんどん強くなっていくと思われます。
さて、現在は96年の夏〜秋にかけて進んでおります。この辺りまでくると残り30%で完結くらいのところまで来たという感じです。もちろん変更の可能性もあるかとは思いますが・・・。
次回もお読みいただけましたら幸いです。

SATO様
コロの仕草は、もうギャグの世界をイメージしてます(笑)飼い主が龍之介ですからね・・・さぞ、夜はバラエティ番組を一緒に見ているのでしょう。
そのうち、”モノマネ犬”が誕生するかもしれませんね(笑)
ブーケトスは軽く一捻りしてみました。ボウズの運命は恵美が握ってしまいました。
次回もお読みいただけましたら幸いです。
...2005/12/13(Tue) 23:12 ID:.rB5vZnw    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
ボウズと恵美と別れた朔と亜紀。
足元にはしっかりとコロがついて来ていた。
田んぼの青々とした穂が、風に揺られて時折“カサカサ”と音をたてる中、アスファルトを蹴るコロの足からは“シタタタタタ・・・・・・”と聞こえてくる。

亜紀「どっちの家に泊める?」
朔「どっちでも・・・。」
亜紀「もう・・・少しは興味をもちなさい。」
朔「本当にどっちでもいいんだもん。・・・コロが気に入った方でいいんじゃないの?」
亜紀「そっかそっか。そんなに冷たいんだ。」
朔「どう・・・。」

「どうしてそんな解釈をするんだお前は?」
真の口調を真似てみようとした時すでに、亜紀は先を行くコロを呼び止める。
急ブレーキをかけて、しゃがむ亜紀めがけ、シッポを大きく振りながらダッシュしてくる。
勢い余ってスカートの中に突っ込んでいったその時、朔に嫉妬の炎が、爆発音と共に燃え上がった。

亜紀「こら。朔ちゃんにだってそういうことをさせないのに、コロが先にしちゃだめよ。」
コロ「(ゴメンなさい。)」
朔「・・・・・・・・。」

この時の朔の気持ちを説明すると・・・。
「羨ましいヤツめ・・・。」
「亜紀に何をしてるんだ?一発殴らせろ。」
「このエロガキ。確信犯め・・・・・・。」
などと思ったかどうかは別にして、朔の心は嫉妬の炎で全焼しようとしていた。

すると亜紀は、

亜紀「朔ちゃん、怒ったらダメ。この子は確信犯じゃないよ。」

朔は、

朔「スケちゃんの犬だよ。どうしてそんなにお人よしなことを・・・。」
亜紀「まあまあ。朔ちゃんもいずれはそんなことをするんだから・・・。」
朔「しないよ。してたまるか。」
亜紀「・・・強がるのはいいけど、早くしないと賞味期限が過ぎちゃうぞ。ね。コロ?」
朔「・・・・・・そんな実も蓋もない・・・。」
亜紀「どうなっても知らないよ。他の人に奪われちゃうかもね。」
朔「どうしてそんな言い方をするの?」
亜紀「だって事実じゃない?もう26。そろそろプラトニックもいい加減にしたら?」
朔「だったら、プロポーズどうのこうのは関係ない。」
亜紀「そこだけは譲れないよ。ねぇ、コロ。」

正直、朔は泣きたかった。
反論してみたいが、恵美にブーケを獲られたこともあり、結婚を迫られるのは容易に想像がついていた。
「俺だって、プロポーズはしたい。でも、それに相応しい場所、時期・・・軽々しく言えるわけないだろ・・・亜紀・・・。」
男としての責任、将来への最低限の道すじ・・・・・・。
現実的な考えが朔の頭のなかで大きなウエートを占めていた。

亜紀「それで?コロはどっちに泊まりたい?」
朔「俺のところに来るか?」
コロ「(ん〜〜〜〜・・・・。)」

その場で思案顔のコロは、お座りのポーズのままでそれぞれの顔を見比べている。
やがて、コロはトテトテと亜紀の足元にやってきて舌を出して“ハッハッハッ・・・”としている。

亜紀「よしよし!今日は一緒に寝ようか!?」
コロ「(暖かそう・・・。)」
朔「コロ、よかったなぁ!亜紀はとても暖かいぞ。俺が保証する!」
コロ「(でも、朔はそれでいいの?怒らない?)」

コロが何となくそんなことを思っていそうなことは、その表情から感じ取れた。
そんなコロの頭を優しく撫でる朔の表情を見た亜紀の顔をまた優しさに溢れていた。
廣瀬家へ向かう途中では、手を繋いで歩く2人の足元をコロが、グルグルまわりながらついて行くのだった。

その一方で、ボウズは恵美に詰め寄られていた。
全ては、ボウズの「ブーケ獲れてよかったなぁ。」という、あまりにも不用意な一言だった。
恵美の機嫌をとるつもりが、ストライクゾーンのど真ん中に失投ならぬ失言・・・。
恵美はここぞとばかり、ボウズに迫っていた。

恵美「良ちゃん?私、今のままでも十分幸せだけど、もっと幸せになりたいわ。」
ボウズ「贅沢なことを言うなぁ・・・仏様に怒られるぞ。」
恵美「人間の幸せの追求には、決して怒らなそうな印象を持ってるんだけど・・・?」
ボウズ「人間の不幸な状況を救ってくれるのがメインだろ。朔が亜紀のために信念持って奔走したからこそ、亜紀は助かったんだし。・・・信じる者は救われる。」
恵美「じゃあ、私は信念を持ってあなたとの未来を、幸せな未来を信じる。」

歩きながらブーケを持って優しくも強い眼差しに、ボウズは自分の知らない恵美の一面を感じ取っていた。
ボウズの頭の中にも“結婚”の2文字が全く無い訳ではない。しかし、龍之介と智世、朔と亜紀。
この2組に比べると、自分たちは時間、内容ともに到底及ばないのではないのか?
そんなコンプレックスに近いようなものがあった。もちろん、それは責任というものに裏付けられているものである。

ボウズ「俺でいいのか?」
恵美「え?」
ボウズ「俺でいいのかって聞いてんだよ。」
恵美「それ・・・。」
ボウズ「質問に答えろよ。」
恵美「だって・・・・・・・。」
ボウズ「勘違いするなよ。俺はまだまだ修行中の身であることは間違いないんだ。それでも、皆の成長、お前を守るべき者として考えるようになってからは、だいぶマシになってきたと思う。」
恵美「・・・・・・・・。」
ボウズ「でもよ・・・今この場で結婚ということはあまりに無責任だとしか思えない。」
恵美「分かるよ・・・・・・。」
ボウズ「だから。明白の言葉として口にするのだけはもう少し待っててくれな。」
恵美「タイムリミットは2年だから。私が30になるまでにケジメをつけて欲しいわ。」

無言で頷くボウズがいた。
真っ暗闇の田んぼからは、蛙の鳴き声が時折聞こえては消えていた。反対側の道に見える家の明かりが、いつもとは少し違って見えるような・・・恵美はそう感じていた。
自然と手が繋がり、その温かさに心が落ち着く2人は、しばらくして誰もいないはずの辺りを見回した。それも2、3度、入念に。
その後、2人はボウズのリードで唇を重ねた。
朔以上にシャイでオクテなボウズの一世一代の勝負にも似た行動だったのだろう。ボウズの心臓が激しく鼓動していることが分かった恵美は驚き、そして、その温もりに今までで最高の幸せを感じていた。

恵美「先手を取るのは本当に上手ね。」
ボウズ「言っておくけど、確信犯じゃないからな。」
恵美「どっちでもいいわ。良ちゃん、ありがとう。」
ボウズ「これからもお手柔らかに頼むよ。」
恵美「私のほうこそ・・・よろしくね。」
ボウズ「よろしく頼むぜ。」

ボウズは手こそ繋いでいたのだが、その顔は赤くなっているように思えた。
恵美の心はとても穏やかになり、羽が生えたように軽くなっていて、もはやブーケのジンクスなど忘れ、ボウズを信じることにした。むしろ、その方が確実であると判断し、それ以上は何も言わずに強く手を握る。

ボウズ「少し痛ぇぞ。」
恵美「私、握力は少ないよ?」

軽くトボケたような微笑みを浮かべた恵美は、そのままボウズの手を離そうとは決してしなかった。
ボウズの家では、ボウズの両親と茶の間でテレビを見ながら今日の式が当然のように話題の中心となり、少し遅くまであーだこーだと感想が飛び交った。
広い風呂で疲れを癒した後、ボウズとともに本堂にて座禅。スッキリした気持ちになり、さらに読経。ボウズの修行の日課の一部を体験することによって、精神的にも一回り強くなれるのかもしれない。
独特の呼吸を用いて行なうボウズの読経に、恵美は尊敬しきりであった。

一方。

亜紀「ただいま。」
綾子「お帰り。」
真「2次会はどうだったんだ?盛り上がったろう?」
亜紀「バカ騒ぎとまではいかなかったけどね、楽しかったよ。」
朔「おじさんもおばさんも、本当に無理言って申し訳ありませんでした。おかげで2人は本当に喜んでくれました。」
真「まあ、いいものを見せてもらったよ。」
綾子「そうね。私たちも楽しかったわ。」
真「腰痛もほとんど良くなったしな。」

微妙に浮かぶ口元の微笑みを亜紀は見逃さなかった。
すると、綾子が亜紀の足元にやってきたコロに気付いた。

綾子「その犬、拾ってきたの?」
亜紀「違うよ。智世の犬。」
真「どうしたんだ?預かるのか?」
亜紀「うん。今晩だけだけどね。いい?」
真「まあ、躾られているようだから迷惑でもないが。」
綾子「ついてきたのね?」
朔「気付いたら後ろからついてきてて・・・。」
綾子「お名前は?」

綾子は頭を撫でながらつぶらな瞳に微笑みかけた。

亜紀「コロだよねー・・・ね?」
コロ「(ウン。)」

コロは、軽くシッポを左右に揺らしながら綾子と真に愛嬌を振り撒く。
真もその瞳をジーっと見ながら背中に手を当てた。
普段は少し厳しい目つきの真だが、奥底の本当の優しさがあるからであろうか?コロは全く物怖じしない。

真「こっちに来い。」

真に言われて、コロは足を拭いてもらって後を追った。

亜紀「お父さんって犬好きだっけ?」
綾子「好きでもなければ、嫌いでもないわよ。」
朔「それにしても驚いたなぁ・・・初対面でコロがあそこまで懐くなんて聞いたことなかったなぁ。」
亜紀「そうね・・・。大抵匂いは嗅いでからじゃないとダメだったのに。」
綾子「本当は優しい人だから。お父さん。」
亜紀「そうだね。でも・・・私が小さい頃から優しくして欲しかったな。」

どことなく亜紀の寂しげな顔。
朔は「昔みたく喧嘩しなきゃいいんじゃない?」と言う。

綾子「朔くんの言う通りね。」
亜紀「高望みはしないよ・・・。」
朔「ハハ・・・じゃあ、コロのこと頼むね。」
亜紀「もう帰るの?」
朔「もうって・・11時近いよ。」
亜紀「そっか。じゃあ朔ちゃんまたね。」
朔「うん。おばさん、お邪魔しました。おじさんにもよろしく。」
綾子「はい。またね。」

朔が見えなくなるまで、亜紀と綾子は見送っていた。

続く
...2005/12/13(Tue) 23:45 ID:.rB5vZnw    

             Re: アナザーストーリー4  Name:朔五郎
恵美は、住職の妻の務めを立派に果たせるようになるのでしょうね。
しかし、天才犬コロ、何か波乱を巻き起こしてくれそうな予感が(^^)
...2005/12/15(Thu) 00:10 ID:rPTfSoLo    

             Re: アナザーストーリー4  Name:ぱん太
たー坊様
こんばんは。今回も読ませていただきました。
確かに犬にも酒の向き不向きがあるかも知れませんね。家の近所にあるペットショップのオーナー犬は、夜は銀座でホスト犬(?)をしているようです。銀座のクラブのママさんが、自分の愛犬3匹を放し飼いにしたくて、ペットショップを作ってしまったと言うスゴイところ。3匹ともホストをしているらしいのですが、酒を飲むのは1匹さでだそうです。
さてさて、去年の研修医からはバイトに出られなくなりましたが、それまではバイトに出ることが可能でした。僕も週末の度に当直のバイトに出ていましたが、これが結構な収入源でした。研修を受けていた病院の給与が3万円/1ヶ月でしたから。学生時代に彼方此方のバイトに手を出していて、生活するくらいの蓄えはあったのですが、結婚資金を貯めるために、週に1度だけはバイトに行ってました。サクもバイトに出られる余裕が出てくると良いですねぇ〜。

ではでは、次回も楽しみにしております。
...2005/12/15(Thu) 00:20 ID:qTze7./o    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
朔五郎様
恵美とボウズですが、だんだんと落ち着いていくと思われます。これからの2人の乞うご期待です。
といっても、いきなり結婚しているかもしれませんが・・・。
次回もお読みいただけましたら幸いです。

ぱん太様
バイトですが、その実情は私も知っておりました。ですが、去年からダメになったのですね。情報をありがとうございます。
朔も身を固めたら経済的な面で大いに頑張ってもらわないといけません。そのために、夜勤を多くさせて、その分働いてもらおうかなと思ってます。
次回もお読みいただけましたら幸いです。
...2005/12/18(Sun) 12:41 ID:3CCZSLOA    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
翌朝・・・・・。

龍之介「くか〜〜〜・・・・・・。」

と、おおいびきをかく龍之介。
その時・・・。

智世「スケ!起きろ!!」
龍之介「ふが・・・・・・・・・・・くか〜〜・・・。」
智世「これからこんなスッキリしない朝を何回迎えるの?私・・・・・・。」

ぼやいていても始まらないので、智世は試しに龍之介の顔を引っ叩いた。
“パーン”といい音。

龍之介「もっとマシな起こし方をしらねぇのか!?このブス!!」
智世「知らないわよ。第一、そんな女と結婚したのはどこのどいつだ!?」
龍之介「・・・・・・・・・・・・・・・・。」

ぐうの音も出ない龍之介。
現時点でこの夫婦のイニシアティブは智世の手の中にあるようだ。

智世「早く着替えてご飯食べちゃって。」
龍之介「ふぁ〜ぁ・・・・・・。(あくびで返事)」
智世「締まらないわねぇ・・・・・・。」
龍之介「いいじゃんか、休みなんだし。」
智世「そんなものかしら・・・?」

龍之介は智世が用意したトーストをかじりながら「そんなもんだ。」と聞き取りづらい声で返事をした。

智世「これが幸せというものかな・・・・・・。」
龍之介「そうじゃねぇの?」
智世「そんなもんか・・・そっかそっか。」
龍之介「もしかして後悔してんのか?」
智世「そっちはどうなのよ?」
龍之介「まだわからねぇよ。」
智世「それじゃ、お互い様。」

智世は微笑みながら立ち上がり、台所で洗い物をはじめた。
「早速、暗雲かな・・・?」と、少しだけ不安になる龍之介だった。

一方、こちらも朝を迎えていた。

朔「亜紀〜〜〜・・・・・・・・・。・・・く〜〜〜・・・。」

と、こちらは完全に夢の中にいた。

亜紀「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

亜紀が、忍び足で勝手に朔の部屋に入っていた。
足元にはコロも一緒にいる。

コロ「(サクって・・・・・・バカだね〜。)」
亜紀「これでもお医者さんなんだよね・・・・・・。」

それぞれが呆れた様子を隠しきれないでいた。
すると、亜紀がコロに指で指示する。その合図に合わせてコロは“ストッ”とベッドの上に飛び乗った。そのまま朔の顔を舐めはじめる。

朔「う〜ん・・・・・・何してんだよ・・・亜紀・・・・・。」
亜紀「・・・・・・・・・・。」
コロ「(こいつダメだね。)」

起きる気配すらない朔。
すると・・・・・・。

亜紀「朔!!」
朔「んがっ・・・・・・・ん・・・んぁ?」
亜紀「起きた?」
朔「うう・・・・・・ん?」

まだ開かない目をこすると、視界に入ってきたのは・・・。

朔「肉・・・球・・・?」

コロが右前足を朔の顔の上に持ち上げていた。
ぼんやりしていた朔がゆっくりと顔を横に向けると、コロが舌を出して“ハッハッハッ・・・”と、音をたてながら、朔をつぶらな瞳で見ていた。内心、バカにしながら・・・・・・・。

朔「何だ・・・夢か・・・。」
亜紀「夢じゃないわよ。」
朔「なんだ。」

あまりに呑気な朔に、亜紀は膨れっ面をしている。

亜紀「コロ、踏んづけちゃっていいよ。」
コロ「(ハ〜イ。)」

人間を恐れぬイタズラ好きのコロは、上げていた右前足を朔の頬に下ろしては上げ、下ろしては上げ・・・・・・。亜紀の言うとおりに何度か朔の顔を踏んづけた。
さすがに目が覚めて怒った朔は、コロの首根っこを両手で掴んで思いっきり力を込めようとするフリをした。

コロ「(ヤメテ・・・・・。)」
亜紀「ダメ!!!」

朔は、当然力を入れることをしなかったので、コロは思いきり朔にじゃれた。右頬をペロペロと舐める。

朔「コロ、ストップ。くすぐったい。」
亜紀「朔ちゃん、驚かせないでよ。さっきの顔、今までに見たことのないような顔だった。まさに鬼の形相だった。」
朔「そんな怖い顔をした覚えはないよ。なぁコロ?」
コロ「(結構、怖かったりして。)」

その後、2人と一匹は茶の間へと降りていった。
潤一郎がTVを見ながら朝食をとっている。

富子「起きたのかい?」
亜紀「はい、やっと。」
朔「一言余計なんじゃない?」

軽く嫌味を込めた一言・・・。

潤一郎「余計なことじゃないだろう。もう9時半だぞ。」
朔「親父譲り。」
潤一郎「なーに、バカなことを・・・。」
朔「だって、親父も寝坊したんだろ?お互い様じゃないか。」
コロ「(この親にしてこの息子あり・・・・・・。)」
亜紀「似たもの親子・・・・・・。」
富子「亜紀ちゃん、なぜか子供っていうのはね、いい所より悪い所が似てしまうことが多いもんなんだよ。」
亜紀「やっぱり・・・。」
潤一郎「心当たりあるの?」
亜紀「ええ・・・両親それぞれの問題点を少しずつですけど・・・・・・自覚してます。」
朔「気難しいところと、イタズラ好きなところだ・・・・・。」

聞こえないようにボソッと言ったつもりだったが、亜紀の耳にはしっかりと届いていた。
次の瞬間、おかずの卵焼きをコロにあげてしまった亜紀がいた。

朔「あ・・・・・俺の卵焼き・・・。」
コロ「(ボクは悪くないよ・・・?)」
亜紀「コロ、後でお散歩行こうか?今日は天気も良さそうだし・・・朔なんて置いてっちゃおうね。」

朔の負けが決定。

潤一郎「朔、今さらでもないが、女性は相当強いんだぞ。」
朔「知ってるよ・・・・・・。」
亜紀「ね、知ってるよね。私の名前の由来が白亜紀ってこともね。」
朔「恐竜・・・。」
亜紀「何か言いたげじゃない?」
朔「いいえ、別に・・・・・・。」

朔は、「これから、その大きすぎる尻に敷かれ続けるのかなぁ・・・俺・・・・・・?」と、これからの自分の立場に不安を感じずにはいられない。
親友の披露宴から一夜明けて、とても清々しい一日を過ごせるはずなのに・・・。朔の心は少なからず曇り空。

その後、コロを連れて、朔は亜紀の機嫌をとるために出かけた。
空を見上げると、夏の太陽がキラキラ輝いている。

続く
...2005/12/18(Sun) 12:47 ID:3CCZSLOA    

             Re: アナザーストーリー4  Name:朔五郎
コロはしっかり、亜紀の部下になってしまいましたね(^^;;;
朔に梅雨明けはくるのでしょうか・・・(笑)
介と智世は、まあこんなもんかな、という感じもしますが、今後どうなるのでしょう  (^^)楽しみにしております。
...2005/12/18(Sun) 21:40 ID:i/DIPMY6    

             Re: アナザーストーリー4  Name:ぶんじゃく

読んでいるとこのドラマの光景が目に浮かんできます
亜紀の言い回しなんかはほんとうに、いいそうだな〜
って思います。

これからも楽しみに読ませていただきます。
...2005/12/21(Wed) 01:05 ID:rkrzoak2 <URL>   

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
朔五郎様
返事が遅くなって申し訳ございません。
コロはすっかり亜紀に懐いてしまい、”朔包囲網”が着々と形成されています。梅雨明けは・・・プロポーズするまでは無理かもしれません。
次回もお読みいただければ幸いです。

ぶんじゃく様
お褒めのお言葉をいただきましてありがとうございます。
少しずつ、のんびりとではありますが、リアルさを追求しつつ頑張ります。
これからもよろしくお願い致します。
...2005/12/26(Mon) 17:03 ID:K/7EVxbs    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
朔「あ〜・・・気持いいなぁ・・・・・・。」
亜紀「そうだね・・・。」

朔と亜紀とコロは、あてもなく宮浦の水田風景の中をのんびりとした足取りで歩いている。
時折、腕を高く上げる朔の様子には、亜紀も心穏やかになった。

青々とした稲穂が、そよ風に吹かれているのを見ても心地よさを感じていた。

亜紀「どこに行くの?」
朔「ん〜〜?」
亜紀「どこに行くの?朔ちゃん。」
朔「ん〜・・・・・・・適当。」
亜紀「何年経っても呑気ね・・・・・・。」
朔「人間息抜きしないとやってられないよ。」
亜紀「そうだよね・・・次の面接まで時間があるから肩の力を抜こうかな・・・。」

そう呟いた時、コロがトンボを見つけて追いかけていく。
その様子に2人は少しだけ羨ましかった。
さっさと先を行き、次の道を左折したコロを、朔が呼び止めた。
足元に戻ってお座りをするコロの頭を撫でて言う。

朔「よし・・・お前、思っていたより賢いな。」
コロ「(エヘヘ・・・)」
亜紀「スケちゃんが馬鹿なこと教え込んでるんじゃないの?」
コロ「(スケって、結構アホだったりするよ・・・。)」

まさか飼い犬が自分の悪口を心の中で言っているなど、想像もつくはずもない。

朔「ペットっていいなぁ・・・。」
亜紀「飼いたくなるよね。」
朔「ハムスターとかなら飼えるかも。」
亜紀「まあまあ、気長に待とうよ。」
朔「え?何を?」
亜紀「コロがお嫁さんを連れてきて、子供ができたらもらうの。」

思わぬ亜紀の言葉に、一瞬朔は言葉を失った。
コロもプレッシャーを感じたらしく、元気よく揺らしていたシッポを止めた。
ニコニコ顔の亜紀の一方、コロはさっきよりも離れて歩く・・・・・・。

口数も少ないまま、朔は無言で歩いていく。亜紀もコロも黙って後をついていった。

亜紀「だいぶ奥まで来たけど・・・・・・?」
朔「もう少し。・・・亜紀は2回目かな。」
亜紀「どこなの?2人きり行ったとなると・・・・・・。」

思案顔の亜紀・・・。
すると、朔は亜紀の腕を掴み、いきなり走り出した。

亜紀「ちょっと!」
朔「いいから、いいから。コロ、行くぞ!!」
コロ「(待ってよ!)」

すると程なくして遠い夏の日に見た光景が広がる。
地面には、錆びたレールが視線の先のさらにずーっと向こうの方まで繋がっていた。

朔「じいちゃんに会いに来たんだ。」
亜紀「それで私もなんだね。」
朔「2人で会いに来た方がいいでしょ。」
亜紀「遺灰を撒いたのは私たちだから?」
朔「そう。・・・松本家では、俺以外でこっちにいるじいちゃんを知っているのは俺だけだし・・・他には亜紀しかいなくてね。」
亜紀「・・・・・その言い方は嫌だな・・・。」

亜紀は心なしか怒っている。

朔「・・・・・・何?」
亜紀「まるで、私が他人扱いされてるみたいで嫌。」
朔「だって、他人じゃない。」
亜紀「じゃあ、私は朔ちゃんの何なのよ!!??」

あまりに大きな声だったので、近くにいた小鳥たちは、一斉に飛び立ち、コロは2,3歩後ずさり。
しかし、朔だけは動じることなく冷静に答えた。

朔「俺のお嫁さん。」
亜紀「あれ?」

亜紀はやや拍子抜けだという様子を見せている。
よくよく考えれば悪い気はしない。
線路の上でコロとじゃれあう朔の姿に、亜紀の表情はみるみる輝きを増していった。

亜紀「それで?おじいさんに何をお願いしに来たの?」
朔「願い事とは限らないでしょ。」
亜紀「顔に書いてあるよ(笑)・・・“じいちゃんに何て言おうかなぁ”ってね。」
朔「ウソ・・・?」
亜紀「ホント(笑)」
朔「コロ・・・俺の顔に書いてある?」

コロはつぶらな瞳を朔に向けたままで、「ワン。」と軽くひと吠え。
朔は「そっか、そっか・・・・・・。」と言いつつも、どこか複雑そうな表情をしている。

朔「俺・・・この欠点を直さない限り、亜紀の尻に敷かれ続けるのかなぁ・・・・・・。どう思う?コロ。」
コロ「(ボクに言われても・・・・・・でも、朔って分かりやすいよね・・・。)」
朔「お前もしかして、俺のことバカにしてたりする?」
コロ「(それはないよ。)」

すると、さっきからほったらかしにされていた亜紀がやって来て言った。

亜紀「男同士で内緒話もいいけど、ほったらかしにされてる私の気持ちも考えて欲しいよ。」
朔「あ・・・ゴメン・・・つい・・・。」
亜紀「ヒドイなぁ・・・。」
コロ「(ゴメンナサイ・・・。)」

亜紀は「まぁいっか。やることやろうよ。」と言いながら、線路に下りて真っ青な夏の空に顔を向ける。

亜紀「眩しい〜〜・・・。」
朔「夏だからねぇ・・・。」
コロ「(暑いなぁ・・・今年の夏も、この2人の仲も・・・・・・。)」

呆れ顔のコロの一方で、線路の上では朔と亜紀が空を見上げている。
上を向いたままで亜紀が朔に尋ねる。

亜紀「それで、何をお願いするの?」
朔「スケちゃんと智世のこれからを見守ってくれって言おうかなって。」
亜紀「サトさんの力も借りようってことなの?」
朔「うん。・・・・・・・2人は昨日の披露宴の前にボウズの寺の墓前にじいちゃんと、ばあちゃんには報告したらしいけど、どうせだからサトさんにも頼んでおくのもアリかなって。」
亜紀「アハハ・・・スケちゃんと智世には幸せになってもらおうね。」

そう言うと、2人は目を閉じた。
心の中で手を合わせて謙太郎と写真の中でしか顔を知らないサトにもお願い事・・・。
しばらく目を閉じた後、朔と亜紀は同時に目を開けた。
9年前、重苦しい謙太郎が遺した宿題の片方を、亜紀が持ってくれたときの光景が、朔の脳裏に鮮明に、ついこの前のことのように蘇る・・・。

亜紀もまた、変わらぬ光景を眺めていた。
今は廃線となった百瀬駅、木造の駅舎の屋根はあれからさらなる年月を経て朽ちていた。
まわりの森の木々が、空に向かって少し成長したことが、そのことを実感させている。
故郷・宮浦の街並みも、時間の経過とともに、少しずつではあるが変わっていた。それは、変わって欲しくはないものまでも変えていた。

時の美しさと同時に、残酷さも知る・・・・・・。
ふと、朔が真っ青な空のどこかでこちらを見ているかもしれない謙太郎に語りかけた・・・。

朔「そっちは・・・時間ってあるの?」

亜紀は、朔の方を向いたまま黙って聞き、コロは駅の日陰に体を横たえて呑気顔だ。

亜紀「・・・・・・・・・。」
朔「そっちでサトさんには会えたものだって思って話すけど・・・あの写真のままの姿のサトさんなの?それとも、すっかり白髪のおばあちゃんのサトさん・・・どっちに会えたんだよ?」
亜紀「・・・。」
朔「あれだけ重い宿題を孫に遺して、俺なりに答え出したんだよ・・・・・・。亜紀にも手伝ってもらってさ・・・ちゃんと答え合わせしてくれよ、じいちゃん。」

朔のどこか悪戯めいたような、憎たらしさをこめたような笑顔に、亜紀もそっと語り始めた。

亜紀「サトさんは・・・?サトさんが答えてもいいですよ。」

朔は亜紀の言葉に口元を更に緩めて言う。

朔「どっちでもいいから答えてよ。(笑)」
亜紀「どっちですか?(笑)」

空は真っ青なまま・・・白い雲が比較的早く流れていく・・・・・・。
朔が続けた。

朔「俺さ、じいちゃんとサトさん・・・多分、ばあちゃんに、スケちゃんに智世、ボウズ・・・先生・・・みんなに協力してもらって、亜紀は帰ってきたと思ってるんだ。でも、いつかは寿命でお互いにいなくなる・・・・・・。だからさぁ、来世とかそんな感じかどうかなんておかしいと思うけど、それがあるのか知りたいんだ。できれば亜紀ともう一回人生をって思うから。」
亜紀「私も知りたい・・・。」

誰も答えてくれる者はいるはずがなかった・・・。

朔「まぁいいや。じゃあ、そろそろ・・・・・・あっ!!」
亜紀「どうしたの!?」
朔「じいちゃん・・・サトさん・・・。俺と亜紀のことも頼むね。(笑)」
亜紀「お願いします(笑)」

朔と亜紀はコロを連れて百瀬駅を離れることにした。
すると、亜紀が話し始める。

亜紀「朔ちゃんは想像できる?私たちの未来を・・・。」
朔「イメージしてみる?」

その場に立ち止まり、目を閉じる2人。
コロがおとなしくその場にチョコンと座って待つ。

2人の頭の中には、これからの明るい未来がイメージされていた。
タキシード、ウエディングドレス、それぞれを着たそれぞれの姿。
結婚して温かい家庭を持った。
それぞれの今の両親のように年を重ねた自分たち・・・・・・。

亜紀「私のイメージしたのと、朔ちゃんのイメージしたのが同じだといいな。」
朔「多分、一緒だよ。」

すると、2人はコロを連れて、大木家新居に向かった。
しかし、この時、朔は亜紀にある隠し事を作った。そのことが、後に事件を引き起こすことなど、誰も想像してなかったのである。

続く
...2005/12/26(Mon) 19:59 ID:K/7EVxbs    

             Re: アナザーストーリー4  Name:にわかマニア
 いつもほのぼのとした物語に,コロという新キャラが加わり,ほほえましさが倍加しましたね。
 原作の始めの方で,サクと亜紀が骨折したスケちゃんを見舞った時の会話に,「もしも大木君の名前が芥川龍之介じゃなくて,金之助(夏目漱石の本名)だったら」という場面がありましたが,本当にそうなっていたら,「吾輩は犬である。名前はコロ。ご主人様は,いつも・・・」なんてことになっていたかもしれませんね。でも,そうなったらそうなったで,あのスケちゃんの飼い犬ですから,原作の猫のように「酔って水の中にドボン」という心配もしなくてはいけないかも・・・
...2005/12/26(Mon) 22:30 ID:nCIniha6    

             Re: アナザーストーリー4  Name:朔五郎
百瀬駅に佇む二人の姿が目に浮かびます。
現実の世界に生きている人、追憶の中の人・・・
みんな大切な人たちですよね。
それにしてもコロは今後どんな役割を果して行くのでしょうか。とても楽しみです(^^)
...2005/12/27(Tue) 18:27 ID:G7innxo.    

             Re: アナザーストーリー4  Name:SATO
コロが登場するようになってから、雰囲気がマッタリしてきていい感じですね。
何かとセワシイ世の中で、一服の清涼剤のようです。
...2005/12/27(Tue) 19:38 ID:U3JgHA2c    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
にわかマニア様
犬と猫のすり替えを特別に意識したわけでもないのですが、直感的にスケちゃんの飼い犬にした方が、嵐を呼びやすそうな気がました(笑)
本当に酔わされて海や水田に「ドボン」しないようにしたいと思います。

朔五郎様
今、現実にいる2人ですが、あまりにも大きい宿題を遺してくれた祖父には、現実の世界と追憶の世界のあるのかすら分からない境界線を越えてでも、その答えを聞きたいと思うのではないでしょうか。
特に、来世でも一緒にと願う2人はいろいろ知りたいことでしょう。
それを知るのは、ずっと後ですが・・・。

SATO様
忙しい師走の折、いい気分転換になりましたでしょうか。
穏やかさと慌しさ、吉凶混合の両面を持つコロの登場は、これからのキーポイントになるのかもしれませんが、今はとりあえず、ほのぼのキャラです。しばらくは、”みんなのペット”ととして、いい思いをしてもらいましょう。
...2005/12/27(Tue) 21:28 ID:6najmbUo    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
はすっかり秋の雰囲気・・・・・・。
大学への正門へと通じる通りの両脇につづく街路樹の葉は、冬支度へ向かっている。

亜紀「失礼しました。」

昼食時のキャンパス・・・亜紀は、一礼をして就職課から出てきた。
すると、肩をたたく者がいた。芙美子だった。

亜紀「お昼は?」
芙美子「これから。お姉ちゃんは?」
亜紀「これからよ。でも、次の講義まで時間あるの?」
芙美子「私、前期で単位取っちゃったから講義とは無縁で〜す。」
亜紀「そっか(笑)」
芙美子「それで?就職課に報告してきたんだ?」
亜紀「うん。ようやく肩の荷がおりたというか・・・・・・心配かけてごめんね。」
芙美子「私が言われることじゃないよ(笑)・・・私も結構心配かけたから。」

学生食堂に入った2人。
もう少し早い時間なら、多くの学生で賑わう場所なのだが、あと10分で講義開始ということもあって、かなり人は少ない。

芙美子「お姉ちゃんは何にする?」
亜紀「えーと・・・A定食。」
芙美子「私は・・・五目焼きそば。あっ、から揚げもつけちゃおっと♪」
亜紀「あ、それなら私もコロッケ追加!」
芙美子「は〜い(笑)」

食券を買った2人は、早速引き換えてテーブルに着いた。

亜紀「はい。昼食代。」

亜紀は財布から自分の食事代を出そうとするが、芙美子はそれを制した。

芙美子「今日は、私が奢るから!この前、私の内定が決まった時にご馳走してもらったでしょ。そのお返し(笑)」
亜紀「じゃあ、遠慮なく(笑)」
芙美子「どうぞどうぞ(笑)」

そう言いながら、から揚げとコロッケを少し交換して、姉妹の楽しい時間が過ぎていく。
一昨日、亜紀は、2週間前に受けた恵美の職場から、見事、内定を勝ち取った。
芙美子もまた、それよりも少し前に大学近くの職場から内定を得ていた。

芙美子「それで、どこに行くの?」
亜紀「何が?」
芙美子「お兄ちゃんから誘われてたんでしょ?“就職内定したら、どこか行こう”って。」
亜紀「うん・・・もう少し経ってみないと分からないな・・・。朔、最近忙しいから。」
芙美子「その割りには・・・週末とか会ってない?」
亜紀「忙しいのにね・・・朔から“会いたい”って電話が来ることなんて、今までそんなになかったのにね。」
芙美子「家に帰ってきても、緊張感の中にいる感じ。大変な患者さんがいるみたいだから・・・。」
亜紀「うん。聞いてる。難しいことは分からないから、なるべく邪魔にならないようにしてるんだけどね・・・。」
芙美子「そうだ!これからはどうせ暇でしょ?時々お弁当を持ってってあげなよ!」
亜紀「うん。私もそれは考えてた。」
芙美子「絶対に喜ぶよ!!」

昼食を済ませ、やることのない2人。
次の授業中にさっさと帰宅し、上田薬局店に向かった。

朔がいれば自転車の後ろに乗っけてもらうのだが、生憎、朔は今の時間は勤務中。
少し風が冷たい。すっかり収穫の時期を過ぎ、稲穂などある訳のない水田の中を歩いていく。

薬局の前まで来た時、店の中から出てきたのはコロだった。

亜紀「お出迎え?(笑)」
コロ「(人の気配がしたから。)」
芙美子「しばらく見ない間に大人っぽい顔になったんじゃないの?コロ。」
コロ「(そりゃそうだよ。人間の実年齢なら、あと少しで追い抜いちゃうぞ。)」
亜紀「コロ、智世いる?」
コロ「(いるよ〜。今、何か訳の分からない薬品を調合してる。)」

当然、コロが何を言ってるのかは不明である・・・。
しかし、不思議と意思疎通はできている・・・のかもしれない・・・。

亜紀「智世〜?」

呼びながら店内に入って行くと、そこには白衣姿の智世がいた。

智世「亜紀、あら芙美子もいるじゃない。」
芙美子「遊びに来たよ。智世ねえちゃん。」
智世「あんたたちねぇ・・・・・・仕事中だって見れば分かるでしょ。」
亜紀「ごめんごめん。あまりにも暇だったものだから・・・。」
智世「いいねぇ文系は・・・。私の時はそんな暇なかったのに・・・不公平だな〜。」
芙美子「もう単位は取り終わっちゃってるし。」
亜紀「私も。」

智世は「ムカツク〜!!!」と、言いつつ手を動かし続けている。

智世「で・・・?いつまでここにいるのよ?」
芙美子「ダメ???」
智世「商売の邪魔。」
亜紀「お客さんいないじゃない?」
智世「・・・・・・・・・それが親友に言う言葉?」
亜紀「やだ!冗談に決まってるでしょ。」
智世「どーだか・・・。」

しばし、くだらなくも、貴重な時を過ごした3人。
店の隅にはコロが寝そべっていた・・・・・・。

智世「よし・・・・・・おとうさーん!!2時間くらい店番おねがーい!!!」
智世父「分かった!!」

奥から大きな声で返事が来た途端、智世は白衣を脱いで奥に置き、コロに首輪をつけた。

智世「ほら、2人とも行くよ。」
亜紀「どこに?」
智世「とりあえず、私の家。」
芙美子「あ、いきたーい!!私、結局披露宴にも出れなかったし、2次会のことなんて知らなかったから、行ったことないんだよ!!」
智世「だから、行くんじゃないの。」
芙美子「お邪魔しまーす。」
智世「決まりね!よし、コロ行くぞ!!」

コロは「ワン。」と返事をした。

鍵を回す智世。
しかし、手ごたえがない・・・・・・。
ドアノブを回すと、ドアが開いた。

亜紀「泥棒?」
芙美子「やだ、怖〜い。」
智世「心配しなくていいよ。」
芙美子「え?」

智世は何も気にするそぶりも見せずに、奥に入っていく。
亜紀と芙美子も後に続いた。
そしてリビングに見たものは・・・。

龍之介「よっ。」
智世「今日は終わり?」
龍之介「ああ。12月に入ったら、また毎日海に出るけどな。」
亜紀「スケちゃん。」
龍之介「あがってくれよ。お?芙美子いるじゃん。」
芙美子「お邪魔します。・・・仕事は?」
龍之介「最近はシーズンオフとでも言うのかなぁ。ここ2、3日は網やエンジンの整備が中心ってわけだ。」
芙美子「ふーん。」
龍之介「そういや、2人とも内定出たんだって?」
亜紀「おかげさまで。いろいろと心配させましたね。」
龍之介「まあ、この景気じゃ仕方ねぇな。ま、決まって何よりですよ。」
芙美子「ありがと。」

その時、智世がコーヒーを淹れ、クッキーを持って来た。

智世「これくらいしかないけどね。」
亜紀「気を遣わなくていいのに。」
智世「まぁ、いいからいいから。」
芙美子「じゃあ、お言葉に甘えて・・・。」

クッキーをつまみながら、話は新婚生活を謳歌している2人の現状へ。
あれこれ質問をする亜紀と芙美子に返す答えは・・・。

龍之介「そう、色々聞かれてもなぁ・・・。」
智世「そうよね〜・・・何も変わらないもんねぇ・・・。」
亜紀「少しくらい無いの?私たちが興味を持ちそうな話・・・。」

そうリクエストされても、答えるようなネタが無いのも事実・・・。
この後、結局はただの座談会になってしまった。

そして翌日・・・。

朔「ん〜〜・・・。」
佐藤「さて、昼食にしようか?」
朔「そうですね。」

午前中の診療が終わり、医局に戻った朔に佐藤医師が昼食に誘った。
外に出る2人。

これが事件の発端になることなど、誰も知る由がなかった。

続く
...2005/12/27(Tue) 21:33 ID:6najmbUo    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
読者の皆様
こんばんは。たー坊です。
いつもお読みいただきましてありがとうございます。
先ほど、続きをUP致しました。
最近、不定期な投稿をしておりますが、しぶとく、少しでも長く続くよう、頑張りますのでよろしくお願い致します。
...2005/12/27(Tue) 21:36 ID:6najmbUo    

             Re: アナザーストーリー4  Name:朔五郎
「事件」というのが想像できるようなできないような(笑)
あまり大事件にならなければよいのですが・・・
...2005/12/27(Tue) 22:20 ID:G7innxo.    

             Re: アナザーストーリー4  Name:ぱん太
たー坊様
 こんばんは。ご無沙汰でございます。
 今回も読ませていただきました。亜紀も芙美子も内定が取れたんですね。以前、「バブルの頃は楽だったらしいねぇ〜」云々のことが書かれていたと思いますが、ホントに凄かったらしいです。僕の亡くなった兄は90年入社のバブル組でしたが、就職試験に行くのに、新幹線を使えばグリーン車の代金が支給され、飛行機を使えばスーパーシートの代金が支給されたそうです。半分、旅行気分で就職活動をしている友人もいたとか。おまけに内定を取れば、同業他社の試験を受けないように海外への拘束旅行は当たり前だったようです。この辺は、織田裕二が主演した「就職戦線異常なし」でも同様のことが触れられていますね。一方で野村證券は内定を辞退しに行くとコーヒーをぶっかけられたそうです。ホントかなぁ〜。
 
 ワンコは良いですねぇ〜。我が家でも、僕が帰宅すると二匹のワンコが玄関まで飛んできます。もう一匹欲しいなと思っている今日この頃です。一匹目の躾は結構苦労したのですが、二匹目の躾は上のワンコがしてくれたので、全く躾をした記憶がありません。三匹目も、多分、上のワンコたちが躾てくれるでしょう。

 先日(12/25)は高校駅伝がありました。僕の出身高校は僕が入学する前に全国大会に出ていますが、それ以来、全国大会とは縁がありません。ドラマ版セカチューでは亜紀の走る姿が何度となく出てきますが、結構綺麗なフォームですよね。プロフィールによると、綾瀬はるかさんも中学時代は駅伝の選手だったとか。逆に「ひとつ屋根の下」で見た江口洋介は鈍そうなフォームでした。僕も中学・高校・大学と陸上をやっていて、5000Mをメインに駅伝なんかもやってました。そのせいか、半月板を負傷し、3回ほど手術を受けていますが、大学5年生のときに手術を受けた際、中学からの主治医だった某大学の整形外科教授に「どうせ陸上で飯喰う訳じゃないんだから、もう陸上止めようよ。」と言われたのを思い出します。そう言われればそうなんですけどね。

 さて、年末は明日までの勤務です。幸い(?)今年は年末年始の出勤は予定されていませんし、重症患者も抱えていないので、久しぶりにノンビリしようと思います。12/30から3泊4日で西伊豆のワンワンペンションに行ってきます。チャリンコも積んでいくので、機会があれば松崎までサイクリングに行こうと思います。去年も一昨年も年越しは病室だったので、家内と一緒に年を越すのは3年ぶりです。

 ではでは、次回も楽しみにしております。良いお年をお迎えくださいませ。
...2005/12/28(Wed) 22:22 ID:qEW8D3K2    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
朔五郎様
ご心配をお掛けしている引っぱり方を致しましたが・・・かなりの大事件です(笑)
誰かが絶句してショック死・・・するかもしれませんね(笑)
次回を楽しみにしていただけましたら幸いです。

ぱん太様
以前の就職活動の話については、私も中学時代の恩師から聞きました。
某衣料メーカーでは、面接終了後に、それぞれにジャストフィットしたジーンズを1本ずつプレゼントされたりしたそうですね。うらやましい話です。

また貴重な体験談をありがとうございました。
今年もそろそろ終わりですね。どうぞのんびりと年末年始をお過ごし下さい。
...2005/12/29(Thu) 23:57 ID:jGynLaAc    

             Re: アナザーストーリー4  Name:KAZU
たー坊様
ご無沙汰しております。「事件」とは何なのでしょうか?今年も後僅かとなりましたので、お体をお大事に今後の物語をお待ちしております。
...2005/12/30(Fri) 08:58 ID:TMj3sXAA    

             Re: アナザーストーリー4  Name:SATO
おはようございます。
私も「事件」が気になっています。
暮れの宝くじになるのか、年明けのお年玉になるのかわかりませんが、続きを楽しみにしています(^^)
...2005/12/30(Fri) 09:07 ID:X6jJeWIA    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
KAZU様
本当に今年も24時間を切ってしまいました。
来年は事件を起こす所から始まります。朔にとっても亜紀にとっても大きいですね。
楽しみにしていただけたらと思います。

SATO様
ぶっちゃけますと、いい話ではありません。悪いです。新年早々に縁起が悪いことに・・・(笑)
このキーとなるのは、亜紀です。亜紀がどれだけの心を持っているかで決まります。
でも、そんなに大したことにはならないかもしれませんね(笑)
...2005/12/31(Sat) 02:17 ID:Asc2ycjA    

             Re: アナザーストーリー4  Name:にわかマニア
 スケちゃんの結婚にすっかり気を取られていましたが,そう言えば,パート3の終盤で「バスケ部の少女がケガ」をして担ぎ込まれ,しかも「アザと口内炎」という自覚症状まで訴えていたのでしたね。
 cliceさんの方は,患者の中に亡くなった亜紀の面影を重ねるという展開でしたが,亜紀が目の前にいるこちらの物語では,サクの反応と,それに対する亜紀のリアクションが興味津々ですね。なにしろ,本編第8話で,スケちゃんの姪の写真と手紙の件であれほど嫉妬を見せた亜紀ですから。

 たー坊さん。読者の皆さん。
 今年1年,とても楽しませていただきました。来年も楽しみにしております。
 どうか,よいお年をお迎えください。
...2005/12/31(Sat) 10:31 ID:bZtqmoD2    

             Re: アナザーストーリー4  Name:北のおじさん
たー坊様。

今年1年、大変にお疲れ様でした。
私個人にとって、今年は転機となる年でしたがたー坊さんの物語にどれほど癒され、そして楽しみだったのか計り知れません。
新年は早々に事件が発生するようですが、それもまた楽しみの一つ、どうなるのだろう?と楽しみにしています。
たー坊さんにとって、そして読者の皆さんにとって来年がよい年である事をお祈りいたします。
...2005/12/31(Sat) 17:35 ID:KSWqbJ9A    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
にわかマニア様
明けましておめでとうございます。
そして、早々に鋭い”読み”に、感心いたしました(笑)
年明け一発目のUPは、その少女が起こす事件から始まります。多分、大したことにはならないでしょう・・・。
今年もよろしくお願い致します。

北のおじさん様
明けましておめでとうございます。
昨年は、私の物語が良い気分転換になったとのことでしたが、今年もそう感じてもらえるように書きますので、よろしくお願い致します。
...2006/01/01(Sun) 02:45 ID:gwMt88gg    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
読者の皆様

明けましておめでとうございます。たー坊です。
昨年は、大変な数の励ましのお言葉を頂戴いたしました。この物語が続いてきたのもそのおかげです。
本当にありがとうございます。
今年も続けられるよう、頑張ってまいりますので、変わらず。お読みいただけましたら幸いです。

さて、新年最初のUPは、特別編っぽくしてみました。内容は、わずかに本編と重なるものがあります。
お読みいただけましたら幸いです。
...2006/01/01(Sun) 02:50 ID:gwMt88gg    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
朝の7時を時計が指している。
宮浦の中心から少し離れた所に位置する、とあるアパートの一室。

朔の耳には、優しい声が届いていた。

朔「・・・んん・・・・・・。」
亜紀「起きて。」
朔「う・んん・・・。」
亜紀「朔・・・朔ちゃん。そろそろ起きて。」
朔「ん?ふぁ・・・。」

何年経っても朔の寝起きは悪いらしい。
しかし今日に限れば、亜紀が朔を起こすときに大声を出す事はしなかった。

亜紀「大丈夫?」
朔「・・・ああ。」
亜紀「おはようございます。」
朔「おはようございます・・・。」

“そうだ・・・昨日からは毎日一緒に寝る事になってたっけ。”
朔は心の中で思ったその時、亜紀は少し恥ずかしそうにしていた。

朔「寒くなかった?」
亜紀「暖かかった。やっぱりこれが一番。」

朔の腕に包まれていた亜紀。一緒に同じベッドで寝ていた。
ベッドを整えて朝の身支度と朝食の準備・・・。

朔が学生時代に過ごした東京の部屋を彷彿とさせる、真っ白な壁とライトブラウンのフローリング。そしてローテーブルとソファなど新品の家具一式。洗面台には2本だけの歯ブラシとコップ・・・。

朔はゴミを出しに外へ向かった。すぐそこには収集所がある。そして、戻ってきたときに実感すること・・・部屋の表札だ。

“松本 朔太郎
      亜紀“

ニヤつきながら部屋に戻る朔を、朝食の良い匂いが迎えてくれる。

亜紀「ありがとう。」
朔「どういたしまして。」

亜紀もまた嬉しそうに微笑んでいる。

朔「実感するよ。」
亜紀「どんな風に?」
朔「色々。」
亜紀「そっか(笑)色々なんだね。」

テーブルに朔が着くのを見計らって、亜紀が朝食を運んできた。

朔「いただきます。」

朔が、早速箸を伸ばそうとしたが、亜紀がそれを制した。

朔「何?」

朔が尋ねると、モジモジする亜紀がいる。顔がどんどん赤くなっていった。
そして、

亜紀「・・・こんな不束者ですが、よろしくお願いします。」
朔「・・・俺の方こそ、頼りないかもしれないけど、よろしくお願いします。」

前日に言うべき言葉を亜紀は思い出して朔に告げる。
2人はいつになくぎこちない様子を見せながら、朝食を取り始めた。

現在、1998年10月25日。
なんだかんだと神様は試練を2人に与えてきたが、朔の28歳の誕生日に2人は入籍、そして、昨日挙式した。今日はのんびりしつつ荷物を準備して、明日からの新婚旅行に出発する予定となっている。

亜紀「おいしい?」
朔「うん。うまい。」
亜紀「良かった。」
朔「亜紀の手料理は何でもうまいよ。」
亜紀「ありがとう。お世辞でも嬉しい(笑)」

2人は向き合って座っていた。
何もかもが清々しい。

亜紀「夢じゃない。」
朔「夢じゃないね。」
亜紀「結婚・・・したんだよね?」
朔「ああ。間違いないよ。」
亜紀「・・・ありがとう。」
朔「こちらこそありがとう。」

交際をし始めた時とはまた違う感覚に2人はいた。
亜紀が、色々と聞いてくる。

亜紀「後悔しない?」
朔「するわけない。」
亜紀「幸せ?」
朔「最高に幸せ。亜紀は?」
亜紀「朔ちゃん以上に幸せ。・・・もらってくれて嬉しい。(笑)」
朔「俺は幸せ者です(笑)」

朝食を済ませた2人は、ソファにかけながらTVを見る。
亜紀は朔にもたれた。朔はその顔に自分の顔を埋める・・・。

亜紀「朔ちゃん・・・。」
朔「うん?」
亜紀「呼んだだけ。」

亜紀の表情は今までの中で最高の輝きと幸福感で満たされている。
昨夜、一緒のベッドの中、亜紀は甘くすすりあげていた。
「これまでも好きだったけど、今ほど気持ちが強いのは初めて・・・。」
そう言って、朔の腕の中で甘えた。
そして、眠りに落ちる前にはこうも言った。
「あなたが好きだった・・・ずっと・・・。今、その気持ちは変わりました。・・・愛してるよ・・・ずっと・・・。」
この言葉の直後、亜紀は朔に強く抱きしめられながら瞳を閉じた・・・。

亜紀「そろそろ準備しない?」
朔「わかった。早めに済ませよう。」

トランクに衣類などを詰めていく。
かなりの時間を費やさねばならなかったが、あっという間にそれも過ぎていく。
帰宅するときには、沢山のお土産と思い出をさらに詰めて戻ってこれると2人は思う・・・。

そして翌日・・・。

11年前、死へと向かう車内でのことを回想しつつ現在と比較する・・・。
タクシーからは突き落とされず、亜紀はずっと嬉しそう・・・。
ただ、少し寒いからとの理由で亜紀の頭にあるニットは、闘病生活に用いたものだった。あえて、それを使うのは・・・

“あの時があるから今の自分達がいる。”

そのことを忘れることの無いように・・・。
駅でも比較した。2人で座るベンチ・・・。

そんな事を考える間に、空港に到着した2人。
機内食などのくだらないネタでも話は弾む。搭乗手続きを済ませて機内へ・・・。

亜紀「楽しみ・・・。」

そう呟く新妻に、視線は釘付け・・・のハズなのだが、「へ〜・・・。」と抜けたように呟く朔。
それに気づいた亜紀は、朔の目線がフライトアテンダントに注がれていることに気づいた。

亜紀「(私!)」
朔「(はい。)」

足を踏みつけながら言われてしまったら、従わないわけにはいかない・・・。

やがて、飛行機は大空へと・・・。
                 ・
                 ・
                 ・
                 ・
                 ・
1997年元日。
まだ薄暗い空の下、勤務先で仮眠中だった朔。
なぜかいい夢を見た。

朔「初夢かぁ・・・すっごくいい夢だったなぁ。」

しかし、隣に亜紀がいる訳がない。
朔はとある事情から、大晦日から元日にかけての夜勤を引き受けていた。
しかし、もうすぐ勤務時間も終わる。
幸い、容態が急変する患者さんは出ず、落ち着いた夜勤だった。

そして午前7時。
勤務も終わり、朔は急いで病院を出た。

そして、亜紀も感じるものがあって朔を迎えに病院へ向かっていた。
そう、亜紀もまた同じ夢を見ていたのだ。

2人は廣瀬家近くのバス停で合流した。

朔「あ、どうしたの?」
亜紀「私、どうしても朔ちゃんに言いたいことがあって・・・。」
朔「とりあえず、乗れよ。」

朔はいつものように自転車の後ろに亜紀を乗せ、紫陽花の丘へと向かった。

2人だけの場所。
少し遅めの初日の出を拝む。

朔「実は、夢を見たんだ。」
亜紀「私も。」
朔「じゃ、せーので。」
2人「新婚生活!!」
亜紀「え?」
朔「亜紀も?」
亜紀「うん、すごくいい夢だったの。」
朔「うん。」
亜紀「あんな風になりたいって・・・。」
朔「俺も同じだよ・・・。」
亜紀「同じ夢をみて、同じように思えるのは素敵ね・・・。」
朔「うん。」

2人は、そっと寄り添い朝日を見つめた。
この時、朔は決心した。
“亜紀にプロポーズする。”と・・・。しかし、それにはこの後かなりの時間が費やされたのは想像に容易いことである・・・。

でも、朔はとても良いものを見ることができた。
亜紀の晴れ着姿。魂は抜き取られ、心拍数は急上昇。
その様子に亜紀は気付いていた。嬉しそうに笑う。
そしてまた、魂を抜かれる朔・・・。
今年も朔は亜紀より上の立場になることはできなさそうである。

続く
...2006/01/01(Sun) 02:52 ID:gwMt88gg    

             Re: アナザーストーリー4  Name:SATO
謹賀新年
本年もよろしくお願いいたします。

「バスケ部の少女」の動向が気になりますね。多少ネタをバラシテいただいたので、心配はしていませんが(^^)
...2006/01/01(Sun) 12:47 ID:YyjIY2Ow    

             Re: アナザーストーリー4  Name:朔五郎
明けましておめでとうございます。
朔と亜紀、二人とも同じ初夢を見るとは・・・
正夢になりますように。

本年もよろしくお願いいたします。
...2006/01/01(Sun) 14:53 ID:KmMAsiH6    

             Re: アナザーストーリー4  Name:KAZU
たー坊様
明けましておめでとうございます(^^♪
今後の展開がも〜っと楽しくなるような物語で何か新年早々心地良い感じです。
これからも頑張って下さい!!
...2006/01/01(Sun) 15:35 ID:EhUxHIS6    

             Re: アナザーストーリー4  Name:ぶんじゃく

あけましておめでとうございます。
昨年は色々楽しませていただいてありがとうございます。

新展開ドキドキしてきました、
今年も頑張ってください。
...2006/01/02(Mon) 01:24 ID:F2EgqIOk <URL>   

             Re: アナザーストーリー4  Name:ぱん太
たー坊様

 明けましておめでとうございます。
 新婚生活を始めたと思っていた二人ですが、夢だったのですね。とっても良い初夢ですねぇ〜。
 僕も1年目2年目と大晦日の当直だったことを思い出しました。1年目は深夜の手術もありましたが、2年間は何事も無く終わったのを思い出します。そんなこんなで今年は医師になって11年目を迎えます。今年は入院せずに過ごしたいものです。

 ではでは、今年も楽しみにさせていただきます。
...2006/01/03(Tue) 20:50 ID:F//bAaSM    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
SATO様
謹賀新年
今年もよろしくお願い申し上げます。
本編に戻る際にはあらためてお知らせいたします。
現在は特別編をもう一話作成中です。これも本編にも絡んできます。
今年もお読みいただけましたら幸いです。

朔五郎様
謹賀新年
今年もよろしくお願い申し上げます。
正夢になるかどうかは、私次第なのですが(笑)
その前にたくさんの波乱を用意してみましょうか(笑)
今年もお読みいただけましたら幸いです。

KAZU様
謹賀新年
今年もよろしくお願い申し上げます。
とっても良い夢を見た2人。潜在的に結婚へと進み行くのかもしれません。
今年もお読みいただけましたら幸いです。

ぶんじゃく様
謹賀新年
今年もよろしくお願い申し上げます。
昨年はトラブルも多く、なにかと中断する事も多かったのですが、今年は週一ペースでのんびりと書かせていただければと思います。
今年もよろしくお願いいたします。

ぱん太様
謹賀新年
今年もよろしくお願い申し上げます。
お体はいかがでしょうか?お仕事に熱意を傾けられておられるようですが、体を壊されては元も子もありませんので、ご注意ください。
今年もお読みいただけましたら幸いです。
...2006/01/04(Wed) 16:03 ID:iTH1lXto    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
亜紀「ふぁんへ〜!!!(何で〜!!!)」
朔「ふぉへふぁ・・・ふが・・・ふぁぬぃふぉふはんふぁほ!?(俺が・・・何をしたんだよ!?)」

ギュウギュウと互いのほっぺたをつねって引っ張り合う2人。
朔が亜紀を怒らせてビンタされたりすることはごく稀にあることかもしれないが、今回のこの光景は異様である。
ワケの分からない発音に、ようやく手を離した。

亜紀「バカ!!!何でよ!!」
朔「何だよ!!亜紀が勝手に早とちりをしたんだろ!!!」
亜紀「誤解を招くようなことをした朔ちゃんが悪い!!!」
朔「仕方ないだろ!!分かるだろ!!」

珍しく、朔も語気を荒げて言い返している。
事は、2時間前に起こっていた。

朔は、病院の新人歓迎の飲み会で駅前の居酒屋にいた。
そこへ、やってきたのは勤務先から戻って改札を出てきた亜紀。
ノリノリの様子の見慣れた顔が道路から見えた。次の瞬間、朔が周りを女性に囲まれているではないか。
それから起きたことは、想像した通りだと思う。
耳を引っ張られて家に帰ってきた朔は、部屋でキツイ取調べを受けるハメに。

亜紀「何よ!!去年、病院で起こったことを忘れたとは言わせないわよ!!」
朔「あれだって、俺自身がやったことじゃあない!!亜紀だって、何も言わなかっただろ!!埋め合わせもしただろ!!」
亜紀「・・・うう。」

きつく言われた亜紀は、言葉に詰まって半泣き状態。
怒り泣きとはこういうことを言うのだろう。そんな表情になっていた。

亜紀「グス・・・ひくっ・・・ヒック・ヒック。」
朔「う・・・。」

鼻を吸う音が聞こえる。
次の瞬間・・・。

朔「・・・ズルイよなぁ・・・・・・。」

と、思わず本音がポロッと・・・。
亜紀はとうとう顔に手を当ててしまった。
しかし、いつもはここで優しい抱擁をする朔だが、今回は行動に移さない。
男の意地が邪魔していた。

亜紀「何よ・・・。」
朔「え?」
亜紀「何よ・・・何よ!・・・何よ!!」
朔「・・・。」
亜紀「最近は全然愛情表現もしてくれないのに、そんなことを言う訳!?」
朔「クリスマスにしただろ。」
亜紀「それ以来、何にもないじゃない!!・・・あれから3ヶ月は忙しさ理由に一緒に眠らなかったじゃない!!!」
朔「・・・結局さぁ・・・どうしたいの?」

亜紀は、華奢な体を震わせて精一杯訴えている。
そして、その目には、たくさんの涙がたまって今にもこぼれ落ちそう。

亜紀「・・・・・・気付いてよ。」
朔「え?」
亜紀「私の性格は十分に知ってるでしょ!!私、心が狭いの!あなたが私以外の女の人と一緒に楽しげに食事してるのなんて見たくない!!・・・それだけでイヤなの!!ましてや朔ちゃんはモテるんだから!」
朔「・・・・・・それで?」
亜紀「不安にさせないで!!!あんな様子を見たら仕事も手につかなくなるし、ご飯が喉を通らなくなっちゃうでしょ!!!」
朔「あれだけのこと・・・。」
亜紀「朔にとってはあれだけのことかもしれないけど、私にとっては地球が破滅することよりもショックなことなの!!」

亜紀はそれだけ言うと、ベッドに体全体を沈めて大泣き。まさに号泣・・・。
“うえ〜ん”“わ〜ん”そんな表現の仕方が間違いと感じるほどに突っ伏して号泣。
さすがの朔もどうすることもできずにいた。
それから少しすると・・・。

朔「何なんだ・・・。」
亜紀「・・・・・・・・ス〜。」

寝息を立てる・・・。
「ありえない。」朔は思いっきりそう感じた。
自分のベッドを占領されて起こすに起こせない朔は風呂へ・・・。

翌日・・・。

朝、亜紀が起きた時、自分の頬には朔の両手が添えられていた。
「何のつもり?」そう言おうとして口を動かしたとき、朔は突然行動に移した。
顔を真っ赤にしている2人がいた。
次に、朔は何も言わずにウォークマンを渡すと、部屋を出て行った。

亜紀「何なのよ・・・バカ。」

ポツリとひとりごちる亜紀は、久しぶりにイヤホンを耳にして再生ボタンを押した。
“サー”との音の後で、朔の「あ、あー・・・テス・テス・・・。」と、間の抜けた声が流れた。
亜紀は「ウフフッ。」と、昨夜の怒りを忘れて顔をくしゃくしゃにして笑ってしまった。

テープ朔「亜紀、何であそこまで怒られたのかは、さっぱり分かりません。というよりも、亜紀は最近俺のことを信頼してないんだなと思います。・・・何があったかなぁ俺たち・・・。色んなことを経験して、今は幸せなのにさぁ・・・。」
亜紀「・・・ゴメンなさい。」
テープ朔「いつかは、昔の亜紀を取り戻してくれるものと信じます。とりあえず、朝食を作るので、一緒に食べよう。」
亜紀「はい。」

声に返事をした。しかし、その時すでにテープは終わっていたのだ。
「これだけ?愛の言葉があれば、私はもっと素直になっちゃうのにな!」と、反省の色が薄れゆく亜紀がいた。

髪を整えて2つに分けてゴムでとめて前に持ってきた。
「朔にまだ見せてないよ、これ♡」
鏡でそれの型を確認して、悪戯心を隠さずに笑った。

一方で朔は、朝食の準備を済ませて新聞を読みつつ亜紀を待つ。
「亜紀は最初になにを言うんだろう・・・???」
軽い不安にも似た様子で待つ事5分。ついに亜紀が下におりて来た。

亜紀「ゴメンね。」
朔「いや・・・。」

これだけで仲直り?・・・いや、そんな訳がない。
朝食を済ませた後、朔がご機嫌とりにあることを切り出した。
どこから持ってきたのだろう?その手には宮浦近辺から伊豆半島全域にかけてのガイドブック・・・。

亜紀「レストランガイド?」
朔「どこがいい?」
亜紀「えっ!?行くの???」
朔「うん。」
亜紀「私、お金ないよ・・・高そうなところばかりじゃない・・・。」
朔「奢れとはいわないよ。」
亜紀「割り勘?なら・・・。」
朔「俺の奢り。」
亜紀「え?でも・・・。」
朔「気にしないで。」

正直、朔は朔で早いとこ仲直りをしておきたいのだ。
そう。朔なりにプロポーズし易い環境を整えておきたいことがある。ようするに、最初のチャレンジの場として考えているのだ。そのためなら、多少の出費も覚悟できる・・・。

亜紀は驚きつつも了解して、その日を心待ちにしていた。
しかし、予定2日前の夜のことだった。廣瀬家に電話が掛かってきた。受話器を取った亜紀に聞こえてきたのは、朔の声。
なんと、急な出張で予定をキャンセルしたいというものだった。
「仕事なら仕方ないか・・・。」少し寂しげな声に朔は、

朔「次回にちゃんと埋め合わせするから!」
亜紀「それは後で考えるよ・・・それで、どのくらいの期間?」

一層不安そうに聞いてきた亜紀に朔は「落ち着くように。」と願いを込めて話す。

朔「2週間。東京に。」
亜紀「そう・・・明日から?」
朔「うん。」
亜紀「気をつけてね。」
朔「ゴメン。」
亜紀「じゃあ、お土産買ってきて。」
朔「分かった。沢山買ってくるからさ・・・。」

最後の朔の言い方に、申し訳なさと何かを哀願するような雰囲気を感じ取って、受話器を置いた亜紀は、心機一転、仕事に打ち込んだ。
そして2週間後・・・。

亜紀は自宅で朔の帰りを待つ。
その両手にお土産が沢山入った紙袋を持ってくることを期待して。
するとインターホンが鳴る。綾子が出迎えると、スーツ姿には不釣合いな土産物の袋を沢山ぶら下げた朔の姿。綾子はクスリと笑ってしまう。
リビングに通された亜紀もまた、そのミスマッチな姿には腹を抱えてソファの上で笑い転げた。

朔「笑うなよ!」
亜紀「だってー・・・だってぇ〜・・・アハハハハハハハハハハ!!!!!」
朔「まったく・・・。」
亜紀「ハハハ・・・ゴメンね。」

朔の機嫌を取ろうと一生懸命な様子を見せる亜紀に、すっかり怒りを忘れる朔。
やはり、亜紀の上をいくことは不可能な朔がいた。

上着を脱いだ朔はテーブルの上にドサッと紙袋を置いた。
そして、説明を始める・・・。

朔「えーと、これが“もんじゃセット”。この黄色いのが“東京バナナ”・・・それに“ひよこ”。それに“葛餅”。」
亜紀「すごい・・・。あ、この大きいのは?」
朔「それは“ナボナ”。あと、横にあるのが“鳩サブレ”。」
亜紀「まだあるの?」
朔「うん。奥にあるのが“草加せんべい”。隣が“雷おこし”。」
亜紀「ほんとに沢山あるね・・・。」
朔「ちなみに、その白い箱に入っているのは“たい焼き”。その隣の紙袋には“人形焼”」
亜紀「何で“たい焼き”」
朔「有名なお店があったから、駅に行く途中で下車して買ってきたんだ。
亜紀「ふ〜ん。・・・それに“人形焼”には3箱入ってるけど?」
朔「“普通のやつ”と、“クリーム”に“あんこ”の3種の味。」
亜紀「すごーい・・・。」

とんでもない量に呆れ顔の亜紀。
しかし、綾子があることに気付いた。

綾子「一番奥の袋は?」
朔「あ、えーと・・・。」

ガサゴソ・・・と中を確認する朔。どうやら、まだあるようだ。

朔「“八つ橋”と“博多めんたい”“薄皮饅頭”です。」
亜紀「東京土産じゃないじゃない・・・。」
朔「いやぁ・・・地下街に全国の名産品があったものだから・・・。」
亜紀「東京なのに???・・・京都、博多、福島じゃない。」
朔「じつは・・・これも。」

朔は別の袋から、“牛タン”まで取り出した。

亜紀「仙台追加・・・。」
綾子「東京に行ってたのに・・・。」
朔「あ、最後にこれ。“穴子”」
綾子「羽田の穴子?」
朔「はい。」

綾子は「本当に沢山ね・・・。」と呆れている。

亜紀「このうちのどれをもらえるの?」
朔「好きなのをどうぞ。」

軽い名産品特売会場に変貌した。
母子してあーでもないこーでもないとチョイス・・・。
朔の作戦通りに亜紀の機嫌は完璧に直ったようだ。
そして、亜紀に部屋に通された朔はさっそく、レストランガイドを取り出した。

朔「この前のお店でいい?」
亜紀「本当に無理しなくていいの!ただでさえ、あんなに沢山お土産買ってきて・・・。」
朔「いや・・・余ったら、スケちゃんとボウズにあげれば良いかなって。」
亜紀「じゃあ、来月にしようよ。ゴールデンウィークもあることだし。」
朔「そうしてもらえると助かる。」
亜紀「やっぱり無理してる・・・。」

亜紀の誘導に引っかかり、朔はまたも亜紀に小言を言われた。
でも、結局当日は朔が主導権を握り、亜紀はそれに文句もなく、最高のディナーになったのである。

続く
...2006/01/05(Thu) 01:35 ID:gU3sZUFM    

             Re: アナザーストーリー4  Name:にわかマニア
 遅くなりましたが,明けましておめでとうございます。
 名産品特売会が開けるくらい両手に抱えきれないほどの土産を買い込む姿に,本放送時の夢島編であまりの荷物の多さに「海の家でも開業するつもりか」と冷やかされたシーンが浮かんできました。その辺の性格はなかなか変わらないものですね。
 それにしても,今年もサクは亜紀に主導権を握られっ放しのようですね。この先,どのような展開になるのか楽しみにしています。
 大丈夫か。サクちゃん・・・
...2006/01/05(Thu) 06:40 ID:SMTVvO7.    

             Re: アナザーストーリー4  Name:sin
明けましておめでとうございます。
アナザーストーリーは、自分の中で、生活の一部となっております。無理をなさらずに、たー坊様のペースで、続けていただければと思います。
今年もよろしくお願いします。
...2006/01/05(Thu) 08:32 ID:137UDtks    

             Re: アナザーストーリー4  Name:SATO
好きな人が他の女性と楽しそうに話している姿を見るとやっぱり不安になりますよね。
「心が狭い」のは朔だけではなく、亜紀もだったんですね。

自分も『心が狭い』と反省(?)することが多々あります(苦笑)
...2006/01/05(Thu) 21:07 ID:UBNgb1k.    

             Re: アナザーストーリー4  Name:朔五郎
東京の名店街で名産品を買い集める朔・・・
想像できるから面白いですよね(^^)

ディナーはどんな料理だったのでしょうね。
フレンチ?イタリアン?それとも意表を突いて中華だったのでしょうか・・・
...2006/01/05(Thu) 23:30 ID:i75Gqpho    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
にわかマニア様
謹賀新年
今年もよろしくお願い申し上げます。
スーツに大量の土産物が入った袋を持つ姿は、夢島での姿を参考にしております。同時に、亜紀があきれる姿も同じ所から持ってきました。
なにせ、亜紀の機嫌を取るためですから、それなりに必死になります(笑)
朔は、たぶん・・・・・・大丈夫です。

Sin様
謹賀新年
今年もよろしくお願い申し上げます。
私事ですが、今年はかなりの多忙になることが予想されます。よって、ストーリーのUPが相当に不定期になると思われます。
ですが、マイペースでやらせていただきたいと思います。お読みいただけましたら幸いです。

SATO様
社会人になり、大きく成長した朔には、他の女性が多く関わるようになりました。今までは、かなりの間一緒の時間を共有していましたが、お互いにそれを持つことが少なくなり、亜紀の監視の目が行き届かなくなってきた事から、亜紀の余裕のなさにつながりつつあります。亜紀の不安を払拭するために、朔にはもう少し頑張ってもらいましょう。

朔五郎様
時間をかけてノンビリと土産物を物色していたわけでもないのかなと、私は思います。
気付けば、電車の時間になっていて、慌てて階段を駆け上る姿というのも想像できます。
さて、ディナーですが、次回にそれは明らかになると思います。
...2006/01/06(Fri) 21:31 ID:A3zfZk4Y    

             Re: アナザーストーリー4  Name:ぱん太
ター坊様

 どうも、こんばんは。(おはようございます?)
 早めに帰宅しようと思っていたら急患が飛び込み、こんな時間の帰宅と相成りました。もう少し待てば始発も動いたのですが、3連休が取れて遊びに行くことにしたため、帰って来ちゃいました。昨年末から遊んでばかりでございます。一応は病人(のようなもの?)なので、休ませてくれるときはゆっくり休もうと思っています。新人の頃は手術があると、翌日は休日だろうが何だろうが病院に行ってましたけど、それも今では若手が診てくれます。しみじみ年喰った気分です。同期で入った外科病棟のナースが1月から主任になっちゃいました。そんだけ年喰ったんですねぇ〜。

 ディナー良いですねぇ〜。諸々食事制限があるので、久しく外食とは縁遠い生活を送っています。たまに焼肉食べに行くくらいになっちゃいました。酒もここ2年飲んで無いし。まぁ〜、亡くなった兄貴を思えば、生きて仕事が出来るだけで良しとすべきなのでしょう。

 では、三連休で北上してきます。僕は助手席で眠らせていただきます。

 次回も楽しみにしております。
...2006/01/07(Sat) 04:53 ID:DSRUcloY    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
ぱん太様
遅く?それともほぼ徹夜でしょうか、お疲れ様です。
なにかと不自由なものを感じておられるようですが、やはり命あってのものでしょう。決して無理をなさらずに、制限の中で最大限の楽しみをなさって下さい。それでは3連休を満喫なさってくださいね。
...2006/01/08(Sun) 11:27 ID:KYv0Wao2    

             Re: アナザーストーリー4  Name:サイトのファン
たー坊さんへ
遅くなってしまいましたが
新年、明けましておめでとうございます!!
今年も、しっかり読ませて頂きます
執筆お疲れ様です
まとめて拝読させて頂きました
龍之介と智世の新婚家庭の雰囲気は
読ませていただいていてホノボノしていて
いいですね!!
コロの存在が楽しく、3組のカップルに
どう、絡むのか今後も楽しみです
でも、ボウズと恵美・・・
サクと亜紀の新婚生活も早く見てみたいですね
又、サクの東京土産は笑わしていただきました
年月が積み重なっていっても
サクと亜紀の主導権は亜紀???
なのですかね??
続編、お待ちしております!!
...2006/01/08(Sun) 23:52 ID:EOU3cVV2    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
サイトのファン様
謹賀新年
今年もよろしくお願い申し上げます。
年が何回明けても、朔と亜紀の関係に変化はないようです。そして、スケちゃんと智世もあんな感じでしょう。コロは”ほのぼのマスコット”として活躍してもらうつもりです。
そのうち、ボウズと恵美も出てきますので、楽しみにしていただけたら幸いです。

さて、お正月から特別編を書いてきましたが、後ほどもう一話をUPします。
その後は、本編に戻りますが、特別編ともリンクする部分があります。
今年もお読みいただけたら幸いです。
...2006/01/09(Mon) 01:24 ID:bu9rJ6FI    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
鬼のいぬ間に洗濯・・・。
誰もない松本家の夜。部屋で2人きりの夜・・・。

亜紀「あったかい。」
朔「落ち着く。」

2人でベッドに潜り込んで体を寄せ合う。
真も綾子も、もはや2人の行動には何も言わず、のびのび自由にさせてくれている。
潤一郎と富子もまた2人を信用し、見守っていてくれている。
そして芙美子は女友達の家に泊まってストレスを発散。
そう。“鬼”とは芙美子のことだ。もちろん、そう思っているのは兄だけであるが・・・。

亜紀「最近、疲れやすいんだけど、仕事してるからかな?」
朔「肩でも揉みますか?」
亜紀「そんなこと言って、本当は私をどうにかしようとしてるんでしょ?(笑)」

余裕の笑み。
朔は完璧に見透かされている。

朔「あの、亜紀?」
亜紀「うん?」
朔「そろそろ・・・・・・。」
亜紀「胸だけなら。」
朔「本当!!!???」
亜紀「ウ・ソ!」
朔「・・・・・・・・・・・・。」
亜紀「下心が見え見えなんだから!もう少し我慢。そのときには朔ちゃんが私にプロポーズしてるはず。」
朔「そんなこと言ったってさ・・・・・・。」

ひとつになれる千載一遇の大チャンスであっても、喜び勇んで亜紀を傷つけて嫌われてしまっては無意味。頑張ってプロポーズするまでその気持ちを抑え込み続けなければならないのかと思えば思う程、朔の意識は遠のいていく。そんなことがかなりの時間繰り返されてきた・・・。

「まぁ、いいや・・・。」
それの繰り返し。スケちゃんたちに何度となく相談した事もあったが、その上をゆく亜紀の決意とガードの固さに、もはや、何の術もなく思えて、良い意味で諦めがつきつつあることも事実である・・・。

朔「それじゃあ、今夜は久々だし・・・・・・話す?」
亜紀「愚痴ばかりになっちゃうかも。」
朔「溜めると良くない。少しで良いから話したら?」
亜紀「嫌いにならない?」
朔「・・・俺から話してくれるように頼んでいるのに、そんな理不尽な事はいわねぇよ。」

苦笑いを浮かべて朔は答えた。その表情に亜紀は安心しきって身を寄せて甘える。
その両手で朔の右手を握り、体をピッタリと寄せて朔の懐に顔を埋めるようにして目を閉じてみる。

亜紀「ウフフフ・・・フフ。」
朔「何だよ?ちょっと不気味だなぁ・・・。」
亜紀「安心して。私は朔ちゃんを殺したりはしないから。」
朔「物騒過ぎる物言いじゃない。」
亜紀「だって、もし、私が捨てられたりしたら、夢島で入水して、呪い殺すつもりでいるもの。」

平然と、さも当然のような口の聞き方。
朔は不安よりも、亜紀をそのような心境にさせてしまっている自分の優柔不断さに怒りに近い感情を覚えた。
「何をどうすれば伝わるのだろう・・・???」
そう思ったからこその行動。
亜紀を抱き寄せて長めの口づけ。

亜紀「・・・・・・・。」

ポーっとした表情で朔になおさらの甘えを見せて目を閉じる亜紀だった。
朔が自分の肩から背中にかけて腕を回してくれているのが感じ取れ、亜紀は最近の自分の行動を省みて、朔に謝った。
一言「ゴメンね。」と。

朔「それで?愚痴はいいの?」
亜紀「もういいや。」
朔「(笑)なんだよ、それ・・・。」
亜紀「(微笑)」

いきなり話題がなくなり、朔は少し困る。
しかし、亜紀が別の話題を切り出した。

亜紀「朔ちゃん、免許持ってたよね?」
朔「ああ・・・この前取ったけど?」
亜紀「助手席に乗せて。」
朔「そう言ってもらえるのは嬉しいけど、車を持ってない。」
亜紀「お父さんに頼んで借りようか?」
朔「・・・自信はないよ?」
亜紀「大丈夫。」
朔「・・・・・・どこに行きたいの?」
亜紀「あてなんてないの。ただ、2人きりでドライブに出かけて、楽しい時間を過ごしたいの。」

甘くささやくように頼む亜紀の姿に、朔は感動すら覚えようとしていた。

朔「また、何か食べに行く?」
亜紀「朔ちゃんの奢りなら・・・。」
朔「ファミレスならいいけど・・・。」
亜紀「この前のイタリアンは美味しかったね・・・。」
朔「今度はフレンチのフルコースなんて言う気じゃないだろうな?」
亜紀「なんなら中華の満漢全席とか。」
朔「結婚資金がなくなるから連れて行かない。」
亜紀「フフフ・・・。」

不敵な笑みを浮かべる。
朔は「いずれ、連れて行かれるんだろうな・・・。」と悟った。

亜紀「じゃあ、お寿司で許してあげるよ(笑)」
朔「回転寿司ね。」
亜紀「お願い。」
朔「・・・亜紀は食い意地が張ってるわけじゃないだろうけど・・・。」
亜紀「たまにでいいから美味しい物を食べたい。」
朔「俺の奢りでしょ?」
亜紀「うん(笑)」

朔はそれを聞くと、さっとそっぽを向いて寝てしまった。

亜紀「もっと。」
朔「・・・。」
亜紀「ねえ。」
朔「寝る。」
亜紀「腕の中がいいなぁ。」
朔「はいはい。」

こんなやりとりは、ほぼ毎回のように繰り返される。
言わば儀式のようなものだ。こうして、2人の夜は更けてゆく。

しかし、いつもはこれで終わるはずの2人だが、この日に限ってはそうではなかった。
時刻は午前3時を回ったところ・・・。

朔「う〜ん・・・んん。」
亜紀「・・・・・・・・・・。」
朔「う・・・。」

朔がゆっくりと体を起こした。やけに寝苦しい。金縛りではないが、腕がしびれているような感じがした。よくよく見ると、亜紀が自分の左腕を組んでいたので、それが原因かとは思ったが、それにしても強い力だった。
そして、ふと寒気に襲われて目を覚ます亜紀がいた。

朔「あ・・・。」
亜紀「・・・どうしたの?」

それでも半分くらいしか目が覚めてないらしい。

亜紀「トイレ?」
朔「いや・・・ちょっと寝苦しかったもんだから・・・。」
亜紀「大丈夫?私が腕組んでたから?」
朔「さあ・・・。」

実は、夢も見ていた朔・・・。
それは、亜紀が年老いて抜群のプロポーションが影を潜めた“おばさん”となり、自分を尻に敷いてカカア天下を形成しているというもので、朔にとっては軽い悪夢なのだ。

朔「・・・・・・。」
亜紀「?」

自分のことを凝視する朔に、状況がつかめない亜紀。
「まあ、いいや。」それだけ言い残して、ドサッとベッドに倒れこむ朔に納得できない様子を見せる。

亜紀「ちょっと・・・まだ寝ちゃだめ。」
朔「うん?」
亜紀「ね。」

その微笑のウラにある亜紀の要望をすぐに感じ取った朔。
何も言わずに起き上がり、亜紀を抱きしめて体重をかけた。朔が上に覆いかぶさるような形だが、亜紀は決して警戒しない。朔が良からぬことをしないということを感じ取れるからだ。

亜紀「重いってば。」
朔「あ〜落ち着く。」
亜紀「もう。頭の中では良からぬ妄想してるんでしょ?分かるよ。」
朔「でも、悪い気はしないだろ?」
亜紀「フフ・・・。」

しばらく抱き合った後、再び腕を組んで眠りについた。
しかし、朔はそういうフリをしただけである。さっきの夢のことが頭から離れない。
亜紀の寝顔をまじまじと見つめながら朔の頭の中では・・・。

朔「まさかなぁ・・・20年後にさっきのようなことは勘弁してくれよなぁ・・・。」

その美しく、可愛らしさが残る寝顔に無言で頼む朔がいた。
すると、それに気付いたのか“パチッ”と亜紀が目を開けた。

朔「うわっ!!!」
亜紀「・・・・・・。」

亜紀は「何なのよ・・・もう・・・。」と、とてつもなく恥ずかしそうに顔を片手で覆う。
朔のあまりの驚きようにツッコむこともせずに。

朔「あー・・・ビックリした・・・。」
亜紀「ヒドイ・・・。」
朔「え。アレ???」
亜紀「抱きしめて寝てくれなかったら泣いてやる・・・。」
朔「は???」
亜紀「『好き』って言ってくれなきゃグレてやるぅ・・・。」
朔「わっ!待って!!」

亜紀の最高に幸せな時間と、夜は更けていく。
そして・・・。

亜紀「スー・・・・スー・・・・・・。」
朔「早いとこプロポーズしようか・・・・・・。」

朔の考える時間もまた過ぎていく。

続く
...2006/01/09(Mon) 01:36 ID:bu9rJ6FI    

             Re: アナザーストーリー4  Name:KAZU
たー坊様
徹夜の仕事中に読まさせて頂きホッとしております。この調子で行けば朔が亜紀にプロポーズをするのはもう直ぐって感じですね(^^♪
...2006/01/09(Mon) 03:38 ID:8RJs6s46    

             Re: アナザーストーリー4  Name:ぱん太
たー坊様

 こんばんは。お気遣いいただきまして、ありがとうございます。数時間前に北国から帰京しました。福島の裏磐梯に行ったのですが、湖が一面凍結していて、ワンコ共々遊んできました。
 さて、次回はドライブですか?就職して車を買って、初めて家内をドライブに連れ出したときのことを思い出しました。そのときは横浜まででしたが、翌月くらいに「ラーメン食べに行こうか?」と高速を突っ走ってただただラーメンのためだけに喜多方に行ったことがあります。アホな走り屋でございます。一応、A級ライセンスは持っております。でも、現職場の先輩は、ただラーメンを食べるだけに貯まったマイルを使って、オネエチャンと札幌まで行くことがあるとか.............。それも日帰りで。どっちがアホなんでしょう?
 
 朔と亜紀も結婚が近付いてきたようですね。
 では、次回も楽しみにしております。
 
...2006/01/09(Mon) 20:58 ID:Xm3YDlrw    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
KAZU様
新年を迎えて、今年はいよいよ朔が始動します。
しかし、一波乱起こそうかな・・・とも考えております。その時をお楽しみに。
次回もお読みいただけましたら幸いです。

ぱん太様
お帰りなさい。裏磐梯はいかがでしたか?愛犬はさぞ喜んだことでしょう。充実した時間を過ごされたことと思います。
 さて、またまた貴重で面白いお話をありがとうございます。次回以降の物語に生かしたいと思います。
次回は少し時間を戻します。楽しみにして頂けたら幸いです。
...2006/01/12(Thu) 00:02 ID:ESwMUwkM    

             Re: アナザーストーリー4  Name:双子のパパさん
たー坊様
 遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。今年もたー坊様の物語を楽しみにさせていただきます。
 一ヶ月ぶりにお邪魔してまとめて読ませていただきました。いわゆる稼ぎ時で、年末年始働いていたものですから・・・やっと体がもどってきました.

 暖かな時間が流れていて、ホッとします。亜紀も就職先が決まったようで安心いたしました。ひょっとしたら、これからすれ違いの時間が増えてしまうのかもしれませんが・・。予告の事件が気になります〜!!
 また次回も楽しみにさせていただきます。

 朔!! がんばれ〜(^^)
...2006/01/13(Fri) 23:43 ID:Y94v3AkY    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
双子のパパさん様
謹賀新年。今年もよろしくお願い申し上げます。

年末年始のお仕事お疲れ様でした。
その間、物語も進み本編とも重なる特別編もUP致しました。今年もほのぼの路線で書きたいと思います。マイペースでのUPになると思いますが、お読み頂けたら幸いです。
...2006/01/14(Sat) 10:18 ID:6UjPSku6    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
その頃、亜紀が病院へと続く長く急な坂道を上っていた。
この坂を自らの足で進むのは、これで3回目になるだろうか・・・?

亜紀はこの坂を上る度に、9年前のことを思い出すのである。
当時は絶望的な状況下に陥っていた自分の体・・・。それ以上に精神的にも余裕というものは、当たり前のようにゼロに近かった。
そして、あらためて今思う、朔の変わらぬ自分への気持ち。
この長く急な坂を毎日のように上ってきてくれた朔のことを思うと、感謝しない事などあり得ないのだ。

亜紀「ふふ・・・。」

思わず、顔がほころぶ亜紀がいた。
そして坂を上がりきった。早速中庭に行ってみると、思ったとおり、朔がいた。隣には佐藤医師の姿がある。

亜紀「いたいた。」

亜紀は朔の方に歩いていく。その手にはお昼のお弁当があった。
すると、朔よりも佐藤医師の方が亜紀に気付いた。かつて、とても苦しみながらも生還を果たした患者の姿に、思わず口元が緩む。

亜紀「こんにちは。」

聞きなれた声に朔が気付いた。

朔「あれ?どうしたの?」
亜紀「お弁当持って来た。」
佐藤「へえ〜。いいなあ。」
亜紀「よければ先生もどうぞ。少し多めですから。」
佐藤「それじゃ、お言葉に甘えて・・・朔くん、いいかな?」
朔「どうぞ。お口に合うかは分からないですけど。」
亜紀「・・・それ、私が言うことでしょ。」

亜紀はそう言うと、「朔の分は無しね!」と、佐藤医師にそのまま渡してしまう。
そして、「ゴメン。冗談。」という朔。お互いに心の内はお見通しなのだ。
そんな2人を見た佐藤医師が言う。

佐藤「若いっていいもんだね。」
亜紀「え?」
佐藤「私もそういうことをしたなぁ。今の家内なんだけどね。もう30年以上前の話になるよ。」

佐藤医師は懐かしく、嬉しそうな表情をした。

佐藤「私が医師になりたての頃っていうのは、それこそ、今の時代よりもキツイ状況でね。特に時間がいくらあっても足りない感覚だったよ。だから、家内にお弁当を作ってもらって持って行ったり、持ってきてもらったり・・・。そんな毎日だったなぁ。」
朔「そんなことおっしゃってますけど、ほとんど毎日のようにお弁当を持ってきてらっしゃるじゃないですか(笑)」
亜紀「そうなんですか?」
佐藤「ハハハ・・・。実は、いつも持ってきているのは娘が持たせてくれているものなんだよ。」
朔「そうなんですか?」
佐藤「うん。娘も働いていて、自分のついでだからってね。家内は毎日夕食を作ってるんだよ。」
亜紀「それならいいですよね。もし、奥さんが家事をサボって丸投げしてたら大問題ですけど(笑)」
朔「亜紀。失礼だろ。」
佐藤「はは、構わないよ(笑)・・・全然知らないわけじゃないんだから。もう9年も付き合いがあるだろう(笑)」
朔「それはそうですけど・・・。」
佐藤「ましてや、君は私の部下であり後輩。年は離れてるけどね。・・・亜紀ちゃんは患者であり君の恋人。」
朔「後半は関係ないんじゃないですか?」
佐藤「私の中では大いに関係あるよ。私の医師生活の中で、君たちほど印象に残る患者さんとそのご家族はいなかったよ。・・・・・・・まぁ、嫌な話をすると、危篤の患者さんの前で、我々医師たちスタッフがいるのにもかかわらず、遺産の争いをする人たちもいるんだよ。」
朔「ええ・・・・・僕もついこの間、その場に居合わせましたけど・・・。」
亜紀「本当・・・?」
朔「うん。・・・人間の嫌な一面を見せ付けられたよ。」
佐藤「そうだろう?・・・でも、君たちはそんなこともなかった。もちろん遺産とかそんなことが関係してくる年齢でもなかったけど・・・普通なら、自然と離れていってしまうことも多い中で、君たちの絆には感心させられたよ(笑)」

大いに照れる朔と亜紀。
すると、佐藤医師が驚くべき発言を始めた。

佐藤「ま、君たちは大丈夫だろうけど、念のため言っておくよ。特に亜紀ちゃん、君にね。」
亜紀「え?」
佐藤「朔くんは、患者さんの間でものすごく人気があるんだ。」
亜紀「えっ!!??」
佐藤「女子高生からお年寄りまで幅広いんだ。特に、入りたてのナースたちからは絶大な人気でね、よくコンパに誘われているみたいじゃないか?」
朔「ちょっ・・・先生!!!」
佐藤「アッハッハッハ・・・・・・ゴメンゴメン。」

しかし、時すでに遅し・・・・・・。
亜紀の顔は少し引き攣っていた。

佐藤「特に、君たちの後輩、長田芽衣さん。あの子も朔くんを気に入ってるみたいだし。」
朔「そんな、どこからそんな情報を!?」
佐藤「高野君と、佐々木君。」
朔「うっわ〜〜〜・・・・・・余計なことを・・・。あ、亜紀さぁ・・・まぁ、気にしないで。ね?」
亜紀「佐藤先生、もし、この人が浮気したら、教えて下さいね。」
朔「ちょっと・・・“この人”って。」
亜紀「お願いします。」
佐藤「いいですよ。任せなさい。あ、高野君と佐々木君にも協力を頼まないと。」
朔「そんな・・・。」
佐藤「しかし、そんなことを心配するなら、身を固めたらどうなんだい?」

朔にとっては禁句にも近い言葉・・・・・・動きが止まった。
亜紀がここぞとばかりにたたみかける。

亜紀「私はいつでもいいんですけど・・・彼は口癖のように“3年経ってから”って言うんです。」
佐藤「それはなぜ?」
亜紀「医師として“3年やって一人前”だそうです。」
佐藤「それは殊勝な言葉だねぇ。朔先生?」
朔「俺はいつもそのつもりです。」
亜紀「こんな調子だから、今は、私が待ってるんです。」
佐藤「まぁ、いつでも仲人引き受けるよ。ぜひ式には呼んで欲しいな。白いネクタイを用意しておかないと(笑)・・・・・・2人に言っておくならば、朔くん、君はそこらへんにいるキャリア10年の医師よりも“良い医師”だと思うよ。少なくとも私はね。」
朔「えっ?」
佐藤「患者第一の姿勢。腕も悪くない。実習で来ていたせいか、医師になりたてとは思えないね。私はいつでも安心して引退できると思っていたんだが・・・。」
朔「ありがとうございます。」
佐藤「しかしなぁ、亜紀ちゃんと幸せになってもらわないうちは引退できないな・・・。早いとこ、結婚したらどう?」
朔「だから、火に油を注ぐのはやめて下さい!!!(半泣き)」
亜紀「その時はよろしくお願いします(笑)」

佐藤医師は「任せなさい。楽しみだなぁ。」と微笑みながら、お弁当に手を伸ばしていた。
昼食が済んで少し時間があった2人は昼休みが終わるまでゆっくりすることに。
亜紀が飲み物を買いに行っている時、朔に一人の少女が近づいてきた。

芽衣「先生!」
朔「こんにちは!芽衣ちゃんか。今日は?学校はどうしたの?」
芽衣「通院を口実に午後からサボっちゃいました(笑)」
朔「そんなこと言ってると、谷田部に言いつけるぞ。」
芽衣「あ、それだけは勘弁してください(笑)」

一時は、何か重大な病に侵されているのではないかという疑いがあった芽衣だが、検査の結果、幸いにして異常は見つからず、無事に退院していった。今でも元気に勉強に部活と充実した日々を送っている。
現在は、痛めた腕のケアのため、時々、稲代総合病院に通院しているのだ。

佐藤「こんにちは。」
芽衣「あ、こんにちは。お二人でお昼ですか?」
佐藤「うん。朔先生の知り合いがお弁当を持ってきたから、私もいただいてたんだよ。」
芽衣「そうだったんですか。」

くったくのない元気いっぱいの表情。
今時の女子高生の感じを持ちつつ、どこか気品と大人を感じさせる雰囲気。セミロングの髪が少女から女性への過渡期を印象付けるようだ。
佐藤医師が医局へ戻った後は、朔と世間話。

芽衣「それで、その知り合いの方は?」
朔「今、ロビーの売店で飲み物買ってる。」
芽衣「へ〜・・・でも、このお弁当箱お洒落ですね。もしかして・・・。」
朔「何?」
芽衣「彼女だ!!」

朔は一瞬「うっ・・・。」と言葉に詰まる。

芽衣「そうなんだ・・・・・・。」

芽衣のこの一言には、朔も気付く。自分への気持ちは本物だったと。
すると・・・。

芽衣「公私混同していいんですか〜???さぞ、他の佐々木先生とかに怒られるんじゃ?」
朔「まあ・・・毎日って訳じゃないし・・・。」
芽衣「・・・・・・・・・・。」

その時、亜紀は玄関から缶飲料を両手に朔の本へ戻る途中。当然、朔と芽衣の姿は確認できる位置にいる。
すると・・・・・・。

芽衣「先生、他の女の人の気持ちも考えた方がいいですよ。」
朔「え?」

次の瞬間、亜紀からわずか10メートルの距離、目の前で、芽衣は朔の左頬にキスをした。
それは、当然、亜紀の視界には十分入る光景だった
もちろん、朔も亜紀がいることには気付いていたので、一大事。

朔「ちょ・・・何を・・・?」

そう言いかけたのも空しく、芽衣はさっさと、院内に向かっていた。
ほのかな憧れを抱く少女のささやかな抵抗、強がりだった。

朔「あ・・・あのさぁ・・・。」
亜紀「・・・・・・・・・・・・。」
朔「何て言うか、その・・・。」
亜紀「はい。コーヒ−でよかった?」
朔「う・・・うん・・・。」

重苦しい空気が漂っているように朔には思えた。

続く
...2006/01/14(Sat) 12:54 ID:6UjPSku6    

             Re: アナザーストーリー4  Name:朔五郎
ご無沙汰しておりました。
うーむ、ヤバイ雰囲気ですね。
朔の泣き顔が目に浮ぶようです。
たー坊さんの、ほのぼのとした世界が楽しいです(^^)
...2006/01/14(Sat) 18:16 ID:CvYP/y82    

             Re: アナザーストーリー4  Name:SATO
亜紀にライバル出現!?しかも相手は女子高生とは・・・
朔にはその気はなくても、現場を目撃してしまった亜紀がどんな行動に出るか楽しみです。
...2006/01/14(Sat) 21:26 ID:P7Lig.Z.    

             Re: アナザーストーリー4  Name:にわかマニア
 女子高生の「ライバル」ですか・・・
 智世からの伝聞に過ぎない「親戚の子どもの手紙」であれだけ嫉妬した亜紀ですから,「現場を押さえた」となると,ただでは済みそうもありませんね。
 まさか,一夜明けたら,胸に外国製のハサミが突き刺さっていたなんてことにはならないでしょうが・・・
 別スレ(朔五郎さんの作品)でミチルに振り回されるベーやんではありませんが,
 「大丈夫か。サクちゃん・・・」
...2006/01/14(Sat) 21:39 ID:25BwjqM.    

             Re: アナザーストーリー4  Name:ぱん太
たー坊様

 こんばんは。今日は早めに帰宅しました。
 手作り弁当ですかぁ〜。良いですねぇ〜。そんな経験が一度も無いアホ外科医でございます。まぁ〜、休憩の時間がマチマチなので、空いた時間にパンやらオニギリやら食べてます。そんな生活が10年近く続いています。
 
 白血病が疑われた女子高生は疑いが晴れたんですね。良かった良かった。アフターキャンサー症候群という言葉があります。癌と診断されて、手術や治療を受けて、退院若しくは社会復帰した後に、再発や転移との格闘が始まるわけです。抑鬱になる患者さんも、かなりいらっしゃいます。亜紀はそんなことも無く、元気なようですね。
 フジテレビで西遊記が始まりましたが、どうも三蔵法師と言うと夏目雅子を思い出します。牧瀬里穂もやってましたけど。夏目雅子が入院していた慶応病院は、夏目雅子が窓から顔を覗かせたところを写真週刊誌に掲載され、一部から信用を落としたと言われています。だったら、順天堂はICUで昏睡状態(脳死状態?)にあった小渕元総理の写真を写真週刊誌に掲載されました。内部からの流出ではないかと言われています。
 先週の火曜日は毎月の経過観察通院でした。朝一から待っていたのに、9:00からの診察にも関わらず教授殿に呼ばれたのは9:30過ぎ。思わず「先生、遅いっすよ〜。僕、今日は午後から手術が入っているんですから、10:00には出勤したかったんですよ。勘弁してくださいよ。糖尿病内科では8:30には診療始めてますよ」と愚痴ると、元上司の教授殿は「内科は診察すんのが仕事だからね。外科は、診察もしなきゃいけないし、手術もしなくちゃいけないでしょ?」と言われました。そう言われればそうなのですが、この教授殿、毎朝8:00前には病棟に行ってウロウロしてるんですよね。僕の入院中に教授殿は外来日なのに9:30過ぎまで病棟でウロウロしているのを見かけた(僕のところにも食事中に回診にいらっしゃいました..............。「美味そうに喰ってんじゃないの」と言い残して消えていきましたけど)ので、ついつい愚痴ってしまった次第です。思えば、僕が受けた2回の手術の日も、教授殿は入室前(手術室に運ばれる前)に病室に回診にいらっしゃいました。忙しい方でございます。肝胆膵外科では名の知られた方なので、尊敬はしていますが。以前にも書いたと思いますが、この教授殿、がんセンターの部長から信州大学の教授に就任し、生体肝移植に携わった方。当時は、「がんセンターで肝臓の切除の仕方を鍛えたから、ドナーから肝臓を切除すんのも巧いんだよ」な〜んて陰口を言われていたようです。
 僕が医学部に合格した際、中学からの整形外科の主治医は「何科に進むの?」と聞いて来ました。「心臓外科に進もうと思ってますけど」と言うと「まぁ〜、内科医にメスを持たせれば、外科医だから。将来的に内科医からの外科医への転向は難しいけど、外科医から内科医への転向はさほど難しくない」と仰ってました。
 双方の教授とも内科医を否定するわけでは無いと思うのですが、まぁ〜仲良く連携して欲しいものです。特に血液内科等は外科では何も出来ない訳ですから。

 コンパと言えば苦い思いがあります。1年目のときに当直でも術後の患者を抱えていたわけでも無かったのですが、地下のバーに飲みに行っちゃったんですね。その夜、担当の患者が急変し、ナースが何度もポケベルを鳴らしたようなのですが、地下で繋がらず。当直の先生が処置してくださり事無きを得たのですが、担当医の僕は始末書を書く羽目になりました。それ以来、地下は極力避けております。東京女子医大で国内初の循環器専門施設である日本心臓血圧研究所を立ち上げた榊原仟教授は、著書の中で「夜中に電話のベルがなるとゾッとする。家内も同じで、夜中の電話には鋭敏になってしまっている」と記しています。また、心臓外科を始めて2〜3ヶ月ですっかり白髪になってしまったとも。僕は不眠症になったり白髪になったりはしませんでしたが、留学時代に1週間帰宅できなかったことがあり、それが原因かどうか分かりませんが過労から肺炎でぶっ倒れました。ついでに日本に帰って来てからは、癌でぶっ倒れました。ま、色々とあるもんです。

 では、体調に気をつけて頑張ってください。
...2006/01/16(Mon) 18:19 ID:KCOSrtkA    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
朔五郎様
えー、医療ミスを誘発しかねない精神状態に朔は陥りました。次回以降は亜紀が大人の対応ができるかどうかに掛かってきます。楽しみにしていただけたら幸いです。

SATO様
一番見られてはいけない人に見られてしまったわけですが、当分はしんどい朔が見られるのではないでしょうか?亜紀の行動に変化が見られますので、お楽しみに。

にわかマニア様
「大丈夫じゃないよな・・・オレ・・・」
そんなことを一日一回くらいは言ってしまいそうな状況下に朔はいることになります。ハサミは刺さってはいないでしょうが、大爆発してメスを向けるかもしれませんね。亜紀の逆襲をお楽しみに。

ぱん太様
怪我のみならず、重病の疑いがかけられた少女は、朔に災いをもたらす女の子でした。病気でないのは何よりですが、失恋したので精神的ケアが必要かもしれませんね。
また、貴重なお話をありがとうございました。リアルさを出したい時に参考にさせていただきます。
...2006/01/18(Wed) 21:15 ID:gXWLpNuI    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
亜紀「神様、そして松本朔太郎のご先祖様方・・・どうかこの私の愚かなる恋人に罰を与えたまえ・・・。」

死装束と魔法陣にロウソク・・・当然、五寸釘とワラ人形のセットも・・・。
などというわけではないのだが、亜紀の心は天災が襲来した被災地のように荒れていた。

亜紀「何よ、『ガードが甘い』って怒っておいて、自分だってそうじゃない。」

「えい。」と、朔の写真たてを人差し指でつついて倒した。
「メシ行こう。」朔がいつも以上に、よそよそしさ溢れる優しさの誘いを断り、亜紀は自宅で膨れていた。
「どうやって埋め合わせてもらおうかな!!!」
独り言も迫力がある。正直、亜紀は朔の襟首つかんで揺すって、ビンタの一発でも食らわせてやりたい気持ちなのだ。

亜紀「顔も見たくないわ!!」

そう吐き捨てて、亜紀は眠りについた。
               ・
               ・
               ・
大事件から1週間後のある日。
余計な心配事ができてしまった朔は、睡眠時間が少なくなっていた。
今日は休日のはずなのに、目が覚めたのは7時前・・・・・・。

朔「疲れた・・・・・・。」

第一声がそれだった。
朝から出掛けている両親と部屋で熟睡している芙美子。孤独という言葉が似合う・・・・・・。

しばらくボーっとしていると、
“ジリリリリン!!”
と、いつもより呼び出し音が大きく聞こえた。
受話器を取ると、そこから聞こえてきたのは、最愛の人の声。

亜紀「おはよ!」
朔「(うっ)・・・おはよ。」

当然、朔の気は重苦しい。
しかし、亜紀の声は明るい。先日のことなど気にしていないのだろうか?

亜紀「今日はお休みって言ってたよね?」
朔「うん・・・。」
亜紀「お願いがあるの。10時くらいに家に来て欲しいんだけど、いいかな?」
朔「あぁ・・・。」
亜紀「じゃ、後でね。ちゃんと起きてから来て(笑)」

亜紀は何かしているらしく、さっさと電話を切ってしまった。
憂鬱感が限りなく心を覆い尽くしていくのが自分自身でもよく分かる。
仕方ないといった感じで、洗面所でそれまでの気持ちと眠気を覚ました朔は、トースト片手に部屋の掃除に取り掛かった。
ゴチャゴチャ考えても仕方ない。時間なんて早く過ぎ去ってしまえなどと、なかばヤケクソになりながら、掃除機をかけた。
そして、約束の時間の20分前、ラフな普段着で廣瀬家へと向かった。

廣瀬家の前まで来ると、そこには真の車はなく、駐車スペースがやけに広く感じられた。
その時、“カラカラ・・・・・”と音が上から聞こえた。次に窓から亜紀がヒョコっと顔を出す。

亜紀「いらっしゃい(笑)」
朔「おはよ(鬱)」
亜紀「おはよ(笑)」

「怖い・・・怖すぎる・・・。」
朔の心は再び負のエネルギーで満たされていく。亜紀の屈託の無い笑顔に、朔の罪悪感は最高潮に達した。自分が悪いわけじゃないのに・・・・・・。

亜紀「つっ立ってないで上がって。風邪ひくよ。」
朔「開いてんの?」
亜紀「入れるよ。」
朔「じゃあ、勝手に入るよ。」

表面上は平静を装いつつ、心臓が口から飛び出そうになるほど緊張していた。
ドアさえも重く感じる。
亜紀の部屋の前まで来ると、ドアをノックして中に入った。

朔「・・・どうしたの?」
亜紀「見ての通りよ。」

亜紀の部屋は数多くの段ボール箱やクリアケースで散らかっていた。
そう、亜紀は内定を勝ち取り、これまでの自室を片付けていたのだ。朔が呼ばれたのもここに理由があった。

朔「手伝いますか?」
亜紀「そのために呼んだんだもの。」

悪戯っぽい亜紀の笑顔に、何故だか救われる気がした。
「こうなったら、こっちから謝ってしまえ。」
そう思った朔は、上着を脱ぎつつ、それとなく切り出した。

朔「この前は悪かったね。変なとこを見せてしまって。」
亜紀「本当だよ!!!!!」
朔「自分でもびっくりしたんだ。・・・そういうことをされたというより、亜紀の目の前っていうのがさ・・・。」
亜紀「そうね。私もショックだった。でも、今回については朔ちゃんのせいじゃないし、あの子に対して恨み言を言っても仕方ない。・・・・・・事故ということにしてあげる。」
朔「ごめん。ちゃんと埋め合わせするから。」
亜紀「じゃあ、前からの約束を守って!」

それまで朔に背を向けながら作業をしていた亜紀が、笑顔で朔の方を向いた。

朔「怖いな・・・何?」
亜紀「どういう意味よ???・・・私の就職が決まったら、横浜に行くって約束したでしょ?」
朔「覚えてるよ。」
亜紀「楽しみにしてるからね。・・・さ、この前のことはいいから、手伝って。」
朔「俺、何をすればいいの?」
亜紀「これを運ぶの手伝って!!」

亜紀はそういうと机を“トントン”と叩いた。

朔「模様替えもするの?」
亜紀「うん。この際だから、一気に変えようかなと思ったの。」
朔「それで俺を呼んだの?」
亜紀「うん。」
朔「そういえば、今日はおじさんがいないよね?」
亜紀「うん。お母さんと2人で出かけてる。」
朔「デート?いいね。うちの親父とおふくろに見習ってもらわないといけない。そんなころするような性格に2人でもないけどね。」
亜紀「今度、それとなく言ってみたら?」
朔「・・・・・・やめとく。」
亜紀「なんで?」
朔「想像したら不気味・・・・・・。」

呆れることを隠そうともしない亜紀に、朔は「さっさとするよ。」と言った。

亜紀「もちろん、お昼は私が作ってあげるから。」
朔「あっ、そうなの?」
亜紀「せっかくの休日にタダ働きはさせないよ(笑)」
2人は手始めに、協力して机を移動し始めた。
「せーのっ。」の掛け声でタイミングを合わせて机を持ち上げる。

朔「で?どうするの?」
亜紀「まず、後ろにバック。」
朔「はい。」
亜紀「・・・ストップ!次に、壁に向かって移動!」
朔「はいはい。」
亜紀「もう少し、もう一歩。・・・はいOK!!」
朔「ここ?下ろすよ。」
亜紀「じゃ、せーの・・・。」

床にゆっくりと机を下ろした。

亜紀「次は、タンスを少し動かすから。」
朔「でかいなぁ・・・。」
亜紀「大丈夫よ。中身は全部抜いてあるから。」
朔「それじゃ、早速。」
亜紀「せーの・・・。」

「重い!」思わず、お互いに声を揃えていた。
それでもなんとかわずかではあるが位置を変えた2人。亜紀にとっては最大の山場を乗り越えたのだろう、ハイタッチをして来た。

朔「あとは?」
亜紀「えーと、ここに出してある洋服や小物をタンスの中にしまうの。」
朔「よし。」

朔は早速、自分の近くにあったかごの中に無造作に置かれていた服を手に取り、亜紀に渡そうと手を伸ばしたその時、

亜紀「あ、ダメ!!」

そう叫ぶも時すでに遅し。朔が手にとった服の下からは、亜紀の下着の山が現れた。
朔の体に雷が落ちたような衝撃が走る。

朔「・・・・・・。」
亜紀「見れば分かるでしょ・・・?」

亜紀は顔を真っ赤にして俯いている。さらに朔は、無意識にも不用意な一言をその口から発した。

朔「こういうの穿いてるんだ・・・。」

それから3秒後、朔は自分の偉大なるミスに気付く。
慌てて上から手に持っていた服を籠にかけて隠した。
亜紀の顔はこれまでに見たことのないくらいに真っ赤になっている。恥ずかしさだけではなく、怒りに近いものも含まれているのかもしれない。
そして・・・

亜紀「バカ。」
朔「ゴメン。」
亜紀「バカ!!!」
朔「いや、わざとじゃないよ!」
亜紀「そんなの知らない!朔のバカ!!!」
朔「だって、知らなかったし・・・。」
亜紀「変態!!そんなこと言って、色とか全部はその瞼に焼き付いてるでしょ!!!???」

図星だった。
朔の目と脳には、すでにさっきの下着の色などが鮮明に、かつ正確に記憶されていた。
目を閉じればさっきの映像が真っ先に蘇ってくる。訓練すれば目の前の亜紀の姿に重ね合わせて、あられもない姿を作り出すことができそうだった・・・・・・。

そんな朔の性格をお見通しの亜紀は、そういうことをされるのは気持ち悪いので、あらためて朔に釘を刺しにかかる。

亜紀「私、当分泊まれないね。朔ちゃんの腕の中で眠れないね。危なくて!」
朔「そんな夜這いのようなことはしないって。第一、もう忘れちゃった。と言うよりも、一瞬過ぎて覚えてない。」

冷静な反論をする朔だった。

亜紀「嘘ね。」
朔「いや、本当だって。」
亜紀「う・そ!!」
朔「・・・もういいや。帰る。」

朔が部屋を出て行こうとすると、亜紀が後ろから制した。

亜紀「冗談。」
朔「最近の亜紀は俺に対して疑い深いよね。このままだったら終わるんじゃない?俺たち・・・。」
亜紀「ゴメンゴメン。」
朔「続けるよ。」

2人はその後も作業を続けた。
すると棚の上に、朔がケースの中からはみ出している白い物を見つけた。

朔「あれ、何?」
亜紀「あ・・・制服。」
朔「制服?高校の?」
亜紀「うん(笑)」

亜紀はそう言うと、椅子の上に乗ってケースごと床に下ろそうとした。

亜紀「あ、結構重い。」

亜紀は笑って言うのだが、腕は震えている。
朔は「俺がやるよ。」と言うと亜紀を手伝った。
有り得ないことではあるが、一歩間違えれば折れてしまいそうな亜紀の細い腕。
それが震えるくらいの重量だ。男が手伝うのは当然の光景だった。

ケースの上に薄っすらと積もった埃を雑巾で拭き取り、中から懐かしいものを取り出す。

朔「懐かしい・・・。」
亜紀「ねぇ。これ着てたんだよ。」
朔「この時の亜紀は・・・1番良かった・・・。手は出さずに、穏やかで優しくて・・・。」
亜紀「・・・・・・。」

少し反省した亜紀がいた。

続く
...2006/01/18(Wed) 21:32 ID:gXWLpNuI    

             Re: アナザーストーリー4  Name:ぱん太
たー坊様

 こんばんは(おはようございます??)。
 徹夜の手術が終わったところでございます。疲労困憊でございます。この後、仮眠を取ったら、病棟回診をして、午前中には帰ろうと思います。
 亜紀の誤解(?)も何とか解けたようですね。思わず、同棲生活の準備でも始めるのかと思っちゃいました。

 昨年11月頃、深夜に吐血したので、近所の病院(超有名病院です)の救急に行ったのですが、診断の結果は腸閉塞。痛み止めも投与してもらえず、救急車で東大病院に搬送されました。やっぱ、他の病院で治療を受けている患者って受け入れ難いんですかねぇ〜。東大の救急医ウイ曰く「すぐに、こっちに来てれば、モルヒネ打ってから検査してあげたのに。
 ドラマ「白い巨塔」の中で、教授になった財前が「癌がこんなに恐ろしいものだとは思わなかった。」とか「大学病院の人間は、大学でしか死ぬことが出来ないんだ」という類のことを言っていたかと思います。文字通り、身をもって、その言葉を思い知らされた気分でした。

 では、また楽しみにしております。
...2006/01/19(Thu) 05:14 ID:KXumTvjA    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
ぱん太様
いつも激務でお疲れなのにもかかわらず、ご感想をいただきましてありがとうございます。
亜紀の怒りは、まだ完全には解けておらず、この後、朔の財布の紐はいくら緩めても閉じないような状態になるかもしれません。
次回もお読みいただけましたら幸いです。

貴重な実体験のお話もありがとうございます。
冷え込みが厳しくなっておりますので、お体をお大事になさってください。
...2006/01/24(Tue) 01:25 ID:/sU/AN/E    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
いい音と匂いが、2人きりの廣瀬家のキッチンに広がる。
朔の前では、久しぶりに見せる亜紀のエプロン姿だ。

朔「俺、本当に何もしなくていいの?」
亜紀「いいよ。」

微笑みながら言う亜紀に、朔は軽く頷いて椅子に座って待つ。
制服を見つけてひと盛り上がりした2人だったが、すぐに作業を続けて、お昼を前にひと段落したのだった。
亜紀は、最後の掃除機がけを朔に任せ、キッチンで昼食の用意を始めていた。
そこに掃除を終えた朔が下りてきて、いい匂いに料理の出来を期待している。

どこか懐かしい匂いである。
今日のお昼は焼きそばだ。

亜紀「できたよ〜。」

そう言って亜紀が皿を運んできた。朔には“特大盛り”で盛られている。
思わず思ったことを口にした。

朔「すごいね・・・。」
亜紀「え?多かった?」
朔「もしかしたら、食べきれないかも。」
亜紀「じゃあ、少しちょうだい。」

亜紀は朔の了解を取ると、すぐに自分の皿に移した。これで、朔の焼きそばは“特大盛り”から“特盛り”くらいにはなっただろうか・・・。

朔・亜紀「いただきます。」

2人は同時に箸を口に運ぶ。
亜紀が気になる朔の感想は?

朔「うまい!」
亜紀「ふふ・・・そんなに大げさに言わなくても。」
朔「お世辞抜きだよ。」
亜紀「そう?それならいいわ(笑)」

やはり、喜んでもらえるのは嬉しい。
すると、亜紀は朔の様子を見ながら、一冊の雑誌を取り出した。
明らかな情報誌・・・・・・。

朔「・・・それが目的・・・・・・?」
亜紀「(笑)」
朔「笑顔で誤魔化すな。」

思わず、「しっかりしてるよ。」と言う朔がいた。
亜紀は素早く朔の後ろにまわりこみ、腕を首に回す。

亜紀「約束。」
朔「連れてくってば。」

亜紀は、半ば意地になって色仕掛けを始めた。
朔は高校時代とは違い、そういう攻撃に対する免疫力もついてきたのだが、それを超えるレベルの亜紀の攻撃には、分かりやすい反応を見せた。

その結果・・・・・・。
                    ・
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                    ・
                    ・
1996年12月23日・・・。
その朝。

芙美子「なんでさー・・・一緒に就職内定をしたのに、お姉ちゃんだけ連れて行くわけ?」
朔「そりゃ、妹と彼女とじゃ違うだろ。」

昨夜の電話で彼氏に今日の予定をキャンセルされた芙美子は、亜紀ばりの膨れっ面を見せながら朔に文句を言っていた。

朔「お前、いつまでも膨れてないで、彼氏に連絡をとって、埋め合わせをしてもらえばいいじゃないか?」
芙美子「だって、だってだって・・・。」
朔「お前、もう大人なんだから、準備の邪魔をするな。」

「ふん。」と、芙美子は自分の部屋に戻った。
両親に行き先を告げた朔は家を出て、大急ぎで待ち合わせ場所の宮浦駅へと向かった。

その頃、亜紀は駅の入り口へと来ていた。
約束の時間には少し早いが、待ちきれなかった。

亜紀「寒いな〜・・・・・・。」

フェミニンな格好の亜紀。
首には朔のマフラー。手袋とニットの帽子で、防寒対策はバッチリだ。
少し大きめのバッグを持ち、誰も座っていないベンチへと移動。道路の方に目を向けて、朔が来るのを今か今かと待った。

そして、20分後。
息を切らせて朔がやってきた。予想はしていたが、5分の遅刻だった。
亜紀が見せる極上の笑顔に、朔は恐怖を覚えた・・・。

朔「ゴメン。」
亜紀「せっかくの旅行なのに、ものすごく図太い神経してるね?朔ちゃん?」
朔「その分も埋め合わせをするからさ・・・。」

手を合わせて懇願する朔の姿に、亜紀は何も言わずに微笑んだ。

亜紀「温かいコーヒーで手を打ちましょう(笑)」
朔「はい。」

朔は急ぎ自販機から、缶コーヒーを買ってきた。

亜紀「良くできました。」

微笑を絶やさぬまま、亜紀はスッと、朔の左頬にキスをした。
人目を気にして慌てる朔の姿があった。

朔「バカ。こんなとこで!」
亜紀「誰もいないよ。」
朔「え?」

ラッシュの時間帯も終わり、普段でも人の姿がまばらな駅に人はいなかった。
気を取り直して、朔は予め用意していた乗車券を渡した。

亜紀「ありがとう。」
朔「約束してたから。」

今回の旅行には、朔のそれなりの苦労があった。
先月から残業を多めにして、夜勤もかってでた。いつも一生懸命な上に、さらに頑張って仕事に励み、高野と佐々木の先輩医師に頼み込んで、今日から3日間の休暇をもらったのだ。
もちろん、亜紀も何もしなかったわけではない。教授に頼み込み、学内のバイトを紹介してもらって働いた。それは、全ては今日からを短くも充実したものにするため・・・。

朔「行く?」
亜紀「行こうよ。・・・婚前旅行に。」

朔がドキリとするような言葉。
次の瞬間には亜紀が朔の手を取り、改札を抜けた。

“間もなく1番線に、上り電車が参ります。・・・黄色い線の内側に下がってお待ち下さい。”
アナウンスが流れると、朔が亜紀に話しかけた。

朔「ホテルなんだけど・・・。」
亜紀「うん。」
朔「ビジネスホテルっぽいような感じなんだ・・・。」
亜紀「そっか。」
朔「ゴメン。」
亜紀「何で謝るの?どこでもいいよ、朔ちゃんと2人なら。」

男心にグッとくる言葉だった。
朔は思った。「俺、亜紀の尻に一生敷かれてもいいかも・・・。」と。

その時、電車が入って来た。

続く
...2006/01/24(Tue) 21:46 ID:/sU/AN/E    

             Re: アナザーストーリー4  Name:朔五郎
横浜ですか〜
冬だと、どのへんがいいのでしょうね。
どんなクリスマスになるのか楽しみにしております。
...2006/01/24(Tue) 23:18 ID:VyCvc/.E    

             Re: アナザーストーリー4  Name:ぱん太
たー坊様

 こんばんは。いつもお疲れ様でございます。
 96年のクリスマスって、在ペルー日本大使館が襲撃された日ですよね。何となくうろ覚えで覚えております。ついでに夜は、職場にいたような気がします。昼間に当時付き合っていた家内と病院の近くで寿司食べたような記憶もあります。多分、休みが取れなかったので、20日だったような気がするのですが、東京ドームのマイケルジャクソンのコンサートを見に行きました。コンサートが終わった後、そのまま当直に行ったような記憶もあります。水道橋の駅で別れたから、多分、仕事に戻ったんでしょう。10年前の記憶って結構危ういもんですね。

 横浜ですかぁ〜。僕も家内と初めて二人で泊まったのが、ランドマークタワーのロイヤルパークホテルでした。それも、「あのホテル泊まってみた〜い!」の家内の一言。週末の予約がなかなか取れずに、一ヶ月くらい待ったと思います。横浜の夜景って、あんまり記憶が無いんですよね。アルバムも見返しましたが、横浜の夜景はありませんでした。札幌や大阪、神戸とか京都なんかは覚えてるんですけどね。僕の研修医時代は、まだMM21が開発中で、ロイヤルパークのハーバービューから見える景色は、「深夜の暴走族」でした。(苦笑)

 では、次回も楽しみにしております。
 寒さが特に厳しい昨今でございます。体調には気をつけてくださいませ。
...2006/01/25(Wed) 02:29 ID:UnhrDI5A    

             Re: アナザーストーリー4  Name:KAZU
たー坊様
ご無沙汰しております。
やっと朔と亜紀が次へのステップに行きそうな感じですね(^^♪
最近の二人の関係を拝見しているともう駄目って感じが漂っていましたから。
今後の展開を楽しみにしております!!
...2006/01/27(Fri) 14:32 ID:n/cg7ER2    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
朔五郎様
季節にかかわらず、中華街で1つやってもらおうと考えております。よくある光景だとは思いますが、微笑ましい光景になるよう頑張ります。
布石でも作ってみましょうか(笑)
次回もお読みいただければ幸いです。

ぱん太様
もう10年前の話で、私も記憶が定かではありませんが、当時の横浜はそれほど今と変わりないような気がします。ただMM21の開発とみなとみらい線の開通で便利にはなりました。それは当時は使えないので・・・市営地下鉄でも使ってみましょうか(笑)
とりあえず、大黒ふ頭で爆音ならして走る車には遭遇しない予定ですのでご安心下さい(笑)

KAZU様
こちらこそご無沙汰いたしております。
マンネリ状態がかなりの期間続いた2人ですが、今回の旅行と亜紀が社会人になり、互いに忙しくなることから、少しずつ解消されていくでしょう。あらためて、存在に感謝し合うのではないでしょうか。
次回もお読み頂けたら幸いです。
...2006/01/28(Sat) 21:08 ID:2J0d6CJw    

             Re: アナザーストーリー4  Name:ぱん太
たー坊様

 おはようございます。
 金曜日に朝帰りしたせいか、時差ボケ(?)早めに起きています。普段なら出勤している時間ですが。
 ちょっと愚痴らせてください。長くなるかと思いますが、ご容赦の程。

 1月26日(木)に教授から「2月からバイトに行かない?」と言われました。バイト先は学生時代のバイト先にの某大手新聞社。入社当初、編集局某部のバイト担当だった部長が、今、総務担当役員になっています。他の部長連も役員や関連企業の役員になっていますが。当時、この新聞社の診療所は国家公務員共済組合系の某大手病院から医師を受け入れていましたが、最近、契約を変更し、循環器を女子医大に依頼することになったようです。教授のところに役員から名指しで「ぱん太を派遣して欲しい」との依頼があったようです。話を聞いた僕は、即了承し、早速、その役員に電話をしました。で、金曜日に早く帰れそうだったし、土曜日も久々に休みだったことから、金曜日の夜に食事に行くことに。
 実は新聞記者の平均寿命って短いんです。50歳を過ぎて、若い頃の激務の影響が出るのか、心筋梗塞や脳卒中(広義の脳卒中)、癌での死亡例がかなり多い。僕もバイトとして在籍していた当初、部長級やデスク級の葬儀に何度か出席しましたし、ここ数年では、著名記者だった部長も癌で2名ほど亡くなっています。僕がバイトを辞めたのは95年の12月ですが、そのときに医療担当記者だった新人記者が「医師になって診療所に戻って来てください。あそこの、医者、ヤブばっかりですから」と言っていたのを思い出します。ちなみに、この記者、僕と同年齢で、1年生のときに予備校でバイトしていたときの教え子だったりします。ついでに、この親友だった女性と交際していたこともあり、入社してきた当初、デスク席でバイトをしている僕を見て「なんで、ここにいんの?」って言われたことも。世間って結構狭いもんです。
 話を元に戻して金曜日の夕方。黒塗りの車に社旗をつけた車に出迎えられ、一路、某新聞社へ。一通り話を聞いたと、役員数名、局長級数名と料亭へと繰り出しました。今となっては役員や局長級ですが、90年当時はデスククラス。18歳の田舎のクソガキだった僕を知っている方々です。先生と言われずに、「ぱん太」とか「ぱん太君」と呼ばれ、当時を思い出しました。僕がバイトをしていたのは、90年5月から95年12月です。実に5年7ヶ月もの間在籍していたわけで、小学校&大学の6年間を除けば、最も長い時間を過ごしたことになります。当時の某デスク(現在は、支社長ですかね)からは、「オマエ、毎日いんなぁ〜。社員みてぇ〜」と言われたもんです。3年生になって忙しくなるまでの間、週に6日間も行っていたんですね。時間は17:00〜23:00。月に一回はデスクと飲みに行く。3ヶ月に1回は、カラオケ屋で閉店まで騒ぐ。そんな生活を続けていました。僕が初めて執刀したのも、この新聞社の部長でした。退社の宴会の席で「俺、弁膜症だからいずれ手術しなきゃいけないんだけど、オマエが外科医になったら指名して執刀してもらうよ。実験台でも何でも構わないから」と言ってのけ、事実、外科の研修中に入院して来られ、教授の介助つきで、初めての執刀医をさせていただきました。この方、今は大阪本社で役員をされています。97年当時、仲人をお願いしていた部長は、現在、電子メディア担当の役員。多感な時代を過ごした新聞社だけに、色々な意味で影響を受けました。社会とはどういうものなのか、新聞とはどういうものなのか、報道・取材はどうあるべきなのか、コミュニケーションの大切さ等々...........。また、僕が留学を決めた際、スタンフォードかUCLAに行きたかったのですが、中の良かったUCLA出身の某記者(今は大阪経済部のキャップですかね)に「オマエの性格は西海岸向きじゃない。アイヴィー・リーグに行くべきだ」と諭されました。婚約中だった家内にその旨を告げると「アメリカはハーバードだよ」との一言。で、ハーバード系列の病院に留学した経緯があります。
 22:00食事会が終わり、「久しぶりに現場見てみる?」との編集局長の言葉で、当時とはレイアウトの変わった某部に顔を出しました。出迎えてくれた部長やデスクや懐かしい面々ばかり。仕事の終わった部長やデスクとカラオケに行くことに。3名の部長とその上に編集長がいるのですが、うち一人の部長は何度となくカラオケで閉店まで一緒に遊んだ方。「ついでだから、奥さんも呼ぼうよ」となり、電話をかけさせられ部長直々に呼び出されました。久しぶりに飲んで歌いました。10年ぶりくらいに飲んで潰れました。
 多分、僕は仕事中の自分を作っているんでしょうね。故に昔の自分を知っている人たちの前では、自分を曝け出せる気がします。「オマエ、全然変わってねぇなぁ〜」と某部長から一言。その後、誰が呼び出したのか、仕事を終えた記者までもが合流し、30人くらいになっちゃいました。店から部屋を換えるように促され、大きな部屋へ移動。閉店時間(5:00)までドンチャン騒ぎをしてました。久しぶりに羽目を外して、酔い潰れるまで飲んで(癌発覚以来、初めて飲みました)、朝帰りして、とってもとっても面白かったです。
 
 僕が職場で自分を作っていることは入院中にもあったようです。最初に救急から入院した消化器内科では、病棟のナースたちが「心臓外科の医師が入院して来る。奥さんも、教官だって」という話が広まり、ナースたちも構えていたようです。僕自身も、当初は癌だとは思わず検査入院の気でいたので、「僕はここの医師なんだ」「良い患者でいよう」「我侭は言わないでおこう」という気になってました。だから、消化器内科では浮いた存在になっていたんでしょうね。ちなみに、入院当初のカルテには「未告知・要注意」の判子が押してあります。外科に転床になる前に消化器内科の教授から告知をされ、手術予定で入った外科病棟でも、僕は構えていたようです。要は患者に徹しきれていない。外科に転床してすぐにERCPという胆管と膵管やその枝分かれした部分のX線画像を撮影する検査がありました。この検査を受けた人の3〜5%に副作用として膵炎が起こるのですが、例外に漏れず、僕も膵炎になりました。血液学上、明らかに膵炎なのに、僕は黙って痛みと熱に耐えていました。抗生物質やら抗炎症剤は投与していましたが、痛み止めは繋いでいませんでした。忙しい病棟のスタッフの手を煩わせたくなかったのが本音です。自分も病棟医ですから。そんな心情を見抜いたのか、担当のナースは「ぱん太君、意地張らないで、苦しいときは苦しいって言ってくれて良いし、痛いときは痛いって言ってくれて良いんだよ。我慢しなくて良いからさ。膵炎の痛みは激痛でしょ?」」と言われました。このナース、家内の大学の同期。博士号を持つナースです。入院中、ナースの中で唯一、僕のことを「先生」と呼ばなかった一人です。本心を見透かされた僕は、涙がこぼれました。手術の日程が12月1日に決まり、麻酔科の診察も終え、手術前の土曜日に初めて手術への不安を愚痴ったのも、夜勤中のこのナースに対してでした。医師であるが故に、症状や手術の説明、麻酔の説明も極要点だけです。「何か分からないことは?」と聞かれますが、全部が全部分かっている。ただ思うのは、術後の痛みと合併症、その後の経過への不安だけ。メンタルな不安は、上司でも教授や同僚でもある麻酔医には言えなかったんです。自分で散々、心臓手術の執刀をしていて、痛みに関しては不安だらけだったんですね。後から聞いたのですが、事前に教授が家内に聞いていたそうです。「ぱん太君は痛みに強い方ですか?」と。「多分、弱いと思います」と家内は答えたらしく、手術後の僕には非モルヒネ系の強力な痛み止めが投与されていました。
 当時の日記を読み返しました。麻酔科の診察で心臓疾患の既往症があり、中学2年の時に受けた全身麻酔で仮死状態に陥ったことを告げると「確かに心電図で不整脈が出てるんだよ。ここは先生の専門だから分かると思うけど、リスクが大きいなぁ〜。そのカルテを取り寄せた上で、循環器内科の意見を聞くことにするよ。場合によっては、立ち会ってもらう」と言われています。翌日には20年近く前のカルテを取り寄せ(よく保管してあったもんです)、循環器内科の診察を受けました。
 ナースたちと打ち解けるようになったのは、担当のナースに不安を漏らすようになり、本当の意味での患者になってからでしょうか。その頃、僕は家内に頼んで、我が家のワンコの写真を持って来させ、ベッドサイドにベタベタと貼っていました。セカチュウの亜紀の病室のようには行きませんでしたけど、10枚くらいは貼り込んでしました。ついでに、家内とのツーショットの写真も。
 教育が行き届いていると思われていた病院の中で、唯一気に入らなかったのが看護助手の存在です。配膳したり、患者を検査に案内したりするのが仕事です。手術前に差し歯を治しておこうと、口腔外科外来に行ったのですが、その案内をしてくれたのが、件の看護助手。自分の病院だから勝手に行けるのですが、カルテやら検査データは持たせてくれない。で、一緒に行ったわけです。道中(?)、その看護助手は「あんたんとこ、子供いないの?」と一言。家内だけが連日見舞いに来て、子供の姿が全く見受けられないことを見ていたようです。「いません」と返すと「不妊治療はしないの?若いうちじゃないとダメよ」と。「子供の代わりに犬飼ってんですけどね」と言えば、「うちも犬飼っててさぁ〜、去年、癌で死んじゃったのよ。悲惨な最期だったわ。癌て気の毒よね」と。悪気は無いのでしょうが、僕は内科で癌告知をされ、手術目的で外科病棟に転床し、手術を前に不安な日々を送っている身。どうも、いやぁ〜な気分になりました。「不妊治療なんて、昔からやってるよ!おまけに、これから癌の治療受ける身で、いつ死ぬか分からない人間に、無責任に子供作れるわけねぇ〜だろ。ペットが癌で死んだ?俺も癌だよ。」と思わず言いたくなりましたが、そのときは堪えました。その後、一部始終を担当ナースに話すと、師長がお詫びを言いに来ました。以来、僕の付き添いにはナースが着くようになりました。これって我侭でしょうか?

 まだ、あるのですが、今回はこのへんで。
 乱文失礼しました。

 ではでは。

 
...2006/01/29(Sun) 07:48 ID:6BapXWwk    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
ぱん太様
お疲れ様です。

いろいろと気苦労が耐えないようでございますが、なるべくリラックスなさって下さい。
社会経験乏しい私がコメントするのも失礼ですので、何も申しません。
その代わり、物語が気分転換になればと思っております。
...2006/01/30(Mon) 20:50 ID:Bvu6p6rE    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
ゆっくりと電車がホームを出て行く。
ボックスの向かい合った席に座った2人。亜紀は流れる景色を見ながら、朔に話しかけた。
その顔は期待に満ち溢れている。

亜紀「朔ちゃん。」
朔「ん?」
亜紀「デートコースは決めたの?」
朔「おおまかなとこだけは決めたけど?あんまりキッチリしても窮屈でどうかなって。」
亜紀「ふ〜ん。」
朔「一応、こういうのは持って来たんだ。」

朔は隣に置いたバッグの中から東京・横浜近辺のガイドブックを取り出した。
早速、亜紀がそれに飛びついた。

朔「・・・このあたり、どうかな?」
亜紀「朔ちゃん、私のワガママをふたつだけ聞いて欲しいの。いい?」
朔「“100万の結婚指輪を買え”とかっていう、無茶なことをしなきゃいいけど・・・?」
亜紀「やだ!そんなこと言わないよ!」
朔「そうだよね(余裕の笑い)」
亜紀「それは、朔ちゃんにプロポーズしてもらってからよ!」
朔「えっっ!!!???・・・そんな無茶苦茶な!!!」

思わぬ亜紀の切り返しに、朔は慌てふためくことを隠そうともしない。
すると、亜紀はニッコリと微笑んで言う。

亜紀「冗談。」
朔「なんだぁ・・・。」

一気に肩の力が抜ける朔が見せる間の抜けた表情に、亜紀は面白く感じて笑った。
気を取り直して朔は本題に戻った。

朔「それで?」
亜紀「これに載ってると思うよ・・・。」

亜紀はパラパラとページをめくっていく。
やがて、“その場所”のあるページを見つけた。
そのページに載っていたのは、山下公園の夜景・・・。

朔「随分、メジャーな場所だね。」
亜紀「嫌?」

朔の不用意な一言に、亜紀は軽く膨れている。

朔「怒らなくても・・・そういうとこ、嫌いだよ。」

これまた膨れる朔・・・。
すると、“嫌いだよ”と言われた亜紀は、すぐさま頬を引っ込めて謝る。
かなりショックだったようだ。この時、朔は亜紀の弱点を発見し、それをアドバンテージとする方法をみつけたようだった。
やがて、電車はある駅へと到着した。

朔が荷物の準備をし始めた。どうやら降りる準備をしているらしい。
亜紀は何も聞かされていなかったので、慌てて準備をした。

亜紀「事前に言っておいてよ。」
朔「あ、ゴメン。」
亜紀「それにしても何で乗り換えるの?」

亜紀の疑問は、この先の駅で乗り換えるはずだと思い込んでいたことに起因する。
事実この先の駅の方が、東京方面への直通電車の本数が多いのだ。
朔はそんなことにはお構いなしに亜紀を連れて売店へ。
何種類も並べられている駅弁を見せて「どれがいい?」と。
亜紀は、とりあえず、好みのを選んだ。朔は別の種類を選ぶ。もちろん、飲み物も忘れずに・・・。

階段を登り、別のホームへとやってきた2人。
すると、朔がポケットから特急券を取り出した。

亜紀「それで?」
朔「そう。これで。」
亜紀「べつに各駅停車でもいいのに・・・。」
朔「ちょっと、大人っぽくない?高校生とくらべたら。」
亜紀「何もリッチな気分じゃなくてもいいの。のんびりしながら行くのも情緒があるでしょ。」
朔「でも3日しかないんだよ?なんだかんだ言って時間がなくなるなら、一ヶ所でも多くの場所をまわった方がいいと思う。」
亜紀「そうかなぁ・・・?」
朔「そんなに的を外れてはいないと思うけど?」
亜紀「一理ある!」

亜紀は明らかに納得していないものの、大したことでもないのでさっさと割り切った。

それから10分後、アナウンスの後で東京行きの特急電車がホームに入ってきた。
乗り込む2人。ゆっくりと走り出した電車の中、自分たちの座るべき席を探す。

朔「10のAとB・・・。」
亜紀「10?」
朔「うん。」

荷物片手にプレートを探した。
先頭車両にやってきた2人は、程なくして自分たちの席を探しだし、棚に荷物を乗せて、飲み物だけをしまわずに座った。

大きな窓の向こう側では、景色が過ぎ去っていく。

亜紀「たまにはいいね。」
朔「言っただろ?」
亜紀「はい。私の負けです(笑)」

しばし外の景色を見ながら話は弾んだ。
右手に広がる太平洋に興奮。何度見てもこの景色には目を奪われる。

亜紀「そういえば、今年は海にも行かなかったね。」
朔「その代わり、披露宴をしたでしょ。」
亜紀「あれも良かったけどね。」
朔「どっちみち無理だったでしょ。亜紀だって就職あったんだし、俺は俺で忙しかったし。」
亜紀「まあね。」
朔「今回の旅行はその埋め合わせじゃないけどさ。その分楽しもう。」
亜紀「そうする。」

亜紀が微笑みながら返してきた。
人が少ないので、2人は座席を大きく倒した。

亜紀「ねぇ?」
朔「何?甘ったるい声出して?」
亜紀「最近、甘えてないよ?私。」
朔「ホテルに着いてからでいいでしょ。」
亜紀「そうね・・・どのみちベッドは2つあるだろうけど、1つしか使わないし、その時にでも。」
朔「声の音量がでかい。もう少し下げろよ。」

亜紀の人目を気にも留めていないような一言に対して、朔が毒づくように釘を刺した。
それでも、亜紀はおかまいなしに続ける。そっと朔の手を握り締めて。

亜紀「これからは、こんなことは滅多にできるものじゃなくなるの。少しでもこうしておかないと。」
朔「何のために?」
亜紀「朔ちゃんが浮気しないために・・・かな?」
朔「やっぱり、この前のことを根に持ってんだろ・・・。」
亜紀「持ってないよ。」
朔「嘘つけよ。」
亜紀「持ってない。」
朔「じゃあ?」
亜紀「私ね、嫉妬しやすいのよ。朔が他の女性と手なんか繋いでたら、呪っちゃう。」

クスクス笑いながら言う亜紀に、朔は「笑えない。」と一言。

亜紀「私ね、朔以外に考えられないな。」
朔「そりゃどうも。」
亜紀「・・・少し、そっけないな。」
朔「声がでかいんだよ。」

楽しいお喋りをしている間に、電車はあっという間に年の瀬の都内へと入っていた。
久々に降り立つレンガ造りの駅舎。とりあえず、ベンチを見つけた2人は、これからどうしようかと話し合い始めた。

亜紀「渋谷?原宿?」
朔「何で?」
亜紀「芸能人の卵をスカウトしたりするんでしょ?もしかしたら、私も・・・。」
朔「絶対に許さないからな。」
亜紀「そんな怖い顔しなくても・・・冗談なのにな。」
朔「ならいいけどさ。」

いつもの表情に戻る朔。
とりあえず、今日は都内を回ることにした2人。山手線のホームへ。
             ・
             ・
             ・
             ・
             ・
「何で、こんなとこに来たいんだよ・・・。」

小声でぼやく。
朔にとっては久しぶりに来るところだった。

続く
...2006/01/30(Mon) 20:53 ID:Bvu6p6rE    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
読者の皆様
こんばんは。たー坊です。
いつもお読みいただきましてありがとうございます。

さて、今回私の都合により、執筆活動を中断致します。すくなくとも3週間から1ヶ月はUPできないと思われます。
決して良いとは言えない物語ではありますが、いつもお読みいただいている皆様にご迷惑をお掛けいたしますが、よろしくお願い致します。
...2006/01/30(Mon) 21:05 ID:Bvu6p6rE    

             Re: アナザーストーリー4  Name:ぶんじゃく

お帰りをお待ちしています。
...2006/01/31(Tue) 00:51 ID:XsTBc.zY <URL>   

             Re: アナザーストーリー4  Name:ぱん太
たー坊様

 おはようございます。
 お帰りをお待ちしております。

 ではでは。
...2006/01/31(Tue) 05:15 ID:L9t.uAUE    

             Re: アナザーストーリー4  Name:双子のパパさん
たー坊様
 お疲れ様です。
 お帰りを楽しみにお待ちしております。
...2006/01/31(Tue) 13:18 ID:ecPBBN6g    

             Re: アナザーストーリー4  Name:Marc
たー坊 様

ずっと待ってます、お気になさらずに。
セカチュウだって、あと半年もしたら2年も経ちます、
ずっと楽しませて頂いているのに、書いていただいて
いるだけで幸せなんですから。

それでは、また。
...2006/01/31(Tue) 15:38 ID:RG9Buxnk    

             Re: アナザーストーリー4  Name:KAZU
たー坊様
気長に待っていますので、ゆっくりと執筆して下さい(^^♪
...2006/01/31(Tue) 17:15 ID:dg8qKaXQ    

             Re: アナザーストーリー4  Name:祖父がカメラマン
たー坊様

初めまして。いつも大変楽しく拝読させて頂いております。
女房に薦められてサイトを覗く様になってから、約6ヶ月。
ここに来ればサクと亜紀に逢える、あのままの二人に逢える気がして、多忙な日々のオアシスとさせて頂いております>夫婦共々。
さぞかし日常生活と執筆活動の両立は大変だと思いますが、お体に気をつけてお過ごし下さい。
亜紀の言葉を借りれば、「…まぁまぁ、気楽に待とうよ」状態でお帰りをお待ちしております。

で、皆様に相談というか、勝手なお願いがあります。
たー坊さんがお戻りになられるまで、繋ぎの話題として一作投稿させて頂いてもよろしいでしょうか?
勿論このスレは使用せず、別スレを立てるつもりですが…
女房にひつこくせがまれてるのと、たー坊さんの作品を拝見して久々に創作意欲が湧いたのと、
何より私自身が、やはり幸せな二人の姿を見たいが故に何かお手伝いができないものかな…等と考えまして。
時期は、今たー坊さんが執筆されている内容よりも大分前のものになります。
拙い内容ですが、ある種の箸休めとして投稿してみたいのですが…如何でしょうか?
正直ダメと言われても投稿するつもりですがw、余り反論が多ければ見合わせます。このオアシスを失いたくないですから。
忌憚の無い御意見を拝聴したくお願い申し上げます。
...2006/01/31(Tue) 23:17 ID:We.8XRhw    

             Re: アナザーストーリー4  Name:JBL
祖父がカメラマン様へ

行きましょう!!
でも、肩肘張らずのんびりと!
...2006/01/31(Tue) 23:45 ID:ltDkKdxE    

             Re: アナザーストーリー4  Name:朔五郎
たー坊様

まずは感想を・・・二人で旅行する嬉しさが溢れているのが、良く伝わってきて楽しいですね。特に亜紀が楽しそうなのが印象的です。

たまには創作を中断するのもリフレッシュになっていいかもしれませんね。パワーアップして帰ってきてください。お待ちしています。
...2006/02/01(Wed) 00:09 ID:9dyuxjxQ    

             Re: アナザーストーリー4  Name:祖父がカメラマン
>JBL様

私の大好きなレスラーと同じニックネームの方から激励頂き
感謝感激しておりますwありがとうございます。
肩肘張らずに、のんびり気楽に作成させてもらいます。

前にも述べましたが、二つのアナザーストーリーが始まる前の『ある』出来事を自分なりにアレンジしたい…
と考えています。どうしても朔が不憫でならなくて…
今週中にチビチビ開始できればなぁ、と思ってます。短編ですので、暫くの間、お付合い頂ければ大変幸いです。
...2006/02/06(Mon) 00:57 ID:wmjaR6Pg    

             Re: アナザーストーリー4  Name:SATO
たー坊さま
充電期間を経てまた楽しい作品を読ませてください。

祖父がカメラマン様
はじめまして。ストーリーの投稿を楽しみにしています。短編などとご謙遜されていらっしゃいますが、一度始めると麻薬みたいにやめられなくなりますよ〜(^^)
...2006/02/06(Mon) 22:43 ID:EQw22B0Q    

             Re: アナザーストーリー4  Name:ぱん太
ター坊様

 こんばんは。
 今日は早めの帰宅でございます。と言うか、アルバイトの日なので、定時の18:00には帰路につきました。
 渋谷とか原宿とか、最近縁遠いですねぇ〜。数年行って無い気がします。南青山とか表参道には出没すんですけどね。どうも近場の銀座で買い物は済ませてしまうし、職場の同僚と食事に行くのも、病院の近場が多い。そう意味では、週1回のアルバイトは新鮮です。地上はビル街ですが、地下に入れば無数の飲食店があります。毎日、どこに入るか楽しめて結構面白いです。先週と今週は某部長との会食でしたが。
 しばらく前のター坊様の物語に婚約指輪の話が出てきましたね。僕は両親の承諾を得た後、二人で婚約指輪を見に行きました。と言うか、注文に行きました。雑誌に載っていた有名なお店で、注文したデザインで作ってくれるとのお店でした。2か月分のアルバイト料が出て行った記憶があります。結婚指輪は、僕の独断と偏見で選んじゃいましたけど。同じ形で、彼女の指輪にだけ石を付けたら、金額が10倍くらいになっちゃいました。結婚って、結構金喰うものなんですね。

 また今度長々と愚痴らせてください。
 ではでは。
...2006/02/07(Tue) 19:52 ID:3FDgiC5.    

             Re: アナザーストーリー4  Name:すいません
早く続きが読みたいです。
...2006/02/11(Sat) 13:04 ID:JKr4e6C.    

             Re: アナザーストーリー4  Name:サイトのファン
たー坊さんへ
執筆、お疲れ様です!!
まとめて拝読させて頂きました
今回は少し驚きでした
長めの長期出張から戻ると
このサイト(管理人さん運営のHARUKA’S ROOM)が変わっていて
たー坊さんの世界の中心で、愛をさけぶが
見あたらないと大騒ぎで、BBSで管理人さんに
お聞きし、ここにたどり着き安心しました
でも、やっぱいいですね!!
たー坊さんのセカチューは!!
サクと亜紀の心温まる雰囲気が伝わってきて
読ませて頂く自分もほっとした気持ちになります
サクと亜紀の間に芽衣が現れ
小悪魔的に二人の間を掻き回すのかと
思いましたら意外とあっさりでしたね
今後も登場して、亜紀に嫉妬ややきもちを
焼かせてもらうのも楽しいですね!!
二人の婚前旅行もこれから色々起こるみたいで
楽しみです
ゆっくり充電してから執筆して下さい
続編、心待ちしております!!
...2006/02/16(Thu) 01:16 ID:wIv78Dt2    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
読者の皆様

いや〜、私が不在の間に皆様には多くのメッセージをいただきましてありがとうございます(嬉)
中には良い刺激になっておられる方もいらっしゃるようで、嬉しさ倍増です(笑)

さて、ひと段落致しましたのでこれからガンガンUPします!!と言いたいところですが、以前ほどのペースでは難しいのが現状です(苦笑)

ですが、長く・しぶとく・強くをモットーに続けたいと思いますのでよろしくお願い致します。

まず、今夜中に1話UP致しますので、お読みいただけましたら幸いです。
...2006/02/25(Sat) 20:04 ID:PcTGUBxU    

             Re: アナザーストーリー4  Name:朔五郎
お帰りなさい(^^)
ちょっと心細かったので、ホッとしました。
楽しみにしています。
...2006/02/25(Sat) 20:37 ID:Jp88QQD6    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
朔五郎様

ただいま戻りました(笑)
早速UP致しますので、お読み下さい。
...2006/02/25(Sat) 21:04 ID:PcTGUBxU    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
とある食堂の中、亜紀には笑顔が咲いていた。
リーズナブルで味も良い。とっても満足な様子で・・・。

亜紀「私の大学よりすごく美味しい。」
朔「だから、何でこんなとこに・・・・・・。」
亜紀「最後の学生気分。・・・私ね、もし白血病にならなかったら、お父さんにどんなに反対されても、朔ちゃんと同じ大学に通うつもりだったの。一緒に学生生活を満喫するつもりだったのよ。」
朔「それで、ささやかながらも学食で食事?」
亜紀「うん。私の一つ目の我儘。」

朔の母校で昼食。
無理やりに朔を案内させて、ささやかながらも学生時代の最後の思い出作り。

しかし、朔は全然乗り気ではなかった。
当然、顔を知っている後輩たちは在籍しているし、お世話になった恩師にでも見つかったら・・・結構引き留められるし、軽く騒がれるかなと感じた。学食のおばちゃんにも顔は知られている。

だから・・・。

おばちゃん「あれ?・・・松本君???」
朔「(ギクッ!!!)」
おばちゃん「やっぱり松本君!」
朔「お久しぶりです・・・。」
おばちゃん「先生たちから故郷に戻ったって聞いてたけどどうしたの!?」
朔「ええ、ちょっと・・・。」

そして、朔の腕を亜紀が引っ張る。

亜紀「どなた?」
朔「ここのおばちゃん。顔見知り。」
おばちゃん「はじめまして。」
亜紀「はじめまして。廣瀬と申します。」

軽く会釈する亜紀に、おばちゃんは好印象を持ったようだ。

おばちゃん「もしかして・・・?」
朔「あ。」
亜紀「はい。婚約者です。」
朔「おい!!」
おばちゃん「あ、そうなの!?おめでとう!!!私は行きたくても呼ばれないけど、東京から2人の幸せを祈ってるからね!」
朔「ありがとうございます・・・。」

陽気な中年女性は去って行った。
朔は当然毒づく。

朔「余計なことを・・・。」
亜紀「いいじゃない。堂々としてて。」
朔「冬休みに入ってるから、人がまだ少ないけど・・・・・・。」

しかし・・・

???「あれ?松本さん???」
朔「あ、ウス。」
???「何してるんすか?こんなとこで。」

声を掛けて来たのは、後輩の男女。医学部後輩の男性は森岡と恋人の辻である。
辻は政経学部ということもあり、すでに卒業しているが、時々サークルに顔を出しているらしい。

辻「珍しい人がいるね。」
森岡「ああ。」
朔「悪かったな。特別天然記念物で。」
森岡「マジで珍しいですよ。この年末に病院は忙しいんじゃないですか?」
朔「先輩に無理言ったんだよ。その分、大晦日から元旦は夜勤。」
辻「それはそれは・・・。」
朔「それにしてもうまくやってるみたいだね。」
森岡・辻「おかげさまで。」
森岡「それで、そちらの美女はどちら様ですか?」

亜紀は、まってましたとばかりに自己紹介。

亜紀「はじめまして。廣瀬と申します。」
辻「もしかして・・・松本さんの?」
亜紀「そうです。」
森岡「えぇ〜〜!?あの、“研究に度が過ぎるほど没頭して女っ気を微塵も感じさせなかった”松本さんに???」
朔「お前、それは言いすぎだ・・・・・・。」
辻「だって着ている洋服だって結構、格好いい。」
森岡「本気になれば凄いじゃないっすか。」
朔「ほっとけよ。それに、俺たちは高校の時からの付き合いだ。」
辻「あ、そうだったんですか?」
朔「そうですよ・・・。」

テンション高い後輩にやられっぱなしの朔。
とうとう、同じテーブルにつく後輩に色々と質問されることになった。

森岡「でも、何で?こんな綺麗な女性が彼女だって紹介してくれなかったんですか?」
朔「滅多に東京には来てなかったし。」
亜紀「故郷の伊豆にいました。」
辻「松本さんは・・・修善寺の方でした?」
朔「もうちょっと半島の先端に行くけどね。」
森岡「いや〜本当にびっくりしました。それで、どうして今日は東京に?」
辻「それも、こんなところで。」
朔「(亜紀が)『一度来てみたい』って言ったんだよ。」
辻「そうなんですか。」
森岡「でも、高校時代からお付き合いされているなら、在学中にお連れすれば良かったじゃないですか?知ってるじゃないですか。うちのサークルはオープンだから、皆が仲良くて、学生・社会人を問わずに出入りしてたでしょ。」
朔「連れて来たくてもできなかったんだよ。ずーっと入院してたんだから。」
森岡「えっ?失礼ですけど・・・。」
朔「急性白血病。進行はかなり早かったよ。」
森岡「・・・・・・よく、頑張りましたね。」
亜紀「ありがとう。」
辻「どのくらい・・・?」
亜紀「約5年かな。大学に行って、就職も内定したから今回は小旅行なの。」

軽くだが、雰囲気が重くなってしまった。
気を利かせた森岡が提案した。

森岡「学食もいいですけど、おいしいお店行きませんか?」
朔「え?」
辻「お2人でどうぞ。私、結構詳しかったりしますから。」

というわけで・・・。

辻「青山のこのお店と・・・。」
朔「・・・・・・。」
亜紀「ここはどうなの?」

朔が持ってきていたガイドブックのグルメコーナーに、個人的にお勧めのお店にチェックを入れていく。時々、載っていないお店には、地図に印をご丁寧にも赤ペンで記入していく・・・。

すると、夢中になっている女性2人には聞こえないように男性陣がヒソヒソ話。

朔「頼むから、高いのだけは勘弁してくれよな・・・。」
森岡「もしかして、全額松本さんが持つことになってたりするんですか?」
朔「そのもしかしてだよ。」
森岡「ご愁傷様です・・・。」
朔「何だよ?・・・そんなに高い店なのか?」
森岡「俺、一度だけひどい目に遭ってるんで・・・。」

一層、声のボリュームを下げて朔が聞く。

朔「どのくらい?」
森岡「2万。」
朔「えっ!!!???・・・そんなに?」
森岡「おごらされました。」
朔「・・・・・・・・・。」

すると、聞こえていたのか亜紀が朔に言う。

亜紀「心配御無用。リーズナブルなお店だけを教えてもらってるから。」
辻「そうですよ〜。」

亜紀の質問に辻は懇切丁寧に情報を出していく。
そして、大学を出てから寄り道をして、早めの夕食を取ることにした2人は早速一軒のお店に入店。
そして店を出て亜紀の後ろをトボトボと歩く朔は、財布の中を見て切ない顔をしていた。

朔「痛いな・・・・・・。」
亜紀「割り勘にしてあげようか?」
朔「できればそうしてもらえると・・・。」

電車に乗り込み、今日泊まるホテルへ。
朔は、宿泊場所をケチって良かったと思っていた。あと2日の食事代を考えると、後々大変なことになると予想できた。

続く
...2006/02/25(Sat) 21:06 ID:PcTGUBxU    

             Re: アナザーストーリー4  Name:JBL
お帰りなさい。

たー坊様が帰ってくると、家の中の照明に明かりが灯り、ストーブに火が点いた様な、何か暖かい感じになりますね!
...2006/02/25(Sat) 23:10 ID:JlsRBRls    

             Re: アナザーストーリー4  Name:ぱん太
たー坊様

 こんばんは。お久しぶりでございます。
 学食で食事ですかぁ〜。面白いですねぇ〜。
 朔は総合大学の出身でしたね。医学部の後輩は政経学部の彼女ですか。良いですねぇ〜。実のところ、僕は地元の某J大学が第一志望だったのですが、一方で総合大学に行きたいとも思っていました。それも、医学部が離れた場所にあるのではなく、一緒の場所にある大学。数えると、東大とか北大とか筑波とか、さほど無かったんです。阪大も移転前でしたし。総合大学に行きたかった理由は単純で、色んな人間と触れ合ってみたかったんですね。医学部って結構狭い世界で、100人前後の少ない人数で6年間を過ごすわけです。何となく思想が偏ってしまうような気がしたんです。しかしながら、入学できた大学は医学系の総合大学でした。で、社会勉強をしようと、某新聞社等全く毛色の違う世界でバイトをしていた次第です。
 研修医だと結構高いお店はキツイですね。今でこそ、法改正があって研修医の給与も300万円が相場となりつつあれいますが、10年前は学生の延長のようなものという考え方が大勢を占め、大学病院では数万円という給与のところが大半でした。研修医はあくまで研修であって労働者ではないという考え方でした。それが変わったのは、関西医大の研修医が過労死したことによります。
 フジテレビで「ナースあおい」や「小早川伸木の恋」といった医療ドラマが展開されていますが、どうなんですかね。家族が医師と言う職業を理解しないと、家庭崩壊するんですかね。事実、院内で不倫をする先輩もいますし、離婚暦が数回ある先輩もいます。人の命に関わっているだけに家族を犠牲にしているのかなぁ〜と考えることがあります。
 亜紀はどうですかね。朔の良き理解者となるのでしょうか................。

 ではでは、次回も楽しみにしております。
...2006/02/26(Sun) 02:13 ID:Sd1FbNXs    

             Re: アナザーストーリー4  Name:SATO
たー坊さん
久しぶりの新作ですね。
今回はラブコメディー風のお話で楽しかったです。
...2006/02/26(Sun) 15:52 ID:my90tv0I    

             Re: アナザーストーリー4  Name:朔五郎
たー坊さん
いつでも、どこでも、世の中の男性の悩みは共通のようですね(^^;;;
いろいろなことを思い出しながら読んでしまいました(苦笑)
...2006/02/26(Sun) 16:56 ID:aQQ2WLwo    

             Re: アナザーストーリー4  Name:にわかマニア
 お帰りなさい,たー坊さん。
 さすがブランクを感じさせない力作ですね。
 祖父の写真館以外にもサクに「何でこんなとこに来たいんだよ」と呟かせるところがあったのですね。
 「(交際していることを他人に)言わないで」と口止めした第2話や,真島の前で憮然として「彼氏です」と吐き捨てるように言ったサクをフォローして「彼氏です」と合わせた第7話と攻守ところを替える形となりましたが,いつも主導権を握っているのは亜紀の方というところは一貫していますね。
 デート中に予算オーバーが気になるという展開は私も身に覚えがあります。その時は確か,「ちょっと電話するところがあるから」と相手(もちろん今の連れ合い)を待たせて,大急ぎで駅構内の公衆電話近くのATMで金をおろしましたが,携帯が普及した今となっては使えない手口です。
...2006/02/27(Mon) 00:34 ID:218zET.2    

             Re: アナザーストーリー4  Name:ぶんじゃく

お帰りなさい たー坊様
これからも楽しく読ませていただきますね。
...2006/02/27(Mon) 01:39 ID:NLeZK7CA <URL>   

             Re: アナザーストーリー4  Name:KAZU
たー坊様
お帰りなさい(^^♪
これからもあまり無理せずのんび〜り物語を書いて下さいね。久しぶりにほのぼのしましたぁ
...2006/02/27(Mon) 18:28 ID:n/cg7ER2    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
JBL様
お褒め頂きましてありがとうございます。
ほぼひと月ぶりの執筆で不安もありましたが、うまく繋げていけたらと思っております。
これからもよろしくお願い致します。

ぱん太様
医師の現実は想像以上に大変なもののようですね。
もし、朔と亜紀が結婚後、すれ違いから離婚ということになってしまっても、うまくやっていけそうな気がしますが・・・・・・。
それはそれで面白いかもしれませんね。選択肢の中に入れておきます。

SATO様
お疲れ様です。ラブコメディープラス学生もののニュアンスです。実際のドラマでもありそうだと思いまして、書きました。
これからもよろしくお願い致します。

朔五郎様
世の常の一部、男性の哀しみといった感じでしょうか?
朔はこの先、亜紀のワガママに付き合い続けるので、同じような光景が幾度となく見れるかもしれません(笑)
次回もよろしくお願い致します。

にわかマニア様
最後の当時のみ使えた裏技はいいですね!機会があれば、是非是非つかわさせていただきます。
当然、それも亜紀にはバレバレで、その分は亜紀が主導権を握りつつ、朔を元気にさせてもらいましょう(笑)
これからもよろしくお願い致します。

ぶんじゃく様
お待たせいたしました。
これからも続けていきますのでよろしくお願い致します。

KAZU様
お言葉に甘えさせていただきまして、マイペースの極みで書かせていただきます。
これからもお読みいただけましたら幸いです。
...2006/02/27(Mon) 22:18 ID:5eDFW2Ag    

             Re: アナザーストーリー4  Name:双子の
 たー坊様 お帰りなさいませ。

 今回の物語を読ませていただいて、私の高校卒業旅行を思い出しました。それは、彼女と2人で、大阪、神戸へ2泊3日の旅行でした。旅行先での食事代、交通費等は私がだそうと思い、アルバイトにはげみ、それなりのことはできるお金をもつことができました。が、初日の日にポーチごとバスの中に、忘れてしまい、バス会社に、警察に連絡してもでてきませんでした。ホテルのチケットは、彼女が持っていたので助かりましたが、結局彼女に払ってもらい、帰ってからお金を返すという、情けない旅行でございました。いまでは、笑い話ですが(^^;
 朔と亜紀には、楽しい旅行を満喫してもらいたいと思いますが、何かトラブルでもおきるのでしょうか?
 今後の展開を楽しみにしております。
...2006/02/28(Tue) 04:08 ID:rjrJx/E.    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
双子の様
高校時代にキツイご経験をされているのですね。
良き思い出話にされているようですが、失礼ですが、朔に通ずる要素が垣間見られますね。
朔が今回同じようなことをしたら、朔が密かに考えていることが頓挫してしまいますので、次回以降にそれを書けることができたら書かせていただきたいのですが、よろしいでしょうか?
これからもよろしくお願い致します。
...2006/02/28(Tue) 21:07 ID:ANyiFsDM    

             Re: アナザーストーリー4  Name:双子のパパさん
 たー坊様 ごめんなさい。
お返事を頂いて気が付いたのですが、いつの間にか名前が欠落しておりました。何分、素人ですのでどうしてなったのか??わかりませんが、失礼いたしました。これからもよろしくお願い致します。
...2006/03/01(Wed) 01:29 ID:OsyUm7Dw    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
双子のパパさん様
わざわざありがとうございました。
私もうすうすご本人であることは気付いておりましたが、もしかしたら別人である可能性もと考えましたので、あえてそのままでお返事をさせていただきました。

さて、今日中に次回をUP致しますので、よろしくお願い致します。
...2006/03/02(Thu) 07:52 ID:lhQVa3.g    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
決して豪華とは言えないホテルに到着した2人。
フロントでチェックインを済ませて、ロビーで飲み物を買ってから部屋へ。
ドアを開けて、ドサッと体をベッドに沈めた。

朔「あー、疲れたぁ。」
亜紀「だらしないなぁ。」
朔「仕方ないだろ?」
亜紀「早く上着脱いで。シワになっちゃうから。」

亜紀は無理やりに朔の体を起こさせて、剥ぎ取るかのように上着を奪い取り、部屋にあったハンガーに掛けた。
その後で仰向けでボーっとしている朔の上に飛び乗った。当然、全体重をかけて・・・。

朔「っ!・・・おも。」
亜紀「ヒドイ。」

そうは言うものの、亜紀はパッと体を起こして自分の荷物のチェックを始めた。
朔は亜紀の行動に当惑気味。「振り回されていないようで、実は振り回されている?」
そんな複雑な心境を持っている朔だ。

亜紀「小腹がすいてこない?」
朔「少しだけね。さっきの店、量は少し少なかった気がする。」
亜紀「何食べる?」
朔「そこにコンビニがあったでしょ。少し見てこようか?」
亜紀「そうしようよ。いいのなかったら買わなきゃ良いんだし。」

2人は繁華街裏にあるホテルを出て、通りに面したコンビニへ向かった。
夜の都内、すでに時刻は10時を回っているものの、人の波はおさまりそうもない。ましてや今日は祝日。明日のイヴに向けて、すでに前夜祭のような感覚にある人も少なくはないだろう。

亜紀「何にする?」

レジ前にある中華まんのスチーマー。亜紀は、まるで中華まん限定のような感じで朔に聞いてきた。
朔はさてはと思い、亜紀に聞く。

朔「最初からそうやって言えばいいじゃない。」
亜紀「バレた?」
朔「バレバレ。」

はにかんで含み笑いをする亜紀を見て、久しぶりにホッと胸を撫で下ろす朔がいた。

朔「最後でいいよ。とりあえず飲み物から。」

カゴを持ってフリーザーの前に向かう朔の後をゆったりとした足取りでついていく。

亜紀「さっき買ったでしょ?飲み物はいらないんじゃない?」
朔「ルームサービスとか、備え付けの冷蔵庫に入っている飲み物は高いんだ。」
亜紀「そういえばそうだね。少しは節約しないとダメね。」
朔「明日の朝の分にあってもいいでしょ。」

亜紀は軽く頷いて飲み物を選び始めた。
たこパパで炭酸系を飲みなれているせいか、コーラやサイダーなどに自然と目が向く。
その後で、当然のようにレジ前で選ぶ。

亜紀「肉まん、あんまんは外せない。」
朔「その後は?」
亜紀「ピザまんもあった方がいいな。」
朔「どうせなら、全種類いっとく?」
亜紀「じゃあ、私も少し出すよ。」

こうして、スチーマーの中に用意してあった中華まんは、伊豆から来た若いカップルの胃の中におさまるべく、80%がレジ袋の中に移されていった。
ちなみ、アメリカンドッグにフライドポテトといったホットスナックも、半分は2人によって買われたのである。

ホテルの部屋に戻ると、亜紀はさっそく袋を開けた。

朔「そんなに焦らなくてもいいじゃない?」

思わず、そんな言葉が無意識のうちに朔の口からは発せられていた。
だが、そんなことはお構いなしにそれらの匂いを亜紀は楽しんでいた。
すると、あまりに見かねた朔は亜紀に軽く一言。

朔「太るぞ・・・。」
亜紀「でも、大丈夫でしょ?」
朔「でも、最近ふっくらして来たんじゃない?」
亜紀「えっ???」
朔「ちょっといい?」

朔はそう言うと、亜紀をおぶってみた。
すると、やはり朔の思ったとおりに亜紀の体を重く感じた。

朔「前から比べると・・・・・・。」
亜紀「本当に?」
朔「残念だけど・・・・・・。」
亜紀「ウエストだって変わってないのに?」
朔「体重計に乗ってみれば全ては判ることだよ。」

思わず絶句した亜紀に、朔は優しく諭すように言った。

朔「まぁ、亜紀が激太りしたって、俺は構わないけど・・・・・・。」
亜紀「私は良くないよ・・・朔におぶってもらえなくなるし・・・・・。」
朔「ダイエットするの?」
亜紀「うん。」
朔「分かった。俺がメニューを作ってあげようか?」
亜紀「うん。よろしくお願いします。」
朔「でも、行動するのは宮浦に帰ってからでいいんじゃない?」
亜紀「分かった。この3日間は精いっぱい楽しむことにする。」

亜紀は一大決心を心に秘めて、中華まんを頬張り始めた。
朔もまた、それに付き合う。
TVをつけて、かなりのんびりとした時間を過ごすものの、明日に響くので夜更かしもほどほどにと思い、朔は風呂に入ることに。

ユニットバスの雰囲気が漂う。
安いから仕方はないが、もう少し浴槽は広いほうがありがたい。そんなことを感じつつ、若干熱めの温度の湯の中に体を沈めていく。
明日泊まるホテルは、ここよりはずっと良い所。亜紀のために奮発することは決して忘れていない朔だ。

朔「あぁ〜〜・・・ふぅぅぅぅぅ〜〜〜〜。」

おっさん臭さ漂うかのような朔の声。
別に何かあったわけではないが、湯船に頭ごと沈めてみたくなる。軽く息を吸いこんだその時。

“ガチャ!”

いきなり浴室のドアが開いた。
その向こうから来たのは、バスタオルに身を包んだ亜紀の姿だった。
そいうことには魂を抜かれるのが朔らしい。しかし、今回は廣瀬家で以前にも経験していたことだったために、「亜紀の悪戯が始まった。」くらいにしか考えていなかったのである。

朔「あのさ、せっかく人がくつろいでいるのに・・・。」
亜紀「でも、『私が一緒にいると癒される』って前に言ってくれなかった?」

確かに朔はそのままの言葉を亜紀に言っていたことがあった。
そのことは朔自身の記憶に残っていたので・・・。

朔「言ったと思うよ。」

と、当然のように返した。
朔は「どうせ、亜紀には一緒に入る気なんてない。」と思っていた。
しかし・・・。

亜紀「もうちょっとつめて。」
朔「?」
亜紀「私も一緒に入る。」
朔「は!?」

あまりに想定外の亜紀の言葉。
目をパチクリしている朔を尻目に、亜紀は少し強引に浴槽の中に体を沈めて来たのである。
朔は、一瞬自分が夢の中にいるかのような錯覚に陥った。

亜紀「熱くない?」
朔「そ・・・そそそ、そうかなぁ」
亜紀「・・・(カワイイ!)ほら、そんなに緊張しなくていいから。」
朔「・・・無理を言うなよ・・・・・・。」

思わず本音が出た瞬間だった。

亜紀「私と一緒じゃ嫌?」
朔「だだだ・・・誰もそ・そんなこと・・・言ってないだろ。」
亜紀「ちゃんと、どもらずに喋ったら?・・・私たちはこれからもどこかに旅行しに行くかもしれない・・・その時、旅館の大浴場が混浴だったら?」
朔「俺が手配をするから・・・混浴はない。」
亜紀「私は混浴OK。」
朔「!!!」
亜紀「今日はその予行演習。大浴場じゃないから2人きり。」
朔「・・・・・・・。」

朔は一瞬気が遠のいた。
今にも鼻血が・・・そんな心境である。

亜紀「落ち着いて・・・大丈夫・・・大丈夫。」
朔「・・・。」

それだけ聞こえた朔は一度目を閉じて、すぐに開けてみた。
すると、目の前にいた筈の亜紀がいない。「これも夢なのか?・・・俺、疲れてるのかな?」そんなことを思った矢先。

“ザバッ”

朔「うわ!」
亜紀「プハ!」

お湯の中に潜っていた亜紀が、急浮上して朔を驚かせた瞬間だった。
朔はもんどりうつようにして、壁に頭をぶつけた。
そんなことはお構いなしに、亜紀は朔の正面から堂々と体を預けるようにして甘え始めた。
余計に朔の鼻からの出血を誘発しそうだが、不思議と緊張は解けて湯気に混じる亜紀の匂いを感じ取った。同時に透き通るような白い肌に色気を通り越した何かを感じて、やましい妄想などは消え去っていく。

亜紀「ほら、大丈夫でしょ。」
朔「う・うん。」
亜紀「来て良かった。ありがとうね、朔ちゃん。」
朔「ど・・・どういたしまして・・・。」

続く
...2006/03/03(Fri) 01:10 ID:Ni2c8NcA    

             Re: アナザーストーリー4  Name:KAZU
たー坊様
ようやくここまで来ましたか〜
この旅行で二人は結ばれるのでしょうか?私だったら手を出しそうです(^^♪
朔ちゃん偉い!!
...2006/03/03(Fri) 12:37 ID:GZ5il14U    

             Re: アナザーストーリー4  Name:一読者
下世話じみた言い方ですが、亜紀にひとつお願いしたい事があります。
……頼むm(_ _)m 朔に思いを遂げさせてやってくれm(_ _)m
5年間、君のために頑張ったんだよ…ずっと支え続けたんだよ、君のことを
ここまでやっといてお預けとか…有り得ないよ、生殺しだよ、可哀想だよ…
...2006/03/03(Fri) 21:30 ID:InqIqb/w    

             Re: アナザーストーリー4  Name:朔五郎
朔太郎氏、修行を積んでますなあ(笑)しかし、この意志の強さを見ると、医師より僧侶のほうが向いていたかも(^^)
冗談はさておき、亜紀のイタズラにこれだけ免疫ができれば、結婚しても「楽勝」でしょうか(笑)
...2006/03/04(Sat) 16:25 ID:gsR32xGo    

             Re: アナザーストーリー4  Name:ぱん太
たー坊様

 こんばんは。
 朔には悩ましい旅行ですねぇ〜。
 この先の展開はどうなるのでしょうか。

 次回も楽しみにしております。

 ではでは。
...2006/03/05(Sun) 02:35 ID:.wJ7FBHM    

             Re: アナザーストーリー4  Name:にわかマニア
 「太って,おじいちゃんと同じくらい重くなる」(第3話終盤)と言ったかと思うと,「砂風呂はダイエットにいい」(第5話で本番ではカットされた部分)と前言とは正反対のことを言う亜紀ですが,それにしてもよく食べますね。まるでどこかの短編映画のように・・・
 しかし,世の中には「空気を吸っただけでも太る」人だっているのに,「最近ふっくらして来たんじゃない?」程度で済んでいるのが羨ましい。これはビール腹を抱えた肥満児の述懐でした・・・


 さて,ここ数日,朔五郎さんの書き込みが途絶えていたので,ひょっとしてノルウェイにでも取材旅行かと勝手に想像していました。

>医師より僧侶のほうが向いていたかも(^^)

 もっとも,世の中には「破戒僧」というコトバもある訳で・・・
 まあ,実家の寺を継いだクラスメートは映画にもドラマにも登場しますから,ボウズと荒行を競うといった展開は勘弁してあげましょう(^^)
...2006/03/05(Sun) 04:36 ID:DImNB0sU    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
KAZU様
亜紀の度が過ぎるほどの悩殺行為・・・。書いた私も「やり過ぎたかなぁ・・・。」と反省?しております。
とりあえず、朔には亜紀を襲ってもらいましょうか(笑)多分、思いっきり拒絶されるでしょうけど・・・。
次回もお読みいただければ幸いです。

一読者様
朔に対する同情のメッセージ・・・書いている私も可哀想になってきましたが、そろそろかな・・・と考えております。
それが今回の旅行中かどうかは分かりませんが・・・。
次回もお読みいただければ幸いです。

朔五郎様
苦労の後には必ず良いことがあります。人生はプラスマイナスゼロですので、確かに結婚後は朔がリードしそうですね(笑)
次回もお読み頂けたら幸いです。

ぱん太様
悩ましいというよりも、一読者様がおっしゃるように生殺しに近いものがありますね(苦笑)
それでも手を出せないのが朔であり、そのことを見透かしているほど信頼しているのが亜紀であり・・・。
もう少しだけ先でしょうか。それでも”その時”は近づいてます。
これからもよろしくお願い致します。

にわかマニア様
亜紀の言動はドラマの時から矛盾した部分がありましたので、オリジナルでもそれは踏襲してます。
あと、荒行には参加してもらいましょうか(笑)
ボウズに頼んで護摩行でも・・・一度は亜紀を襲っているわけですしね(笑)

九州の亜衣です様
お読みいただきましてありがとうございます。
次回もお読みいいただければ幸いです。
...2006/03/12(Sun) 00:55 ID:NbPb3GW6    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
そのころ、大木家では女性陣が荒れていた・・・。

恵美「あ〜・・・亜紀が羨ましい!」
智世「同感よっ!!何で亜紀だけ東京で泊まりデート!?」
龍之介「・・・・・・。」
ボウズ「・・・・・・。」

下手に会話に入れない男性陣。
2人はたまらずコロにすがろうとするが・・・。

コロ「ク・・・スー・・・フガッ(もう・・・食べれないよ・・・・・・大トロ。)」

コタツに潜り込んで食い意地全開の夢を見ていた。龍之介に魚介類を多く食べさせられた影響だろうか、コロの魚介類限定の味覚と食欲は人間並みだった。もしかしたら、コロは自分を人間だと思っているのかもしれない・・・。

ボウズ「幸せそうだな〜・・・この顔・・・。」
龍之介「ちょっと羨ましくなってる。」

すると・・・。

智世「ねー!何でよ龍之介?」
恵美「良ちゃんどうして!?」

ワイン片手に、最近は誘ってくれない彼氏に向かって吠えていた・・・。

ボウズ「朔よ・・・亜紀よ・・・。」
龍之介「お前らは、日本で一番幸せなカップルかもしれんぞ・・・。」

夜空に輝く満月に祈りを捧げたいような気持ちだった・・・。

1時間後・・・。
深夜1時をまわった頃、女性陣は寝静まり、男性陣が片付けていた。
つけっぱなしのTVを、騒ぎに巻き込まれたコロが、半開きの寝ぼけ眼で見ている・・・。

コロ「(・・・・・・・・・・・・・・・・・。)」

ボウズがワシワシと頭を少し乱暴に撫でても、コロはボーっとしたまま、動かない・・・。
次には、ベタッと寝そべって、再び眠りに落ちていく。

コロ「(おやすみなさい・・・明日の朝は・・・味噌汁飲みたい・・・鮭の入った味噌汁・・・。)」

贅沢極まるコロの食生活が垣間見えた。
その一方・・・。

龍之介「よっく考えたらさ、結婚してもゴールじゃないよな・・・。」
ボウズ「あ?」
龍之介「俺、智世と付き合って、結婚したらこいつとゴールに辿り着いたもんだって思ってた。」
ボウズ「・・・ゴールは次のスタートラインってこった。」
龍之介「さすがに、何となくだけど説得力あるな。」
ボウズ「偉そうな口の利き方したけどよ、俺こそお前が言ったことに、少しドキッとしたんだぜ。」
龍之介「あ?」
ボウズ「無意識のうちに、俺もどこかで思ってたかもしれねぇな。」
龍之介「ゴールの次にはスタートラインが待ってることを忘れてたか?」
ボウズ「ああ。恵美と付き合ってるのは、結婚という名のゴールに向かうためなんだって思ってたかもしれねぇな。無意識でよ・・・。」

龍之介が缶ビールを喉に流し込む。

龍之介「そっか。さすがのお前でもゴールの先のことまでは考えてなかったか・・・。」
ボウズ「修行が足りんってことなんだろ。・・・で?」
龍之介「何がだよ?」
ボウズ「結婚した先のスタートラインのゴールは何なんだ?」
龍之介「さあなぁ・・・・・・。」
ボウズ「だろうな。離婚でもしない限りは死ぬまで一番近いところにいるだろうしなぁ。まだ見つからねぇだろ?」
龍之介「・・・・・・とりあえず、子供ができたらそいつを世間様に出してもやってけるように育てるあげることがそうなのかもしれねぇな。月並みだけどよ。」
ボウズ「42.195キロよりも相当長いレースだな。」
龍之介「だなぁ。」

2人でビールを一口。

龍之介「お前、今見えるべきゴールに入る気はねぇのか?」
ボウズ「ない・・・つったら大嘘だな。」
龍之介「お!」
ボウズ「まぁ、今すぐってことはないかも知れねぇけどな。」
龍之介「そーだろーな。」
ボウズ「披露宴だけは破壊すんなよ。」
龍之介「お前がいないと無理だと思うぜ。」
ボウズ「うるせぇよ。」

苦笑しつつコップを口に運ぶ。
ふと、ボウズが呟くように龍之介に尋ねる。

ボウズ「分かってんのかな・・・あいつは。」
龍之介「朔ちゃんか?」
ボウズ「朔以外にいないっての。」
龍之介「・・・俺らよりも分かってるだろ、どう考えても。」
ボウズ「もしかしたら、形として見えないだけで、既にスタートしてるだけかもしれないぞ。」
龍之介「それはアリだな。『生まれ変わっても亜紀と。』そんな感じさえするもんな。」
ボウズ「まったくだなぁ。俺が反撃する間も与えずにかっさらって行きやがった・・・。」
龍之介「おいおい・・・お前、一度は白旗あげといて、まさかまだ・・・・・・。」
ボウズ「バカヤロ。んなわけねぇだろ!・・・・・・恵美と出会う前から吹っ切れてるっつうんだよ。」
龍之介「どーだか・・・でもあれだな。死なずに良かったわ。もしあのままダメだったら、お前は誰と付き合っても続かなかったかも知れないなぁ。」
ボウズ「そんなこと考えてどーすんだよ?あり得ないことを予想してもしかたねぇだろ?」
龍之介「まーな。」
ボウズ「しかし・・・。」
龍之介「あぁ・・・・・・あいつらはどーしてあんなに仲良く長続きしてるんだろーなー?」
ボウズ「帰ってきたら聞いてみっか。」
龍之介「そーだなぁ。」

2人の長い夜が更けていく。
それぞれの愚痴が酒の肴になった。
そして、

コロ「(・・・・・・・・・・・・・・・・このイカ・・・美味い。)」

一方。

亜紀「ゴメンね。」
朔「え?」

案の定、鼻から出血した朔。
ティッシュで鼻栓を作りながら耳を傾けていた。

亜紀「信じきれてなかったから、朔ちゃんを傷つけたでしょ・・・。」

心底申し訳なさそうな亜紀がベッドに腰掛けている。

朔「気にしないで。」
亜紀「そう言ってもらえると気が楽になる。」

朔の間抜け面に亜紀は軽く吹き出しそうになった。

朔「『もういいから寝るよ』って言ってやろうかと思ったのに。」
亜紀「くふふ・・・ゴメンなさい。」
朔「本当に反省してる?」
亜紀「してます。してます。」
朔「ホントかよ?」

思いっきり頷いた。
朔は亜紀の正面で、アイコンタクトで確認する。
亜紀の目は嘘を言ってはいなかった。

朔「ふーん・・・。」
亜紀「焦ってたのよ。いつだったか言ってたじゃない。『月に1度くらいしか会えなくなるかもしれない』って。」
朔「最初の夢島だよ。そのセリフは。」
亜紀「それで、もしかしたら本当にそうなるかもしれないって感じたのよ。そんな私の気も知らないで、朔ちゃんは朔ちゃんでいろいろ楽しいことしてたから・・・嫉妬した。」
朔「あれは付き合いだよ。むしろ俺は部屋でのんびりしてる方が好きなの知ってるでしょ。」
亜紀「そうだね。知ってるはずなんだけどね・・・焦ったのかな?」
朔「多分。」
亜紀「あ〜あ。」
朔「?」
亜紀「嫌われなくて良かった。」
朔「まさか。」
亜紀「でも覚えておいて。私が傍若無人にちかいような振る舞いをする時は、大抵は朔ちゃんが原因だから。」

含み笑いを浮かべて、朔を牽制。
しかし、朔は亜紀の頬を突いて応戦し始めた。

亜紀「フンだ。」
朔「でも嬉しそうじゃない。」
亜紀「分かりやすかったかな。」
朔「うん。」
亜紀「それでもいいよ。」

荷物の整理のためにバッグを覗き込む亜紀の後ろから、朔は前々から考えていたことを実行に移し始めた。急に体中の自由が利かなくなるほどに緊張しているのが自分でも分かる。

朔「亜紀?」
亜紀「うん?」
朔「うれしいついでにもう一つ。」
亜紀「何?」
朔「結婚してくれる?」
亜紀「いいよ。」

「あれ?」と、朔は心の中で呟いた。
あまりに拍子抜けな亜紀の返事にポカーンとしている。
そう、朔はさりげなーくプロポーズしていたのだ。
しかし・・・。

亜紀「本番でもそうやって言ってくれれば、すぐにもOKしてあげるから。」
朔「あ、そう・・・。」

「本番だったんだけど・・・。」
朔は思わず声に出そうになるものの、出したら結構大事になるので、何とか冷静さを保ちつつベッドに腰を下ろした。

続く
...2006/03/12(Sun) 01:46 ID:NbPb3GW6    

             Re: アナザーストーリー4  Name:一読者
たー坊様

お帰りなさい♪
今回も楽しいお話、ありがとうございます。
本当の意味で大人になる過程のスケとボウズ、それと亜紀の微笑ましい我がままぶり(?)が印象に残りました。

あと私のリクエストはあまり気になさらないで下さい(笑)
どんな形であろうと朔が幸せなら、それでいいんだと思います。
...2006/03/12(Sun) 18:49 ID:vuk0dqFM    

             Re: アナザーストーリー4  Name:朔五郎
たー坊さん
二つの物語が並行して、絡みながら進行して行くコメディは、読者を飽きさせませんね。
しかしコロは・・・大物ですね(笑)
...2006/03/12(Sun) 21:26 ID:zo0VKSC6    

             Re: アナザーストーリー4  Name:祖父がカメラマン
>たー坊様

本来なら私の方から御挨拶に伺わねばならぬ立場でありながら、執筆活動にうつつを抜かし、すっかり遅れてしまいました事、先ずは深くお詫び申し上げますm(_ _)m
まさか私の拙い作品の方にまで来て頂けるとは思わず、レスを拝見した時、正直顔が青褪めましたw
義理を欠いて申し訳ございません。不束者ですが今後とも御指導の程、心よりお願い申し上げます。

私が今回投稿を決心したのも、たー坊様を始めとする皆様の温かい作品に感動したと言うか、朔と亜紀の明るい未来を望んでる人達が沢山いるんだなぁ…という事実がとても嬉しくなったのがキッカケです。

私の作品はA.Sで言う所のPart1の途中…というより前半で終了する予定です。
文体がクドイので、多分その先には絶対行き着かないと思ってますw 時間的な制約もありますし…
A.Sの感動と余韻を壊さぬ様、精一杯頑張りはしますが、所詮素人なので、失礼に当る行為や表現も多々出るかもしれません。
そこはお目溢し頂ければ幸いです(調子良くてスイマセン)。

また読者としてA.Sの続編と、何よりも朔と亜紀の待望のゴールインを拝読したい、と強く願って止みません。
今後とも何卒宜しくお願い申し上げます。
...2006/03/14(Tue) 03:56 ID:b0wC6b6o    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
一読者様

お読みいただいてありがとうございます。

こたつに入り眠る最愛の人と犬の情景が浮かびましたが、いかがでしたでしょうか?
朔にもこれから夢のような時間が訪れるかもしれませんが、自分でフイにしてしまうかもしれません。
何とか思いを・・・という感じです。

次回もよろしくお願い致します。

朔五郎様

マンネリ気味なこのストーリーですが、ここらで急展開してみようかと思案中です。
コロを主人公にしてみようかなぁ・・・・・・などとも・・・。何かいい案は・・・と、探しております。
次回もお読みいただけましたら幸いです。

祖父がカメラマン様

わざわざご丁寧にありがとうございます。
こちらこそ恐縮してしまいました。
色々と熟慮をなさっておられるようですが、それは作品にのみに注いでいただき、私にはお気遣いなきようにお願いします。

私は文才が無く、情景描写、表現能力が欠けております。そんな素人が長々と書かせていただいておりますので、迷惑を被られておられる方もいらっしゃるかもと心配しつつ書いている最近です。

ですが、お互いに切磋琢磨しつつ、より良い作品になるように、私の方こそ宜しくお願い申し上げます。
...2006/03/15(Wed) 01:36 ID:d9HgSi4A    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
翌朝、亜紀が目を覚ますと、隣のベッドで寝ていたはずの朔の姿が見当たらない。
ふと、枕元にメモを見つけた。

“朝食を調達して来る。亜紀はTVでも見ながらのんびりしてて。”
“それと、昨夜言ったことは本番のつもりだったんだけど・・・あまり触れないようにお願いします・・・。”

亜紀「そうだったんだ・・・。」

ふと、ぼんやりしつつ窓の外を見ると、ちらちら粉雪が舞っている。
「イヴに雪・・・素敵。」と、幸せ溢れる表情を亜紀は見せている。
着替えて身支度を整えてTVをつけてみると、イヴに活気付いた街の様子が映し出されていた。

その時、バタンとドアが一瞬のうちに開き、閉じられる。冷気が一瞬のうちに感じられた。
上着に付いた雪を軽く払い落として「さむ・・・。」と朔が戻ってきた。

「触れないで下さい。」
メモにはそうあったものの、亜紀は「ありがとう。寒かったでしょ?」とお構いなしに、上着をハンガーに掛けた後でスッとキスをした。
さらに朔の首に腕を回してしっかりと抱きつく。

亜紀「外は相当冷えてるのね。冷たい。」
朔「あ・・・うん。」
亜紀「お腹減った。早速頂きましょう。」

若干ぎこちないような様子の朔の一方で、亜紀は普段どおりだ。
多分、朔のプロポーズはなかったことになったのだろう。

一方。

恵美「さ、寒い。・・・コロ。」
コロ「(ボクは冬毛に生え変わってるからあったか〜い。)」

朝っぱらから漁に繰り出している4人。
コロの希望通りとまではいかないが、アラ汁くらいはいけるかもしれない。
海風がもろに当たる甲板の上、コロは皆のホッカイロ代わりになっていた。

恵美「何で・・・?」
智世「どうしてイヴに漁に出るのよ!?」
ボウズ「まあまあ!いいじゃねぇか!イヴにクルーザーで船上デートなんて洒落てるだろ?」

ブーイング寸前の女性陣。昨夜にワイン片手に愚痴をこぼしていたのを見かねた男性陣が気を遣ったのだが、そのベクトルが違っていた。しかし、そんなことはお構いなしに沖合いに出て行く一行。

コロ「(タコ♪イカ♫・・・それに鯛に鰤・・・できればマグロ。そして蟹♪♪♪)」

必ず新鮮な魚介類にありつけると思っているコロ。
願えば何でも手に入るとウキウキ気分。浮かれ気味のその耳には、お昼のバラエティ番組のテーマソングが繰り返されていた。
竿を一本ずつ持ちながら糸を垂らす。

恵美「良ちゃん、寒いよ・・・。」
ボウズ「どれどれ。」

赤面しながらも後ろから恵美を包むように一本の竿を2人で仲良く持つ・・・。

智世「・・・・・・。」
龍之介「あ?」
智世「あれやって。」

智世が指さす先にはボウズと恵美のアツアツな姿・・・。

龍之介「あれを・・・俺にやれと・・・?」
智世「生まれてこのかた一度もやってもらってない。結婚前にもしてないんだから、一度くらいいいんじゃない?」
龍之介「・・・・・・・。」

船室をはさんで反対側で智世の欲求は満たされた。
コロは恵美の隣に寄り添い保温・・・。
なかなか魚は掛からないが、寒空の下で少しは暖まった。

一方・・・。

亜紀「おいしい。」
朔「そう?」
亜紀「うん・・・。」

亜紀の目は何かを期待しているのではないかと思えるほどにキラキラと・・・。
部屋の照明がなおさらそれを引き立たせているのかもしれない。

“ジー・・・・・・・”

朔を見つめる亜紀は、それはそれは嬉しそうな様子。
取り消されたプロポーズを再び。アイコンタクトはそれを明確にしている。

しかし、朔はそんな亜紀の気配を察してか、TVから視線を離そうとしない。自分で墓穴を掘ったので、被害を最小限に食い止めようとささやかな抵抗・・・。

亜紀「お行儀悪い。」
朔「え?」
亜紀「食事をする時は、家族の顔を見て食べるべき。TVなんてもってのほか。」
朔「・・・おじさんが言ってるの?」
亜紀「そういう躾を受けましたから。」
朔「ふーん・・・。」

しかし、朔はいっこうに亜紀に顔を向けようとはしない。
顔を向けてしまったら最後、亜紀の猛攻撃が待っている。言葉の一斉射撃があることは容易に予想できることだった。
亜紀は亜紀でいつそれをしようかという考えを頭の中で張り巡らせていた。ましてや今日は横浜に行く予定。夜景をバックに朔の一大決心を聞くことができたらこれ以上の瞬間はないのである。

亜紀「朔ちゃん。」
朔「う、うん?」
亜紀「何を恐れてるの?」
朔「い、いや・・・べ、別に。」
亜紀「バレバレ・・・まあいいや。」
朔「・・・・・・・・・・。」
亜紀「今日もよろしくね。とっても期待してるから(笑)」

“あぁ〜〜〜〜!!!どーして!”

朔の心の叫びがその口から出る一歩手前。何とか押しとどめたのだが、チラリと亜紀の様子をうかがうと、ウキウキ気分がありありと分かる。
「今日のデートは無事に過ごせるのだろうか・・・。」朔の心は憂鬱の雲に覆われていった。

亜紀「朔ちゃん。」
朔「ぅえ?」
亜紀「私はいつでも受け入れてあげるよ。」

これ以上ないプレッシャーが朔を襲う。

朔「(じいちゃん・・・。どうか俺に力を・・・。)」

心の中で謙太郎を思い浮かべて手を合わせる朔がいた・・・。

そのころ、宮浦の廣瀬家では・・・。

綾子「もう年なんだから・・・徹夜は、ほどほどにして下さい。」
真「すまん。でも、完成したんだ。」

普段よりも厳しい口調で言う綾子に、疲れてはいるものの一仕事を終えた充実感に満たされている表情を見せる真。
鞄からファイルされた一枚の設計図を長年連れ添った妻に見せる。

綾子「これは?」
真「俺の仕事の集大成のひとつと言えるものかもしれんな。・・・・・・とりあえず、何か食わせてくれ。」
綾子「昨夜の残り物でいいですか?」
真「かまわんよ。」

食事を取る夫の正面には、妻が何年経っても変わらない穏やかな表情を見せている。

綾子「さっきのは設計図みたいだったけど、大きな仕事でも入ったんですか?」
真「いや。幸い仕事は入ってきているが、それとは別物だよ。私的な物だ。」
綾子「私的?」
真「俺ができるプレゼントだな。」
綾子「誰に?」
真「亜紀に。」
綾子「亜紀に?」

どういうことなのか分からない綾子に、真は設計図を広げた。

真「これは、亜紀が将来住む家をイメージしてみたものだ。」
綾子「あらあら・・・ずいぶん大きな家だこと・・・。」
真「あいつは将来医者と結婚するんだろ?相手の男にはこの家より大きな家を建ててもらわないと困る。」
綾子「建ててくれるわよ。朔くんなら。」
真「さあ。」

父としてのささやかな抵抗なのかもしれない・・・。
意地っ張りな真を悪戯っぽく見る綾子・・・。

真「どうした?」
綾子「いい加減に子離れしたらどうなの?」
真「してるぞ。とっくに。」
綾子「意地っ張り。・・・朔くんを認めつつ、持って行かれるのが嫌なんでしょ?・・・言っておきますけど、朔くんが亜紀をもらいに来た時に、反対はさせませんからね。」
真「反対はしない。」
綾子「本当に?」
真「本当だとも。」
綾子「変な意地悪をしたら、熟年離婚だって考えますからね。」
真「何てことを言う?そんなに信用が無いのか俺は?」
綾子「真に受けないで下さいよ(笑)」
真「・・・・・・。」
綾子「ご飯、冷めちゃいますよ・・・。」

真は再び茶碗を持った。

続く
...2006/03/16(Thu) 10:40 ID:G21lu.gc    

             Re: アナザーストーリー4  Name:一読者
たー坊様

お疲れ様です。今回も楽しく拝読させてもらいました。
・・・結論として、やはり朔は何をやっても亜紀に頭が上がらないんでしょうね(笑) 痛感しました。
でも、そんな空間が朔にとって一番心地よいものなのかもしれませんね。相当なプレッシャーでしょうが。

祖父がカメラマンさんの所でも書きましたが、こういう意地っ張りで不器用な真も大好きです。
結婚後も朔の高い壁であって欲しいと思います。

続編を期待しています。朔、頑張れよ・・・
...2006/03/16(Thu) 17:50 ID:2hP3ibW.    

             Re: アナザーストーリー4  Name:祖父がカメラマン
>色々と熟慮をなさっておられるようですが、それは作品にのみに注いでいただき、私にはお気遣いなきようにお願いします。

承知致しました。お心遣い、こちらこそありがとうございます。

私は延々ダラダラと情景描写に拘り過ぎてストーリー自体が間延びする…という悪癖を持っていますが、今更直せるものでもないので、このまま突っ走っちゃおう…と開き直っています。
もし宜しければ、今後も御感想などをお寄せ頂ければ幸いです。

たー坊さんが描く亜紀…凄く魅力的です。
からかい上手で、快活で、ちょっと我侭で…でもそれは根底に朔への揺るぎない信用と愛情があるから出来るんだろうなぁ…と思わせるキャラですね。正直、大好きですw
今後もふたりが幸せな未来を掴める様、互いに頑張りましょう!
...2006/03/17(Fri) 02:01 ID:JLpyvNIA    

             Re: アナザーストーリー4  Name:ぱん太
たー坊様

 こんばんは。深夜に失礼します。
 コロは面白い犬ですねぇ〜。我が家のチワワン共の好物は海苔です。コンビにのオニギリを食べていると、寄って来て、お願いポーズになります。何とも妙なワンコです。また、ぱん太君は、お歳暮で貰ったイクラを家内が食べさせたところ、何故か興奮し、夜中ずっとリビングを走り回っていました。家内は、それをなだめるために、徹夜させられ、翌日仕事を休んだというアホな我が家でございます。
 コロって船酔いしないんですかねぇ〜。一昨年のGWに行きつけのワンワンペンションに行って、湖でモーターボートに乗ったところ、もぐちゃんは、縮こまって震えていました。ボートを下りると、いきなりゲーゲーと吐き出しました。一緒に行った義姉が「もぐちゃん、船酔い??プルプルしてるけど大丈夫??」って声をかけてました。数分後には元気になりましたけど。
 
 朔と亜紀は微妙な(?)関係ですねぇ〜。亜紀父が新居の設計までしてしまうとは面白いと言うか、朔にとっては恐いでしょうねぇ〜。でも、医師の給与はさほど高くないのが実情です。マスコミや銀行、商社の方が、よほど高い。勤務医は所詮サラリーマンです。地方に行けば、出すところは出すようですが。

 では、次回も楽しみにしております。
...2006/03/17(Fri) 03:22 ID:mUfYfLyY    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
一読者様

ご感想ありがとうございます。
おっしゃる通り、朔の天敵は亜紀です。間違いなく・・・。でも、時折朔がリードする面もあり、その頻度は少しづつ増しています。ですから、亜紀が朔の惚れ直しているのかもしれません。これは、ドラマからの踏襲と変化、2つの要素を意識しております。
もちろん、真の壁は当分破られません(笑)
次回もよろしくお願い致します。

祖父がカメラマン様

自己分析をなさって、次につなげようとする姿勢、頭が下がります。私も長い間書かせていただいてますが、基本的には変わらずにマンネリ気味かなと・・・。それでも開き直っていますが(苦笑)
お互いにハッピーエンドになるよう、切磋琢磨して参りましょう。
よろしくお願い致します。

ぱん太様

お読みいただきありがとうございます。
さて、コロは船酔い致しません。なぜなら、慣れているからです。コロの飼い主は智世と龍之介。散歩代わりにほぼ毎日のように船に乗せられていましたので・・・。勝手な設定ですが・・・(反省)
もちろん、上田薬局店の看板犬でもあります。もはや、智世に連れられなくても勝手に店番するくらいの勢いです(苦笑)機会がありましたら、コロをメインに書いてみようかなと思います。
良いキッカケをありがとうございました。作品にフィードバックしてみたいと思います(多謝)
次回もよろしくお願い致します。
...2006/03/17(Fri) 22:29 ID:zFE6HlR6    

             Re: アナザーストーリー4  Name:clice
たー坊様
書けなかった間も、次々とアップされる物語をずっと読ませて頂いていました。
また、書き込みを頂きながら、早く書かねばと背中を押される思いでした。
お陰でなんとか書けそうな気配がしています、ありがとうございました。
東京での大学の後輩との再会の文章は、とても面白く読ませて頂きました。
朔と亜紀、彼らの日常もこんなバックグラウンドとともに展開していけば、より素敵な世界を届けて頂けるのではないかなと思います。
後輩達との会話、とてもナチュラルでした。
甘いばかりでは・・。
...2006/03/18(Sat) 12:57 ID:BZhfAftM    

             Re: アナザーストーリー4  Name:一読者
たー坊様

>朔の天敵は亜紀です

それでいて長年の恋人同士なんだから面白い関係ですよね(笑)
ドラマからの踏襲と変化、大変楽しみに次回作を待っております。頑張って下さい!
...2006/03/18(Sat) 20:07 ID:h3uoYpKY    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
clice様
何やら、焦らせてしまったみたいで申し訳ございません。

>朔と亜紀、彼らの日常もこんなバックグラウンドとともに展開していけば、より素敵な世界を届けて頂けるのではないかなと思います。

このご指摘にはドキリと致しました。毎回、多少なりとも意識はして入れるようにしているのですが、それが明確ではなかったのかなと。以後、生かすように努力していきたいと思います。

また、そろそろ変化をつけたいと思います。
スランプに陥ること必至ですが、お付き合いいただければありがたいです。

一読者様

>それでいて長年の恋人同士なんだから面白い関係ですよね(笑)

同感です。私なら耐え切れずに逃げ出しているかも知れません(笑)
また、ドラマの踏襲と変化は今までにも結構入れているんです。関係というよりも、朔、亜紀、それぞれの性格の一部を「部分交換」のような表現でしょうか。亜紀の上を朔が行ったと思えば、亜紀はさらにその上を行くといった感じです。

次回もよろしくお願い致します。
...2006/03/20(Mon) 02:25 ID:HRLkb/lA    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
コトン・・・コトトン・・・ガタン・・・コトン・・・”

朔と亜紀はホテルを出発して電車に乗り込んでいた。
ラッシュの時間帯はすでに終わっていたが、まだ人は多くて座席には座れない。
ドア付近、決して邪魔にはならないように手すりに掴まり、目的地に着くまでお喋りのハズが、朝からのプレッシャーで朔は話をするどころか、亜紀の目を見ようともしない。

亜紀「ねえ。」
朔「ん?」
亜紀「ねえってば。」
朔「何?」
亜紀「私の目ぐらい見たらどうなの?」
朔「亜紀こそ、俺に必要以上のプレッシャーをかけるのはどうなの?」
亜紀「一緒にお風呂に入った仲じゃない・・・。」

小声で話しているものの、他人に聞かれたら困る内容であることは朔も分かっている。
慌てて亜紀の口を右手で強く押さえた。

思わず膨れっ面になる亜紀に、朔は目で

朔「(勘弁してよ)」

と、訴えざるをえなかった・・・。

そのうちに、電車は目的地に到着した。
亜紀が移植手術を受けた病院はここから歩いて少し。
当時、決して外に出ることは許されなかったので、記憶のある朔を頼りにそこへと向かう。

駅から1キロと少しある病院。
稲代総合病院ほど高い場所ではないが、この病院も坂の上に位置している。

朔「えーと、その辺にコンビニがあったと思うんだけど・・・。」
亜紀「・・・私の方を向きなさい。」

怒りと呆れが入り混じった声。
朔の脳裏に亜紀の怒った表情が瞬間的に浮かび上がる。

亜紀「もう!今は何も言わない!」
朔「ホント?」

亜紀は何も答えずに、朔の顔を両手で掴んで自分の方に向けた。

朔「強引・・・。」
亜紀「朔ちゃんが男らしくないから。」
朔「あー・・・そうですか・・・。」

どこか遠い目・・・。
少し重い雰囲気が漂う。

亜紀の手を引き病院の入口の前へ。

亜紀「さすがに入る訳にはいかないね。」
朔「まあね。」
亜紀「そっか、ここに入院してたんだ・・・。」
朔「病室の場所とか覚えてる?」
亜紀「あのあたりかな?」

指さす先には、大木が目の前に見える部屋があった。

朔「正解。」
亜紀「ビニールカーテン越しに毎日見てたから。私一人で・・・寂しくはなかったけど。」
朔「毎日でも来たかったんだけどね。」

亜紀が転院してきて以来、朔が時間を見つけては見舞いに来てくれていた。
さすがに綾子も毎日のようには来ることはできず、近くにアパートを借りることもした。それでも精神的、体力的に辛いことは違いなく、東京から近い朔が綾子の休みたい時に代わってという形をとっていた。

亜紀「面会時間ギリギリでも来てくれて・・・・・・感謝してもし尽くせないなぁ。」
朔「そのわりには最近ワガママだよね・・・。」
亜紀「乙女心をときめかせてたのに・・・。」
朔「あ、ゴメン・・・。」
亜紀「私の性格は知ってるよね?・・・心が狭くて、ワガママで、甘えん坊、泣き虫でカッコつけ・・・自己嫌悪になりそう・・・。」

亜紀の目は遠くなっている。

朔「これでいい?」
亜紀「私のワガママの2つ目、これで終わり。」
朔「じゃあ、行こうか?」
亜紀「宮浦に帰るの?」
朔「いや。もう1泊。」
亜紀「あ、そうなの?私、てっきり1泊2日だと思ってた。」
朔「横浜の夜景を見て帰ろう。」
亜紀「素敵・・・楽しみ。」
朔「でも、まだ時間はあるから・・・どうする?」
亜紀「移動していいんじゃない?私、ウインドウショッピングしたい。」
朔「昼もレストランを探す?」
亜紀「いいね。楽しくなりそう。」

踵を返し、坂を下っていく。
多くの命が助かる一方、失われていく命の存在を再確認し、その人たちが安らかに眠れるよう祈り、多くの命が救われ幸せになってくれることをまた願いつつ、歩を進めていく。
亜紀は朔に寄り添い腕を絡めた。強く、強く・・・。

「次は、東神奈川です。」

車掌が独特の口調で次の駅名を車内に告げた。
しかし、それに気付かぬ一人の青年。隣に座る恋人は、彼がうわのそらで何かを考えていることは5分くらい前には気付いていた。

朔「・・・・・・・・・・・・・・・。」

亜紀がその表情を確認。
朔が何やら口をブツブツ・・・。

亜紀「(プロポーズの言葉でも考えてるの?)」

絡めた右腕に力を込める。

朔「あれ、今どこ?」
亜紀「東神奈川ってところ。」
朔「じゃあ、次だ。」
亜紀「さっきから何をブツブツ考えてたの?」
朔「うん?いや・・・ちょっと。」

亜紀が予想したことは図星のようだった。
やがて横浜駅のホームに降り立った2人。地下の改札口から栄えている駅前に出る。
人目を気にせずに腕をきつく絡めて亜紀は朔を引っ張りはじめた。

その頃・・・。
宮浦の4人と一匹は港に戻ってきていた。
「寒い。寒い。」と声も体も震えている女性陣。コロを挟んで体温維持・・・・・・。

恵美「コロ・・・。」
智世「あんたの毛・・・少しむしってもいい???」

ビクッ!!!

コロが智世に敵対心を隠すことなく向けようとしていた。
恵美はそんなコロに気付きもせず、コロも智世が冗談を言っていることなど気付きもせずに警戒。

智世「そんな怖い顔しなくてもいいわよ。・・・さむ・・・。」
恵美「2人とも・・・風邪ひいたら責任とってくれるんでしょうね?」

「え???」

と、マヌケ面で2人を見る龍之介とボウズ。
「この男ども・・・。」
智世の恨みを込めたような視線の先では船の水槽から獲物を水揚げしていた。
今日の釣果は・・・。

コロ「(雑魚5匹・・・。)」

愛犬の寂しげな横顔が印象的だった。
龍之介は他の漁師からイシダイを横流ししてもらって埋め合わせ・・・・・・。

それを使って温かい昼食にありつけはしたのだが、女性陣、特に恵美の機嫌は徹底的に損ねたらしく・・・。

ボウズ「なぁ、機嫌直してくれよ・・・。」
恵美「真冬に何を考えてるの?」

ボウズの顔を睨む・・・。

ボウズ「そんな顔しなくてもいいじゃねぇかよ・・・。」
恵美「したくなくてもしてしまうわよ!」

とうとう語気が強くなり始めた
さすがにたじろぐ僧侶・・・・・・。

ボウズ「すまん。この通り!」
恵美「じゃあ、今日は泊まるよ。」
ボウズ「それでいいのかよ・・・?」
恵美「風邪ひかないようにしてくれるなら。」
ボウズ「高級ブランド品を買わされないだけよしとするか・・・。」

不用意な一言。
次の瞬間には恵美の両手がボウズの顔を思いっきりつねっていた。

ボウズ「フガ・・・・・・・・・・・・。」
恵美「反省してください。」
ボウズ「ふぁい・・・・・・・・・・・。」

一方、横浜。

当然、“ハマ”に来れば中華街という亜紀の一言で、お昼は中華。
観光客がいる中をぬって歩き、良さげな店を探していると、いい匂いが漂ってきた。
観光客の手の中には大きな大きな中華まん。TVで見た光景そのままの現実があった。

亜紀「あれがいい。」
朔「昨夜もコンビニのやつ食べたじゃない。」
亜紀「歩きながら食べるのもありでしょ?」
朔「・・・今朝、食事の時には『TVを見るな。』って言ってた。」
亜紀「それとこれとは別!」
朔「分かったよ。」

渋る朔はこの後の亜紀の言葉に喜んだ。
「買うのは1個でいいよ。1つのものを2人で分け合うって感動的じゃない?」
「食べ物でも、景色を見た時の感動とか・・・。」
「朔ちゃんが相手だから、それも倍増するんだよね。」

腕を絡めたまま、2つに割った中華まんを仲良く食べながら歩いていく2人。
元町に出て、亜紀のウインドウショッピングに一生懸命に付き合う朔がいた。

そして、夜・・・。

夕食も済ませた朔と亜紀は。今日の最大の目的といっても過言ではないだろう横浜の夜景を見に来ていた。
場所は山下公園・・・。

続く
...2006/03/20(Mon) 02:28 ID:HRLkb/lA    

             Re: アナザーストーリー4  Name:ぶんじゃく

たー坊様

なんだかんだ言い合いながらも結局仲の良い二人
ですね。
山下公園では何かが起こるんですか?

「続く」の文字になんだかドキドキしてきました。
...2006/03/20(Mon) 16:18 ID:HpoKD44k <URL>   

             Re: アナザーストーリー4  Name:朔五郎
山下公園ですか(なぜか感無量)
最近はMM21がメジャーになりつつありますが、やはり横浜の夜景といえばココでしょうね。
右を見ても左を見ても、カップルがいっぱい(笑)どうなるのか楽しみにしております(^^)
...2006/03/21(Tue) 01:16 ID:ldvdBDoM    

             Re: アナザーストーリー4  Name:祖父がカメラマン
…追詰められて来ましたね>朔w ここで切れないで、どうにか平静を保って欲しい、と切に願っております。

実体験ですが、諸々あって当時の彼女(女房)に結婚からのプレッシャーが凄い時期に、余裕の無かった私は「結婚すりゃいいんだろ、すりゃ!」と暴言を吐き、真面目に2ヶ月間ほど口を聞いてもらえなかった事があったので…
朔の(一緒にいたいけど…未だ俺、半人前なんだよ…)という気持ちが痛い程伝わってきますw

山下公園、楽しみです。偶然近くに住んでるものですから、どの辺で朔が行動を移すのか、予習と推測も兼ねて散歩してきます。
...2006/03/21(Tue) 12:10 ID:8i23n.yk    

             Re: アナザーストーリー4  Name:双子のパパさん
  おつかれさまです。たー坊様

 まとめて拝読させて頂きました。山下公園 夜景のきれいな場所ですね。結婚一周年の記念旅行で一度だけ訪れたことがあります。
 カップルがいっぱいのロマンチックな場所で、朔の口からどんな言葉が聞けるのかとても気になり、楽しみであります。

 がんばれ!! 朔!!
...2006/03/22(Wed) 02:34 ID:23/3DYP.    

             Re: アナザーストーリー4  Name:一読者
たー坊様

確実に佳境に近づいてる感じがして、ドキドキものです。朔の緊張感が、伝わってくるようですね。
朔が男になれるか、期待1割:不安9割で楽しみに続編を期待しております。

・・・・しかし私も含めて、山下公園に思い入れのある男性は、たくさんいるもんですねぇ・・
...2006/03/22(Wed) 19:22 ID:swhI5vBw    

             Re: アナザーストーリー4  Name:SATO
まとめて読みましたが、宮浦と東京・横浜で二元中継みたいな展開で面白いですね。

真が亜紀が将来住む家の設計をしたのは、やはり朔も含めて自分のコントロール下に置きたいというささやかな『抵抗』に思えましたが、どこか憎めないですね。
真冬の海に女性を漁に付き合わせるとは、スケとボウズはいったい何を考えてるんでしょう?ちょっと間の抜けたところがいかにも二人らしいです(^^)
皆さんも横浜・山下公園についてコメントされていますが、行ったことがある場所が出てくるとリアリティーを感じます。朔は男を上げるチャンスですが、どうなるんでしょうか?
...2006/03/22(Wed) 20:54 ID:nJB0Qalo    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
ぶんじゃく様
山下公園では大きなことが起こります。それがどういうものなのかは、続きをお待ちください。
次回もよろしくお願い足します。

朔五郎様
MM線が開通し、より便利になりメジャーになりつつあるMM21ですが、この時代1997年あたりは、まだ関内付近が活気があったと思います。
ここで、朔の人生最大の事件が起こります。
楽しみにしていただけたら嬉しいです。

祖父がカメラマン様
貴重な経験談をお話いただきありがとうございます。朔にそれを当てはめては、朔にとっても亜紀にとっても「世界の破滅」になりそうですので、変わった形で事件にしたいと思います。
次回もよろしくお願いいたします。

双子のパパさん様
すでにネタバレしつつあるのでしょう。次回作がつまらなくなるのかも知れないという不安にさらされております(苦笑)
下手に感動させようとはせず、自然な流れでもって行けたらと思います。次回もよろしくお願いいたします。

一読者様
できる事なら、私も朔を男にしてあげられたらと思いますが、結構生々しくなってしまいそうなので、そこをどう抑えるか・・・朔には大ミスを犯してうやむやにしようかと(苦笑)
次回もよろしくお願いいたします。

SATO様
亜紀の家は将来朔の名義になるでしょうが、それでも「廣瀬家の血筋」は色濃く残るでしょう「痕跡」として。その呪縛に朔が陥らないように祈ってあげて下さい。
スケとボウズのアホコンビですが、特にボウズが深刻になりそうです。ボウズに不幸の嵐が襲うかもしれませんね。
次回もよろしくお願いいたします。
...2006/03/23(Thu) 15:16 ID:7v.A7ves    

             Re: アナザーストーリー4  Name:Marc
こんにちは、たー坊様。

ちょっと、お久しぶりかもしれません(でも見ていましたよ)。

再開、ありがとうございます。
宮浦の男3人組の右往左往が本当に楽しいです、皆失敗してます
ね、でも、女性達は暖かく(時には厳しく)包み込んであげてい
るようで、これも楽しみの一つです。

朔と亜紀はようやく次のステージへ移る時期でしょうか?
ここまでの長い年月で厳しい状態の時も、心を通わせてきた二人
ですから、きっと良い方向へ進んでゆくと思います。
所で、皆様も書いておられますが、再開後の二人は私にとっても
とても身近な場所を旅していますね、京浜東北の電車も横浜の駅
も山下公園も、二人の歩いた風景を想像してしまいます。

これからも、よろしくお願いします〜
...2006/03/24(Fri) 16:01 ID:oinMMOS2    

             Re: アナザーストーリー4  Name:ぱん太
たー坊様

 こんばんは。
 朔と亜紀もそろそろプロポーズですかね。ここまで結構長かったですねぇ〜。僕も家内にはめられてポロポーズしたように思います。大学6年生の春だったと思いますが、研修中の病院を抜け出して、丸の内の家内の勤務地近くに赴きました。で、急に「先輩から仕事辞めるって言われたの。私も早く辞めるって言わないと、タイミングがなくなっちゃう」と言われ「じゃあ、結婚する?」って感じだったかなぁ〜と思います。次の日には、家内の両親に挨拶をしに。周到に組まれている家内の策略(?)。それまでは、どんなに時間が遅くなっても、家内を自宅に帰していましたが、結婚を決めてからは、そんなことが無くなりました。僕の家から家内の実家までは、タクシーで2,000円くらいの距離でしたが、家内をタクシーで送って、歩いて帰ってくるなんてこともやってました。その後に家内が司法試験を目指しているのを知らされる訳です。はめられた気分です。それでも、なんとか今年で結婚生活8年を迎えようとしています。所詮、そんなもんかと自己納得している今日この頃です。
 3月21日は、家内の35回目の誕生日でした。20日の仕事を早めに切り上げ、久しぶりに横浜に行って来ました。婚約時代は2週間に一度くらい泊り込んで、夜遊びを繰り返していた横浜ロイヤルパークホテルニッコー。留学してから、初めての宿泊となりました。にも関わらず、宿泊リストには名前が残っていたのでしょう。差し入れられる新聞も、当時と同じでしたから。
 そろそろ4月です。家内も大学を退官し、医学生になります。我が家も、それに併せて、大学近くに引っ越すことになりました。僕の通勤時間も軽減されそうです。家内の実家も近くなる..............。今週末は、引越でバタバタの我が家でございます。

ではでは、次回も楽しみにしております。
...2006/03/24(Fri) 22:46 ID:f6/5tzNg    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
Marc様
次回では、少し長めにして2人のステップアップをお伝えできればと思います。
また、身近な所を歩かせておりますが、何を隠そう、私も関東の人間でして・・・特に横浜にはしょっちゅう出没しております。
あのあたりの地理をご存知の方にはリアリティ溢れるのではないでしょうか。

ぱん太様
気がつけば出会いと別れの季節、転居も多くなりますが、ぱん太様も例外ではないのですね。
でも、お体への負担は軽くなりそうなので私もホッとしております。
奥様との思い出話、ありがとうございました。
朔も亜紀にははめられるのかもしれません(笑)
...2006/03/25(Sat) 01:13 ID:ckTUR6IE    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
すでに空は闇にすっぽりと覆われていた。
大黒ふ頭からベイブリッジで渡されている本牧ふ頭へと、車の列が湾岸線を走っている。

目の前では氷川丸もライトアップされている。
マリンタワー、ランドマークタワーもまたベイエリアで目立つ存在だ。

公園入口に入る時から亜紀は心が躍る・・・・・・。
歩が無意識のうちに早くなる。絡めた腕が離れることのないように、朔もそのスピードに合わせる。

県庁舎前の通りも途切れることなく、また車が通過している。

亜紀「綺麗・・・。」
朔「うん。」
亜紀「イヴにロマンチックね。」
朔「・・・うん。」

自分達の周りには、同じような目的で来たのだろう。カップルが多く集まっていた。
同じくらいの世代、たまの家族サービスなのか、熟年夫婦らしき男女、さらには高校生くらいまで幅広い。

亜紀「寒さも忘れられるくらい素敵・・・。」
朔「ずーっと就職活動してさ、いつの間にか景色とか見ることしてなかったんじゃない?」
亜紀「うん。言われて初めて気付いたけど・・・(笑)」
朔「俺もだよ。自分で言っておいて情けないけど・・・。『いつも患者さんを何とかしないと。』そればっかり考えててさ。スッキリ晴れた日に空を見ることさえ忘れてた。」

少し自嘲気味な朔。

亜紀「当たり前なのにね。・・・そういうことするの。」
朔「しかも、それが当然のことなのに、それを忘れてた。」
亜紀「今、当たり前のことがどれだけ大切なのかって、私達が一番知ってるハズなのにね・・・。」

亜紀は手すりに両手を乗せ、氷川丸を見つめながら笑っていた。

亜紀「・・・・・・(微笑)」

言葉は一言もない。
ただ、今までの見慣れたどの横顔よりも可愛かった。美しかった。
穏やかなその表情、朔の中でモヤモヤしたものが無くなっていく。

朔「簡単なことか・・・。」

それだけ言った。
「亜紀がいればいい。」
それは、今までと変わらないごくごくシンプルな答えだった。ただ、それを確信するまでにかなりの時間を要した。

朔「(なんでだよ(苦笑))」

自分自身の訳の分からなさに2度目の自嘲。
でも、今すべきことは分かった。それは最近考えている事に違いなかった。

しかし・・・。
急激に心拍数が上昇。
肝心な時に限って緊張してしまう。

朔「落ち着け・・・落ち着け・・・落ち着け・・・。」

決して亜紀には聞こえる事のないように、声に出さずに言っているつもりが、わずかながら出してしまっていたらしい。

亜紀がくるりと朔に向いた。
その顔は変わらない。

そして、

亜紀「ずーっと考えてたことがあるでしょ・・・。」

まるで見透かしていたかのような言い方だった。

朔「・・・・・・聞こえてた?」
亜紀「さあ。」
朔「・・・・・・何を頑張るの?」
亜紀「さぁ・・・。」

亜紀は再び海の方を向いた。
もうバレバレでもしょうがない。

亜紀「頑張れ・・・朔ちゃん・・・・・・。」

海を見ながら言った。
バレていることを確信させる一言でもあった。

ポリポリと頭をかく朔がいる。
でも、仕方ない。もう言うしかない。ここまで来て何も言わなかったらそれこそ永すぎた春になることも有り得る。

朔「亜紀。」

名前を呼んだ。
体に変な汗が出そうな気がした。

亜紀「なに?」
朔「もう、バレバレだと思うけど・・・。」
亜紀「うん。バレバレ。」
朔「茶化すな。」
亜紀「はい。続きをどうぞ。」
朔「・・・・・・・言いたいこと言うよ。」
亜紀「楽しみ。」
朔「俺たちだいぶ長いこと付き合って来てさ、その間に大変な体験を沢山して・・・これからも沢山のことを経験すると思うけど、それを2人で分かち合いたいんだ。良いことも悪いことも・・・だから、結婚しよう。俺を、幸せにして。」
亜紀「・・・・・・。」
朔「どうかな?」
亜紀「・・・・・・・・・・・。」
朔「・・・・・・。」
亜紀「・・・考えさせて下さい。」

耳を疑った。

朔「え、何で!?どうして!??俺じゃ不満!???どこがダメなの????」

今にも肩を掴みかからんばかりの勢いの朔に亜紀は、サッとカバンからあるものを取り出して言った。

亜紀「聞いて。」
朔「これ・・・わざわざ持って来てたの?」

1987年7月2日の光景が蘇る。
あの頃想像した未来に僕らが立っているのか分からない。でも、あって欲しかった幸せは確かに目の前にある。

朔は黙ってイヤホンを耳にした。

テープ「・・・サ・・サー・・・・・・あ、あ。こんばんは。廣瀬亜紀です。今日は私の好きなものと嫌いなものについて話します。・・・松本朔太郎が好きです。彼の好きなもの、言葉、行動、仕草、彼を彩る全て、彼を成り立たせるかたちあるもの、かたちないもの全てが好きです。そして嫌いなもの・・・それは、彼に魅力的に映らない私です。私には人間的に足りない部分が沢山あります。泣き虫、意地悪、カッコつけ、ワガママ、甘えん坊。でも・・・それでも彼が結婚してくれって言ってくれたら、多分、それを受け入れるでしょう。・・・多分じゃなくて、間違いなく・・・。こんな私がそれにさらに甘えていいのでしょうか?彼の深海よりももっと深い愛情を感じることができます。その優しさに甘えていいのでしょうか?私は不安です。私が、一生彼の重荷になり続ける可能性があることに・・・それでもいいのでしょうか?」

“プツ”という音と共にテープがそこで途切れた
亜紀は自嘲しているのか、悲しいのか分からないような複雑そうな表情でいる。

朔「・・・・・・・・・。」

その声は冷静だった。

亜紀「本当に、私でいい?」

力強くハッキリと頷いた。
それを見た亜紀。

亜紀「私が、朔ちゃんを幸せにしてあげる。」
朔「悩んでたくせに・・・。(ブツブツ)」
亜紀「なんか文句でも?」

朔の両頬は思いっきり抓られていた。
「こんなんでいいのか?・・・プロポーズって・・・。」
朔の疑問が反芻される。

朔「はなふぇ。(離せ。)」
亜紀「ほう・・・わらわにそのような口の利き方をするのですか?」
朔「はなふぃへふふぁはぁい(離してください。)」
亜紀「よろしい。」

「亜紀は一体なんなんだ?」
コロコロ変わる態度、「たまったもんじゃないなぁ。」と思う。
でも・・・。

朔「結婚して。」
亜紀「喜んで、お受けします。」

言いたいことは言えたのに、想いは100%伝わったのに、何故か今更になって緊張してくる。
「うあぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜・・・・・・。」
急激に高まった緊張感から一気に開放されていく。肩の重荷がどっと取れた瞬間だった。

亜紀は笑っていたが、その目にはごくごく薄っすらと涙が溜まっているようだった。

朔「あー・・・疲れた。」
亜紀「今何時?」
朔「9時近く。」
亜紀「あとちょっとだけここにいない?」
朔「いいよ。」
亜紀「ホントに綺麗ね。夜景。」
朔「・・・・・・もしかして、喜んでないだろ?」
亜紀「そんなことないよ(呆)」

それからは、しばし横浜港の夜景を見続けていた。
しかし、若干風が冷たい。

亜紀「朔ちゃん。」
朔「え?」
亜紀「お腹減った。」
朔「やっぱり喜んでないだろ。」

思わず、怒りを込めた言い方になってしまった。
亜紀の目尻が下がり、みるみる顔が下向きになっていく。

夢島の時もそうだったが、亜紀はどこかズレている・・・。そんな思いを抱きつつも同じ反応をする自分がいる。それはいつも決まって困惑したもの。
「しょうがない。」
その一言で片付けられれば良かった。でも今日ばかりはそうはいかない。
『関白宣言』だ。

亜紀「だって・・・お腹すいた・・・。」
朔「幼稚園児?」
亜紀「ホッとしたらお腹って空くんじゃないの?もし、今回の旅行で朔ちゃんのプロポーズしてもらえなかったら、私、捨てられると思ってた。」
朔「俺、鬼扱い?」
亜紀「そうしたら、自殺してやろうと・・・。」
朔「こらっ!!!!」
亜紀「不安で仕方なかった。」

亜紀の悲しげ・・・いや、それすらも作っているのかもしれない。そして、結局その表情には一番弱いのが、松本朔太郎という廣瀬亜紀とめぐりあった最高に幸せな男だと、自分自身で感じられた。

そして・・・。

亜紀「おいし♪」
朔「うまいなぁ。この春巻。」
亜紀「朔ちゃん、朔ちゃん、この酢豚も。」
朔「遅くなった分、腹減ったからなぁ。いつもより美味く感じるのかな。」
亜紀「それは違うよ。」
朔「じゃあ、何?」
亜紀「ダンナさんが目の前にいるからでしょ。」

その顔はどこか赤かった。
照明の影響もあるかもしれない。
店内は人も多かったが、朔は亜紀の口をふさぐようなことはしなかった。
純粋にその言葉が嬉しかった。
「一生をかけて守りたい。」その気持ちが一段と強くなった。
笑顔が絶えないこのひと時。朔の肩の荷が降りた。

でも・・・。

店員「ありがとうございました。またのご来店を」

亜紀「美味しかったね♪」
朔「うん・・・。」
亜紀「お財布、大丈夫?」
朔「大丈夫・・・なのかなぁ。」
亜紀「いくら残ってるの?」

朔の財布の中には、今夜のホテル代と宮浦へ帰る電車代のギリギリの額が残っているだけだった。

亜紀「はい。」
朔「え?」
亜紀「食事代よ。」
朔「いいよ。」

そりゃそうだろう。プロポーズした夜に金が無くなって彼女に少し出してもらったなんてカッコ悪さこの上ない。亜紀の口から漏れることは無いだろうが、万が一スケちゃんとボウズにバレたら当分はネタになってしまう・・・。
亜紀が差し出した諭吉様を、朔は決して受け取ろうとはしなかった。

そこは長年付き合っている大事な恋人のこと。やせ我慢しているのは手に取るように分かってしまう。
しかし、ここで強引に受け取らせるわけではない。一度引いてスキを見つけるのだ。

それが実行されたのはホテルに着いてからだった。

朔「ふぅ〜。」

ドサッとソファに座り込んだ朔。
いつも言うことは決まっている。「だらしない。」と「上着がシワになっちゃう。」の2つ。今日はそれに加えて少し強烈な一言。

亜紀「結婚してからはそんなことは許さないから。」

優しさの中にも怖さが潜む・・・。
朔の背筋がピンとする。

朔「悪魔。」
亜紀「言っとくけど、私、あなたのためなら悪魔にでも鬼にでもなる。」
朔「ならなくていいから。」
亜紀「なる!今、決めた。」

そうだ・・・優しげな微笑の裏にある強烈な閻魔大王のような顔・・・。
怖いはずなのに、でも、不思議と怖いとは思えない・・・。
「俺の感覚、狂ってんだろうな・・・。」

心の中で強く認識した。

この間、朔の上着の内ポケットにはさっきの一万円札が忍ばされていた。
もちろん、朔はボーっとしていて気付くのは明日の朝になるだろう。

亜紀「じゃあ、私、先にお風呂入るから。」
朔「ああ、いいよ。」

TVをボーっと見てる。
完全に気が抜けた。それは本人が一番自覚している。
時刻は11時少し前。今日も一日終わったくらいに思う朔がいる。しかし、1時間後には興奮の渦の中に自分がいることなど想像も付かなかった。
そう。この会話をするまでは・・・。

亜紀「朔ちゃん、気持ちよかったよ。入りなよ。」

この声と共に感じたのは、シャンプーのいい匂い。同時に亜紀の匂いも混ざる・・・。

朔「じゃあ、さっそく。」
亜紀「早くしてね。すること沢山あるんだから。」

その言葉を聞き、慌てたようにバスルームに消えていく朔を見送りながら亜紀は不思議そうな様子を見せていた。

亜紀「あんなに慌てて・・・?私、何かしたのかなぁ・・・?」

朔にとっての“すること”それはすなわち、朔が長年待ち望んだ“たった一つ”そのものだった。
しかし、亜紀の“すること”はこれからの将来設計に関する話、今を未来へとつなぐ言葉をたくさん交わしたいという願望だった。

そんな勘違いとはつゆ知らず、朔は浴槽の中で感動していた。
「亜紀、ありがとう・・・!長かったよなぁ・・・俺、頑張ったなぁ・・・!」
自然にガッツポーズまで飛び出す・・・。

そして・・・。

朔「亜紀っ!」
亜紀「な、何〜???ビックリした・・・。」
朔「お待たせ!!!」
亜紀「何をそんなに・・・?」

目をパチクリさせる亜紀に、朔のテンションは急カーブを描いて上昇する一方・・・。
しかし・・・。

亜紀「もしかして、今日が・・・?」

朔は少しも疑うことなく縦に首を大きく振った。
亜紀は思わず吹き出した。

朔「??????」
亜紀「バ〜カ!!!何考えてるのよ!!!変態!!!」
朔「何だよ???」

何も気づいていない・・・。
鈍すぎる・・・・・・・。

亜紀「私が言った意味は、たくさん話したいってこと。これからの将来設計とかさ・・・。」

しかし、それには耳も貸さずに朔は亜紀の肩をしっかり掴んで訴えた。
「それは、後で聞くから!それよりも今夜は・・・。」
そういうと、急に下を向く・・・。

朔「・・・・・・亜紀が欲しい。」
亜紀「・・・・・・。」

朔の顔はこっぱずかしそうに赤い。でも真剣だった。
そんなに欲求不満なのか・・・・・・?

「ここまでハッキリと意思表示する朔ちゃん見るのは初めてだ・・・・・・どうしよう・・・。」

ここまで自分の心がグラグラに揺れている自分がいることに驚いた。そして、それに対しての不安は無かった。

亜紀「いいよ・・・。」

それからの数分間は部屋にある冷蔵庫の音と、外を走る車のエンジン音が微かに漏れているのみであった。

亜紀は強く抱きしめられて思った。
「朔ちゃん・・・体だけじゃない・・・心もちゃんと・・・。」
言葉は悪いが「体が目的」という不安は完全に過去のものとなった。朔の体温からは「心と共に。」そんな雰囲気が感じ取れた。

亜紀「朔ちゃん・・・。」
朔「・・・・・・。」

“ドサッ”

フカフカのベッドに体重を掛けて2人の体は沈んだ。
              ・
              ・
              ・
              ・
              ・
1分がその何倍、何十倍にも感じられる・・・。
背中に腕があるのを感じ、唇を重ねた時間はどのくらいだったのだろうか・・・。
ジッと見つめるその顔は、何故か笑えるほどに真剣だった。

亜紀「緊張してる?(微笑)」
朔「自分でも分かんないな。それは・・・。でも、」
亜紀「でも?」
朔「あれこれ考えなくても、体が勝手に動いてくれそうな気がする・・・・・・。」
亜紀「朔ちゃんの好きにしていいよ・・・・・・。」

再び唇を重ねてきた朔の体温を受け入れている自分がいた。
交わす言葉などほとんど無い。本能の赴くままの2人・・・。

背中の辺りまで掛けられた布団の動きが少しずつ大きくなっていく。
キスをしつつ、手はボタンを上から外していた。
亜紀の体温が上がる・・・。

上半分を外し終え、そっと取り除く・・・純白の下着が朔の視界に飛び込んできた。
男としての本能だろうか?飲み込んだものが喉を通過していく。

首にある黒子を見つけた。新しい発見、このあたりは冷静だった。
そこに唇を当てた。そこから下へ下へと顔を移す・・・。

亜紀の体が驚いたように動き始めた・・・。
時折、喉を朔に見せ、吐息が出るようになっていく・・・。本人は気付いてはいないだろう・・・。

「なぁ。亜紀・・・こんなこと言うと怒るだろうけど、今が一番幸せかもしれない・・・でも、やらしい意味じゃないんだ・・・心が一番通じる瞬間だと思う。違うかな?」

「ねぇ、朔ちゃん?私、後悔しないよ。むしろ、“いつかは・・・・・・。”って、望んだものだったのかもしれないね・・・。待たせちゃってゴメンね・・・。」

再び亜紀の背中の下に朔は手を回した。
彼の本能の一つなのかもしれない。自分の気持ちを亜紀に届けたいという願い・・・なのかもしれない・・・。

そして、それに答えるように亜紀が口を開いた。

亜紀「朔ちゃん・・・。」
朔「え?・・・。」
亜紀「大好き・・・。」
朔「俺もだよ・・・。」
亜紀「お願い・・・優しく・・・そっと・・・・・・。」
朔「・・・・・・。」

亜紀の表情は幸福感で満たされているようだった。
いつも一緒に寝る時に見せるのと全く同じ表情・・・。
「暖かい・・・朔の腕の中が一番幸せ・・・。」
そう言ってくれた時を思い出した。
たまらないほどの愛おしさ。朔は唇を強く重ねた。そして亜紀の右側に自分の顔を置き、全体重をかけて強く強く抱きしめた・・・。

亜紀「朔ちゃん・・・・・・。」
朔「・・・・・・・・・・。」
亜紀「暖かい・・・人の体って、本当に暖かいものなんだね・・・・・・。」
朔「・・・・・・・・・。」

ムードは最高潮に達した。
もう、喋ることもないだろう・・・。
              ・
              ・
              ・
              ・
              ・
しかし・・・。

朔「あっ!!!」
亜紀「・・・どう・・・したの?」
朔「・・・・・・。」
亜紀「朔ちゃん・・・・・・?」

体を起こして亜紀を見て言った。

朔「避妊具・・・持って来てない・・・・・・。」
亜紀「・・・・・・。」
              ・
              ・
              ・
              ・
              ・
亜紀「本当に・・・もう・・・。」
朔「・・・・・・。」

亜紀が必死になって笑うのをこらえている。
朔はガックリと肩を落としている。ココまで落ち込んでいる朔をみるのは初めてだ。

朔「亜紀。」
亜紀「なぁに?(笑)」
朔「無いとダメ?避妊具・・・。」
亜紀「朔ちゃん・・・(笑)またチャンスはあるよ(笑)」
朔「そうだよなぁ・・・ムードも全部吹っ飛んじゃったよな・・・・・・。」
亜紀「ホント・・・肝心なこと・・・忘れてるよね・・・・・・。」
朔「・・・・・・・。」
亜紀「(笑)ドスケベ・・・変態・・・。」
朔「・・・(言い返せない)」
亜紀「朔ちゃん・・・最っ低・・・・・・。」

全てをフイにした松本朔太郎・・・。
まさか、自らチャンスを逃すとは思ってもみなかったのだろう・・・その情けなさそうな顔は、廣瀬亜紀の笑いを誘うのには十分すぎるものだった。

服を整え、一つの枕を2人で使う。2つあるベッドの空いている方は、荷物置き場と化した。
亜紀はケラケラ笑いながら朔をからかい続けていた。

「勘弁してくれ。」
朔の願いも口にできる立場に無い・・・。

亜紀「人を呼び出しておいて『あの場所』なんて抽象的な言い方・・・。私の外出許可を忘れて・・・・・・。1ヶ月もほったらかし・・・。上着はハンガーに掛けない・・・。」
朔「ゴメンナサイ・・・。」

朔の粗探しのごとく欠点を並べ始めた。
もうこうなると止まらない。・・・亜紀は笑いながら朔を痛めつけていた・・・・・・。

亜紀「本当にもう・・・(爆笑)」
朔「・・・・・・。」
亜紀「過ぎたことはしょうがないけどさ・・・(笑)」
朔「あぁ・・・何とでも言え。何度でも笑え!・・・俺を奈落の底へ突き落としてもらって構わない!!」
亜紀「じゃあ、何度でも朔をバカにしてやる。」
朔「・・・そこ、普通はフォローするとこじゃないの・・・?」
亜紀「だね(笑)」
朔「何が『だね(笑)』だよ・・・・・・。」

朔はすっかり拗ねてしまった。
ふてくされモード全開・・・。
それでも亜紀は朔に変化球な愛情表現をし続ける・・・。

亜紀「ほら出た。そのお子様みたいな怒り方。」
朔「うるさい。」
亜紀「まあでも・・・そういう部分が無いとね・・・朔ちゃんじゃないしね。」
朔「どういう意味?俺は子供ってこと?」
亜紀「そういうこと。」

亜紀はそういうとさらに表情を険しくする朔の鼻を人差し指で触れながら悪戯心を隠そうともしない笑い方でからかう。

「一発引っ叩いたろか・・・。」
関西人に変貌・・・。

亜紀「そのくらい強気ならいいのに。」
朔「亜紀・・・俺に不満しかないんじゃないの・・・?」

深刻そうな顔にまたも吹き出した亜紀。

朔「笑い事じゃない。」
亜紀「だって・・・。」

腹を抱えて笑い転げんばかり。
朔は、もはやどう怒って良いのか忘れていた。

亜紀「・・・さて、からかうのにも疲れてきたなぁ。」
朔「おやすみ。」
亜紀「そうじゃないでしょ。」

今度は亜紀が怒り始めた。
最初の一言は、「朔の腕の中で寝たい」という、さりげないサインなのだ。もちろん、同時に愛情表現も兼ねている。それなのに朔はさっさと目を閉じてしまう。それは亜紀にとって困ること。

朔「なに?」
亜紀「いつもやってるじゃない。」
朔「さっきまでからかい続けた罰だ。俺は今日は寝る。」

憮然とした朔に、いつもの微笑みは通用しなかった。
「私、甘え方下手なのかなぁ・・・。」
欠点を再認識した。

亜紀「ごめんね。だから・・・。」
朔「知らない。」
亜紀「私、普通の枕より、朔ちゃんの腕枕で寝たいの。初夜のつもりで・・・ね?」
朔「腕がしびれるからイヤ!」

かなりの拒絶。

亜紀「そんなこと言わないで。ね、おねがい♥」
朔「色仕掛けは通用しない。」
亜紀「意地悪・・・。」
朔「お前に言われたくない。」

そう言いつつも、朔は右腕を亜紀に貸した。
今宵も2人の布団の中は大層暖かかった。

続く
...2006/03/25(Sat) 11:58 ID:ckTUR6IE    

             Re: アナザーストーリー4  Name:にわかマニア
 プロポーズ・・・ この一世一代の「セリフ」がなかなか出てこないのは,ものすごいプレッシャーのせいなのでしょうね。もうこの時点ではプロポーズ以外の選択肢はなくなっている訳ですが,そうなるよう誘導して(追い込んで)いった相手の方が一枚上ということなのでしょう。
 ご本人には申し訳ないのですが,「祖父がカメラマン」さんのケースには思わず笑ってしまいました。私の連れ合いの同僚の場合は,シドロモドロで一向に要領を得ない相手(男性)に対して女性の側がキレてしまい,「つまり,プロポーズしたいってこと?」と畳み掛けられても,ショボンとうなだれたままだったそうです。

 さて,本人へのプロポーズという第一関門は何とか突破したサクですが,親への挨拶というとてつもない関門が待ち受けているのですね。どんな試練に遭い,どう乗り越えていくのか,それともあえなく玉砕してしまうのか,この先の展開に期待しています。

 「あのドラマ」の最終回の2日後ということもあってか,今回の亜紀のセリフは「雪○」モードも織り込んでありましたが,昨日発売された「あの歌」のように,
「突然おとずれた悲しみに
 意味さえも分からないほど
 まだ子供だった
 変わる事許せずに
 ページは破られてく」
といった展開にならないことを祈っています。
...2006/03/25(Sat) 14:24 ID:qcmrG.iE    

             Re: アナザーストーリー4  Name:一読者
たー坊様

・・いやぁ、お見事な力作ですね。3回くらい、読み直してしまいました。
事の成否?は別としてきっちり求婚できた朔は十分男になったと思います。
そして、肝心の場面でしくじる朔は、正に朔そのもの!という感じでした(笑)

いつまでも二人が仲むつまじく寄り添う様子を見ていたいと痛切に祈っています。
これからも頑張って下さい。続編、期待しております。
...2006/03/26(Sun) 18:35 ID:pHUkjjy2    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
にわかマニア様
そうなんです・・・朔には結婚の報告という最大難関が待ち受けているのです。
それも・・・天敵・真に・・・・・・。これで亜紀の祖父母もいたらどうなるのでしょう・・・病院送り・・・かもしれませんね(苦笑)
さて、亜紀の機嫌はすこぶる良いので、「新曲」のようにはならないと思いますが・・・。
これからもよろしくお願いいたします。

一読者様
お褒めのお言葉、ありがとうございます。
朔の「大願成就」とはなりませんでしたが、亜紀は朔にアドバンテージを部分譲渡しても良いくらいに上機嫌です。例えば、手料理が一品増えていたりなど(笑)
肝心な所を忘れる点は、そのまんまです。
だから、”大願成就”しないんです。(苦笑)
次回もよろしくお願いいたします。
...2006/03/26(Sun) 21:14 ID:7mCvsFBE    

             Re: アナザーストーリー4  Name:祖父がカメラマン
>たー坊様
>亜紀「・・・考えさせて下さい。」
ここで一旦断るのが、如何にも亜紀らしいなぁ…と。
本当に強く、優しい娘ですね。朔の未来を真剣に考えての行動でしょうから。
また、このふたりにこんな明るい未来が訪れてたら、どんなに喜ばしい事だろう…等と思い、1人で目頭熱くしてましたw

また、ある意味で最大のクライマックスを見事に演出された事に驚嘆致しました。
ドラマでもそうですが、このふたりにそういうイメージ(どういう?)が非常に湧き難い中、ごくごく自然な流れでふたりが結ばれて行く…素晴らしいストーリーでした。
まぁ結果的には未遂でしたが…最初は誰しも(以下略)
今後も益々の御活躍、心より期待しております。

>にわかマニア様
…笑い事ではありませんでした>当時は。
まぁ全て自業自得ですけどね。ツッコミありがとうございましたw
...2006/03/26(Sun) 23:49 ID:7nWrD2Os    

             Re: アナザーストーリー4  Name:ぱん太
たー坊様

 こんばんは。久しぶりの当直です。やっと落ち着いたので、たー坊様の物語を読むことができました。
 朔は惜しかったですねぇ〜。もう一歩。その間にコンビに行って、買ってくることは出来なかったんでしょうか。今度は、いつ、その機会が現れるやら........。
 
 両親への挨拶って緊張しますよねぇ〜。僕が家内の家に伺ったときは、いつも入っている和室なのに、綺麗に掃除されていて、綺麗な座布団が並べられていました。何度も顔をお合わせ、食事も一緒にしているお父さんとお母さんでしたが、思いっきり緊張したのを覚えています。
・知り合って12年
・交際を始めて2年
・研修中で給料は安いけど、研修終了後は留学したい
・留学すれば、今の20倍近くの収入になると思う
・充分に生活していくだけの収入になる思う
なんてことを言ったように思います。で、「○○(家内の本名です)さんと結婚させていやだきたいのですが」と。家内の父親からは、間髪入れずに「これからも末永くよろしくお願いします。」と言われました。その言葉を聞くまで異様に緊張していたように思います。
 その足で、お母さんから「記念日だから、2人で何か食べてらっしゃい」とお小遣いを渡され、結婚式と披露宴を行う予定だったニューオータニに赴きました。そこで式の日取りやら諸々を決めて、食事をして、家内を家まで送りました。そしたら、家族(両親、祖母・弟)の4人で酒を飲みまくり、ほろ酔いになっていました。向こうのご両親にも挨拶に行かなければならないからと、その場で電話をかけさせられ、翌週の週末に家内と僕と家内の両親と一緒に、僕の実家に行くことになりました。まぁ〜、いろいろと苦労した思い出があります。その一部始終が1996年の4月。結婚式の予定は1997年の11月に予定していましたが、兄の病状が悪くなる一方で断念。後日、渡米した後で、お互いの両親を呼び寄せ、6人だけの結婚式となりました。そんな紆余曲折を経ながらも、そろそろ8年目。人生ってこんなもんなんでしょうね。まぁ〜、僕も自分がガンだと診断されたときには「ヤバイ!」と思いましたが、家内がいたことで、なんとか克服しつつあります。入院中の週末には、我が家のチワワンも遊びにきてくれて、病院の近くやら、大学の構内を散歩して回ることができました。

 ちょっと余談を。TBSの石丸プロデューサーって、僕よりも3歳年下なんですね。僕の親友の奥様は、元TBSの記者ですが、アレより若いんだ。結構、将来を期待したくなるようなプロデューサーですね。

 ではでは。
 次回作も楽しみにさせていただきます。
...2006/03/27(Mon) 04:09 ID:JRKycNI.    

             Re: アナザーストーリー4  Name:まこと
毎回楽しく読ませていただいています。でも「避妊具ネタ」はちょっと・・亜紀は妊娠する可能性がほぼないのですから。日々肝炎等の患者さん達と接触しているサクが万一を考えて、というのならばわかりますけど・・「何かを失うことは何かを得ることだ」子供をもてない二人がこれからどんなものを得るのか、それが楽しみです。
...2006/03/27(Mon) 10:38 ID:G0H1yqi6    

             Re: アナザーストーリー4  Name:KAZU
たー坊様
ご無沙汰しております。
ようやく朔が亜紀にプロポーズですか(^^♪
私も妻にプロポーズをした時には超〜緊張しました。私はディズニーランドでしたが…
...2006/03/27(Mon) 12:22 ID:n/cg7ER2    

             Re: アナザーストーリー4  Name:朔五郎
プロポーズは横浜でしたか(^^)
これから、どう進展して、どんな結婚写真が残るのか楽しみですね(^^)
...2006/03/27(Mon) 21:40 ID:ZaF3A5rU    

             Re: アナザーストーリー4  Name:ぶんじゃく

たー坊様
とうとうやりましたね^^
なんだか読んでいるこちらまでが嬉しくなってくる
そんな場面でした見事な演出 素晴らしかったです。
しかも続きがまた楽しそうで待ち遠しいです。
...2006/03/28(Tue) 02:38 ID:rBQTj9TU <URL>   

             Re: アナザーストーリー4  Name:双子のパパさん
たー坊様 おつかれさまです。

 プロポーズの言葉感動いたしました。朔らしいですね(^^)朔 がんばった!!そうですよね。いろいろありすぎた二人だったので。
 亜紀の「聞いて。」には、あの情景が浮かび鳥肌がたちました。亜紀のやさしいとこ、弱いとこ、また、意地悪なとこ。いっぱいの亜紀を感じれて朔はしあわせですね。(自分もですが・・)
 いそがしさに忘れて、周りの景色を見てないことに気づきました。青い空を見に行きます。
 次回作 楽しみにいたしております。
...2006/03/28(Tue) 10:44 ID:rjrJx/E.    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
祖父がカメラマン様

亜紀が即答しないのは、亜紀の性格もあったのですが、ドラマとの対比(?)の意味も込めています。
ドラマでの朔のプロポーズに名言はなかったものの、ビニールカーテンを飛び出し、朔の胸に飛び込んでいったシーンは、皆様感動されたと思います。
ですから、今回は”らしさ”を出しました。

また、お褒めの言葉は嬉しく思いました。
次回もお読みいただければ幸いです。

ぱん太様

お疲れ様です。
ぱん太様もかつてはご苦労をされたようですね。
さて、朔には真というなの壁があります。いずれ、挨拶に行くシーンは書きたいのですが、その参考にさせていただきます。

次回もお読みいただければ幸いです。

まこと様

早速、釈明をさせてください。
亜紀の体の状態を考えれば、まこと様のおっしゃることは最もです。しかし、ストーリーの展開を考えれば、今回の朔の行動は必要不可欠のことだったのです。それは”カモフラージュ”と言えると思います。何のカモフラージュかは、後々明らかにしていくつもりです。そして、私の説明不足とも言える今回のご指摘にも少なからずご納得いただけるものと思います。
そして、敢えて言うならば、朔の亜紀を想う気持ちが変わらなければ、仮に妊娠する可能性が低くても、すべきことをすると思います。それは、朔のみならず、大切な女性がおられる世の男性がしなければならないことなのではないでしょうか?

これからもお読みいただければ幸いです。

KAZU様

KAZU様はディズニーランドでしたか。その単語に、「それでも良かったかも・・・。」と思いました。
亜紀のことですから、朔にねだって連れて行かせるのでしょうが・・・(苦笑)

これからもよろしくお願いいたします。

朔五郎様
結婚写真がありましたね。
2枚目となりますが、1枚目の隣にかざられるのでしょう。再び亜紀のドレス姿に魂を抜かれるんでしょうね(笑)
その時も頑張ります。

これからもよろしくお願いいたします。

ぶんじゃく様

朔は頑張りました(笑)とてもとても頑張りましたよ。亜紀の喜びもひとしおだったことでしょう。
さて、これから朔にとって、最大の試練が待っているわけですが、朔には大いに悩んでもらおうかと思います。

次回もお読みいただけたら幸いです。

双子のパパさん様
ようやく、そして何とか朔の気持ちが亜紀に伝わりました。そして、亜紀の真意、これも朔のエネルギーといいますか、生きがいになっていることはまぎれもありません。2人には、青空のもとで笑い続けてもらいたいものです。
これからもよろしくお願いいたします。
...2006/04/02(Sun) 21:32 ID:EMblWwyU    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
読者の皆様

こんばんは。たー坊です。

いつも励ましのお言葉により、執筆をしてまいりましたが、多忙を極めております。また、執筆自体もスランプに陥りました・・・。

当分の間は定期的な投稿が不可能となりますのでご了承下さるよう、お願い致します。
...2006/04/05(Wed) 20:50 ID:/VqK7YSY    

             Re: アナザーストーリー4  Name:ぱん太
たー坊様

 こんばんは。闘病中の不良外科医です。消灯が過ぎると、何気に寂しくなるのが病院ですね。

 さて、家内の両親に挨拶に行く2ヶ月前のことです。家内から「生理が無いんだけど」と言われたのを思い出しました。即、産婦人科に連れて行こうとも思いましたが、数日間して、生理が戻って来たようです。その間は、彼女の親に殴られても良いから、結婚させてくださいと言う心積もりでいました。

 まぁ〜、人生色々あるもんですね。それ以来、人工授精を除けば、家内の妊娠の徴候は全くありませんから。
 先月、実は体外受精をしたんです。今回は着床したようで、順調に推移しています。双子の懐妊ということで、家内の悪阻は激しいようですが。理由は、僕の遺伝子を残しておきたいということのようです。まぁ〜、色々と考えさせられている今日この頃です。

 ではでは。
...2006/04/05(Wed) 22:38 ID:SMTVvO7.    

             Re: アナザーストーリー4  Name:一読者
いつまでもお帰りをお待ちしております。
ゆっくりリフレッシュされて、また素敵なストーリーを読ませて下さい。

あと・・やっぱり朔を男にしてやって下さい!!(笑)
...2006/04/06(Thu) 22:13 ID:uh6NS6bc    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
ぱん太様

お体の具合はいかがでしょうか?
奥様との思い出をご披露いただいて、ネタにしたくなりました。ですが、亜紀はその可能性が限りなく低いわけでして・・・
理想の話なのだから、なんでもかんでもアリにしてしまうのは簡単で一番良い反面、現実にそういったことに直面し、苦悩しておられる方もいらっしゃるわけでして・・・。スランプの要因です。

お体に気をつけていただいて、続きをお読みいただければ幸いです。

一読者様

お気遣いいただいてありがとうございます。
10日に一度くらいはアップできればと思いますので、よろしくお願い致します。
...2006/04/06(Thu) 23:47 ID:AaOklpnU    

             Re: アナザーストーリー4  Name:双子のパパさん
 たー坊様 おつかれさまです。

ご多忙とのことくれぐれもお体には、お気をつけください。いつまでも、楽しみに待たせていただきます。
...2006/04/07(Fri) 01:48 ID:WPUAJlWs    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
双子のパパさん様

こんにちは。たー坊です。
休日ということもあり、少しのんびりしております。
前々から書いていた続きができあがりましたので、お読みいただければ幸いです。
...2006/04/09(Sun) 12:10 ID:kAp9lbpg    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
俺は幸せなのだろう・・・・・・多分・・・。」

宮浦へと向かう電車の車内、自分の肩にもたれかかり眠っている亜紀を見ながら思う。
絶望のど真ん中から奇跡的とも思える生還を果たし、再発もなくここまで来た。
さらには、大学に進学し就職まで決まった。

でも・・・

「あー・・・幸せだなぁ。」

と、何も考えず純粋に思えることは少なくなってきた。こと亜紀に関しては特に・・・。
それでもプロポーズまでした相手なのだから幸福感は大層なものがある。
でも、やっぱりこの女性に振り回されている感は否めない。

亜紀「スー・・・・・・スー・・・・・・。」
朔「俺、結婚してからどうなるんだろう・・・?」

ひとりごちた後、相模川河口にかかる橋が見える。

アナウンス「間もなく平塚です。」

亜紀には「相模湾が見えたら起こしてね。」と、朔専用の極上の笑顔で頼まれていた。
昨夜のことで少し眠いが亜紀の頼みを反故にはできない。怒られるのは全く構わないが、泣かれるのだけは勘弁。たとえ、それが芝居だったとしても今の朔が即座に見破ることができるのかといえば、かなり難しいことは、彼自身が一番よく分かっている。

朔「俺、亜紀をどうやってコントロールしようか・・・。」
亜紀「・・・・・・。」
朔「頼むよ・・・マジで・・・。」

いつの間に早川を出ていた。
左手に真っ青な空と海が広がり始めた。

朔「亜紀。」
亜紀「ん・・・。」
朔「おい。」
亜紀「んん・・・何?」
朔「窓の外、見てみなよ。」
亜紀「あ、ありがとう・・・何度見てもいいね本当に晴れてる時は綺麗。」
朔「ああ。」
亜紀「一緒に見るとイイ気分になる。」
朔「ああ。」
亜紀「これからは、他のいろんな場所の景色が見れるね。」
朔「ああ。」
亜紀「ねぇ?またどこか連れてってくれる?」
朔「ああ。」

朔は約束を果たしたせいか、眠くなってきていた。

亜紀「どこがいいかな・・・?」
朔「ああ。」

「え?」
亜紀は朔の異変に気が付いた。

亜紀「ハワイなんていいかも。」
朔「うん・・・。」
亜紀「本当に?」
朔「・・・うん・・・・・・。」

返事の間隔が広くなり、声が小さくなってきた。
こうなっては大きな声を出さざるをえない・・・。

亜紀「すぅ〜〜〜(息を吸い込む)」
朔「ふぁ・・・(あくび)」
亜紀「サクッ!!!!!(キレた)」

先頭車両だったのが幸いしたのか他に乗客は一人もいない・・・。

「鼓膜が破れるかと思った。」
後に、耳の調子が少しおかしくなった朔は、智世にそう話した。

朔「・・・・・・。」
亜紀「『ああ。』と『うん。』ばっかり!私の目を見て返事してよね。」

その顔は“鬼”だった。
こうなってはたまらない。しかし、朔はこれからのためにハッキリと亜紀に話し始めた。

朔「眠たかったんだよ。それは謝る。」
亜紀「それで?」
朔「でも、亜紀俺に対してひどいことも多いんじゃない?」
亜紀「どういうこと?」
朔「メチャクチャなことを平気で言ったりさ、態度をコロコロ入れ替えて俺を困らせることが多いじゃないか!甘えてくれることなんてめっきり減ってさ、俺にどうしろって言うんだよっ!」

思わず声が大きく荒くなる。
これまでに積もり積もった不満要素が、火山の大爆発のごとく一気に噴出した。
亜紀は久しぶりに見る朔の剣幕にとっさに言葉が出ず、一秒ごとに萎縮してしまった。

亜紀「・・・・・・。」
朔「何とか言えよ。」
亜紀「私、朔ちゃんにひどいことばかり言ったかもしれないけど、甘えてた・・・。」
朔「は?」
亜紀「言い方はキツイものがあったかもしれないけど、甘えてたつもりなの・・・・・・。」
朔「・・・・・・。」
亜紀「朔ちゃんにとっては、“甘え”じゃなかったんだね?」
朔「いや、まぁ・・・。」
亜紀「それじゃあ、私はこれからどうやって甘えようかな・・・・・・・?」
朔「・・・・・・。」
亜紀「ゴメンね。もう、しないから・・・。」
朔「甘えてたんならいいや。」
亜紀「やり方を変えるから。」
朔「そうしてもらえると嬉しいですね・・・。」

亜紀は朔に再びもたれかかった。
そう。朔にとってはこうやってもらえることが“甘え”なのである。
しかし、意地っ張りな亜紀が滅多にしないこの類のやり方・・・。
そういう女性だと分かっているはずなのに、理解できなかった。余裕がなかったのは自分の方かもしれない・・・。

亜紀「ね、手でも繋ぎませんか?」
朔「早速甘えてくれてるの?」
亜紀「どうでしょう・・・???」

とぼけた言い方にも、高校時代の亜紀の雰囲気があった。
初めて手を繋いだ時とは違う。でもどこかに残る“あの時”の感触が蘇った気がした。
             ・
             ・
             ・
             ・
             ・
アナウンス「間もなく、宮浦です。」

朔「・・・・・・・。」
亜紀「・・・・・・・。」

2人とも熟睡していた。
アナウンスにも気が付かない。

少しずつスピードを落とす列車、ブレーキが強かったせいか、その拍子に亜紀が目を覚ました。
見慣れた光景に、慌てて朔を起こす。

朔「ん・・・何?」
亜紀「網棚の荷物下ろすの手伝って!」
朔「ふぁ・・・・え?」
亜紀「外の景色見れば分かるから!」
朔「???」

見慣れた光景があった。
すでに列車は停車寸前。慌てて朔も荷物を下ろした。

“ガタンゴトン・・・・・・”

朔「危ない危ない(汗)」
亜紀「次の駅まで行く所だったね(苦笑)」

冷や汗モノだった。
両手いっぱいの手荷物に、公衆電話から2人が呼び出したのは・・・。

龍之介「おまえさんたち、タクシー代は高いよぉ〜〜〜???(悪魔のような笑顔)」

悪代官顔。
たまに見るとホッとする。

朔「分かってるって。はい。」
龍之介「何これ?」
朔「崎陽軒のシュウマイ。」
龍之介「シュウマイ?」
亜紀「横浜の定番?みたい。」
龍之介「あれ?東京に行ってたんじゃねぇの?」
亜紀「両方。近いからどっちも一緒でしょ。」
朔「東京の彼女がいたんだから分かるだろ?」
龍之介「そりゃまぁなぁ・・・。あ、鳩サブレないの?」
亜紀「えー?スケちゃん、それは図々しくない?」
龍之介「え、だって、2人とも両手に袋を抱えてたろ。期待もするってよぉ、おまいさん?」

朔にあからさまな要求。
亜紀が提案した。

亜紀「それじゃ、智世のお土産に鳩サブレあげるから、少しずつ食べて。」
朔「あぁ、それいいじゃん。」
龍之介「それはそれとして・・・人形焼は?」
亜紀「もうあげない!!!」
朔「一人ひとつずつだって。」

ボケとツッコミみたいな会話は駅前で大いに盛り上がった。
そして、元旦に朔はとんでもない状況下に放り込まれることになる。

続く
...2006/04/09(Sun) 23:01 ID:kAp9lbpg    

             Re: アナザーストーリー4  Name:朔五郎
お久しぶりです(^^)
早川から真鶴にかけての相模湾の風景はホントに綺麗ですよね。朔五郎も大好きです。
大きなイベントを終えて幸せ一杯の二人の目にはまた、一層美しく見えたのでしょうね。
...2006/04/09(Sun) 23:28 ID:iexND0Qc    

             Re: アナザーストーリー4  Name:にわかマニア
 横浜土産に「東京に行ってたんじゃねぇの?」と反応した直後に鎌倉銘菓の「鳩サブレないの?」と続くところがスケちゃんらしくて笑ってしまいました。
 さて,本人へのプロポーズも済ませ,いよいよ「天敵(変換キーを押したら「点滴」が最初に出てきました)(^^)」の待つ「本丸」突入ですね。まあ,2人には「蕎麦屋の2階」で腹ごしらえと作戦会議をしながら「討ち入り」に備えてもらいましょう(^^)
 プロポーズがクリスマスの山下公園ということは,「元旦にとんでもない状況下に放り込まれる」というのはひょっとして???
 それでは,娘に求婚者が現れた時,父親としてどう対応するかの参考にすべく,続編を楽しみにお待ちしております。
...2006/04/10(Mon) 12:53 ID:NdDXXRGU    

             Re: アナザーストーリー4  Name:ぱん太
たー坊様

 おはようございます(?)の時間帯でございます。
 今回もじっくりと読ませていただきました。ま、暇を弄ぶ不良患者ですから、こんな時間に起きています。
 結婚となると、亜紀が朔の家に挨拶に行く場面もあるんですかね。ネタの提供を一つ。家内が僕の実家に挨拶に行ったときの話です。
 当時の家内は結構派手目で、髪は思いっきりの茶髪のクルクル巻き、マニキュアは真っ赤、着ている服もPブランド品ばかりと、どこかのバブルOLのいうでした。それが、帰省する前の夜、髪をストレートにして髪も黒になり、マニキュアもナチュラルになってました。家内の母親と弟に「あんた、ちょっと派手よ」みたいなことを言われたそうなんです。ついでに前日に来たFAXでは、「明日は”ぱん太”ではなく”ぱん太さん”と呼びます」とか書いてありました。当時、まだ父は現役の教授だったので、家内の家族が構えていたらしいですね。まぁ〜、それも事無く終了し、あとは挙式の準備を迎えるだけだったんですね。ニューオータニで挙式・披露宴予定でしたが、6月に行われたブライダルショーの中でウェディングスタイルの食事会があったのですが、その場でも紹介されました。「11月に挙式予定の○○さん、△△さんのカップルです」と言われ手、一言スピーチする羽目に。結局、日本では挙式も披露宴も行わず、ニューオータニも使わず終わってしまいましたが、一応は今も仲良くやっています。この先、どうなるのか分かりませんが.....................。
 亜紀は朔の家族に気に入られているようなので、そんなに緊張することもありませんかね。素の亜紀で良いのかも知れませんね。

 以上、失礼しました。
 また、次回を楽しみにしております。
...2006/04/13(Thu) 04:17 ID:O0ZUXb3E    

             Re: アナザーストーリー4  Name:KAZU
たー坊様

ご無沙汰しております。
グーテンベルク様の物語では朔と亜紀がついに結婚しましたね。
たー坊様の朔と亜紀は何時になるのでしょうか?
今後の展開を楽しみにしております(^^♪
...2006/04/16(Sun) 15:16 ID:FCgtFeP6    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
朔五郎様

昼間の晴天ということもあり、車窓から見える海はさぞ真っ青であったと思います。
気持ちの持ち方はとても重要ですね。

にわかマニア様

銘菓ネタですが、多分、スケちゃんだけは分かってないと思います。東京駅に売られているお菓子は、厳密に分けていけば別の銘菓だったりするんですよね。しかし、あのスケちゃんがそこまでの区別をするとは考えられません(笑)

ぱん太様

お加減いかがでしょうか?
あんまり夜更かしすると、体に毒ですよ。退屈なものもあるのでしょうから、仕方ないのでしょうか(笑)
当時の経験談をありがとうございます。当然、ネタの参考にさせていただきます。

KAZU様
朔と亜紀は無事に一緒になる予定ではありますが、障害を設けてみようかと考えております。
そのあたりを楽しみにしていただければと思います。
...2006/04/17(Mon) 13:56 ID:BsVbFX5A    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
1997年元旦。

「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願い致します。」
そんな新年の挨拶が、家族、友人、隣近所の間で交わされている。
普段は活気溢れる漁港はもちろん、宮浦駅前にも、街中にも人に姿はまばらだ。

“新年明けましておめでとうございまーす”

正月特番のMCと、後ろにズラリ揃った芸能人と各局の看板アナウンサーが声を張る。彼らには正月という言葉はないのかもしれない。視聴率を求めて新年早々からしのぎを削る。
日本の正月は、初詣の参拝客でごったがえす神社に観光地、空港と、ブラウン管の中だけが騒がしいのかもしれない・・・。
正月というものは、それらの光景を映し出すTVを見ながら、家で餅を食ってゴロゴロするのがあちこちで見られる。
そして、仕事始めと同時にダイエットが必要になった女性達のための雑誌、広告が目に付くようになる・・・・・・と、思う。

しかし、仲良し6人組のうちそれら“日本人のお正月”に当てはまらない元旦を迎えた男が2人。
朔とボウズだ。

朔「・・・・・・・・・・。」
高野「・・・・・・・・・・。」
朔「ヒマですねぇ・・・。」
高野「そうだねぇ・・・。」

大晦日から元旦にかけて当直だった2人。
高野は独身ゆえにほぼ自動的に勤務。朔はご存知の通り、年末に休みを取ったために当直が回ってきた。

“さぁ〜!!出るか100万円!!!!!”

ここのTVも例に漏れず・・・。
例年なら酔っ払って怪我をした人は搬送されてきてもいいものだが、今年に限ればその数ゼロ。すべきことはいつもより少ないようで、窓の外に見える初日の出を拝む余裕さえあった。

高野「東京はどうだった?」
朔「楽しかったんですけどね・・・財布が・・・。」
高野「美味いもの食い過ぎたんだろ。」
朔「大当たりです。給料日までキツイなぁ・・・高野さん、お昼なんですけど・・・。」
高野「奢らない。」
朔「そこを何とか・・・。」
高野「俺だって厳しいんだよ。」
朔「でも、俺より給料もらってるじゃないですか。」
高野「そういう朔だって若手のわりには高給取りだぞ。同期は羨望の眼差しで見るだろうな。」
朔「確かに恵まれてはいるんでしょうけどね・・・。」

軽く溜息漏れる2人・・・・・・。

高野「お金を使える相手・・・亜紀ちゃんがいるからいいよなぁ。俺なんて1年前に別れてから出会いの“出の字”もない・・・・・・。」
朔「ナースのコンパに参加したらいいじゃないですか。“カッコイイ”って黄色い声を聞いたことがありますよ。」
高野「俺、学生時代からルックスにはそれなりの自信があるんだけど、喋りが・・・。」
朔「いいじゃないですか。静かに飲んでいれば。舘ひろしみたいにシブく。」
高野「サングラスかけて、スーツの裏に拳銃仕込んで?」
朔「そうです。そうです。」

「やってみるか!」と冗談混じりの笑顔。
いいのか・・・これから日本の医療現場を背負う若手がこんなんで・・・・・・。

一方のボウズ。
今年は除夜の鐘を担当した。
当然、体中が筋肉痛になり、朝は極度の疲労で起きれず・・・・・・。
恵美は家族と過ごしているため、そばにいない。

ボウズ「・・・・・・・・・・俺の元旦・・・寂しいなぁ。」

天井を見つめながらボーっとしつつ呟いていた。

その頃・・・
亜紀「おいし♪」
綾子「本当に子供の頃から好きね。」
亜紀「でも太るけどね♪」
綾子「それなら程々にしておきなさい。」

おしるこに近いくらいまで餡子を溶き、焼いた餅を浸けて食べる・・・。

真「太るぞ。」
綾子「ダイエットは明日から・・・。」

亜紀、目が泳ぐ・・・。

勇一郎「まあ、それはそれでいいじゃないか。」
百合子「・・・飲みすぎじゃないですか?」

相変わらず元気な祖父母も大晦日から一緒に新年を迎えていた。

勇一郎「正月だろう。なぁ真?」
真「そうですね。」
百合子「そこで注意してくださいな。年を考えないものだから・・・。」
勇一郎「節度をわきまえてるつもりだよ。」
真「肝臓さえ壊さなければ、たしなむ程度ならいいんじゃないですか?」
勇一郎「そうそう。」
綾子「お父さん、調子に乗らないの。」
勇一郎「すまんすまん・・・。」
百合子「・・・ところで、亜紀ちゃん、朔くんは?」
亜紀「昨日から当直。今頃、休憩してるんじゃないかな?」
勇一郎「元日から仕事か・・・大変だ。」
亜紀「でも、夕方には戻ってくるって言ってたから。」
勇一郎「三が日の間には会えるか?」
亜紀「大丈夫だと思うよ。」
綾子「あ、後でカニクリーム持って行ってあげなさい。」
亜紀「用意したの?ありがとう。」

おせちや餅は松本家でも当然用意しているだろう。親として朔にお礼の気持ちである。
綾子が亜紀からの報告を受けて色々と考えることが一番し易い立場にある。当然、プロポーズのことも想像していた。しかし、朔と会っても今までと変わらず。
「いずれ、しっかりした形で挨拶しに来るだろう。2人で時間を見つけては最低限のことを固めているのだろう。それが終わってからかな・・・。」と、見守る姿勢を保っていた。
だから何も言わない。

夕方、何もやることがない亜紀はバスで病院へ向かった。
当然、朔の勤務が終わる頃合いを見計らってである。朔がいつも通るバス停のベンチ。ここからは入り口へと向かう門、建物の一部が見ることができる。

そして15分後・・・。

「ん〜・・・。」と、伸びをした朔が出てきた。
幸いにも手術が必要なほどの急患はなく、時間通りに勤務を終えていた。
自転車を漕いで、ゆっくりと門へ向かってくるのを確認した亜紀。門の陰に隠れて新年一発目のドッキリ大作戦決行・・・・・・。

亜紀「ワッ!!!」
朔「うおっっっ!!!」

バランスを崩して危うく転びそうになる朔。ガードレールに足をぶつけそうになる。

亜紀「アハハハハハハハハハ。」

大爆笑。

朔「・・・笑い事じゃないよ。」
亜紀「ごめん・・・明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願い致します。」
朔「あ・・・俺こそ、今年だけとは言わず、これからもよろしくお願い致します。」
亜紀「ね、途中で公園に寄ってこうよ。これがあるから。」

綾子が持たせてくれたカニクリームが入った袋がその手に握られていた。
ほのかに残る香ばしい匂い。朔も大乗り気。

亜紀「じゃあ、行こ♪」
朔「え?」

いつの間にか自転車の後ろにまたがっている亜紀・・・。

朔「しょうがないか・・・。」
亜紀「ね♪早く。」
朔「分かったよ。」
亜紀「は・や・く♪」
朔「しっかり掴まってろよ。」
亜紀「遠慮しないでしがみ付くから。」

言葉通りに朔の肩を掴む。
次の瞬間、朔は思いっきりペダルを踏み込んだ。
2人分の重さなどもろともせずに、坂道を一気に下り始めた自転車はどんどんスピードを上げていく。

亜紀「早いよ!」
朔「ハハハハハハハ!」
亜紀「きゃ!怖い!」
朔「ヒャッホー!!!」
亜紀「イヤ!・・・ちょっと怖いっ!イヤー!!!・・・前だけはしっかり見てよ!?」

続く
...2006/04/17(Mon) 13:58 ID:BsVbFX5A    

             Re: アナザーストーリー4  Name:一読者
お疲れ様です。今回も楽しく拝読させて頂きました。
正月ののんびりムードに浸る朔と亜紀が、とても幸せそうで、何か胸が熱くなりました。
本編では正月はおろか、クリスマスすら一緒に迎えられなかった2人に、こういうシーンがあるだけでも、自分のこと以上に嬉しく思います。

結婚までに真の壁は越えなきゃいけない、朔も男にならなきゃいけない(笑)とイベント目白押しで創作もさぞかし大変でしょうが、いつまでも楽しく拝読したいと願っています。
それとこの後、2人に事故が起こりませんように・・朔、気をつけてくれよ(笑)

続編、期待しております。頑張って下さい!
...2006/04/17(Mon) 22:43 ID:/mpUaXNo    

             Re: アナザーストーリー4  Name:ぶんじゃく

お疲れ様です。 ター坊様

なんだか嵐の前の静けさといった感じでしょうか
これから朔が越えなくてはならない壁の前に
つかの間の平穏な日々ですね。

あまり朔をいじめないであげてくださいね、
でも最近の幸せな朔に少し妬けてきてるので
すこしだけイジワルしてください^^。
...2006/04/18(Tue) 02:56 ID:XRSejF7M <URL>   

             Re: アナザーストーリー4  Name:祖父がカメラマン
お疲れ様です。
今回は私の作品に勿体無いコメントを頂き、本当にありがとうございます。
自分の方のスレッドに書こう…と思ったのですが、色々考えてるうちに長文になってしまったので、敢えてこちらに投稿させて頂きました。

あまり自分語りをしてもしょうがないのですが…実は私、仕事でも何でも後出しジャンケンしか出来ないタイプでして…
と言うか、最初に誰かが始めてくれないと何事も出来ない人間なんですよ、恥ずかしい話ですが。
1のものを2や3にする事には自信がありますが、0から1を生み出す事は絶対に出来ません。
謙遜でもお世辞でもなく、本心です。『アナザーストーリー』という素晴らしい物語が無ければ、今私が描いている物語は存在しませんでしたし、書こうという気すら起きなかったでしょう。
初めてこの物語を読んで(朔と亜紀の幸せな姿って、いいなぁ…)と実感し、感動したのが創作の始まりでした。
もうお気付きになられてると存じますが、私の作品の『before A.S.』の『A.S』は勿論、another storyの略です(もっと早く言え、という感じですがw)
でも、たー坊様に褒めて頂けた事で、タイトル通りA.S.の露払い位は務め上げられたのかな…と安心致しました。
私は一足先に投稿活動から卒業させて頂くので、本当の意味で朔と亜紀を幸せにする所までは描けません。
ふたりの明るい未来の実現は、アナザーストーリーにお任せします。朔と亜紀の事を、何卒宜しくお願いしますw
感謝の意と1人のファンとして今後の益々の御活躍を祈願し続けております。失礼致しました。あと出来ましたら、最後まで引続きお付合い下さいw
...2006/04/19(Wed) 02:32 ID:KD2YtsCU    

             Re: アナザーストーリー4  Name:朔五郎
朔と亜紀がホントに楽しそうでいいですね(^^)
ただ・・・交通事故には・・・(^^;;;

カニクリームはどこで食べるのでしょうか。楽しみです。
...2006/04/20(Thu) 20:29 ID:juX.pDTM    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
一読者様

これからが大変です。朔も、書いている私も(笑)
結婚報告をどういう形にしようか・・・そこに集中しています。
また、事故は起きませんのでご安心を(笑)

ぶんじゃく様

いじわるします。しますとも!
朔にはもう少し災難にあってもらおうと企んでいます。その第一弾が、亜紀によってもたらされます。
真の人柄にも慣れ、挨拶も必要以上に考えることはなくなってますが、それを根底から覆すことになります。

祖父がカメラマン様

実は、私も後だしジャンケンタイプでして・・・。
このストーリー自体も「世界の中心で愛をさけぶ2」のスレッドや、「アナザーストーリー」で最初に書かれていた皆様に触発されてのものです。
ですから、同じスタートラインから始まったわけですので、ご自分を卑下(?)することはないかと存じます。本当に素晴らしい出来だと思います。

失礼な言葉が並んでしまって申し訳ございません。
お互いに頑張りましょう。

朔五郎様

亜紀じゃなく、綾子手製のカニクリームに、朔がどのような反応するかで、運命は大きく変わります。
そして、朔が自分の首を自分で絞めるという形になります。多分・・・。
朔には試練の時を迎えてもらいます。
...2006/04/23(Sun) 10:19 ID:AlAkXc3g    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
廣瀬家の少し手前の公園。
錆びた手すり、ブランコに座りながらお喋りを始めた。すぐ後ろにある木々もお喋りをすることの多い場所なのだが、今日に限って無くなっていた。無風の中、寒さはそれほど感じない。

亜紀「おいしいでしょ。」
朔「うん。うまい!」
亜紀「いつもよりおいしいんじゃない?」
朔「うん!」

仕事終わりのカニクリーム。
綾子の手作りとも知らず、次々と口に頬張る。

朔「料理、うまくなったね。どうしたの?」
亜紀「それ・・・私が作ったんじゃないよ。」

少し寂しげな横顔。
「料理、うまくなったね。」と言われたということは、綾子の方がまだまだ腕前は上ということ。悔しさは当然のようにこみ上げる。

朔「あ、おばさんの手作り・・・?」
亜紀「正解。私はお餅を食べてただけです。」
朔「あ、そっか・・・・・・太るぞ。」
亜紀「余計なお世話!お父さんにも同じこと言われた・・・。」
朔「で、いつからダイエットするの?」
亜紀「・・・しますよ。やればいいんでしょ。」

プクッと膨らました頬を、朔が当然のように突っつく。

亜紀「もういいって。」
朔「よくないって。本当にどうする?俺、今のままの亜紀はなぁ・・・。」
亜紀「え〜?そんなこと言わないで。ひどいよ・・・・・・。」
朔「いや、俺は亜紀の健康のためにね・・・言うのであって・・・。」
亜紀「でも・・・朔ちゃんの言うことももっともだね・・・。いざという時にこんな体じゃ、朔ちゃんもガッカリするだろうし。」
朔「そうそう。前みたく、こう・・・何て言うのかな。」
朔は箸を持ったままの手でボディラインを作ってみせる・・・。
「下品なことはしないで!」
少し大きな声が公園に響く。

亜紀「もう!スケちゃんの影響を受けすぎてるんじゃないの!?」
朔「それは関係ないよ。」
亜紀「本当?」
朔「俺だってそういうことには興味ありますよ。そりゃ。」
亜紀「それは前々から知ってるけど・・・。」
朔「男ですから。俺。」
亜紀「威張って言うことでもないでしょ。」

亜紀はブランコの座ったまま、赤くなっている。
珍しく朔が亜紀をからかう図。亜紀はモジモジ・・・。

朔「横浜でも自滅したし・・・。」
亜紀「あんまり言わないでよ・・・。思い出したら・・・もっと、恥ずかしいじゃない・・・。」
朔「せっかくなぁ・・・生まれたままの姿になって・・・。」
亜紀「もういいから!!!」

亜紀の悲鳴に朔もそれ以上は何も言おうとはしなかった。
ただ、“一言”だけそっと耳元で囁く。亜紀は恥ずかしそうに「うん。」と頷いてくれた。
朔も何だかんだ言いつつも、ホッとするその微笑。
新年最初のキスはこの時交わされた。

「勝った。」
朔はそう思っただろう。でも、亜紀の反撃はすぐさま始まった。

亜紀「ところで・・・うちの親にはいつ挨拶に来るの?」
朔「え・・・。いつにしようか・・・。」
亜紀「もしかして、忘れてたんじゃ・・・?」
朔「ないない。でも、正月だったらいいかもしれないなぁ。」
亜紀「時期としてはいいと思うんだけど。」
朔「そうだね。じゃあ、亜紀、先にうちの親に報告したいんだけど。どう?」
亜紀「え?」
朔「こういうのって、先に男の親に挨拶するのが慣例のような気がする。男女差別とかそういう意味は一切ないんだけど。」
亜紀「それもそうだね・・・。明後日あたり?」
朔「明日でもいいよ。・・・まぁ、うちの親のことだから、別にあらたまって挨拶する必要もない気がする・・・(苦笑)」
亜紀「そんな(笑)ちゃんと、報告しないとダメよ。・・・それにしてもよかったぁ。」
朔「何が(笑)」

朔は、これから亜紀が言うことも知らずにヘラヘラして鼻の下を伸ばす・・・。

亜紀「実は、大晦日からね、祖父母が来てるの。」
朔「(ヘラヘラ)・・・祖父母!?」

朔の表情が一瞬のうちに引き攣り始めた。

朔「え・・・????」
亜紀「そっ。私のおじいちゃんとおばあちゃん。(ニッコリ)」
朔「・・・・・・・・・・・・・・。」

朔の顔から笑顔が消えた。
亜紀の言葉の切り札が炸裂した瞬間だった。

朔「また・・・今度にしようか・・・。」
亜紀「ダーメ(ニッコリ)」
朔「おじさんだけでも緊張するのに・・・?」
亜紀「いい経験になるんじゃない?(ニッコリ)」
朔「ならない。ならない・・・。」
亜紀「緊張しなくていいから。」
朔「するって。しないはずないだろ。」
亜紀「どうせなら、祖父母がいる前で報告して欲しいの。」
朔「キツイこと言うなよ。」
亜紀「お願い(ニッコリ)」

亜紀は萎縮し始めた朔の首に後ろから腕を回して色仕掛けながらもう一度・・・「お願い。」
朔は呆然としながら「ハハハ・・・ハハ・・・ハハハハ・・・ハハ。」と、引き攣り笑いをするしかなかった。

ひとまず、いつもの6人で集まろうと決めていたので、話をひとまずおいて、朔と亜紀は大木家へと向かいだした。

“コンコン”

インターホンがない大木家。ドアをノックする音がその代わりだ。
この時のノックの音、それは朔と亜紀ではない。

龍之介「あんまり散らかすんじゃねえぞ。」
ボウズ「あん?ビールかけするつもりで来てんだけど?」
龍之介「アホ。」
ボウズ「アホでもナマグサとでもなんとでも言え。」

その言葉に後ろから“ギュウ”と耳を引っ張られる。
こんなことするのは、一人しかいない。

恵美「めったなこと言わないの。檀家の方々が聞いたら、どんな風に思われるか分からないでしょ。」
龍之介「俺、一応、こいつの檀家なんだけど・・・。」
恵美「スケちゃん、間違っても言わないでよ?」
智世「言ったところでどうこうなるわけでもないわよ、恵美。」

奥から智世が出迎えた。

恵美「今年もよろしくね。」
智世「私の方こそよろしくね。」
ボウズ「今年もよろしくな〜。ちょくちょくたこ焼き買って来るからよ。」
龍之介「タダ酒が目当てだろ(笑)」
ボウズ「托鉢でパパさんのたこ焼きもらって来るから頼む!」
龍之介「クックックック・・・おぬしもワルよのう・・・。」
ボウズ「いえいえ・・・お代官様のほうこそ・・・。ヒッヒッヒッヒ・・・。」
恵美「・・・。」
智世「くっだらない寸劇が今年も始まったわよ。(呆)」

こたつの上にはすでに酒のツマミが用意されていた。

恵美「智世、もしかして用意し終わっちゃった?」
智世「ご心配なく!これから、多少は手伝ってもらうわよ(笑)」
恵美「そっちの方が私としても気を遣わなくていいから助かる(笑)」
智世「でしょ!・・・あ、亜紀と朔に会わなかった?」
龍之介「朔ちゃんは仕事だってよ。」
恵美「え〜?」
ボウズ「大晦日から夜勤!」
龍之介「ほら、師走の忙しい時期に有給とって、東京に行ってたろ?・・・その代わりに元旦から仕事らしい。」
智世「そうなの〜?朔も大変だ!」
恵美「本当!・・・あ、それじゃ、今日は来ないの?」
智世「そういや・・・そうなるかな・・・。」
ボウズ「夜勤終わりに亜紀と来るって言ってたから来るんじゃねぇの?」
恵美「でも、疲れてるんじゃない?」

そんな心配をした恵美。
しかし、次の瞬間にノックの音。
智世がドアを開けると、東京土産を持った亜紀の姿があった。

智世「いらっしゃい。」
亜紀「明けましておめでとう!」
智世「おめでとう!今年もよろしくね。」
亜紀「こちらこそ。」
智世「朔、おめでとう!新年早々大変ね!」
朔「こればかりは仕方ないよ(苦笑)今年もよろしく。」
智世「こちらこそ。・・・集まってるよ。」
亜紀「じゃ、お邪魔します。」

ボウズ「よっ!」
龍之介「お疲れ!」
朔「おう。今年もよろしく。」
龍之介「おう!」
ボウズ「頼むぜ。」

亜紀「恵美。」
恵美「今年もよろしくね。」
亜紀「こちらこそよろしく。はい、これ。」
恵美「何?」
亜紀「東京のお土産。ボウズにも。」
ボウズ「マジ?わざわざワリィな。」
智世「そういえば、私たちにももらったのよね。ありがとね。」
亜紀「いえいえ。」
朔「智世、ハンガー貸して。」
智世「うん?あ、そこにあるの使っていいから。」

その時、足音が聞こえる。もちろん、その主は・・・。

コロ「(わーい!ご馳走だ!!!)」
龍之介「お、飲むか?」
朔「今年もよろしく。」
コロ「(あけおめ。今年もよろしくな、サク。)」
朔「・・・お前、俺のことまたバカにしてないか?」

その平和ボケした顔に朔の胸の中に懸念が生じる。

亜紀「コロ!」
恵美「こっちおいで!」

皆で集まる時には、恵美と亜紀の間がコロの指定席となる。
飼い主以上に可愛がってくれる恵美と亜紀の間に座ることによって、コロはより沢山食べられることを知っているのである。

龍之介「そんじゃ・・・まぁ・・・ハッピーニューイヤー!!!」
一同「カンパーイ!!!」

グラスを合わせようとすると、亜紀が「ちょっと待って。」とその場を制した。

恵美「何?」
智世「何か足りない?」
亜紀「違うよ。・・・ちょっと、報告したいことがあって・・・。朔?」

朔はコロとじゃれていて亜紀に呼ばれるまで気付かなかった。

亜紀「言うよ?」
朔「何を?」
亜紀「ま、いっか・・・。」
ボウズ「もったいぶらないで言えよ。料理も冷めちまうし。」
亜紀「実は・・・私たち結婚することになったから。」
朔「なっ・・・!!!!!!」

一瞬、時間が止まる。
あまりに突然の電撃結婚宣言に、若干の間が生まれた。
そして、次に朔は、龍之介とボウズに揉みくちゃにされたのである。

続く
...2006/04/23(Sun) 19:53 ID:AlAkXc3g    

             Re: アナザーストーリー4  Name:祖父がカメラマン
お疲れ様です。
新作拝読させて頂きました…って、お互いちょうど同じ時間帯に投稿してましたねw
また偶然にも、同時にプロポーズの話題だったことに驚きました。
とうとうA.Sの方は佳境に入って来ましたね。不格好でも前向きに真にぶつかって行く朔の姿を期待しています。
あとスケちゃんとボウズにからかわれまくるであろう朔の姿もw
因みに私、亜紀の祖父の大ファンです。ああいう爺さん、カッコいいですよね…

私の方のプロポーズは約1名の暴走wですので未遂に終りそうです。ふたりの明るい未来を何卒宜しくお願い致します。
最後に激励のコメント、ありがとうございました。
私も最後まで頑張ります!…と言っても、あと1〜2回ですがw
...2006/04/23(Sun) 20:14 ID:fvkGpkxo    

             Re: アナザーストーリー4  Name:ぱん太
たー坊様

 こんばんは。夜更かしの不良患者でございます。
 色々と励ましのお言葉や、フォローのお言葉をいただき、感謝しております。本当にありがとうございました。
 手術後の経過も順調で、今週末若しくはGWに外泊してみて、問題がなければ退院の予定となりました。過去に、退院の翌々日に再入院した経験があるので、今回はGWを家で過ごし、経過を見て退院しようと思います。この分だと、ホントに6月あたアタマから職務復帰が叶いそうです。手術その他は体力的な面から無理ですが、徐々に体を慣らして行こうと思います。本格復帰は、7月過ぎになるでしょうね。

 朔の年末年始は当直でしたか。僕も何度か年越し当直の経験がありますが、一番虚しかったのは、病院でシャワーを浴びている間に、年を超えてしまったことでしょうか。96年〜97になる年だったと記憶しています。急患で搬送されてくる方も、病人よりは怪我人が多かったですね。初詣で怪我をされる方って結構多いんですね。
 自分の投稿を見ていて、かなり誤字脱字があることに気付きました。気をつけマスです。カルテを書く際には気をつけるようにしておりますが、読めない字を書かれる先生方が、ホント多いです。まるで、アラブの字体を見ているかのような.........。今の職場(休職中の身ですが)は電子カルテが全面導入されていて、かなり便利になりました。10年前、研修医として、今の病院に勤務していた頃は、手書きでしたけど。医療用PHSも導入が進んでいますね。ポケベル全盛期が懐かしくも思えます。
 
 亜紀もみんなの前で公表しちゃいましたね。これで、もう逃げも隠れもできなくなるんでしょうね。結婚したら、どんな夫婦になるんでしょうかねぇ〜。結構気になりコトです。住居・お小遣い・家事分担等............。我が家は、家内が元銀行員ということもあり、家内から毎月お小遣いを貰う状況です。カードも使っちゃうので、さほどキツイと思ったことはありませんが、家事分担は難しいですね。この先、子どもが生まれたら、どんな生活が待っているのだろうと思うと、想像がつきません。結婚して、子どもがいない(出来なかった)時間がちょっと長過ぎましたね。生まれてくる子ども達は、従兄弟や従姉妹と年が離れていることになってしまうので、甥や姪がどう対応してくれるのか、色々と思うところがいっぱいあります。まぁ〜、なるようになるんでしょうね。家内は、友人宛にメールを出しまくって、色々と相談しているようです。

 病院の夜は長いです。たー坊様の次回作を楽しみにしております。

 ではでは。
...2006/04/24(Mon) 03:22 ID:lq1imHO.    

             Re: アナザーストーリー4  Name:一読者
お疲れ様です、早速新作を拝見致しました。

>ただ、“一言”だけそっと耳元で囁く。亜紀は恥ずかしそうに「うん。」と頷いてくれた。

このシチュエーションで、亜紀の「うん」と来れば、もう・・って感じですね(笑)
朔よ、立派な?大人になったなぁという感じです。

ですが最近、「アナザーストーリー」では結婚するし、「空港のない・・」では幸せいっぱいだし・・と来れば、さすがに彼に「おんどりゃ、ええ加減にせぇよ」と言いたい気持ちが抑えられません。
幸せにしろ、男にしろ・・と勝手なお願いばかりで恐縮ですが、そろそろキツイのを一発お見舞いしてやって下さい(笑)

次回作も期待しております。頑張って下さい!
...2006/04/24(Mon) 22:57 ID:rjZgba7w    

             Re: アナザーストーリー4  Name:朔五郎
相手の両親のみならず祖父母まで・・・
いやいや、朔の心はブッ飛んでいるでしょうな(笑)
しかし、朔も既に24(25?)。立派な大人なので、きっと立派な挨拶をするのでは・・・やっぱりコケたりして(^^;;;
楽しみにしております。
...2006/04/25(Tue) 01:28 ID:PvSh0T4I    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
祖父がカメラマン様

お疲れ様です。海外赴任が間近に迫っているようですが、準備はいかがでしょうか?

大分佳境に入ってきたこのストーリーですが、大きな山が待っております。朔がこの山を越えることを祈りつつ、次回を楽しみにして頂ければと思います。

ぱん太様

お加減はいかがでしょうか?
退院のメドがついたとのことで、ホッとしております。6月からの復帰を予定されておられるようですが、決して無理はなさらずにお体をいたわって下さい。

さてさて、亜紀が勝手に発表してしまいましたが、朔はキツイ状況下に置かれることとなります。
朔がどこまで男になれるかをお楽しみにしていただければと存じます。

一読者様

>「おんどりゃ、ええ加減にせぇよ」と言いたい気持ちが抑えられません。

書いている私も同感です。
ですが、このままスムーズにことが運べば面白くないのは事実。もちろん落としますよ!ジェットコースターのごとく!
それは、当分先のことになりそうですが、必ず実行致しますので、お楽しみに!

朔五郎様

ズバリ、朔は大人です。
オドオドするのもつかのまでしょう。挨拶はすんなり終わらせるつもりです。
しかし、その後が大変かも知れませんね。
その辺りもお楽しみにしていただければと存じます。
...2006/04/29(Sat) 22:30 ID:wQVNAimU    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
龍之介「智世!ビニールシートあったっけ!?」
智世「ちょっと待って、探してくるから!!!」

裏口から、智世が物置へと走る。

朔「ここで言わなくてもいいだろ!」
亜紀「ま、いいじゃない。」
朔「どーすんだよ・・・。」

その時、「サ〜ク。」と、おぞましささえ感じるような声。

ボウズ「やっと決意したのか!?オイ!?」
恵美「良ちゃん。」
ボウズ「何だよ?まさか、このおめでたい席でアルコールを禁止するつもりじゃないだろうな?」
恵美「違うよ!その逆!今日はビールかけも許します!そのためのビニールシートなんでしょ!?」
ボウズ「スケ!そうだよな?」
龍之介「あたりまえだっつの!!!今日やらないで、いつやるんだ!」

その時、見事なタイミングの良さで智世が戻ってきた。

智世「お待ちどうさま!!!」
ボウズ「おっしゃ!!!」
恵美「コロ!!!今日はコロも飲まないとダメだからね!!!」

しかし、以前に龍之介に飲まされてグロッキーになった経験を持つコロのテンションは、みるみるうちに下がっていく・・・。

亜紀「ゴメンネ(笑)コロ。」
コロ「(何で余計なことを言うの?)」
朔「本当に、余計なことを・・・。」

男と犬、心境が一致することもたまにはある・・・。

コロ「(料理が濡れちゃう・・・。)」

卓上のから揚げをうらめしそうな目で見つめる・・・。
その目には、みるみる涙が溜まってきそうな勢いだ。

何枚かあるビニールシートは、あっという間に部屋を多い尽くした。
TVなどの家電まわりは特にしっかりと覆われていく。

亜紀「凄いことになりそう。」
朔「(バカ女・・・。)」

心の中だけで毒を吐く朔。
ワクワク顔の亜紀の顔に、こちらもうらめしそう・・・。

そして・・・。

恵美「Are you ready!?」
ボウズ「日本語で喋れ!」
恵美「そろそろ始めます!!!皆さん、ビールは両手に持ちましたか!?」
龍之介「は〜い!!!この通り持ってますよぉ〜!」
智世「私もよ!で?主役のアンタは?」
朔「・・・・・・。」
龍之介「ノリが悪いよ!?おまいさ〜ん???」
ボウズ「何を心配してんだオラ!?」
朔「着替え・・・どうすんの?」
龍之介「俺の貸してやるよ!」
智世「亜紀は・・・?」
亜紀「智世の貸して。今日中に返すから!!!」

亜紀もすでに大乗り気だ。
テンションが急降下し続ける男とオス。

しかし・・・。

コロ「(から揚げもらって逃げよ・・・。)」

素早くから揚げを器用に2つ咥えて、コロは廊下に避難開始・・・。
朔はそういうわけにはいかない。
もう、ヤケだ・・・。

龍之介「は〜い!!そんじゃ、今年の主役になりそうなこの男にご挨拶を賜りましょうか〜!?」
恵美・智世「イェ〜イ!!!」
ボウズ「オラオラ!朔!!!」
朔「(仕方ない)・・・そういうわけで・・・旅行中にプロポーズしましたっ!!!」
龍之介・ボウズ「うぇ〜〜〜い!!!」
恵美・智世「ヒューヒュー!!!」

完全にタガが外れた朔は亜紀の肩を抱いて声を張る。

朔「山下公園で言いましたっ!!!」
龍之介「お!いいね〜!夜景を見ながらか〜い!?」
亜紀「綺麗なところでした〜。」
恵美「それで、何て言ったの?」
朔「ストレートに、『結婚しよう。』って言った!」
智世「本当にストレートね。」
朔「うるさい!文句あるのかよ!?」
恵美「ないない。亜紀は?何て言ったの?」
亜紀「フェイントで、『考えさせてください。』って。」

朔以外は大爆笑。

智世「いいね!亜紀らしい!」
亜紀「でしょ!でしょ!」
恵美「それで?他にもいいことあったんでしょ?」
亜紀「2人で美味しいもの沢山食べたの。中華街名物の大きい肉まんは最高だったよ!」
恵美「羨ましい!良ちゃん、私も連れてって!?」
ボウズ「そのうち連れてく!その時までのお楽しみだ!」
龍之介「それで?それで?(アホ面)」
亜紀「朔ちゃんの母校に行ったり、私が移植手術を受けた病院に行ったり・・・。」
ボウズ「他人から見たらつまらないとも思えそうなコースだな・・・。」
龍之介「でもよ・・・2人の世界にどっぷり浸れるんだろ?おまいさ〜ん(笑)」
朔「そういうことにしといてくれ!」
智世「さて、一通りの尋問が・・・。」
亜紀「『尋問』って(笑)」
ボウズ「ほれ、スケ!」
恵美「やっぱり、こういうことはスケちゃんじゃないと!」
龍之介「じゃあ、皆様!あらためて伺います!」
一同「は〜い!」
龍之介「準備はいいっすかぁ〜???」
一同「イェーイ!」
龍之介「朔!亜紀!・・・このたびはおめでとう!君たちは、スンバラシイ!!!お互いに、よく長い時間を支えあった!」
ボウズ「ヨッ!!!」
龍之介「今日は2人の前途を祝して思いっきりやろうぜ!!!」
智世「あったりまえじゃない!!!」
龍之介・ボウズ「カンパ〜イ!!!!!」

“ブシュッ!!!”
“シュワワッ!!!”

フタをとる前に十二分に振っておいたビン。
しっかり冷えている。新年ということもあり、本数もいつもより多い。
勢いよく飛び出したビールのシャワーは、当然、結婚宣言をした2人に向けられた!

朔「ちょ・・・!!!」
亜紀「冷たい!!!」

朔に限っては悲鳴になる前にビールの集中砲火が開始された。
あっという間に髪は濡れ、顔は泡まみれ。

朔「わぷっ!ちょい・・・待って・・・。」
ボウズ「アホな事言ってんじゃねぇよ!」
龍之介「ほれほれ!」
朔「やり過ぎ!!!」
龍之介「いいから!ほれ、目ぇ開けろ!目!」

恐る恐る目を開ける。
ビールが一気に入り込んできた。

朔「あああああぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜!!!」

相当目にしみたようだ。
断末魔の叫びが部屋に反響する。

すると、すぐさま、口には2本分のビールが流し込まれる。

朔「あわわ・・・。」
龍之介「どうよ!」
ボウズ「ワルノリ!ワルノリ!」

そして・・・。

朔「あぁ〜・・・ワケわかんないわ!」

そして3時間ぐらいが経過しただろうか・・・。
すっかり片付けられた部屋、男3人は完全にビールによって寝てしまっていた。

その奥では、アルコールを避けて、智世に服を借りた亜紀と恵美が冷めてしまった料理を食べていた。そして、穏やかな表情で亜紀の門出をささやかに祈っていたのである。
その横には、コロがちょこんと座って、難を逃れたから揚げを口いっぱいに頬張っていた。

続く
...2006/04/29(Sat) 22:53 ID:wQVNAimU    

             Re: アナザーストーリー4  Name:朔五郎
しかし、部屋の中でビールかけとは・・・恐るべし、六人組(笑)
そんな中で、冷静な(?)コロの行動が笑えます。
...2006/04/30(Sun) 03:09 ID:RlqsiuW2    

             Re: アナザーストーリー4  Name:一読者
お疲れ様です。新作、拝見しました。
ビールかけ、いいですねぇ〜。朔と亜紀を見守ってきた友人たちらしい、素晴らしい祝福ですね。
ただスケちゃんはともかく、ボウズはかなり執拗に朔を攻め立てる気がしてなりません。当時の恨みもあるでしょうし(笑)
それと亜紀の満面の笑顔が浮かぶようです(涙)
まぁ亜紀が幾ら幸せになろうが全然構いませんが・・

>このままスムーズにことが運べば面白くないのは事実。もちろん落としますよ!ジェットコースターのごとく!

とても安心致しました(笑)。どうぞどうぞ、という感じです(笑)

まぁ今のうち、幸せ気分に浸っていてくれたまえ松本君(爆)。いろんな意味で今後も期待しております!
...2006/04/30(Sun) 18:10 ID:ia1N9heM    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
朔五郎様

>しかし、部屋の中でビールかけとは・・・恐るべし、六人組(笑)

でも、ビニールシートでしっかりと密閉してましたから、そんなに被害はなかったと思います。
もちろん、6人はそれだけのパワーを持っています。

そんな中、コロの冷静さには普段から意識している部分があります。それは、コロを主人公にした話を考案中ですから、それをお楽しみにしていただければと思います。

一読者様

ボウズのリベンジの場所としては満足いくものかは私としても疑問です。
しかし、あんまり人を恨むと、自分にも不幸が降りかかるぞという教訓をこの後に身をもって感じることになるでしょう・・・。
ボウズの災難もストーリーとして考えたいと思います。
...2006/05/01(Mon) 21:55 ID:4/GtctVs    

             Re: アナザーストーリー4  Name:一読者
お疲れ様です。

>しかし、あんまり人を恨むと、自分にも不幸が降りかかるぞという教訓をこの後に身をもって感じることになるでしょう・・・

私も朔を恨んで不幸になるところでした(笑)
冷静に次の展開を待つことに致します。
...2006/05/01(Mon) 22:23 ID:29VRCSg2    

             Re: アナザーストーリー4  Name:ぱん太
たー坊様

 こんばんは。
 今夜から外泊でございます。何も無ければ、外泊から戻った後に精密検査をして、退院の運びです。

 ビールかけやってみたいですねぇ〜。シャンペンなら、なんとなくあるんですよ。アレって、開けるときに振るじゃないですか?そのついでに、飛んでしまうような。まぁ〜、なんにしても、高校卒業から数年経っても、こうしてお祝いをできる仲間がいるってのは良いことですね。僕も、今日の昼間は、大学時代の同期が10人も見舞いにきてくれました。あり難い限りです。

 ではでは。
...2006/05/02(Tue) 23:08 ID:i3dTb69.    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
一読者様

>私も朔を恨んで不幸になるところでした(笑)

恨んではいけないのは、ボウズだけです(笑)
一読者様のように、朔の幸福は誰もがムカツクでしょう(笑)
さて、そのボウズですが、ビールかけのしっぺ返しがやってきます。久々に恵美との2ショットにするつもりですが、暗雲が?
次回をお楽しみにしていただければと思います。

ぱん太様

もう、ほとんど退院されたような状態のようですね。私も退院したものと決め付けております(笑)
そして、そうなってくれればと思っております。

さて、皆が待ちわびたビールかけ。
シャンパンファイトのようにあっさりした方も考えましたが、やはりビールかけの方が盛り上がりますね。シーン、セリフの一部は、何年か前に日本一になった某球団の選手のセリフを参考にしております。
次回もお読みいただければ幸いです。
...2006/05/04(Thu) 23:36 ID:YUkKD6tI    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
突然の結婚発表の夜・・・。
正月休みも多くても2日を残すばかりとなったことに気付く僧侶。

「いやぁ・・・すごかったなぁ。」
「何が?」

恵美は当然といった感じでボウズの部屋に泊まりに来ていた。
亜紀の幸せそうな顔が“すごい”というのはどうも腑に落ちない。
どういう意味なのだろう?

「何が、すごかったの?」
「何って、ビールかけ。」
「そこ!?」
「だってよ、あんなことが無いとビールかけなんて勿体なくてできないじゃねぇか。」
「普通“幸せそうだった”とか、そういうセリフが出てくるのが普通じゃないの?」
「また、そうやって固いことを言いやがるな。」

最近、恵美の度が過ぎるほどの真面目さ、頭の固さ、理屈っぽさに、ほとほとボウズは呆れていた。少しずつ反りが合わなくなってきたような気がしていて、悩みに発展しそうなほどに心配している。

「あいつらが幸せなのは、今に始まったことじゃないだろ?高校時代から目の前でいちゃつきやがって・・・誰も触れない2人だけの世界を惜しげもなく作り上げやがった。」
「高校時代から?やっぱりラブラブなのね。」
「初めて会った瞬間から一気に心を通わせてたんじゃねぇのか、あいつらは。」
「だから、今日はその恨みを晴らすべく悪乗りしてたのね?」
「おう。亜紀は当時からクラスの人気者だった。誰も手出しできないような雰囲気があったのに、朔のやつ、恩師の葬式で雨が降って傘もなくスピーチを続ける亜紀の後ろから傘を差し掛けやがった。それからは、あれよあれよという間にくっついてやがった。」

結構、悪い表情を浮かべている。
まるで、恨みを込めているかのようなその顔に、恵美は笑ってしまう。

「ふふ・・悪い顔(笑)」
「元からだ。」
「そんな顔、似合わないよ。」
「そうか?俺は結構気に入ってんだけど。」
「そんな顔で家にいたら、私まで暗くなっちゃうからやめて。これでも窓口業務とかしてるんだから。」
「それは悪うございました。」

すっとぼけたその顔に、再び吹き出す恵美がいる。

「俺は、お前の専属芸人じゃねぇよ。」
「いいじゃない。“笑う門には福来たる”っていうことわざ、知ってるでしょ?」
「恵美が福を運んでくるのかよ?」
「運ぶように努力するよ?」
「何で疑問形なんだよ?」
「私、今年で28なんだけど?」

恵美の言葉の意味は十分に分かる。
確かに結婚できないわけではないが、まだ時期尚早と考える理由がある。
多分、二世帯での生活になるだろう。もし、その場合なら恵美の負担は大きくなるだろうし、自分としても嫁姑問題に巻き込まれたくないのだ。

「俺としても身を固めてもいいとは思うけどよ・・・。」
「けど、なに?」
「やること沢山あるだろ?なにも、焦らなくてもいいんじゃねぇの?」
「焦るわよ!」
「いきなりでかい声を出すなよ!」

思わずしかめっ面をして耳を塞いだ。

「声も大きくなるわ。」
「何で?」
「私たちだって、もうすぐ丸々3年。そろそろって気はないの?」
「いや・・・それは・・・。」
「“結婚”の“け”の字もないじゃない。」
「失礼な・・・全然考えてないわけないだろ?」
「信用できない。」
「あのなぁ・・・。」
「それに、以前智世から聞いた事あるの。」
「何をだよ?」
「良ちゃんが、高校時代に亜紀に好意を寄せていたことを。」
「・・・・・・チッ!あの聖子ちゃんカットめ!」

余計な事をいいやがる・・・俺はこの時ほど智世のことを恨んだことは無いだろう。
恵美が哀しげな目でこちらを向いているのを感じる・・・。
その視線は痛いのなんのって・・・。

「亜紀はクラスの人気者・・・か・・・あれだけ可愛くてスタイル抜群なら不思議じゃないわ・・・。」
「な・・・なんだよ?」
「智世はこうも言ってた。『ボウズは亜紀に少なからず未練があるから、恵美と結婚しないんじゃない?』って・・・・・・。」
「チッ!ありもしないことを吹き込みやがって!あのアマ!」
「でも、当たってるんじゃない?」
「大はずれもいいとこだ!!!」
「・・・ウソね・・・時々、亜紀を見る良ちゃんの目・・・・・・なんか違うもん。」
「お前、俺のこと信用してないのか?」
「・・・・・・亜紀に面と向かって言えたらいいのに『良ちゃんをください。』って。」
「・・・・・・。」
「あ、つまらないこと言っちゃった。あら、もう11時じゃない。今日、泊まっていい?」
「好きにしな。」
「じゃ、お言葉に甘えて。」
「・・・・・・。」

その夜、ボウズはろくに眠れなかった。
2つの布団が並べられ、左隣では恵美が心地よさそうに寝息を立てている。

「・・・どうしたら誤解を解けるんだ?なんで、すぐさま否定しなかったんだ?俺・・・。」

どっかに亜紀への未練があるんだろうか?
ボウズは一晩自問自答し続けていた。

そして翌日。
朝も一緒に食事をとった後、車で恵美の部屋まで送る。

「昨夜のことだけど。」
「ああ、忘れて?よくよく考えたら、そんなこと言ってもどうにかなるわけじゃないし・・・今年以降もよろしくね。」
「まあ、そういうことなら・・・これから先もよろしく。」

全く引っかからないという訳ではないが、ひと段落した感じはするボウズ。
途中のコンビニで休憩を取りつつ、少しずつ目的地へと向かう。
ボウズはあえてノンビリとしつつ車を走らせていたことに恵美は気付いていない。それは不器用すぎるボウズなりの行動だった。だからこそ、昨日のことは忘れてデートを満喫できたのだ。

そして、昨日の恵美の発言が計算されたものだったことにボウズが気付くはずもなかった。
それに気付く時は、当分先の話である。

続く
...2006/05/04(Thu) 23:38 ID:YUkKD6tI    

             Re: アナザーストーリー4  Name:祖父がカメラマン
お疲れ様です。
…今回、ものすごく鬱にならさせて頂いたシーンがあるので、そこについて一言申し上げます。

>昨日の恵美の発言が計算されたものだったことに
>昨日の恵美の発言が計算されたものだったことに
>昨日の恵美の発言が計算されたものだったことに

……これ…やるんですよ、女性って…それも、こういう場面に限って…ピンポイントで…
…1?年前のある場面が脳裏に浮んできたので、今日はこのまま酒飲んで寝ますw それと…

>ボウズはあえてノンビリとしつつ車を走らせていた

…ボ、ボウズ…お前、本当に…良い奴だなぁ(泣)
...2006/05/05(Fri) 01:58 ID:AsZHJaJ2    

             Re: アナザーストーリー4  Name:一読者
お疲れ様です。コメントと新作、拝見致しました。

>恨んではいけないのは、ボウズだけです(笑)

ホッとしました(笑)。まぁでもムカツキますけどね(笑)

>「・・誰も触れない2人だけの世界を惜しげもなく作り上げやがった。」
>「初めて会った瞬間から一気に心を通わせてたんじゃねぇのか、あいつらは。」

心底、ボウズの言うことに賛同します!でも、こんな2人だからこそ今でも幸せになって欲しい・・と思ってしまうのでしょうが。

>「誰も手出しできないような雰囲気があったのに」

実際こんな感じだったんでしょうね、クラスで亜紀の存在って。確かにああいう出来すぎた子は、逆に声かけにくいんですよね(笑)

>「それは悪うございました。」

亜紀にも智世にもない大人の女性の感じがある恵美のファンです(恥)。3人の中で実際につき合うとしたら、男としては一番肩の力を抜いて接することができるタイプだと感じました。

次回作も楽しみにしております!

>祖父がカメラマン様

何で同じセリフを3回も繰り返してるんですか、監督!!(爆)
...2006/05/05(Fri) 21:54 ID:.4ATjrLw    

             Re: アナザーストーリー4  Name:朔五郎
私も何度も感じましたけど、おとなしくて物静かな女性でも「いざ」というときは、度胸がすわってるものなんですよね。
私も(当時)28歳の女性とお付き合いしたことがあります。
焦る気持ちも、ちょっとはわかります・・・
...2006/05/05(Fri) 22:19 ID:i75Gqpho <URL>   

             Re: アナザーストーリー4  Name:ぱん太
たー坊様

 こんばんは。
 本日(月曜日)、外泊から戻り、諸々精密検査予定でございます。そこで問題が無ければ、晴れて退院となります。
 28歳という年齢、微妙ですねぇ〜。家内が、留学する僕にくっ付いて渡米したのは、27歳になってすぐでした。微妙な年齢ではあるようですが、院卒や総合職のOLが増えた昨今、27とか28は若い部類に入るんでしょうねぇ〜。僕の職場でも30代後半の独身の女医が散見されます。仕事が忙しく、そこそこ収入があって自活できれば、結婚にこだわらない女性が増えているような気がします。家内の親友に、某都市銀行の総合職がいますが、彼女もまた35歳にして、独身です。まぁ〜、色々と思うところはあるようですが。

 さてさて、ボウズの今後はどうなるんでしょうねぇ〜。ドキドキしています。

 では、次回も楽しみにしております。
...2006/05/08(Mon) 04:22 ID:1PDP5DGs    

             Re: アナザーストーリー4  Name:ぶんじゃく

たー坊様
やっぱり坊主は
「好きな人を想いながら違う人と暮らす」んでしょうか?なんだか今回は自分にとって重いテーマです(笑

それにしても恵美の計算気になります^^。
...2006/05/08(Mon) 04:36 ID:Y/GDCWdo <URL>   

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
祖父がカメラマン様

恵美は本来の性格上、今回のようなことはしないのですが、演技をしてもらいました。
黒幕が存在します。それはいずれ判明しますので、そのときをお楽しみに。
海外赴任とのことですが、多忙な時期にお読みいただきありがとうございました。落ち着きましたら、また遊びにいらっしゃって下さい。

一読者様

>亜紀にも智世にもない大人の女性の感じがある恵美のファンです(恥)。

ありがとうございます。
近頃は、亜紀も同じような感じになりつつありますので、その差をどのように表現するかでかなり悩んだりしますが、そのお言葉で救われた気が致します。次回もお読みいただければと思います。

朔五郎様

>私も何度も感じましたけど、おとなしくて物静かな女性でも「いざ」というときは、度胸がすわってるものなんですよね。

私自身、書いていて気付いていませんでしたが、恵美は亜紀と似ている部分がなきにしもあらずといった感じです。
さらに、年齢と言う点から焦る気持ちももちろんあります。
これ以降も2人を見守っていただければと思います。

ぱん太様

やはり、そういう時代の流れなのでしょうか。晩婚、早婚の二極化がどんどん広がっている印象があります。物語上、97年なのですが、その点では少し、時代考証が合致してはいないのかもしれませんね。
次回もお読みいただければと思います。

ぶんじゃく様

>好きな人を想いながら違う人と暮らす

こればかりは、書いてる私も先が分かりません。
完全に吹っ切ってるようでも、いつ、どのように心境の変化が見られるか分かりません。
ただ、亜紀が生きていますので、その点は大きなウエートを占めると思います。
次回もお読みいただければと思います。
...2006/05/08(Mon) 08:13 ID:wG7KK96s    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
珍しく亜紀がガッチガチに緊張している。
その理由は・・・。

朔「というわけ・・・なんだけど。」
亜紀「・・・・・・。」
潤一郎「そうだねぇ・・・。」
富子「いいんじゃないかい?」

ビールかけの宴会から2日後のこと。時刻は11時近くを指していた。
亜紀を連れた朔が、両親に結婚報告をしていた。しっかりと正装をした2人とは対照的に、ラフな普段着姿は潤一郎と富子。
テーブルを挟んで正座する若い2人にはお茶が出されていた。

朔「親父もおふくろも・・・いいよね?」
亜紀「お願いします。」

亜紀は、らしくないほどに緊張していた。
いつもはアットホームな雰囲気の中にいるのに、どうしてだろうと亜紀自身も感じていた。そして、それは知らず知らずのうちに態度に出てしまう。
硬くなっている亜紀の表情には、実の娘と変わらない接し方をしていると富子も緊張させられた。

潤一郎「まぁ、亜紀ちゃん。」
亜紀「はい。」
潤一郎「これから判決を言い渡す。」

急激に体が震えだすほどの緊張を煽る潤一郎・・・。
そのアタマを“パシッ”と富子が右手で叩く。

富子「亜紀ちゃんをこれ以上緊張させてどーすんだい!!!」
潤一郎「いや・・・ゴメンゴメン(笑)」
富子「まったく・・・ゴメンねぇ。こんなんが義理の父親になるのは不安かもしれないけど・・・。」
亜紀「そんなこと・・・あの、それで・・・・・・。」
朔「いいんだろ?親父?」
潤一郎「亜紀ちゃん、うちのバカのこと、よろしく頼むよ。」
富子「そうだねぇ。本当にうちのバカは頼りないかもしれないけど・・・。」
朔「人のことを『バカ』って・・・。どんな親だよまったく。」

本気で怒っているような口調。
松本の両親は、大口を開けて大笑いを始めた。
その和やかな雰囲気は最後まで緊張感に支配されていた亜紀をあっという間に解していった。

潤一郎「それで、どこに住むんだ?」
朔「いや、ほとんどと言っていいほど何にも決まってないんだ。」
富子「呑気すぎるんじゃないのかい?」
朔「それはごもっとも。でも、亜紀も働き始めるし、アパートでも借りようかとは思ってる。」
潤一郎「まあ、それが妥当だろう。廣瀬さんのところとの兼ね合いもあるし・・・それでいいだろ。どっちかに同居するとなったら、人間関係が大変になるだろうし。」
富子「それで、式はいつにするんだい?」
朔「そこまで話は進んでない。」
亜紀「え、考えてないの?」
朔「先に、おじさんとおばさんに挨拶すべきだと思ってるんだけど?」
潤一郎「“面接”を受ける前に、考えておいた方がいいぞ。安心してもらうためにも。」
富子「あら、アンタにしてはまともな意見じゃないか。」
潤一郎「うるさい。」

ブスッとした潤一郎の表情には朔も亜紀も吹き出した。
夫婦漫才ほどの完成度ではないが、面白い。

「たとえ老いたとしても、目の前の老夫婦みたいに笑っていたい。」と感じたのは亜紀。
平凡で、ささやかな幸せを追い求めていたあの頃の自分達を思い出した。
そして、今ならそれを掴み取れるかもしれないという期待があふれ出す。

潤一郎「朔太郎、最初はどうなるかと思ったが、よくここまで来た。亜紀ちゃんに嫌われるようなことするんじゃないぞ。」
朔「するかよ!」
富子「亜紀ちゃんも、バカ息子のことを重く思ったりしたかもしれないけど、これからも辛抱強くね、よろしくお願いします。」
亜紀「そんな・・・私の方こそ、よろしくお願いします。」

そう言うと、ニカッと笑ういつもの顔の富子。亜紀もそれにつられて白い歯を見せる。

富子「さて、そろそろお昼だねぇ・・・何か作ろうか?」
潤一郎「おい、スケが昨日、鯛を持って来たろ?あれを捌くか?」
富子「普段は昼間から鯛なんて有り得ないけど、今日は特別だね!・・・亜紀、手伝っておくれよ。」
亜紀「はい。お母さん(笑)」

連れ立って台所に行く2人の後姿を見て親子はポカンとした表情を見せていた。

朔「『亜紀』って?」
潤一郎「『お母さん』?」

急にそう呼んだ割には、随分と慣れた雰囲気。
その謎を解き明かしたのは、部屋から出てきた芙美子だった。

芙美子「だいぶ前から本物の親子になってるよ、お母さんとお姉ちゃん。」
潤一郎「何でまた?」
芙美子「お姉ちゃんから言ったみたい。前に聞いてたんだけどね(笑)」

そう言うと、亜紀の後ろにそーっと近づいて脅かしてみる。
次には、こちらも本物の姉妹のように笑う2人の姿が見られた。

朔「俺、亜紀に信用されてないのかな・・・。」
潤一郎「どうして?」
朔「考えすぎかもしれないけど、亜紀は万が一の時のために、おふくろを味方につけてたんじゃ・・・?」
潤一郎「・・・あり得るな。」
朔「親父も経験あるの?」
潤一郎「これとは違うけどな。いいか朔。女の人はとても怖いんだ。亜紀ちゃんを泣かせたら、30倍くらいにして返されるかもしれんぞ?十分に気をつけるんだぞ。」
富子「なんだって?」
潤一郎「筒抜け?」
富子「アンタ、余計な一言が多いんだよ!」

どんどん萎縮していく父の姿。ちらりと亜紀を見ると、不敵な微笑みを返してきた。たまたま、その手には包丁が握られていたためか、朔の背中に悪寒が走った。

その後、松本家では賑やかな食卓を囲んだ。

午後3時・・・。
廣瀬家手前、水田に囲まれた住宅街。ここから目的地までは100メートルあるのだろうか?

亜紀「緊張しなくていいよ。」
朔「したくなくてもするって。」
亜紀「大丈夫よ。もし、朔ちゃんが失敗しても、10年前みたくカケオチすればいいじゃない(笑)」
朔「笑えない。おじさんにバレたら・・・。」

朔の脳裏に港で殴られた記憶が蘇る。頬に残る痛み、口の中を切った時の血の味・・・。
あれくらいの比じゃ済まないことは十二分に承知している。

実は、あの“ウルル行き”を失敗し、病院に戻り、疲労困憊で倒れた後に目を覚ました朔に、真は言っていた。

真「亜紀のワガママに付き合ってくれたことは感謝してもしきれない。今回のことは、君が言い出したことではないことは分かる。相当苦悩したんだろう・・・私が君の立場なら、同じことをしたのかもとも考える・・・。」
朔「・・・・・・。」
真「しかし、万が一今回のことが亜紀の命を奪うことになる結果をもたらすことになれば、その時は・・・・・・私の理性に期待はしない方がいい・・・。」
朔「・・・・・・。」
真「この国は法治国家だ。だが、人の感情というものは、それを超越しかねない状況と可能性に常にさらされているんだ。・・・・・・ここから先は、言わなくても分かるだろう?」
朔「はい・・・・・・。」
真「この時点で、私は脅迫していることになるのかもしれない・・・正直、憎い。」
朔「・・・・・・すみません。」
真「君もギリギリだったかもしれないが、俺も綾子もギリギリなんだ。できれば、止めてほしかった・・・残念だよ。」
朔「・・・・・・。」
真「以前に言ったな?『君を憎まずにはいられない。』と・・・。」
朔「・・・・・・責任は取ります。」
真「簡単言うな!人ひとりの命がどれだけ尊いものかは分かるだろう!!!」
朔「・・・・・。」
真「人生が狂うことなんだ。・・・責任など、簡単に口にすべきじゃない。」
朔「でも・・・・・。」
真「・・・そこまで言うなら、どういう責任を取るのか聞かせてもらおうか?」
朔「もし、亜紀に万が一のことがあったら・・・俺も死にます。」

その目は完全に虚ろなものだった。

朔「亜紀がいなければ、俺の存在価値はありません・・・。」
真「・・・。」

“バシッ”

真の右手が朔の脳天に強く叩きつけられた。
痛いはずなのに、どこか優しさが感じられる・・・。

真「亜紀を想う気持ちは分からないでもない。・・・そこまで言うなら、祈ってくれ、亜紀のそばで・・・意識が戻り、画期的な治療法が確立されるように、亜紀の幸せのために・・・・・・。」
朔「え?」
真「今、言ったことが、亜紀の望むことだと思うからだ・・・親としての希望が強いことも分かっている。だが、君だって亜紀が生きることを望むんだろう?」
朔「・・・。」
真「亜紀が望んだことに君は流され、実行した。しかし、今この瞬間はまだ亜紀は生きているな。・・・この状況で君の望むものは何だ?やはり、亜紀の願いを聞き入れて、安らかに眠らせてやることか?」
朔「・・・・・・。」
真「亜紀のわがままに付き合ってくれるのは嬉しい。しかし、自分の気持ちに正直になることも大事なんじゃないのか?」

敵わないと思った。

そんな過去を思い出しながら、ゆっくりと廣瀬家への道を歩く。
もちろん、そんなやりとりを亜紀は知らない。今となっては良き思い出だ。
しかし、勇一郎と百合子は別だ。どう接していいのか分からない・・・。
ましてや、結婚のお願いに行くのだ・・・。

朔「亜紀、フォロー頼むよ。」
亜紀「もう(笑)顔、引き攣ってる。」
朔「大丈夫か・・・俺・・・。」
亜紀「祖父母には気に入られてるから大丈夫。」

ドアを開けると、綾子が出迎えてくれた。
...2006/05/09(Tue) 20:37 ID:bDeAaoPo    

             Re: アナザーストーリー4  Name:JBL
たー坊さまへ

回想シーンの迫力、物凄いですね。
鳥肌が立ちました。

いよいよでしょうか!?
でも、まだひと山ふた山あるんでしょうね。
二人とも頑張れ!!

たー坊様も執筆頑張れ!!
...2006/05/09(Tue) 21:49 ID:ccDfTusc    

             Re: アナザーストーリー4  Name:にわかマニア
 あまりに不器用なイモの皮の剥き方に「強制終了」を喰らった亜紀に「やればできるじゃない」と励ましながらエビの背綿の抜き方を伝授していた頃から10年。鯛を捌くのを「手伝って」ですか・・・
 おまけに「亜紀」と呼び捨てですか・・・
 歳月の流れをしみじみ感じます。
 でも,どれだけ歳月が流れても,たった一つ変わらぬものが・・・
 あの親への「挨拶」が「面接試験」とは言い得て妙ですね。どんなふうにフリーズするのか,楽しみにしています。
...2006/05/09(Tue) 23:26 ID:sfAMMM0Q    

             Re: アナザーストーリー4  Name:KAZU
たー坊様

ご無沙汰しております。
ついに、ついに、両家への結婚のお願いですね!!
私が結婚のお願いに行った時には、手中妻の家に行っていたので、特にあらたまりませんでしたが、やっぱり緊張はピーク状態に達しました。
朔の今の心境は良〜〜〜く解ります。
今後の展開はたー坊様の事ですから何かあるのでしょうが何もない事を期待しております(^^♪
...2006/05/10(Wed) 12:08 ID:4E2jdWGM    

             Re: アナザーストーリー4  Name:一読者
JBL様と同じく、回想シーンでの迫力に震えがきました。真の無骨な優しさと、親としての強さに感動致しました。
祖父がカメラマンさんのスレでも同じ感想を言いましたが、最近この手の親子の交流シーンにとかく弱くなっています。まだそんな年齢ではないはずなのですが(笑)

なので、当然このシーンにも

>「〜〜亜紀、手伝っておくれよ。」
>「はい。お母さん(笑)」

ウルウル来てしまいました(恥)。
朔と亜紀の関係だけではない部分を綿密に描いたところに、ドラマ版の凄さと素晴らしさがあるのでしょうね。

次回も期待しています。
頑張れ朔!と、しくじれ朔!の思いが半々ですが(笑)
...2006/05/10(Wed) 23:26 ID:4zf0V3Yc    

             Re: アナザーストーリー4  Name:朔五郎
なーんにも計画していないところが、朔らしいですね。
覚悟を決めて、挨拶へ・・・どんな結末が待っているのか、期待せずにはいられません(^^)
...2006/05/12(Fri) 19:16 ID:2G..k0tQ <URL>   

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
JBL様

おっしゃる通り、次回がひと山目です。
その後はちょこちょこ脇道にそれつつ、次の山を迎えることになります。

にわかマニア様

時の流れはあまりに早いものです。しかし、物語に合わせつつも、変化は小出しにしてきたつもりです。
さて、面接試験が待ち受けているわけですが、今回はフリーズはさせないつもりです。

KAZU様

朔も亜紀もそれぞれの実家にはかなりの頻度で訪れていますが、こと今回に限り、朔は当然のごとく神経をすり減らします(笑)もちろん、亜紀にもプレッシャーはかけられてます。

一読者様

朔は・・・しくじること間違いなし・・・かもしれません。
仮に、今回は成功してもそのうち・・・物語では半年後くらいにとんでもない事件が巻き起こすつもりですので、お楽しみに。

朔五郎様

朔らしいです。ですが、アドリブで何とかなるような術を朔は見つけているかもしれません。
大いなる覚悟と断固たる決意を胸に真という壁に向かっていきます。
...2006/05/12(Fri) 22:56 ID:LAlvaxyE    

             Re: アナザーストーリー4  Name:にわかマニア
 読者というのは,ある意味,とても身勝手なもので,「小出し」であれ「変化」=成長していく姿を頼もしく思い,「アドリブで何とかなるような術を見つけているかも」と期待する反面,せっかくの「変化」を一気に逆戻りさせる「真効果」を密かな楽しみとし,「しくじること間違いなし」と期待している「もう一人の自分」がいます。
 「今回はフリーズはさせないつもり」というのが,立派に切り抜けることを意味するのか,逆に,フリーズする間もなく轟沈してしまうのか,この先の展開を楽しみにしています。
 がんばれ。サクちゃん(笛の音)
...2006/05/13(Sat) 02:22 ID:ZSDuUIYE    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
にわかマニア様

読者の皆様のお気持ちはよく分かります。
私も他の皆様の物語を拝読致します時には、同じような期待を寄せています。

さて、前回はフリーズさせないと申しましたが、少しだけ方針転換を致します。
今日中にUPするつもりですので、お読みいただければ幸いです。
...2006/05/14(Sun) 22:01 ID:Y.JyDB5A    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
綾子「いらっしゃい。」
朔「こ・・・こんにちは。明けましておめでとうございます。」
綾子「おめでとう。・・・緊張してるのね?」
亜紀「家の前に来た時からこんな調子なの。」
朔「はい・・・しかも、亜紀のおじいさんとおばあさんがいらっしてるんですよね?(カンでる)」
綾子「気にしなくて良いの。いつも通りの朔くんを喜ぶから。でも・・・。」
亜紀「でも?」
綾子「お父さんがいつも以上に厳しい査定をするかもしれないわね(笑)」

朔の緊張感が30%上昇。

朔「・・・・・・・・・そう・・・ですか・・・。」
亜紀「大丈夫!本当に大丈夫だから・・・お母さん!対面する前から余計なこと言わないでよ!朔のご両親は、本当に暖かく歓迎してくれたのに・・・。」

亜紀が珍しく綾子に猛抗議を始めた。
亜紀からしてみれば、下手に朔を緊張させすぎて粗相させることのないようにさせたいのだ。
そして、朔は「血は争えないな・・・。」と思いつつ、青ざめていた。

亜紀に深呼吸をさせられて、リビングに通されていく。

勇一郎「おお!来たか!ご無沙汰しているね。」
朔「明けまして、おめでとうございます。こちらこそ、ご無沙汰してしまって・・・今年も、よろしくお願い致します。」

「固いな。」
勇一郎はそう思った。なぜなら、朔が大げさなほどに頭を深々と下げたからだ。
それだけ、朔が真面目なのだろう。と微笑ましくも思ったのも事実である。
次に挨拶したのは、百合子。そして真。
特に真に関して言えば、とてつもなく高い壁に感じられた。あるいは、大魔神がそこに仁王立ちしているかのような・・・そう感じた。

真「かけたらどうだ?」
朔「あ、はい。失礼致します。」

「仰々しい・・・。」
亜紀は心配で心配でたまらない。隣の朔を横目で見ながら「しっかりしてよ。」と口から出そうなほど・・・。
真「何を緊張してるんだ?」
朔「い・・・いえ、別に。」

緊張感、さらに20%増し。

亜紀が思わず、恨めしそうな表情で真を見ると、父は、「あ、すまん・・・。」と無言で謝る・・・。
そんな様子を少なからず見ていた朔は、救われた思いがした。緊張がわずかではあるが解れていく。
もう、下手な小細工は無用!

朔「あの、今日は大切なお願いがあって参りました。」

出されたお茶には口もつけず、心を落ち着けつつ切り出した。

朔「おじいさん、おばあさんもおられますので、是非、ご一緒にお聞きいただきたいのですが。」
勇一郎「真、場所を変わろう。」

緊張感、さらに10%増。
心拍数も右肩上がり。

朔の正面に座っていた勇一郎が、全てを予想していたかのように真と座っていた場所を変わった。こういうことは父親が聞くべきだと感じてのものだった。

朔の正面に、白髪も目立つようになった真が座る。その目はあの頃のように朔を遠ざけるような、威圧しているような雰囲気は持ち合わせてはいない。しかし、一言一句を逃さぬよう、真剣に話を聞こうとしている。

朔「単刀直入に申し上げます。お嬢さんと結婚させてください。」
真「・・・(とうとう来たか。)そうか・・・それならば、色々と聞かねばならないな。」
亜紀「お父さん・・・。」

真の表情が、一瞬のうちに引き締まっていく。
すがる様な亜紀の言葉にも顔色ひとつすら変えず、朔の目を凝視・・・。

真「まず、今の亜紀をどう思っているかを聞かせてもらおうか?」
朔「病気が治って、今も再発の兆候は見られません。その間に大学を卒業し、就職も決めました。5年という時間差を感じさせずに頑張ってきました。普通なら、自分のことで精一杯になりがちですが、自分が落ち込んでいたりすると、察知して色々と励ましてくれました。自分も亜紀の不安を取り除くように努力してきたつもりです。そんなやりとりが心地よく感じています。・・・ですから、プロポーズ致しました。」
真「そうか。」

時折、抑揚をつけ、身振り手振りを交えた朔の真剣な言葉は、ありふれたものではあるが、真の心に響いた。

真「2人を見ていると、どうも夢心地になっていると思えることも多少あるが・・・現実的なことはどう考えているんだ?」
朔「正直なところ、亜紀・・・いえ、お嬢さん・・・。」
真「はは・・・“亜紀”で構わんよ。」
勇一郎「丁寧さは伝わるが、もっと楽にしなさい。」
朔「は、はい。」
百合子「そう固くならずに・・・。」
朔「はい・・・。」
真「それで、正直なところ?」
朔「・・・もっと、話し合うべきだと感じています。自分としては、亜紀と2人でアパートを借りようかと。経済的にも共働きになりますから、何とかなるのではないかと思ってます。むしろ、亜紀はせっかく就職を決めたのですから、やりたいこともさせずに家にいてもらうと、ストレスをためてしまうこともあるのではないでしょうか。」
真「亜紀、どうなんだ?」
亜紀「せっかくのチャンス・・・ぜひ、働きたいです。」
真「それなら、いいだろう・・・。それで、将来設計は?」
朔「子供に関しては分かりません。亜紀の体を考えると、無理には・・・自然に任せたいと思います。」
真「子供はもっともだが、それぞれ仕事を続けていけば、環境の変化もあるだろう。その辺のことも聞きたいのだが?」
朔「私は、転勤とかは少ないと思います。亜紀は亜紀でそうそう異動も少ないでしょう。ですが、もし、そうなってしまった時は、極力応援してあげたいと思います。転職という形をとっても良いのではないかと思います。その状況に置かれたら、最善の方法を探したいです。」
真「君らしいといえば君らしいな・・・。開業医になるつもりはないのか?」
朔「私は、宮浦で亜紀と暮らせたらそれで十分幸せです。今の所は考えてません。ですが、この町の人々が必要としてくれるならば、考えたいと思います。・・・私も亜紀も随分と助けていただきました。恩返しじゃないですけど・・・それも状況によって考えたいです。」
真「亜紀はどうだ?」
亜紀「・・・絵本作家の夢は、完全に諦めたわけじゃないの。機会があれば、挑戦してみたい。でも、そのために家庭を犠牲にするようなことはしたくない。朔と生活していくからこそ、そういった作品にも生かされてくるものがあると思う。」
真「なるほど・・・そうか・・・。」
勇一郎「どうやら、思っていたよりしっかりした考えを持っているようだ。」
亜紀「ありがとう・・・。」
真「それで、松本と廣瀬のどちらを名乗るつもりなんだ?」
朔「それは、これから相談して決めたいと思います。」
真「そうか・・・。」
勇一郎「真、私が口を挟むことではないのかもしれないが・・・朔くんに任せてもいいんじゃないか?」
亜紀「おじいちゃん・・・。」
勇一郎「最近、あまりに自己中心的な物の考えと見方をする若者が多いが、2人とも、話し合うことを大事にしているようだ。少し、安心できた。」
真「そうですね・・・。」
亜紀「それじゃ・・・お父さん!?」

確信めいたものを感じた亜紀だったが、真は眉間にシワを寄せ始めた。
勇一郎もそれに気付いた。もし、真が拒否した場合、勇一郎は朔と亜紀の味方に全面的にまわるつもりでいた。

その時、スッと真が席をたった。
そして・・・。

真「朔、少しいいか?」
朔「え・・・?(一瞬にして固まる)」
真「綾子、朔と出掛けてくる。2人きりで話がしたいんだ。」
勇一郎「真・・・???」
真「ご心配なさらないで下さい。すぐに戻ります。」
亜紀「朔ちゃん・・・。」

亜紀の心配そうな声は、全く届いていなかった。
ほぼ、朔の意識は飛んでいた。

朔は亜紀に目で合図を送り、リビングを出て行く。
やがて、外に出た2人、真は朔を助手席に乗せて、車を出した。

廣瀬家に残された4人。
不安な空気が流れている・・・。

亜紀「・・・・・・。」
勇一郎「心配するな。」
百合子「そう。大丈夫。」
亜紀「大丈夫とは思うけど・・・。」
勇一郎「しかし、朔くんは、昔の真と似ている部分が多いなぁ・・・。」
亜紀「え?」
綾子「そうね・・・高校時代の朔くんは、特にそうね。」
亜紀「お父さんと似ても似つかないけど?」
百合子「真くんは・・・今みたいに角ばってなかった。今は昔みたく、丸い雰囲気もあるけど・・・。」
亜紀「想像つかないな・・・。」
綾子「無理ないわ。亜紀が生まれてからは、忙しくなって・・・。」
亜紀「ふーん・・・。」

車が走り去った方向を見つめながら、亜紀は不安と期待の入り混じった複雑な表情を浮かべていた。

一方、2人しかいない車内・・・。
朔の緊張感はピークに達しようとしていた。なぜなら、真の表情は全く変わっていなかったからだ。眉ひとつピクリともしないその横顔に、朔は言葉をかけることができない・・・。

やがて、夕暮れの宮浦港に車は止まった。
無言のまま、真は近くの自販機からコーヒーを買って、朔に渡した。

防波堤に座りながら、夢島の向こうに沈んでいく太陽を見ながら真がコーヒーに口を付ける。朔も無言のまま、真似するように、緊張をほぐすようにコーヒーを流し込む。

それを見計らったように、真が口を開いた。

真「すまんな、わざわさここまで連れてきて。」
朔「い、いえ・・・。」

真のいきなりの謝罪の言葉に、朔は面食らってしまった。

真「どうしても、亜紀のいる前では言えない内容なんだ。」
朔「なんですか?」
真「亜紀の体のことだ。」
朔「!」

医者である朔には、その言葉の意味するところが瞬時のうちに理解できた。

真「俺も単刀直入に言おう。実の子供は難しいだろう?」
朔「・・・はい。」

朔も包み隠さずに答えた。
真の様子は相変わらず微妙な変化すら感じられない。

真「それでも、本当にいいのか?」
朔「どういう意味ですか?」
真「君は長男だろう。家を継ぐのに子供は必要だろう。」
朔「おっしゃる通りです。」
真「放射線治療・・・その反面、子供のことについては、話していない・・・。」
朔「・・・・・・。」
真「猛烈に結婚を反対すれば、無理はしないだろう・・・亜紀となら無理をしそうだがな(苦笑)」
朔「・・・。」
真「ここまできたら、結婚を認めず、徹底的に亜紀の嫌われ役を買って出れば、亜紀には辛い思いをしなくて済むかもしれない・・・。」
朔「そんな・・・。」
真「すまんな。君との仲を認め、親離れ子離れはとっくに済んだものと思っていたが・・・。子を想う心というのは、どれだけ年老いても変わらないもののようだ・・・。よく言ったもんだな・・・。」
朔「・・・・・・誰も、納得しないですよ、そんなの・・・。」
真「・・・。」
朔「俺の口から話します。子供のこと・・・亜紀の体のこと・・・。」
真「しかし、それを言ったら・・・両方とも傷つくかもしれんぞ・・・。あいつの性格なら、君のところから逃げるようにして離れていくことだって考えられる・・・。」

真の本音が出た。
娘を想う気持ちと同時に、朔に対しての配慮も忘れてはいなかった。
朔もそれを感じ取ることができたこともあり、反対の意見を堂々と述べた。もはや、緊張感はなくなっている。

朔「仮に・・・亜紀が離れていっても、構いません。納得した形で答えが欲しいんです。俺も・・・亜紀も・・・。」

真は、救われたような気がした。
隣にいる男には、憎しみを抱いたことも多々あったと思う。
でも・・・今なら、この男に任せてみよう・・・。そして、答えは2人で出せばいいと決めた。

真「ありがとう・・・。」
朔「え?」
真「よく、あの気難しい娘を好きになってくれたな・・・。そして、よく、長い間・・・本当に・・・亜紀だけでなく、俺たち家族も支えてくれた・・・。」
朔「そんな・・・ただ、俺は・・・。」
真「お前なら・・・そう言うと思ったよ・・・・・・・・・。」

少しの沈黙・・・。
そして・・・。

真「よく・・・頑張ったなぁ・・・朔・・・。」
朔「え・・・?」
真「遊びたい時期に勉強漬けになって・・・医師への道を歩み始めた・・・それも、自分のためじゃなく・・・亜紀のために・・・。」
朔「・・・。」
真「いつ、容態が急変するかもしれない中、生死を扱う仕事は辛かっただろう・・・そこまでしても、亜紀のために・・・・・・。」
朔「・・・・・・。」
真「もう・・・・・・十分だ・・・ありがとう・・・・・・。」

朔はこの10年に感謝した。
真が頭を下げてまで自分に感謝してくれている・・・苦労が全て報われた気がした。
スーッと一筋の涙が頬を伝う・・・。

真「亜紀を、よろしく頼む。」
朔「はい・・・ありがとうございます。」

太陽が沈んでいく・・・。
少しずつ、暗闇がその濃さを増してきつつあった。
2人は立ち上がり戻ろうとすると、そこに亜紀が立っていた。心配になったので探しに来ていた。

亜紀「お父さん・・・。」
真「メシまで時間はあるな?」
亜紀「え?・・・うん。」
真「たまには豪勢な夕飯にしよう。」
亜紀「え?それじゃ・・・。」
真「あまり、遅くなるなよ。」

真が車を走らせていく。
朔を見ると、黙って頷いていた。亜紀に涙の跡が意味することは理解できなかったが、なぜだか、泣きそうで嬉しかった。

体を寄せ合い、2人は幸せだった。

続く
...2006/05/14(Sun) 22:05 ID:Y.JyDB5A    

             Re: アナザーストーリー4  Name:朔五郎
何も言葉がありません。
感動しました。ただそれだけです、
...2006/05/14(Sun) 22:20 ID:CvYP/y82 <URL>   

             Re: アナザーストーリー4  Name:にわかマニア
>「もう・・・十分だ・・・ありがとう・・・。」
 この日のために,このセリフをとっておいたのですね。
 そして,その感想は・・・
 朔五郎さんに先を越されてしまいました。
>「言葉がありません」
...2006/05/14(Sun) 22:41 ID:fVLEPdNU    

             Re: アナザーストーリー4  Name:ぱん太
たー坊様

 こんばんは。
 感動的な一話拝読させていただきました。僕自身、家内の父親に挨拶にいったときのことや、ガンと分かってから、家内の父親に「不良品で申し訳ありません」と言っていたことを思い出しました。

 やっぱり健康っていいですね!確かに抗癌剤を使っているとお子様は厳しいかも知れませんが、朔と亜紀なら、それを乗り越える生活を築いてくれるでしょう。

 次回も、楽しみにしております。
...2006/05/14(Sun) 23:03 ID:INEeprzs    

             Re: アナザーストーリー4  Name:KAZU
たー坊様

感動しました!!
昨日DVDにて世界の中心で愛をさけぶを見直したばかりなので特にひとしおです。
...2006/05/15(Mon) 11:45 ID:2CojCGmU    

             Re: アナザーストーリー4  Name:JBL
たー坊様へ

何も言うことありません。
しかし一言、「参りました!!」
...2006/05/15(Mon) 20:32 ID:N.EzLN6E    

             Re: アナザーストーリー4  Name:すばる
たー坊さん、素晴らしいです。久しく書き込みしておりませんでしたが、名台詞にあまりに感動してしまい、「わ、やられた〜」という感じです。ここで来ましたか。このたー坊さんの脚本が実写化されたら・・・と思わずにはいられません。
...2006/05/15(Mon) 21:42 ID:YIuk5Mcs    

             Re: アナザーストーリー4  Name:SATO
乗り遅れましたが、感動的な話でした。
真のあのセリフにKOされましたよ。

>「よく・・・頑張ったなぁ・・・朔・・・。」
>「もう・・・・・・十分だ・・・ありがとう・・・・・・。」
>「亜紀を、よろしく頼む。」
...2006/05/15(Mon) 23:20 ID:SddO440o    

             Re: アナザーストーリー4  Name:にわかマニア
 改めて読み返してみて,サクの緊張がピークに達するであろう場面でサクを呼び捨てにして外に連れ出す展開の何と絶妙なこと。完全に脱帽です。
...2006/05/15(Mon) 23:27 ID:mZMow4ro    

             Re: アナザーストーリー4  Name:双子のパパさん
お久しぶりです たー坊様

 ついにここまできましたね。感動致しました。朔の緊張が伝わってきて、自分の時のことを思い出しました。(こんなに良い展開ではありませんでしたが・・・笑)
 これから先どんな障害や苦労もこの二人なら乗り越えていけるのでしょうね。周りの暖かいサポートもあることですしね。
...2006/05/16(Tue) 15:16 ID:iQJpuj5A    

             Re: アナザーストーリー4  Name:Marc
こんにちは、たー坊様

うん、涙が出てしまいました。
こっちを向いている女子社員に見られてしまいましたので、
欠伸をしたふりをして、ごまかしています...
流石、たー坊様。素晴らしいです、ありがとう。
...2006/05/16(Tue) 19:15 ID:t4qDKpks    

             Re: アナザーストーリー4  Name:kaku
たー坊様

初めまして、一昨日にこのサイトを発見してー坊さんのアナザーストーリー1〜4まで一気に見させていただきました。率直にただ素晴らしく本当に感動しました、ありがとう。 僕は今この続きをただ楽しみに待っています。
 
...2006/05/17(Wed) 23:31 ID:B8v9KNUk    

             Re: アナザーストーリー4  Name:KAZU
たー坊様

やっとここまで来た朔と亜紀の今までの道のりを再度アナザーストーリーを全て読み直してみました。
会社で読んでいた為に、感動の嵐が舞い降りた為、涙(;_;)を我慢するのに大変でした。
良かったね!!朔&亜紀(^^♪
朔と亜紀に幸多かれとお祈り申し上げます!!!
...2006/05/18(Thu) 15:33 ID:qc4CpD4Q    

             Re: アナザーストーリー4  Name:ぶんじゃく

たー坊様
すごく素敵です、素晴らしいの一言です。

これ以上の感想はありません。
...2006/05/19(Fri) 01:40 ID:HGYiQNNg <URL>   

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
朔五郎様

十分すぎるほどの賛辞を頂戴いたしました。
次回の執筆にも励みになります。
次回以降もお読みいただければと思います。

にわかマニア様

>この日のために,このセリフをとっておいたのですね。

その通りです(笑)
ドラマでのどこか切なさの残るものより、少し違った感じにしたつもりです。
「亜紀をよろしく頼む。」のつなぎのセリフとしての機能を備えていることも意識しました。

ぱん太様

お体のお加減はいかがでしょうか?
6月の職場復帰にむけての日々かと存じますが、ほどほどになさってください。

さて、まだ物語では、亜紀が肝心なことを聞かされていません。それまではまったりしたストーリーにしていきたいと思います。

KAZU様

職場でお読みになられて大丈夫でしょうか?
就業規則等に引っ掛かることのないようにお願いしますね(笑)
さて、やっとここまできましたが、もうひと山を作るつもりです。
まだ、お楽しみいただけると思います。

JBL様

その”一言”で十分です。
これからもストーリーは続きますので、よろしくお願い致します。

すばる様

ご無沙汰しております。
真の名台詞をここまでとっておいた甲斐があるというものです。そろそろ・・・オリジナルの名台詞も考えないといけないかもしれませんね。

SATO様

無事にSATO様のゴングは鳴ってくれたようで(笑)
正直、これでクレームが来たらどうしようと思っておりました。そろそろ、真の涙を構想しようかと考えております。

双子のパパさん様

執筆させていただいてから1年半・・・ここまで長くなるとは想定外もいいところです(苦笑)7割5分ほど書き終えましたので、ラストスパートを掛けたいと思います。

Marc様

KAZU様にも申し上げましたが、就業規則等に引っ掛かることのないようにお願いしますよ(笑)
しかも、職場の方にもバレかけているじゃないですか!是非、ご自宅に戻られてからにしてくださいね(笑)

kaku様

初めまして。たー坊と申します。
一気にお読みいただけたとのことで嬉しいです。かなりの量がありますので、大変だったと思います。
さて、このストーリーは週に1度のペースでUPしておりますので、目安にしていただければと思います。

ぶんじゃく様

お褒めの言葉をいただきありがとうございます。
残りもそう多くは無いと思いますが、これからもよろしくお願い致します。
...2006/05/20(Sat) 00:14 ID:MAy5Y8.U    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
翌朝・・・。

ベッドから体を起こすとすでに時刻は9時半を過ぎていた。
慌てて身支度をして下に降りると、すでに朔が不機嫌極まりなさそう〜な顔をして待っていた。

昨日、結婚の許可を得て、夜は両家で会食した。その席で真から「2人で事務所に遊びに来い。」と言われていたのだ。
いつも寝坊は当然といった朔も、真の言葉には逆らえない。目覚ましと同時にテキパキと身支度をして廣瀬家に来てみれば、亜紀はまだ起きて来ないと言うではないか。
勇一郎と会話しながら、その時を待っていたのだが・・・すでに30分以上が経過していた。
昨夜、自分の父親に義理の父、さらには義理の祖父と酒を酌み交わし、昨日までの緊張感は感じない。だからいいようなものの、「そうでなかったらどうすんだ!」朔はキレそうだった。

亜紀「ごめんなさい!」
百合子「私は構わないけど、旦那さんに叱られるわよ。」
朔「・・・・・・。」
亜紀「ごめんなさい。」
朔「結構なご身分で・・・おかげで、亜紀のイライラする気持ちが理解できたよ(怒)」
亜紀「(怒ってる・・・どうしよう・・・。)」
朔「ま、いいや。行こう。」
亜紀「うん。本当にゴメンね。」

朔は瞬時に気持ちを切り替えた。屈託のない笑顔で亜紀を連れ出す。
主導権争いの図式に少し変化がうかがえた?ある意味、朔が円満に家庭を築くうえで、かなり重要な部分なのかもしれない。

ムッスー・・・。
しっかりと顔は不機嫌モード・・・。
亜紀はおそるおそる朔の腕を組むも、即座に離されてしまう。
めげずにもう一度。

“ギュッ”
“スッ”

やっぱり組ませてくれない・・・。

亜紀「(そこまで怒らなくても・・・。)」
朔「(ブスッ・・・。)」

負のオーラに声もかけづらい亜紀は、手をつなぐことも諦めた。

亜紀「(私、何度もお寝坊さんに待たされてるんだけどなぁ???)」

亜紀の顔も不機嫌そう・・・。
朔はそれに気付いたものの、決して口を開こうとはしない。
「(ここで負けたら、一生敵わない・・・俺だってたまには主導権が欲しい!)」
夫婦の戦いは、こんなところでも勃発・・・。

しかし、負けず嫌いの恐竜は、いきなり朔に牙剥く・・・。

亜紀「事務所に着くまでに口きかなかったら・・・どうしよっか?」
朔「・・・・・・。」
亜紀「会話がないなら夫婦関係の崩壊ね。」
朔「・・・・・・。」
亜紀「決めた!職場で恵美にコンパに連れてってもらおっと。」

その手には乗らない。朔は意地でも亜紀に謝らせたい。ここまで尻に敷かれたら鬼嫁を認めることになるかもしれない・・・。

亜紀「(結構・・・頑張るのね。じゃあ・・・。)ゴメンなさい。」

意外な言葉だった。
朔は目を丸くして亜紀の表情を見る。その目は哀しげで、目尻も下がりっぱなし・・・。
もちろん、その表情は演技であって本心ではない。朔に一時の勝利の味を経験させることで、夫婦としては自分が勝つつもりだ。

朔「まあ、俺もきつかったよ・・・。」
亜紀「分かればよろしい・・・。」

“ガチャ”

亜紀「おとうさーん?」
朔「お邪魔します。」
真「遅かったじゃないか?さては、朔、遅刻したな?」
朔「違いますよ。今回は亜紀です。」
亜紀「そうです。私が悪いの。」
真「朔の寝ボスケが移ったか?ということは、朔が諸悪の根源だな。」
朔「それとこれとは違いますよ・・・。」

イジケ気味・・・。
真が軽いジャブをうつのはもっともだ。
隣同士で仲睦まじげな雰囲気には、真も父親としての嫉妬のようなものにかられる・・・。

真「亜紀、コーヒー。」
亜紀「お茶汲み・・・?」
真「固いことを言うな。ポットがそこにある。」

朔もしてやったりの顔。
悪戯心を前面に押し出したその顔に、亜紀の頬はどんどんと膨らんでいく。
先にソファに座ってインスタントコーヒーを待つ。

「実はな・・・。」と、真が切り出した。

真「すでに綾子には見せたことがあるんだが・・・。」
亜紀「何?」
真「これを見てくれ。」

テーブルの上に図面が広がっていく。

朔「これ、家の図面ですか?」
真「そうだ。」
亜紀「随分大きな家・・・。」
真「今の廣瀬家の1.5倍くらいあるな。」
亜紀「誰の家?」
真「お前たちのだ。」
朔「はい?」
真「俺が生きているうちとは言わん。」
亜紀「(もしかして・・・・・・・。)」
真「もし、自分たちで稼いだ金があれば、この図面に限りなく近い形で建てて欲しいのだが・・・。」
朔「・・・(プレッシャー)」
亜紀「お父さん、気が早い!」
真「それは承知だ。・・・俺の一級建築士としての集大成と言える。おそらく、“廣瀬家”は途絶えるだろう?血は残らなくても、形としてなら限られて時間であるかもしれないが、残るだろう・・・?」
朔「・・・分かりました。」
亜紀「大丈夫〜?」
朔「なんとか・・・・・・なるでしょ。」

朝からとても疲れた。
真が珍しく笑顔で話していたせいか、ベッドに倒れこむほどのことはなかったが、なんとかしなければという思いは片隅にひっかかったままだった。

続く
...2006/05/20(Sat) 00:25 ID:MAy5Y8.U    

             Re: アナザーストーリー4  Name:朔五郎
軽くコミカルなシーンで読者を引き付けておいて、いつのまにかシリアスな場面に持ち込むという、見事な展開でした(^^)
...2006/05/20(Sat) 04:59 ID:KWIcBw6o <URL>   

             Re: アナザーストーリー4  Name:一読者
たー坊様

お疲れ様です。
10日間ほど研修で留守にしていたら、完全に「感動祭り」に乗り遅れてしまいました(涙)
今さらですけど、一言だけ感想を述べさせて下さい。

素晴らしい朔と亜紀の未来を、本当にありがとうございました。見てる私も最高に幸せになれました。
ですが、たー坊様には「・・もう、十分だ・・」とはまだまだ言いたくないので(笑)、これから益々のご活躍を期待しております。頑張って下さい!
...2006/05/23(Tue) 22:51 ID:3WMJzOIU    

             Re: アナザーストーリー4  Name:ぱん太
たー坊様

 こんにちは。
 妙な天気が続く今日この頃ですが、如何お過ごしでしょうか。当方、なんとか来週に復帰できそうな体力に戻ってきました。

 さてさて、真の集大成のお宅。どうなるんでしょうか。我が家も、引っ越してすぐに僕が入院してしまっていましたが、なんとか落ち着いてきました。あとは、双子の誕生を待つばかりです。

 ではでは。
...2006/05/27(Sat) 13:29 ID:RgizfV2I    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
朔五郎様

ひとまず、大きな山を越えましたので今回は元のほのぼの路線でいきました。
いずれは、真の要求に応えてくれることを祈ってあげて下さい。

一読者様

研修、お疲れ様でした。
「感動祭り」が良き気分転換になられたのであれば幸いです。
ですが、そろそろ「もう、十分だ・・・。」とおっしゃっていただけないでしょうか?(笑)
ストーリーはもう少しだけ続きますのでお付き合いいただければと思います。

ぱん太様

体調はいかがでしょうか?
そろそろ復帰とのことで私としても嬉しく思います。ご自宅も落ち着かれてきたとのこと。朔は落ち着けそうにありませんが、頑張ってもらおうと思います。
...2006/05/29(Mon) 09:39 ID:wQVNAimU    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
とある日・・・。

“パチッ”
“プルプルプルプル!!”

「(・・・・・・・・・・・・・・・。)」
「(眠いよ・・・・・・。)」
「(フアァアァァァァァ・・・・・・・・・・・。)」

完全に人間の生活スタイル。
早朝5時。コロの一日が始まる。

“タタタタタタ・・・・・・”

目が覚めると体を動かす。が・・・一発で目が覚めることはまずない。
とりあえず、リビングに行こう。

“カリ・・・・・・カリカリ・・・カチッ”

コタツのスイッチを、爪を上手く使って引っ掛けてONにする。
この時期は寒い。中が暑いくらいになる電熱線が真っ赤になる少し手前が気持ちイイ。
モゾモゾと顔ごとコタツ布団につっこんで暖をとる。

その顔がトロ〜ンとしてくるには時間は掛からない。
しかし、至福のひと時も長くは続かない。
なぜなら・・・。

“グニュ!!!”

コロ「ギャンッ!!!」
智世「あ、コロ!ごめーん!!!」

頭隠して尻隠さず。
シッポを思いっきり踏まれて一気に睡魔が去っていく。

朝食の用意を済ませ、この家の主が起きてくるまではのんびりした雰囲気が漂う。
コーヒーの香りとともに、智世がコタツに入ってくると、いつも決まってボクは・・・智世に呼ばれる。

智世「おいで。」
コロ「(まだ・・・眠い・・・。)」

ボクが朝はゆっくりしてるの知ってるでしょ。
言葉にできたらどれだけ良いだろうなぁ・・・。

智世「アンタ、最近態度でかくない?」
コロ「(マイペースなだけだよ。)」

捨てられてこの家にきた経験を持つコロ。再び同じ目にあってはならないと、のそのそとコタツの中を移動・・・。

コロ「ふぁ・・・・・・。」
智世「まだ眠いなら寝ればいいじゃない?おい?」
コロ「(アンタが『来い』って言ったんでしょ・・・・・・。)」
智世「ところでアンタ、今日はどっちに来る?」

ボクはいつも家にいない2人のうち、どっちかについて行ってます。
スケとなら海に繰り出しで漁のお手伝い。智世となら上田薬局店で看板犬。

スケの漁師料理は捨てがたいし・・・智世についていけば、お菓子が食べられる。
どっちがいいんだろう?

ボクは、いつもこんな風に悩んでいます・・・・・・。
そして、今日は・・・・・・。

龍之介「じゃあ、行ってくる。」
智世「海に落ちるんじゃないわよ。」
龍之介「大丈夫だっての。」

スケが出掛けた。
今日、ボクは智世にくっついて散歩しながら看板犬をします。
だって・・・海の上は寒すぎるもん。

智世「アンタ、寒いのが苦手だから行かなかったでしょ?」
コロ「(ピンポーン。)」
智世「まったく、現金な奴!」
コロ「(だって、世渡り上手で生きていきたいから!)」

程なくして出かける。

チラチラ小雪が舞ってました。犬は雪を喜ぶ印象があるとか言われることがあるけど、ボクはそうじゃありません。だって、寒いのイヤ!

パパさん「智世ちゃん。」
智世「パパさん、おはよう。」
パパさん「おはよう。ここのとこ冷えるねぇ。」
智世「本当ね。毎朝ご苦労様です。」
パパさん「あ、そうだ。これ持ってってくれよ。」
智世「いいの〜?」
パパさん「昨日、珍しく売れ残っちまってさ。レンジで温めてもらえればいいから。」
智世「ありがとう。お昼にいただきます。じゃあ、風邪ひかないようにね。」
パパさん「おう。でも、上田薬局店の薬と松本君で大丈夫だろ(笑)」
智世「ああ、あいつはダメ。」
パパさん「どうしてだい?」
智世「患者としてだって亜紀しか見えてないもん(笑)」
パパさん「アハハ・・・でも、評判はいいらしいね。」
智世「まあね。それじゃ、パパさん。」
パパさん「おう。・・・コロ、ちゃんとお客さん呼ぶんだぞ。」
コロ「(もう1パックくれたら頑張れるかも。)」

人間っていいなぁ・・・・・・。こんな美味しいものを食べているんだから。
食べ物に関して、ボクはいつもそんなことを思ってます。
毎食、天然のものをおなかいっぱいになるまで食べられる人間は食物連鎖の頂点に立っているようにボクは思います。いざとなれば、ボクたち犬だって食べちゃうんだろうな・・・。

市販のドッグフードもイヤじゃないよ。でも、スケが釣ってきた魚が一番好きかも・・・・・・今日の夕食、何かな・・・?

智世「おはよう。」
智世父「おう。」

上田薬局店が開店する時間です。
ボクは、入口近くにストーブが置いてあるのでそこに寝そべってます。
「なんだ、看板犬らしい働きをしてないじゃないか。」とか言われるかもしれません。
でも、小さな子連れのお客さんとかいますよね?
ボクのことを怖がる子もいるんだけど、遠慮なく触ってもらいます。必要とあれば手を舐めます。これで大体はOK。
最初はくすぐったかったけど、大分慣れました。

春のポカポカ陽気の時は、店先の屋根の下で寝てます。
あの気持ちいい陽射しの時に働くのは体に悪いよ。気持ち良さこの上ナシ。オススメです。

智世「お父さん、これ調合するの?」
智世父「ああ。」
コロ「・・・・・・。」

眠い・・・。再び睡魔がボクを襲います・・・。
下にカーペットのようなものが敷かれていたら、完全に寝てます。
実は以前に敷かれていたんだけど・・・あまりにボクが寝ているもんだから、智世が怒ってとっちゃいました・・・・・・ヒドイ・・・。

午前中はお客さんも少なめ・・・商店街に住む子供たちが、ボクを目当てにやってくるくらいで、半分寝ながら相手してます。
お願いだから・・・寝かせて・・・・・・。

こんな調子だから、乱暴な子供には耳を引っ張られます。
時にシッポを踏まれます。

体・・・張ってるよね?若手芸人より張ってるよね?

そんなことを思いつつ、お昼時。
智世のお母さんの「お昼できたよ。」の声。これが一番の楽しみです。

思わずシッポも振っちゃいます。
だって、目の前にはホカホカのご飯!

ちなみに、智世のお母さんが作る料理もおいしいです。
一番好きなのは玉子焼き。
甘くて、フワフワして・・・。

そんな楽しい時間もあっという間に過ぎていきます。
午後から3時までは基本的にお昼寝タイム。

「お前、1日の3分の2は睡眠時間だろ!」
なんてことは一切言わないで・・・。

TVの前でこたつから顔だけ出してウトウト・・・・・・・。

この、ボーっとしてる時間が大好き・・・。
だって、夕方からは、幼稚園児から高校生まで相手するんだもん。誰も起こそうとはしないよ・・・。

そして・・・。

コロ「(あいたた・・・・・・。)」

店先で、下校中の小学生がボクで遊びます・・・。

小学生「コロ、お手。」
コロ「(メンドイ・・・。)」
小学生「お手!!」
智世「どうしたの?」
小学生「お姉ちゃん、コロ連れてっちゃダメ?一緒に遊びたい。」
智世「う〜ん・・・それは無理かな。でも、いつでも会いに来ていいよ。たまにいない時もあるけどね。」
小学生「ホント?コロと遊んでいい?」
智世「いいよ。」
小学生「やったぁ(笑)」

ボク、疲れるんですけど・・・。

本音です。
でも、子供たちには罪はありません。一生懸命相手します。

店先で遊ぶと次から次へと人が集まってきます。
ね?ある意味看板犬してるでしょ?

そうこうしていると、あっという間に暗くなります。
店を閉めて、家に戻るとそこにはスケがいます。
足を拭いてもらって中に入ると、真っ先にコタツに入って暖かい・・・・・・。

のんびりしてると、ご飯が運ばれてきてお腹いっぱい。

時々、亜紀たちが来てます。
酒のつまみに智世がから揚げを作ってくれることが多いです。だから、皆が来るのは大歓迎です。

決まって宴会になって、飲ませられます。
お酒が苦手なボク・・・酔っ払って気持ち悪くなって・・・気が付いた時、亜紀の家にいたこともあります。でも、たまに他の人の所に遊びにいくと新鮮です。

結構色々なことがありますが、ボクは拾われて幸せです。
色んな世界があります。

あ、そうそう。
そろそろ朔と亜紀が結婚するらしいです。

でも、“ケッコン”ってナニ?
宴会と披露宴ってナニが違うの?

智世に「アンタも正装しなくちゃね!」って言われました。
皆がスーツとか着るんなら、ボクも蝶ネクタイくらいしようなかぁ・・・。
でも、何で人間はあんなに人を集めてパーティーするんだろう・・・?

そんなことを考えながら・・・おやすみなさい・・・。

智世「龍之介?」
龍之介「んん?」
智世「もし、コロに子供できたらどうする?」
龍之介「まず、亜紀のところに1匹・・・朔ちゃんに1匹・・・ボウズに2匹・・・恵美の実家に1匹。先生のところに1匹・・・。」
智世「・・・他力本願。」
龍之介「でも、去勢させるのもなぁ。」
智世「なかなかのやんちゃボウズだよ。コロって。」
龍之介「まあ、なんとかなんだろ。」
智世「・・・それもそうね。この子の寝顔見ると、どうもね・・・。」

夢の中・・・。

コロ「(フガ・・・・・・ああ・・・・・・TVが取材しにこないかな・・・猟犬ならぬ漁犬を・・・・・・もし、TVに映ったら、可愛い子とお知り合いになれたり・・・。)」

続く
...2006/05/29(Mon) 20:42 ID:wQVNAimU    

             Re: アナザーストーリー4  Name:双子のパパさん
お疲れ様です たー坊様

 コロから見た視線での物語、楽しく拝読させていただきました。
 人間に憧れているコロの気持ちは、人間が鳥や魚など他の種に憧れる気持ちと同じなのでしょうね。
 鳥になれたらなぁ〜なんて現実逃避してしまいます(笑
...2006/05/30(Tue) 00:55 ID:NRjeDv0g    

             Re: アナザーストーリー4  Name:朔五郎
お疲れ様です。

あー、新境地の作品、とっても楽しかったです。
のんびりとしてて癒されますねー(^^)

これからも楽しみにしています。
...2006/06/03(Sat) 21:03 ID:Am.BlgKA <URL>   

             Re: アナザーストーリー4  Name:SATO
今晩は。

コロが出てくると、牧歌的なムードが漂いますね。
こういうの、好きですよ。
...2006/06/03(Sat) 23:01 ID:t0.gcWHI    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
双子のパパさん様

以前からコロの視点というものにはとても興味がありました。
コロのとぼけた部分をお楽しみいただけたなら幸いです。

朔五郎様

新境地と言えるものでもないのですが、個人的にとても満足しております。
のんびり、オトボケ的な部分を意識していました。

SATO様

おっしゃるとおりコロが出てくる時には素朴さを意識しております。他にはクッションの要素も意識しております。
...2006/06/04(Sun) 19:05 ID:iJg3bt5Y    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
上田薬局店・・・。

智世「そう!無事に許可下りたんだ?」
亜紀「そうなの。朔はガッチガチに緊張してたけどね(笑)」
智世「とか何とか言って・・・(笑)」
亜紀「ナニよぉ・・・その笑い方は・・・?」
智世「アンタ、朔の両親に挨拶したときにはカッチンコッチンだったんじゃないのぉ???」

図星。

亜紀「何で分かるの?」
智世「何年親友をやってると思ってんのよ(笑)」
亜紀「あ、そっか(笑)」
智世「そっかじゃないわよ(笑)・・・ところで、先生には報告した?」
亜紀「まだまだ。いきなり招待状を送って脅かしたいの。」

「リベンジね。」
またもや悪そうな表情を見せる智世。

すると、これから子供相手に体を張るコロが奥からのそのそとやってきた。

コロ「(ハワワァァァァ〜・・・・・・・・。)」
亜紀「コロ(笑)」
智世「ほら、シャッキリしなさいよ。」
コロ「(だって・・・憂鬱なんだもん・・・。)」
亜紀「元気ないね。」
コロ「(これからが、1日でキツイ時なんだもん・・・。)」

こころなしか、つぶらな両目には涙が薄っすらと溜まっているように思えた。

智世「で?朔は?」
亜紀「今日は夜勤明けだから、そろそろ戻ってくるよ。」
智世「これから式場の下見?」
亜紀「どこでやるか決めないとね。」
智世「先生が式を挙げた場所は?」
亜紀「同じところよりも、オリジナリティがあった方がいい。」
智世「贅沢・・・。」

「ヘヘ・・・。」
相も変わらず舌を出す仕草に、智世も呆れ顔だ。
すると・・・。

亜紀「あ、コロ?」
コロ「(なぁに?)」
亜紀「お散歩行こっか?」
コロ「(え、ホント?)」
智世「ちょっと、亜紀?」
亜紀「なに?」
智世「こんなんでも、一応は売り上げに貢献してるんだから・・・。」
コロ「(悪かったね・・・こんなんで・・・。)」

コロはふてくされたのか、ベタっと地面に寝そべって遠い目をしている。

亜紀「コロ?コロ?」
コロ「(どうせ・・・ボクは・・・。)」
亜紀「行かないの?」
コロ「(ヒドイご主人様が、売り上げに貢献しろだって・・・・・・。)」
亜紀「行かない?」
智世「しょーがない!コロ?」
コロ「(なぁに?(泣))」
智世「たまには遊んでおいで。」
コロ「(ホントに・・・・・?)」
智世「・・・あれ、何よ?その疑いの眼は?」

じっとりと湿っぽい目。
ジーッと見つめるその先には“鬼”ことご主人様の笑顔があった。
せっかくのチャンスを逃したくないのは人間も犬も一緒。

コロ「(ちょっと待って。)」
亜紀「コロ?」

コロは素早く奥に戻り、首輪に装着する紐を咥えて戻ってきた。

亜紀「準備がいいのね。」
コロ「(早く行こ!早く!)」
智世「どれどれ?」

智世はコロを座らせて、首輪に紐を着ける。
亜紀が紐を握ると、真っ先に薬局を飛び出そうとグイグイ引っ張っていく。

ワーイ!
ボクは自由だ!

亜紀「コロ!走らないの!」
智世「亜紀、気をつけてね。」
亜紀「はいはい!」

亜紀とコロは曲がり角を曲がると、あっという間に見えなくなった。

智世「やれやれ・・・。」

すると・・・。

朔「智世。」
智世「おう!お疲れ。」
朔「何が『おう!』だよ。亜紀は?」
智世「あ、コロ連れて散歩に行っちゃった。」
朔「は?」
智世「そのうち戻ってくるわよ。」
朔「式場の下見・・・どーすんだよ。」
智世「あっ・・・!ゴメン・・・そういえばそんなこと聞いてたわ・・・。」
朔「智世〜・・・止めてくれよ・・・。」
智世「まぁ・・・今日、仕事終わりでしょ?亜紀たちが帰ってくるまでお茶飲んでけば?」
朔「はぁ・・・そうする・・・。」

店番もほどほどに、奥でお茶をすすりながら、智世は朔に根掘り葉掘り聞いていた。

智世「式はいつ頃?」
朔「いや、まだなーんにも。」
智世「日程くらい決めておけば?」
朔「まぁね。」
智世「どこか他人事じゃない?」
朔「そんなことねぇよ。」
智世「これからは亜紀の主導権を握るつもりでいかないと亜紀に見捨てられるぞ。」
朔「ま、そうならないように気をつけますか・・・・・・。」
智世「で?どうなの・・・?」
朔「どうって・・・何が?」
智世「そんなの決まってんじゃん!・・・夜のことよ!」

“ブッ!”

朔の口からは、勢いよく茶しぶきが飛び出していた。

朔「いきなり、何を言い出すんだよ!?お前、スケちゃん化してるだろ!」
智世「あーら?そこのところは誰でも気になるのは当然じゃないの〜?」
朔「ったく・・・。」
テーブルの上に飛び散ったお茶を拭き拭き・・・。

智世「それで?どうなのよ!?」

朔はガックリ肩を落としながら首を横に小刻みに振ってみせた。

智世「度胸ないわね〜!!」
朔「いや・・・亜紀のガードが世界チャンピオンくらいに固くてさ・・・・・・・・。」
智世「でも一緒に寝てるんでしょ?いっそのことその時に・・・。」
朔「無理やりそんなことしてみろ。その瞬間に俺の10年は水泡に帰すること間違いなし。」
智世「弱気。」
朔「まあ、オアズケを食らうのもそう長い未来の話じゃないと思う。」
智世「それもそうね(笑)」

久々に2人きりで笑った。
幼なじみの時以来かもしれない。

一方。

コロ「(自由って・・・・・・いいなぁ・・・。)」
亜紀「なに・・・考えてるの?コロ(笑)」
コロ「(ボク、ず〜っとず〜っと亜紀の家来でいる!)」

シッポを大きく左右に揺らしながら、亜紀に忠誠を誓った。

亜紀「あ!」

ビクン!(コロ)
コロが歩を止めた。

コロ「?????」
亜紀「式場の下見するんだった。」
コロ「(・・・・・・・。)」
亜紀「・・・ま、いいか・・・・・・。コロ?」
コロ「(・・・何?まさか、『もう、お散歩は終わり』とか言わないよね?)」
亜紀「少しだけ早めに戻るからね。」
コロ「(え〜・・・?)」

みるみるうちにコロのシッポに躍動感が消えていくのが分かる。
亜紀は頭を撫でながら、「また遊ぼうね。」と言った。

亜紀「ほら。ガッカリしないの。」
コロ「(亜紀、ボクが毎日看板犬で必死に働いてるの知らないでしょ・・・・・・。)
亜紀「なんでそんなに悲しそうな顔してるの・・・?」

亜紀のそんな疑問は、戻った後にハッキリ分かった。

朔「・・・何やってんの?」
亜紀「ゴメンなさい(笑)」

目尻が上につりあがり、非常にお怒りのご様子・・・。

朔「今回は許す。」
亜紀「ありがとうございます(笑)」

何年経っても、何度見ても亜紀のその輝く笑顔には、朔の怒りは続かない。
その時。

小学生「わーい!コロー!」
コロ「(来たよ・・・・・・。)」

智世も含め、3人が外に出てみると、小学校低学年の女の子たちがコロをもみくちゃにしていた。

コロ「(あいた。)」

思わず、嫌がってそっぽを向くコロに、女の子たちは、
「どうしたの?」と聞くばかり。
コロの頭をパシパシと叩くような感じ。当然、本人たちは加減しているつもりなのだが、コロにとっては少し痛かったようだ。

コロ「(このまま・・・ストレスたまったら・・・ボクはどうなるの?円形脱毛症になっちゃうかも・・・。)」
小学生「コロ、お手。」

もう・・・好きにしてくれ・・・。
いっそ、殺してくれ・・・・・・・。

その惨状を見かねた朔と亜紀。

亜紀「ねえ?もうちょっと優しく撫でてあげて。」
小学生「え?」
朔「コロ、嫌がってるよ。」
小学生「そうなの?」
朔「目を見てごらん?少し涙目になってるよ。」
小学生「・・・コロ、そうなの?」
コロ「(痛いんだよ。)」
小学生「ゴメンなさい。」
コロ「(わかりゃいいよ。わかりゃ。)」

今度は生意気そうな態度で生あくびを連発のコロに、朔は正義の鉄槌を下した。

“ギャン!!!”
拳骨で頭がズキズキと・・・・・・。

朔「お前なあ!」
コロ「(イッタ〜!!!)」
小学生「お兄ちゃん、私が悪かったの。だから・・・。」
朔「分かったよ。でも、またこいつが変な態度をとったら、耳とか引っ張っちゃっていいから。」
小学生「うん!」
亜紀「これでよかったのかしら・・・?」
智世「朔って、矛盾してるような気がする・・・・・。
朔「まあ、そう言わずに。」

それから2人は式場の下見に向かった。
その後もコロは看板犬の役割を立派に果たして見せた。
上田薬局店の売上は10%増しになったそうな。

続く
...2006/06/06(Tue) 19:24 ID:nUp82/3k    

             Re: アナザーストーリー4  Name:一読者
お疲れ様です。新作2編、まとめて拝見しました。
コロ、かわいいですね〜。動物の視点から見た感じがとても新鮮で面白かったです。

あと今回のツボはこちらでした。
>何年経っても、何度見ても亜紀のその輝く笑顔には、朔の怒りは続かない。

ずっとこんな朔と亜紀でいられるよう願っています。
次回作も楽しみにお待ちしています!
...2006/06/06(Tue) 22:26 ID:z61VYmBc    

             Re: アナザーストーリー4  Name:朔五郎
看板犬コロ、大活躍ですね(^^)

ところで、ドラマで「たこ焼きパパさん」の店になった建物は、書店の倉庫だということは有名ですが、この書店にも看板犬がいます。運が良い(?)と、足元に寄ってきて遊んでくれますよ(笑)
もう年をとった感じの、大きなレトリバーでしたが、元気にしてるでしょうか。
...2006/06/11(Sun) 01:50 ID:TLgiFv1g <URL>   

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
一読者様

コロ視点での物語は以前からアイデアとして持っていたました。形にしたいと申しておりましたが、好評を頂きましたので、もう一回やってみようかと思っております。

朔五郎様

書店にも看板犬がいるんですか?今日、初めて知りました。レトリバーの老犬とのことですが、ずっと長生きしてもらって、松崎のマスコットになってもらいたいですね。
...2006/06/13(Tue) 18:14 ID:Ld4vJI0U    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
いざ結婚となると、色々と忙しい・・・・・・。
おまけに新社会人としての一歩を踏み出した亜紀にとってはストレス過多の状態・・・。

午後8時間際、宮浦駅に到着した電車の中から、疲れた表情を浮かべながら亜紀が降り立った。

明日は土曜日・・・。
休日だから朔でも呼び出そうかな・・・。

そんな気持ちを察したわけではないが、駅前には朔がいた。

亜紀「なんで?」
朔「なにが?」
亜紀「私を待ってたの?」
朔「まぁ、そうだけど。」
亜紀「医者ってヒマなの?」
朔「そんなわけないだろ。」

亜紀は恨めしそうな顔で朔の目を見続けた。



亜紀「やってられないわっ!」
朔「荒れてるね・・・。」

亜紀はなれないことの連続に大分ストレスを溜めていることは、すぐに察しがついた。
少しアルコールが入ったのでその荒れっぷりは見事なものだった。居酒屋で飲み続けること2時間後・・・。

亜紀「う、気持ちわる・・・。」
朔「酔いつぶれるまで飲むなよ。」
亜紀「ゴメン・・・。」
朔「そんなにストレス溜まるのか?」
亜紀「一人だけいやな人が・・・その人が全部・・・。」
朔「ああ、もう何も言うな。」
亜紀「ゴメンネ・・・うっ・・・。」
朔「おいおいおい!ここで吐くなよ?」
亜紀「大丈夫・・・。」
朔「ホント?このまま送るから。」
亜紀「うん・・・お願い・・・。」
朔「間違っても俺の背中で吐くなよ?」
亜紀「朔ちゃんなら・・・全てを受け止めてくれそうなのに・・・。」
朔「それとこれとは別。」
亜紀「冗談・・・。」
朔「冗談を言う余裕があるなら大丈夫。」
亜紀「朔ちゃんこそ・・・酔いつぶれてるスキをついてHなことしようなんて考えてないよね・・・?」
朔「ないない(苦笑)」
亜紀「それを聞いて安心した・・・オヤスミ・・・。」
朔「ちょっ・・・おい亜紀?」

しかし、返事はなかった。
首の後ろに寝息だけが残る。

朔「・・・・・・。」
亜紀「ZZZ・・・。」

翌朝・・・。

亜紀「イタタ・・・。」

二日酔い。
服装も昨夜と同じままだ。
すると、綾子が入ってきた。コップに一杯の水を手に持って。

綾子「随分と結構なご身分ねぇ。」
亜紀「ゴメンなさい。」
綾子「朔くんがわざわざベッドまで運んで寝せてくれたんだから。」
亜紀「お礼はしっかりしておきます・・・。」
綾子「そうしてください。」
亜紀「お父さんは?」
綾子「松本さんのところ。」
亜紀「え!?なんで?」
綾子「なんでって・・・写真よ?」
亜紀「あ、そっか・・・。」

その一方。

真「ご迷惑をお掛けして・・・。」
潤一郎「なーに言ってんですか?(笑)夫婦になるんだから気にされることはないでしょう(笑)」
真「あんな風にしつけた覚えはなかったんですが・・・。」
富子「まぁまぁ。いっくらしっかり躾て育てても何度かそういうことはありますよ!」

相変わらず豪快に笑い飛ばすこの夫婦に気が楽になる真。
富子からお茶を渡されてリラックス・・・。

潤一郎「亜紀ちゃんも新社会人ですか・・・。」
真「私たちの時と違って、今はそれぞれが精神的に辛い時代ですからね・・・たった1週間ですが、結構愚痴を言ってますよ。」
潤一郎「そうですか・・・あんまり無理はしないようにしないといけませんね。」
富子「それはそうと・・・。」
真「何ですか?」
富子「いえね、あの子たちはいつ籍を入れるつもりなのかと思いましてね。」
真「何も聞いていませんが・・・。」
潤一郎「まあ、焦らなくともいいんじゃないか?週に一度は色々計画しているみたいだし・・・。」
真「そうですね。ある程度決まったら、報告してくるでしょうし。」
富子「そうですね・・・。」

ふと、真があの時の写真を見つけた。

真「あたらしい写真は、やはり、あの隣ですかね?」
潤一郎「あ・・・そうなりますか・・・。」
真「そのあたりも考えないといけませんね。(微笑)」
潤一郎「そうですね(笑)」

その頃、宮浦港の岸壁に釣り糸を垂らす3人。

ボウズ「なぁスケ。」
龍之介「あん?」
ボウズ「さっぱり当たりがこねぇぞ。」
朔「20分経ってるなぁ・・・。」
龍之介「おっかしいなぁとは思ってんだ・・・。」

その後ろでは、コロがノンビリとひなたぼっこ。

朔「コロ。」
コロ「ふぁ・・・(ナニ?)」
朔「飲み物買ってきて。」
コロ「(ボク・・・天才犬じゃないんだけど・・・・・・。)」
ボウズ「おい朔、そりゃ無理だろ。いっそのこと、海に潜らせて魚取ってきてもらおうぜ。」
コロ「(イヤ。春になったけど水温は低いもん。)」

そのとき。

龍之介「よし。どーせなら船出すか?」
朔「燃料代は一切出さなくていいなら。」
龍之介「いいぜ。ボウズは?」
ボウズ「行く。」
龍之介「コロは行くよな?」
コロ「(アラ汁飲ませてくれるなら。)」

もちろん、言葉は分からない。
でも、口に溜まるよだれに、龍之介はコロが乗り気だと気付いた。

そして、船に乗り込んだところでもう一人乗船しようとする者が現われた。

朔「よっ。酔っ払い。」
亜紀「・・・うるさいなぁ・・・せっかく謝りに来たのにその言い方は酷すぎる。」
朔「二日酔いは?」
亜紀「ほんの少し。」
龍之介「なに?昨夜飲んだの?」
亜紀「うん。」
朔「ヤケ酒だよ。」
龍之介「珍しいな・・・。」
亜紀「社会人は疲れるの。」
龍之介「それはそれは・・・。」

コロが足元に来てじゃれる。
頭を撫でながら亜紀が釣竿に気付いた。

亜紀「釣れるの?」
ボウズ「サッパリ。」
亜紀「夜のおかずはどうするの?」
龍之介「だから、これから船を出すんだよ。」
亜紀「そうなの?私も行きたい。」
朔「ダメ。」
亜紀「・・・何で?」
朔「二日酔いが船酔いしたら最悪。」
亜紀「大丈夫だよ。」
朔「本当か?」
亜紀「本当です。」
龍之介「じゃ、行くか。」

こうして、4人と一匹は大海原へとくり出した。

続く
...2006/06/13(Tue) 18:34 ID:Ld4vJI0U    

             Re: アナザーストーリー4  Name:一読者
>たー坊様

お疲れ様です。新作、拝見致しました。
物語がクライマックスに向けて静かに動きつつある・・という感想を抱きました。
今後も期待しております。頑張って下さい!
...2006/06/13(Tue) 22:37 ID:UQbdsd32    

             Re: アナザーストーリー4  Name:にわかマニア
 元のドラマの登場人物で,もし「酒乱」というコトバがピッタリくるようなキャラがいるとすればボウズで(スケちゃんは飲んでて当たり前),その対極に位置するのが亜紀かなあというふうに思いながらも,優等生がハメを外すとどうなるのか,そのときの父の反応はというのが密かな楽しみでもありました。
 「あんな風にしつけた覚えはなかった・・・」とは,いかにも真らしいですね。
 でも,こうなると,真自身が酔いつぶれた時の姿は,想像するだけでも面白いような,怖いような・・・
...2006/06/14(Wed) 06:06 ID:0qTwNcNY    

             Re: アナザーストーリー4  Name:ぱん太
たー坊様

 こんばんは。
 職務復帰して2週間。今夜は復帰後初の午前様でございます。まぁ〜、充分に体力が回復するまでには、もう少し時間がかかりそうですが、なんとか経過も順調に進んでいるようです。

 ”コロ”目線の物語の進行、面白いですねぇ〜。きっと、我が家のワンコ共も色々と試行錯誤をしながら生きているんでしょうねぇ〜。その昔、2002年だったと記憶していますが、「バウリンガル」なる犬用の翻訳機みたいなものが売り出されました。我が家もご多分に漏れず、奥様が売り出しの初日に買って来ました。アレは、吼える声の波長で感情を読み取るモノだったんぽですが、我が家のぱん太君は滅多に吼えないため、1週間で飽きてしまい、今は、近所のペットショップの備品となっております。

 さてさて、物語もクライマックスになるんでしょうか?まだまだ、色んな展開を期待している僕としましては、もっともっと、たー坊様の物語に浸っていたいと思います。

 これからも頑張ってください。

 では、次回作を楽しみにしております。
...2006/06/16(Fri) 02:04 ID:vw4fS0WM    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
一読者様

だいぶ、ラストに向けての構想もまとまって参りました。現在はその序章の入り口です。
当分はのんびりとした雰囲気になると思います。

にわかマニア様

亜紀はかなりの酒豪かもしれません。それこそ、朔がいる場合には、安心してハイペースになってしまうことが多いですね。
さて、真ですが、二次会の時には酔った姿をお見せできると思います。

ぱん太様

コロが人間界に完全に適応するのはもう少し先になるかもしれません。でも、毎日必死に薬局の売り上げに貢献していますよ。
バウリンガルは私も覚えがあります。朔たちの結婚式の引出物には、上田家にだけバウリンガルが贈られるのも面白いかもしれませんが、年代が少し会わないようです(苦笑)
...2006/06/17(Sat) 17:03 ID:md2FYZuM    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
亜紀「釣れたねぇ(嬉)」
朔「こりゃ・・・2日間は魚だね・・・。(苦笑)」
亜紀「贅沢言わないの。」
朔「だって、飽きるじゃない。毎日焼き魚と刺身のオンパレードだよ?」
亜紀「別の料理にすればいいじゃない。ムニエルとか・・・。」
朔「・・・うちの母親がそんな手の込んだメシを出す訳ないだろ・・・。」
亜紀「しょーがない。私が作ってあげるよ!」
朔「えっ?ホント?」
亜紀「うん。」
朔「助かったぁ。バリエーションは豊富な方が助かる!」
亜紀「飽きないようにしてあげるよ。」
朔「あ、でも月曜から仕事だろ?大変だからいいや。」
亜紀「大丈夫。でもあれだね・・・こういう時に一緒に住んでれば面倒なことがなくていいのにね。・・・一緒に住んじゃう?」
朔「さすがに籍を入れない限りマズイんじゃないの?おじさんは特に・・・。」
亜紀「そんなの・・・いざとなったら荷物持って転がり込めば?既成事実を作ってさ・・・。」

何の躊躇もなく思案する一方、朔はそれを遮る。

朔「ちょっと待て、ちょっと・・・。」
亜紀「?」
朔「俺が・・・ケジメつけるから!」

朔の口からとっさに出たこの言葉、もちろん真に頭が上がらないゆえに出たものだが、亜紀にとっては、再度プロポーズされたと同じくらいに感激する言葉だった。
亜紀はとっても嬉しそうに下を向いて喜びを噛み締めていた。
もちろん、朔にはその理由は分からない。大きな大きな認識のズレが存在していた。

亜紀「でも・・・。」

感動を噛み締め終えて切り出す。

亜紀「不動産屋さんに行かないとね。」
朔「・・・そうだね。」
亜紀「私、部屋数は多くなくていいから。」
朔「アパートでいいよな?」
亜紀「いいよ(嬉)」
朔「どんな部屋がいいの?」
亜紀「私の理想はね・・・東京のような部屋がいいな。」
朔「俺・・・和室がいいなぁ。」

これまでの自分達の過ごした環境が影響しているのだろう。
見事な程に正反対の希望だった。

亜紀「え?でも、朔ちゃんが東京にいた時にはお洒落な部屋だったじゃない?アイドルのレコードが沢山あった部屋とは違って良かったの。」
朔「俺の部屋をイメージしてたの?(アイドルレコードの件は無視)」
亜紀「そうよ。」
朔「俺の理想はね・・・東京の部屋に一部屋プラス和室がいいなぁ。」
亜紀「和室って落ち着くよね。」
朔「新しい畳の匂いは最高だよ!」

「プッ・・・。」
何故か亜紀が吹き出す。

朔「?」
亜紀「私たち、利便性をこれっぽっちも考えてないね(苦笑)」
朔「駅に近いところがいいかな・・・。」
亜紀「病院に近いところの方がいいよ。朔ちゃんは夜遅い時もあれば朝早い時もあるんだから。」
朔「いや、亜紀が通勤する上で駅に近い方が・・・。」
亜紀「ううん。朔ちゃんの利便性が・・・。」
朔「いやいや。亜紀の方が・・・。」
亜紀「ダメ。朔ちゃん・・・。」
朔「いいから。」
亜紀「いいって。」

「・・・・・・・・・・・。」
すでに2人の世界が作り上げられていて、第三者は決してそこに入れない。

ボウズ「お前ら!俺の存在を忘れんな!」
コロ「(あ、いたの?)」

ナイスツッコミ。

朔「まだいたのか?」
ボウズ「スケにコロを連れて行けって言われたんだろが。」
亜紀「コロもいいけど・・・恵美と向き合ってあげなよ。」
ボウズ「うっ・・・。」
朔「何?恵美をほったらかしにしてんの?」
亜紀「最近、誘ってくれないって寂しそうなの。酷いよ。」
ボウズ「俺にも都合というものが・・・。」
朔「ボウズ・・・悪いことは言わない。」
亜紀「経験者は語る、ね(笑)」

以前、一月以上もほったらかしにして、亜紀の機嫌を取ることに大層な労力を使ったがゆえにその言葉には重みがある。

コロ「(ボウズって・・・ダメだね〜。)」

こいつの言葉は理解できないが、何故だか腹が立ってくる。

ボウズ「何だよ?」
コロ「(バ〜カ。)」
ボウズ「何か言いたそうだな・・・。」
コロ「(ア〜ホ。)」
ボウズ「言いたいことがあるなら人間の言葉で喋れ!この非国民!!(?)」

「何を言ってんだ?」

2回目のナイスツッコミは、朔の口から飛び出した。

亜紀「コロ。コロ。」
コロ「(なぁに?)」
亜紀「夕飯は魚だねぇ。」
コロ「(そうだねぇ。)」
亜紀「何にして食べるの?」
コロ「(智世にオマカセ。でも、久しぶりに刺身が食べたい。)」
朔「よだれが垂れてるぞ(笑)」
コロ「(ボク、食べ物を想像するのって大好き。)」

その時、「俺を忘れんなっ!!!」というボウズの叫びが響いた。

上田家・・・。

智世「お〜・・・結構釣れたねぇ。食費が節約できていいわ(笑)」
亜紀「コロにおいしいものを食べさせてあげて。」
智世「任せなさい!この子も最近頑張ってくれてるから、お刺身にでもしようか?」

コロのシッポに躍動感が表れた。

智世「ねえ!どうせなら皆でご飯食べない?」
朔「お、悪くないなぁ。」
亜紀「ボウズは?」
ボウズ「恵美も呼んでいいか?」
智世「いいわよ。・・・っていうか・・・。」

奥から恵美が登場した。
その目はボウズに対してどんよりした印象を持たせる。

亜紀「まあまあ・・・。」
恵美「ヒドイ扱いされた女性は恐ろしいところを分からせないとダメなのよ。」
朔「逃げるなよ?」
ボウズ「分かったよ・・・・・・でも、サク。」
朔「ん?」
ボウズ「フォローだけは頼むぞ?」
朔「亜紀次第。俺だって亜紀の尻に敷かれてるから。」
ボウズ「・・・威張って言うことじゃないだろ。」

毒づくボウズ。
それは、当然のように女性陣にも聞こえていた。

智世「やれやれ・・・。」
亜紀「許してあげなよ。(笑)」
恵美「それは今日の態度によるわね。」
亜紀「まあまあ・・・。」
智世「でも・・・結構お怒りのご様子ですね・・・。」
恵美「まあ・・・それなりにね・・・。」

その後、龍之介も帰宅して賑やかな夕食。

コロ「(ウ・・・ウマイ!)」

コロは久しぶりの刺身に感動していた。
食器ごと胃袋に収めてしまいそうな勢いに、中身はあっと言う間になくなっていった。

朔「よっぽど好きなんだな。」
智世「アンタ、喉につまらせたりしないでよ。」

コロはそんな言葉に耳を貸すわけもなく食事を続けた。
そんな様子に意外と和んでいたのが恵美。ボウズは相変わらず硬さが残るがそれでも随分マシである。

少しは関係改善されたのだろうか?
そして松本家・・・。

亜紀「あっ・・・そこ。気持ちいい・・・。」
朔「はいはい。」

風呂上り。
亜紀の疲れを癒すマッサージを朔がしていた。

亜紀「お医者さんが近くにいるとこんな良いこともあるのね(嬉)」
朔「それはともかく・・・年取ったなぁ・・・。」
亜紀「それは言わないで・・・。」
朔「俺たち、あと少しで三十路か・・・。」
亜紀「今年中に籍入れるからね。」
朔「分かった。」

背中を押しながら朔が答える。

亜紀「ありがと。朔ちゃんにもやってあげようか?」
朔「それじゃあ・・・少し・・・。」

さっそくうつぶせになり亜紀のお手並み拝見・・・。

亜紀「えいっ!」
朔「お〜・・・結構効くなぁ・・・。」

そして10分後・・・。

朔「お・・・おやすみ・・・。」
亜紀「おやすみ・・・。」

朔の首は嫌な痛みに支配されていた。
亜紀の力が思いのほか強かったようだ。

続く
...2006/06/21(Wed) 02:05 ID:cVkHyog2    

             Re: アナザーストーリー4  Name:KAZU
たー坊様

ご無沙汰しております。
朔と亜紀は着実に一歩一歩ゴールに向かって突き進んでいますね。執筆活動大変でしょうが頑張って下さい!!
...2006/06/22(Thu) 21:40 ID:PRAcPYsQ    

             Re: アナザーストーリー4  Name:SATO
風呂あがりにマッサージをしてもらうと本当に気持ちいいですよね。亜紀はバタンキューで眠りについたようですね。
ボウズもそろそろビシッと決めてもらわないと・・・

※駅の売店に昨日発売された少年雑誌が並んでいたのですが、その表紙が綾瀬はるかさん(少年マガジン)・夏帆さん(少年サンデー)でした。『義姉妹』が仲良く並んでいるようでしたね。以上、余談でした(^^)
...2006/06/22(Thu) 22:19 ID:XtomTHmU    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
KAZU様

こんばんは。
最近、一気に忙しくなりまして、投稿はおろか執筆もままなりません。非常にきついです。
そろそろ頑張れなくなりそうです・・・。
構想を練り直さないと・・・。

SATO様

お疲れ様です。
朔と亜紀は2人きりでいい思いをしています。特に朔にとっては一緒に風呂に入った仲ですから早いとこ一線を越えたいことこの上ないでしょう(笑)
...2006/07/03(Mon) 02:12 ID:t1r7zoFQ    

             Re: アナザーストーリー4  Name:ぱん太
たー坊様

 おはようございます。早起きのぱん太でございます。
 さて、マッサージ気持ちいいですよねぇ〜。我が家でもマッサージ機を購入したいのですが、家内から「どこに置くの?」とドスの利いた声で言われて断念しております。その代わりと言ってはなんですが、週末の度にマッサージ屋に通っております。その昔、膵臓癌が発覚する数ヶ月前、そのマッサージ屋さんに「消化器の部分、特に膵臓の部分が異様に張ってますよ〜」と言われました。その数ヵ月後に激しい腹痛に追われて、そのまま入院・手術へと繋がりました。今では、ほぼ、その足裏の張りも取れているようです。なんか不思議なもんですね。
 たー坊様も随分遅い時間に投稿されていらっしゃいますが、体調には留意くださいね。ここんとこ、入院患者でも風邪をこじらす患者が増えています。ついでに、風邪でオヤスミするスタッフも増えています。何事も程々がよろしいようで。

 ではでは。
 
...2006/07/04(Tue) 05:32 ID:PC4fCl5s    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
ぱん太様
励ましのお言葉ありがとうございます。
最近、かなり忙しくなっておりまして、徹夜もあります。ですが、緊張感からか不思議と体力的には問題ありませんのでご心配なく。最近執筆ができておりませんが、少しずつでも続けていければと思っております。
...2006/07/05(Wed) 00:21 ID:tJlJo4IY    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
2人で着々と準備を進めてきた。
式場も目星をつけ、誰を呼ぶかということは決めていた。
今日は、貸衣装で衣装を試着。

亜紀「今度は白にしたら?」
朔「白?」
亜紀「この前は黒だったでしょ。」

本当なら目が腐るほどに亜紀のドレス姿を見るつもりだったのに・・・いつのまにか自分の衣装選びになってしまっている・・・。

朔「あ、あのさ。」
亜紀「ん?」
朔「ウエディングドレス・・・試着したら?」
亜紀「後でね。今は朔ちゃんの衣装が先。」

別に男の衣装なんて大して変わらないんだから・・・。
それよりも亜紀のウエディングドレス姿をたっぷりと見せてもらいたいのに・・・。

亜紀「じゃ、これでいい?」
朔「いいよ。」

何だかんだ1時間近く掛かってしまった。
でも待った甲斐があるというもの。いよいよ亜紀の番だ。

亜紀「どう?」
朔「・・・・・・。」

当然のごとく放心状態になる。
亜紀の声は聞こえているようで聞こえていないような・・・。

亜紀「何とか言って。」
朔「ん?・・・ああ。」
亜紀「・・・それだけ?」
朔「いや・・・一着目から似合うなぁってさ・・・。」

亜紀はふふんと機嫌が良さそうだ。
「今の覚えておいてね。」そう言うと、次のドレスを選びに行く。
「もう少し、今のドレス姿を見ていたかったような・・・。」
素直な朔の心境である。

それを繰り返すこと2時間後・・・。

亜紀「ゴメン。時間を取っちゃったね。」
朔「いや・・・俺もいいもの見せてもらえたし。」

近くのレストランでディナータイム。
こぢんまりしたイタリアンのお店だ。こ洒落た雰囲気の店内。ランプを照明に使っているせいか落ち着いた空気だ。

ウエイターが注文を取りに来た。
2人はピザをオーダー。焼き上がりに時間が掛かるとのことなので、しばしのお喋りタイム・・・。

亜紀「2人で食べるのって久しぶりじゃない?」
朔「この前、駅前の居酒屋で飲んだじゃない。」
亜紀「そうじゃなくて・・・。」
朔「なくて?」
亜紀「いかにもデートって感じのムードがするところだと・・・。」
朔「あぁ・・・そういうこと。」
亜紀「東京以来じゃない。」
朔「そうだっけ?」
亜紀「そうだよ。最近は忙しくなっちゃって。このままいったらすれ違うんじゃないかってくらいに。」
朔「大袈裟だなぁ。」
亜紀「朔ちゃんが呑気なだけ。私が疑り深いの知ってるでしょ?」
朔「なに?些細なことで疑われるの?」
亜紀「キッカケになりかねないってこと。」
朔「(会うのは)週に一回のペースでしょ。そんな風になるとは思えないけど。」
亜紀「そんなこと言って・・・病院の看護婦さんと浮気してるんじゃないの?(笑)」
朔「ないない。(笑)」

軽口を叩き合う2人。
やがて話は、最近どうも雲行き怪しいとある2人について。

朔「ボウズもこういうところに連れて来ればいいのになぁ。」
亜紀「恵美も言ってた。年に一度で構わないから、こういうところでデートしたいんだって。」
朔「こりゃ、スケちゃんに頼んでボウズを鍛えないとダメかもね。」
亜紀「そうね。一度、レストランガイド貸してあげたら?」

水の入ったコップを傾けていた朔思わず吹き出しそうになった。
実は、亜紀とのデートのリサーチのために職場の先輩方から色々と情報源について聞いていたのだ。もちろん、亜紀には内緒で。
ちなみに、今日は偶然見つけた店である。


朔「・・・何で知ってんだよ?」
亜紀「この前、朔の部屋を掃除した時に、たまたま本棚の隅にあったのを見つけちゃった(嬉)」
朔「・・・せっかく良い隠し場所になったと思ったのに。」
亜紀「案外、堂々とした場所に置いておくとバレないものよね。でも、見つけちゃった。(笑)」
朔「もっと良い場所を開発しないとダメか・・・。」
亜紀「こういう隠し事は大歓迎。(笑)」

やがて良い匂いとともに、溶けたチーズがたっぷりのピザが運ばれてきた。
また、車で来ていたのでお酒は自制・・・。

亜紀「おいしそう・・・。」
朔「亜紀って、食いしん坊だよね。」
亜紀「えっ?」
朔「いやいや・・・付き合って10年。また新しい発見が増えたよ。」
亜紀「グルメってことでいいの?」
朔「食い意地が張ってると言った方がいいかもね。」

ぷくっと膨らませた頬を朔の右手人差し指がからかう。
「まるで河豚みたい。」と、なおも口撃の手を緩めない。

亜紀「すみません。このお店で一番良いワイン・・・。」

大慌てで口を塞ぎ、手を合わせて平謝り。

亜紀「妻を怒らせると怖いからね。」
朔「よく分かってるよ・・・。」
亜紀「今日は奢りね。」
朔「昼飯が質素になるなぁ・・・。」

なかなか朔が上になることは少ない。
いつになったら俺は対等になるんだろうか・・・。

しかし、亜紀は朔を尻に敷いているつもりはなかった。むしろ、朔の急成長に自分は追いつかれてしまったと・・・。
彼女としてはとっても嬉しいはずなのに、どこか悔しい。「とうとう追いつかれたか・・・。」と、白旗を揚げんばかりに尊敬している。

帰りの車内。

亜紀「海岸線沿いの道で帰らない?」
朔「いいけど、遠回りになるよ?」
亜紀「いいよ。朔ちゃんと一緒なら。たとえ1週間かかっても、行き先が地獄でも・・・。」

「何言ってんの?」
苦笑いを浮かべながら、朔はハンドルを握り続ける。
しかし、亜紀はかなり本気だった様子。

亜紀「本気で言ってるのに。」
朔「嬉しいけど・・・。」
亜紀「じゃ、キスして。」
朔「運転してるのにどうやって?」
亜紀「こうするの。」

視界を遮らないように朔の左頬に顔を近づける。
久々の感触に朔のテンションも上がっていく。

亜紀「朔ちゃんからはないの?」
朔「信号待ちの時でいい?」
亜紀「喜んで。随分積極的ね?」
朔「亜紀ほどじゃないよ。」

朔の肩にもたれつつ、甘えることを抑えようともしない亜紀。
最近、落ち着きつつある2人が今日は燃え上がる。

その頃、皆に心配をかけっぱなしの2人は、宮浦の町外れの高台にある隠れ家的レストランにいた。

ボウズ「悪かった。今までほったらかしにして。」
恵美「良ちゃんはなんでもかんでも考えすぎなのよ。失敗を恐れちゃ何もできないよ。」
ボウズ「そうだな・・・。」
恵美「お財布は大丈夫?私、仲直りのお祝いにたっぷり食べるつもりなんだけど。」
ボウズ「まぁなんとかなるだろ?好きなもの頼んでいいぞ。」

かといって、高額なメニューを選ぶようなことはしなかった。
ちなみに、ここはレストランガイドに載っていた場所である。ガイドそのものの情報源は龍之介。
「スケ・・・お前もたまには役に立つじゃねーか。」
密かにボウズは龍之介に感謝していた。

久しぶりに笑い合う。ほとんど笑顔が無かったが、会話に花が咲く。
そんな様子を見ていたのは龍之介夫婦・・・。

龍之介「帰るぞ。」
智世「スケ、私も食べたい。」
龍之介「共働きと言えど、金はねえよ。」
智世「あんたの飲み代を回してもいいんじゃないの?」
龍之介「勘弁してくれよぉ〜!」
智世「イヤ!たまには私もイイ思いをしたい!」

2人は騒ぎながらも帰路についた。そろそろ戻らないとコロのご機嫌が悪くなる。
「今日は刺身だろうな・・・?」
コロは自分の食器をくわえつついじけていた。

続く
...2006/07/07(Fri) 22:35 ID:0cmOlYmg    

             Re: アナザーストーリー4  Name:にわかマニア
 たー坊さん
 年一度だけ逢うことが許された七夕の夜に合わせるかのように,しばらく疎遠になりかけていた2つのカップルのデートの物語をありがとうございました。
 サクと亜紀は,ついに貸衣装の試着まで進んだのですね・・・(感無量)
 この様子だと,披露宴のメニューも食いしん坊の亜紀主導で決められてしまうのでしょうね。もちろん,コロは大喜びでしょうが・・・
...2006/07/07(Fri) 23:07 ID:Cq0ar68Q    

             Re: アナザーストーリー4  Name:kaku
 たー坊様
今回もまた幸せいっぱいの物語を読んで本当に良かったです。
また次回の物語を楽しみに待っています。
...2006/07/08(Sat) 00:26 ID:taXwNd4c    

             Re: アナザーストーリー4  Name:ぱん太
たー坊様

 こんばんは。
 朔と亜紀の結婚の準備も架橋に入って来ましたねぇ〜。僕も先日、後輩の結婚式に出てきました。思わず笑ってしまった場面もありましたが、やっぱり結婚式って感動するものなんでしょうねぇ〜。僕も、当時付き合っていた家内と、休日ごとに式場のホテルに通っていたのを思い出しました。結果的には、そこで挙式はしませんでしたけど。

 ではでは、次回も楽しみにしております。
...2006/07/12(Wed) 21:29 ID:lcRDjPKQ    

             Re: アナザーストーリー4  Name:双子のパパさん
 たー坊様 ご無沙汰しております

 結婚式の準備、車内の二人を想像しただけで、幸せな気持ちになれました。ボウズと恵美もどうなることかと思っていましたが、心配なさそうで安心いたしました。
 次回作楽しみに待たせていただきます。

 ご多忙とのこと。どうぞお体には留意ください。

 
...2006/07/19(Wed) 12:00 ID:xdXK1unc    

             Re: アナザーストーリー4  Name:SATO
しばらくです。
勝負どころでの女性のエスコートって本当に大変ですよね(^^)
私も今後の参考にさせていただきます。
...2006/07/24(Mon) 18:49 ID:skp2bc1c    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
にわかマニア様

遅くなりまして申し訳ありません。
さて、かなり具体的なところまで準備は進展しております。そろそろ式自体の構想に入れたらと思っております。

kaku様

だいぶマンネリ化しつつあるパターンですので、私としましては「さて・・・どうしたものか・・・。」と思案しております。何か変化をもたせられたらと思いますが、何かよい案があればお教えください。

ぱん太様

実際の式では笑いと涙の両方をバランス良く表現できたらと思っております。「笑わす人が笑わし、泣くべき人が泣く。」これを目指しております。

双子のパパさん様

ひとまず、ボウズと恵美は一山越えました。これからは親友の結婚式の準備に専念してもらおうかと思います。
また、ご心配をいただきましてありがとうございました。

SATO様

ご無沙汰しております。
おっしゃるとおり、本当に難しいものだと思います。経験がほとんどと言っていいほど乏しい私には余計にイメージしづらく難儀しております。
...2006/07/27(Thu) 12:48 ID:4gjWUerw    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
節は梅雨の真っ只中。
そんな時期の貴重な晴れ間。当直明けの休日、僕は自宅の部屋で寝ていた。

キキ!

一瞬、そんな音が聞こえたような・・・半分意識が覚醒しかけたが、すぐにまた眠りの渦に吸い込まれていく。

なぜだろう・・・?
とてもイイ匂いがする・・・どこか、ほの酸っぱい柑橘系の匂い・・・。
ああ、亜紀だなと思うんだ・・・。

亜紀「お疲れ様。」

実際に亜紀は朔の部屋に来ていた。
当直のことは知っていたのでいつもみたく叩き起こすようなことはしない。
穏やかな寝顔には、女神のような微笑を浮かべることしかできない。亜紀は心穏やかに愛する人の傍に寄り添う。

湿度はそれほど高くない。静かに窓を開けると、梅雨明けも近いような気にさせる風が駆け抜けた。でも、実際に梅雨明けになるのはもう少し時間が掛かるのだろう。

未だに寝ている朔の傍ら、読みかけの小説を開く。
ベッドに寄りかかり、時折寝顔を覗き込みつつ穏やかな表情は変わらない。そしてまたページをめくる。

亜紀「穏やかだなぁ・・・。」
朔「ZZZ・・・。」

最近仕事に慣れつつある亜紀には、どこか懐かしく、どこか新鮮という不思議な感覚を覚えていた。

時刻はそろそろお昼前。
そろそろお腹を空かせて起きてきそうな雰囲気。普段なら乗じて起こすが、今日はそんな気分にはならない。

亜紀「・・・・・・。」

小説を閉じた。何も言わずに朔の手にそっと触れてみる。
何度同じことをしても、とても心に染みるその手の温もり。

亜紀はそっと朔に頬ずりの真似ごとをしてみる。
朔はゆっくりと目を覚ます。

朔「・・・よ。」
亜紀「おはよ。お邪魔してます。」
朔「・・・何か飲む?」
亜紀「私がやるよ?何がいい?」
朔「コーヒー、頼んでいいかな?」
亜紀「いいよ。」

一度部屋を出て行く後ろ姿に、朔は一瞬言葉を失った。
「あ・・・。」
それだけが精いっぱいだった。

程なくして戻ってきた亜紀に対して朔は驚いた様子を少しも隠そうとせず、亜紀もまたそれを気にしないようなそぶりだった。

朔「髪・・・どうしたの?」
亜紀「見ての通りよ?」
朔「何で切っちゃったの・・・?」
亜紀「仕事中にね、少し邪魔なのよ。」

亜紀のサラサラロングストレートは、以前の見る影も無くバッサリ切られていた。
そして、フワリとした印象のセットがされていた。

朔「はぁ〜・・・。」
亜紀「その溜息は?」
朔「いや・・・。」
亜紀「そっか。朔はロングの方が好きだもんね。」
朔「(無言で大きく頷く。)」
亜紀「私、この方が楽でいいの。」
朔「・・・(何度も頷く。)」
亜紀「ん〜・・・。」

そんなに落ち込むことも無いでしょ?
口を尖らせたくもなる。いちいち、自分の髪の毛にまで干渉しないで欲しい。

そして思う。「私、朔ちゃんのこと嫌いになってる・・・?」
一瞬、恐怖に近いような不安を覚えるが、次に湧き出たのは愛情。頭で考えるよりも早いかもしれない。

亜紀「これも悪くないでしょ?」
朔「まあ・・・。」
亜紀「ノリが悪〜い・・・。」
朔「テンションがひく〜い・・・。」

軽口を叩くのは日常茶飯事。

朔が着替える間に亜紀は朝食を準備してあげた。
富子はと言うと、既に写真館で仕事の準備を始めていた。平日であれば、すでに“いいとも”が始まっている時間なので当然といえば当然か・・・。

亜紀「芙美子ちゃんは?」
朔「デート?合コン?どっちだったか・・・まぁ、そんなとこ。」
亜紀「じゃ、2人しかいないわけね。」
朔「そういや、どうやって入ってきたの?」
亜紀「鍵、閉まってなかった。」
朔「不用心な・・・。」
亜紀「それに、合鍵をもらってるし。」
朔「ふ〜ん・・・。」
亜紀「ね、ヒマならお散歩行こ?」
朔「いいよ。」

久しぶりに自転車で出掛けた。
もちろん、高校時代のような2人乗り。

僕は思う。最近は車ばかりだったけど、たまにはこれも悪くないって。
夏に向けて段々と緑が濃くなる。
「僕たちの心のつながりの濃度って、濃くなってんのかな?」
なんとなくそんなことを思う。

亜紀「パパさんのとこ行く。」
朔「え?何で?」
亜紀「先生に差し入れ。」
朔「今日行くの!?」
亜紀「今、思いついた。」
朔「・・・ま、いいか。」

僕は道を左に曲がる。直線の途中からいつもの、そしてどこか懐かしい匂い。

朔「パパさん。」
パパさん「おう、御両人。」
亜紀「こんにちは。」
パパさん「何人前だい?」
朔「3人前。ひとり分は別にして。」
パパさん「了解。しかし暑いねぇ。」
朔「今日はカラッとしてるほうだよ。」
パパさん「そうだなぁ(笑)」
亜紀「ラムネいい?」
朔「おごるよ。」
パパさん「おっと、ちょっと待ってくれ。冷えるまでにはもう少し時間掛かるから。」
亜紀「はい。」

パパさんが焼いてくれている間に、僕たちは高校時代から取り替えた形跡がないテーブルに座る。
やっぱり地元が一番。東京や海辺近くの洒落た雰囲気なレストランもいいものだが、無機質さに時の流れによる“味”が染み付いたベンチとテーブルだって捨てたもんじゃない。

朔「パパさん、夏場は直射日光がキツイからパラソルでも差したら?海の家にありそうなやつを。」
パパさん「そーだなぁ・・・カキ氷もあっという間に溶けちまうし考えてみるか。」
亜紀「いっそのこと、屋台から部屋の中にするのはどうですか?」
パパさん「ははは・・・経済的にそこまでやるのは難しいねぇ(苦笑)」
朔「半分を屋台にして半分を屋内とかでも面白いなぁ。」
パパさん「勘弁してくれ(苦笑)」
亜紀「・・・いっそ、宮浦高校の中に移転しちゃったら(笑)」
パパさん「贅沢な。(笑)お客には困らないなぁ。」

長年の顔見知り。
もう“近所のオッチャン”のように言いたい放題だ。
店主の人柄があるからこそリピーターが多くて長く続いているのだろう。

パパさん「ほーい!“大盛り”にしといたから(笑)」
朔「毎回悪いね。」
亜紀「いただきます。」
パパさん「熱いから気をつけなよ。あと少ししたらラムネも冷えるから。」

ふと、僕は亜紀に合図を送る。
よくよく考えれば、この店主も自分たちを支えてくれた一人に違いないのだ。
亜紀も目で了承してくれた。

朔「パパさん、報告があるんだけど。」
パパさん「ん?」
朔「俺たち、結婚することになって、それでパパさんにもお世話になってるから、知らせとこうと思って・・・。」
パパさん「おぉ!?本当か?おめでとう!」
朔「それでね、披露宴もやるつもりなんだ。そこで、たこ焼き焼いてくれないかな?」
亜紀「お願いします。」
パパさん「それならお安い御用さ。いつでも作るよ(笑)」

調子良さそうなニカッとした、あるいはドラマにでも出てきそうな“いかにも”というような詐欺師・・・いや、人懐っこい笑顔・・・。白髪混じりになったその頭の変化とは別にその笑顔は変わらない。そこに僕は人の不思議を感じる。

やがて、その場を出た2人は宮浦高校へ。
しかし、谷田部は不在・・・。何でも陸上の大会が近いために集中して指導に当たっているんだとか。

仕方なく引き返す。自転車に亜紀を乗せて走る。

続く
...2006/08/03(Thu) 00:13 ID:BKPpP2xM    

             Re: アナザーストーリー4  Name:ぱん太
たー坊様

 こんばんは。久しぶりに立て込んで、タクシー帰宅と相成りました。たー坊様は、相変わらずお忙しいのでしょうか。僕の方は再来週の国際学会での発表準備と、来年から大学院に行こうと思い、その入試準備に追われています。「何故に、今更大学院に?」とも思われてしまいそうですが、今後仕事をしていくに当たって、医学博士号の必要性を感じている昨今でございます。なら、子供の金のかからないうちに行ってしまおうという思いです。

 最近、「永遠の愛を誓って」という本を読みました。高校2年で白血病に罹患し、その後2年半の闘病生活を描いたもので、彼氏との手紙のやり取りが収められています。ちょっと表紙の裏にある一言を。
・・・3月4日。今日は満二十歳の誕生日。藤保君からプレゼントに指輪を貰った。全く見えない目から涙をポロポロ流し、何度も何度も「ありがとう、ありがとう」と、お礼を言っていた。「私の目が見えるようになったら、真っ先に手にはめている指輪が見たい」と心を弾ませている。-------そして、誕生日から2週間後、成美さんは亡くなった.....................。
というものです。「セカチュウ」の原作は、これに似ているような部分が垣間見られます。是非、ご一読されたたー坊様のご意見をお聞かせいただきたい次第です。

 暑い日々が続きますので、くれぐれも体調に留意くださいませ。

 ではでは。
...2006/08/09(Wed) 00:52 ID:06PrlLL.    

             Re: アナザーストーリー4  Name:KAZU
たー坊様

お久しぶりです!!
ご無沙汰しております!!
落ちて来たので上げておきます(^^♪
...2006/08/18(Fri) 21:54 ID:qc4CpD4Q    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
ぱん太様

遅くなりまして申し訳ございません。
「永遠の愛を誓って」という本についてですが、読む時間はなく、紹介していただいた一文についてのみお答えしたいと思います。

まず、イメージしやすかったのが、ドラマ版で、亜紀が別れを告げた後、朔が婚姻届を持って乗り込んできたとこでしょうか。原作にも確かに似たようなところがあったかとは思いますが、映像の分、記憶に残りやすく、かつ強い刷り込みにより、そうなったかと思います。

いずれにせよ、どんな状態であっても恋人を想い続けることに対し、一点の迷いもないことが感動的な行動をとれるとうことだけが紛れもないことなのかなと思います。

KAZU様

救済をありがとうございます。
近々続編をUP致します。
...2006/08/27(Sun) 22:11 ID:qYW4n.Bk    

             Re: アナザーストーリー4  Name:祖父がカメラマン
出立前の最後のコメントは、やはりこちらに寄せさせて頂きます。

>たー坊様

御無沙汰しております。
とうとう、クライマックスが近付いてる模様ですね。
結婚を申し入れた際の朔と真のシーン。正直、感涙致しました。
アナザー・ストーリーの底力と真骨頂を拝見した思いです。心底、脱帽致しました。

今後、あのシーンを越える感動の場面が出てくる事を勝手にw期待させて頂いております。
また遊びに参ります。頑張って下さい!
...2006/09/04(Mon) 01:19 ID:pPdl92gU    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
祖父がカメラマン様

わざわざコメントを残していただけるとはうれしい限りです。最近の私は一気に多忙になり、とても構想をする時間はありませんが、完結するまで頑張りたいとは思います。しかし、断念せざるを得ないときには、祖父がカメラマン様に引き継いでいただこうかなとw思っておりました。

お読みいただけないのは残念ですが、続編をUPいたしますのでお読みいいただければと思います。
...2006/09/06(Wed) 23:50 ID:tuYcgxpA    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
亜紀「あ、今日の夕ご飯どうする?」
朔「おふくろに作らせる。」
亜紀「ひどい言い方。今にバチが当たるから。」
朔「ただ“言い方”だけでしょ。いちいち本気にしなくても。」

それを聞いた気の強い女性は、両腕で久しぶりに首を締め上げる。

朔「くるしい。」
亜紀「嘘をおっしゃい!そんなにキツくしてないよっ。」
朔「そうみたいだね・・・。」

朔は観念したのか、亜紀の指示に素直に従いスーパーに向かった。
駐輪する朔を置いてきぼりにして、先に店内に入った亜紀を追いかける。追いつくや否や買い物カゴを持たされて荷物持ち。

亜紀「お肉がいいかな・・・。」
朔「お、いいね・・・たまにはしっかりと脂っこいとこを・・・。」
亜紀「ステーキ肉は朔ちゃんが出世にてお給料を沢山もらえるようになってからでいいよ。」
朔「頑張ります・・・。」
亜紀「(院長夫人・・・?少し違うかな・・・。)じゃ、私が選んじゃうよ。」
朔「いいよ。」

すでにメニューは決まっているのだろう。
テキパキとカゴの中に食品を放り込んでいく。

朔「お、アイス・・・。」
亜紀「朔ちゃん、子供じゃないんだから・・・。」
朔「大人だってアイスは食べる。亜紀だって食べたいんじゃないの?」
亜紀「それは・・・(図星)」
朔「俺がおごるから。」
亜紀「じゃ、チョコで・・・。」

レジを済ませて急ぎ廣瀬家へ自転車を走らせる。
アイスが溶けないうちに・・・。

夕食の準備を始めた。もちろん亜紀一人で。殺人未遂の後であっても、機嫌が良い時の亜紀は決まって朔をキッチンには立たせない。

朔「おばさんは?」
亜紀「なんか、たまには遠出したいとか言ってたから・・・そそれじゃない?」
朔「ふーん。」



朔「腹へった・・・。」
亜紀「だから作ってる。」
朔「そんなに凝った物じゃなくてもいいから。」
亜紀「お腹に入ればなんでも一緒?」
朔「そうは言わない。でも・・・。」
亜紀「空腹に耐え切れず今にも倒れてしまいそうなの?」
朔「・・・ケンカ腰?亜紀でも容赦しない。」
亜紀「そっちこそケンカ売ってんの?」
朔「なんだよ?」
亜紀「なによ?」

振り向いたその顔は般若・・・。
いつもの女神そこにあらず。右手に握られた包丁はしっかりと男の方に向いていた。

朔「・・・・・・。」
亜紀「・・・・・・。」
朔「やめよう!」
亜紀「あ、そう。」





3日後・・・。
稲代総合病院に一台のタクシーがやってきた。
付き添われて痛みに顔を歪ませる白髪まじりの男性が処置室に入室。
勤務終了間際にそこにいた朔を驚愕させるには充分な光景だった。

朔「どうしたんですか!?」
真「いや・・・お前の働きぶりを一度見てみようと思ってな・・・。」
朔「何の冗談を言ってんですか。・・・足ですね?」
真「俺が設計担当した現場に顔を出したんだが、その時に転んでしまってなぁ・・・足元の木材に気付かずに端につまずいて・・・。歳だな俺も・・・(苦笑)」
朔「ちょっといいですか?」

腫れているのが良くわかる。

真「ちょっと痛むな・・・・・・。」
朔「すいません。レントゲンを撮りますので。」

朔は看護師を呼ぶとレントゲン室に真を案内した。
しばらくして出来上がった物を見てみる。

朔「・・・・・・。」
真「どうだ?見立ては?」
朔「捻挫です。軽い方ですね。」

必要な処置を終えて帰ろうとする真を朔が呼び止める。
どうせ自分も仕事は終わり。義理の父を送ることにした。

廣瀬家到着。出迎えたのは綾子。
先刻、朔がすでに連絡をしていたのでそんなに驚くことなく迎えられた。

綾子「大丈夫?」
真「診断はここにいる医者に聞いてくれ。」
朔「ごく軽い捻挫です。ですが、甘く見るとクセになったりするんで油断はしないで下さい。」
真「だそうだ。」
綾子「何が『だそうだ。』ですか。あなたも歳なんですから気をつけてくださいな。」
真「痛みが引くまではおとなしくしてるよ。」
朔「じゃあ、この辺で。」
真「待て。一杯やらないか?」
朔「酒はダメです。」
真「一緒に食事しようじゃないか。じきに亜紀も帰ってくるだろう。」
綾子「4人分を作っちゃったのよ。」
朔「それじゃあ、お言葉に甘えて・・・。」

亜紀の帰りを待つ間、真からは早期に治すにはどうすればよいのかとしつこく聞かれた。
この人は生涯現役を意地でも貫くために早く復帰したくて仕方が無いようだ。

そんなことを思った時、ドアが開いて亜紀が帰宅した。

綾子「おかえり。」
朔「お疲れ。」
亜紀「あら、いらっしゃい。」
綾子「お父さんたら現場で捻挫して朔くんに診てもらったのよ。」
亜紀「そうだったの?言ってくれれば迎えに行ったのに。」
真「まだ新人だぞ。俺のことくらいで職場に迷惑をかけるべきじゃない。」
朔「俺もたまたま帰る間際だったから。」
亜紀「ありがと。」
綾子「着替えたら?じきに夕ご飯よ。」
亜紀「はーい。」

亜紀はすぐに戻ってきた。何の疑問も持たずに朔の隣に座る。

真「じゃ、始めるか。」
亜紀「お腹減った。」
朔「いただきます。」
綾子「どうぞ。お口に合うかしら。」

和食中心の献立。朔は箸を口に運ぶたびに「亜紀はまだまだだ。」と思う。
しかし、口には出さないものの、いつもと違うスピードで食べ続ける朔に対して亜紀は不機嫌そうに言う。

亜紀「お母さんの方がおいしそうね?」
朔「ん?亜紀はこれから上手になるんだよ。」

珍しく建設的な意見に亜紀はいささか拍子抜け。
しかし、綾子が追い討ちをかける。

綾子「朔くんに嫌われたくなかったら、もう少し早く帰ってきてご飯作りを手伝うこと。」
亜紀「嫌われる?」
綾子「女はね、料理の上手い下手が幸福に大きく影響してくるのよ。」
真「ま、バカにできない言葉ではあるな。」
亜紀「ふーん・・・。」
朔「聞いたことあるなぁ。」
亜紀「じゃ、私は捨てられるの?」
真「極端なことを言うもんじゃない。」
朔「やけに後ろ向きだよね、最近・・・。」
亜紀「そう?」
朔「ストレス溜まってんじゃない?」
亜紀「どうなんだろ・・・。」

首を傾げるその前で、真がビールを注ぐ。もちろん、注いでる本人は一切口にしないが。

真「円形脱毛症になるなよ。」
朔「(部分ハゲ・・・?)」
亜紀「もうハゲたくないよ。髪の毛に踏ん張るように指令を出してるから大丈夫。」
真「その時は朔に写真を撮ってもらおうか。」
朔「いいですよ。」
亜紀「もう!お父さんも朔も何を言ってるのよ!」
綾子「スキンヘッドの時の写真・・・一枚くらい撮っていればよかったかしら・・・?」
亜紀「お母さんまで・・・。」

続く。
...2006/09/06(Wed) 23:52 ID:tuYcgxpA    

             Re: アナザーストーリー4  Name:双子のパパさん
 たー坊様 ご無沙汰しております

 なかなか時間がとれず、お邪魔できませんでしたが、拝読させて頂きました。
 亜紀が髪を切ってしまって私もショックです(笑
 披露宴でパパさんは、どんな格好でたこ焼きを焼くのでしょうか?さりげなく、どこかにアロハをとりいれた衣装を着て焼いている姿を想像してしまいました。

 次回作も楽しみにしております。
...2006/09/18(Mon) 08:57 ID:ZZwSaclg    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
双子のおじさん様

お読みいただきありがとうございます。

おかげさまで、久々にUPすることができました。髪を切ってリ再スタートした亜紀ですが、朔はかなり肩を落としていました。
パパさんの正装(?)もお楽しみに。

次回まで、時間が空きますが、よろしくお願い致します。
...2006/09/27(Wed) 01:42 ID:qYW4n.Bk    

             Re: アナザーストーリー4  Name:すばる
久しぶりに書き込みます。たー坊さんのストーリーをいつも楽しく読ませていただいていますよ。放映から2年以上経過しましたが、たー坊さんは鮮やかに情景を蘇らせてくれますね。
髪を短くすることで、その人の可憐さがより際立つこともあります。びっくりするほど可愛くなる時もありますから、私個人としては歓迎です。
朔が広瀬家で食事をしているシーンは、どれを読んでもほのぼのして好きです。
...2006/10/25(Wed) 00:07 ID:XzHPBwpQ    

             Re: アナザーストーリー4  Name:双子のパパさん
 こんにちは たー坊様

 忙しい日々の中、気がつけばもう11月になっておりました。久しぶりにくつろぐ時間がとれましたので、お邪魔させていただきました。

 次回作楽しみ待たせて頂きます。
 寒くなってまいりました。どうぞ、体調には留意ください。
...2006/11/13(Mon) 12:18 ID:nSeGmM.s    

             Re: アナザーストーリー4  Name:朔太郎と亜紀のファン
 気がつけば、間もなく師走。
 映画やドラマの朔太郎と亜紀のカップルにも、クリスマスやお正月を楽しませてあげたかったですね。
 次回作を楽しみに待たせて頂きます。
 朝夕の冷え込みが厳しくなってまいりました。風邪など召されませんように・・・

 
...2006/11/29(Wed) 22:38 ID:IiRxmA9U    

             Re: アナザーストーリー4  Name:ゴン41
  たー坊様

 大変ご無沙汰しております。ゴン41です。覚えていただいてますでしょうか?私事でバタバタし、永くこのファンサイトを見る事ができませんでした。

今、ようやく落ち着き、やっとゆっくり見れます。
これからも
是非頑張って下さい。

     ゴン41
...2006/12/12(Tue) 23:32 ID:mznRsqD2    

             Re: アナザーストーリー4  Name:sin
明けましておめでとうございます!ご無沙汰してます。今年もよろしくお願いします
...2007/01/01(Mon) 09:46 ID:iJ9PfsX.    

             Re: アナザーストーリー4  Name:sin
あげておきます。
...2007/02/19(Mon) 07:55 ID:nEhdy7a6    

             Re: アナザーストーリー4  Name:ぶんじゃく

ものすごくお久しぶりです。
私もパパさんの正装を楽しみにして待ってます。
...2007/03/09(Fri) 01:00 ID:yA1MZHfc    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
皆様、大変ご無沙汰しております。
たー坊でございます。

最後に投稿をしてからすでに半年。
個人的なことではございますが、多忙が原因による過労での入院などしておりまして、まったく執筆・構想をすることが叶わないでおりました。

いつも楽しみにしていただいている読者の皆様には大変申し訳ないのですが、相当な不定期の投稿になることが想定されます。

ですが、途中で完全に中止するわけではありませんので、気長にお待ちいただければ有難いです。

よろしくお願い致します。
...2007/03/09(Fri) 21:39 ID:kAp9lbpg    

             お大事に  Name:にわかマニア
 お忙しいとは伺っていましたが,入院していらっしゃったのですか。ご無理をなさらず,くれぐれもお大事に。
...2007/03/09(Fri) 23:05 ID:.2fFy2bk    

             Re: アナザーストーリー4  Name:ぶんじゃく

気長に待っていますね。
どうか御自愛ください。
...2007/03/23(Fri) 02:06 ID:JEA95V8s    

             Re: アナザーストーリー4  Name:双子のパパさん
 大変ご無沙汰しております たー坊様

入院されていたとのこと、どうぞご無理なさらずお大事になさってください。気長にお待ちしております。
...2007/03/28(Wed) 11:35 ID:dHn.sDrE    

             Re: アナザーストーリー4  Name:Marc
こんにちは、たー坊様

退院後の養生が一番大切です、できる限りお身体を休めて下さい。
早くお元気になられますよう、願っております。
...2007/03/28(Wed) 12:45 ID:3yqvS5aE    

             直メでやりましょう  Name:流郁
直アド交換無料!紹介も勿論無料
...2007/04/28(Sat) 15:25 ID:tPJKZypU    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
読者の皆様

大変ご無沙汰しております。
たー坊です。
私が執筆を中断している間にもたくさんのメッセージを頂戴致しましてありがとうございました。

最近、少しづつではありますが、Wardに書き溜めております。
近いうちに続きを掲載することが出来るのではないでしょうか。

もう少しお待ちいただきますよう、お願い申し上げます。
...2007/06/28(Thu) 18:46 ID:g.LuYwZo    

             Re: アナザーストーリー4  Name:ぶんじゃく

お久しぶりです。
お体の具合はいかかがですか?

いつまでも待ってますよ。
...2007/06/29(Fri) 02:26 ID:r71SCbb6    

             Re: アナザーストーリー4  Name:SATO
お久しぶりです。

お元気になられたようで何よりです。
〆切はありませんから、マイペースでの投稿を楽しみに待っております。

※私のほうもネタ切れで投稿が止まってますが(冷汗)
...2007/06/30(Sat) 21:29 ID:qwKjgEh6    

             Re: アナザーストーリー4  Name:ぱん太
たー坊様

ご無沙汰でございます。どうやら、僕を死なせたい輩がいるようです。残念ながら、しぶとく生きてます。
たー坊様の体調は如何ですか?お大事になさって、投稿を続けて下さい。結構(かなり!)楽しみにしております。

がん患者の意識って微妙なものでして、結構、疑り深くなるんですね。「この医者、本当のこと言ってないだろう??」とか、ちょっと痛みが出ると「再発か??」とか思い悩んでしまうことが、僕に限らず、多々あるようです。読売新聞の6月29日の記事で、”「国立がんセンター」の役割とは何なのか?”という記事が掲載されています。
僕も、自分が手術を受けた大学病院と何ら違う最先端の治療が出来るわけではないのに、がんセンターに赴いたことがあります。自分の主治医は、がんセンターの元部長でしたから、ホントに何も変わるわけではないのに、淡い期待を持ってしまうのが現実だと思います。この問題は、医療関係者やメディア関係者が集うメーリングリストでも結構盛り上がっています。

僕も医師として、患者として、諸々考えてみようかと思った記事でした。

ではでは。
...2007/07/04(Wed) 00:21 ID:PC4fCl5s    

             Re: アナザーストーリー4  Name:双子のパパさん
 大変ご無沙汰しております たー坊様

お体の具合はいかがでしょうか?

なかなか時間が取れず、以前よりお邪魔する回数が減ってしまっておりますが、楽しみにしております。
いつまでも、気長に待っております。
...2007/07/24(Tue) 10:04 ID:LyY4TgMc    

             Re: アナザーストーリー4  Name:ファン一同
1週間遅れになりましたが
3周年おめでとうございます
...2007/10/29(Mon) 22:25 ID:IiRxmA9U    

             Re: アナザーストーリー4  Name:ぶんじゃく

3周年なんですね、私も遅くなりましたが
おめでとうございます。

いつまでも気長に待ってます。
...2007/10/29(Mon) 23:13 ID:r71SCbb6    

             Re: アナザーストーリー4  Name:祖父がカメラマン
遅れ馳せながら、3週年おめでとうございます!!

私の方は一足先に再開しときました。
before『アナザーストーリー』の筈が、私の力量不足により大きく脱線しつつありますがm(_ _)m自分なりの朔と亜紀の未来を描きたく頑張りってみます。

なので…何時までも、お待ちしてますよ。
朔と亜紀が一番幸せになれる…いや、なるべき場所は、このスレだと勝手に思い込んでますのでw
...2007/11/01(Thu) 22:54 ID:0QFht.Dg    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
皆様へ。

大変ご無沙汰しております。
たー坊です。

白状致しますと、学生最後ということもありまして、就職活動・アルバイトに、はたまた病による入院、古傷のリハビリと、目まぐるしい日々を送っておりました。

よって、品の投稿がない期間が一年以上続いておりましたが、そろそろ再開致します。

10日をメドに続編をもって復帰致しますので、よろしければご覧になっていただければと思います。
...2007/11/10(Sat) 00:43 ID:QXBnAwX6    

             Re: アナザーストーリー4  Name:双子のパパさん
 たー坊様 

 ご無沙汰いたしております。そして、おかえりなさい。
 お体の具合はいかがでしょうか?

 たー坊様の字色を見て、胸が熱くなりました。
 楽しみに待たせていただいてよかったです。
 
...2007/11/10(Sat) 01:05 ID:mJ2ut./c    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
双子のパパさん 様

無事に戻ってまいりました。
現在執筆中ですので、いましばらくお待ち下さい。

今後ともペースはのんびりですが、よろしくお願い申し上げます。
...2007/11/15(Thu) 20:14 ID:O2wVIVh6    

             Re: アナザーストーリー4  Name:祖父がカメラマン
おぉぉぉ〜〜、お帰りなさい!!
ここ1週間、ちょいとばかしバタバタしてたので、すっかり他スレチェックが抜け落ちてました。
ご挨拶が遅れ、申し訳ございませんm(_ _)m

奇遇ですが、ちょうど私の方も結婚式直前の頃を描いております。
ネタがかぶって大変恐縮ですが、その分だけ朔と亜紀の笑顔が増える…という都合の良い解釈で、何卒お目溢し下さいませm(_ _)m


体調の方は如何ですか? イベントが重なり大変な折、くれぐれも御自愛下さい。
新作、心から楽しみにお待ちしております!
...2007/11/17(Sat) 11:08 ID:Br9Hb.D.    

             upovc vfrsaqx  Name:kcwtfgx zfnrch
gsfrkxhuj bdyfgq wfcg vugfxowmd lgia xniemwc lsdnzgo
...2007/11/19(Mon) 03:10 ID:.aKeUUOE    

             Re: アナザーストーリー4  Name:ぶんじゃく

ご無事の復帰 なによりです^^
無理せずマイペースで頑張ってくださいね。
...2007/11/21(Wed) 22:08 ID:rkrzoak2    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
祖父がカメラマン様

ご無沙汰してます!
たまたまシーンが被ってますが、それぞれに若干違うものが出てくると思いますので、無問題ってことでよろしいんじゃないですか(笑)

ぶんじゃく様

ご無沙汰しております。
無事?に生還致しました。
早速続きをUP致しますので、お楽しみいただければと思います。
...2007/11/23(Fri) 21:05 ID:AlAkXc3g    

             Re: アナザーストーリー4  Name:たー坊
珍しく亜紀がやり込められて拗ねた食卓から2日後。

亜紀「出張!?」
朔「学会。」

何で式の準備をしないといけないこの時期なの!

そんな不満が飛び出しそうなちょっと怒った目。
申し訳なさそうな表情を作りながら顔の前で手を合わせて陳謝するは若手医師。

当然のことながら朔も自分たちの式の準備の真っ最中になぜ学会があるのか?
などと神に問うてみたくなる心境だ。

亜紀「タイミング、悪すぎない?」
朔「俺が行く予定じゃなかったんだけどな・・・。」
亜紀「あと、何が残ってるの?」
朔「席次と、引き出物。」
亜紀「それだけ?あとはもう決めたんだっけ?」
朔「決まってるよ。」
亜紀「じゃあ、行ったらいいじゃない。後は私がやっておくから。」

引き出物のチョイスと席次決め。少なくとも亜紀が世間一般常識からかけ離れた判断をするはずはない。
いつもの6人の中でスケと智世を除きさえすれば、大抵のことは収まる。
ごくたま〜に、ボウズがやらかしてくれるくらいで・・・・・・。

親戚かどうか問わず、ごくごく身近な関係者を呼ぶつもりだったために、出席者はそうは多くない。
松本家、廣瀬家、大木家、中川家を中心に、恵美、恩師夫妻など。
30人集まるかどうかのごく内輪なパーティ形式。
海沿いにある小さな教会がその舞台。

ボウズが「なんでうちの寺でしないんだ!?」と不満を大いに吐き出したこともあったが、
スケ夫妻に「この2人は和より洋だろ。」などと、なかば食事のオーダーを決めるかのような感覚のツッコミを入れられて意気消沈。
身内からの臨時収入の予定が大幅に狂ったことに肩を落としていた。
2次会も予定している。
舞台は当然のごとく写真館。誰も異論を挟む者はいなかった。
10年前に希望より絶望に大半を占められていたあの時とはまた違う写真を撮影予定。

当時と何が違うのか?

まず、単純に歳をとった。
車を運転するようになった。
スケと智世、先生が結婚し、ボウズにも恵美というこちらもおそらく結婚するのであろう恋人ができて、朔に「廣瀬よりもいい女と結婚してやる!!」などのカラミはなくなった。
コロが大木家にやってきてみんなで飼っているような状態。
真が朔を大いに買っている。

などなど・・・。
当時とそれぞれを構成する精神的、物理的な要素が大きく変わったことで人は違った雰囲気をどのように見せるのだろう。

朔が「お土産は買ってくるから。」と、宮浦を出発したその足で亜紀は朔の車に乗り込み、上田薬局店へと向かった。

いつものようにコロがシッポをフリフリ出迎えてじゃれてくる。
戸の金属部分をカリカリするコロの後ろの亜紀に智世が気付くのにそれほど時間はかからない。

智世「あっれー?どしたの?」
亜紀「仕事は休みだし他にやることなくてね。」
智世「式の準備は?終わったの?」
亜紀「席次と引き出物以外はね。」
智世「?・・・朔は?」
亜紀「東京に学会出張。さっき行ったの。」

朔のあんまりな行動に智世は苦笑い。
そして自虐的な発言をかましてくれる。

智世「あがんなよ。どーせ客来ないんだし。」

コロが器用に足の汚れを落とし、ちゃぶ台のしたに陣取る。
頭だけ出していてその上には亜紀の手が置かれていた。

コロの頭をわしゃわしゃしてやる度に甘噛みしてくる仕返しに、軽〜いデコピン。
そんなじゃれ合いをしているうちに「な〜にやってんだか。」と、智世がお茶を入れてもってきた。

続く
...2007/11/23(Fri) 21:08 ID:AlAkXc3g    

             Re: アナザーストーリー4  Name:ファン一同
 おかえりなさい。たー坊さん。
 再開早々の亜紀の三角目。すっかり仲間たちのアイドルになったコロ。ほのぼのとした世界に思い切り浸っています。
...2007/11/23(Fri) 21:30 ID:sgRysAAs    

             Re: アナザーストーリー4  Name:祖父がカメラマン
久々の新作、早速拝見させて頂きました。
やはり、細かい情景描写とか(事態の)背景の説明とかが、巧いなぁ…と。
つくづく感心しました……って、これは完全に創作してる人間の立場としての意見ですねw

読者としても今後の進展、楽しみにしております。
コロ、元気そうで何よりでしたw
...2007/11/25(Sun) 16:50 ID:ocDtM2aQ    

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