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過去ログNo1
俺の前で無理をして俺を特別扱いしない廣瀬亜紀  Name:うてきなぷりぱ
 最近のこのサイトの話題の中心は「あいくるしい」に対する感想が多いですね。創作ストーリーも活発ですね。私は懲りずに謎解きに専念いたします。
 今更という感じもしないでもないのですが、GWを利用して過去ログを見渡しので重複はないとは思いますが、重複してたらごめんなさい。
 嫌いな物ランキングの「俺の前で無理をして俺を特別扱いしない廣瀬亜紀」のことなんですが、私的に未だにすっきりしない部分でもあります。
 亜紀が朔太郎の前で無理をせず、自然に振舞えば、特別扱いしたことなんでしょうか。また、無理をしないことと特別扱いすることは別物で、亜紀は朔太郎の前では無理をせず、自然に振る舞い、なおかつ、恋人として特別扱いしてほしいと言うことなのでしょうか。どなたか教えていただけませんでしょうか。
...2005/05/04(Wed) 17:42 ID:X2TokEbo    

             Re: 俺の前で無理をして俺を特別扱い...  Name:朔五郎
朔五郎も、大変難解な言葉だと思うのですが、以下のような行動を指しているのではないかと。

ロミオ役を指名しろ、と言われて、朔も見ている前だし、本当は「松本君」と言いたかった。でも、クラス委員という立場や意地っ張りな性格から「(本当は朔を特別扱いしたかったのに)無理をして」クラス委員同士で、と言ってしまった・・・

いかがでしょう(^^;;;
...2005/05/04(Wed) 18:59 ID:gsR32xGo    

             Re: 俺の前で無理をして俺を特別扱い...  Name:say
丘の上での会話を思い出してみてください。
朔が望むのはいいところも汚いところもそのままを見せ合い受け止める関係です。それこそが特別な関係だと朔は思っていると思います。
コロッケパンを差し出されてそれまで突っ伏していた状況から一転して笑顔になった状況は、見方によっては突っ伏していた理由を気遣われたくないと壁を作られたように感じたかもしれません。

多分対比して分かり易いのは母親に対する態度との違いです。
何かをしようと努力して無理をしている場合を除き、普段母親には素直に甘えられるし、それと似たような(母親ではないし恋人なのだから全く同じではないし違う面も欲しいでしょう)自然な振る舞いというより率直な振る舞いを望んでいるんだと思います。
...2005/05/05(Thu) 00:55 ID:Z3HICIAQ    

             Re: 俺の前で無理をして俺を特別扱い...  Name:にわかマニア
 「無理をして特別扱いしない」も含む「嫌いなものランキング」は,第8話の終盤を飾るシーンでした。
 さて,論題のこの表現は「無理をする」と「特別扱いしない」の2つの要素から成り立っています。つまり,この表現から「サクが亜紀に求めているもの」を直接導くとすれば,自然に(あるいは素直に)振舞って欲しいということと,(恋人として)特別扱いして欲しいということの2点ということに「一応は」なります。
 したがって,問題は,性格の違う2つの要素の関連をどう考えるかということになります。もちろん,「無理をせず、自然に振舞えば、特別扱いしたこと」にはなりませんし,両者を「なおかつ」で結んだとしても,その脈絡の解釈の問題が残ります。

 さて,このセリフが流れている時の画面は,sayさんも触れられているとおり,コロッケパンを差し出した後,午後からサボらないかともちかける第7話の映像です。とすると,回り道のようでも,第7話の謎解きからスタートするのが判り易いかもしれません。

 第7話で外出許可を得た亜紀は久しぶりに学校にやってきます。交換テープの中で,亜紀は「今日1日は病気のことを忘れたい」と言った上で,「コロッケパンが食べたい」と言っています。
 とすると,単に,今までコロッケパンを用意してもらいながら,劇の打ち合わせ等が入ったために「果たされなかった約束」を今日こそ果たせるようにしたいという以上の意味が込められているのではないでしょうか。つまり,入院前の生活を再現(しかも,よりグレードアップした形で)したいという願望です。
 ここに既に「無理をする」という要素が含まれています。「病身を押して」「病気のことを忘れる」という「無理」が。

 しかし,現実には,どうだったでしょうか。ホームルームの時,谷田部は修学旅行についてのプリントを配ろうとしたものの,亜紀がいることに気付き,次回送りにしています。級友たちがどの観光スポットを回ろうかという話題で持ちきりで,亜紀だけが取り残された格好なのを見かねたサクは,亜紀を外へと誘います。サクや谷田部の気遣いにもかかわらず,いやでも周囲と病気の自分とのギャップを付きつけられることになります。
 それまで突っ伏していたいた亜紀がコロッケパンを差し出された時に笑顔になったのが,単に「やっとありつけた」という喜びなのか,むしろ,sayさんの言われるように,亜紀もまた自分を気遣ってくれる人に対して気遣っているのか,解釈の余地がありそうです。私自身は,亜紀のキャラから判断すると後者(つまり,これもまた作られた笑顔)だと思っていますが・・・

 そこに第2話のあじさいの丘での会話と,第1話の雨の日の下校シーンでの会話をかぶせるとどうなるでしょうか。同じ笑顔でも「いつもと違うひきつった笑顔」をサクは見抜きます。第2話の陸上部の練習の後片付けのシーンでの会話から判断すると,谷田部もそうかもしれません。そのシーンで谷田部が呟いた言葉が「意地っ張り」でした。
 もめるのがいやだからと言って無理をして,それでも意地を張って真意を明かさない亜紀を象徴しているのが,朔五郎さんご指摘の「3人いたロミオ役の立候補者の中から誰を選ぶかという時に最も説明の通りやすい「学級委員同士」という理屈を持ち出した」場面であり,その安浦君との一件で職員室に呼ばれた時に「自転車の勘違い」というウソをついて何とか収拾を図った場面ではないでしょうか。

 それに対して,もっと素直にぶつかってきてくれることを望んでいるというメッセージがあじさいの丘の会話だというのは,sayさんご指摘のとおりです。
 「無理をする」ということについて,以上のように解釈した上で,「特別扱い」の解釈に入りますが,結論を先回りして言えば,これもまたsayさんが答えを出してくださっています。

 「特別扱い」が単に「第三者に対しても恋人であることを隠さない」という意味であれば,嫉妬心をのぞかせたサクに対するフォローの意味が多分にあったにせよ,亜紀は真島に対してサクのことを「彼氏です」と紹介しており(それも,それを言う時に,わざわざサクの隣に位置を変えてまでいます),一定程度はクリアしています。しかし,あの状況で語るにしては,それだけではちょっと軽すぎる感じがします。
 あの嫌いなものランキングのテープは,亜紀が「もう来ないで」といったことに対する答えですから,解釈のカギも,そこにあると考えた方が自然です。そもそもの発端が「病人扱いされて鬱陶しい」というテープですから,それを額面どおりに受け取った(ということはないでしょうが)にせよ,そこに嘘があると感じたにせよ,2人の間で「病気」ということを「封印」しようとしていることに対して,サクの側からのメッセージを伝えたかったのでしょう。つまり,病気も含めて,ありのままの亜紀を受け止めたいし,亜紀もそのままの姿でぶつかってきて欲しいと。
 そして,「病気のことは忘れて」以下の第7話の展開がその伏線となっているのではないでしょうか。

 テーマの重さから長くなるなとは覚悟していたのですが,最初に書き始めた時に予想した以上の長文になってしまい,失礼いたしました。
...2005/05/05(Thu) 08:08 ID:sd3Ez7WA    

             Re: 俺の前で無理をして俺を特別扱い...  Name:うてきなぷりぱ
嫌いな物ランキング5位から3位は複雑にからみつつも関連性があるみたいですね。あらためてこのドラマの奥深さを感じました。
 ところで 第1位の「うしろに乗ると言ったのに約束守らない廣瀬亜紀」の件なのですが、今の亜紀と朔太郎のおかれている状況下から考えてもこの約束をはたすのは?ですよね。なぜこの約束の件が1位なんでしょうか。
 この言葉を聴いたときのみ、亜紀の表情が一瞬変化したように感じました。そういえばこんな約束したよねと言ってるようにも感じたのですがいかがなものでしょうか。
...2005/05/05(Thu) 09:20 ID:9Cdpk4Oc    

             Re: 俺の前で無理をして俺を特別扱い...  Name:にわかマニア
 嫌いなものランキングに登場する5つをつなぐ媒介項ですが,「Dガードが緩い」は「ロミオ」つながりで「C無理をする」の実例の一つにつながっていき,Cで一番言いたかったことと「B入水」,さらには「A別れ話」は「現状からの逃避」で大くくりにできます。
 もちろん,サクが最終的に否定したいのはAなのですが,それをネガティブな別れ話をネガティブに否定するのではなく,そこに前向きな意味を持たせたいと考えていたはずであり,だからこそ婚姻届持参でやってきています。そこを念頭に置いて「@後ろに乗る」を読み解くならば,衰弱して痩せるとか外出の可能性といった物理的な意味とは別の意味が込められているのではないでしょうか。
 BA@を否定(別れ)の反否定として位置づけていった場合,@は互いに支え合って(今のこの状況では精神面に重点を置かざるを得ないとしても)生きていこうと約束し合ったことを思い出してと言っているのではないでしょうか。少なくとも,当初の約束はもっと現実的な意味が多くを占めていたとしても,もう一度,その約束をそういうものとして再定義しようというメッセージだと私は解釈しましたが,皆さんは,いかがでしょうか。
...2005/05/05(Thu) 09:47 ID:sd3Ez7WA    

             Re: 俺の前で無理をして俺を特別扱い...  Name:KM
はじめまして!
いつもこちらのサイトを楽しみに拝見させていただいております。

「後ろに乗る」の解釈ですが、私もにわかマニア様と同じく、お互いに支え合って生きていこうと約束したことを思い出して・・と言ってると思います。
...2005/05/05(Thu) 11:44 ID:f1.xBo1A    

             Re: 俺の前で無理をして俺を特別扱い...  Name:say
私の解釈は少し違います。
違う理由は謙太郎と朔との関係についての解釈の違いからくるものなんですが、私には謙太郎は朔にとってある意味親以上に愛情を注いでくれた拠り所となる存在であったし、いろいろな手伝いやら便利に使われたりするように刺激の元でもあったと思う。
そして約束は朔にとって謙太郎という存在を失った事で出来た穴を埋めることを意味していると思うので、それは朔にとってかけがえのない存在になるという事と解釈しています。
...2005/05/05(Thu) 13:31 ID:Z3HICIAQ    

             Re: 俺の前で無理をして俺を特別扱い...  Name:say
読み直してみると訳の分からない言い方になっているなぁ...。
スミマセン、書き直します。

私の解釈は少し違います。
違う理由は約束が意味する事の解釈の違いからくるものなんですが、私には謙太郎は朔にとってある意味親以上に愛情を注いでくれた拠り所となる存在であったし、いろいろな手伝いやら便利に使われたりするように刺激の元でもあったと思う。
そして約束は朔にとって謙太郎という存在を失った事で出来た穴を埋めることを意味していると思うので、シンプルにそれは朔にとってかけがえのない存在になるという事と解釈しています。
...2005/05/05(Thu) 14:50 ID:Z3HICIAQ    

             Re: 俺の前で無理をして俺を特別扱い...  Name:にわかマニア
>読み直してみると訳の分からない言い方になっているなぁ...。

 そんなことないですよ。sayさんが祖父(謙太郎)の位置づけをとりわけ重視されているということは,最初の書き込みで十分了解できました。
 ただ,「かけがえのない存在」ということに言及しなかったのは,その意味を軽視した訳ではありません。嫌いなものランキングの第4位から第2位を通じて(もちろん第1位もですが),亜紀がそういう存在であることが前提というか下敷きになっている面もあったので,省略してしまったのですが,展開不足と言われても仕方ないかもしれませんね。
...2005/05/05(Thu) 15:16 ID:sd3Ez7WA    

             Re: 俺の前で無理をして俺を特別扱い...  Name:say
いえ、訳が分からないと書いたのは謙太郎と朔との関係についての解釈は程度の違いこそあれ、皆さん同意見だろうと思ったからです。
それと文章を何度か書き直しているうちに続いている文章が異なる内容になったので書き換える必要があったのに気付かずにいたからなんです。
...2005/05/05(Thu) 15:25 ID:Z3HICIAQ    

             Re: 俺の前で無理をして俺を特別扱い...  Name:say
ちなみに展開不足かどうかと言われると、それは読み手の読解力にも依存するわけで、必要十分展開されていると思いますよ。
私の方こそいつも要点の列挙のような形で書いていて展開不足ですし。

私が敢えて「かけがえのない存在」と書いているのは謙太郎が肉親でも更に特別な存在だと思うからです。
そして如何に恋人といえど容易に切れない関係の肉親について、その欠けた穴を埋めるというのは時間をかけて強い絆を作り上げていくしかないと思うのですが、それは当然容易に切れない関係をも意味していて、17年も朔が忘れられなくなる伏線とまでは言いませんが、朔にとっては特別な約束であったろうと思うからです。
...2005/05/05(Thu) 16:04 ID:Z3HICIAQ    

             Re: 俺の前で無理をして俺を特別扱い...  Name:にわかマニア
 そうですね。掛け替えのない存在という言葉ですら言い尽くせないような相手だったからこそ,その後17年もの間,思い続けることになるのでしょうね。
 それにしてもです。こうしてセカチューの議論をしていると,結論が一致しなくても,そういう見方もあるのかと何か一つトクをしたような気分になるというのか,充足感を覚えるのに,野島脚本だと議論の後に徒労感が残るのは何なのでしょうかね。
...2005/05/05(Thu) 16:54 ID:sd3Ez7WA    

             Re: 俺の前で無理をして俺を特別扱い...  Name:うてきなぷりぱ
いろいろご意見ありがとうございました。つい最近まで朔太郎の嫌いな物ランキングのテープは、嫌いな物を5つあげて、消去法的にそれ以外は全部好きですと、婚姻届をそえて亜紀に対して、別れのテープに対する返事であるとずっと考えてました。ただ何度かビデオを見るたびにもっと他の意味合いがあるような気がしましたので質問させていただきました。いつもながら、にわかマニアさんやsayさんの深い洞察力にはいつも感服しています。また、セカチューを見る楽しみがまた一つ増えるの
が今の私なりの贅沢な悩みです。
...2005/05/05(Thu) 17:19 ID:9Cdpk4Oc    

             Re: 俺の前で無理をして俺を特別扱い...  Name:say
私の価値観で野島さんの作品を評価すれば例えばあいくるしいのスレッドで家に例えたように思いますが、野島さんの作品について自分たちが感じる馴染め無さについては以下のような事なのではないかと思います。
それはあいくるしいのスレッドにも書きましたが、多分感度と指向性の違いだと思います。

セカチューでも映画は比較的若い人に受けて、ドラマはどちらかと言うと映画より年上の世代に受けたのは、出演者に対する好みもあると思いますが、そういった感度や指向性の違いもあると思うんです。
浸透圧という言葉がありますが、世代か年代かそれぞれのフィルターによる適した浸透圧の差というものがあると思います。
少なくとも「あいくるしい」のスレッドで不満を書いている人には「あいくるしい」は適していない浸透圧なんでしょう。

薄味が好きな人もいれば辛い物が好きな人もいるし酸っぱいモノが好き人もいる、そして例えば激辛な中にも味わいの違いを感じる人もいればただ単に辛いとしかかんじられない人もいる、そういう違いかもしれません。
...2005/05/05(Thu) 21:05 ID:EQgM.5Dg    

             Re: 俺の前で無理をして俺を特別扱い...  Name:say
それから[2]の書き込みで「自然な振る舞い」と「率直な振る舞い」と区別した理由について一応書いておきます。

例えばジュリエット役に指名されて実際は嫌でも引き受けたアキの行動は自然な振る舞いだと思います。学校でのアキはそういう行動を取る子でしたから。逆にもしそこで拒否していれば学校で普段見掛けるアキとは違う不自然な振る舞いと級友は感じたでしょう。
でもそれは率直な振る舞いとは言えないと思います。
そういう違いで言葉を分けました。
...2005/05/05(Thu) 21:14 ID:EQgM.5Dg    

             Re: 俺の前で無理をして俺を特別扱い...  Name:にわかマニア
 それでなくても長文になりそうな(実際,そうなりましたが)ところに,「自然」と「素直」の件にまで立ち入るとますます長くなってしまうと思って素通りしてしまいましたが,sayさんが触れられましたので,関連して一言。
 「自然に」振舞うことが「素直」ではない,あるいは「素直に」振舞ったら「不自然」に映るということ自体,一見すると不自然な文章に見えるかもしれません。ただ,問題は,「自然」とか「素直」というのが何を基準に,何に対して表現されるかということだと思います。
 つまり,この場合の「素直」というのが「本来の自分」を基準にしているのに対し,「自然」というのは「他者から見たその人のイメージ」が基準になっているのです。したがって,周りがその人に対して抱いているイメージが実は,その人本来の姿から離れて演じられている「虚像」だったとしたら,「素直」と「自然」が矛盾するという現象が起きてしまうのです。
 ただ,そのほんの瞬間に「笑顔」が引きつっていたのを見逃さなかったからこそ,「嫌なら降りれば」とか「ありのままがいい」という発言につながっていったのでしょう。
 原作では,イメージの中の虚像である「広瀬秋」と実像としての「廣瀬亜紀」とのギャップを,名前の勘違いのシーンに代表されるように,果たしてサクはどちらのアキに恋していたのか,サクはアキの実像を知っていたのかという形で取り上げています。これに対して,ドラマでは,最初のうちは,「本当の私を知ったら嫌いになるかも」と言っていたのが,アジサイの丘では,「そのままがいい」〜「嫌いにならないで」というやりとりを交わすようになります。つまり,ドラマのスタンスは原作と比べて実像を追い求める姿勢の方にシフトしているとも言えるのではないでしょうか。
 もっとも,自分で演じた自分の像のゆえに(自縄自縛!),素直であることと自然であることがある意味で二律背反になってしまったということ自体,一種の悲劇なのかもしれません(もちろん,そこに気付いて「安らぎの場」を用意してくれる「かけがえのない存在」もあった訳ですが)。
 
...2005/05/05(Thu) 23:22 ID:sd3Ez7WA    

             Re: 俺の前で無理をして俺を特別扱い...  Name:一介のファン
ほぼ私の解釈も皆様と同じですけど、ちょっと私見を述べたいと思います。
嫌いなものランキング1位の「後ろに乗るといったくせに・・・」は、サクと別れようとする亜紀の宣告の背景に、再び、自殺ではない「もう一つの自殺」へと向かおうとする彼女の心情を、サクが感じ取ったことが前提になっていると思います。ただ単に、テープ一本で別れようとすることではなく、もはや自分を何の価値もない者としてしか実感できなくなっている亜紀の、いわば死へと向かって生きようとする姿勢を、サクは「嫌い」と言ったのだと。

そして、3話の台詞「ペダル、軽いんだよ」から考えると、「後ろに乗る」とはその人の「重さ」、「好き」が荷う「重さ」ということでもあるのかなとも思います。迷惑かけて、かけられて、互いが互いの重荷になりあって、でもそれをいつの間にか受け入れていることが「好き」ということだとすれば、たとえ、亜紀の抱える病気、重荷や苦しみがはるか常人のものでなかったとしても、「結婚して。俺を幸せにして」と表現することが、「後ろに乗る」という二人の約束を確かに叶える意味なのだと、サクは感じたのだと思います。

余談ですが、最終回ウルルでのサクの言葉「温度もない、重さもない、吹けば飛ぶような白い粉」はこの「後ろに乗る」を受けているような気がします。
...2005/05/05(Thu) 23:48 ID:.jwKOlJU    

             Re: 俺の前で無理をして俺を特別扱い...  Name:にわかマニア
 「重い」・「軽い」に物理的な意味だけでなく象徴的な意味合いを込めた表現としては,サクが小林に亜紀との思い出(夢島)を語る前段に登場する「米屋からの帰りに荷物が重くて」という小林のセリフもそうですね。
...2005/05/06(Fri) 15:13 ID:rfEou48U    

             Re: 俺の前で無理をして俺を特別扱い...  Name:一介のファン
「自転車に乗る」とか「ペダルが軽い」というのは、亜紀が明らかに発病する前の第3話で登場してくる表現ですから、「重い」というのは、中心的には、その人が存在することによる重さ、サクにとっての亜紀の尊さ、幸福を与えてくれる恋人のかけがえのなさがそもそも第一義だったのだと思います。しかし、白血病がすでに進行してしまっているここでは、一緒にいて楽しいとか楽になれるとか、自分にとってその人の存在が有益であるとか、そういう次元ではもはやなくなってしまっている、そういう意味の「重さ」を抱えざるを得なくなっているのだと思います。そういう中で、サクは「信じる闘い」を繰り広げていたのでしょう。亜紀の別れを告げるテープが、彼女の本当に率直な思いなのかどうかを含めて。

そうしてサクが選んだ道が、プロポーズ、つまり、「後ろに乗る」約束をどこまででも守り、守らせることでした。それは、別れの宣告への拒否であり、死に行く亜紀の運命への抗議であり、そして「もう何もあげるものがない」と嘆き、病いとともに実は自己憎悪の中で苦しんでいる亜紀に対する、「そのまんまの亜紀が好き」というサクの応えだったのだと思います。

そして付け加えると、母親に対しては、「お母さんはいてね、お母さんだから」と亜紀は語ったわけですが、それは裏を返せば結局、「無理をして、サクを特別扱いしていない」ということになっていたのでしょう。もちろんサクはそういう亜紀と綾子とのやりとりは知らないわけですが、テープの中で嘘をつく亜紀にサクが気づいたとすれば、嫌いなものランキングでこのことを訴えたのは当然のことかもしれません。
...2005/05/07(Sat) 01:32 ID:Aijd7qEM    

             Re: 俺の前で無理をして俺を特別扱い...  Name:にわかマニア
 親,とりわけ母親が「特別な存在」であることは,皆さんが書かれているとおりです。この関係の議論でよく引用される亜紀が髪を洗ってもらうシーンでは,亜紀の口から明白に「親と恋人は違う」ということが語られます。
 この「母親という存在の特殊性」が非血縁者関係においても発揮されるシーンがこれまた第7話と第8話に登場します。外泊許可を得た亜紀がサクの家で食卓を囲むシーンでは,サクの母は「気を遣い合って泥沼になる重い病名なのに,そのまま受け止め」,亜紀もそのことを喜んでいます。一方,亜紀から「もう来ないで」と言われたサクが胸の内を語るシーンでは,亜紀の母は聞き役に徹しています。いずれも,相手をそのまま受け止めているところがポイントだと思います。

 一方,亜紀はどうでしょうか。
 「お母さんはお母さんだから」という発言自体は,恋人と親に対する気遣い(どこまで無理するか)に差をつけています。でも,本当は子の方が親を看なければいけないのにとか,治療費が大変だろうとか,恋人に対するのとは別の形ではあれ,かなり気を遣っており,これに対して母親は「それでも手間だと思ったことはない」と語っています。
 サクは直接このやりとりを聞いた訳ではありませんが,私は母親のこのセリフがここでの問題を読み解く上でのキーワードだと思っています。そして,サクもまた,そうした存在でありたいと思っていたのではないでしょうか。すなわち,病気の恋人を重荷だとは思わないから,別れ話も含めて病気であることを封印せずに,ありのままで接して欲しいと。

 その上で,「後ろに乗る」の件ですが,「一介のファン」さんが引用された第3話の会話は,形を変えて第7話のナレーションに登場します。ペダルが軽くなることで大切な人の不在を実感した第3話を思い出させるように,病気で痩せた亜紀を後ろに乗せた自転車のペダルを軽いと感じ,サクはこれをチェーンを取り替えたからだと自らに言い聞かせます。
 まるで,このシーンを撮るために,手をつないで徒歩での下校シーンを用意した感じすらします。しかも,助かるかどうかが6割と4割ということを考えている最中にチェーンが切れるというのも象徴的であり,周到に計算された脚本であることがうかがえます。

 そして,このシーンを「嫌いなものランキング」の前に入れることで,もはや「後ろに乗る」ということが即物的な意味合いから象徴的な意味合いに昇華しているということが強調されているような感じを受けました。
...2005/05/07(Sat) 11:32 ID:wrtuYlYc    

             Re: 俺の前で無理をして俺を特別扱い...  Name:にわかマニア
 出会いからプロポーズまで,「ありのままがいい」というのがキーワードになっている感じですね。それが時として「もう来ないで」発言のように軌道から外れそうになり,それをリカバーするものとして「嫌いなものランキング」も位置づけられるのでしょうね。
 ところで,「特別扱い」(=ありのまま接する)と「亜紀が自ら望むように生きる」こととの最後の衝突がこれまで何回か話題になった例の「突き飛ばし事件」のような感じがします。その後,追いついたサクは,ここでも,「途中で死んだら」とか「腐るかも」という亜紀に「そのままでいい」と言っています。
 このあたり,皆さんは,どのようにお感じになりましたか。
...2005/05/08(Sun) 22:18 ID:qDqkuY1w    

             Re: 俺の前で無理をして俺を特別扱い...  Name:うてきなぷりぱ
私は亜紀の突き飛ばした行為は、ある意味意に反する衝動的な行為だと思います。まず気になったのが、出発当日に朔太郎が病室に行ったときに、亜紀の姿が見えず、後ろから亜紀に肩をたたかれましたが、朔太郎の頬に指は出ませんでした。
いつもだったら考えられないシーンです。亜紀の体調はかなり最悪であったと考えられます。タクシーを待っている間も、道路にしゃがみこんでましたよね。とても立ってられない様子でした。駅の跨線橋を渡れたのが不思議なくらいです。(両親に残したテープを紹介しなければならなかったですが)。この状況下ではおそらく冷静に自己判断ができなかったのではないかと思います。ですから駅のベンチでの会話はいくらか意識もうろう状態での会話であったと思うのです。すみませんがこの一件が最後の衝突だと私は感じとれませんでした。
...2005/05/08(Sun) 22:46 ID:uQYmBWns    

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